JP4272785B2 - 光学処理方法およびそれを用いた光学処理装置 - Google Patents

光学処理方法およびそれを用いた光学処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学系の近軸・収差計算・近軸光線追跡等を行う為の光学処理方法(処理方法)及びそれを用いた光学処理装置(処理装置)に関し、特に、物体面から光学系を介して像面にいたる任意の光線の光路を基準軸として、その基準軸のまわりに展開した近軸量・収差量を計算する際に好適な光学系の近軸・収差量計算・近軸光線追跡等に好適なものである。
【0002】
また本発明は、光学系の構成面の表現にかかわる光学処理方法及びそれを用いた光学処理装置に関し、特に、基準軸が各面と交わる点を中心とした、光学系の構成面の面形状の表現や変換に好適なものである。
【0003】
また本発明は、光学系の光学部材の形状決定のために好適な光学処理方法及びそれを用いた光学処理装置に関し、特に、物体面から光学系を介し像面にいたる任意の光線の光路を基準軸として近軸・収差量計算を行ないながら光学系の各光学部材の形状を定めていくという、光学系の各光学部材の形状決定のために好適なものである。
【0004】
更に本発明は、上記の光学処理方法および光学処理装置で設計された光学系、特に、物体面から光学系を介し、像面にいたる基準波長の光路(基準軸)が曲面と交わる点において面法線が基準軸と一致しない平面ではない曲面(O ff-Axial曲面)を含む光学系に関する。
【0005】
【従来の技術】
従来より、各面の回転対称軸である光軸のまわりに回転対称の屈折面または反射面を配置してなる共軸光学系が物体面の像を像面に結像する光学系として用いられてきた。そしてその共軸光学系の骨組みや収差状況を決めるものとして、共軸系の近軸理論・収差論(松居吉哉著:「レンズ設計法」共立出版(1972)、「収差論」オプトメカトロニクス協会(1989)など)があり、それぞれ共軸光学系の設計の際に焦点距離や倍率を決めるのや収差解析に用いられている。そしてそうした近軸量を用いて共軸光学系の骨組みが決められ、収差をターゲットとした自動設計法などにより共軸光学系の形状が決定されている。
【0006】
ところが最近、HMD(head mount display)のような表示系においては従来の共軸光学系の範疇には属さない非対称非球面を用いた設計(主として反射面)が自動設計技術の向上に伴いしばしば見うけられるようになってきている。
【0007】
こうした非対称非球面の表現方法としては、共軸系の上記式で表わされる面が大きく偏心していて光学系として使っている部分は光軸から大きく離れた部分であるとする「共軸光学系の偏心による非対称非球面の表現方法」が一般的であり、そうして表現した光学系に無理やり共軸系の近軸理論を適用したりもしていた。
【0008】
そして上述した座標系を用い、光学配置の骨組みや焦点距離や倍率といった合理的な評価量もそろわないままこうした光学系を、像面でのスポットの絞られかただけをターゲットにした自動設計の手法で、あるいは軸外までよく収差のとれた共軸光学系の軸外部分だけを用いるといった手法で設計していた。
【0009】
そこで我々は、先に特開平9−5650号公報で図11に示したようなOff-Axial光学系を提案した。Off-Axial光学系の定義は次のとおりである。
【0010】
物体面中心(被撮影、被観察範囲の中心)から出る光線のうち、光学系の指定される面順次に光学系を通り、光学系内に定義される絞り中心を通る基準波長の光線を基準光線として設定した時、その折れ曲がった基準光線の光路を基準軸と呼ぶことにすれば、このように定義した基準軸が曲面と交わる点において面法線が基準軸と一致しない曲面(Off-Axial曲面)を含み、その折れ曲がった基準軸に沿って光学要素を配置する光学系をOff-Axial光学系と定義する。
【0011】
本出願人は、このようにOff-Axial光学系を定義して従来の偏心光学系の考え方とは違った新しい光学系の考え方を提案し、こうしたOff-Axial光学系に対しても折れ曲がった基準軸のまわりの展開手法を用いれば、各面での近軸量を計算でき、光軸回転対称系と同様に2×2成分を持つガウシャンブラケットを用いた形式にまとめることができるを示した。そしてこの新しいOff-Axial光学系という考え方は、 図12にその包含関係を示すように、従来の共軸回転対称光学系や、共軸ではあっても回転対称性を持たないアナモルフィック光学系より上位の概念であることを示した。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記解析では、Off-Axial光学系という新しい概念を導入したが、Off-Axial面が複数の場合は、各面の近軸量にアジムス依存性が残っていないといった制限事項を加えないと全系の近軸量が合わなくなる。これは、メリディオナル光線から決める最低次数の1次量に関わる近軸量でさえ、対称性がなくなるために同一平面内を進むのではなくなることに起因して各面が持つ近軸量のアジムス依存性がお互いに作用し合って全系の近軸量をずらす効果を発生させるからである。更に各アジムス毎の収差のお互いの関係を導出しなかったために、アジムスごとに収差を求めようとすると無限枚の収差図と無限個数の収差係数が必要となってくることが原因となっている。この2つはつまり、共軸回転対称光学系の2元ベクトルの考えかたに基づいた手法に限界があること、そしてこうした一般的なOff-Axial光学系をよりきちんと取り扱うためには新しい解析体系を整え、その理論に基づく処理方法を確立しそれを用いた処理装置を構築する必要があることを示している。それと同時に、こうした処理方法が確立されれば、この方法はより敷衍化された一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価が可能になりうることも示唆している。
【0013】
本発明は、Off-Axial面が複数といった一般的なOff-Axial光学系の場合においても近軸・収差解析を厳密にしかも体系的に行なえるようにする解析手法の体系を完成させ、その解析体系に基づく光学処理方法およびそれを用いた光学処理装置の提供を目的とする。
【0014】
本発明は、更にその解析体系を使ってアジムスに依存性の構造を解き明かしてより少ない基本量ですべてのアジムスでの近軸・収差特性を表現できる体系を完成させ、その体系に基づく光学処理方法をおよびそれを用いた光学処理装置の提供を目的とする。
【0015】
本発明は、更に、そうして構築された解析体系をより敷衍化して、一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価できる光学処理方法およびそれを用いた光学処理装置の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の光学処理方法は、光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の点から像面に至るまで、ある波長の光線を通し、物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで、光線通過点の成分分解に基づく光線通過点4元ベクトル及び収差4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいて近軸・収差解析を行なうことを特徴としている。
【0017】
請求項2の発明の光学処理法法は、光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の点から像面に至るまで、ある波長の光線を通し、物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで、光線基本4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいて近軸・収差解析を行なうことを特徴としている。
【0018】
請求項3の発明は請求項1又は2の発明において、前記光学データが与えられた光学系は、基準軸が交わる点の面法線と該基準軸とが一致しないOff-Axial曲面を含むことを特徴としている。
【0019】
請求項4の発明は請求項1又は2の発明において、前記光学データが与えられた光学系は、回転対称光学系であることを特徴としている。
【0020】
請求項5の発明の光学処理装置は、請求項1乃至のいずれか1項記載の光学処理方法を用いていることを特徴としている。
【0021】
請求項6の発明のコンピュータで読取り可能な記録媒体は、請求項1乃至のいずれか1項記載の光学処理方法を記録したことを特徴としている。
【0159】
【発明の実施の形態】
1.本発明は、幾つかの新しい概念や定義を導入するとともに新しく導入した概念を使ったより一般的な像の新しい解析法を体系化している。そのうちの主たる手段としては以下の項目がある。
・Off-Axial光学系におけるアジムスの考え方を整理して3つのアジムスを導入した処理方法となっていること。
・光線通過点の成分分解に基づく光線通過点4元ベクトル、収差4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいた処理方法となっていること。
・光線基本4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいた処理方法となっていること。
・光線通過点4元ベクトルと光線基本4元ベクトルの関係式を使ってアジムス依存性の分離するという解析手法にもとづいた処理方法となっていること。
・テンソル解析を用い、射出側における4元ベクトルを入射側の4元ベクトルを使って展開を使う解析手法にもとづいた処理方法となっていること。
・解析体系の敷衍化に伴って、より一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価の処理方法となっていること。
【0160】
以上、本発明の主たる手段として挙げた処理方法をとることにより、一般的には対称性が少ないために解析が複雑になると考えられていたOff-Axial光学系に対して、見通しの良い解析ができるという作用があり、Off-Axial光学系の光学設計に適した処理装置を得ることができる。特にこうした解析手法はアジムス依存性を近軸追跡値マトリックスJijとして分離することができる、つまりまず系固有の量を求めておけばすべてのアジムス依存性は近軸追跡値マトリックスを掛けて変換することにより求められる、という作用があるために従来回転対称性がないために複雑と見られていたOff-Axial光学系の光学設計に適した処理装置を得ることができる。更に解析体系の敷衍化に伴って、この解析手法が、狭義のOff-Axial光学系だけでなくより一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価に適用できるという作用があり、より一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価や設計に適した処理装置を得ることができる。
【0161】
次に本発明の光学処理方法(処理方法)およびそれを用いた光学処理装置(処理装置)に係る解析理論・解析体系を順次説明する。
1 Off−Axial光学系におけるアジムスの考え方:3つのアジムスを導入した処理方法
Off-Axial光学系では回転対称性がないためにアジムスは一つのアジムスで済ませられる共軸系ほどには簡単ではない。そこでOff-Axial光学系の表現の一般化をはかるために、基準軸のまわりのアジムスとして図1に示すように次の3種類のアジムスを導入する。
【0162】
1.評価のアジムスξ
Off-Axial光学系では回転非対称のため、基準軸を含むどの平面で物体収差や瞳の収差を評価しているのかということが問題となる。アジムスξは基準軸を含むその評価平面のアジムスである。
【0163】
2.物、像点の相対アジムスζ,ζ′
いま収差を評価しようとしているアジムスξに対して、物、像点のアジムスの違いで収差量は変わってくる。そこで物、像点のアジムスをそれぞれξ+ζ≡ξb、ξ+ζ′≡ξ′b(ζ,ζ′は物、像点の相対アジムス)を定義して導入する。
【0164】
3.入射瞳面上の点、射出瞳面上の点の相対アジムスη,η′
同様に収差を評価しようとしているアジムスξに対して、光線の通る入射瞳面上の点、射出瞳面上の点のアジムスの違いで収差量は変わってくる。そこで光線の通る入射瞳面上の点、射出瞳面上の点のアジムスをそれぞれξ+η≡ξr、ξ+η′≡ξ′r(η,η′は光線の通る入射瞳面上の点、射出瞳面上の点の相対アジムス)を定義して導入する。
【0165】
ここで定義した2種類の相対アジムスは、従来の共軸回転対称系の収差論では、ζの方が、瞳の収差の表現式の中に現れるアジムスに対応するものであり、ηの方は物体の収差の表現式の中に現れるアジムスに対応するものである。
【0166】
なお今後、入射側の量といえば物体面、入射瞳面にかかわる量をあらわす事とし、射出側といえば射出瞳面、像面に関する量を扱うものとする。そして記号的には入射側にはζ,ηのように′なしの表現をし、射出側ではζ′,η′のように′つきの表現をするものとする(なお、上記評価のアジムスξは入射側と射出側で同じ量として定義するので、代表としてξで表わすものとする。
【0167】
2 光線通過点の成分分解に基づく光線通過点4元ベクトル、収差4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいた処理方法
2.1光線通過点の成分分解と光線通過点4元ベクトルの導入
上に述べたようにある評価のアジムスξに対して、収差表現を得るために物体面、入射瞳面、射出瞳面、像面における光線の通過点を成分に分けることを考える。それには図2、図3に物体面内、入射瞳面内での成分分解例を示すように、評価のアジムス方向の成分(評価のアジムスξに対し平行成分)と、それとは垂直な方向の成分(評価のアジムスξに対し垂直成分)に分ける方法をとる。
【0168】
図中に示すように、物体面内での通過点と物体面内の原点(基準軸の通過位置)との距離をB、入射瞳面内での通過点と入射瞳面内の原点(基準軸の通過位置)との距離をR、像面内での通過点と像面内の原点(基準軸の通過位置)との距離をB′、射出瞳面内での通過点と射出瞳面内の原点(基準軸の通過位置)との距離をR′とすれば、それらの面での評価のアジムスξに対しての平行成分(記号‖)と垂直成分(記号⊥)は相対アジムスζ,η,ζ′,η′を使ってそれぞれ以下のように表せる。
【0169】
【外1】
Figure 0004272785
【0170】
【外2】
Figure 0004272785
【0171】
【外3】
Figure 0004272785
【0172】
【外4】
Figure 0004272785
【0173】
【外5】
Figure 0004272785
【0174】
【外6】
Figure 0004272785
【0175】
【外7】
Figure 0004272785
【0176】
【外8】
Figure 0004272785
【0177】
【外9】
Figure 0004272785
【0178】
【外10】
Figure 0004272785
【0179】
6 解析体系の敷衍化に伴う、よリ一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価の処理方法
前節までで、新しく構築したOff-Axial光学系の近軸・収差解析の体系について説明してきたが、このOff-Axial光学系の考え方は色々な光学系の主光線など任意の光線のまわりにも同様な折れ曲がった光路に沿った近軸展開を行なえるということをも意味している。色々な光学系とは今まで考えてきたOff-Axial光学系ばかりではなく、共軸系(回転対称共軸系、アナモルフィック系)の一般の光線に対しても適用できる。このことは、従来明るい光学系の高画角の軸外光線での収差系数評価が高次の収差展開がないために行なえなかったものに対して、主光線に代表される一般光線のまわりに近軸展開を行なえば、低次の収差展開で光学評価が行なえるようになるということである。こうした軸外光線など一般光線のまわりのOff-Axial近軸・収差解析の体系を「敷衍化された近軸・収差解析」と今後呼ぶこととするが、以下に従来のOff-Axial光学系の収差論の体系を「敷衍化された近軸・収差解析」として展開する場合に、今まで述べてきたOff-Axial光学系の近軸・収差解析の体系とは異なる手順、付加するべき項目を以下に示す。
【0180】
1.光学データが与えられた光学系に対し、そのまわりにおいて近軸展開を行なうべき光線の選択と光線追跡
Off-Axial光学系の考え方では、「物体面中心(被撮影、被観察範囲の中心)から出る光線のうち、光学系の指定される面順次に光学系を通り、光学系内に定義される絞り中心を通る基準波長の光線を基準光線として設定した時、その折れ曲がった基準光線の光路を基準軸と呼ぶことにすれば、このように定義した基準軸が曲面と交わる点において面法線が基準軸と一致しない曲面(Off-Axial曲面)を含み、その折れ曲がった基準軸に沿って光学要素を配置する」ので、面間隔は基準軸に沿ってとられ、また面形状も基準軸が曲面と交わる点を原点としての表現式で与えられるのが一般的である。したがって、与えられた光学系のデータだけでその基準軸のまわりの近軸・収差解析が可能である。ところが、上記「敷衍化された近軸・収差解析」では、近軸・収差解析を行なうべきある波長の光線を選んで光線を追跡し、そのまわりにおいて近軸展開を行なうべき光路を確定させる必要がある。
【0181】
2.光線追跡した光路についての「光路に沿った光学データ」の算出
上記光線追跡した光路のまわりで、従来のOff-Axial光学系の基準軸上(「軸上」と呼ぶ)と同等に近軸・収差解析を行なうためには、上記光線追跡した光路のまわりでOff-Axial光学系では先に与えられていたデータと同様の「光路に沿った光学データ」の算出が必要である。「光路に沿った光学データ」とは、光路に沿った各光路長(面間隔)、光線追跡した光路が各面と交わる点におけるローカル面形状(光路が各面と交わる点を原点とした面のローカルな表現式)、上記光線追跡した光路の折れ曲がり方を規程する角度情報と、折れ曲がり前後の屈折率情報である。このうち折れ曲がり前後の屈折率情報は与えられたデータを流用できるが、残りの情報は新たに算出しておく必要がある。
【0182】
光路に沿った各光路長(面間隔)は光路が各面と交わる点同士の絶対座標の間の距離として計算される。
【0183】
光線追跡した光路が各面と交わる点におけるローカル面形状(光路が各面と交わる点を原点とした面のローカルな表現式)は、一般には面形状の表現の原点に光路が各面と交わる点をとり、そこでの面法線方向に一つの座標軸x軸を合わせた例えば以下のような式で表現するのが便利である。
【0184】
x(y,z)
=C20y2+2C11yz+C02z2
+D30y3+3D21y2z+3D12yz2+D03z3
+E40y4+4E31y3z+6E22y2z2+4E13yz3+E04z4+... (27)
(ここで、各次数の展開係数の前には、2項係数が便宜的につけてある。これは、2項係数をつけておくことで、近軸量、収差係数の中に分数係数を残さないようにするためである。)
一般に、こうした座標系での表現を得るためには、もとの原点と座標軸に対し原点移動と3次元回転の座標変換を行なってやれば良い。この座標変換の解析的表現は一般的に複雑である。そのため、もとの曲面上の何点かの点を用いたフィッティングによって数値的に光路が各面と交わる点を原点とした面のローカルな表現式を求めることも有効な方法であろう。
【0185】
光線追跡した光路の折れ曲がり方を規程する角度情報とは、Off-Axial光学系では「基準軸が曲面と交わる点において面法線が基準軸となす角度(Off-Axial角)および、折れ曲がり点前後の基準軸を含む面(基準面)がどのように同一平面からずれてひねれていくかの角度(ひねり角)」である。これらと同等な角度情報を、光路が各面と交わる点において求めるためには、光路が各面と交わる点における法線の方向および、屈折、反射、回折などの法則を使って偏向後の光路の方向を求めることにより計算することができる。
【0186】
3.共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデフォーカス変換
以上1.2.が主光線に代表される一本の一般光線のまわりに近軸展開を行なえば、低次の収差展開で光学評価を行なえるようになるということであった。更に、この評価を行なう光線を一つの光学系あたり複数個(たとえば、違う複数の画角の主光線)とることも可能である。そうした場合、個々の近軸展開する光線で独立に近軸・収差解析をしてもよいが、光線の出る物体面を共通化し、評価面もある画角の主光線の像面に共通化して評価したい場合もある。そうした場合、物体面、評価面の傾きを揃える処置が必要である。また、収差がある場合は各々の画角の主光線同士では像面の位置が一致しないのが一般的である。そうした場合、先の傾きの共通化とともにデフォーカスして評価面の位置を揃えてやればよい。このように共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデフォーカス変換を行なうのは、評価を行なう光線を一つの光学系あたり複数個(たとえば、違う複数の画角の主光線)の場合、共通の評価基準で収差の状況を見ることができるので非常に有効である。
以上が幾つかの新しい概念や定義を導入するとともにそれを使ったより一般的な像の新しい解析法及びその手法をより一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価についての説明である。この手法を使って物体面から像面にいたる基準波長の基準光線の基準軸が曲面と交わる点において面法線が基準軸と一致しない平面ではないOff-Axial曲面を含む光学系に対して光学設計を行なう場合、(7)式に(22)式を代入して得られる収差4元ベクトルに対し、そのベクトル量がもっともゼロベクトルに近くなるように各構成面の形状や相対配置を決定してやればよい。なおその際、収差4元ベクトルに対し、そのベクトル量がもっともゼロベクトルに近くなるように各構成面の形状や相対配置を決定する手段として自動設計の手法を用いることは有用である。一方で共軸光学系に対しても、画角を持つ軸外の主光線のまわりに同様の考え方を取り入れた総合的近軸・収差論的評価が可能なので、この考え方に基く同様な設計も可能である。
【0187】
次に上記理論、解析体系に基いた本発明の具体的な光学処理装置の実施例について説明する。図7は本発明の一実施例に係る光学処理装置のブロック図である。図において、11は装置全体の制御を司るCPU、13はCPU11 において実行されるプログラム等が格納されるROM と、この実行の際のワーキングエリアとして用いられるRAM を含むメインメモリ、14はキャラクタ情報、制御情報等を入力するためのキーボード、15はポインティングデバイスとしてのマウス、16はキーボード14およびマウス15と本装置との間で信号接続を行なうためのキーインターフェイスである。
【0188】
17はローカルエリアネットワーク(LAN)やインターネット等のネットワーク18 と本装置を接続するネットワークインターフェイス、19はROM 、SRAM、RS232C方式インターフェイス等を有した入出力装置(以下「I/O」 という) である。I/O 19 には各種外部機器を接続可能である。20、21は外部記憶装置としてのハードディスク装置およびフロッピーディスク装置、22はハードディスク装置20およびフロッピーディスク装置21と本装置との間で信号接続を行なうためのディスクインターフェイスである。23はインクジェットプリンタ、レーザービームプリンタ等によって構成されるプリンタ、24はプリンタ23と本装置との間で信号接続を行なうためのプリンタインターフェイスである。25は表示装置であり、26は表示装置25と本装置との間で信号接続を行なうための表示インターフェイスである。12は、上記各機器間を信号接続するためのデータバス、コントロールバス、アドレスバスからなるシステムバスである。
【0189】
本実施例においては、CPU11 が、処理方法の手順のソフトウエアが記録された記録媒体から処理手順を読み出し実行するものである。尚、記録媒体としてはメインメモリ13のROM部や外部記録媒体としてのCDROM等がある。更に処理手順の読み出しはネットワーク等を介して行っても良い。そして各処理により得られる値は、それぞれメインメモリ13のRAM 部に格納されるものである。
【0190】
次に、本発明における処理方法および処理装置に関わるひとつの実施例の処理アルゴリズムについて、図8を用いて説明する。この処理方法および処理装置はOff-Axial光学系にかかわるものであるから、まずOff-Axial光学系データの読み込みがなされる。次にこの処理方法および処理装置は収差評価に対して3つのアジムスを導入した座標体系に対して有効性を発揮できるものなので、3つのアジムスを導入した座標体系になっているかのチェックが行なわれ、なっていない場合は3つのアジムスを導入した座標体系への変換がなされる。次に物体面、入射瞳面情報に基づき、入射側の近軸光線が設定される。これは、物体面、入射瞳面情報に基づき、(8)式により入射側光線基本4元ベクトルが設定されることに対応している。次に、Off-Axial光学系データを使って近軸追跡が行なわれそれと同時に各面での「収差係数テンソル量」および全系での「収差係数テンソル量」の計算が行なわれる。これらの「収差係数テンソル量」は各面の面形状、基準軸と面法線のなす角度、面間隔、媒質の屈折率といったアジムスに依存しない量を使って表わされる量である。こうした「収差係数テンソル量」が計算されることは(23)式を用いれば、(9)式で定義される射出側光線基本4元ベクトルが計算されることに対応している。ところで、本発明で提示した解析体系においては、これまでで計算された量はすべて、収差評価に関わる評価のアジムスξに関係なく計算される。しかしながら、これら計算された量は、すべての評価のアジムスξでの収差を表現できる情報を含んだものである。その事情に関わって、今まで計算された量を使ってすべての評価のアジムスξでの収差を算出するアルゴリズムの流れを以下に続ける。そのために、まず収差をみようとする評価のアジムス1つが指定される。アジムスξが指定されれば、入射側光線通過4元ベクトルが(1)、(3)の定義式を使って計算される。これは入射側光線通過点4元ベクトルと光線基本4元ベクトルを結びつける(11)式の関係式に出てくる(13)式の入射側近軸追跡値マトリックスJが計算されることを意味している。射出側ではすでに近軸追跡値は求まっているから、(14)式の射出側近軸追跡値マトリックスJ′も計算される。そしてこの射出側近軸追跡値マトリックスJ′が求まれば、次には(24)、(25)、(26)式に1次から3次の場合を示した「収差係数テンソル量」と「収差表示テンソル量」の変換式により、各面での「収差表示テンソル量」、全系での「収差表示テンソル量」が計算される。それと同時に(2)、(4)で定義される射出側光線通過点4元ベクトルも(12)式で計算される。この計算結果は各次数の収差を足し合わせた(22)式で求めた射出側光線通過点4元ベクトルの結果と一致するものである。このように射出側光線通過点4元ベクトルが計算されれば、次には(5)、(7)式で定義される収差4元ベクトルが算出されることになる。この収差4元ベクトルは第1、2成分が物体収差、第3、4成分が瞳の収差を表わしているので、先に与えた評価のアジムスにおける収差が物体高、瞳径の関数として求まることとなる。以上が与えられた1つの評価のアジムスにおける収差の算出である。評価したいアジムスがほかにもあれば、図8の図中にも分岐を示しているように、評価のアジムスの指定のところからやりなおすだけでよい。そして、必要とされるアジムスでの収差の算出が終われば、算出された各面および、像面での収差情報の表示、記録媒体への書き込みがなされる。この実施例のアルゴリズムでは、次のアジムスに移る分岐が算出された各面および、像面での収差情報の表示、記録媒体への書き込みに先だって行なうような流れになっているが、この両者の順序は逆でもよい。そして、最後に評価したアジムスが複数ある場合は、アジムスの違いによる収差の違い(アジムス依存性)の表示、記録媒体への書き込みが行なわれる。以上が本発明における処理アルゴリズムの一例である。
【0191】
尚、このような処理アルゴリズムの入ったソフトウエアは通常ディスクやテープ等の記録媒体に記録されている。そして処理装置では必要に応じて、そのソフトウエアを用いていて処理を行なっている。
【0192】
図9に本発明における処理アルゴリズムの別の一例を示す。この処理のアルゴリズムでは、基本的な流れは図8の場合と同じである。ただ、評価のアジムスの指定の前のところに、全系を通しての「収差係数テンソル量」の最適化の項目が付け加わっている。そして、この最適化の結果が目標以内に入ってない場合で最適化を続けたい場合には、Off-Axial系の光学系データを変更して「収差係数テンソル量」の最適化のループが繰り返される点で図8の場合とは異なっている。最適化のループがこの位置でよいのは、収差のアジムス依存性が本発明に示した解析体系では分離して解析できるので、アジムス毎に無限枚の収差図での検討、無限個のアジムス毎で収差係数評価を行なわずとも、アジムスに依存しない有限個数の「収差係数テンソル量」の最適化を行なうだけですべてのアジムスに対する収差の最適化ができるからである。このように「アジムスに依存しない有限個数の「収差係数テンソル量」の最適化を行なうだけですべてのアジムスに対する収差の最適化ができる」というのは本発明の最大の特質である。
【0193】
尚、このような処理アルゴリズムの入ったソフトウエアはディスクやテープ等の記録媒体に記録さている。そして処理装置では必要に応じて、そのソフトウエアを用いている。
【0194】
図10に本発明における処理アルゴリズムの更に別の一例を示す。この処理のアルゴリズムでは、基本的な流れは図8の場合と同じである。しかし、この例では新しく構築したOff-Axial光学系の近軸・収差解析の体系を、色々な光学系の主光線など任意の光線の同様に折れ曲がった光路のまわりに対して適用した例である。色々な光学系とは今まで考えてきたOff-Axial光学系ばかりではなく、先に述べたように、共軸系(回転対称共軸系、アナモルフィック系)に対しても適用されるものである。従って、一番最初のところで、光学系データの読み込みの後に「光学データが与えられた光学系に対し、そのまわりにおいて近軸展開を行なうべき光線の選択と光線追跡」および、「光線追跡した光路についての『光路に沿った光学データ』の算出」の部分が付加されている。これらの項目の具体的やり方とその意味については、先に「解析体系の敷衍化に伴う、より一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価の処理方法」の節で詳しく説明したので省略するが、このようにすることで、色々な光学系の主光線など任意の光線のまわりにも同様な折れ曲がった光路に沿った近軸展開と近軸・収差解析の手法が使えるようにすることができる。
【0195】
またこの図10では、「各面および像面での収差情報の表示・書込み」の項目の前に、必要に応じて「共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデフォーカス変換」についての項目も付加されている。これは光線の出る物体面を共通化し、評価面もある画角の主光線の像面に共通化して評価したい場合には、物体面、評価面の傾きを揃える処置が必要となるからである。また、収差がある場合は各々の画角の主光線同士では像面の位置が一致しないのが一般的なので、先の傾きの共通化のほかに、デフォーカスして評価面の位置を揃えてやることも必要だからである。しかし、このようにして、共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデフォーカス変換をしてやれば、評価を行なう光線を一つの光学系あたり複数個(たとえば、違う複数の画角の主光線)の場合であっても、共通の評価基準で収差の状況を見ることができるようになり非常に有効である。
【0196】
尚、このような処理アルゴリズムの入ったソフトウエアは通常ディスクやテープ等の記録媒体に記録されている。そして処理装置では必要に応じて、そのソフトウエアを用いていて処理を行なっている。
【0197】
以上の図8、図9、図10に処理アルゴリズムの例を示したが、最後にその中のキーとなる部分の演算モジュールについて以下に箇条書きにまとめてみる。これらは本発明の処理方法および処理装置において主要な役割を果たす。
(A1)光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうに際して、その光路のまわりで近軸・収差解析を行なう光線を指定して光線追跡する演算モジュール
(A2)光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうに際して、その指定された光路についての「光路に沿った光学データ」を算出する演算モジュール
(A3)光学データが与えられた光学系に対して、与えられた光学データの収差解析表現の座標体系で2種類または1種類のアジムスしか使われてない場合には、それを検知し3種類以上のアジムスを導入した座標体系への変換を行なう演算モジュール
(A4)光学データが与えられた光学系に対して、光線の射出側の射出高さを表わす 2つの成分および射出側の換算傾角を表わす2つの成分の合わせて4つの成分が、光線の入射側の入射高さを表わす2つの成分および入射側の換算傾角を表わす2つの成分の合わせて4つの成分の関数として算出される演算モジュール
(A5)光学データが与えられた光学系に対して、光線の射出側の像面内での通過点を表わす2つの成分および射出瞳面内での通過点を表わす2つの成分の合わせて4つの成分が、光線の入射側の物体面内での通過点を表わす2つの成分および入射瞳面内での通過点を表わす2つの成分の合わせて4つの成分の関数として算出される演算モジュール
(A6)算出された光線の射出側の像面内での通過点を表わす2つの成分および射出瞳面内での通過点を表わす2つの成分の合わせて4つの成分、および、演算の入力情報である光線の入射側の物体面内での通過点を表わす2つの成分および入射瞳面内での通過点を表わす2つの成分の合わせて4つの成分とを使って物体収差、瞳の収差の少なくとも片方の収差情報が算出する演算モジュール
(A7)求められた物体収差、瞳の収差の少なくとも片方の収差がほとんどゼロに近くなるように各構成面の形状や相対配置を決定する演算モジュール
(A8)光学データが与えられた光学系に対して、光線の射出側の像面内での通過点を表わす2つの成分および射出瞳面内での通過点を表わす2つの成分の合わせて4つの成分、または、光線の入射側の物体面内での通過点を表わす2つの成分および入射瞳面内での通過点を表わす2つの成分の合わせて4つの成分が、光線の射出側の射出高さを表わす2つの成分および射出側の換算傾角を表わす2つの成分の合わせて4つの成分、または、光線の入射側の入射高さを表わす 2つの成分および入射側の換算傾角を表わす2つの成分の合わせて4つの成分の関数として算出される演算モジュール
(A9)光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうに際して、その近軸・収差解析を行なう光路が一つであるか複数であるかを判断する演算モジュール
(A10)光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうに際して、共通面評価が必要かどうかを判断する演算モジュール
(A11)光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうに際して、共通面評価が必要と判断された時に、共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデ フォーカス変換を行なう演算モジュール
(A12)光学データが与えられた光学系に対して、その近軸・収差解析を行なうアジムスが一つであるか複数であるかを判断する演算モジュール
(A13)光学データが与えられた光学系に対して、アジムス依存性評価が必要かどうかを判断する演算モジュール
(A14)光学データが与えられた光学系に対して、アジムス依存性評価が必要と判断された時に、アジムス毎に計算された収差特性をまとめて表やグラフに書ける形にまとめる演算モジュール
このうち(A1)は、軸外の主光線等指定された任意光線のまわりに近軸・収差解析をする際に、指定された光路を確定させる演算で、必要に応じて演算結果の光路は表示装置に表示またはプリンターにプリントアウトまたは記録媒体に記録される。
【0198】
(A2)は同じく軸外の主光線等指定された任意光線のまわりに近軸・収差解析をする際に必要な、光路に沿った各光路長(面間隔)、光線追跡した光路が各面と交わる点におけるローカル面形状(光路が各面と交わる点を原点とした面のローカルな表現式)、上記光線追跡した光路の折れ曲がり方を規程する角度情報と、折れ曲がり前後の屈折率情報などの「光路に沿った光学データ」を演算算出するものである。これらの演算結果も必要に応じて表示装置に表示またはプリンターにプリントアウトまたは記録媒体に記録される。
【0199】
(A3)は与えられた光学データが、本発明の近軸・収差解析体系にそぐわないアジムス表現になっている場合、解析体系に適した、物体面・像面の共役関係にある面に関わるアジムス、入射瞳面・射出瞳面の共役関係にある面に関わるアジムス、収差を評価するアジムスの3つのアジムスを含むアジムス体系に変換するものである。
【0200】
(A4)は本理論体系で新しく定義された言葉で表現すれば(9)式の射出側光線基本4元ベクトルの4成分を(8)式の入射側光線基本4元ベクトルの4成分の関数として算出することに対応するものである。ベクトル解析の手法を使うのが望ましいが、各成分毎に具体的に書き下してもよいのでモジュールの機能としては上記のような表現をとってある。
【0201】
(A5)は本理論体系で新しく定義された言葉で表現すれば(2)または(4)式の射出側光線通過点4元ベクトルの4成分を(1)または(3)式の入射側光線通過点4元ベクトルの4成分の関数として算出することに対応するものである。これについても、ベクトル解析の手法を使うのが望ましいが、各成分毎に具体的に書き下してもよいのでモジュールの機能としては上記のような表現をとってある。
【0202】
(A6)は本理論体系で新しく定義された言葉で表現すれば(A5)で求まった射出側光線通過点4元ベクトルと、もとの入射側光線通過点4元ベクトルを使って(5)または(7)式のように、物体収差、瞳の収差を求める演算である。ベクトル解析の手法を用いればこれらは同時に求まるものであるが、ユーザーによっては、導出としては瞳の収差の結果が不要な場合、逆に瞳の収差だけ必要な場合もあるのでモジュールの機能としては上記のような表現をとってある。
【0203】
(A7)は(A6)で求められた収差ができるだけ小さくなるようにする設計用演算モジュールであり、具体的には自動設計のモジュール等がある。こうした手法は共軸光学系の収差制御には一般的に使用されているものであるが、折れ曲がった光路に対しても理論体系が本発明で開示されたため、同様な手法を使うことは非常に有効である。
【0204】
(A8)は本理論体系で新しく定義された言葉で表現すれば(2)または(4)式の射出側光線通過点4元ベクトルの4成分や(1)または(3)式の入射側光線通過点4元ベクトルの4成分を(9)式の射出側光線基本4元ベクトルの4成分や(8)式の入射側光線基本4元ベクトルの4成分の関数として算出することに対応するものである。これについても、ベクトル解析の手法を使うのが望ましいが、各成分毎に具体的に書き下してもよいのでモジュールの機能としては上記のような表現をとってある。その光線通過点4元ベクトルと光線基本4元ベクトルの関係は、本発明の理論体系では一般的には(11)式、(13)式もしくは(12)式、(14)式を使って行なわれるが、射出側に関しては各次数毎に収差展開をして、(22)式、(23)式および(24)、(25)、(26)式を使って求めても良い。
【0205】
(A9)は、軸外の主光線等指定された任意光線のまわりに近軸・収差解析をする際に、近軸・収差解析を行なう光路がいくつあるかを見るモジュールで、複数ある場合には(A10)の共通面評価が必要かどうかの判断に用いられる。そして(A10)のモジュールで共通面評価が必要と判断されれば、(A11)のモジュールを使って共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデフォーカス変換が行なわれる。
【0206】
(A12)は光学データが与えられた光学系に対して、その近軸・収差解析を行なうアジムスが一つであるか複数であるかを判断する演算モジュールであり、その結果は、(A13)のアジムス依存性評価が必要かどうかを判断に利用される。そして(A13)のアジムス依存性評価が必要かどうか判断する演算モジュールで、アジムス依存性評価が必要と判断された時に、(A14)のモジュールでアジムス毎に計算された収差特性をまとめて表やグラフに書ける形にまとめる演算が行なわれる。
【0207】
なお、これらのモジュールのうち(A1),(A2),(A9),(A10),(A11)は、光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうという軸外の主光線等指定された任意光線のまわりに近軸・収差解析をする際にのみ用いられるものである。一方、残りの(A3),(A4),(A5),(A6),(A7),(A8),(A12),(A13),(A14)はOff-Axial光学系のように初めから折れ曲がった光路の光学データが与えられた場合にも、光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうという軸外の主光線等指定された任意光線のまわりに近軸・収差解析をする際にも用いられるものである。
【0208】
尚、以上の(A1)〜(A14)のモジュールは通常ソフトウエアとしてディスクやテープ等の記録媒体に記録されている。そして処理装置では必要に応じて、そのソフトウエアを用いている。
【0209】
また、光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の1つまたは複数の点から像面にまである波長の光線を通し、該その各々の物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで近軸・収差解析を行なうという軸外の主光線等指定された任意光線のまわりに近軸・収差解析をする際には、光学データが与えられた光学系が共軸光学系であっても解析する光路はOff-Axial光学系と同様折れ曲がったものとなるので、すべてのモジュールにおいて処理できる該光学データが与えられた光学系には、回転対称光学系が含まれるものである。
【0210】
また、これらのすべての演算モジュールにおいて行なわれた演算の結果は、必要に応じて表示装置に表示またはプリンターにプリントアウトまたは記録媒体に記録されるものである。
【0211】
以上のように、本発明の実施形態に係るOff-Axial光学系は一般に折れ曲がった基準軸に沿って屈折面、反射面等の偏向面を配置して形成された光学系で、従来の共軸回転対称光学系の拡張概念である。本発明の実施形態では一般的には対称性が少ないために解析が複雑になると考えられていたそうしたOff-Axial光学系に対して、光学特性を見ていくため2種類の系列の4元ベクトル(光線通過点ベクトル、光線基本ベクトル)を新しく定義して導入し、その4元ベクトルにテンソル解析手法を新たに導入することにより(22)、(23)式でまとめられるように見通しが良く簡潔な表現を特徴とする解析体系ができるが、その解析体系に基づく処理方法を採用することにより見通しの良い光学系の近軸、収差解析ができるという効果がある。更に、こうした解析体系と手法では収差係数や基本的光学特性をテンソル形式で表現できるようになるために、その相互関係や変換等が定式化しやすくわかりやすいものとなる効果がある。
【0212】
特に従来回転対称性がないために複雑と見られていた各アジムス毎の収差量が異なるというアジムス依存性に対しては、こうした解析体系と手法を使えばこのアジムス依存性は4×4のガウシャンブラケットGij等で示される系固有の量「 収差係数テンソル量」と近軸追跡値マトリックスJijと正規化された入射側光線通過点4元ベクトルpに分離することができる。つまりこのアジムス依存性の分離の関係を理解すれば逆に任意のアジムスでの実際の収差は、4×4のガウシャンブラケットGij等で示される系としての系固有の量「 収差係数テンソル量」を(24)、(25)、(26)式で示されるように、評価のアジムスを含む近軸追跡値マトリックスJijおよび、相対アジムスを含む正規化された入射側光線通過点4元ベクトルpを使って変換することにより求めることができるという非常に有効な効果がある。特に、解析体系中で系の最低次数の固有量テンソルの表現として出てくるGijは、従来共軸回転対称光学系で2×2のマトリックスで与えられてきたガウシャンブラケットを4×4のマトリックスに拡張したものと考えることができるもので、近軸量などのOff-Axial光学系の基本的特性をあらわすものとして有効な概念あり、上記アジムス分離で出てくる近軸追跡値マトリックスJijと組み合わせて用いればOff-Axial光学系の近軸的特性等をすべてのアジムスにわたって検討できるという効果がある。
【0213】
また、本発明の実施形態に係る解析体系と手法を使えば、収差のアジムス依存性が4×4のガウシャンブラケットGij等で示される系固有の量「 収差係数テンソル量」と近軸追跡値マトリックスJijと正規化された入射側光線通過点4元ベクトルpに分離することができるということは、光学系の最適化においても、「アジムスに依存しない有限個数の「収差係数テンソル量」の最適化を行なうだけですべてのアジムスに対する収差の最適化ができる」という効果がある。
【0214】
更にOff-Axial光学系の考え方を用い、色々な光学系の主光線など任意の光線のまわりにも同様な折れ曲がった光路に沿った近軸展開を行なえるように、「光学データが与えられた光学系に対し、そのまわりにおいて近軸展開を行なうべき光線の選択と光線追跡」と「光線追跡した光路についての『光路に沿った光学データ』の算出」の処置を行なってやれば、様々な光学系の軸外光線などの任意の光線のまわりに近軸・収差解析ができるという効果がある。しかもその収差解析は従来の軸外としての取り扱いに比べて低次の収差解析でより多くの収差状況がわかるという効果も持つ。
【0215】
更に、この評価を行なう光線を一つの光学系あたり複数個(たとえば、違う複数の画角の主光線)とることも可能であるので、必要に応じて「共通評価面に対する物体面、像面の傾きおよびデフォーカス変換」を行なってやれば、評価を行なう光線が一つの光学系あたり複数個あっても、共通の評価基準で収差の状況を見ることができるようになるという重要な効果もある。
【0216】
【発明の効果】
本発明によれば、Off-Axial面が複数といった一般的なOff-Axial光学系の場合においても近軸・収差解析を厳密にしかも体系的に行なえるようにする解析手法の体系を完成させ、その解析体系に基づく光学処理方法およびそれを用いた光学処理装置を達成することができる。
【0217】
この他本発明によれば、その解析体系を使ってアジムスに依存性の構造を解き明かしてより少ない基本量ですべてのアジムスでの近軸・収差特性を表現できる体系を完成させ、その体系に基づく光学処理方法をおよびそれを用いた光学処理装置や、更に、そうして構築された解析体系をより敷衍化して、一般的な光学系の総合的近軸・収差論的評価できる光学処理方法およびそれを用いた光学処理装置等を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る3つのアジムスを説明する図
【図2】本発明の一実施例に係る物体面内での光線の通過点を説明する図
【図3】本発明の一実施例に係る入射瞳面内での光線の通過点を説明する図
【図4】本発明の一実施例に係る像面上での収差の分解を説明する図
【図5】本発明の一実施例に係る偏向前の光線基本4元ベクトルの成分の図示
【図6】本発明の一実施例に係る偏向後の光線基本4元ベクトルの成分の図示
【図7】本発明の一実施例に係る処理装置のブロック図の例
【図8】本発明の一実施例に係る処理アルゴリズムの例
【図9】本発明の一実施例に係る処理アルゴリズムの別の例
【図10】本発明の一実施例に係る処理アルゴリズムの更に別の例
【図11】折れ曲がった基準軸とOff-Axial光学系を説明する図
【図12】共軸回転対称光学系(の収差論)とOff-Axial光学系(の収差論)の関係を示す図
【符号の説明】
11 CPU
12 システムバス
13 メインメモリ
14 キーボード
15 マウス
16 キーインターフェイス
17 ネットワークインターフェイス
18 ネットワーク
19 I / O インターフェイス
20 ハードディスク装置
21 フロッピーディスク装置
22 ディスクインターフェイス
23 プリンタ
24 プリンタインターフェイス
25 表示装置
26 表示インターフェイス

Claims (6)

  1. 光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の点から像面に至るまで、ある波長の光線を通し、物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで、光線通過点の成分分解に基づく光線通過点4元ベクトル及び収差4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいて近軸・収差解析を行なうことを特徴とする光学処理方法。
  2. 光学データが与えられた光学系に対して、物体面上の点から像面に至るまで、ある波長の光線を通し、物体面から像面に至るその波長の光線の光路のまわりで、光線基本4元ベクトルを導入した解析手法にもとづいて近軸・収差解析を行なうことを特徴とする光学処理方法。
  3. 前記光学データが与えられた光学系は、基準軸が交わる点の面法線と該基準軸とが一致しないOff-Axial曲面を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学処理方法。
  4. 前記光学データが与えられた光学系は、回転対称光学系であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学処理方法。
  5. 請求項1乃至のいずれか1項記載の光学処理方法を用いていることを特徴とする光学処理装置。
  6. 請求項1乃至のいずれか1項記載の光学処理方法を記録したことを特徴とするコンピュータで読取り可能な記録媒体。
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