JP4272778B2 - 結晶薄膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は結晶薄膜の製造方法に関し、特に結晶相の秩序度を向上させた結晶薄膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子性結晶はその分子の電子的・幾何学的構造とパッキングにより超伝導体、効率的な光伝導体、気体センサーなど、有用なデバイス材料として期待できる。その生成方法は溶液成長、溶融成長が一般的に行われている。しかしながら、それ等のいずれの場合にも薄膜状の単結晶を得ることは難しくデバイスとして用いることへの障害となる。これ以外の方法として気相成長法があるが、その界面の影響から均一な薄膜をつくることは難しい。
【0003】
又高次液晶相であるSmB相,SmE相の分子配向を利用してキャリア輸送特性の改善が報告されている。(「応用物理」第68巻、第1号、26〜32頁(1999年)これは高次相の配向秩序を利用して電子、ホールの高速移動を狙ったものである。そして、これは高次スメクティク相の配向により芳香族環の規則正しいパッキングにより電子、ホールの流れるパスが形成されているためと考えられている。この特性はEL素子のキャリア輸送層としても注目されており、さらなる改善が期待されている。このためには欠陥のない(キャリアトラップの無い)結晶状態が必要になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な従来技術に鑑みてなされたものであり、デバイスに用いることができる分子性単結晶薄膜を容易に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、有機化合物を結晶からIso相又はネマティック相に相転移する臨界温度Tc近傍まで昇温し、1つまたは複数の結晶核を残して該結晶核の部分以外の部分をIso相またはネマティック相とした後、降温して前記結晶核を種結晶として結晶成長させることを特徴とする結晶薄膜の製造方法である。
【0006】
前記結晶成長を1対の基板間で行うことが好ましい。
前記有機化合物が棒状分子または円盤状分子であることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶薄膜の製造方法は、昇温過程で結晶から直接Iso相またはネマティック相に転移する有機化合物を降温過程における結晶化温度まで冷却し、その後、結晶からIso相又はネマティック相に相転移する臨界温度Tc近傍まで昇温し、1つまたは複数の結晶核を残し、該結晶核の部分以外の部分をIso相またはネマティック相とし、その後降温して前記結晶核を種結晶として結晶成長させることを特徴とする。
【0008】
更に好ましくは結晶成長を1対の基板間で行い、結晶相の秩序度を向上させる手法である。
【0009】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の製造方法に用いる基本的なセルの構造を示す説明図である。本発明にかかる有機化合物である液晶化合物及び配向制御について説明する。図1において、1aと1bはガラス基板であり、それぞれのガラス基板にIn2 O3 やITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極2a,2bが形成されている。その上に厚さ50〜1000Åの配向制御膜3a,3bがそれぞれ積層されている。配向制御膜3a,3bは界面での導電性を必要とし、また配向制御する全面での一軸性を必要としない場合は無くてもよい。ガラス基板1a、1b間には、スペーサー5によりセルの間隔を一定に保ち、液晶層4が設けられている。
【0010】
先に述べたように有機化合物の結晶の薄膜化は、素子の構成要素として有機物結晶を用いるためには重要である。本発明では上記の結晶性薄膜の形成を、昇温過程で結晶から直接Iso相またはネマティック相に転移する有機化合物を降温過程における結晶化温度まで冷却し、その後昇温し、1つまたは複数の結晶核を残し、該結晶核以外の部分をIso相またはネマティック相とし、その中で前記結晶核を種結晶として結晶成長させることを特徴とする結晶薄膜形成方法で達成する。
【0011】
又本発明の特徴としては、通常の結晶状態への降温過程で形成した不均一な結晶状態を、昇温過程での結晶→ネマティック相、結晶→アイソトロピック相(Iso相)の臨界温度Tc(転移温度)近傍に昇温することにより、秩序度の高い結晶状態のみを核として残し、その結晶状態を種結晶として残すことにより、その後の徐冷により秩序度の高い広範囲な結晶状態を形成できる。
【0012】
本願の構成に用いることができる有機結晶薄膜の形成素材の有機化合物としては、棒状分子または円盤状分子が好ましく、例えば以下のような材料を用いることができる。但しここに記載された材料に限定されるものではない。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
上記(3)で示される化合物のRと相転移温度(℃)を下記の表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【化4】
【0019】
次に、本発明における上記の液晶(1)の結晶核からの結晶成長過程を、図2〜5に基づいて説明する。
【0020】
図2は、本発明における液晶(1)をIso相→ネマティック相→結晶相の順で冷却したのみの不均一な状態の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(100倍)である。図3は、図2の液晶(1)の結晶核の構造を示す電子顕微鏡写真(200倍)である。図4は、図3の結晶核の成長過程の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(200倍)である。図5は、図4の結晶の成長過程の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(200倍)である。
【0021】
図2〜5において、液晶(1)を例にして結晶核からの結晶成長過程の説明をすると、図2に示すような不均一な結晶状態をネマティック相に相転移する臨界温度Tc近傍まで昇温する事により、図3に示されるようなネマティック相中に結晶核を残すことができる。この場合、図2で示した不均一結晶の中の微少量域の単結晶が核として残るものと思われる。この単結晶を核として図4および図5で示したように徐冷過程で単結晶を成長させていくことにより、秩序度の高い広範囲な結晶状態を形成することができる。
【0022】
【実施例】
実施例1
ガラス基板上にスパッタで膜厚700ÅのITOの透明導電膜を設け、その上に膜厚200Åの下記の構造式で示すポリイミド配向膜(1)を、下記の構造式で示すポリアミック酸(1)/NMP溶液をスピンコート塗布し、200℃で焼成して設けた。その2つの基板間に平均粒径2.4μmのビーズスペーサーを設け、2.0μmのセル厚のセルを作製した。
【0023】
そのセルに下記の構造式で示す液晶(1)をネマティック相(130℃)で注入し、1℃/minで室温まで冷却した。結晶相(30℃)では結晶方位のそろっていない結晶状態の配向が得られた。その後、74.5℃まで昇温する事により、ネマティック相の中に種結晶を残すことができた。この結晶を核として徐冷する事により広い面積で均一な有機薄膜結晶を得ることができた。
【0024】
【化5】
【0025】
実施例2
前記実施例1と同様のセルを用いて、下記の構造式で示す液晶(2)をアイソトロピック相(80℃)で注入し、1℃/minで室温まで冷却した。結晶相(50℃)では結晶方位のそろっていない結晶状態の配向が得られた。その後、74.1℃まで昇温する事により、アイソトロピック相の中に種結晶を残すことができた。この結晶を核として徐冷する事により広い面積で均一な有機薄膜結晶を得ることができた。
【0026】
【化6】
【0027】
比較例1
前記実施例1と同様のセルを用いて、下記の構造式で示す液晶(5)をアイソトロピック相(80℃)で注入し、1℃/minで室温まで冷却した。結晶相(50℃)では図2の様な結晶方位のそろっていない結晶状態の配向が得られた。その後、66℃まで昇温するとスメクティック相に転移してしまうためネマティック相の中に種結晶を残すことができなかった。
【0028】
【化7】
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、液晶の配向性を利用して単結晶薄膜を形成することができる。これによりデバイスに対しての構成要素としての有機単結晶薄膜を簡便に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる基本的なセルの構造を示す説明図である。
【図2】本発明における液晶(1)をIso相→ネマティック相→結晶相の順で冷却したのみの不均一な状態の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(100倍)である。
【図3】図2の結晶核の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(200倍)である。
【図4】図3の結晶核の成長過程の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(200倍)である。
【図5】図4の結晶の成長過程の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(200倍)である。
【符号の説明】
1a,1b ガラス基板
2a,2b 透明電極
3a,3b 配向制御膜
4 液晶層
5 スペーサー
Claims (4)
- 有機化合物を結晶からIso相又はネマティック相に相転移する臨界温度Tc近傍まで昇温し、1つまたは複数の結晶核を残して該結晶核の部分以外の部分をIso相またはネマティック相とした後、降温して前記結晶核を種結晶として結晶成長させることを特徴とする結晶薄膜の製造方法。
- 前記結晶成長を1対の基板間で行うことを特徴とする請求項1記載の結晶薄膜の製造方法。
- 前記有機化合物が棒状分子であることを特徴とする請求項1記載の結晶薄膜の製造方法。
- 前記有機化合物が円盤状分子であることを特徴とする請求項1記載の結晶薄膜の製造方法。
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