本発明に係るモールド部を構成するホットメルト組成物において、前記マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が5〜25重量%、前記C9水添石油樹脂が15〜50重量%、前記アモルファスポリオレフィンが30〜55重量%、及びスチレンエチレンプロピレンスチレンゴムが1〜20重量%であることが好ましく、特に前記マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が10〜20重量%、前記C9水添石油樹脂が35〜40重量%、前記アモルファスポリオレフィンが35〜50重量%、及びスチレンエチレンプロピレンスチレンゴムが5〜15重量%であることがより好ましい。
マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂をマレイン酸又は無水マレイン酸によって変性処理されたものであり、この変性処理は、従来から知られている方法によって行なうことができる。例えば、単軸混練押出機または二軸混練押出機を用いて、ポリオレフィン樹脂にマレイン酸または無水マレイン酸を過酸化物とともに加えて混練し、グラフト反応を行なうことにより得ることができる。マレイン酸変性率は、マレイン酸基換算で1〜10重量%であることが好ましい。本発明に係るホットメルト組成物に用いられるマレイン酸変性ポリレフィン樹脂としては、例えばマレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレンなどがある。
C9水添石油樹脂は、石油のC9留分であるスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンを単独または2以上共重合して得られるC9石油樹脂に部分水素添加又は完全水素添加されたものであり、水素添加は、従来から知られている方法によって行なうことができる。水添の程度は、他の材料との相溶性、耐候性、耐熱性及び色調から完全水素添加のC9石油樹脂が好ましい。本発明に係るホットメルト組成物に用いられるC9水添石油樹脂としては、例えばイ−ストマンケミカル社製リガライトRタイプ、荒川化学社製アルコンPタイプ及びMタイプなどがある。
アモルファスポリオレフィンは、プロピレン単独あるいはプロピレンと他のオレフィンを共重合した非晶性のオレフィン系ポリマーであり、これらの分子量は、1000〜100000程度のものが適当である。本発明に係るホットメルト組成物に用いられるアモルファスポリオレフィンとしては、例えばチッソ社製ビスタック、三洋化成社製ビスコール、デグサ社製ベストプラストなどのアモルファスポリプロピレンがある。
本発明に係るモールド部に使用されるホットメルト組成物は、これらマレイン酸変性オレフィン樹脂、C9水添石油樹脂、アモルファスポリオレフィン及びスチレンエチレンプロピレンスチレンゴムを混合することにより得ることができ、混合装置としては、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などが用いられる。
以下、添付の図面を参照して、この発明の好ましい実施の形態を説明する。
図1〜図3は、この発明の第1の実施形態に係る圧接コネクタを示す斜視図、図4は、この圧接コネクタのリテーナの展開斜視図、図5は、図3のA−A´断面図、図6は、図3のB−B´断面図である。
圧接コネクタ1は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリアミド(PA)等の極性ポリマーからなるコネクタハウジング10と、このコネクタハウジング10に装着(嵌合)されると共に嵌合前の状態ではフラットケーブル40を嵌合方向と交差する面内に沿って直線状に保持する同じく極性ポリマーからなるリテーナ20とを備え、更にこれらの嵌合部分にコネクタハウジング10及びリテーナ20を封止固定する後述する樹脂モールド部80(図3参照)を形成して構成されている。
コネクタハウジング10は、金属製の複数の圧接端子30を内部に収容する複数の端子収容孔11(図5及び図6参照)と、ハウジング先端側に圧接端子30と接続する相手方接続端子(図示せず)を内部に収容した他のコネクタハウジングと嵌合するハウジング嵌合部12(図5及び図6参照)と、ハウジング基端側に端子収容孔11と連通し環状のリテーナ嵌合壁13が形成された、リテーナ20が内部に嵌合するリテーナ嵌合部14とを備えて構成されている。
なお、リテーナ20に保持されるフラットケーブル40は、この例ではポリエチレン(PE)及びポレオレフィン(PO)等の非極性ポリマーからなる絶縁被覆41に、Cu、Al等の丸型導体の単線又は撚り線等の芯線42が覆われた複数の電線43を平面状に並設し、各電線43間を絶縁被覆41と同じく絶縁樹脂からなるブリッジ部44で連結した構造からなり、可撓性を備える。そして、圧接端子30の後述する圧接部との圧接を容易にするために、少なくともリテーナ20に保持される部分には、ブリッジ部44に該当する部分にスリット45が形成されている。ここで、このフラットケーブル40としては、単体からなる複数の電線43を平面状に並設したものでも良い。
また、コネクタハウジング10の端子収容孔11に収容される圧接端子30は、図5に示すように、例えば相手方接続端子が嵌合する筒状の接続端子部31と、この接続端子部31の基端側に形成されフラットケーブル40の電線43が挿入されるスリット部32を有する圧接部33と、これら接続端子部31及び圧接部33の間を両者が同一直線上に並ばないように連結する連結部34とを備えて構成されている。なお、接続端子部31には、例えば相手方接続端子との接続状態を良好にするための弾性接触片35が形成されている。
リテーナ20は、コネクタハウジング10のリテーナ嵌合部14への嵌合時にフラットケーブル40をその嵌合方向に対して直交する面と平行に保持する枠状のケーブル保持部21と、このケーブル保持部21から突設されコネクタハウジング10の端子収容孔11を塞ぐように端子収容孔11に挿入される収容孔挿入柱部22とを備えて構成されている。この例のケーブル保持部21は、例えばフラットケーブル40を介して対向配置されフラットケーブル40をその厚さ方向に挟み込んで挟持固定する矩形枠状の第1及び第2挟持部材23,24(図4参照)と、これら第1及び第2挟持部材23,24の一方の端部同士を結合するヒンジ部25と、第1及び第2挟持部材23,24の他方の端部同士を係合して固定する係合部26とを一体的に形成して構成されている。なお、係合部26は、第1挟持部材23のヒンジ部25側と反対側の端部に形成された係合凹部27と、第2挟持部材24のヒンジ部25側と反対側の端部に形成された、係合凹部27と係合する係合突起部28を有する係合片部29とから構成されている。ここで、第1及び第2挟持部材23,24は、ヒンジ部25で一体的に連結された構造以外に両者を着脱可能に分割することができる構造からなるものでも良い。
このケーブル保持部21の第1挟持部材23には、例えば後述する樹脂モールド部50を形成するモールド樹脂を充填するための注入開口部23aが形成され、第2挟持部材24には、例えば圧接端子30の圧接部33にフラットケーブル40の電線43を挿入して圧接するための端子側開口部24aが形成されている。そして、第1及び第2挟持部材23,24のそれぞれの対向端部には、例えばフラットケーブル40を構成する各電線43の被覆外周径に合わせて形成された各電線43の芯線方向に延びると共に各電線43の配列方向に複数配列形成された固定溝部21cが備えられている。
また、このケーブル保持部21の第1挟持部材23の一対の側面には、フラットケーブル40の電線43の被覆外周径に合わせて形成されたリテーナ側凹部21aが複数形成されており、コネクタハウジング10のリテーナ嵌合部14におけるこれらリテーナ側凹部21aと対向するリテーナ嵌合壁13の一対の内壁面には、同じくフラットケーブル40の電線43の被覆外周径に合わせて形成されたハウジング側凹部13aが複数形成されている。これらリテーナ側凹部21a及びハウジング側凹部13aでリテーナ20のリテーナ嵌合部14への嵌合時にケーブル保持部21がその嵌合方向に対して直交する面と平行に保持していたフラットケーブル40を図2に示すように屈曲した状態に保持するため、圧接端子30の圧接部33とフラットケーブル40の電線43との圧接部分に対していわゆるストレインリリーフ構造を具備させることが可能となる。
なお、ケーブル保持部21とリテーナ嵌合壁13におけるリテーナ側凹部21aとハウジング側凹部13aとが形成された以外の側面及び内壁面には、リテーナ係止部が形成されている。このリテーナ係止部は、例えばケーブル保持部21の第1挟持部材23の側面に形成されたリテーナ係止突起21bと、リテーナ嵌合壁13の内壁面に形成されたリテーナ係止突起21bと係合するリテーナ係止凹部13bとから構成されている。このリテーナ係止部により、リテーナ20とコネクタハウジング10との嵌合状態を確実に継続させることができる。なお、リテーナ係止部19が無い場合でも電線43と圧接部33との圧接によりリテーナ20はリテーナ嵌合部14に固定される。
こうして、フラットケーブル40を保持したリテーナ20をコネクタハウジング10のリテーナ嵌合部14に嵌合し、リテーナ20とリテーナ嵌合部14とを電線43と圧接部33との圧接部分と共に樹脂モールド部50で封止固定すれば、リテーナ20とコネクタハウジング10とを更に確実に固定することができる。このとき、モールド樹脂はリテーナ20のケーブル保持部21の第1挟持部材23に形成された注入開口部23aからリテーナ嵌合部14内を満たすように充填される。
ここで、樹脂モールド部50は、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、C9水添石油樹脂、アモルファスポリオレフィン及びスチレンエチレンプロピレンスチレンゴムを主成分とするホットメルト組成物により形成されているので、非極性ポリマー、極性ポリマーの両方に対して良好な接着性を有し、導体と圧接端子との接続部分への高い防水性と衝撃などに対する高い耐久性を確保することができる。
なお、リテーナ20にはケーブル保持部21の第2挟持部材24に、端子収容孔11を塞ぐ収容孔挿入柱部22が備えられているため、注入開口部23aから充填されたモールド樹脂が端子収容孔11内に入り圧接端子30の嵌合接続部31を塞いでしまう不具合が発生することはない。また、収容孔挿入柱部22が端子収容孔11に収容された圧接端子30を端子収容孔11の内孔面に押さえ付けるため、圧接端子30をコネクタハウジング10に確実に固定することができる。
このように構成された圧接コネクタ1では、フラットケーブル40を保持したリテーナ20をコネクタハウジング10に装着するだけで、フラットケーブル40の電線43を圧接端子30の圧接部33に挿入して圧接することができると共に、圧接端子30をコネクタハウジング10に固定することができる。また、フラットケーブル40を屈曲した状態で保持し、いわゆるストレインリリーフ構造を具備することができるため、圧接作業を容易にしつつフラットケーブル40への引っ張り力に強い圧接コネクタ1を実現することができる。
なお、図3に示すように、リテーナ20とコネクタハウジング10とで屈曲状態に保持されたフラットケーブル40をリテーナ嵌合壁13の周縁部で再び折り曲げるようにすれば、更に強いストレインリリーフ構造を具備することができる。また、図5に示すように、圧接コネクタ1は、リテーナ嵌合壁13の外壁面に嵌る壁部61を有するリテーナ嵌合部14を覆う形状の蓋部60を更に備えて構成されていても良い。蓋部60を備えれば、リテーナ20とコネクタハウジング10との嵌合部分を保護することができる。この場合、蓋部60には、リテーナ嵌合壁13の内壁面のハウジング側凹部13aとケーブル保持部21の側面のリテーナ側凹部21aとで屈曲状態に保持したフラットケーブル40をそのままの状態でコネクタハウジング10の基端方向に露出するための切欠部62や、180°折り返した状態でコネクタハウジング10の先端方向に露出するための間隙部63が形成されていても良い。切欠部62や間隙部63でリテーナ20によりコネクタハウジング10の圧接端子30に圧接されたフラットケーブル40の配線方向を、ストレインリリーフ構造を具備したまま任意の方向に変更したり設定したりすることが可能となる。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る圧接コネクタを示す斜視図である。
この実施形態に係る圧接コネクタ2は、リテーナ20aの注入開口部23bがリテーナ20aの中央にH型に必要最小限度の大きさで形成されている。このようにすることで、注入開口部23bにモールド樹脂を注入して形成された樹脂モールド部70の必要量を削減すると共に、圧接コネクタ2の圧接部の保護を更に確実にすることができる。
図8〜図10は、本発明の第3の実施形態に係る圧接コネクタを示す図、図8は分解斜視図、図9は組立斜視図、図10は図9のC−C′断面図である。
この実施形態に係る圧接コネクタ3は、リテーナ20bの注入開口部23cが、先の2つの実施形態よりも更に小さく形成されていることに加え、コネクタハウジング10aの端子収容孔11に収容された圧接端子30をコネクタハウジング10aに固定するための端子リテーナ80を備えている。
端子リテーナ90は、弾性を有する樹脂成形部材からなり、コネクタハウジング10aのコネクタ嵌合部12の側壁に形成された後述する端子リテーナ挿入穴部に圧入され、端子収容孔11に収容された圧接端子30の接続端子部31の基端側端部と係合して端子リテーナ挿入穴部及び端子収容孔11を隙間無く塞ぐ棒状圧入部81と、この棒状圧入部81と平行に配置されコネクタ嵌合部12の側壁に係止する棒状係止部82と、これら棒状圧入部81及び棒状係止部82を連結する連結部83とを備えて構成されている。一方、コネクタハウジング10aの側壁には、この側壁と端子収容孔11とを連通する端子リテーナ挿入穴部(図示せず)が形成されている。
従って、図10に示すように、この圧接コネクタ3では、端子収容孔11に収容した圧接端子30を、端子リテーナ80を端子リテーナ装着穴部に装着し、棒状圧入部81を端子リテーナ挿入穴部に圧入することにより、棒状係止部82がコネクタ嵌合部12の側壁に係止すると共に棒状圧入部81が圧接端子30の接続端子部31の基端側端部と係合することでコネクタハウジング10aに確実に固定することができる。このとき、コネクタ嵌合部12に装着された端子リテーナ80の棒状圧入部81は、端子収容孔11及び端子リテーナ挿入穴部を隙間無く塞ぐため、圧接端子30の圧接部33とフラットケーブル40の電線43との圧接部分を樹脂モールドにより封止固定する場合に、端子収容孔11内に流れ込んだモールドが接続端子部31内に入り込んでしまったり、端子リテーナ挿入穴部を通ってコネクタ嵌合部12の外側に流出してしまったりすることによる不具合を確実に防止することができる。
ところで、例えば図11に示すように、従来は図示しない自動車等に配索されたワイヤハーネス100に後から補機としてのフォグランプ110,120を接続しようとする場合、以下のように行われていた。
即ち、予めワイヤハーネス100から分岐させた分岐配線111,121の各先端にコネクタ112,122を備え、これらをワイヤハーネス100にいわゆるオプション止めという形態でテープ等により仮止めし、実際のフォグランプ110,120との接続の段階でその分岐配線111,121及びコネクタ112,122の仮止めを解除してコネクタ112,122を直接フォグランプ110,120と嵌合し接続していた。
しかし、このような方式では、分岐配線111,121のそれぞれにコネクタ112,122が必要となるため、コストダウンを図り難かった。これに対し、例えばコネクタハウジング10,10a及びリテーナ20,20a,20bを備える本発明の圧接コネクタ1,2,3を用いて複数のフォグランプ110,120で共用するようにすれば、図12に示すように、フォグランプ130,140からの分岐配線131,141を1つのコネクタ132にまとめた状態で圧接コネクタ1,2,3と接続し、フォグランプ130,140をワイヤハーネスとしてのフラットケーブル40に接続することが可能となる。
このため、図12に示すように、この圧接コネクタ1,2,3と外部コネクタとしてのコネクタ132とを用いた配線体150では、分岐配線131,141毎に(即ち、補機の数にかかわらず)コネクタ132の数を増やすことなく1対1で接続が可能となるため、コストダウンを図ることが可能となると共に、圧接コネクタ1,2,3やコネクタ132を汎用部品とすれば、高い汎用性を実現することが可能となる。
図13及び図14は、この発明の第4の実施形態に係る圧接端子及びシール材の固定構造を説明するための圧接コネクタの分解斜視図、図15は、図14のD−D´断面図、図15は、図14のE−E´断面図である。
圧接コネクタ4は、図示しない相手方コネクタが嵌合される凸型のコネクタ嵌合部214を有すると共にこのコネクタ嵌合部214の内側に端子収容孔211が形成されたコネクタハウジング210と、このコネクタハウジング210の端子収容孔211に装着されて相手方コネクタと電気的に接続されると共に例えばケーブルとしてのフラットケーブル240の電線243と圧接される金属製の圧接端子220と、コネクタ嵌合部214の外周面に装着されて相手方コネクタがコネクタハウジング210に完全嵌合された状態で両者の間を液密状態に保つ弾性体のシール材229と、圧接端子220が装着されて圧接端子220と共に端子収容孔211に収容される端子保持部材230と備えて構成されている。また、この例の圧接コネクタ4は、コネクタハウジング210に嵌合され嵌合前の状態ではフラットケーブル240を嵌合方向と交差する方向に沿って直線状に保持すると共に、圧接端子220にフラットケーブル240の電線243を挿入して圧接するためのリテーナ250と、このリテーナ250とコネクタハウジング210との嵌合部分をフラットケーブル240の電線243と圧接端子230との圧接部分と共に封止固定する樹脂モールド部270とを更に備えて構成されている。
コネクタハウジング210は、先の実施例と同様の樹脂成型部材からなり、コネクタ嵌合部214の他に、更に端子収容孔211と連通し環状のリテーナ嵌合壁213を有するリテーナ250が内部に嵌合されるリテーナ嵌合部212を備えている。
リテーナ250に保持されるフラットケーブル240は、この例では先の実施形態と同様の材料からなる絶縁被覆241に芯線242が覆われた複数の電線243を平面状に並設し、各電線243間を絶縁被覆241と同じく絶縁樹脂からなるブリッジ部244で連結した構造からなり、可撓性を備えるものである。そして、圧接端子220の後述する圧接部との圧接を容易にするために、少なくともリテーナ250に保持される部分には、ブリッジ部244に該当する部分にスリット245が形成されている。
また、コネクタハウジング210の端子収容孔211に収容される圧接端子220は、例えば相手方コネクタの接続端子が嵌合する筒状の接続端子部221と、この接続端子部221の基端側に形成されフラットケーブル240の電線243が挿入されるスリット部222を有する圧接部223と、これら嵌合接続部221及び圧接部223の間を両者が同一直線上に並ばないように連結する端子本体部224とを備えて構成されている。なお、嵌合接続部231には、例えば相手方コネクタの接続端子との接続状態を良好にするための弾性接触片225が形成されている。
リテーナ250は、コネクタハウジング210のリテーナ嵌合部212への嵌合時にフラットケーブル40をその嵌合方向に対して直交する面と平行に保持する板状のケーブル保持部251を備えて構成され、この例のケーブル保持部251は、例えばフラットケーブル240を介して対向配置されフラットケーブル240をその厚さ方向に挟み込んで挟持固定する矩形板状の第1及び第2挟持部材252,253と、これら第1及び第2挟持部材252,253の一方の端部同士を結合するヒンジ部254と、第1及び第2挟持部材252,253の他方の端部同士を係合して固定する係合部255とを一体的に形成して構成されている。なお、係合部255は、第1挟持部材252のヒンジ部254側と反対側の端部に形成された係合凹部256と、第2挟持部材253のヒンジ部254側と反対側の端部に形成された、係合凹部256と係合する係合突起部257を有する係合片部258とから構成されている。ここで、第1及び第2挟持部材252,253は、ヒンジ部254で一体的に連結された構造以外に両者を着脱可能に分割することができる構造からなるものでも良い。
このケーブル保持部251の第1挟持部材252には、例えば樹脂モールド部270を形成するモールド樹脂をリテーナ嵌合部212内に充填するための注入開口部252aが形成され、第2挟持部材253には、例えば圧接端子220の圧接部23にフラットケーブル240の電線243を挿入して圧接するための図示しない端子側開口部が形成されている。そして、第1及び第2挟持部材52,53のそれぞれの対向端部には、例えばフラットケーブル240を構成する各電線243の被覆外周径に合わせて形成された各電線243の芯線方向に延びると共に各電線243の配列方向に複数配列形成された図示しない固定溝部が備えられている。
また、このケーブル保持部251の第1挟持部材252の側面には、フラットケーブル240の電線243の被覆外周径に合わせて形成されたリテーナ側凹部259が複数形成されており、コネクタハウジング210のリテーナ嵌合部212におけるこれらリテーナ側凹部259と対向するリテーナ嵌合壁213の一対の内壁面には、同じくフラットケーブル240の電線243の被覆外周径に合わせて形成されたハウジング側凹部219が複数形成されている。これらリテーナ側凹部259及びハウジング側凹部219でリテーナ250のリテーナ嵌合部212への嵌合時にケーブル保持部251がその嵌合方向に対して直交する面と平行に保持していたフラットケーブル240を、図15に示すように屈曲した状態に保持することができる。このため、この圧接コネクタ4では、圧接端子220の圧接部223とフラットケーブル240の電線243との圧接部分に対していわゆるストレインリリーフ構造を具備させることが可能となる。
なお、ケーブル保持部251とリテーナ嵌合壁213におけるリテーナ側凹部259とハウジング側凹部219とが形成された以外の側面及び内壁面には、リテーナ係止部が形成されている。このリテーナ係止部は、例えばケーブル保持部251の第1挟持部材252の側面に形成されたリテーナ係止突起252bと、リテーナ嵌合壁213の内壁面に形成されたリテーナ係止突起252bと係合する図示しないリテーナ係止凹部とから構成されている。このリテーナ係止部により、リテーナ250とコネクタハウジング210との嵌合状態を確実に継続させることができる。
一方、コネクタハウジング210のコネクタ嵌合部214の側壁には、端子収容孔211とコネクタ嵌合部214の外側とを連通する係合穴部215が形成されている。そして、端子保持部材230には、端子収容孔211に収容された状態でコネクタ嵌合部214の係合穴部215に係合する突起部231を有する係合片部232が形成されている。この端子保持部材230の係合片部32は、端子保持部材230が端子収容孔211に収容された状態で、シール材229を突起部231の先端に引っ掛けることによりコネクタ嵌合部214に係止固定する。このため、端子保持部材230で圧接端子220をコネクタハウジング210に取付固定すると共にシール材229を同時に係止固定することが可能となる。なお、相手方コネクタとコネクタ嵌合部214の嵌合部分はシール材229により液密状態に保たれる。
従って、一部材である端子保持部材230をコネクタハウジング210の端子収容孔211に装着するだけで圧接端子220とシール材229の両者を同時且つ一度に確実に圧接コネクタ4に固定することが可能となり、作業工数の削減に基づくコストダウンなどを図ることができるようになる。
なお、この例では端子保持部材230が、圧接端子220と共に端子収容孔211の挿入側開口部を隙間無く塞ぐ形状で形成された樹脂成型部材からなるため、リテーナ250のケーブル保持部251の注入開口部252aから充填された樹脂モールド部270を形成するモールド樹脂が端子収容孔211内に入り圧接端子220の嵌合接続部221を塞いでしまう不具合等が発生することはない。
このように構成された圧接コネクタ4では、フラットケーブル240を保持したリテーナ250をコネクタハウジング210に装着するだけで、フラットケーブル240の電線243を圧接端子220の圧接部223に挿入して圧接することができると共に、フラットケーブル240を屈曲した状態で保持していわゆるストレインリリーフを具備することもできる。従って圧接作業を容易にしつつフラットケーブル240への引っ張り力に強い圧接コネクタ4を実現することができる。そして、上述したように端子保持部材230を用いて圧接端子220及びシール材229を一度に確実に圧接コネクタ4に固定することが可能となる。
なお、圧接コネクタ4は、リテーナ嵌合壁213の外壁面に嵌る蓋部291を有するリテーナ嵌合部212を覆う形状の蓋部290を更に備えて構成されていても良い。蓋部290を備えれば、リテーナ250とコネクタハウジング210との嵌合部分を保護することができる。ここで、図15に示すように、この蓋部290に切欠部292を形成してリテーナ250とコネクタハウジング210とで屈曲状態に保持されたフラットケーブル240をリテーナ嵌合壁213の周縁部で再び折り曲げるようにすれば、更に強いストレインリリーフ構造を具備することも可能である。
図17は、本発明の第5の実施形態に係る圧接コネクタを示す分解斜視図、図18は、この圧接コネクタのインナホルダ挿着前の様子を示す外観斜視図、図19は、この圧接コネクタのインナホルダ挿着後の様子を示す外観斜視図、図20は、この圧接コネクタの外観斜視図、図21は、この圧接コネクタの断面図である。
圧接コネクタ4は、主に例えば芯線342が絶縁被覆341に覆われた構造からなる複数の電線340と、これら複数の電線340と圧接される金属製の複数の圧接端子320と、PBT樹脂などの極性ポリマーの樹脂成型部材からなり複数の圧接端子320を内部に収容するコネクタハウジング310と、このコネクタハウジング310に内装されるインナホルダ(リテーナに相当)350と、コネクタハウジング310のインナホルダ350の内装部分に形成されるホットメルト樹脂接着剤組成物からなる防水樹脂部330(図20及び図21参照)とを備えて構成されている。
複数の電線340は、各電線を束ねた形態のいわゆるワイヤハーネスでも各電線を平面状に並設した形態のいわゆるフラットハーネスでも良い。また、この例ではコネクタハウジング310は、いわゆるレセプタクル型だが、プラグ型であっても良い。
複数の圧接端子320は、先端側に形成されて相手方コネクタハウジング900に収容された図示しない相手方接続端子と接続可能な筒状の接続部321と、基端側に形成されて複数の電線340がそれぞれ圧接される圧接部323と、これら接続部321及び圧接部323の間を連結する端子本体部322とを備えて構成され、この端子本体部322は、クランク状に折り曲げられた構造を備えている。
なお、複数の圧接端子320の接続部321は、ここでは筒状のいわゆる雌型の接続部であるが、相手方接続端子の接続部の形状如何により、いわゆる雄型の接続部であっても良い。
これら複数の圧接端子320の圧接部323は、複数の電線340がそれぞれ挿入された場合にそれらの絶縁被覆341を破り芯線342と接続するスリット部324を有する構造からなる。
コネクタハウジング310は、複数の圧接端子320をそれぞれ内部に収容する複数の端子収容孔311と、相手方コネクタハウジング900と嵌合するハウジング嵌合部312と、このハウジング嵌合部312の外周側に形成されたハウジング嵌合壁313とを備えて構成され、この例では複数の端子収容孔311はハウジング嵌合部312の内部に形成されている。
なお、ハウジング嵌合部312の外壁基端側には、相手方コネクタハウジング900との嵌合部分を防水するためのシール材314が装着され、各端子収容孔311内に収容された圧接端子320は、接続部321に形成されたかえし片321aが端子収容孔311の内周面の一部に形成された段部311a(図21参照)に引っ掛かることで係止固定される。
コネクタハウジング310の基端側には、各端子収容孔311と連通しインナホルダ350が挿着される凹状のホルダ挿着部315が形成されており、更にこのホルダ挿着部315と連続し複数の電線340をコネクタハウジング310の外部に導くための切欠状の電線導出部316が形成されている。
なお、この電線導出部316の図17中底面部所定範囲には、各電線340の被覆341の外周径に合わせて形成された保持溝部316aが備えられている。
そして、ホルダ挿着部315に挿着されコネクタハウジング310に内装されるインナホルダ350は、複数の壁部351,352,353を備えて構成されている。
インナホルダ350の第1壁部351は、コネクタハウジング310への挿着時に、各圧接端子320の端子本体部322をその端面351a(図21参照)でコネクタハウジング310に対して押えると共にホルダ挿着部315側の各端子収容孔311を塞ぐものである。
第2壁部352は、電線導出部316に嵌りその端面352aで各電線340を保持溝部316aに嵌め込むようにしてコネクタハウジング310に対して押えるものである。
第3壁部353は、ホルダ挿着部315のインナホルダ350挿入側開口部を塞ぐものであるが、インナホルダ350挿着後でもホルダ挿着部315にホットメルト樹脂接着剤組成物を充填可能とするための充填開口部354が形成されている。
なお、図18に示すように、インナホルダ350を図中矢印方向に移動してホルダ挿着部315に挿着し、図19に示すように、インナホルダ350をコネクタハウジング310のホルダ挿着部315に完全に内装した場合、例えばインナホルダ350の一部に形成された係合突起350aとコネクタハウジング310の一部に形成された係合穴部315aとが係合し、インナホルダ350はホルダ挿着部315に係止固定される。
こうしてインナホルダ350が挿着されたコネクタハウジング310のホルダ挿着部315には、各端子収容孔311への水分の浸入を第1壁部351と共に防ぎ、各電線340と各圧接部323との圧接部分を封止固定すると共に各電線340、インナホルダ350及びコネクタハウジング310相互間を強固に接着しホルダ挿着部315を密封する防水樹脂部330が形成されている。
この防水樹脂部330を形成するホットメルト樹脂接着剤組成物については、後述する。このようなホットメルト樹脂接着剤組成物からなる防水樹脂部330は、通常接着を両立させることが難しいとされる非極性ポリマー及び極性ポリマーの両方に良好に接着するため、この圧接防水コネクタ4では各電線340などのコネクタハウジング310への固定を確実にしつつ高い防水性能を備えることができる。
即ち、例えば複数の電線340の絶縁被覆341がノンハロゲン材などの非極性ポリマーからなり、コネクタハウジング310やインナホルダ350がPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂などの極性ポリマーからなる場合でも、絶縁被覆341と防水樹脂部330との界面間や防水樹脂部330とコネクタハウジング310及びインナホルダ350との界面間を強力に接着して防水を図ることが可能となる。
そして、この圧接防水コネクタ5では、インナホルダ350で各電線340や圧接端子320をコネクタハウジング310に対して押えたうえで防水樹脂部330によりホルダ挿着部315を密封する構造のため、高い防水性能の実現と接着性の向上を両立させると共に電線340と圧接端子320のコネクタハウジング310に対する固定を確実にすることが可能となる。
次に、以上の各実施形態での使用に適したホットメルト組成物の実施例について説明する。先ず、表1に示す樹脂1乃至5を2軸ニーダーを用いて200℃で溶融混練することによって実施例1乃至5に係るホットメルト組成物を得た。なお、実施例及び比較例においてホットメルト組成物の溶融粘度は、JIS K 6862に基づいてブルックフィ−ルド形粘度計を用いて180℃で測定し、軟化点は、JIS K 6863に基づいて測定した。
実験例1
次に、非極性ポリマーであるポリエチレン相互に対する実施例1乃至5に係るホットメルト組成物の接着性を検証するために、剥離試験をJIS K 6854(T型試験:剥離片はたわみ性材料同士)に基づいて行なった。剥離試験1は、初期状態で行なったものであり、剥離試験2は、120℃雰囲気下で24時間放置後、常温状態で行なったものであり、剥離試験3は、−40℃雰囲気下で24時間放置後の状態で行なったものであり、剥離試験4は、水中で沸騰1時間後の状態で行なったものである。これらの結果を表2に示す。
次に、比較例1として、ポリエステル系ホットメルト組成物、比較例2としてポリアミド系ホットメルト組成物(TRL社製、テルメルト865)、比較例3としてポリオレフィン系ホットメルト組成物(商品名マクロメルト Q5353、ヘンケル社製)、及び比較例4としてポリアミド系ホットメルト組成物(旭化学合成製、RN−254)を用意し、これらについても実施例1乃至5に係るホットメルト組成物と同様に剥離試験を行なった。その結果を表3に示す。
表2及び3から明らかなように、実施例1乃至5に係るホットメルト組成物の方が、比較例1乃至4に係るホットメルト組成物よりも非極性ポリマー相互に対する接着性が優れていることが分かる。
実験例2
次に、極性ポリマーであるPBT相互に対する実施例1乃至5に係るホットメルト組成物の接着性を検証するために、実験例1と同様に剥離試験をJIS K 6854によって行なった。その結果を表4に示す。
次に、実験例1で用いた比較例1乃至3に係るホットメルト組成物を用いても同様に2つのPBTの相互に対する接着性の試験を行なった。その結果を表5に示す。
表2乃至表5から明らかなことは、比較例1,2は、極性ポリマーであるPBT相互に対する接着性については比較的良好な接着性を示したものの、非極性ポリマー相互の接着性に劣り、比較例3は、非極性ポリマー相互の接着性については比較的良好な接着性を示したものの、極性ポリマー相互の接着性は著しく劣っているという点である。また、比較例4については、非極性ポリマー相互の接着性に劣るものであった。これに対し、実施例1乃至5に係るホットメルト組成物は、比較例1乃至4に係るホットメルト組成物と比較して、極性ポリマー相互、及び非極性ポリマー相互の接着性が何れも遜色なく良好であった。
次に、実施例1乃至5並びに比較例1乃至4に係るホットメルト組成物について、塩水耐圧リーク試験(防水限界試験)を行なった。塩水耐圧リーク試験は、図22に示すように、コネクタハウジング421に保持された圧接端子422をケーブル423の一端に装着し、圧接部をホットメルト組成物からなるモールド樹脂424でモールドすると共に、これをケーブル423の他端に接続された金属電極425と一緒に試験槽427内の塩化ナトリム水溶液426に浸漬して行う。この状態で、圧接端子422と金属端子425との間に標準抵抗429を介して直流電源430により直流電圧を印加して、標準抵抗429の両端の電圧を電圧計431で監視し、所定値以上のリーク電流が観測されるまでの時間を測定する。なお、試験は、恒温槽428の内部の温度サイクル環境下にて行なった。その結果を表6に示す。
表6から明らかなように実施例1乃至5に係るホットメルト組成物の方が比較例1乃至4に係るホットメルト組成物に比し防水限界、すなわち防水耐久性に優れていることが分かる。
1,2,3,4,5…圧接コネクタ、10,10a,210,310…コネクタハウジング、11,211,311…端子収容孔、14…リテーナ嵌合部、20,21a,21b,250…リテーナ、30,220,320…圧接端子、40,240,340…フラットケーブル、50,70,90,270,330…樹脂モールド部。