JP4270483B2 - カルバペネム系抗菌剤の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌活性を有する1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の製造方法、その有用な合成中間体である5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン及びその塩、並びに、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、優れた抗菌活性を有する1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤が種々知られている。例えば、特開平11-71277号公報には、1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤及びその製造方法が記載されている。しかし、当該公報に記載されている製造方法は、製造目的化合物であるカルバペネム系抗菌剤中の3つの部分構造を段階的に結合させているのに対して、本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の製造方法は、いわゆるワンポット合成により3つの部分構造を一段階で連続的に結合させている点において異なる。
【0003】
また、Heterocycles, 41巻, 147頁(1995年)には、窒素原子上に置換分を有しないピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤(メロペネム)及びその製造方法が記載されている。当該文献に記載されている製造方法と本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤を製造する方法の出発原料は、共に2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン誘導体である点で共通する。しかし、当該文献に記載されている製造方法の出発原料は、その構造中窒素原子上にカルボニル系の保護基であるp-ニトロベンジルオキシカルボニル基を有しており、当該窒素原子の求核性が弱められ、副反応が起こるのを防止しているのに対し、本発明に係る製造方法の出発原料は、その構造中窒素原子が求核性を有しており、その化学的性質が異なるものであるため、副反応やそれに伴う収率の低下が懸念された。更に、当該文献に記載されている合成例は非常に小スケールのもの(出発原料から69%の収率で、生成物315mgを製造した例。)であるので、当該文献に記載されているカルバペネム系抗菌剤の製法が本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の大量合成に応用できるか否かは明らかではなかった。
【0004】
また、2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン誘導体の製造方法も、種々知られている。例えば、2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンの窒素原子がアセチル基で保護された化合物及びその製法が、J.Org.Chem., 46巻, 4182頁(1981年)、及びChem.Pharm.Bull., 20巻, 543頁(1972年)に記載されている。しかし、当該文献に記載されている方法は、分子内環化工程においてN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドという非常に後処理に困難を伴う縮合剤を用いているため、大量合成に適したものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
カルバペネム系抗菌剤は、優れた抗菌活性を有する一方で、一般にその化学構造が複雑である。従って、本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤についても、より安価、容易、かつ安全性が高く大量合成にも適している合成経路の構築が求められていた。
【0006】
また、本発明に係る5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンは、上記目的を達成する1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の合成経路において非常に重要な中間体化合物であるが、当該化合物についても安価、容易、安全、かつ大量に製造できる方法が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者等は、1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の合成経路について種々検討したところ、5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン及びその塩を合成中間体として用いる本発明に係る合成経路が、上記課題を解決するのに優れた合成経路であることを見出した。
【0008】
また、本発明者等は、5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン及びその塩の製造方法についても種々検討したところ、シス−2−カルボキシル−4−メルカプト−1−アルキルピロリジン又はその塩を酸無水物存在下に分子内脱水縮合させる方法が、上記課題を解決するのに優れた合成経路であることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、
式
【0010】
【化9】
【0011】
[式中、R1は、C1−C3アルキル基を示す。]で表される化合物(1)又はその塩、式
【0012】
【化10】
【0013】
[式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は有機残基を示し、又は、R2及びR3は、それらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成してもよい。]で表される化合物(2)又はその塩、及び、式
【0014】
【化11】
【0015】
[式中、Lは、脱離基を示し、水酸基及びカルボキシル基は、それぞれ独立に、保護されていてもよい。]で表される化合物(3)又はその塩を反応させることにより、式
【0016】
【化12】
【0017】
[式中、R1、R2及びR3は、前述と同意義を示し、水酸基及びカルボキシル基は、それぞれ独立に、保護されていてもよい。]で表されるカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法、である。
【0018】
ここで、R1における「アルキル基」は、直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基であり、R1におけるC1−C3アルキル基は、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル基であり、好適には、C1−C2アルキル基であり、より好適には、メチル基である。
【0019】
R2及びR3における「有機残基」は、式-N(R2)(R3)で表される基中の窒素原子が求核性を有し、かつ、式-N(R2)(R3)で表される構造を有するカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩が優れた抗菌作用を有するようなものであれば特に限定はなく、例えば、水素原子;置換された又は無置換の、低級アルキル基、低級アルケニル基又は低級アルキニル基;置換された又は無置換の、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキルアルケニル基又はシクロアルキルアルキニル基;置換された又は無置換の、アラルキル基、アラルケニル基又はアラルキニル基;及び、置換された又は無置換の、ヘテロアラルキル基、ヘテロアラルケニル基、ヘテロアラルキニル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロシクリルアルケニル基又はヘテロシクリルアルキニル基であり得る。R2及びR3における「置換された又は無置換の、低級アルキル基、低級アルケニル基又は低級アルキニル基」は、1〜6個の炭素原子を有し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−プロペニル、2−ブテニル、エチニル、2−ブチニル、2−ヒドロキシエチル、2−クロロエチル、2−メトキシエチル、3−ペンテニル及び4−ヘキシニル基が挙げられる。R2及びR3における「置換された又は無置換の、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキルアルケニル基又はシクロアルキルアルキニル基」は、シクロアルキル環中に3〜6個の炭素原子を有し、かつアルキル、アルケニル又はアルキニル部分に1〜6個の炭素原子を有し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−シクロブチルエチル、6−シクロヘキシルヘキシル、2−(4−メトキシシクロヘキシル)エチル、5−(3−ブロモシクロペンチル)ペンチル、5−シクロペンチル−4−ペンテニル及び6−シクロヘキシル−3−ヘキシニル基が挙げられる。R2及びR3における「置換された又は無置換の、アラルキル基、アラルケニル基又はアラルキニル基」は、アリール部分が置換された又は無置換のフェニル基であり、かつアルキル、アルケニル又はアルキニル部分に1〜3個の炭素原子を有し、例えば、ベンジル、p−ニトロベンジル、p−クロロベンジル、2−フェニルエチル、シンナミル及び3−シクロペンチル−2−プロピニル基が挙げられる。R2及びR3における「置換された又は無置換の、ヘテロアラルキル基、ヘテロアラルケニル基、ヘテロアラルキニル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロシクリルアルケニル基又はヘテロシクリルアルキニル基」は、酸素、窒素及び硫黄原子からなる群から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を有し、かつその複素環部分に連結するアルキル、アルケニル又はアルキニル部分に1〜6個の炭素原子を有し、例えば、2−、3−若しくは4−ピリジル低級アルキル、2−、4−若しくは5−ピリミジル低級アルキル、3−(2−ピリジル)−2−プロペニル、4−(3−ピリジル)−2−ブチニル、N−メチル−2−、3−若しくは4−ピペリジノ、N−プロピル−2−若しくは3−モルホリノ、N−メチル−2−若しくは3−チオモルホリノ、N−エチル−2−、3−若しくは4−ピペリジノ低級アルキル、N−プロピル−2−若しくは3−モルホリノ低級アルキル、N−メチル−2−若しくは3−チオモルホリノ低級アルキル、6−(N−メチル−2−ピペリジノ)−3−ヘキセニル及び6−(N−メチル−2−ピペリジノ)−3−ヘキシニル基が挙げられる。
【0020】
R2及びR3における「R2及びR3が結合する窒素原子と一緒になって形成する環」は、式-N(R2)(R3)で表される基中の窒素原子が求核性を有し、かつ、式-N(R2)(R3)で表される構造を有するカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩が優れた抗菌作用を有するようなものであれば特に限定はなく、例えば、式
【0021】
【化13】
【0022】
[式中、nは、0、1又は2を示し、
pは、0、1又は2を示し、
Raは、水素原子又はC1−C4アルキル基を示し、
Bは、フェニレン、フェニレンアルキル(該アルキル部分はC1−C3アルキルである。)、シクロヘキシレン、シクロヘキシレンアルキル(該アルキル部分はC1−C3アルキルである。)又は1乃至3個の置換基を有してもよいC1−C5アルキレン基{該置換基は、アミノ、水酸基、シクロヘキシルアルキル(該アルキル部分はC1−C3アルキルである。)、C1−C4アルキル、フェニル又はベンジル基である。}を示し、
Rbは、水素原子又はC1−C4アルキル基を示し、
Rcは、式−C(=NH)Rdで表される基{式中、Rdは、水素原子、C1−C4アルキル基又は式−NReRfで表される基(式中、Re及びRfは、互いに独立に、水素原子又はC1−C4アルキル基を示す。)を示す。}を示し、
好適には、
nが、0又は1であり、
pが、0又は1であり、
Raが、水素原子、メチル又はエチル基であり、
Bが、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレンメチル、メチレン、メチルメチレン(−CH(CH3)−)、エチレン、トリメチレン又は2−ヒドロキシプロピレン基であり、
Rbが、水素原子、メチル又はエチル基であり、
Rcが、ホルムイミドイル、アセトイミドイル又はアミジノ基であり、
より好適には、
nが、0又は1であり、
pが、0であり、
Raが、水素原子又はメチル基であり、
Bが、メチレン、メチルメチレン(−CH(CH3)−)、エチレン、トリメチレン又は2−ヒドロキシプロピレン基であり、
Rbが、水素原子又はメチル基であり、
Rcが、アミジノ基であり、
更により好適には、
nが、0又は1であり、
pが、0であり、
Raが、水素原子であり、
Bが、メチレン、メチルメチレン(−CH(CH3)−)又はエチレン基であり、
Rbが、水素原子であり、
Rcが、アミジノ基である。]
のような、R2及びR3が窒素原子と共に置換分を有していてもよい複素飽和環を形成するものであり、好適には、R2及びR3が窒素原子と共に置換分を有していてもよいピロリジノ基を形成するものである。
【0023】
Lにおける「脱離基」は、例えば、特開平11-71277号公報に記載されているように、通常の求核残基として脱離する基であれば特に限定はなく、例えば、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン原子;トリクロロメチルオキシのようなトリハロゲノメチルオキシ基;メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシのような低級アルカンスルホニルオキシ基;トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ペンタフルオロエタンスルホニルオキシのようなハロゲノ低級アルカンスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、p−ニトロベンゼンスルホニルオキシのようなアリールスルホニルオキシ基;又は、ジフェニルホスホリルオキシのようなジアリールホスホリルオキシ基であり得、好適には、ジアリールホスホリルオキシ基であり、より好適には、ジフェニルホスホリルオキシ基(O−P(=O)(OPh)2)である。
【0024】
化合物(1)は、第三級アミンを有しており、酸性化合物との塩を形成することができる。当該酸性化合物は、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、りん酸、炭酸のような無機酸類;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸のような有機カルボン酸類;又は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類であり得、好適には、無機酸類であり、より好適には、塩酸又は硫酸である。
【0025】
化合物(2)は、アミン化合物であるので、酸性化合物との塩を形成することができる。当該酸性化合物は、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、りん酸のような無機酸類;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸のような有機カルボン酸類;又は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類であり得、好適には、無機酸類である。
【0026】
化合物(3)は、カルボキシル基を有しており、塩基性物質との塩を形成することができる。そのような塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;又は、アンモニウム塩のような無機塩であり得、好適には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩又はマグネシウム塩である。
【0027】
カルバペネム系抗菌剤(4)が、酸性化合物と塩を形成することができる場合、そのような酸性化合物は、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、りん酸、炭酸のような無機酸類;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸のような有機カルボン酸類;又は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類であり得、好適には、無機酸類であり、より好適には、塩酸、硫酸又は炭酸である。
【0028】
また、カルバペネム系抗菌剤(4)は、カルボキシル基を有しており、塩基性物質との塩を形成することができる。そのような塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;又は、アンモニウム塩であり得、好適には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩又はマグネシウム塩である。
【0029】
尚、化合物(3)のカルボキシル基が保護されている場合には、化合物(1)又はその塩に化合物(2)又はその塩及び化合物(3)を順次作用させた後に、当該保護基を除去することにより、化合物(4)又はその塩を得ることができる。
【0030】
また、本発明は、
式
【0031】
【化14】
【0032】
[式中、R1は、C1−C3アルキル基を示す。]で表される化合物(1)又はその塩、及び
式
【0033】
【化15】
【0034】
[式中、R1は、C1−C3アルキル基を示す。]で表される化合物(5)又はその塩に酸無水物を作用させ、式
【0035】
【化16】
【0036】
[式中、R1は、前述と同意義を示す。]で表される化合物(1)又はその塩を製造する方法、である。
【0037】
化合物(5)が塩を形成する場合、そのような塩は、第三級アミン部と酸性化合物との塩、カルボキシル基と塩基性化合物との塩、又は、カルボキシル基の金属塩のいずれでもよい。
【0038】
化合物(5)が酸性化合物との塩を形成する場合、当該酸性化合物は、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、りん酸のような無機酸類;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸のような有機カルボン酸類;又は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類であり得、好適には、無機酸類であり、より好適には、塩酸又は硫酸である。
【0039】
化合物(5)が塩基性化合物との塩を形成する場合、当該塩基性化合物は、例えば、アンモニア;又は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1−メチルピロリジン、1−メチルピペリジン、4−メチルモルホリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、エチレンジアミン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)のような有機アミン類であり得、好適には、有機アミン類であり、より好適には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はN−メチルモルホリンである。
【0040】
化合物(5)がカルボキシル基で金属塩を形成する場合、そのような金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムのようなアルカリ金属;又は、マグネシウム、カルシウム、バリウムのようなアルカリ土類金属であり得、好適には、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムである。
【0041】
化合物(5)が塩を形成する場合、そのような塩は、好適には、第三級アミン部と酸性化合物との塩であり、より好適には、化合物(5)の塩酸塩、又は、化合物(5)の硫酸塩である。
【0042】
本発明に係る化合物(1)は、分子内に2個の不斉炭素を有しており、(2S、4S)配置又は(2R、4R)配置である立体異性体が存在するが、本発明はその各々及びそれら任意の割合の混合物のいずれをも包含される。化合物(1)において、好適には、(2S、4S)配置である。
【0043】
【化17】
【0044】
また、本発明に係る化合物(5)も、分子内に2個の不斉炭素を有しており、4個の立体異性体が存在するが、好適には、(2S、4S)配置又は(2R、4R)配置の光学活性体であり、より好適には、(2S、4S)配置である。
【0045】
【化18】
【0046】
本発明に係る化合物は、大気中に放置しておいたり、再結晶することにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となる場合がある。本発明に係る化合物(1)乃至(5)並びにそれらの塩は、それぞれそのような水和物を含むものとする。
【0047】
また、本発明に係る化合物は、他のある種の溶媒を吸収し、溶媒和物となる場合がある。本発明に係る化合物(1)乃至(5)並びにそれらの塩は、それぞれそのような溶媒和物を含むものとする。
【0048】
【発明の実施の形態】
本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の製造方法は、次に示す通りに達成される。
【0049】
[A法]
【0050】
【化19】
【0051】
上記式中、R1、R2及びR3は、前述と同意義を示す。
【0052】
A法は、化合物(1)又はその塩に、不活性溶媒中、塩基存在下に同一反応容器で化合物(2)又はその塩及び化合物(3)又はその塩を作用させることによって達成され、好適には化合物(2)又はその塩及び化合物(3)又はその塩を順次作用させることにより達成される。
【0053】
尚、必要である場合には、化合物(2)のR2及びR3中の官能基並びに化合物(3)の水酸基及びカルボキシル基は保護されていてもよい。
【0054】
化合物(3)の水酸基の保護基は、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、ピバロイル、バレリル、イソバレリル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、3−メチルノナノイル、8−メチルノナノイル、3−エチルオクタノイル、3,7−ジメチルオクタノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、1−メチルペンタデカノイル、14−メチルペンタデカノイル、13,13−ジメチルテトラデカノイル、ヘプタデカノイル、15−メチルヘキサデカノイル、オクタデカノイル、1−メチルヘプタデカノイル、ノナデカノイル、アイコサノイル及びヘナイコサノイルのようなアルキルカルボニル基、スクシノイル、グルタロイル、アジポイルのようなカルボキシ化アルキルカルボニル基、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチルのようなハロゲノ低級アルキルカルボニル基、メトキシアセチルのような低級アルコキシ低級アルキルカルボニル基、(E)−2−メチル-2−ブテノイルのような不飽和アルキルカルボニル基等の「脂肪族アシル基」;ベンゾイル、α−ナフトイル、β−ナフトイルのようなアリ−ルカルボニル基、2−ブロモベンゾイル、4−クロロベンゾイルのようなハロゲノアリ−ルカルボニル基、2,4,6-トリメチルベンゾイル、4−トルオイルのような低級アルキル化アリ−ルカルボニル基、4−アニソイルのような低級アルコキシ化アリ−ルカルボニル基、2−カルボキシベンゾイル、3−カルボキシベンゾイル、4−カルボキシベンゾイルのようなカルボキシ化アリ−ルカルボニル基、4−ニトロベンゾイル、2−ニトロベンゾイルのようなニトロ化アリ−ルカルボニル基、2−(メトキシカルボニル) ベンゾイルのような低級アルコキシカルボニル化アリ−ルカルボニル基、4−フェニルベンゾイルのようなアリ−ル化アリ−ルカルボニル基等の「芳香族アシル基」;テトラヒドロピラン-2−イル、3−ブロモテトラヒドロピラン-2−イル、4−メトキシテトラヒドロピラン-4−イル、テトラヒドロチオピラン-2−イル、4−メトキシテトラヒドロチオピラン-4−イルのような「テトラヒドロピラニル又はテトラヒドロチオピラニル基」;テトラヒドロフラン-2−イル、テトラヒドロチオフラン-2−イルのような「テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロチオフラニル基」;トリメチルシリル、トリエチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジイソプロピルシリル、メチルジ-t−ブチルシリル、トリイソプロピルシリルのようなトリ低級アルキルシリル基、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルブチルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、フェニルジイソプロピルシリルのような1又は2個のアリール基で置換されたトリ低級アルキルシリル基等の「シリル基」;メトキシメチル、1,1−ジメチル-1−メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、ブトキシメチル、t-ブトキシメチルのような低級アルコキシメチル基、2−メトキシエトキシメチルのような低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ) メチルのようなハロゲノ低級アルコキシメチル等の「アルコキシメチル基」;1−エトキシエチル、1−(イソプロポキシ) エチルのような低級アルコキシ化エチル基、2,2,2−トリクロロエチルのようなハロゲン化エチル基等の「置換エチル基」;ベンジル、α−ナフチルメチル、β−ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、9-アンスリルメチルのような1乃至3個のアリ−ル基で置換された低級アルキル基、4−メチルベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、3,4,5-トリメチルベンジル、4−メトキシベンジル、4−メトキシフェニルジフェニルメチル、2−ニトロベンジル、4−ニトロベンジル、4−クロロベンジル、4−ブロモベンジル、4−シアノベンジル、メチル、ピペロニルのような低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ基でアリ−ル環が置換された1乃至3個のアリール基で置換された低級アルキル基等の「アラルキル基」;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニルのような低級アルコキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−トリメチルシリルエトキシカルボニルのようなハロゲン又はトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基等の「アルコキシカルボニル基」;ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニルのような「アルケニルオキシカルボニル基」;ベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニルのような、1又は2個の低級アルコキシ又はニトロ基でアリ−ル環が置換されていてもよい「アラルキルオキシカルボニル基」であり、好適には、脂肪族アシル基である。
【0055】
化合物(3)のカルボキシル基の保護基は、例えば、ベンジル、p-ニトロベンジル、トリメチルベンジル基のような置換分を有していてもよいベンジル基;又は、アリル基、2−クロロアリル、2−メチルアリルのような2位に置換基を有してもよいアリル基であり得、好適には、置換分を有していてもよいベンジル基であり、より好適には、p-ニトロベンジル基である。
【0056】
本法で使用される塩基は、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールのような有機塩基類;又は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウムのような無機塩基類であり得、好適には、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム又は炭酸水素ナトリウムである。
【0057】
本法で使用される溶媒は、反応を阻害せず、原料をある程度溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、アセトニトリルのようなニトリル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールのようなアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;水;又は、前述した溶媒の任意の割合の組み合わせであり得、好適には、ニトリル類、アミド類、スルホキシド類、含水アミド類、又は含水スルホキシド類であり、より好適には、アミド類、スルホキシド類又は含水スルホキシド類であり、更により好適には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は含水ジメチルスルホキシドである。
【0058】
反応温度は、主に反応溶媒によって異なるが、通常、−50℃乃至100℃であり、好適には、10℃乃至50℃である。
【0059】
反応時間は、反応溶媒、反応温度によって異なるが、通常、1時間乃至60時間であり、好適には、4時間乃至30時間である。
【0060】
化合物(2)のR2及びR3中の官能基並びに化合物(3)の水酸基及びカルボキシル基が保護されている場合には、反応終了後当業者自明の方法により当該保護基を除去することによりカルバペネム系抗菌剤である化合物(4)を得ることができる。例えば、化合物(3)の水酸基の保護基がシリル基である場合、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化水素酸、フッ化水素酸−ピリジン、フッ化カリウムのようなフッ素アニオンを生成する化合物で処理するか、又は、酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸又は塩酸のような無機酸で処理することにより保護基を除去することができる。化合物(3)の水酸基の保護基がアラルキル基又はアラルキルオキシカルボニル基である場合、溶媒中、還元剤と接触させることにより(好適には、触媒下に常温にて接触還元)又は酸化剤を用いて保護基を除去することができる。化合物(3)の水酸基の保護基が脂肪族アシル基、芳香族アシル基又はアルコキシカルボニル基である場合、溶媒中、塩基で処理することにより保護基を除去することができる。化合物(3)の水酸基の保護基がアルコキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基又は置換されたエチル基である場合、溶媒中、酸で処理することにより保護基を除去することができる。化合物(3)の水酸基の保護基がアルケニルオキシカルボニル基である場合、水酸基の保護基が前記の脂肪族アシル基、芳香族アシル基又はアルコキシカルボニル基である場合の除去反応の条件と同様にして、塩基と処理することにより保護基を除去することができる。化合物(3)のカルボキシル基の保護基が置換分を有していてもよいベンジル基である場合、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン又はこれらの混合溶媒中、パラジウム炭素や白金触媒下に水素を作用させることにより保護基を除去することができる。また、化合物(3)のカルボキシル基の保護基が2位に置換基を有してもよいアリル基である場合、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン又はこれらの混合溶媒中、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリドやテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム触媒存在下にトリブチル錫ハイドライド等のトリアルキル錫ハイドライド類又は2−エチルヘキサン酸ナトリウム等の有機カルボン酸アルカリ金属塩類を作用させることにより保護基を除去することができる。
【0061】
反応終了後、本法の目的化合物は常法に従って反応混合液から採取することができる。例えば、反応混合液に生成物が溶解されない溶媒を加えて生成物を析出させたり、或いは反応溶媒を減圧留去した後、更に再結晶、再沈殿又はクロマトグラフィーなどによって更に精製することにより得られる。
【0062】
本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の製造方法の合成中間体化合物(1)及びその塩は、次に示す通り、化合物(5)又はその塩に酸無水物類を作用させることにより製造することができる。
【0063】
[B法]
【0064】
【化20】
【0065】
上記式中、R1は、前述と同意義を示す。
【0066】
B法は、化合物(5)又はその塩に酸無水物を作用させることにより分子内環化反応を行うことにより、化合物(1)及びその塩を製造する方法である。
【0067】
本反応は、溶媒の存在下又は非存在下に行なうことができる。
【0068】
本法で使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発原料である化合物(5)をある程度溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、アセトニトリルのようなニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸t−ブチルのようなエステル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル類のような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸類;又は、上記の溶媒の任意な割合の組み合わせであり得、好適には、有機酸類であり、より好適には、酢酸である。
【0069】
本法において使用される酸無水物は、例えば、りん酸類の無水物;無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸、無水フタル酸のような有機カルボン酸類の無水物;及び、無水メタンスルホン酸、無水トリフルオロメタンスルホン酸、無水ベンゼンスルホン酸、無水p-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類の無水物であり得、好適には、有機カルボン酸類の無水物であり、より好適には、無水酢酸である。
【0070】
用いる酸無水物の量は、化合物(5)又はその塩に対して、通常、1.0乃至100.0モル当量であり、好適には、1.0乃至10.0モル当量である。
【0071】
本法の反応温度は、主に用いる試薬によって異なるが、通常、0℃乃至120℃であり、好適には、30℃乃至80℃である。
【0072】
本法の反応時間は、主に反応温度や溶媒により異なるが、通常、0.5時間乃至20時間であり、好適には、1.5時間乃至5.0時間である。
【0073】
反応終了後、目的化合物は常法に従って反応混合物から採取される。例えば反応混合物を中和後、水と混合しない有機溶剤を加え、水洗後、溶剤を留去することによって得られる。得られた目的化合物は必要ならば常法、例えば再結晶、再沈殿またはクロマトグラフィーなどによって更に精製することができる。
【0074】
本発明で使用する化合物(5)及びその塩は、次に示すC法によって製造することができる。
【0075】
[C法]
【0076】
【化21】
【0077】
上記式中、R1は、前述と同意義を示し、R4は、C1−C6アルキル基を示し、R5及びR6は、C1−C6アルキル基又は置換基を有してもよいC6−C10アリール基を示す。
【0078】
ここで、R4、R5及びR6における「アルキル基」は、直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基であり、R4、R5及びR6におけるC1−C6アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、s-ペンチル、イソペンチル、2-メチルブチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル(イソヘキシル)、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル(s-ヘキシル)、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル又は2-エチルブチルであり得、好適には、C1−C4アルキル基であり、より好適には、C1−C2アルキル基であり、更により好適には、メチル基である。
【0079】
また、R5及びR6における「アリール基」は、芳香族炭化水素環基であり、R5及びR6におけるC6−C10アリール基は、例えば、フェニル、1-ナフチル又は2-ナフチルであり得、好適には、フェニルである。当該アリール基が置換分を有する場合、置換分の数は、好適には、1乃至3個であり、より好適には、1個であり、置換分は、メチル、エチル、プロピル基のようなアルキル基;ホルミル、アセチル、プロピオニル基のような脂肪族アシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ基のような脂肪族アシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル基のようなアルコキシカルボニル基;モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル基のようなハロゲン化アルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ基のようなアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン原子;メチルスルホニル、エチルスルホニル基のようなアルキルスルホニル基;ニトロ基;又は、シアノ基であり得、好適には、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基であり、より好適には、メチル基、トリフルオロメチル基、フッ素、塩素、ニトロ基又はシアノ基である。
【0080】
上記式中、化合物(6)乃至(10)は、アミン部位で酸性化合物と塩を形成していてもよい。当該酸性化合物は、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、りん酸のような無機酸類;又は、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸のような有機カルボン酸類;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類であり得、好適には、無機酸類であり、より好適には、塩酸又は硫酸である。
【0081】
第C1工程は、化合物(6)のエステル化反応であり、当業者自明の方法を参考にして実施できる。例えば、酸存在下、対応するアルコール中で化合物(6)のエステル化反応を行なうことで化合物(7)が製造できる。
【0082】
本工程で使用する酸は、例えば、塩酸、臭酸、硫酸、塩化水素、臭化水素などの無機酸類;又は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸類であり得、好適には、無機酸類である。
【0083】
本工程で使用するアルコールは、前述したC1−C6アルキル基に水酸基が置換した化合物であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ペンタノール、s-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、2-メチルブタノール、ネオペンチルアルコール、1-エチルプロパノール、ヘキサノール、4-メチルペンタノール、3-メチルペンタノール、2-メチルペンタノール、1-メチルペンタノール、3,3-ジメチルブタノール、2,2-ジメチルブタノール、1,1-ジメチルブタノール、1,2-ジメチルブタノール、1,3-ジメチルブタノール、2,3-ジメチルブタノール又は2-エチルブタノールであり得、好適には、メタノールである。
【0084】
本工程の反応温度は、主に用いる溶媒によって異なるが、通常、0℃乃至150℃であり、好適には、20℃乃至100℃である。
【0085】
本工程の反応時間は、主に反応温度や溶媒により異なるが、通常、1時間乃至40時間であり、好適には、1時間乃至7時間である。
【0086】
反応終了後、目的化合物は常法に従って反応混合物から採取される。例えば反応混合液の溶剤を留去することにより得られる。必要な場合には常法、例えば再結晶、再沈殿又はクロマトグラフィーなどによって更に精製することができるが、精製することなくそのまま次の反応工程に進むこともできる。
【0087】
第C2工程は、化合物(7)のアルキル化反応であり、当業者自明の方法を参考にして実施できる。例えば、対応するC1−C3アルデヒド若しくはその誘導体(例えばホルムアミド)又はその水溶液と還元剤の組み合わせ、或いは水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、又はこれらの混合溶媒中、対応するC1−C3アルキルハライドと塩基との組み合わせにより、化合物(7)のアルキル化反応を行なうことで化合物(8)が製造できる。
【0088】
本工程で使用される還元剤は、例えば、ぎ酸又はパラジウム存在下の水素であり得、好適には、パラジウム存在下の水素である。
【0089】
本工程で使用される塩基は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;又は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピリジン、ルチジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等の有機アミン類であり得、好適には、アルカリ金属炭酸塩であり、より好適には、炭酸ナトリウムである。
【0090】
本工程の反応温度は、主に用いる試薬によって異なるが、通常、−20℃乃至120℃であり、好適には、10℃乃至80℃である。
【0091】
本工程の反応時間は、主に反応温度や溶媒により異なるが、通常、0.5時間乃至15時間であり、好適には、1時間乃至5時間である。
【0092】
反応終了後、目的化合物は常法に従って反応混合物から採取される。例えば反応混合液の溶剤を留去するか、或いは反応混合物に目的化合物が溶解しない溶媒(例えば、プロパノールやイソプロピルエーテル等。)を加えて目的化合物を析出させ、ろ別することにより得られる。得られた目的化合物は必要ならば常法、例えば再結晶、再沈殿又はクロマトグラフィーなどによって更に精製することができるが、精製することなくそのまま次の反応工程に進むこともできる。
【0093】
尚、第C1工程と第C2工程は、いずれを先に行ってもよい。即ち、前記反応経路の通りではなく、第C2工程(窒素原子のアルキル化反応)を先に行い、次いで第C1工程(エステル化反応)を行うこともできる。
【0094】
第C3工程は、化合物(8)における水酸基のスルホニル化反応であり、当業者自明の方法を参考にして実施できる。例えば、不活性溶媒中、塩基存在下、スルホニル化剤を用いて化合物(8)のスルホニル化反応を行なうことで化合物(9)が製造できる。
【0095】
本工程で使用される溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば、ヘキサン、ヘプタンのような炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル類;アセトニトリルのようなニトリル類:アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;又は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類であり得、好適には、エステル類である。
【0096】
本工程で使用される塩基は、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのような無機塩基類;又は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−メチルモルホリン、1−メチルイミダゾール、ピリジン、ルチジン、4−ジメチルアミノピリジンのような有機塩基類であり得、好適には、有機塩基類である。
【0097】
本工程で使用されるスルホニル化剤は、例えば、メタンスルホニルクロリド、クロロメチルスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、p-クロロベンゼンスルホニルクロリド、p-ニトロベンゼンスルホニルクロリドのようなハロゲン化スルホニル類;又は、メタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物のようなスルホン酸無水物類であり得、好適には、ハロゲン化スルホニル類である。
【0098】
用いるスルホニル化剤の量は、化合物(8)に対して、通常、1乃至10モル当量であり、好適には、1乃至2モル当量である。
【0099】
本工程の反応温度は、主に用いる試薬によって異なるが、通常、−50℃乃至100℃であり、好適には、−10℃乃至50℃である。
【0100】
本工程の反応時間は、主に反応温度や溶媒により異なるが、通常、0.1時間乃至10時間であり、好適には、0.1時間乃至4時間である。
【0101】
反応終了後、目的化合物は常法に従って反応混合物から採取される。例えば反応混合液に水と混合しない有機溶剤を加え、水洗後、溶剤を留去することによって得られる。得られた目的化合物は必要ならば常法、例えば再結晶、再沈殿又はクロマトグラフィーなどによって更に精製することができる。
【0102】
第C4工程は、化合物(9)におけるスルホニルオキシ基をチオカルボン酸カルボキシレートアニオンにより置換する反応であり、当業者自明の方法を参考にして実施できる。例えば、不活性溶媒中、チオカルボン酸の金属塩又はチオカルボン酸と塩基の組み合わせを用いて、化合物(9)の置換反応を行なうことで化合物(10)が製造できる。
【0103】
本工程で使用される溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル類;メタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコール類;アセトニトリルのようなニトリル類;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類;エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;水;又は、上記の溶媒の任意な割合の組み合わせであり得、好適には、アルコール類、アミド類、水又はそれらの組み合わせである。
【0104】
本工程で使用されるチオカルボン酸の金属塩は、例えば、チオ酢酸ナトリウム、チオ酢酸カリウム、チオ酢酸セシウム、チオ安息香酸ナトリウム、チオ安息香酸カリウム又はチオ安息香酸セシウムであり得、好適には、チオ酢酸カリウムである。
【0105】
本工程は、チオカルボン酸と塩基の組み合わせを用いても反応を行なうことができる。本工程で使用されるチオカルボン酸は、例えば、チオ酢酸又はチオ安息香酸であり得、好適には、チオ酢酸である。組み合わせて使用される塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのような無機塩基類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドのようなアルコキシド類;水素化ナトリウム、水素化カリウムのような金属水素化物類;又は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−メチルモルホリン、1−メチルイミダゾール、ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)の有機塩基類であり得、好適には、無機塩基類である。
【0106】
用いるチオカルボン酸の金属塩又はチオカルボン酸の量は、化合物(9)に対して、通常、1乃至5モル当量であり、好適には、1乃至2モル当量である。
【0107】
本工程の反応温度は、主に用いる試薬によって異なるが、通常、0℃乃至150℃であり、好適には、40℃乃至100℃である。
【0108】
本工程の反応時間は、主に反応温度や溶媒により異なるが、通常、1時間乃至20時間であり、好適には、1時間乃至10時間である。
【0109】
反応終了後、目的化合物は常法に従って反応混合物から採取される。例えば、反応混合液に水と混合しない有機溶剤を加え、水洗後、溶剤を留去することによって得られる。得られた目的化合物は必要ならば常法、例えば再結晶、再沈殿又はクロマトグラフィーなどによって更に精製することができる。
【0110】
第C5工程は、化合物(10)の加水分解反応であり、当業者自明の方法を参考にして実施される。例えば、酸性あるいは塩基性のいずれの条件でも化合物(10)の加水分解反応を行なうことで化合物(5)が製造できる。
【0111】
酸性条件下で加水分解が行なわれる場合、本工程で使用される酸は、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸であり得、好適には、塩酸又は硫酸である。
【0112】
塩基性条件下で加水分解が行なわれる場合、本工程で使用される塩基は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム又は水酸化バリウムであり得、好適には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0113】
本工程の反応温度は、主に用いる試薬によって異なるが、通常、−20℃乃至150℃であり、好適には、0℃乃至110℃である。
【0114】
本工程の反応時間は、主に反応温度や溶媒により異なるが、通常、0.1乃至20時間であり、好適には、0.1時間乃至10時間である。
【0115】
反応終了後、目的化合物は常法に従って反応混合物から採取される。例えば反応混合液の溶剤を留去して得られる。得られた目的化合物は必要ならば常法、例えば再結晶、再沈殿またはクロマトグラフィーなどによって更に精製することができる。
【0116】
以下、本発明を実施例及び参考例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0117】
【実施例】
【0118】
【実施例1】
【0119】
【化22】
【0120】
上記式中、PNBはカルボキシル基の保護基であるp-ニトロベンジル基を示し、PNZはグアニジノ基の保護基である4−ニトロベンジルオキシカルボニル基を示す。以下、PNB及びPNZについては同義である。
【0121】
(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−2−[(2S,4S)−2−[(3S)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルバペン−2−エム−3−カルボン酸 4−ニトロベンジルエステル(A法)
(2S,4S)−5−メチル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン(250mg)と(S)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン・二硫酸塩(979mg)のメタノール/塩化メチレン(1:2)懸濁液(7.5mL)にジイソプロピルエチルアミン(1.49mL)を加え50℃で7時間攪拌した。反応液の溶媒を減圧下で留去した後、氷冷下でジメチルホルムアミド(7mL)、(1R,5R,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(ジフェニルホスフィノ)オキシ]−1−メチル−カルバペン−2−エム−3−カルボン酸 4−ニトロベンジルエステル(934mg)及びジイソプロピルエチルアミン(0.6mL)を順次加え、同温で一夜放置した。反応液を1%重曹水(70mL)中へ注加し、析出した固形物をろ取して、標記化合物(1.4g、純度79%、収率:83%)を得た。
赤外線吸収スペクトル (KBr) νmax cm-1:3384, 3113, 3080, 2970, 2875, 2789, 1770, 1643, 1609, 1522, 1450, 1379, 1346, 1322, 1287, 1209, 1181, 1136, 1109。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CDCl3)δ ppm: 1.08-2.22 (m, 6H), 1.75-2.26 (m, 6H), 2.44-2.76 (m, 2H), 2.89-3.00 (m, 1H), 3.03-3.15 (m, 1H), 3.18-3.65 (m, 6H), 3.68-3.90 (m, 3H), 3.93-4.06 (m, 1H), 4.13-4.35 (m, 2H), 5.05-5.15 (m, 2H), 5.30 (d, J=14.1Hz, 1H), 5.45 (d, J=14.1Hz, 1H), 7.58 (dd, J=8.8 and 2.7Hz, 2H), 7.74 (d, J=8.7Hz, 2H), 8.18-8.33 (m, 4H)。
【0122】
【実施例2】
【0123】
【化23】
【0124】
(1R,5S,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチルー2−[(2S,4S)−2−[(3S)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン−1−イルカルボニル]−1−メチルピロリジン−4−イルチオ]−1−カルバペン−2−エム−3−カルボン酸 4−ニトロベンジルエステル(A法)
(2S,4S)−5−メチル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン・塩酸塩(89.8g)と(S)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン・二硫酸塩(265.0g、純度95.8%)のジメチルスルホキシド(2.65L)溶液に炭酸水素ナトリウム(209.2g)を加え、45〜50℃で3時間攪拌した。反応液に室温下で(1R,5R,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−2−[(ジフェニルホスフィノ)オキシ]−1−メチル−カルバペン−2−エム−3−カルボン酸 4−ニトロベンジルエステル(269.2g)及び炭酸水素ナトリウム(42.0g)を順次加え、一夜放置した。反応液を水中(7.95L)へ注加し20〜35℃で1時間攪拌後、析出した固形物をろ取して、標記化合物(400.3g、純度85.6%、収率:85%)を得た。スペクトルデータは、実施例1の化合物に一致した。
【0125】
【実施例3】
【0126】
【化24】
【0127】
(2S,4S)−5−メチル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン(B法)
(2S,4S)−4−アセチルチオ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸メチルエステル(200mg)に2mol/L塩酸水(2mL)を加え、70℃で12時間加熱攪拌することによりメルカプト基の保護基であるアセチル基とカルボン酸の保護基であるメチル基を除去した。反応液の水を減圧下で留去した後、得られた残査に無水酢酸(1mL)を加え、60℃で1時間加熱攪拌した。反応液に酢酸エチル(20mL)及び飽和重曹水(20mL)を加え、抽出した。水層を分離した後、有機層の溶媒を減圧下で留去して、標記化合物(73.4mg、収率:52%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CDCl3)δ ppm: 2.10 (s, 2H), 2.47 (s, 3H), 2.55 (d, J=10.0Hz, 1H), 3.59 (s, 1H), 3.74 (dd, J=10.0 and 2.9Hz, 1H), 3.86-3.89 (m, 1H)。
MSスペクトル m/z:144(M+1)+。
【0128】
【実施例4】
【0129】
【化25】
【0130】
(2S,4S)−5−メチル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン(B法)
(2S,4S)−4−アセチルチオ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸メチルエステル(204mg)に2mol/L塩酸水(2mL)を加え、80℃で7時間加熱攪拌することによりメルカプト基の保護基であるアセチル基とカルボン酸の保護基であるメチル基を除去した。反応液の水を減圧下で留去した後、得られた残査に酢酸(1mL)及び無水酢酸(0.6mL)を加え、60℃で1時間加熱攪拌した。反応液に酢酸エチル(20mL)及び飽和重曹水(20mL)を加え、抽出した。水層を分離した後、有機層の溶媒を減圧下で留去して、標記化合物(77.8mg、収率:54%)を得た。スペクトルデータは、実施例3の化合物に一致した。
【0131】
【実施例5】
【0132】
【化26】
【0133】
(2S,4S)−5−メチル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン・塩酸塩(B法)
(2S,4S)−4−メルカプト−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸・塩酸塩(6g)の酢酸(24mL)の混合液に無水酢酸(8.6mL)を15℃以下で滴下後、55〜60℃で2時間加熱攪拌した。反応液の酢酸を減圧下で留去した後、酢酸エチル(72mL)及び水(36mL)を加え、水酸化ナトリウム水溶液で水層をpH=8〜9に調整後、抽出した。有機層を分離した後、更に水層を酢酸エチル(36mL)で抽出し、酢酸エチル層を合致して、溶媒を減圧下で留去した。得られた残査の酢酸エチル(35mL)溶液に4mol/L HCl/酢酸エチル(7.6mL)溶液を25℃以下で滴下し、同温で1時間攪拌した。析出した固形物をろ取し、標記化合物(4.4g、収率:80%)を得た。
融点 191-192℃。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CDCl3)δ ppm: 2.54 (d, J=12.5Hz, 1H), 2.90 (d, J=12.5Hz, 1H), 2.95 (s, 3H), 3.14 (d, J=11.2Hz, 1H), 4.32 (s, 1H), 4.35 (s, 1H), 4.40 (d, J=11.2Hz, 1H)。
【0134】
【実施例6】
【0135】
【化27】
【0136】
(2S,4S)−5−メチル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オン・塩酸塩(第C3〜C5工程及びB法)
(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジンカルボン酸 メチルエステル・塩酸塩(5g、純度92%)の酢酸エチル(50mL)懸濁液にトリエチルアミン(8.2mL)を加え、3時間還流した後、氷冷下でメタンスルホニルクロリド(2mL)の酢酸エチル(10mL)溶液を滴下し、同温で1時間した。反応液に飽和食塩水(25mL)を加え、抽出した。有機層を分離した後、更に水層を酢酸エチル(50mL)で抽出し、酢酸エチル層を合致して、溶媒を減圧下で留去した。残査にジメチルホルムアミド(50mL)及びチオ酢酸カリウム(4.0g)を順次加え、70〜75℃で2時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、トルエン(50mL)及び飽和食塩水(25mL)を加え抽出した。有機層を分離した後、更に水層をトルエン(50mL)で抽出し、トルエン層を合致して、溶媒を減圧下で留去した。残査に水(15mL)及び濃塩酸(4.2mL)を順次加え、80〜85℃で6時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水を減圧下で留去した。更に、得られた残査に酢酸(15mL)及び無水酢酸(6.65mL)を順次加え、55〜60℃で2時間加熱攪拌した。反応液の酢酸を減圧下で留去した後、残査に酢酸エチル(50mL)及び飽和食塩水(25mL)を加え、水酸化ナトリウム水溶液で水層のpHを8〜9に調整し、抽出した。有機層を分離した後、水層を更に酢酸エチル(50mL)で抽出し、酢酸エチル層を合致して、溶媒を減圧下で留去した。得られた残査の酢酸エチル(25mL)溶液に4mol/L HCl/酢酸エチル(4.7mL)溶液を25℃以下で滴下し、同温で1時間攪拌した。析出した固形物をろ取し、標記化合物(3.1g、純度94%、通算収率:69%)を得た。スペクトルデータは、実施例5の化合物に一致した。
【0137】
【参考例1】
【0138】
【化28】
【0139】
(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸 メチルエステル・塩酸塩(第C1及びC2工程)
塩化水素ガス(127g)を吹き込んだメタノール(1L)溶液に(2S,4R)−トランス−4−ヒドロキシプロリン(100g)を添加後、2時間還流攪拌した。反応終了後、28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液を用いて、反応液のpHを3〜4に調整し、溶媒を減圧下で留去した。得られた残査にメタノール(200mL)、37%ホルムアミド水溶液(93g)及び7.5%Pd/C(1.1g)を加え、水素加圧条件下で、室温で5時間攪拌した。ろ過によりPd/Cを除去後、ろ洗液の溶媒を減圧下で留去して得た残査にプロパノール(200mL)とイソプロピルエーテル(1L)を加え、20〜25℃で2時間攪拌した。析出した結晶をろ取して、標記化合物(156g、純度92%、収率:96%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CD3OD)δ ppm: 2.26-2.34 (m, 1H), 2.44-2.51 (m, 1H), 3.11 (s, 3H), 3.21 (d, J=12.4Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.87-3.92 (m, 1H), 4.53-4.64 (m, 2H)。
【0140】
【参考例2】
【0141】
【化29】
【0142】
(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸(第C2工程)
(2S,4R)−トランス−4−ヒドロキシプロリン(5g)、37%ホルムアミド水溶液(4.6g)及び7.5%Pd/C(53%水湿品:3.2g)の水(15mL)懸濁液を水素加圧条件下で室温、10時間攪拌した。Pd/Cをろ過で除去した後、ろ洗液の水を減圧下で留去した。得られた固形分残査をエタノール(25mL)で懸濁攪拌後、ろ取して、標記化合物(5.1g、収率:92%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CD3OD)δ ppm: 2.12-2.21 (m, 1H), 2.40-2.47 (m, 1H), 3.01 (s, 3H), 3.09 (d, J=12.4Hz, 1H), 3.85 (dd, J=12.4 and 4.6 Hz, 1H), 4.06 (dd, J=10.8 and 7.6Hz, 1H), 4.48-4.52 (m, 1H)。
【0143】
【参考例3】
【0144】
【化30】
【0145】
(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸 メチルエステル・塩酸塩(第C1及びC2工程)
(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸(3g)のメタノール(15mL)懸濁液に濃塩酸(3mL)を加え、4時間還流した。反応液の溶媒を減圧下で留去して、標記化合物(4.0g、収率:100%)を得た。スペクトルデータは、参考例1の化合物に一致した。
【0146】
【参考例4】
【0147】
【化31】
【0148】
(2S,4R)−4−メチルスルホニルオキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸 メチルエステル(第C3工程)
参考例1又は3で得られた(2S,4R)−4−ヒドロキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸 メチルエステル・塩酸塩(1g)のテトラヒドロフラン(10mL)懸濁液にトリエチルアミン(1.53mL)を添加、40℃で3時間攪拌した後、氷冷下でメシルクロリドを加え更に2時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(20mL)及び5%重曹水(10mL)を加え、抽出した。水層を分離した後、有機層の溶媒を減圧下で留去して、標記化合物(1.0g、収率:83%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CDCl3)δ ppm: 2.41 (d, J=7.8Hz, 1H), 2.43 (dd, J=7.8 and 1.7Hz, 1H), 2.47 (s, 3H), 2.74 (dd, J=11.2 and 3.9 Hz, 1H), 3.04 (s, 3H), 3.42 (dd, J=7.8 and 7.8Hz, 1H), 3.59 (dd, J=11.2 and 6.1 Hz, 1H), 3.76 (s, 3H), 5.20-5.5.26 (m, 1H)。
【0149】
【参考例5】
【0150】
【化32】
【0151】
(2S,4S)−4−アセチルチオ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸メチルエステル(第C4工程法)
参考例4で得られた(2S,4R)−4−メチルスルホニルオキシ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸 メチルエステル(609mg)のエタノール/水(9:1)混合液(6mL)にチオ酢酸カリウム(677mg)を添加後、80℃で3時間加熱攪拌し、室温で一夜放置した。反応液に酢酸エチル(20mL)及び10%食塩水(10mL)を加え、抽出した。有機層を分離して、水(10mL)で洗浄後、溶媒を減圧下で留去し、標記化合物(543mg、収率:97%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CDCl3)δ ppm: 1.96-2.03 (m, 1H), 2.30 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 2.65-2.74 (m, 1H), 2.82-2.87 (m, 1H), 3.05-3.10 (m, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.93-4.00 (m, 1H)。
【0152】
【参考例6】
【0153】
【化33】
【0154】
(2S,4S)−4−メルカプト−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸・塩酸塩(第C5工程)
(2S,4S)−4−アセチルチオ−1−メチル−2−ピロリジンカルボン酸メチルエステル(10.7g)、濃塩酸(14.9g)及び水(16mL)の混合液を75〜85℃で5時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液の水を減圧下で留去し、残査に酢酸(10mL)、酢酸エチル(20mL)を加え、0〜5℃で1時間攪拌した。析出した結晶をろ取して、標記化合物(9.2g、収率:95%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル (400MHz, CDCl3)δ ppm: 2.11-2.20 (m, 1H), 2.97-3.05 (m, 1H), 3.02 (s, 3H), 3.56-3.68 (m, 2H), 3.80-3.88 (m, 1H), 4.35-4.41 (m, 1H)。
【0155】
【参考例7】
【0156】
【化34】
【0157】
(S)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン・2硫酸塩
濃硫酸(234g)のメタノール(2.45L)溶液に(S)−1−(t−ブチルオキシカルボニル)−3−[2−[3−(4−ニトロベンジルオキシカルボニル)グアニジノ]アセチルアミノ]ピロリジン・1/2硫酸塩(350g、純度86%)を添加し、40〜45℃で2.5時間攪拌した。反応液を20〜30℃まで冷却し、同温で0.5時間攪拌後、ジイソプロピルエーテル(3.5L)を加え、更に同温で1時間攪拌した。析出した結晶をろ取して、標記化合物(328g、純度95.8%、収率:95.4%)を得た。
核磁気共鳴スペクトル(400 MHz, D2O)δ ppm: 1.85-1.96 (m, 1H), 2.10-2.25 (m, 1H), 3.13-3.44 (m, 4H), 4.01 (s, 2H), 4.31-4.39 (m, 1H), 5.25 (s, 2H), 7.48 (d, J=8.6Hz, 2H), 8.10 (d, J=8.6Hz, 2H)。
【0158】
【発明の効果】
本発明に係る1−アルキルピロリジン構造を有するカルバペネム系抗菌剤の製造方法は、安価、容易、かつ安全性が高く大量合成にも適しているものであり、5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンは、当該製造方法において非常に重要な中間体化合物として有用である。
【0159】
また、本発明に係る5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンの製造方法も、5−アルキル−2−チア−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オンを安価、容易、安全に、かつ大量に製造できるという効果を有する。
Claims (19)
- 式
- 化合物(1)又はその塩に、不活性溶媒中、塩基存在下に同一反応容器で化合物(2)又はその塩及び化合物(3)又はその塩を作用させることを特徴とする、請求項1に記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- 化合物(2)又はその塩及び化合物(3)又はその塩を順次作用させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- R1が、メチル基である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- R2及びR3が、それらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- R2及びR3が、それらが結合する窒素原子と一緒になって式
pは、0、1又は2を示し、
Raは、水素原子又はC1−C4アルキル基を示し、
Bは、フェニレン、フェニレンアルキル(該アルキル部分はC1−C3アルキルである。)、シクロヘキシレン、シクロヘキシレンアルキル(該アルキル部分はC1−C3アルキルである。)又は1乃至3個の置換基を有してもよいC1−C5アルキレン基{該置換基は、アミノ、水酸基、シクロヘキシルアルキル(該アルキル部分はC1−C3アルキルである。)、C1−C4アルキル、フェニル又はベンジル基である。}を示し、
Rbは、水素原子又はC1−C4アルキル基を示し、
Rcは、式−C(=NH)Rdで表される基{式中、Rdは、水素原子、C1−C4アルキル基又は式−NReRfで表される基(式中、Re及びRfは、互いに独立に、水素原子又はC1−C4アルキル基を示す。)を示す。}を示す。]
で表される環を形成する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。 - R2及びR3において、
nが、0又は1であり、
pが、0又は1であり、
Raが、水素原子、メチル又はエチル基であり、
Bが、1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレンメチル、メチレン、メチルメチレン(−CH(CH3)−)、エチレン、トリメチレン又は2−ヒドロキシプロピレン基であり、
Rbが、水素原子、メチル又はエチル基であり、
Rcが、ホルムイミドイル、アセトイミドイル又はアミジノ基である、請求項6に記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。 - R2及びR3において、
nが、0又は1であり、
pが、0であり、
Raが、水素原子又はメチル基であり、
Bが、メチレン、メチルメチレン(−CH(CH3)−)、エチレン、トリメチレン又は2−ヒドロキシプロピレン基であり、
Rbが、水素原子又はメチル基であり、
Rcが、アミジノ基である、請求項6に記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。 - R2及びR3において、
nが、0又は1であり、
pが、0であり、
Raが、水素原子であり、
Bが、メチレン、メチルメチレン(−CH(CH3)−)又はエチレン基であり、
Rbが、水素原子であり、
Rcが、アミジノ基である、請求項6に記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。 - Lが、ジアリールホスホリルオキシ基である、請求項1乃至9のいずれか1つに記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- Lが、ジフェニルホスホリルオキシ基である、請求項1乃至9のいずれか1つに記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- 化合物(1)が、(2S、4S)配置である、請求項1乃至11のいずれか1つに記載のカルバペネム系抗菌剤(4)又はその塩を製造する方法。
- R1が、メチル基である、請求項13に記載の化合物(1)又はその塩。
- 化合物(1)が、(2S、4S)配置である、請求項13又は14に記載の化合物(1)又はその塩。
- R1が、メチル基である、請求項16に記載の化合物(1)又はその塩を製造する方法。
- 化合物(5)が、(2S、4S)配置又は(2R、4R)配置である、請求項16又は17に記載の化合物(1)又はその塩を製造する方法。
- 化合物(5)が、(2S、4S)配置である、請求項16又は17に記載の化合物(1)又はその塩を製造する方法。
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