本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、建物内空間の入隅に取り付けるスピーカーシステムであって、短い作業時間で取り付けられ、かつ、室内美観を損なうことなく取り付けることができ、また、スピーカーで発生する振動が壁面に伝わりにくいスピーカーシステム、および、スピーカーシステムの取付方法を提供することにある。
本発明のスピーカーシステムは、スピーカーと、建物内空間の入隅に沿って配設される建材本体を複数に分割して形成されてスピーカーが取り付けられるキャビネット筒体と、複数のキャビネット筒体の隣接する対向端部同士を連結する連結部材と、を備えるスピーカーシステムであって、連結部材が、キャビネット筒体の端部を係止する仕切壁部と、仕切壁部から突設されてキャビネット筒体の端部に嵌合する第1嵌合突起ならびに第2嵌合突起と、を備え、仕切壁部が、第1嵌合突起が突設する第1仕切壁と、第2嵌合突起が突設する第2仕切壁と、第1仕切壁と第2仕切壁とを連結し、かつ、仕切壁部の天面側ならびに背面側においてキャビネット筒体よりも突出し建物内空間の壁面に当接する当接連結壁と、を備え、当接連結壁が、第1仕切壁、第2仕切壁および当接連結壁が規定する内部空間から仕切壁部の天面側もしくは背面側に連通する固定ネジ孔を有する。
好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、連結部材で連結された複数のキャビネット筒体のうちで連結部材が嵌合しない終端部に嵌合する第1終端固定部材および第2終端固定部材をさらに備え、第1終端固定部材および第2終端固定部材がそれぞれ、キャビネット筒体の端部を固定する固定部と、固定部から突設されてキャビネット筒体の端部に嵌合する嵌合突起と、を備え、固定部が、嵌合突起が突設する仕切壁と、仕切壁と離隔して設けられる化粧壁と、仕切壁と化粧壁とを連結し、かつ、固定部の天面側ならびに背面側においてキャビネット筒体よりも突出し、建物内空間の壁面に当接する当接固定壁と、を備え、当接固定壁が、仕切壁、化粧壁および当接固定壁が規定する内部空間から固定部の天面側もしくは背面側に連通する固定ネジ孔を有する。
さらに好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、連結部材の固定ネジ孔を貫通し、かつ、建物内空間の壁面に螺入する固定ネジと、第1終端固定部材の固定ネジ孔を貫通し、かつ、建物内空間の壁面に螺入する固定ネジと、第2終端固定部材の固定ネジ孔を貫通し、かつ、建物内空間の壁面に螺入する固定ネジと、をさらに備え、連結部材の当接連結壁と、第1終端固定部材の当接固定壁と、第2終端固定部材の当接固定壁が、それぞれ建物内空間の壁面に螺着される。
また、好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、複数のキャビネット筒体がそれぞれ、建材本体の延びる方向に延設されたスピーカーへの配線を収容する配線溝を備え、連結部材が、配線溝に連通する連結配線溝をさらに備える。
また、さらに好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、通気性を有する前面パネルをさらに複数備え、複数の前面パネルが、複数のキャビネット筒体の前面側にそれぞれ取り付けられ、連結部材ならびに第1終端固定部材および第2終端固定部材を覆う形状に形成されている。
さらに好ましくは、本発明のスピーカーシステムは、連結部材の当接連結壁と、第1終端固定部材ならびに第2終端固定部材の当接固定壁とに、さらに弾性材料製の振動吸収層が設けられている。
また、本発明のスピーカーシステムの取付方法は、スピーカーシステムを建物内空間の入隅の壁面に沿って取り付けるスピーカーシステム取付方法であって、第1終端固定部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着する工程と、第1終端固定部材の嵌合突起とキャビネット筒体の一方の端部とを嵌合させる工程と、キャビネット筒体の他方の端部と連結部材の第1嵌合突起とを嵌合させる工程と、連結部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着する工程と、連結部材の第2嵌合突起と複数のうち他のキャビネット筒体の一方の端部とを嵌合させる工程と、複数のうち他のキャビネット筒体の他方の端部と第2終端固定部材の嵌合突起とを嵌合させる工程と、第2終端固定部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着する工程と、を含む。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明のスピーカーシステムは、スピーカーと、建物内空間の入隅に沿って配設される建材本体を複数に分割して形成されてスピーカーが取り付けられるキャビネット筒体と、複数のキャビネット筒体の隣接する対向端部同士を連結する連結部材と、を備え、好ましくはさらに、連結部材で連結された複数のキャビネット筒体のうちで連結部材が嵌合しない終端部に嵌合する第1終端固定部材および第2終端固定部材を備える。スピーカーシステムは、連結部材ならびに第1終端固定部材および第2終端固定部材に設けられた固定ネジ孔に、固定ネジを貫通させ、かつ、前記建物内空間の壁面に螺入させることにより、建物内空間の入隅に沿って取り付けられる。
ここで、連結部材が、その天面側ならびに背面側においてキャビネット筒体よりも突出し建物内空間の壁面に当接する当接連結壁を備え、また、第1終端固定部材および第2終端固定部材が、同様にその天面側ならびに背面側においてキャビネット筒体よりも突出し建物内空間の壁面に当接する当接固定壁を備える。固定ネジ孔は、当接連結壁ならびに当接固定壁に設けられており、それぞれの前面側に規定された内部空間からドライバー等の工具を使って固定ネジを螺着させることができる。したがって、スピーカーシステムが建物内空間の入隅に沿って取り付けられる場合に、スピーカーが取り付けられるキャビネット筒体が直接に壁面に当接することが無く、スピーカーで発生する振動を壁面に伝わりにくくすることができる。連結部材の当接連結壁と、第1終端固定部材ならびに第2終端固定部材の当接固定壁とに、さらに弾性材料製の振動吸収層を設ける場合には、さらにスピーカーで発生する振動を壁面に伝わりにくくすることができる。
スピーカーシステムを建物内空間の入隅の壁面に沿って取り付ける方法としては、作業者は、まず、最初に、第1終端固定部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着し、第1終端固定部材の嵌合突起とキャビネット筒体の一方の端部とを嵌合させ、キャビネット筒体の他方の端部と連結部材の第1嵌合突起とを嵌合させ、連結部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着し、スピーカーシステムを構成する最初のキャビネット筒体を壁面に取り付ける。その後、作業者は、連結部材の第2嵌合突起と次のキャビネット筒体の一方の端部とを嵌合させ、さらに連結部材をキャビネット筒体の他方の端部に嵌合させ、連結部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着する。そして、最後に、作業者は、キャビネット筒体の他方の端部と第2終端固定部材の嵌合突起とを嵌合させ、第2終端固定部材を固定ネジで建物内空間の壁面に螺着する。スピーカーシステムをこのような取付方法が可能な構成とすることで、作業者は、スピーカーシステムを建物内空間の入隅に沿って、短い作業時間で、かつ、室内美観を損なわないように取り付けることができる。
このスピーカーシステムは、複数のキャビネット筒体がそれぞれ、建材本体の延びる方向に延設されたスピーカーへの配線を収容する配線溝を備え、連結部材が、配線溝に連通する連結配線溝をさらに備える。配線溝内にスピーカーへの配線を収容すると、配線が露出せずに室内美観を損なわない。また、通気性を有する前面パネルをさらに複数備え、複数の前面パネルが、複数のキャビネット筒体の前面側にそれぞれ取り付けられ、連結部材ならびに第1終端固定部材および第2終端固定部材を覆う形状に形成されている。これらの前面パネルをキャビネット筒体に取り付けられることで、スピーカーシステムを建物内空間の入隅に沿って取り付けても室内美観を損なわない。
本発明のスピーカーシステムおよびスピーカーシステムの取付方法は、建物内空間の入隅に取り付けるスピーカーシステムを、短い作業時間で取り付けられ、かつ、室内美観を損なうことなく取り付けることができ、また、スピーカーで発生する振動を壁面に伝わりにくくすることができる。
図1は、建物の一部である居室と、それに取り付ける本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステムについて説明する図である。居室(建物内空間)は略方形状であり、図1(a)は、その内部から一方の壁面2の方向を見た概観図である。壁面2の左右には壁面3および4が、壁面2の上下には天井1および床面5が形成されている。例えば、壁面2には映像表示器9が設置されており、居室内の視聴者に映像を再生する。そして、天井1と壁2、3および4とが交差するコーナーには天井側入隅がそれぞれ形成されており、これらの天井側入隅には、スピーカーシステム6、7および8が設置されており、居室内の視聴者に音声を再生する。なお、図示しない居室の他の入隅、つまり、天井1と壁2に対抗する反対面の壁とが交差するコーナーの天井側入隅にも、スピーカーシステムを配置してもよい。
図1(b)は、図1(a)の天井1と壁面2とが形成する天井側入隅に配置されるスピーカーシステム6を説明する一部拡大図である。スピーカーシステム6は、樹脂を押し出し成形することにより形成されている建物用建材を複数に分割して形成されたキャビネットを備え、音声を再生する一方で、天井側入隅に沿って配設される廻り縁として機能するスピーカーシステムである。スピーカーシステム6は、後述するように、押出成形されたキャビネットの前面を覆う通気性を有する前面パネルを備え、居室内の視聴者からはこの前面パネルが主に露出している。スピーカーシステム6を入隅に取り付けるには、作業者が、居室の内側からネジ等を使って、天井1もしくは壁面2にスピーカーシステム6を螺着して取り付ける。他のスピーカーシステム7および8についても、同様である。
このスピーカーシステムのキャビネットは、音質を改善するためにABS樹脂に1〜数十%の木粉が混ぜられた材料、並びに、成形時に発泡する発泡剤を含む材料を押し出し成形により形成する。この木粉は、新しい木材から作ることもできるが、廃材等を利用して作ることもできる。また、前面パネルは、代表的には、凹凸を有する押出成形材に通気孔を設けたグリルに、この通気孔をサランネット等の織布で覆ったネットグリルや、折り曲げ加工したパンチングネットである。
図2は、更に詳しく本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステム10の構成について説明する斜視図である。例えば、図2(a)で示すように、天井側入隅に配置されるスピーカーシステム10は、押出形状が同一の複数のキャビネット11、12、13、14および15が、相互に連結して構成されている。図2(b)は、このスピーカーシステム10を構成の一部を展開して説明する斜視図である。複数のキャビネット11、12、13、14および15の前面側には、それぞれ前面パネル31、32、33、34および35が、それぞれのキャビネットの前面側を覆うように取り付けられている。キャビネット11、12および13には、それぞれ電気音響変換ユニット21、22、もしくは、23が取り付けられ、音声を再生するスピーカーが構成されている。例えば、電気音響変換ユニット21は、スピーカー21aと、高音用ツィーター21bと、ダクト兼ターミナル21cと、がキャビネット11の前面側に設けられた開口に取り付けられており、音声を再生するスピーカーを構成する。また、ダクト兼ターミナル21cは、キャビネット11の内と外の空間を連通するバスレフダクトと、配線接続用のターミナルとを備えている。一方で、キャビネット14および15には、電気音響変換ユニットは取り付けられない。つまり、このスピーカーシステム10の場合には、音声を再生するスピーカーと、音声を再生しないキャビネットとが、相互に連結して構成されている。
隣接するキャビネット同士は、後述する連結部材によって連結される。例えば、キャビネット11の左側に位置するキャビネット12は、隣接する対向端部同士を連結する連結部材41により連結される。同様に、連結部材41と同一形状の連結部材42がキャビネット11と13を、連結部材43がキャビネット14と12を、連結部材44がキャビネット13と15を連結している。また、スピーカーシステムの両端、つまり、連結部材が嵌合しない終端部には、後述する第1終端固定部材および第2終端固定部材が嵌合される。図2(b)のスピーカーシステム10では、キャビネット14の左端に第1終端固定部材51と、キャビネット15の右端に第2終端固定部材52と、が取り付けられている。その結果、連結されて構成されたスピーカーシステム10は、天井側入隅に沿うような直線状に形成され、室内美観を改善する廻り縁として機能する。
なお、スピーカーシステム10の構成は、複数のキャビネット11〜15が、相互に連結して構成されている場合に限られるものではない。図2の例に限定されるものではなく、複数のキャビネットが連結部材で連結していればよい。また、いずれかのキャビネットに電気音響変換するスピーカーユニットが取り付けられていればよい。また、ダクト兼ターミナル21cに代えて、別々に形成されたバスレフダクトならびにターミナルをそれぞれ取り付けても良い。
図3は、天井1および壁面2にネジ50によって取り付けられたスピーカーシステム10の図1(a)におけるA−A’側方断面図である。図3では、A−A’断面のキャビネット11および前面パネル31の破断面がハッチングされて表されており、キャビネット11に取り付けられるスピーカーユニット21aと、後述する内部蓋61aと、キャビネット11の左側に連結する連結部材41とが、側面視されている。天井1および壁面2が図示するような材厚が薄い内壁材料の場合には、内壁材料の裏に沿わせる補強柱材(根太、等)を設けて、その補強柱材にネジ50が螺合するのが好ましい。なお、ネジ50を螺合するのは、天井1もしくは壁面2のいずれか一方でもよい。
押出成形されるキャビネット11の断面形状は、バッフル面11aと、下側フランジ11bと、上側フランジ11cと、キャビネット後面11dとから構成される。バッフル面11aおよびキャビネット後面11dで囲まれた空間は、スピーカー21a等が収まる空間を規定している。また、下側フランジ11bは、スピーカーのターミナルに音声信号を伝送する配線20を収容する配線溝部を規定している。また、下側フランジ11bおよび上側フランジ11cは、それぞれ前面パネル31を取り付ける前面パネル取付部を規定している。前面パネル31は、パンチングネットを折り曲げ加工して成形したものであり、下側フランジ11bおよび上側フランジ11cのそれぞれの係止部に端部が嵌合することで、キャビネット11に取り付けられている。なお、前面パネル31をキャビネット11に取り付ける方法は、上記の場合に限られず、例えば、図1(b)に示すスピーカーシステム6のように、上側フランジ11c側へ表側からネジ止めしてもよい。
図4は、連結部材41を説明する図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は天井1、壁面2およびネジ50を点線で書き加えた側面図、図4(c)は天井1側から見たD−D’断面図である。連結部材は、例えば、ABS樹脂を射出成形して形成され、キャビネットの端部を係止する仕切壁部と、仕切壁部から突設されてキャビネットの端部に嵌合する嵌合突起を備え、隣接するキャビネット同士を連結する。具体的には、連結部材41は、第1嵌合突起41bが突設する第1仕切壁41aと、第2嵌合突起41dが突設する第2仕切壁41cと、第1仕切壁41aと第2仕切壁41cとを連結し、かつ、仕切壁部の天面側ならびに背面側においてキャビネットよりも突出し建物内空間の壁面に当接する当接連結壁41eと、を備え、当接連結壁41eが、第1仕切壁41a、第2仕切壁41cおよび当接連結壁41eが規定する内部空間41fから仕切壁部の天面側もしくは背面側に連通する固定ネジ孔41gを有する。
図4(b)に示されるように、スピーカーシステム10は、天井1および壁面2に対して、連結部材41を介して複数のネジ50で取り付けられる。複数のネジ50は、そのネジ頭の最大外径が固定ネジ孔41gよりも大きく、かつ、内部空間41fに収容される大きさであり、固定ネジ孔41gを貫通して、当接連結壁41eが天井1および壁面2に螺着する。内部空間41fは、前面側からドライバーを挿入して背面側の固定ネジ孔41gにネジ50を取り付けられ、また、下側からドライバーを挿入して天井側の固定ネジ孔41gにネジ50を取り付けられる、斜めに開いた開口を有する。好ましくは、連結部材41は、図4(b)に示されるようなキャビネットの配線溝部に連通する配線孔(もしくは配線用切欠)41hを有していてもよく、配線孔41は、スピーカーのターミナルに音声信号を伝送する配線20を収容する。
図5は、スピーカーシステム10の連結部材41の周辺構造について、図3における天井1側から見たC−C’断面の拡大断面図である。連結部材41は、キャビネット11の左側端部とキャビネット12の右側端部とを連結し、スピーカーシステム10をネジ50で壁面2に固定している。樹脂またはゴムで成型される内部蓋61aは、キャビネット11のバッフル面11aおよびキャビネット後面11dで囲まれた空間の左側端部を閉塞し、バッフル面11aおよびキャビネット後面11dで囲まれた空間を、スピーカーの背面に連結される音響的な容量として機能させる。(なお、図示しないキャビネット11の右側端部も、同様に図示しない内部蓋61bにより閉塞される。)同様に、内部蓋62aは、キャビネット12のバッフル面12aおよびキャビネット後面12dで囲まれた空間の右側端部を閉塞し、バッフル面12aおよびキャビネット後面12dで囲まれた空間を、スピーカーの音響的な容量として機能させる。連結部材41の仕切壁部で隣り合う前面パネル31および32は、連結部材41を前面から覆うので、図5の拡大断面図においては、その一部がそれぞれ床面5側に上面視されている。
連結部材41の第1嵌合突起41bは、キャビネット11のバッフル面11aおよびキャビネット後面11dで囲まれた空間の左側端部内側に嵌合し、キャビネット11の左側端部は、第1仕切壁41aに当接する。また、連結部材41の第2嵌合突起41dは、キャビネット12のバッフル面12aおよびキャビネット後面12dで囲まれた空間の右側端部内側に嵌合し、キャビネット12の右側端部は、第2仕切壁41bに当接する。固定ネジ孔41gを有する当接連結壁41eは、第1仕切壁41aと第2仕切壁41cとを連結し、かつ、仕切壁部の天面側ならびに背面側においてキャビネット11および12よりも図示する寸法X(X>0)突出している。したがって、当接連結壁41eが、建物内空間の壁面2に当接するので、キャビネット11および12の背後には寸法Xの隙間が生じ、キャビネット11のキャビネット後面11d、あるいは、キャビネット12のキャビネット後面12dは、天井1および壁面2に直接に当接しない。その結果、スピーカーシステム10においては、スピーカーユニットで発生した振動がキャビネットを振動させても、キャビネットの振動が天井1および壁面2に伝わるのが抑制され、より好ましい音声再生が可能になる。
図6は、キャビネット14の左端に嵌合する第1終端固定部材51を説明する図であり、図6(a)は正面図、図6(b)は天井、壁面およびネジを点線で書き加えた側面図、図6(c)は図6(b)の反対側から見た側面図である。第1終端固定部材も、例えば、ABS樹脂を射出成形して形成され、キャビネット筒体の端部を固定する固定部と、固定部から突設されてキャビネット筒体の端部に嵌合する嵌合突起とを備える。具体的には、第1終端固定部材51の固定部は、嵌合突起51bが突設する仕切壁51aと、仕切壁51aと離隔して設けられる化粧壁51cと、仕切壁51aと化粧壁51cとを連結し、かつ、固定部の天面側ならびに背面側においてキャビネットよりも突出し、建物内空間の壁面に当接する当接固定壁51eと、を備える。当接固定壁51eは、仕切壁51a、化粧壁51cおよび当接固定壁51eが規定する内部空間51fから固定部の天面側もしくは背面側に連通する固定ネジ孔51gを有する。
図6(b)に示されるように、スピーカーシステム10は、天井1および壁面2に対して、連結部材41とともに第1終端固定部材51を介して複数のネジ50で取り付けられる。複数のネジ50は、固定ネジ孔51gを貫通して、当接固定壁51eが天井1および壁面2に螺着する。内部空間51fは、前面側からドライバーを挿入して背面側の固定ネジ孔51gにネジ50を取り付けられ、また、下側からドライバーを挿入して天井側の固定ネジ孔51gにネジ50を取り付けられる、斜めに開いた開口を有する。また、好ましくは、第1終端固定部材51は、図6(b)に示されるようなキャビネットの配線溝部に連通する配線孔(もしくは配線用切欠)51hを仕切壁51aに有していてもよい。配線孔51hは、スピーカーのターミナルに音声信号を伝送する配線20を収容する。
また、キャビネット15の右端に嵌合する第2終端固定部材52は、第1終端固定部材51を左右反転した形状である。第2終端固定部材も、例えば、ABS樹脂を射出成形して形成され、キャビネット筒体の端部を固定する固定部と、固定部から突設されてキャビネット筒体の端部に嵌合する嵌合突起とを備える。具体的には、第2終端固定部材52の固定部は、嵌合突起52bが突設する仕切壁52aと、仕切壁52aと離隔して設けられる化粧壁52cと、仕切壁52aと化粧壁52cとを連結し、かつ、固定部の天面側ならびに背面側においてキャビネットよりも突出し、建物内空間の壁面に当接する当接固定壁52eと、を備える。当接固定壁52eは、仕切壁52a、化粧壁52cおよび当接固定壁52eが規定する内部空間52fから固定部の天面側もしくは背面側に連通する固定ネジ孔52gを有する。
スピーカーシステム10は、天井1および壁面2に対して、連結部材41と、第1終端固定部材51とともに第2終端固定部材52を介して複数のネジ50で取り付けられる。複数のネジ50は、固定ネジ孔52gを貫通して、当接固定壁52eが天井1および壁面2に螺着する。内部空間52fは、前面側からドライバーを挿入して背面側の固定ネジ孔52gにネジ50を取り付けられ、また、下側からドライバーを挿入して天井側の固定ネジ孔52gにネジ50を取り付けられる、斜めに開いた開口を有する。また、好ましくは、第1終端固定部材52は、キャビネットの配線溝部に連通する配線孔(もしくは配線用切欠)52hを仕切壁52aに有していてもよい。配線孔52hは、スピーカーのターミナルに音声信号を伝送する配線20を収容する。
図7は、スピーカーシステム10の左右端部における第1終端固定部材51および第2終端固定部材52の嵌合構造について説明する図であり、図7(a)は、第1終端固定部材51の図3における天井1側から見たC−C’断面に相当する部分の拡大断面図、図7(b)は、第2終端固定部材52の図3における天井1側から見たC−C’断面に相当する部分の拡大断面図、である。
図7(a)では、第1終端固定部材51は、キャビネット14の左側端部と連結し、スピーカーシステム10をネジ50で壁面2に固定している。樹脂またはゴムで成型される内部蓋64aは、キャビネット14のバッフル面14aおよびキャビネット後面14dで囲まれた空間の左側端部を閉塞する。なお、キャビネット14の前面を覆う前面パネル34は、第1終端固定部材51の前面をも覆うので、図7(a)の拡大断面図においては、その一部がそれぞれ床面5側に上面視されている。同様に、図7(b)では、第2終端固定部材52は、キャビネット15の右側端部と連結し、スピーカーシステム10をネジ50で壁面2に固定している。樹脂またはゴムで成型される内部蓋65bは、キャビネット15のバッフル面15aおよびキャビネット後面15dで囲まれた空間の左側端部を閉塞する。なお、キャビネット14および15が、スピーカーが取り付けられない音声を再生しないキャビネットである場合には、内部蓋は省略されてもよい。また、キャビネット15の前面を覆う前面パネル35も、第2終端固定部材52の前面を覆うので、図7(b)の拡大断面図においては、その一部がそれぞれ床面5側に上面視されている。
後述するように、スピーカーシステム10の左端部をなす第1終端固定部材51は、その端が左側の壁面3に極めて近づくように壁面2に螺着される。一方、スピーカーシステム10の右端部をなす第2終端固定部材52も、その端が右側の壁面4に近くなるように壁面2に螺着される。押出成形されたキャビネット11〜15のそれぞれの長さは、スピーカーシステム10を取り付ける壁面の入隅の寸法に合わせて調整できるからである。また、キャビネット11〜15の前面を覆う前面パネル31〜35も、キャビネット11〜15の長さに対応して長さを変更することにより、左端の第1終端固定部材51から右端の第2終端固定部材52まで、スピーカーシステム10の前面側をほぼ覆うように設計することができる。したがって、スピーカーシステム10は、天井1および壁面2が形成する天井側入隅を、ほぼ全体に渡って隙間無く覆ってしまうので、室内美観を改善する廻り縁として機能する。
ここで、スピーカーシステム10を天井1および壁面2が形成する天井側入隅に沿って取り付ける好ましい方法を説明する。スピーカーシステム10を取り付ける作業者は、まず、最初に、第1終端固定部材51をその端が左側の壁面3に極めて近づくように配置し、固定ネジ50で天井1ならびに壁面2に螺着する。作業者は、第1終端固定部材51の内部空間51fにドライバーの先端を挿入して、固定ネジ50を固定ネジ孔51gに貫通させて壁面2に螺着させることができる。次に、作業者は、壁面2に螺着された第1終端固定部材51の嵌合突起51aと、キャビネット14の左端部とを嵌合させ、続いてキャビネット15の右端と連結部材43の(図示しない)第2嵌合突起43dとを嵌合させ、連結部材43を固定ネジ50で天井1ならびに壁面2に螺着する。このように、簡単にスピーカーシステム10を構成する最初のキャビネット14を、左側の壁面3に近づけて壁面に取り付けることができる。
その後、作業者は、壁面2に螺着された連結部材43の(図示しない)第1嵌合突起43bと次のキャビネット12の左端部とを嵌合させ、さらに連結部材41の第2嵌合突起41dをキャビネット12の右端部に嵌合させ、連結部材41を固定ネジ50で天井1ならびに壁面2に螺着する。このようにキャビネット12および連結部材41を連結させた後は、作業者は、同様の作業で、キャビネット11および連結部材42、キャビネット13および連結部材44、さらにキャビネット15を連結させる。そして、最後に、作業者は、キャビネット15の右端部と第2終端固定部材52の嵌合突起52bとを嵌合させ、第2終端固定部材52を固定ネジ50で天井1ならびに壁面2に螺着する。第2終端固定部材52をキャビネット15の右端部に嵌合させて、天井1ならびに壁面2に螺着するには、第2終端固定部材52の端と右側の壁面4との間の距離Wが、第2終端固定部材52の嵌合突起52bの高さYよりも、わずかでも大きければよい。キャビネット15の右端部と右側の壁面4との隙間に第2終端固定部材52を挿入し、キャビネット15の右端部に嵌合させることができる。距離Wが天井側入隅全体の長さに比べて小さければ、スピーカーシステム10は、天井1および壁面2が形成する天井側入隅をほぼ全体に渡って隙間無く覆うことになる。スピーカーシステム10をこのような取付方法が可能な構成とすることにより、作業者は、建物内空間の入隅に沿って、簡単に短い作業時間で、かつ、室内美観を損なわないように取り付けることができる。
上記の取付方法で構成されたスピーカーシステム10は、それぞれのキャビネット11〜15が下側フランジ11bにより規定される配線溝部を備え、かつ、それぞれの連結部材41〜44が配線溝部に連通する配線孔(もしくは配線用切欠)を備え、また、第1終端固定部材51および第2終端固定部材52も配線溝部に連通する配線孔(もしくは配線用切欠)を備える。相互に連通する配線溝部および配線孔は、それぞれのスピーカーのターミナルに音声信号を伝送する配線20を収容することができる。また、スピーカーシステム10の配線溝部および配線孔は、前面パネル31〜35に覆われて露出しない。前面パネル31〜35は、キャビネット11〜15の前面側にそれぞれ取り付けられ、それぞれの連結部材41〜44ならびに第1終端固定部材51および第2終端固定部材52を覆う形状に形成されている。居室内の視聴者には、天井1および壁面2が形成する天井側入隅をほぼ全体に渡って隙間無く覆う前面パネル31〜35が露出することになる。したがって、スピーカーシステム10では、キャビネットと連結部材のみならず、配線20も露出せずに、室内美観を損なわないようにできる。
スピーカーシステム10は、天井1および壁面2の入隅に沿って取り付けられる場合に、連結部材41〜44の当接連結壁が天井1および壁面2に当接し、かつ、第1終端固定部材51ならびに第2終端固定部材52の当接固定壁が天井1および壁面2に当接し、キャビネット11〜15が直接に天井1および壁面2に当接することが無いので、スピーカー21〜22で発生する振動を壁面に伝わりにくくすることができる。連結部材41〜44の当接連結壁と、第1終端固定部材51ならびに第2終端固定部材52の当接固定壁に、さらに弾性材料製の振動吸収層を設ける場合には、さらにスピーカー21〜22で発生する振動を天井1および壁面2に伝わりにくくすることができる。
図8は、弾性材料製の振動吸収層41iおよび41jをさらに設けた他の連結部材41を説明する図であり、図8(a)は正面図、図8(b)は天井1、壁面2およびネジ50を点線で書き加えた側面図、図8(c)は天井1側から見たD−D’断面図である。振動吸収層41iは、連結部材41の当接連結壁41eの天井1側に、振動吸収層41jは、連結部材41の当接連結壁41eの壁面2側に取り付けられる防振ゴム(もしくは防振樹脂)であり、連結部材41の固定ネジ孔41gに対応する孔41kを有している。図8(b)に示されるように、スピーカーシステム10は、天井1および壁面2に対して、連結部材41の振動吸収層41iおよび41jを介して、振動吸収層41iおよび41jを間に挟んで、複数のネジ50で取り付けられる。また、第1終端固定部材51ならびに第2終端固定部材52についても、図8の連結部材41と同様に、それぞれの当接固定壁51e、52eの天井1側および壁面2側に、弾性材料製の振動吸収層が取り付けられる。その結果、スピーカー10は、天井1および壁面2に振動が伝わりにくくなる。
なお、本実施例では、連結部材の嵌合突起、ならびに、第1終端固定部材ならびに第2終端固定部材の嵌合突起は、キャビネット端部の内側に嵌合しているが、キャビネット端部の外側に嵌合してもよく、この場合には当接連結壁もしくは当接固定壁と一体に成型されていてもよい。また、連結部材の嵌合突起、ならびに、第1終端固定部材ならびに第2終端固定部材の嵌合突起は、内部蓋を兼用してもよく、その場合には対応する内部蓋を省略することができる。
また、本実施例のスピーカーシステム10では、キャビネット同士を連結する連結部材は、図4に示したいわば直線状にキャビネット同士を連結する構成となっているが、本実施例の形態に限定されるものではない。例えば、キャビネット同士を90度の角度で連結する構成の連結部材であってもよく、その場合は、第1嵌合突起と第2嵌合突起とが互いに直交するように構成され、スピーカーシステムは、いわばL字型に曲がった構成となる。この連結部材の当接連結壁が、例えば、天井1と壁面2および3が形成する居室の入隅のコーナー部に当接すると、スピーカーシステムは、居室の入隅をそのコーナー部を含めて隙間無く覆うので、室内美観を損なわない。