JP4268781B2 - 円弧溝の加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械を用い、工具とワークとを相対的に移動させて、底面が円弧状凹曲面をなす溝を前記ワークに加工する溝加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図5及び図6に示すような半円筒状の凹部を有するワーク20の該凹部内面に、底面が円弧状凹曲面をなす溝(以下、円弧溝という)21を形成する代表的な加工法として、放電電極を用いた放電加工を挙げることができる。
【0003】
この加工法は、加工形状たる円弧溝21に合致した形状の放電部を備えた放電電極を用い、この電極とワーク20とを絶縁性を有する加工液中に浸漬し、電極とワーク20との間に微小な隙間を持たせた状態で両者間に電圧を印加して放電させることにより、ワーク20の放電部を溶融させて、ワーク20に電極の放電部と同形状の円弧溝21を形成するというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記放電電極を用いた放電加工法は、放電電極とワーク20との間に放電を生起させることにより、ワーク20の放電部を溶融させて、円弧溝21を形成するというものであり、その加工速度が遅いため、生産性が悪く、しかも加工コストが高いという問題がある。また、加工形状に応じた専用の電極が必要であるため、この面でも加工コストが高くなる。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、ワークに底面が円弧状凹曲面をなす溝を加工するに当たり、これを低コストでしかも効率良く行うことができる溝加工方法の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記目的を達成するための本発明は、主軸とテーブルとを直交3軸方向に相対的に移動可能に設けられた工作機械を用い、主軸に装着した工具とテーブルに固定したワークとを相対移動させて、底面が円弧状凹曲面をなす溝を前記ワークに加工する方法であって、
半径が前記溝底面の曲率半径より小径のメタルソーを前記工具として使用するとともに、該メタルソーをその軸中心に非回転となし、
前記メタルソーを、前記ワークに対して所定の切り込み量を有するようにその半径方向に位置決めした後、
前記メタルソーの外周に形成された刃部が、前記切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と接するように、前記メタルソーとワークとを相対的に移動させて、前記ワークに底面が円弧状凹曲面をなす溝を形成するようにしたことを特徴とする円弧溝の加工方法に係る。
【0007】
この発明によれば、前記メタルソーが、その軸中心に非回転とされ、前記ワークに対して所定の切り込み量を有するようにその半径方向に位置決めされた後、当該メタルソーの外周に形成された刃部が、前記切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と接するように、前記メタルソーとワークとが相対的に移動せしめられる。
【0008】
この時、前記メタルソーは、その外周部に形成された各刃部がそれぞれ個々に円弧状の軌跡を描くように移動する。これにより、前記ワークは、これらの各軌跡に応じた形状に削り取られる。
【0009】
以降、前記加工軌跡が前記円弧溝と一致するまで、前記メタルソーとワークとの上記相対移動が、前記切り込み量に応じて繰り返され、これにより、ワークに所望の円弧溝が形成される。尚、前記切り込み量は、前記ワークの材質や要求される加工精度などに応じて適宜設定される。
【0010】
斯して、この発明によれば、メタルソーをその軸中心に非回転とした状態で、その外周に形成された刃部が、切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と接するように、メタルソーとワークとを相対的に移動させることにより、前記各刃部がそれぞれ円弧状に移動せしめられ、その移動軌跡に応じた形状に前記ワークが削り取られて、当該ワークに底面が円弧状の凹曲面をした溝が形成される。
【0011】
従って、放電加工に比べて加工速度が速く、効率的に加工することができるので、生産性を向上させることができ、加工コストを抑制することができる。また、加工形状に応じた専用の電極が不要であり、この点においても、加工コストを抑制することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態に係る円弧溝の加工方法について添付図面に基づき説明する。尚、以下の説明では、工作機械として図1に示すような立形マシニングセンタ1を用いて、図5及び図6に示すような半円筒状の凹部を有するワーク20の該凹部内面に、円弧溝21を形成するものとする。また、前記円弧溝21をワーク20に荒加工なしに加工するものとして説明するが、これに限られるものではなく、荒加工後の仕上げ加工に本例の円弧溝の加工方法を適用しても良い。
【0013】
図1に示すように、前記立形マシニングセンタ1は、ベッド2と、該ベッド2上に配設されたコラム3と、該コラム3に支持され、矢示Z軸方向に移動可能になった主軸頭4と、工具10を保持し、前記主軸頭4によって支持される主軸5と、前記ベッド2上に配設され、矢示Y軸方向に移動可能になったサドル6と、該サドル6上に配設され、矢示X軸方向に移動可能になったテーブル7などからなる。
【0014】
また、前記立形マシニングセンタ1は、前記主軸頭4を矢示Z軸方向に移動させるZ軸送り機構部(図示せず)と、前記サドル6を矢示Y軸方向に移動させるY軸送り機構部(図示せず)と、前記テーブル7を矢示X軸方向に移動させるX軸送り機構部(図示せず)と、前記Z軸送り機構部(図示せず),Y軸送り機構部(図示せず)及びX軸送り機構部(図示せず)の作動を、例えば、適宜入力されたNCプログラムに基づき制御する数値制御装置(図示せず)を備える。また、前記テーブル7には、ワーク20が載置,固定されるように構成されている。
【0015】
前記工具10には、例えば、図2に示すような工具を用いる。この工具10は、その外周に刃部11aが形成されたメタルソー11と、該メタルソー11をその軸中心に非回転となるように保持,固定するホルダ12などからなる。
【0016】
尚、前記メタルソー11は、例えば、前記ホルダ12に形成されたキー12aと前記メタルソー11に形成されたキー溝11bとを係合させることによって、前記ホルダ12により軸中心に非回転に保持,固定される。また、前記メタルソー11には、その半径が前記溝21底面の曲率半径より小径のものが使用される。
【0017】
そして、このように構成された立形マシニングセンタ1及び工具10を用いて、ワーク20に円弧溝21を加工する。まず、前記ワーク20を前記テーブル7に載置,固定した後、前記メタルソー11の軸線が前記円弧溝21の軸線と平行となるように、前記主軸5をその軸中心に回転させて、これを割り出す。
【0018】
ついで、図3に示すように、前記メタルソー11を、前記ワーク20に対して所定の切り込み量dを有するようにその半径方向に位置決めした後、前記メタルソー11の外周に形成された刃部11aが、前記切りこみ量dに応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡Lと接するように、前記工具10とワーク20とを相対的に移動させるべく、前記主軸頭4,サドル6及びテーブル7を、前記Z軸送り機構部(図示せず),Y軸送り機構部(図示せず)及びX軸送り機構部(図示せず)によりそれぞれ移動させる。
【0019】
この時、前記メタルソー11は、その外周部に形成された各刃部11aがそれぞれ個々に円弧状の軌跡を描くように移動する。即ち、具体的には、図4に示すように、例えば、前記刃部11aをそれぞれ刃部a,刃部b及び刃部cとすると、前記刃部a,刃部b及び刃部cがそれぞれ個々に円弧状の軌跡a,軌跡b及び軌跡cを描くようになっている。これにより、前記ワーク20は、これらの軌跡a,軌跡b及び軌跡cに応じた形状に削り取られる。尚、図4においては、一部の軌跡(軌跡a,軌跡b及び軌跡c)のみを図示している。
【0020】
以降、前記加工軌跡Lが前記円弧溝21と一致するまで、前記メタルソー11とワーク20との上記相対移動が、前記切り込み量dに応じて繰り返され、これにより、ワーク20に所望の円弧溝21が形成される。尚、前記切り込み量dは、前記ワーク20の材質や要求される加工精度などに応じて適宜設定される。
【0021】
斯して、この円弧溝の加工方法によれば、メタルソー11をその軸中心に非回転とした状態で、その外周に形成された刃部11aが、切り込み量dに応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡Lと接するように、メタルソー11とワーク20とを相対的に移動させることにより、前記各刃部11aがそれぞれ円弧状に移動せしめられ、その移動軌跡(軌跡a,軌跡b及び軌跡cなど)に応じた形状に前記ワーク20が削り取られて、当該ワーク20に底面が円弧状の凹曲面をした溝21が形成される。
【0022】
従って、放電加工に比べて加工速度が速く、効率的に加工することができるので、生産性を向上させることができ、加工コストを抑制することができる。また、加工形状に応じた専用の電極が不要であり、この点においても、加工コストを抑制することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の取り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0024】
上述の例では、立形マシニングセンタ1を用いた際の円弧溝の加工方法をその一例として説明したが、これに限られるものではなく、例えば、横形マシニングセンタを用いた加工にも、これを適用することができる。
【0025】
また、本例の円弧溝の加工方法によって加工される円弧溝は、図5及び図6に示すような半円状の円弧溝21に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る円弧溝の加工方法により加工するための工作機械(立形マシニングセンタ)の概略構成を示した斜視図である。
【図2】本実施形態の円弧溝の加工方法によりワークを加工するための工具の概略構成を示した正面図である。
【図3】本実施形態の円弧溝の加工方法において、工具とワークとの相対移動を説明するための説明図である。
【図4】本実施形態の円弧溝の加工方法において、刃部の移動を説明するための説明図である。
【図5】ワークの一例を説明するための説明図である。
【図6】図5における矢示A−A方向の断面図である。
【符号の説明】
1 立形マシニングセンタ
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 主軸
6 サドル
7 テーブル
10 工具
11 メタルソー
11a 刃部
11b キー溝
12 ホルダ
12a キー
20 ワーク
21 円弧溝

Claims (1)

  1. 主軸とテーブルとを直交3軸方向に相対的に移動可能に設けられた工作機械を用い、主軸に装着した工具とテーブルに固定したワークとを相対移動させて、底面が円弧状凹曲面をなす溝を前記ワークに加工する方法であって、
    半径が前記溝底面の曲率半径より小径のメタルソーを前記工具として使用するとともに、該メタルソーをその軸中心に非回転となし、
    前記メタルソーを、前記ワークに対して所定の切り込み量を有するようにその半径方向に位置決めした後、
    前記メタルソーの外周に形成された刃部が、前記切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と接するように、前記メタルソーとワークとを相対的に移動させて、前記ワークに底面が円弧状凹曲面をなす溝を形成するようにしたことを特徴とする円弧溝の加工方法。
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