JP4268588B2 - 送風ファン及びそれを備えた作業機 - Google Patents

Description

本発明は、羽根車と、該羽根車との間に渦巻き状のスクロール通路を画成するファンケースと、前記羽根車を回転駆動する駆動源と、を有する送風ファン、及び、該送風ファンを備えたパワーブロワや薬剤散布機等の風力利用作業機に関する。

従来から、例えば、パワーブロワや薬剤散布機等の携帯型（ハンドヘルド式や背負式等）風力利用作業機においては、高速気流を生成するため、遠心式の送風ファンが使用されている。かかる送風ファンは、通常、基板に所定枚数の羽根が放射状に配置された羽根車と、該羽根車が偏心配置され、前記羽根車の基板中央部に対面して吸込口が形成されるとともに、前記羽根車の外周との間に、始端部が狭幅のノーズ部となり、かつ、終端部が広幅の吐出口となる渦巻き状のスクロール通路を画成するファンケースと、前記羽根車を回転駆動するための内燃エンジンや電動機等の駆動源と、備える（例えば、下記特許文献１等を参照）。

かかる従来の送風ファンでは、外部に放出される騒音が問題となっている。この騒音は、前記狭幅のノーズ部付近で空気が最も圧縮され、この圧縮された空気が前記ノーズ部に衝突することにより発生すると考えられ、このノーズ部を発生源とする騒音は、前記吸込口から直接外部に放出されることがわかっている。かかる騒音を低減すべく、従来においては、下記特許文献２、３等にも見られるように、羽根や羽根車の形状等を変える、吸込口の形状（通常は円形）を変更する等の方策が提案されている。

特開平１０−１９６５９６号公報 特開平１１−１８２４９９号公報 特開平７−９１３９２号公報

前記した如くの従来の送風ファンにおいては、既存の送風ファンの部品構造を大幅に変更する必要が生じるとともに、構成が複雑となり、また、騒音の低減化のためにファン性能が低下（吸入効率、吐出容量等が低下）するおそれがある。

本発明は、前記のような従来の問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、既存のファン構成部品の構造を大幅に変更することなく、また、ファン性能の低下をさほど招くことなく、比較的簡素な構成のもとで、ノーズ部を発生源として直接外部に放出される騒音を効果的に低減できるようにされた送風ファン及びそれを備えた風力利用作業機を提供することにある。

前記の目的を達成すべく、本発明に係る送風ファンは、基本的には、所定枚数の羽根を有する羽根車と、該羽根車が偏心配置され、前記羽根車の基板中央部に対面して吸込口が形成されるとともに、前記羽根車の外周との間に、始端部が狭幅のノーズ部となり、かつ、終端部が広幅の吐出口となる渦巻き状のスクロール通路を画成するファンケースと、前記羽根車を回転駆動する駆動源と、を備える。

そして、前記ノーズ部を発生源として外部に放出される騒音を低減すべく、前記ノーズ部から前記低減すべき騒音の放射方向に沿って１／２波長分だけ離隔した位置に、前記吸込口の一部を覆うように音波反射手段が設けられていることを特徴としている。

好ましい態様では、前記吸込口を覆うように、吸入用開口が多数形成された格子状等の骨組み部からなる皿状のファンカバーが配設され、該ファンカバーが前記音波反射手段として機能するように、前記ファンカバーに前記吸入用開口の幾つかが閉塞されてなる盲板部が形成される。

他の好ましい態様では、前記音波反射手段の位置が前記羽根車の回転数に応じて可変とされる。
また、本発明に係る風力利用作業機は、前記構成の送風ファンを備えていることを特徴としている。

本発明に係る送風ファンは、騒音発生源であるノーズ部から低減すべき騒音の放射方向に沿って１／２波長分だけ離隔した位置に、吸込口の一部を覆うように反射板（もしくは盲板部）等の音波反射手段が設けられているので、ノーズ部で発生した騒音（音波）は、吸込口から直接外部へ放出されることなく反射板（もしくは盲板部）に衝突してはね返されて、少なくともその一部は逆位相の波として騒音発生源であるノーズ部に向かう。そのため、ノーズ部で発生する騒音（音波）は、この逆位相の反射波により減衰され、直接外部に放出される騒音が効果的に低減される。

また、本発明の送風ファンでは、既存のものに反射板を追加あるいはファンカバーに盲板部を設けるだけでよいので、ファン構成部品に大幅な改造を伴い、かつ、構成が複雑になる嫌いのある従来のものに比してコスト面で有利となり、また、吸込口の一部を音波反射手段としての反射板（もしくは盲板部）で覆うだけでも良いので、ファン性能にはさほど悪影響を及ぼさない。

以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。

図１は、本発明に係る送風ファンを備えた風力利用作業機の一例としてのハンドヘルド式のパワーブロワの一実施形態を示している。

図示実施形態のパワーブロワ１０は、スタンド１２、把手１４、図示しない噴管の接続用継手１６等が設けられた遠心式の送風ファン２０を備える。該送風ファン２０は、図１に加えて図２及び図３を参照すればよくわかるように、基板２５ａに所定枚数（ここでは１４枚）の断面へ字状の羽根２６がほぼ等角度間隔で放射状に配置された円形の羽根車２５と、該羽根車２５を内蔵するファンケース２１と、前記羽根車２５を図３及び図４で見て反時計回りの方向（回転方向Ｐ）に回転駆動するための内燃エンジンや電動機等の駆動源４０と、を備える。

前記ファンケース２１は、表板部２１ａ、裏板部２１ｂ及び側板部２１ｃからなり、その内部に前記羽根車２５が、図３及び図４に示す如く左寄りに偏心配置されている。前記表板部２１ａには、前記羽根車２５の前記基板中央部２５ａに対面して吸込口２２が形成されている。前記ファンケース２１は、前記羽根車２５の外周２５ｂとの間に、始端部が狭幅のノーズ部２３ａとなり、かつ、終端部が広幅の吐出口２３ｂとなる渦巻き状のスクロール通路２３を画成している。

また、前記吸込口２２を覆うように、格子状等の骨組み部からなる皿状（断面台形状）のファンカバー３０が配設されている。該ファンカバー３０の底面部３０ａ（図１において手前側の面部）には、多数の長短円弧状の吸入用開口３２、３２，…が所定の配列形態をもって形成され、また、側周面部３０ｂ（図２参照）にも、多数の大小矩形状の吸入用開口３３、３３，…が所定の配列形態をもって形成されている。

そして、本実施形態では、前記ノーズ部２３ａを発生源として外部に放出される騒音（笛吹き音）を低減すべく、前記ファンカバー３０の底面部３０ａのうち、図１において右斜め上部分に位置する半月状領域が、前記吸入用開口３２、３２、…の幾つかが閉塞されてなる音波反射手段としての盲板部３５（図１において網掛けされている部分）となっている。ここで、前記盲板部３５は、図４に示される如くに、前記羽根車２５の通常作業時回転数が、例えば、７０００(rpm)であるときにおける、前記ノーズ部２３ａから前記騒音（音波）の放射方向（前記ノーズ部２３ａの接線に直交する方向）に沿って１／２波長分だけ離隔した点Ｑを中心とした部位とされている（図５も参照）。

これを詳しく説明すると、一般に、音（音波）の波長λは、次式（１）で表される。
波長λ ＝ 音速（距離）／周波数（Hz） ・・・（１）

羽根車２５の常用回転数（Ｎ）を７０００(rpm)、羽根２６の枚数（Ｚ）を１４とすれば、ＮＺ周波数成分（ピーク周波数）は、７０００×１４／６０＝１６３０（Hz）となる。

作業現地空気の温度を３０°Ｃとすれば、音速は約３５０（m）となるので、前記（１）式から、波長λ＝３５０／１６３０＝０.２１４（m）となり、したがって、１／２波長は、１０７（ｍｍ）となる。

これに基づき、前記ノーズ部２３ａから作業者の平均的耳元位置に向かう低減すべき騒音の放射方向Ｅに沿って１／２波長分である１０７（ｍｍ）だけ離隔した点Ｑが前記盲板部３５の内面略中央部に位置するように、前記ファンカバー３０（盲板部３５の位置、大きさ等）の寸法形状が設定されている。

このように、本実施形態の送風ファン２０では、騒音発生源であるノーズ部２３ａから最も耳障りな騒音の放射方向Ｅに沿って１／２波長分だけ離隔した位置Ｑを中心に、吸込口２２の一部を覆うようにファンカバー３０に盲板部３５が設けられているので、ノーズ部２３ａで発生した騒音（音波）の少なくとも一部は、盲板部３５の内面に衝突してはね返され、逆位相で騒音発生源であるノーズ部２３ａに向かう。そのため、ノーズ部２３ａで発生する騒音（音波）は、逆位相の反射波により減衰され、これによって、直接外部に放出される騒音が効果的に低減される。

また、本実施形態の送風ファン２０では、基本的には既存のファンカバー３０に盲板部３５を設けるだけ（幾つかの吸入用開口３２、３２、…を閉塞するだけ）でよいので、ファン構成部品に大幅な改造を伴い、かつ、構成が複雑になる嫌いのある従来のものに比してコスト面で有利となり、また、吸込口２３ａの一部をその上方から盲板部３５で覆うだけであるので、ファン性能にはさほど悪影響を及ぼさない。

なお、前記実施形態では、ファンカバー３０自体に盲板部３５を形成しているが、それに代えて、別途に、図６において実線で示される如くに、前記盲板部３５と同様の反射板３７を同位置（前記ノーズ部２３ａから音の放射方向に沿って１／２波長分だけ離隔した位置）にファンカバーとは別に設けた音波反射手段として配在してもよく（ファンカバー３０’が前記したものより大きい場合等）、この場合も前記したものと略同様な作用効果が得られる。

以上の如くの、音波反射手段として盲板部３５あるいは反射板３７を設けたことによる騒音低減効果を実証すべく、下記の構成の本発明品（Ａ）、（Ｂ）、及び、比較例（Ｃ）、（Ｄ）、（Ｅ）、（Ｆ）を用意し、同一条件のもとで、送風ファンの左後方３０（cm）位置にて騒音の大きさ（dBvr）を測定した。以下にその結果を記す。

本発明品（Ａ）：ファンカバーの１／２波長位置に盲板部３５を形成（図１〜図３）
・・・８６.９（dBvr）
本発明品（Ｂ）：ファンカバーを外し１／２波長位置に反射板３７を配置（図６）
・・・８４.４（dBvr）
比較例（Ｃ）：盲板部の無い標準ファンカバー装着 ・・・・・・・９９.８（dBvr）
比較例（Ｄ）：ファンカバー無し ・・・・・・・・・・・・・・・９６.０（dBvr）
比較例（Ｅ）：ファンカバーを外し１波長位置に反射板３７を配置
・・・９７.２（dBvr）
比較例（Ｆ）：ファンカバーを外し１／４波長位置に反射板３７を配置
・・・９８.５（dBvr）
（安全上の問題から、前記Ａ及びＣ以外は実用に適さない。）

上記比較試験結果から、本発明に係る送風ファンでは、騒音レベルが比較例より１０（dBvr）以上下がり、大きな騒音低減効果が得られることが理解されよう。なお、本発明品では、作業者の耳元へ向かう放射方向Ｅだけでなく、機材を囲む全方向において全体的に騒音レベルの低減が認められた。また、反射板もしくは盲板部による、別部位からの音漏れ、別の音源が発生することはなかった。さらに、他機種においても、前記と同様な比較試験結果が得られた。

また、前記１／２波長位置は、前記羽根車２５の回転数に応じて変化するので、特に、前記羽根車２５の常用回転数が大きく変化する場合には、前記反射板３７もしくは前記盲板部３５の位置を前記羽根車２５の回転数（スロットル位置や負圧変化等）に応じて自動可変とするようにしてもよい。

なお、使用回転数が固定的に複数決められている場合は、所定固定数に対応した位置に反射板を付け替えられる構造とすることもできる。
本発明における音波反射手段は、ある程度の質量を要する遮音壁式のものとは異なり、ノーズ部に向けて、音波の位相を反転せしめて反射できる手段であれば何でも良く、ごく薄い膜状のものとして軽量化もでき、パラボラ状反射板として、より効果を高めることができる。

本発明に係る送風ファンを備えた風力利用作業機の一例としてのハンドヘルド式のパワーブロワの一実施形態を示す左側面図。 図１のＩＩ−ＩＩ矢視要部断面図。 図１に示される送風ファンのファンカバーを取り去った状態を示す図。 盲板部及び反射板の位置等の説明に供される図。 １／２波長距離等の説明に供される補助図。 ファンカバーとは別に反射板を設けた例を示す断面図。

符号の説明

１０ パワーブロワ（風力利用作業機）
２０ 送風ファン
２１ ファンケース
２２ 吸込口
２３ スクロール通路
２３ａ ノーズ部
２３ｂ 吐出口
２５ 羽根車
２５ａ 基板（の中央部）
２５ｂ 外周
２６ 羽根
３０ ファンカバー
３２、３３ 吸入用開口
３５ 盲板部（音波反射手段）
３７ 反射板（音波反射手段）
４０ 駆動源
Ｅ 騒音の放射方向

Claims (4)

1. 所定枚数の羽根（２６）を有する羽根車（２５）と、該羽根車（２５）が偏心配置され、前記羽根車（２５）の基板中央部（２５ａ）に対面して吸込口（２２）が形成されるとともに、前記羽根車（２５）の外周（２５ｂ）との間に、始端部が狭幅のノーズ部（２３ａ）となり、かつ、終端部が広幅の吐出口（２３ｂ）となる渦巻き状のスクロール通路（２３）を画成するファンケース（２１）と、前記羽根車（２５）を回転駆動する駆動源（４０）と、を備えた送風ファン（２０）であって、
   前記ノーズ部（２３ａ）を発生源として外部に放出される騒音を低減すべく、前記ノーズ部（２３ａ）から前記低減すべき騒音の放射方向Ｅに沿って１／２波長分だけ離隔した位置に、前記吸込口（２２）の一部を覆うように音波反射手段（３５，３７）が配在されていることを特徴とする送風ファン。
2. 前記吸込口（２２）を覆うように、吸入用開口（３２、３３）が多数形成された格子状等の骨組み部からなる皿状のファンカバー（３０）が配設され、該ファンカバー（３０）が前記音波反射手段（３５，３７）として機能するように、前記ファンカバー（３０）に前記吸入用開口（３２）の幾つかが閉塞されてなる盲板部（３５）が形成されていることを特徴とする請求項１に記載の送風ファン。
3. 前記音波反射手段（３５，３７）の位置が前記羽根車（２５）の回転数に応じて可変とされていることを特徴とする請求項１に記載の送風ファン。
4. 請求項１から３のいずれか一項に記載の送風ファン（２０）を備えた風力利用作業機。
   

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