JP4268320B2 - しわ付き箔容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐すき間腐食性に優れ、特に食品の収容に適したしわ付き箔容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム箔容器の中には側壁にしわの付いたしわ付き容器がある。このしわ付き容器は、形成されるしわによって強度を確保するため容器強度が優れており、流動性食品や薄肉食品を入れる冷凍容器として広く使用されている。そして、この容器に使用される容器用材料としては、容器の強度を確保するために、Mnを含むAl合金が使用されている。
しかし、しわ付き容器に液汁を含む流動食品や薄肉食品を入れて冷凍すると、塩分を含んだ流動食品や薄肉食品の液汁が、しわのすき間に入り込んだ状態で長期間保存されるため、そのすき間に腐食が発生し(以下、これを「すき間腐食」という)、冷凍食品を加熱または解凍した時に、上記すき間腐食により発生した腐食穴より食品の液汁が洩れることがある。
【0003】
これらの問題を解決するため、特開平8−308740号公報に示されるように、芯材に、Mn:0.3〜1.5%のAl−Mn系合金や、Mn:0.3〜1.5%、Mg:0.1〜1.3%のAl−Mn−Mg系合金、もしくはMn:0.3〜1.5%、Mg:0.1〜1.3%、Cu:0.05〜0.25%のAl−Mn−Mg−Cu系合金を用い、この芯材の両面に純Alを皮材として被覆した複合アルミニウム箔でしわ付き箔容器を構成することが提案されており、また、これらの皮材にはZn:0.1〜1.3%、Mg:0.1〜1.5%の内の1種または2種を含有してもよいとされている。
さらに前記特許を改良した特開平10−262836号公報で開示されるように、芯材に、Mn:0.3〜1.5%、Mg:0.1〜1.3%、Cu:0.05〜0.25%、Si:0.1〜0.3%、Fe:0.26〜0.60%を含有したAl合金を用い、この芯材の両面にCu:0.01〜0.09%、Si:0.01〜0.09%、Fe:0.01〜0.25%と、所望によりMg:0.1〜1.5%を含んだAl合金を被覆した複合アルミニウム箔で構成したしわ付き箔容器が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記で提案されたしわ付き箔容器用の材料においても、前述したすき間腐食を十分に防止することは難しく、依然としてすき間腐食の問題を有している。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、すき間腐食の発生を効果的に防止することができるしわ付き箔容器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のしわ付き箔容器のうち第1の発明は、質量%で、Mg:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜0.3%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるAl合金芯材の片面または両面に、Cr:0.01〜0.05%、Ti:0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる皮材を被覆した複合アルミニウム箔で構成されていることを特徴とする。
【0006】
第2の発明のしわ付き箔容器は、第1の発明において、Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Ti:0.05〜0.5%を含有することを特徴とする。
第3の発明のしわ付き箔容器は、第1または第2の発明において、Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Mn:1.5%以下を含有することを特徴とする。
第4の発明のしわ付き箔容器は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.20%を含有することを特徴とする。
第5の発明のしわ付き箔容器は、第1〜第4の発明のいずれかにおいて、Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Si:0.05〜0.3%およびFe:0.26〜0.60%の1種または2種を含有することを特徴とする。
【0007】
第6の発明のしわ付き箔容器は、第1〜第5の発明のいずれかにおいて、皮材の成分として、さらに、質量%で、Mg:0.1〜1.5%を含有することを特徴とする。
第7の発明のしわ付き箔容器は、第1〜第6の発明のいずれかにおいて、皮材の成分として、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.20%を含有することを特徴とする。
第8の発明のしわ付き箔容器は、第1〜第7の発明のいずれかにおいて、皮材の成分として、さらに、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.60%の1種または2種を含有することを特徴とする。
第9の発明のしわ付き箔容器は、第1〜第8の発明のいずれかにおいて、皮材の成分として、さらに、質量%で、Zn:0.1〜1.5%を含有することを特徴とする。
【0008】
以下に本発明のしわ付き箔容器において、規定された成分について説明する。なお、以降の説明における成分の含有量はいずれも質量%で示されている。
(芯材)
Mg:0.1〜2.0%、
Mgは、材料の強度を高める元素であり、容器としての強度を確保するため、必須成分として0.1%以上の含有が必要であり、0.1%未満では上記の作用を十分に得ることができない。一方、2.0%を越えて含有すると、クラッド性および加工性、耐すき間腐食性が低下するので、Mgの含有量を0.1〜2.0%の範囲に定める。なお、同様の理由で、下限を0.8%、上限を1.5%とするのが望ましい。
【0009】
Cr:0.1〜0.3%
Crは、Al合金の電位を貴にする作用があることに加え拡散速度が小さく、薄肉材を熱処理しても芯材から犠牲材への拡散がほとんど生じないため安定して芯材と皮材の電位差を維持でき、耐すき間腐食性を含む耐食性を向上させるので、必須成分として含有させる。このCrの含有量が0.1%未満であると、これら作用を十分に得ることができず、一方、0.3%を越えると耐すき間腐食性が劣化するので、Cr含有量を0.1〜0.3%の範囲に定める。
【0010】
Ti:0.05〜0.5%
Tiは、鋳造時に包晶反応として濃淡に凝固する。これを圧延すると圧延方向にTiの濃淡が層状に分布する。このTiの濃淡部には電位差があるため、層状に広がる腐食形態となり耐食性を向上させる。これら作用を得るためにTiを所望により含有させる。ただし、この作用を十分に得るためには0.05%以上の含有が必要であり、一方、0.5%を越えても一層の効果は得られないばかりか、加工性が低下し、また巨大なAl−Ti系金属間化合物の生成によって耐食性が低下するので、Ti含有量は0.05〜0.5%の範囲内とする。なお、上記と同様の理由で下限を0.07%、上限を0.25%とするのが望ましい。
【0011】
Mn:1.5%以下
Mnは、芯材の強度を高める作用があり、所望により含有させる。ただし、1.5%を越えて含有させると、加工性および耐すき間腐食性が低下するので、上限を1.5%とする。なお、上記作用を確実に得るためには、0.8%以上含有させるのが望ましく、また、上記と同様の理由で上限を1.3%とするのが望ましい。
【0012】
Cu:0.05〜0.20%
Cuは、耐食性および強度を向上させるために所望により含有させる。ただし、この作用を十分に得るためには0.05%以上の含有が必要であり、一方、0.20%を越えて含有させると、耐すき間腐食性が劣化するので、所望により含有させる場合のCu含有量は0.05〜0.20%に限定する。なお、上記と同様の理由で下限を0.10%とするのが望ましい。
【0013】
Si:0.05〜0.30%
Fe:0.26〜0.60%
少量のSiおよびFeは、強度を高める作用があるので、所望により、これらの1種または2種を含有させる。ただし、Siでは0.05%未満、Feでは0.26%未満の含有量では上記作用を十分に得ることができず、一方、Siでは0.30%を越えて、Feでは0.60%を越えて含有させると、耐すき間腐食性が低下するので、Si含有量を0.05〜0.30%、Fe含有量を0.26〜0.60%とする。
【0014】
(皮材)
Cr:0.01〜0.05%
Crは、皮材の強度を向上させる作用を有するため少量を含有させる。一方、Crを多く含有すると皮材の電位が貴になり、芯材との電位差を保つことができず、耐食性、すなわち耐すき間腐食性が低下し、万一、腐食が皮材を越えて芯材に達すると、芯材の腐食が一気に進行してしまう。このCr含有量が0.01%未満であると、前記作用が十分に得られず、一方、0.05%を越えると上記した電位差の問題が生じるため、所望によりCrを皮材に含有させる場合、Cr含有量は0.01〜0.05%とする。
なお、芯材との電位差を確実に保つために、皮材のCr含有量(質量%)が芯材のCr含有量(質量%)よりも少量、すなわち(皮材Cr含有量<芯材Cr含有量)になるように調整されている。
【0015】
Ti:0.05〜0.5%
Tiは、鋳造時に包晶反応として濃淡に凝固し、これを圧延すると圧延方向にTiの濃淡が層状に分布する。このTiの濃淡部には電位差があるため、層状に広がる腐食形態となり耐食性を向上させるので、皮材にTiを含有させる。これら作用を十分に得るためには0.05%以上のTi含有が必要であり、一方、0.5%を越えても一層の効果は得られないだけでなく、加工性が低下し、また巨大なAl−Ti系金属間化合物の生成によって耐食性が低下するので、Ti含有量は0.05〜0.5%の範囲内とする。なお、上記と同様の理由で下限を0.07%、上限を0.25%とするのが望ましい。
【0016】
Mg:0.1〜1.5%
Mgは、皮材の強度を高めるために所望により含有させる。ただし、Mg含有量が0.1%未満であると、この作用を十分に得ることができない。一方、1.5%を越えて含有すると、クラッド性および加工性、耐すき間腐食性が低下する。したがってMgを所望により皮材に含有させる場合、その含有量を0.1〜1.5%に定める。なお、上記と同様の理由で下限を0.8%とするのが望ましい。
【0017】
Cu:0.01〜0.20%
Cuは、耐食性および強度を向上させるために所望により含有させる。この含有量が0.01%未満であると、これら作用が十分に得られない。一方、0.20%を越えて含有すると、却って耐すき間腐食性が劣化するのでCu含有量を0.01〜0.20%に定める。なお、上記と同様の理由で上限を0.09%とするのが望ましい。また、芯材のCu含有量(質量%)と比較した場合、皮材のCu含有量(質量%)が少なくなるように調整するのが望ましい。これは皮材のCu含有量が多くなると芯材に比べて皮材の電位が貴になり、万一、腐食が皮材を越えて芯材に達すると、芯材の腐食が一気に進行してしまうためである。
【0018】
Si:0.01〜0.30%
Fe:0.01〜0.60%
少量のSiおよびFeは、材料強度を高める作用があるので、皮材の強度を上げるため、所望により、これらの1種または2種を皮材に含有させる。ただし、これら含有量がそれぞれ0.01%未満であると、強度の向上作用を十分に得ることができず、一方、Siでは0.30%、Feでは0.60%を越えて含有させると、耐すき間腐食性が低下するので、Si含有量を0.01〜0.30%、Fe含有量を0.01〜0.60%とする。
【0019】
Zn:0.1〜1.5%
Znは、耐食性を向上させるため所望により含有させる。ただし、Znの含有量が0.1%未満であると、この作用を十分に得ることができず、また1.5%を越えると、耐すき間腐食性を劣化させるので、所望によりZnを含有させる場合には、その含有量を0.1〜1.5%に限定する。なお、同様の理由で下限を0.4%、上限を1.2%とするのが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、主として食材、食品を収容する容器として使用される物であり、強度を高める等の目的でしわ付きとされている。この容器は、上記で規定される成分を有する芯材と皮材とを有する複合アルミニウム箔で構成されており、該複合アルミニウム箔は、常法により製造することができる。
容器用アルミニウム箔の材料には、前述した芯材と皮材とが用いられる。これらの材料は、一般には、鋳塊の溶製によって得ることができ、その後、芯材の片面または両面に皮材をクラッドし、さらにこれを箔とする。クラッド方法としては、芯材と皮材とを重ねた状態で熱間圧延する方法が一般的である。この際のクラッド率は本発明としては特に限定されない。このクラッド材は、さらに冷間圧延、箔圧延によって所望の厚さの複合箔とする。その間には必要に応じて熱処理を施すことができる。しわ付き箔容器に使用されるアルミニウム箔は、通常は、40〜120μmの厚さのものが用いられるが、本発明としてはアルミニウム箔の厚さが特定のものに限定されるものではない。
【0021】
上記アルミニウム箔は、容器形状への成形過程に供される。通常、成形はプレス等によって行われるが、本発明としては成形方法が特に限定されるものではなく、また、本発明としてはしわ付きであることの他、特に容器形状が限定されるものでもない。
【0022】
【実施例】
表1の成分が得られるように、通常の条件で芯材用合金、皮材用合金を溶解・鋳造し、続いて面削、均質化処理を行い、芯材用合金は400mm、皮材用合金は熱間圧延により50mmとし、表2に示す組み合わせによって前記芯材の両面に該皮材用合金をそれぞれ配した。これらを熱間にてクラッド圧延し、適宜中間焼鈍および冷間圧延を行って0.090mm(皮材各10%厚、芯材80%厚)のクラッド箔材を作製した。
【0023】
上記クラッド箔材に対してブランキング、ドローイング、ワイプダウン、カーリングの成形工程を複合ダイを用いて行い、鍔を有するしわ付き容器を作製した。
次いで、上記しわ付き箔容器の機械的強度を測定するとともに、該容器内にしょうゆ濃度20%の水溶液を入れ、40℃で14日間保持した後、容器のすき間腐食状態を観察した。腐食状態の観察においては、箔に貫通孔が空かないものを○、空いたものを×として評価した。上記測定結果および観察結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明容器はいずれも高い強度と優れた耐すき間腐食性を有しており、一方、比較材はいずれも耐すき間腐食性に劣っていた。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のしわ付き箔容器によれば、質量%で、Mg:0.1〜2.0%、Cr:1〜0.3%を含有し、さらに所望により、Ti:0.05〜0.5%、Mn:1.5%以下、Cu:0.05〜0.20%、Si:0.05〜0.3%、Fe:0.26〜0.60%の1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるAl合金芯材の片面または両面に、Cr:0.01〜0.05%、Ti:0.05〜0.5%を含有し、さらに所望により、Mg:0.1〜1.5%、Cu:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.60%、Zn:0.1〜1.5%の1種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる皮材を被覆した複合アルミニウム箔で構成されているので、十分な強度を確保した上で耐すき間腐食性を向上させることができ、腐食性の強い塩分を含んだ流動食品や薄肉食品の液汁に対しても長期に亘って腐食の発生を抑制することができる。
Claims (9)
- 質量%で、Mg:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜0.3%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるAl合金芯材の片面または両面に、Cr:0.01〜0.05%、Ti:0.05〜0.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる皮材を被覆した複合アルミニウム箔で構成されていることを特徴とするしわ付き箔容器。
- Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Ti:0.05〜0.5%を含有することを特徴とする請求項1記載のしわ付き箔容器。
- Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Mn:1.5%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のしわ付き箔容器。
- Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Cu:0.05〜0.20%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のしわ付き箔容器。
- Al合金芯材の成分として、さらに、質量%で、Si:0.05〜0.30%およびFe:0.26〜0.60%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のしわ付き箔容器。
- 皮材の成分として、さらに、質量%で、Mg:0.1〜1.5%を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のしわ付き箔容器。
- 皮材の成分として、さらに、質量%で、Cu:0.01〜0.20%を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のしわ付き箔容器。
- 皮材の成分として、さらに、質量%で、Si:0.01〜0.30%、Fe:0.01〜0.60%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のしわ付き箔容器。
- 皮材の成分として、さらに、質量%で、Zn:0.1〜1.5%を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のしわ付き箔容器。
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