以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成]
先ず、図1を参照して本実施例の画像形成装置の全体構成について説明する。本実施例の画像形成装置100は、中間転写方式を採用した、電子写真方式のカラーレーザービームプリンタである。画像形成装置100は、画像形成装置本体(装置本体)Aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、原稿読み取り装置或いはデジタルカメラなどの外部機器からの画像情報信号に応じて、電子写真方式を利用してマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色フルカラー画像を、転写材(記録用紙、OHPシート、布など)Sに形成することができる。
画像形成装置100は、像担持体として回転可能なドラム型の電子写真感光体(感光体)1が設けられている。感光体1の周囲には、感光体1を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ2、像露光手段(画像書き込み手段)として感光体1に画像情報に応じて変調されたレーザーを照射する露光光学系(レーザースキャナー)3、感光体1に形成された静電像を現像する現像手段としての複数の現像器4M、4C、4Y、4Kを備える回転式現像装置5、感光体1に形成されたトナー像を転写材Sに転写するための中間転写ユニット6、感光体1上に残ったトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーナ8などが配置されている。
回転式現像装置5は、現像器保持手段(装着手段)としての回転体(ロータリー)5aに、それぞれ現像剤としてマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色のトナー(本実施例では負帯電性)を備えた4個の現像器(第1、第2、第3、第4の現像器)4M、4C、4Y、4Kを有する。各現像器4M、4C、4Y、4Kは、ロータリー5aを介して装置本体Aに対して着脱可能なカートリッジ(現像カートリッジ)とされている。ロータリー5aが回転することで、所望の色用の現像器4M、4C、4Y、4Kが、感光体1と対向する位置(現像位置)に配置される。尚、図1は、マゼンタ色用の現像器4Mが現像位置に配置された様子を示している。そして、各現像器4M、4C、4Y、4Kが備える現像剤担持体(後述)と感光体1とが対向する現像領域(現像部)Dにおいて感光体1上の静電像の現像が行われる。
中間転写ユニット6は、その上にトナー像が転写される被転写体として中間転写体61を有する。本実施例では、中間転写体は、複数のローラとして駆動ローラ62、テンションローラ63、二次転写対向ローラ64に張架された無端移動するベルト(中間転写ベルト)61とされる。中間転写ユニット6は、中間転写ベルト61の内周面側に、中間転写ベルト61を介して感光体1に対向して配置された一次転写手段としての一次転写ローラ65を有する。一次転写ローラ65は、中間転写ベルト61を介して感光体1に押圧され、中間転写ベルト61と感光体1とが接触する一次転写ニップ(一次転写位置)N1が形成されている。又、中間転写ユニット6は、中間転写ベルト61を介して二次転写対向ローラ64に押圧された二次転写手段としての二次転写ローラ67を有する。中間転写ベルト61と二次転写ローラ67との接触部が二次転写ニップ(二次転写位置)N2である。
又、画像形成装置100には、転写材Sに形成されたトナー像を定着させる定着手段としての定着器7、転写材Sを二次転写ニップN2へと供給する転写材供給部9などが設けられている。
更に、画像形成装置100は、詳しくは後述するように、感光体1の表面移動方向において現像部Dよりも下流且つ一次転写ニップN1よりも上流の位置で感光体1の表面の電荷を除去する除電手段として、転写前露光手段(転写前露光器)10を有する。転写前露光器10としては、感光体1の回転軸線方向に沿って配置された複数の光源(LEDなど)を有するものを好適に用いることができる。
次に、4色フルカラー画像を形成する場合を例に、画像形成動作について説明する。
先ず、装置本体Aに画像出力(プリント)指示が入力されると、感光体1は、図中矢印R1にて示す方向に回転駆動される。これと同期して、中間転写ユニット6の中間転写ベルト61は、図中矢印R2にて示す方向に回転駆動される。感光体1の表面は、帯電ローラ2によってマイナス電荷が付与され、本実施例では−600Vに一様に帯電処理される。次いで、露光光学系3から、画像データに基づいて発光制御された走査光が、感光体1の表面に照射される。感光体1上の露光部ではマイナス電荷が除去される。本実施例では露光部(明部)の電位は略−100Vである。これにより、感光体1上に静電像(潜像)が形成される。
次いで、感光体1上に形成された静電像は、回転式現像装置5が備える現像器4M、4C、4Y、4Kによって現像される。本実施例では、感光体1上にマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各成分色の画像情報に応じてこの順序で逐次形成される静電像が、形成される都度、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色用の現像器4M、4C、4Y、4Kによってこの順序で逐次に現像される。即ち、ロータリー5aが90度ごとに公転することで、所望の色用の現像器4M、4C、4Y、4Kが感光体1に対向配置され、感光体1上に形成された対応する色成分の静電像が、各色のトナーで現像される。本実施例では、感光体1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光体1上の露光により電荷が除去された部分(明部)に供給する反転現像によりトナー像が形成される。
詳しくは後述するように、現像工程の後に、現像器4の使用状態に応じて転写前露光器10により感光体1に光が照射され、感光体1の表面の除電が行われる。転写前露光を行う第1の理由は、一次転写ニップN1内での放電量及び転写電流を軽減し、再転写トナー量を少なくすることである。
感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写ニップN1において、中間転写ベルト61上へ順次一次転写される。4色フルカラー画像の形成時には、中間転写ベルト61上に、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色のトナー像が重ね合わされた多重トナー像が形成される。一次転写工程時に、一次転写ローラ65には、一次転写バイアス出力手段としての一次転写バイアス電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の所定のバイアスが印加される。
複数の色成分に対応した複数回の一次転写工程によって中間転写ベルト61上に形成された多重トナー像は、二次転写ニップN2において、転写材Sに一括して二次転写される。二次転写工程時に、転写材Sの背面に当接された二次転写ローラ67には、二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の所定のバイアス(本実施例では+1kV)が印加される。これにより、中間転写ベルト61上のトナー像は、転写材S上に一括して二次転写される。
転写材Sは、転写材供給部9においてカセット91から一枚ずつ送給され、供給ローラ92などにより所定のタイミングで二次転写ニップN2へと供給される。
次いで、二次転写工程を経て表面に未定着トナー像を担持した転写材Sは、定着器7へと搬送される。定着器7は、加熱手段としてヒータを内蔵する定着ローラ71と、定着ローラ71に圧接する加圧ローラ72によって転写材Sを挟持して搬送し、トナー像を転写材Sに定着させる。
その後、転写材Sは排出ローラ対11などによって排出部12上に排出され、画像形成が完了する。
一次転写工程後に感光体1の表面に残留した一次転写残トナーは、クリーナ8において、クリーニング部材として弾性ブレード(クリーニングブレード)81によって除去され、廃トナー容器82に収容される。又、二次転写工程後に中間転写ベルト61の表面に残留した一次転写残トナーは、図示しないベルトクリーナによって除去される。
尚、画像形成装置100は、所望の単色、又はいくつかの色の組み合わせによるマルチカラー画像を形成することもできる。この場合、上述と同様にして所望の色数のトナー像が中間転写ベルト61に形成された後に、このトナー像を上述と同様にして転写材Sに二次転写する。
[現像器]
次に、図2をも参照して、現像器4M、4C、4Y、4Kについて更に説明する。尚、本実施例では、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの各色用の現像器4M、4C、4Y、4Kは、収容するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一の構成とされる。以下、特に区別を要しない場合、いずれかの色用のものであることを示すために符号に与えた添え字M、C、Y、Kは省略して、総括的に説明する。
現像器4は、現像容器(現像器本体)41を有する。本実施例では、現像容器41内には、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーが収容される。トナーは、バインダー樹脂、着色剤、帯電制御剤等を含有するトナー母体と、この母体に外添混合される外添剤とを備える。
現像容器41は、感光体1と対向配置される部分が一部開口しており、この開口部から一部露出するように、図2中矢印方向に回転可能な現像剤担持体としての現像ローラ42が設けられている。現像ローラ42には、図2中矢印方向に回転可能な現像剤供給及び剥ぎ取り手段としてのトナー供給ローラ43が当接している。又、現像ローラ42には、現像剤規制部材としての現像ブレード45が当接している。現像容器41内に収容されたトナーは、図2中矢印方向に回転可能な撹拌部材44によって、トナー供給ローラ43に向けて撹拌しながら搬送される。そして、トナー供給ローラ43によって現像ローラ42上に供給されたトナーは、現像ローラ42の回転に伴い、現像ブレード45によってその量が規制されると共に摩擦帯電される。こうして、現像部Dにおいて、感光体1に対向した現像ローラ42上には、所定の極性(本実施例では負極性)に帯電されたトナーが、一定量供給される。又、現像ローラ42には、現像バイアス出力手段としての現像バイアス電源(図示せず)から現像バイアスが印加される。これにより、現像部Dにおいて、感光体1上の静電像に応じて、現像ローラ42から感光体1にトナーが供給され、感光体1上の静電像はトナー像として可視化される。現像バイアスは、帯電電位と潜像(露光部)電位の間の適切な値に設定することで、環境、現像カートリッジの使用状況によらず安定した画像が得られる。本実施例では、現像バイアスは、−220V〜−350V程度である。
本実施例では、現像器4は、現像容器41、現像ローラ42、トナー供給ローラ43、現像ブレード45などを一体的にユニット化した現像カートリッジとされており、装置本体Aに対し着脱自在である。
又、現像器(現像カートリッジ)4には、各種情報を記憶可能な記憶手段46が搭載されている。記憶手段46としては、小型、軽量であることなどの利点を有することから、電子的な記憶素子(メモリ)を好ましく用いることができる。本実施例では、記憶手段46として、電子的な不揮発性メモリを用いた。但し、記憶手段としては、情報を記憶することができれば、任意の形態のものを用いることができ、例えば揮発性メモリとバックアップ電池の組み合わせであってもよい。
記憶手段46に対するデータの書き込み、読み出しは、本実施例では、装置本体Aに設けられている信号処理手段が行なう。つまり、現像器4を適正に装置本体Aに装着すると、現像器4側の記憶手段46と、装置本体A側の信号処理手段が通信可能な状態となる。詳しくは後述するように、本実施例では、記憶手段46には、少なくとも現像器4内の現像剤の使用履歴情報が記憶される。現像器4内の現像剤の使用履歴情報とは、現像器4内の現像剤の未使用状態(使用初期)からの使用に伴う現像器4内の現像剤の表面状態の変化の指標の値を示す情報であり、現像器4の使用量情報が含まれる。現像器4の使用量情報とは、現像器4の使用量に実質的に比例して変化する指標の値の情報であり、使用初期からのプリント枚数、現像ローラ42の駆動時間(又は回転数)の積算値などが含まれる。
[中間転写ベルト]
中間転写ベルト61は、駆動ローラ62、テンションローラ63、二次転写ローラに対向配置された二次転写対向ローラ64に張架されている。本実施例では、中間転写ベルト61は、図1中矢印R2で示す方向に、感光体1とほぼ等速で回転する。
中間転写ベルト61としては、通常厚さ50μm〜300μm、体積抵抗率10−7Ωcm〜10−12Ωcm程度のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアミド、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリカーボネート等の樹脂フィルムベルトを用いることができる。又、中間転写ベルト61としては、0.5〜2mm厚程度の低抵抗なゴム基層の上に、厚さ数十μmの離型性の良い高抵抗な樹脂層を設けたゴムベルト等を用いることができる。
尚、中間転写ベルト61の電気抵抗値調整はカーボン、ZnO、SnO2、TiO2、その他の導電性の充填材により行うことができる。
一次転写工程時には、一次転写ローラ65には、一次転写バイアス電源(図示せず)から、正極性の一次転写バイアスが印加される。本実施例では、一次転写バイアス電源は、定電圧制御されたバイアスを出力する。そして、画像形成時に印加する一次転写バイアスの電圧値は、環境、使用状況の要因による一次転写ローラ65、中間転写ベルト61の抵抗変動を考慮し、非画像形成領域、より詳細には、前回転時(転写材Sに記録して出力する画像を形成する前の準備動作において感光体を回転させている時)において、一次転写ニップN1に8.7μAの転写電流が流れるように決定される。
[再転写抑制機構]
前述のように、被転写体上に複数色のトナー像を重ね合わせて多重トナー像を形成する画像形成装置では、既に被転写体上に転写されているトナーが、後続の転写工程時に被転写体から像担持体へと転移する再転写現象が発生することがある。
(再転写のメカニズム)
本発明は特定の理論によって束縛されるものではないが、再転写現象が発生するメカニズムは以下のように考えられる。
図3は、一次転写ニップN1を模式的に示す。中間転写ベルト61から感光体1へトナーが転移する再転写現象は、2回目以降の一次転写工程において問題となる。つまり、2回目以降のそれぞれの一次転写工程時に、それまでに中間転写ベルト61に一次転写されているトナーの一部が、中間転写ベルト61から感光体1に再転写される。
上述のように、本実施例では、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの順序でトナー像を感光体1から中間転写ベルト61に一次転写する。この場合、中間転写ベルト61に転写された1色目のマゼンタトナーTmの再転写は、後続の2色目のシアン、3色目のイエロー、4色目のブラックの各色のトナー像の一次転写工程時に発生する。同様に、2色目のシアントナーTcの再転写は、後続の3色目のイエロー、4色目のブラックの各色のトナー像の一次転写工程時に発生する。又、3色目のイエロートナーの再転写は、4色目のブラックトナーの一次転写工程時に発生する。
図3には、例示的に、2色目のシアントナーTcの一次転写工程を行っている時の一次転写ニップN1を示す。2色目であるシアントナーTcの一次転写工程時には、それまでの一次転写工程にて中間転写ベルト61上に転写されたトナー、即ち、1色目であるマゼンタトナーTmの一部が感光体1に転移する。この感光体1に転移したトナーが再転写トナーTrである。
再転写は、正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)のトナー、及び正規の帯電極性ではあるが帯電電荷量の小さいトナーが、静電気力やファンデルワールス力などで感光体1に転移することにより発生するものと考えられる。
つまり、図3において、再転写トナーTrは、
(1)中間転写ベルト61上のマゼンタトナーTmの中で、帯電電荷量が小さいトナー、又は
(2)一次転写ニップN1の中の放電或いは転写電流によって、帯電電荷量が低下したトナー或いは逆帯電したトナー、
であると考えられる。
図4に、1色目であるマゼンタ用の現像器(第1の現像器)4Mが使用初期状態、3500枚プリント(印字比率5%)した状態、7000枚プリント(印字比率5%)した状態のそれぞれの場合における、2色目であるシアントナーの一次転写工程時の再転写トナー量の転写電流依存性を示す。
ここで、再転写トナー量の測定方法を説明する。2色目(シアン)の一次転写工程を行っている際に、画像形成装置100の本体電源をOFFにする。このとき、感光体1上には、中間転写ベルト61上に転写された1色目のマゼンタトナーの一部が感光体1に転移したものである再転写トナーが載っている。この再転写トナーを粘着テープ上に転写させて、白色の記録紙に付着させる。基準テープの反射率からサンプルテープの反射濃度(マクベス濃度)を差し引いて、再転写トナー量とした。
上記3種類のいずれの場合においても、転写電流を大きく(即ち、転写バイアスを大きく)すると、再転写トナー量は増加した。これは、上述したように転写電圧を大きくすることで、一次転写ニップN1内の放電量と転写電流が多くなったためであると考えられる。
又、再転写トナー量は、第1の現像器4Mのプリント枚数が多くなるほど増加した。これは、現像器4の使用量(プリント枚数、現像剤担持体の駆動時間等)が多くなると、現像ローラ42、現像ブレード45、トナーの表面状態などの変化によって、トナーの帯電電荷量が低下するためであると考えられる。その中で、特に、現像ローラ42、現像ブレード45などによる摺擦によりトナーの表面の外添剤の遊離や埋め込みによる影響が支配的であると思われる。
又、図5に、第1の現像器4Mが使用初期状態である場合における、低温低湿環境(15℃/10%RH、絶対水分量11×10−4kg/k)、常温常湿環境(23℃/60%RH、絶対水分量は105×10−4kg/k)、高温高湿環境(30℃/80%RH、絶対水分量215×10−4kg/k)のそれぞれの環境下での、2色目であるシアントナーの一次転写工程時の再転写トナー量の転写電流依存性を示す。
図5に示すように、全ての環境について、転写電流を大きく(即ち、転写バイアスを大きく)すると、再転写トナー量は増加した。又、再転写トナーの量は、摩擦帯電性の高い低湿環境が最も少なく、帯電性の低い高温高湿環境が最も多かった。
更に、図6に、第1の現像器4Mが7000枚プリント(印字比率5%)した状態である場合における、上記3種類の環境下での、2色目であるシアントナーの一次転写工程時の再転写トナー量を示す。
図6に示すように、再転写トナー量は、全ての環境について、第1の現像器4Mが使用初期の状態である場合(図5)よりも増加した。これは、画像形成動作により、トナーが現像ローラ42、現像ブレード45などと摺擦されることで、外添剤の母体への埋め込みや遊離による流動性の低下が発生したり、或いは現像ローラ42、現像ブレード45の表面状態の変化によりトナーの摩擦帯電性が低下したりしたためであると推測される。
図5及び図6には、上記3種類の環境における再転写トナー量のみを記載したが、本発明者らの多くの実験研究により、絶対水分量が多いほど、再転写トナー量は多くなる結果が得られた。
又、他の色のトナー(シアン、イエロー、ブラック)についても、プリント枚数、環境での再転写トナー量の増減傾向は同様であることが分かった。
ここで、各色毎の再転写トナー量は、少ないほど好ましいが、特に、上述の測定方法において、各色のトナー毎のトータルの再転トナー量が0.35以下であることが好ましい。各色のトナー毎のトータルの再転写トナー量が0.35を超えると、最終画像における画像濃度の低下などの問題が顕著となる。
各色のトナー毎のトータルの再転トナー量とは、被転写体上に転写されたトナーが繰り返し転写ニップを通過して最終画像に至るまでに感光体1に転移するトナーの総量であって、本実施例では、1色目のマゼンタトナーについては、後続の3回分の一次転写工程において感光体1に再転写されるトナーの量の合計値、即ち、上述の測定方法におけるマクベス濃度の合計値である。同様に、2色目のシアントナーについては後続の2回分の一次転写工程、3色目のイエロートナーについては後続の1回分の一次転写工程において感光体1に再転写されるトナーの量の合計値(マクベス濃度の合計値)である。
さて、本実施例の画像形成装置100においては、実際の画像形成時の一次転写電流は、8.7μAである。この場合、図6に示す結果から、高温高湿環境(30℃/80%RH、絶対水分量215×10−4kg/k)では、7000枚プリントした状態の現像器4から供給されて中間転写ベルト61上に載っているトナーについては、後続の1回の転写工程における再転写トナー量は0.15である。従って、このトナーが3回の一次転写工程を経る場合は、トータルの再転写トナー量は0.45程度になる。この場合、トータルの再転写トナー量は、上述の目標値である0.35よりはるかに多くなってしまう。
そのため、本実施例では、絶対水分量が215×10−4kg/k以上である場合、プリント枚数が7000枚以上の現像器4から供給されて中間転写ベルト61上に載っているトナーが、後続の1回の一次転写工程を経ることによる再転写トナー量が、0.1以下になるように、転写前露光器10を制御する。
(転写前露光の効果)
転写前露光器10により感光体1に照射する光(転写前露光)の効果について説明する。図7は、転写前露光器10をONにした場合とOFFにした場合の再転写トナー量を示す。図7の結果は、例示的に、1色目であるマゼンタ用の現像器(第1の現像器)4Mとして7000枚プリントした状態のものを用い、高温高湿環境(30℃/80%RH、絶対水分量215×10−4kg/k)で2色目の一次転写工程を行った際の再転写トナー量について示す。
図7から分かるように、転写前露光を点灯させることで、画像形成時の一次転写条件(一次転写電流8.7μA)において、再転写トナー量を0.15から0.09に低減することができる。
ここで、転写前露光の光量は、大きいほど再転写現象の抑制には有利である。しかし、非画像部の感光体1上の非画像部の表面電位を現像バイアスよりもプラス側にすると、一次転写工程におけるトナーの飛び散りが非常に悪化する。本実施例では、転写前露光の光量は、感光体1上の非画像部の表面電位が−400V程度になるように設定した。
(転写前露光の制御方法)
上述のように、転写前露光を行うことで、再転写トナー量を低減することができる。しかし、前述のように、転写前露光を行うことにより一次転写ニップN1の直前の感光体1の表面を除電すると、トナーの飛び散り、ドット再現性の低下を誘起する傾向にある。
そこで、本実施例では、第1の現像器により感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61に転写する第1の転写工程と、第1の転写工程より後に行われる、第2の現像器により感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61に転写する第2の転写工程と、を有する場合において、第1の現像器内のトナーの使用履歴情報に応じて、第2の転写工程時における転写前露光器10の制御が行われる構成とする。本実施例では、転写前露光器10は、第2の転写工程時に、使用履歴情報が示す現像器の使用に伴って増加する指標の値が所定値以上の場合に点灯し、該所定値未満の場合に点灯しない。更に、本実施例では、上記使用履歴情報に加えて、環境情報にも応じて第2の転写工程時におる転写前露光器10の制御が行われる構成とする。本実施例では、環境情報が示す絶対水分量の値が所定値未満の場合には、上記使用履歴情報に拘わらず、第2の転写工程時における転写前帯電器10の制御が行われる。特に、本実施例では、環境情報が示す絶対水分量の値が所定値未満の場合には、第2の転写工程時に転写前露光器10は点灯せず、感光体1の表面の電荷を除去する動作を行わない。
即ち、本実施例では、或る特定の一次転写工程を行う際に、その特定の一次転写工程より以前の一次転写工程において既に中間転写ベルト61に転写されたトナーを供給した現像器4内のトナーの使用履歴に応じて、その特定の一次転写工程において転写前露光器10による転写前露光の点灯/非点灯を制御する。更に、本実施例では、環境情報として絶対水分量に応じて転写前露光器10の点灯/非点灯を制御する。
更に説明すると、上記検討結果から、本実施例では、再転写の悪くなる高温高湿環境(30℃/80%RH、絶対水分量215×10−4kg/k)において、プリント枚数が7000枚以上の現像器4が装置本体Aに装着されている場合のみ、転写前露光を点灯させる。
より具体的には、プリント枚数が7000枚以上の現像器4を用いて形成されたトナー像の一次転写工程よりも後に形成されるトナー像の一次転写工程で転写前露光器10をONとして転写前露光を点灯させる。即ち、複数回の現像工程と、複数回の転写工程と、を有する本実施例の画像形成装置100は、感光体1の表面の移動方向において現像位置Dよりも下流且つ転写位置N1よりも上流の位置において感光体1の表面の電荷を除去する除電動作を、複数回の転写工程のうち、2回目以降の転写工程時に行う場合と、3回目以降の転写工程時にのみ行う場合がある。換言すれば、複数回の転写工程のうち、上記除電動作を行う転写工程の数が、前回の画像出力時と異なることがある。特に、本実施例では、複数回の転写工程のうち、上記除電動作を行う転写工程の数は、複数の現像器の中に使用初期からの使用量が所定値を越えた現像器が有る場合と無い場合とで異なる。更に、本実施例では、複数回の転写工程のうち、上記除電動作を行う転写工程の数は、装置環境の絶対水分量が所定値を越えた場合と該所定値未満の場合とで異なる。
本実施例における、1回目〜4回目の一次転写工程における転写前露光の点灯状況の詳細を表1〜表4に示す。
表5は、高温高湿環境(30℃/80%RH、絶対水分量215×10−4kg/k)において、全ての現像器4M、4C、4Y、4Kが7000枚プリントした状態である場合の、全転写工程を通した各色のトナー毎のトータルの再転写トナー量を示す。尚、表5の結果は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのそれぞれの単色の画像パターン(印字比率100%)を形成した場合について示す。
表5から分かるように、転写前露光を点灯することで、再転写トナーが大幅に軽減できる。
(画像形成順序の決定方法)
ここで、本実施例では、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの順序で画像形成を行う。これは、次の理由による。
先ず、表1〜4から分かるように、本実施例では、画像形成の順番が後になるほど転写前露光の点灯の機会が多くなる。そのため、本実施例では、マゼンタ、シアン、イエローの各色については、視認性が高く、転写前露光により誘起される可能性のある一次転写ニップN1でのトナーの飛び散り、ドット再現性の低下が目立ち易い色の順序で画像形成を行う。
尚、ブラックは、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色の中で最もドット再現性の低下が目立ち易い。しかし、本実施例では、ブラックの画像形成を最後にした。これは、ブラックは着色剤としてカーボンブラックを使用しており、シアン、マゼンタ、イエローに対し再転写トナー量が非常に多いためである。
(転写前露光の制御態様)
次に、図8〜図11をも参照して、本実施例におけるプリント動作の制御態様について説明する。図8は本実施例における制御系を示すブロック図である。図9〜図11は本実施例のプリント動作のフローチャートである。
画像形成装置100は、装置本体Aに、画像形成装置100の各部の動作を統括的に制御するマイクロプロセッサーなどとされるCPU110を有する。CPU110には、装置本体Aの環境情報を検知するための環境検知手段13が接続されている。本実施例では、環境検知手段13は温湿度センサとされ、少なくとも装置本体A内の絶対水分量を検知して、検知結果を示す信号をCPU110に送信する。又、CPU110には、各現像器(現像カートリッジ)4M、4C、4Y、4Kのそれぞれに設けられた記憶手段46に対する情報の読み出し/書き込み手段112が接続されている。CPU110は、各現像器4が装置本体Aに適正に装着された状態で、読み出し/書き込み手段112を通じてそれぞれの現像器4に設けられた記憶手段46内に記憶された情報の読み出し、及びその記憶手段46内への情報の書き込みを行うことができる。更に、CPU110には、転写前露光制御手段111が接続されている。本実施例では、転写前露光制御手段111は、CPU110からの制御信号に従って、転写前露光器10による転写前露光の点灯/非点灯を制御する。CPU110は、内蔵の記憶部又は通信可能に接続された記憶手段に記憶された、以下の動作を規定するプログラムに従って、画像形成装置100の各部を制御する。
図9を参照して、先ず、CPU110は、プリント信号を検出する(ステップ1)。CPU110は、プリント信号を検出すると、環境検知手段13を動作させ、絶対水分量を検知する(ステップ2)。次いで、CPU110は、転写前露光の制御を決定する(ステップ3)。
図10及び図11は、上記ステップ3における制御フローをより詳細に示す。先ず、CPU110は、環境検知手段13を用いて検知した絶対水分量が215×10−4kg/k以上であるか否かを判断する(ステップ3−1)。絶対水分量が215×10−4kg/k以上の場合、CPU110は、第1〜第3の現像器4M、4C、4Yの記憶手段46に格納されたプリント枚数情報を、装置本体Aの読み出し/書き込み手段112を介して読み出す(ステップ3−2)。
次いで、CPU110は、その時点における各色の現像器4のプリント枚数から、画像形成動作時の1回目〜4回目の各一次転写工程(第1、第2、第3、第4の一次転写工程)のそれぞれにおける転写前露光器10のON又はOFFを決定する。即ち、転写前露光を点灯させる色を決定する(ステップ3−4〜3−10)。本実施例では、CPU110は、記憶手段46から読み出したプリント枚数が7000枚以上の現像器4がある場合、その現像器4を用いて形成したトナー像の一次転写工程以降の一次転写工程において転写前露光器10をONとして転写前露光を点灯する。第1の転写工程時には、既に中間転写ベルト61上に転写されているトナー像はないので、常に転写前露光器10はOFFとする。
つまり、CPU110は、第1の現像器4Mの記憶手段46から読み出したプリント枚数が7000枚以上であるか否かを判断し(ステップ3−4)、7000枚以上である場合には、転写前露光器10を、第1の一次転写工程においてOFFとし、第2〜第4の一次転写工程においてONとすることを決定する(ステップ3−5)。ステップ3−4の判断にて第1の現像器4Mのプリント枚数が7000枚未満であった場合は、CPU110は、次いで、第2の現像器4Cの記憶手段46から読み出したプリント枚数が7000枚以上であるか否かを判断し(ステップ3−6)、7000枚以上である場合には、転写前露光器10を、第1〜第2の一次転写工程においてOFFとし、第3〜第4の一次転写工程においてONとすることを決定する(ステップ3−7)。更に、ステップ3−6の判断にて第2の現像器4Cのプリント枚数が7000枚未満であった場合は、CPU110は、次いで、第3の現像器4Yの記憶手段46から読み出したプリント枚数が7000枚以上であるか否かを判断し(ステップ3−8)、7000枚以上である場合には、転写前露光器10を、第1〜第3の一次転写工程においてOFFとし、第4の一次転写工程においてONとすることを決定する(ステップ3−9)。又、ステップ3−8の判断にて第3の現像器4Yのプリント枚数が7000枚未満であった場合、CPU110は、第1〜第4の全ての一次転写工程において転写前露光器10をOFFとすることを決定する(ステップ3−10)。
一方、ステップ3−1の判断において絶対水分量が215×10−4kg/k未満である場合、CPU110は、第1〜第4の全ての一次転写工程において転写前露光器10をOFFとすることを決定する(ステップ3−3)。
上述のようにして、ステップ3にて転写前露光の制御を決定した後、画像形成動作を行う(ステップ4)。ジョブ(一の画像出力開始指示により単数又は複数の転写材に対して行われる一連の画像形成動作)の終了後、CPU110は、プリント枚数検知手段によって検出された各現像器4M、4C、4Y、4Kのそれぞれを用いたプリント枚数を、各現像器4M、4C、4Y、4Kの記憶手段46に書き込み、積算プリント枚数の更新を行う(ステップ5)。本実施例では、CPU110が、プリント枚数検知手段としてプリント信号から各現像器4のプリント枚数を検出できるようになっている。又、CPU110は、検出した各現像器4のプリント枚数を、記憶手段46内に既に記憶されているプリント枚数に積算して更新する。
以上説明したように、本実施例では、絶対水分量が215×10−4kg/k以上であり、且つ、或る一次転写工程に関し、それより以前の一次転写工程で中間転写ベルト61に転写されたトナーを供給した現像器4のプリント枚数が7000枚以上である場合のみ、その転写工程において転写前露光を点灯する。これにより、各色のトナー毎のトータルの再転写量を0.27以下に抑制することができた。しかも、転写前露光の点灯を必要最低限にすることにより、転写前露光によるトナーの飛び散りや、ドット再現性の低下の発生を大幅に抑制することが可能となる。
尚、転写前露光を点灯させるタイミングは、再転写を抑制することができるように適宜選定することができる。好ましくは、転写前露光は、少なくとも、既に中間転写ベルト61上に転写されているトナー像が、再度一次転写ニップN1に到達する前(即ち、中間転写ベルト61、感光体1上の画像形成領域が一次転写ニップN1に到達する前)に点灯を開始し、そのトナー像がその一次転写ニップN1を通過した後(即ち、中間転写ベルト61、感光体1上の画像形成領域が一次転写ニップN1を通過した後)に点灯を終了する。
尚、本実施例では、絶対水分量で転写前露光の制御を行ったが、これに限定されるものでなく、温度、湿度等で制御を行っても構わない。
又、本実施例では、絶対水分量と現像器4の使用条件で転写前露光の制御を行ったが、これに限定されるものでなく、現像器4の使用条件のみで転写前露光の制御を行っても構わない。
本実施例では、現像器4内のトナーの使用履歴情報として、現像器4のトータルプリント枚数に応じて転写前露光の制御を行ったが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、プリントサイズの大小の要因等を排除したい場合などには、使用初期からの現像ローラ42の駆動量(駆動時間、回転数など)の積算時間によって転写前露光の制御を行ってもよい。
本実施例では、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの順に画像形成を行った。上述のように、画像形成をこの順序で行うことによって、転写前露光によるトナーの飛び散りやドット再現性の低下を可及的に抑えつつ、効果的に再転写トナー量を低減することができる利点がある。しかし、本発明は、画像形成順序をこれに限定するものではなく、現像器4の使用条件に応じて画像形成の順番を変更する構成でも構わない。
本実施例では、転写前露光器10は、転写前露光の点灯/非点灯を制御したが、転写前露光の光量を制御するようにしてもよい。つまり、感光体1の表面の電荷を除去する作用量を可変として、上記実施例における転写前露光を非点灯とするのに替えて感光体1の表面の電荷を除去する作用を弱くすることができる。例えば、上記実施例において転写前露光を点灯としたところを第1の光量で点灯させることとし、一方、上記実施例において非点灯としたところを上記第1の光量よりも低い第2の光量で点灯させることとする。第2の光量は、転写前露光によるトナーの飛び散り、ドット再現性の低下を抑制し得るように第1の光量よりも十分に低光量とすればよい。即ち、転写前露光器10は、使用履歴情報が示す現像器の使用に伴って増加する指標の値が所定値以上の場合には第1の光量で点灯し、該所定値未満の場合には第1の光量より小さい第2の光量で点灯するようにすることができる。又、転写前露光器10の光量を、トナーの視認性等に応じて、複数回の転写工程間で異ならせてもよい。
又、感光体1の表面の電荷を除去する除電手段は、露光手段(光除電手段)に限定されるものではない。例えば、バイアス(例えば交流バイアス)が印加されて感光体1の表面の電荷を除去する、感光体1に対向配置された放電手段としての放電器(コロナ放電器、コロトロン)などを使用することができる。この場合、上記実施例における転写前露光器10の代わりに、感光体1の表面移動方向において現像部Dよりも下流且つ一次転写ニップN1よりも上流の位置で感光体1の表面を除電するように放電器を配置する。そして、上記実施例において転写前露光器10をON/OFFしたのと同様にして、放電器にバイアスを出力するバイアス出力手段をON/OFFすればよい。即ち、放電器には、使用履歴情報が示す現像器の使用に伴って増加する指標の値が所定値以上の場合にバイアスが印加され、該所定値未満の場合にはバイアスが印加されないようにすることができる。或いは、上述のように除電効果を可変とするように、このバイアス出力手段の出力を可変とし、上記実施例において転写前露光を点灯としたところを第1のバイアスを出力するものとし、一方、上記実施例において非点灯としたところを上記第1のバイアスよりも絶対値が小さい第2のバイアスを出力するものとしてもよい。第1のバイアスは、転写前除電によるトナーの飛び散り、ドット再現性の低下を抑制し得るように第1のバイアスよりも十分に低くすればよい。即ち、放電器には、使用履歴情報が示す現像器の使用に伴って増加する指標の値が所定値以上の場合に第1のバイアスが印加され、該所定値未満の場合には第1のバイアスよりも絶対値が小さい第2のバイアスが印加されるようにすることができる。
又、本実施例では、環境検知結果の閾値、プリント枚数の閾値は、それぞれ1つずつ設けた。しかし、本発明はこれに限定するものではない。例えば、転写前露光器10の光量を可変として、現像器4のプリント枚数及び/又は環境検知結果閾値を段階的に複数設けることによって、転写前露光の光量を段階的に変更しても構わない。
更に、本実施例では、全ての現像器4に記憶手段46を設けた。但し、最終色の現像器(本実施例ではブラック用の現像器)は、その現像器のプリント枚数に応じて転写前露光を制御すべき後続の一次転写工程が行われない。従って、最終色の現像器には、転写前露光の制御のために現像器内の現像剤の使用履歴を記憶する目的において記憶手段を設ける必要はない。又、現像器、特に、装置本体に対して着脱可能とされた現像カートリッジに記憶手段を設け、この記憶手段に記憶された現像器内の現像剤の使用履歴情報を用いることにより、各現像器に即してより精度のよい制御を行うことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。各現像器内の現像剤の使用履歴情報を対応付けて記憶する記憶手段を装置本体に設けてもよい。
再転写トナー量を粘着テープのマクベス濃度で評価したが、当然、再転写トナー量はその他の方法で評価しても構わない。例えば、実際に感光体1上の転写残トナー及び再転写トナーの単位面積当たりの重量などで評価してもよい。
実施例2
次に、本発明の他の実施態様について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実質的に実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
実施例1では、絶対水分量が215×10−4kg/k以上の環境において、プリント枚数が7000枚以上の現像器4を用いて形成したトナー像の一次転写工程よりも後に画像形成が行われる色については、全てその一次転写工程で転写前露光を点灯させた。しかし、本発明は、絶対水分量が215×10−4kg/k以上の環境において、プリント枚数が7000枚以上の現像器4がある場合において、全ての転写前露光を点灯させる態様に限定されるものではなく、ブラック、マゼンタなど転写前露光による文字画像の視認性の低下が大きい色は転写前露光を点灯させなくても構わない。
本実施例では、転写前露光による文字画像の視認性の低下が大きいブラックのトナー像の一次転写工程時には転写前露光を点灯しない点が実施例1と異なっている。
本実施例における、1回目〜4回目の一次転写工程における転写前露光の点灯状況の詳細を表6〜表9に示す。
本実施例では、ブラックのトナー像を中間転写ベルト61に転写する第4の一次転写工程時には、それ以前に中間転写ベルト61に転写されたトナー像を形成した現像器(即ち、マゼンタ、シアン、イエローの各色用の現像器)4内のトナーの使用履歴に拘わらず、転写前露光を点灯しない。
即ち、本実施例では、実施例1と同様に、第1の現像器により感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61に転写する第1の転写工程と、第1の転写工程より後に行われる、第2の現像器により感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61に転写する第2の転写工程と、を有する場合において、第1の現像器内のトナーの使用履歴情報に応じて、第2の転写工程時における転写前露光器10の制御が行われる構成とする。そして、本実施例では更に、感光体1上の静電像に現像位置において現像剤を供給して現像剤像を形成する第3の現像器を備え、第2の転写工程より後に行われる、第3の現像器により感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61に転写する第3の転写工程を有する場合において、第3の転写工程時には、第1、第2の現像器内のトナーの使用履歴情報に拘わらず転写前露光器10の制御が行われる構成とする。特に、本実施例では、第3の転写工程時には、常に、転写前露光器10は、感光体1の表面の電荷を除去する動作を行わない、即ち、非点灯状態とされる。換言すれば、感光体1の表面の移動方向において現像位置Dよりも下流且つ転写位置N1よりも上流の位置において感光体1の表面の電荷を除去する除電動作を、複数回の転写工程のうち、2回目以降の転写工程時に行う場合と、3回目以降の転写工程時にのみ行う場合があり、特に、本実施例では、複数回の転写工程のうち、上記除電動作を行う転写工程より後の転写工程時に、上記除電動作を行わない場合がある。
このため、第4の一次転写工程における各色のトナー毎の再転写トナー量が0.15に増加する。従って、全転写工程を通した各色のトナー毎のトータルの再転写トナー量は、実施例1と比較して増加する。
表10は、高温高湿環境(30℃/80%RH、絶対水分量215×10−4kg/k)において、全ての現像器4M、4C、4Y、4Kが7000枚プリントした状態である場合の、全転写工程を通した各色のトナー毎のトータルの再転写トナー量を実施例1と本実施例とで比較して示す。尚、表10の結果は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのそれぞれの単色の画像パターン(印字比率100%)を形成した場合について示す。
表10から分かるように、本実施例によれば、実施例1の場合と比較して各色のトナー毎のトータルの再転写トナー量は増加しているものの、転写前露光を点灯しない場合に対して、再転写トナー量は軽減できることが確認できた。
以上説明したように、本実施例では、ブラックのトナーの飛び散り、ドット再現性の低下を発生させることなく、再転写トナーを軽減することが可能となる。
実施例3
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実質的に実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
実施例1では、現像器4内のトナーの使用履歴情報としてプリント枚数に基づいて転写前露光の制御を行った。プリント画像の印字比率がほぼ一定の場合は、トナーの表面の外添剤は、プリント枚数の増加と共に減少し、再転写トナー量はプリント枚数と相関性がある。そのため、プリント枚数に基づいて転写前露を制御することが可能である。
しかしながら、トナーの表面の外添剤の減少は、現像器4内のトナー量が少なくなるほど悪くなる。その理由は、次のように考えられる。つまり、現像器4内のトナーの量が少ないときは、多いときと比較して、トナーの循環が小さい。その結果、同じトナーが現像ブレード45、トナー供給ローラ43などと摺擦される機会が多くなる。このため、トナーの表面の外添剤の減少が促進されるものと考えられる。
例えば、次の各条件で、トータルで3000枚プリントするものとする。
(1)印字比率が5%の画像を3000枚プリント
(2)印字比率が50%の画像を600枚プリントし、その後3000枚まで印字比率が1%の画像をプリント
上記(1)、(2)の両者を比較した場合、トータルのプリント枚数は3000枚で同じであるが、現像器4内のトナー量は大きく異なる。上記(2)の場合、600枚の時点で現像器4内のトナーは非常に少なくなっており、最後の2400枚のプリントにより、トナーの表面の外添剤の減少が非常に促進される。
本実施例では、このような情況にも対応できるように、トナーの表面状態の変化の指標として、トナーの表面の外添剤の減少と相関性が得られるパラメータである「外添剤減少度」を導入する。そして、この外添剤減少度によって転写前露光の制御を行う。
次に、外添剤減少度について説明する。外添剤の埋め込みや遊離によるトナーの表面の外添剤の減少は、現像器4内のトナーの量(重量)が少ないほど促進され、現像器4内のトナーが多いほど緩和される。本発明者らの検討によれば、トナーの表面の外添剤の減少は、下記式、
現像器の使用量×定数T ・・・(i)
で表される値の、現像器4の使用初期からの積算値と非常に相関性がある。上記式(i)中、現像器4の使用量は、実施例1、2と同様に、本実施例ではプリント枚数により決定する。又、定数Tは、現像器4内のトナーの量(重量)に応じて予め決定される値である。そして、各現像器4について、その現像器4の使用初期からの、上記式(i)で表される値の積算値を、「外添剤減少度」とした。
定数Tは、現像器4内のトナー量に依存し、残量が少ないとトナー表面の外添剤の減少が促進されるため大きな値をとる。本実施例においては、使用初期の現像器4内に収容された使用可能なトナー量は300gである。本実施例における現像器4内のトナー量と定数Tのテーブルを表11に示す。
次に、図12〜図15をも参照して、本実施例におけるプリント動作の制御態様について説明する。図12は本実施例における制御系を示すブロック図である。図13〜図15は、本実施例のプリント動作のフローチャートである。
本実施例の制御系は、CPU110に、更に定数Tのテーブルを記憶する記憶媒体113、外添剤減少度を算出する演算手段114、各現像器4内のトナー量を検知するためのトナー残量検知手段115が接続されていることが、図8を参照して説明した実施例1のものと異なる。
本実施例では、現像器4内のトナーの残量を検知するトナー残量検知手段として、静電容量方式を採用し、現像器4内のトナーの残量を逐次に検知する(現像剤残量逐次検知)。この方式は、現像器4内に配置された複数の電極間の静電容量を検知することで、現像器4内のトナー量の検知を行う。つまり、複数の電極を、その間の静電容量が現像器4内のトナーの量の減少に応じて変化するように配置する。電極間にトナーがあるときは、電極間の静電容量が大きく、トナーが減少するに従って電極間に誘起される静電容量は減少する。従って、予め電極間の静電容量と現像器4内のトナー量との関係を求めておくことによって、現像器4内のトナー残量を逐次に検知することができる。但し、本発明は、トナー残量検知手段を静電容量方式に限定するものではない。
図13を参照して、先ず、CPU110は、プリント信号を検出する(ステップ1)。CPU110は、プリント信号を検出すると、環境検知手段13を動作させ、絶対水分量を検知する(ステップ2)。次いで、CPU110は、転写前露光の制御を決定する(ステップ3)。
図14及び図15は、ステップ3における制御フローをより詳細に示す。先ず、CPU110は、環境検知手段13を用いて検知した絶対水分量が215×10−4kg/k以上であるか否かを判断する(ステップ3−1)。絶対水分量が215×10−4kg/k以上の場合、CPU110は、第1〜第3の現像器4M、4C、4Yの記憶手段46に格納された外添剤減少度を、装置本体Aの読み出し/書き込み手段112を介して読み出す(ステップ3−2)。
次いで、CPU110は、その時点における各色の現像器4の外添剤減少度から、画像形成動作時の1回目〜4回目の一次転写工程(第1、第2、第3、第4の一次転写工程)転写前露光器10の点灯/非点灯を決定する。即ち、転写前露光を点灯させる色を決定する(ステップ3−4〜3−10)。本実施例では、CPU110は、記憶手段46から読み出した外添剤減少度が8400以上の現像器4がある場合、その現像器4を用いて形成したトナー像の一次転写工程以降の一次転写工程において転写前帯電器10をONとして転写前露光を点灯する。第1の転写工程時には、既に中間転写ベルト61上に転写されているトナー像はないので、常に転写前露光器10はOFFとする。
つまり、CPU110は、第1の現像器4Mの記憶手段46から読み出した外添剤減少度が8400以上であるか否かを判断し(ステップ3−4)、8400以上である場合には、転写前露光器10を、第1の一次転写工程においてOFFとし、第2〜第4の一次転写工程においてONとすることを決定する(ステップ3−5)。ステップ3−4の判断にて第1の現像器4Mの外添剤減少度が8400未満であった場合は、CPU110は、次いで、第2の現像器4Cの記憶手段46から読み出した外添剤減少度が8400以上であるか否かを判断し(ステップ3−6)、8400以上である場合には、転写前露光器10を、第1〜第2の一次転写工程においてOFFとし、第3〜第4の一次転写工程においてONとすることを決定する(ステップ3−7)。更に、ステップ3−6の判断にて第2の現像器4Cの外添剤減少度が8400未満であった場合は、CPU110は、次いで、第3の現像器4Yの記憶手段46から読み出した外添剤減少度が8400枚以上であるか否かを判断し(ステップ3−8)、8400以上である場合には、転写前露光器10を、第1〜第3の一次転写工程においてOFFとし、第4の一次転写工程においてONとすることを決定する(ステップ3−9)。又、ステップ3−8の判断にて第3の現像器4Yの外添剤減少度が8400未満であった場合、CPU110は、第1〜第4の全ての一次転写工程において転写前露光器10をOFFとすることを決定する(ステップ3−10)。
一方、ステップ3−1の判断において絶対水分量が215×10−4kg/k未満である場合、CPU110は、第1〜第4の全ての一次転写工程において転写前露光器10をOFFとすることを決定する(ステップ3−3)。
上述のようにして、ステップ3にて転写前露光の制御を決定した後、画像形成動作を行う。この時、CPU110は、各現像器4のトナー残量検知手段115の出力を読み取り、トナー残量を検知する(ステップ4)。ジョブの終了後、CPU110は、各現像器4の記憶手段4からその時点での各現像器4のプリント枚数を読み出す。又、演算手段114は、CPU110から送信されたトナー残量検知結果及びプリント枚数から各現像器4の外添剤減少度を算出し、その結果をCPU110に伝達する。そして、CPU110は、算出された外添剤減少度で、各現像器4の記憶手段46に記憶されている外添剤減少度の更新を行う。この時、CPU110は、実施例1と同様にして各現像器4の記憶手段46に記憶されたプリント枚数を更新する(ステップ5)。
例えば、印字比率5%と印字比率2.5%でプリントした場合の外添剤減少度のプリント枚数に対する推移を表12に示す。
本発明者らの検討によれば、外添剤減少度が8133以上になったときに転写前露光を点灯すれば、1回のプリント動作で発生する、各色のトナー毎のトータルの再転写トナー量を0.35以下にすることが可能となる。
外添剤減少度が8133に達するのに要するプリント枚数は、印字比率5%の場合は7000枚、印字比率2.5%の場合8139枚である。そのため、現像器4内のトナーの使用履歴としてプリント枚数のみに応じて転写前露光を制御する場合よりも、印字比率の低いパターンをプリントする場合には転写前露光の発光するタイミングを1139枚分遅くすることができる。このため、転写前露光によるトナーの飛び散り、ドット再現性の低下の発生を抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施例によれば、現像器4の外添剤減少度に応じて転写前露光の制御を行うことで、トナー表面の外添剤の減少に応じて、最適な転写前露光の制御を行うことが可能となる。これにより、転写前露光によるトナーの飛び散り、ドット再現性の低下の発生を大幅に抑制することが可能となる。
尚、本実施例では、画像形成装置の環境による差は考慮しなかったが、定数Tをトナー残量だけでなく画像形成装置の環境によって変更しても構わない。
又、本実施例では、外添剤減少度を算出するために、現像器4の使用量情報としてプリント枚数を使用したが、現像ローラの駆動時間(又は回転数)でも構わない。
実施例4
上記各実施例においては、画像形成装置100は、単一の像担持体に対して複数の現像器を設け、各現像器を用いて像担持体上に順次に形成されるトナー像を、被転写体としての中間転写体に順次に転写する構成とした。本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、当業者には周知の、所謂、タンデム型の画像形成装置にも適用し得るものである。
図16は、タンデム型の画像形成装置200の一例の概略構成を示す。尚、図1に示す画像形成装置100のものと実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一の符号を付している。図16に示す画像形成装置200は、被転写体上にトナー像を形成する像形成手段として、複数の画像形成部(第1、第2、第3、第4の画像形成部)PM、PC、PY、PKを有する。各画像形成部PM、PC、PY、PKは、実質的に同一の構成とされるので、以下、特に区別を要しない場合は添え字M、C、Y、Kは省略して総括的に説明する。
画像形成部Pは、感光体1、帯電ローラ2、走査光学系3、現像器4を有する。又、各画像形成部Pの感光体1に対向するように中間転写ベルト61が配置されており、中間転写ベルト61を介して各画像形成部Pの感光体1に対向するように一次転写ローラ65が配置されている。そして、中間転写ベルト61の移動に伴って、各画像形成部Pにおいて感光体1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61上に重ね合わせて一次転写する。その後このトナー像は、二次転写ニップN2において転写材Sに転写され、定着された後に機外に排出される。
このような構成のタンデム型の画像形成装置200において、例えば、上記実施例1、3に対応する転写前露光制御を行う場合、少なくとも第2、第3、第4の画像形成部PC、PY、PKにおいて、感光体1の回転方向において一次転写ニップN1よりも上流、且つ、現像部Dよりも下流側において感光体1の表面を除電する除電手段として、例えば感光体1上に光を照射する転写前露光器10を設ける。上記実施例1、3において常に転写前露光を行わないものとした1回目の一次転写工程に対応する第1の画像形成部(中間転写ベルト61の表面移動方向において最上流の画像形成部)PMについては、転写前露光器10は設けなくてよい。
そして、上記実施例1、3において第1〜第4の転写工程時のそれぞれの転写前露光器10の動作として説明したものを、各第1〜第4の画像形成部PM、PC、PY、PKにおける一次転写工程時の転写前露光器10の動作として読み替えることによって、タンデム型の画像形成装置200においても上記実施例1、3にて説明した制御を等しく適用することができる。
又、タンデム型の画像形成装置200において上記実施例2に対応する転写前露光制御を行う場合には、上記実施例2において常に転写前露光を非点灯とするものとした4回目の一次転写工程に対応する第4の画像形成部(中間転写ベルト61の表面移動方向において最下流の画像形成部)PKについては、転写前露光器10は設けなくてもよい。
(その他)
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上記各実施例の態様に限定されるものではないことを理解されたい。
中間転写方式の画像形成装置を例に説明したが、本発明は中間転写方式の画像形成装置に限定されるものではない。当業者には周知のように、被転写体として、例えば無端移動するベルト(転写材搬送ベルト)とされる転写材担持体上を搬送される転写材上に、複数色のトナー像を直接転写する直接転写方式の画像形成装置がある。
例えば、図1の画像形成装置100における中間転写ベルト61の代わりに転写材担持体を有する画像形成装置がある。この場合、画像形成装置は、上述の一次転写転写手段に対応する、転写材担持体を介して感光体に押圧された転写手段(転写ローラなど)を有する。そして、転写材担持体上に転写材を担持して繰り返し感光体1との接触部を通過させることによって、複数色のトナー像を順次に転写材担持体上の転写材に転写することができる。或いは、図16の画像形成装置200における中間転写ベルト61の代わりに転写材担持体を有する画像形成装置がある。この場合、画像形成装置は、上述の一次転写手段に対応する、転写材担持体を介して各画像形成部の感光体に押圧された転写手段(転写ローラ)を有する。そして、転写材担持体上に転写材を担持して各画像形成部Pにおける感光体1との接触を通過させることによって、複数色のトナー像を、順次に転写材搬送ベルト上の転写材に転写することができる。直接転写方式の画像形成装置は、上記各実施例における二次転写手段を備えておらず、転写材は、最終色のトナー像が転写された後に転写材搬送ベルトから分離されて定着手段へと送られる。
本発明は、このような直接転写方式の画像形成装置にも等しく適用することができ、上記各実施例と同じ効果を得ることができる。