JP4266419B2 - 線の巻取り方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸線処理にて得られた線を巻取る際、特に停電時に伸線装置と巻取装置との間で線を切断することなしに巻取る方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチールコード等の製造では、まずコードを構成する線を得るために、線材を複数のダイスに連続して通過させて線引きする伸線処理が不可欠である。この伸線処理は、ダイスを通過した線をキヤプスタンに巻き付け、このキヤプスタンを回転することによって線をダイスから引き抜く伸線装置にて行われる。かくして得られた線は、巻取装置の巻取りボビンに巻き取られ、撚り線工程へと移送される。
【0003】
ここで、伸線装置における伸線速度はほぼ一定であるが、巻取装置における巻取りボビンの回転速度は、そこに巻き取られた線の量に応じて巻取り径が変化するため一定とはならない。そこで、線を引き抜くためのキヤプスタンに回転を与える駆動装置と、巻取りボビンに回転を与える駆動装置とは、それぞれ別個に設けるのが通常である。従って、伸線速度と巻取速度とを同調させる必要があり、そのために、伸線装置と巻取装置との間で線の張力を計測して、その計測した張力と連動して、巻取装置の巻取りボビンを回転させる駆動装置、例えば可変速モーターの出力を制御している。
【0004】
また、上記の伸線および巻取り工程において、巻取りボビンが線で満杯(満巻き)になった場合は、伸線装置の駆動装置を停止して伸線を休止するが、駆動装置を停止しても、その後しばらくはキャプスタンが惰性で回転するために、伸線も続行される。従って、伸線装置の駆動装置を停止した後も、線の張力を計測して、この張力と連動して巻取装置の駆動装置の出力を制御する操作を続行し、実際の伸線に同調して巻取りを停止する、工夫がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような伸線・巻取り工程において、伸線処理時に、例えば停電などの不測の事態が発生した場合は、伸線装置及び巻取装置には駆動力が供給されず、当然巻取装置での上記制御も停止されるため、停電後はそれぞれが慣性力により作動することになる。この惰性運動する時間は、伸線装置と巻取装置とでは異なるために、巻取装置の惰性運動時間が長い場合は、線にかかる張力が増大し、この張力が線の破断強度をこえると線の切断に到る。
【0006】
ここで、伸線された線は、その後撚線工程に供給されるために、巻取りボビンに所定の長さで巻き付けておく必要があるが、このように伸線途中で断線が発生すると、所定長さの線を巻き付けられないから、この断線が発生した巻取りボビンは、その後の撚線加工等で使用することができないため、コードの原単位を増加する不利をまねく。
【0007】
そこで、この発明の目的は、停電が発生した場合に伸線装置と巻取装置との間の線を切断させることなく、伸線に対応した巻取りの停止を行う方途を、その装置とともに与えることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の要旨構成は、次のとおりである。
伸線装置で線引きして得られた線を巻取ボビンに巻き取る巻取装置であって、該巻取ボビンに停電時に作動する制動機を設け、該制動機は、巻取ボビンに同軸で設けたディスクおよびこのディスクを挟むブレーキパッドとを有し、該ブレーキパッドに、ディスクに押しつけるための圧力を供給する管を、通電時に閉かつ停電時に機械的に開となる電磁弁を介して接続し、さらに巻取ボビンにおける巻き量の検出装置および、この検出装置で検出した巻き径に基づいて停電時にブレーキパッドに与える圧力を制御する圧力制御弁を設けたことを特徴とする線の巻取装置。
この装置を用いることによって、伸線装置で線引きして得られた線を巻取装置で巻き取るに当たり、停電の発生に際し、巻取装置の巻取ボビンを制動して、伸線装置と巻取装置との間での線の切断を回避することが可能になる。
【0009】
さらに、停電の発生直前の伸線装置と巻取装置との間の線の張力を基準に、巻取ボビンを制動することが実現される。
【0013】
さらに、上記巻取装置において、ブレーキパッドに圧力を供給する管に、補助圧力を供給するエアーチヤンバーを設けることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の巻取装置を示す、図面に基づいて、この発明の方法を具体的に説明する。
すなわち、図1に示すように、伸線装置1にて線引きされた線2は、ガイドプーリ1aおよびトラバース1bを経由して巻取装置3の巻取ボビン3aに巻き付けられる。その際、伸線装置1と巻取装置3との間で線2の張力を計測して、その計測した張力と連動して、巻取りボビン3aを回転させる可変速モーターの出力を制御するのは、在来の装置と同様である。
【0015】
また、巻取ボビン3aには、ボビンと同軸に取り付けたディスク4aおよびブレーキパッド4bの組み合わせに成る制動機4を付設し、停電時には、この制動機4を作動させて巻取ボビン3aの回転を停止し、停電後の伸線装置1と巻取装置3との間の断線を未然に防ぐことが、肝要である。すなわち、停電時には、制動機4のブレーキパッド4bに空気圧や油圧などの圧力を供給することによって、ブレーキパッド4bをディスク4aに押しつけて、巻取ボビン3aの制動を行う。その際、ブレーキパッド4bに供給する圧力を、以下のように制御することが好ましい。
【0016】
まず、巻取ボビン3aの近傍に、超音波センサ5を設置し、この超音波センサ5から巻取ボビン3aに巻き付けた線2に向けて超音波を発信し、その反射音を受信して超音波センサ5からボビン3aに巻き取られた線2の表面までの距離を測定し、この測定結果を信号として変換器6に出力し、この信号を変換器6にて電圧信号に変換し、圧力制御弁7に出力する。
【0017】
この圧力制御弁7は、巻取ボビン3aと同軸に設けた制動機4のブレーキパッド4bに圧力、例えば空気圧を供給するための管8に設置してあり、停電時に管8を介してブレーキパッド4bに供給する空気圧を、巻取ボビン3aでの巻き径に応じて変化する巻取ボビン3aの回転数に対して、適切な範囲とするためのものである。すなわち、圧力制御弁7は、停電直前の巻取ボビン3aの回転数に応じた制動トルクがブレーキパッド4bからディスク4aに加わるように、ブレーキパッド4bに供給する空気圧を常に調節する、役目を担う。
【0018】
さらに、管8には、ブレーキパッド4bと圧力制御弁7との間に、停電時に管8を開いて空気圧をブレーキパッド4bに供給するための電磁弁を備える。すなわち、圧力制御弁7のブレーキパッド4b側には、図2(a) に示す通電(伸線)時に開および同図(b) に示す停電時に閉となる電磁弁9と、同図(a) に示す通電(伸線)時に閉および同図(b) に示す停電時に開となる電磁弁10と、を順に配置する。これら電磁弁9および10は、いわゆるスプリングリターン式の電磁弁であり、停電と同時にスプリング9aおよび10aが働いて、機械的に開または閉動作を行うものである。
【0019】
従って、図2(a) に示す通電(伸線)されている定常状態において停電が発生すると、図2(b) に示すように、電磁弁9および10は、そのスプリング9aおよび10aの作用によって機械的に弁が切り替わる結果、電磁弁9からブレーキパッド4bまで管8が連通することになる。一方、管8には、電磁弁10の入り側まで圧力制御弁7にて制御された所定圧力が付与されているから、停電時に電磁弁10が開側かつ電磁弁9が閉側にそれぞれ移動することによって、所定圧力がブレーキパッド4bに供給されることになり、ブレーキパッド4bは適正な圧力でディスク4aに押しつけられ、巻取ボビン3aの回転が、伸線装置1におけるキャプスタンの慣性回転の停止に先立って、停止される。その結果、伸線装置1と巻取装置3との間での断線は、未然に防がれるのである。
【0020】
さらに、電磁弁9と電磁弁10との間にエアーチヤンバー11を設け、電磁弁10の入り側に付与されている圧力が、例えば開いた電磁弁10内で損失した場合などに不足することのないように、エアーチヤンバー11にて補助圧力を管8に加えておくことが、巻取ボビン3aを確実に停止するのに有利である。
【0021】
ここで、停電時の伸線装置における惰性運動時間は、伸線する線材の線径と材質、伸線装置自体の慣性モーメントおよび伸線速度によって決まり、それぞれの要素を変更しない限り一定である。このように伸線装置での伸線条件が定められている場合、停電発生時の伸線装置の慣性運転時間は一定である。
【0022】
一方、巻取装置の慣性運転時間は、巻取装置自体の慣性モーメント、ボビンに巻き取られた線の長さおよび巻取ボビンの回転速度によって定められるが、ボビンに巻き取られる線の長さは巻始めから巻終わりまで変化し、また伸線速度が一定の場合、巻き径によって巻取ボビンの回転速度も変化するため、ボビン自体の慣性モーメントが変化する。この巻き径は巻き長さによって定まるため、巻き径および巻き長さのいずれかを測定することによって、そのときの巻取装置の制動トルクを定めることができる。
【0023】
従って、この発明に従って、巻取ボビンに巻かれた線の長さまたは巻き径を測定して求めた制動トルクを巻取装置に与えることによって、停電発生時、伸線装置の惰性運動時間に同調させて巻取りを停止することができる。
【0024】
【実施例】
図1に示した装置を用いた伸線および巻取りにおいて、超音波センサ5によって該センサ5から巻取ボビン3aに巻き付けた線2までの距離を測定し、該距離に応じて圧力制御弁7による空気圧の制御を行っておき、停電を発生させ、その際、電磁弁9,10を機械的に動作させて、所定の空気圧をブレーキパッド4bに供給してディスク4aに押しつけ、巻取ボビン3aに、図3に示すように適正な制動力を与えたところ、該制御を行わない場合に70%の割合で発生していた停電時断線を、完全に回避することができた。
【0025】
すなわち、図3において、超音波計測で得られる巻き長さに対して断線する事なく、またたるんで撚線がばらけることなしに同調して停止できる線2の張力Tの範囲は、T=0kgとT=13.5kgの破線の間の範囲である。具体的には図中で巻長さ351500m の場合、制動トルクを3000kg・mm以上にすると、制動がかかりすぎて伸線速度より巻き取り速度が遅くなり、伸線される過剰な量の線は巻き取られないために撚りがばらけてしまう。この制動トルクが3000kg・mm未満のT=0kgのラインにくると、張力がかかることなく巻き取られることになる。そして、制動トルクが3000kg・mmから小さくなっていくにしたがって巻取の巻取トルクが大きくなり、それに従って線に付加される張力が増加していく。ちょうど制動トルクが0付近のところで線にかかる張力が線の引張り強さを越えてしまうために断線してしまう。従って、撚りがばらけることなく、かつ破断もすることなく、線の引張り強さの範囲内で、制動トルクを設定することで同調して停止させることができる。なお、制動トルク及び伸線トルク等にばらつきがあるため、このばらつきを考慮した場合、例えばT=2kg とT=6kg (7.5kg)の点線の間の範囲で制御するとよい。
【0026】
【発明の効果】
この発明によれば、停電が発生した場合に伸線装置と巻取装置との間の線を切断させることなく、伸線に対応して巻取りの停止を行えるため、停電によるコード原単位の増加を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う巻取装置および伸線装置を示す図である。
【図2】この発明に従う巻取装置における電磁弁の作動を示す図である。
【図3】巻長さと制御トルクとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 伸線装置
2 線
3 巻取装置
3a 巻取ボビン
4 制動機
4a ディスク
4b ブレーキパッド
5 超音波センサ
6 変換器
7 圧力制御弁
8 管
9,10 電磁弁
9a,10a スプリング
11 エアーチヤンバー
Claims (2)
- 伸線装置で線引きして得られた線を巻取ボビンに巻き取る巻取装置であって、該巻取ボビンに停電時に作動する制動機を設け、該制動機は、巻取ボビンに同軸で設けたディスクおよびこのディスクを挟むブレーキパッドとを有し、該ブレーキパッドに、ディスクに押しつけるための圧力を供給する管を、通電時に閉かつ停電時に機械的に開となる電磁弁を介して接続し、さらに巻取ボビンにおける巻き量の検出装置および、この検出装置で検出した巻き径に基づいて停電時にブレーキパッドに与える圧力を制御する圧力制御弁を設けたことを特徴とする線の巻取装置。
- 請求項1において、ブレーキパッドに圧力を供給する管に、補助圧力を供給するエアーチヤンバーを設けたことを特徴とする線の巻取装置。
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