JP4266105B2 - 原点設定型リニヤスケール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二物体間の相対移動量を測定するリニヤスケールに関するものであり、特にこのようなスケールにおいて、基準位置を原点信号として出力することにより、例えば、工作機械等の移動量を絶対値で知ることができるようにした原点設定型リニヤスケールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工作機械等において、被加工物に対する工具の相対移動量を正確に測定することは、精密加工を行う上で極めて重要であり、このための測定装置が種々製品化されている。
そのひとつとして、光学格子を2枚重ね合わせることにより得られるモアレ縞を利用した光学式スケールが従来から知られている。この光学式スケールは、
図5に示すように透明のガラススケール100の一面に透光部と非透光部が所定のピッチで配列するよう格子(刻線)を設けたメインスケール101と、透明のガラススケール102の一面に透光部と非透光部が所定のピッチで配列するよう格子(刻線)を設けたインデックススケール103とを有し、同図(a)に示すように、このメインスケール101にインデックススケール103を微小間隔を持って対向させると共に、同図(b)に示すように、メインスケール101の格子に対し微小角度傾けられるようにインデックススケール103の格子を配置している。
【0003】
なお、メインスケール101及びインデックススケール103に設けた格子は、ガラススケール100,102にクロムを真空蒸着し、エッチングすることにより形成された同一ピッチの格子により形成されている。
このように配置すると、図6に示すモアレ縞が発生する。このモアレ縞の間隔はWとなり、間隔W毎に暗い部分あるいは明るい部分が発生する。この暗い部分あるいは明るい部分は、メインスケール101に対し、インデックススケール103が相対的に左右に移動する方向に応じて上から下、あるいは下から上に移動していく。この場合、メインスケール101及びインデックススケール103の格子のピッチをP、相互の傾斜角度をθ[rad]とすると、モアレ縞の間隔Wは、
W=P/θ
と示され、モアレ縞の間隔Wは、光学的に格子間隔Pを1/θ倍に拡大した間隔とされていることになる。そして、格子が1ピッチP移動すると、モアレ縞はWだけ変位することになり、W内のスリットの透過光や反射光をの変化を読み取ることにより、1ピッチP内の移動量を精密に測定することができるようになる。
【0004】
モアレ縞の変化は図7に示すように、モアレ縞の変化を光学的に検出する光電変換素子(受光素子)110をインデックススケールに設け、メインスケールの反対側に光源を設けるようにして、メインスケール101に対しインデックススケール103を相対的に移動させながら、この光電変換素子110に流れる電流を検出して、その変化を読み取る。
【0005】
すなわち、メインスケール101に対しインデックススケール103がAの状態となっていると、光電変換素子110に照射される光量は最も多くなり、光電変換素子110に流れる電流は最大値I1 となる。次に、相対的に移動してBの状態になると、光電変換素子110に照射される光量はやや減少し、その電流はI2となり、更に、移動してCの状態になると光電変化素子110には最も少ない光量が照射され、その電流も最も小さいI3 となる。そして、更に移動してDの状態になると、光電変換素子110に照射される光量はやや増加し、その電流はI2 となり、Eの状態になるまで移動すると、再び最も光量の多い位置となり、その電流は最大値I1 となる。
このように、光電変換素子110に流れる電流は正弦波状に変化すると共に、その変化が1周期経過した時に、格子間隔Pだけメインスケール101とインデックススケール103とが相対的に移動したことになる。
【0006】
ところで、このように構成された光学式スケールは、NC工作機械に取りつけられて被加工物と工具との相対的移動量を測定しているが、一般に数値制御する場合は原点からの移動量としてプログラムされるため、この相対的移動量は原点からの移動量として測定する必要がある。そこで、通常メインスケールに予め原点位置が設けられ、この原点位置をインデックススケールが通過した時に原点が検出され、この原点検出信号はNC装置に供給されてNC装置をリセットすることにより、原点位置をNC装置にセッテイングするようにしていた。
そこで、上記したような光電式リニヤスケールにおいて、例えばその一例を示すと図8(a)に示すようにメインスケール101の刻線位置とは異なる所定のトラック位置に、基準点となる原点Zを示す刻線(格子)109を設け、この原点となる格子109、およびインデックススケール103を通過する光をモアレ縞として検出する原点位置用の光電変換素子を配置しておくと、メインスケール101とインデックススケール103が特定の位置関係になっているときだけを原点の信号として検出することができるようになる。
【0007】
すなわち、図8(b)に示すように、この原点Zの位置においてもメインスケール101の1ピッチPの間で図7の場合と同様に変化する信号Szが原点検出信号として検出されるから、この原点検出信号Szの波形のピーク点を、例えば同図(b)に示すように所定のレベルTHでクリップして原点パルス信号Pzを形成すると、この原点パルス信号Pzの立ち上がり点をメインスケールの原点Zとすることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したようなリニヤスケールは、通常はメインスケールとインデックススケールの双方を光が透過して相対的な移動距離や、原点信号を検出できるようにしている光透過型にするため、スケールを透過させる光源部分とこの光源部分に対峙するように、光を検出する受光素子を別々に設ける必要があり、装置が複雑になると共に大型化するという問題があった。
【0009】
そこで、インデックススケール側に発光源と受光素子の両方を設け、メインスケールで反射した光をインデックススケール側で検出し、スケールの移動距離を測定する光反射型の装置も開発されているが、この場合はメインスケールとインデックススケール間のギャップ(間隔)が広くなり検出感度が低下するという問題が生じる。
特に原点信号の場合は検出感度が低下すると検出波形がなまり、精度の高い原点信号を得ることが困難になる。
【0010】
本発明の原点設定型リニヤスケールは上記したような問題を解決するために、特に原点信号の検出波形が鋭い信号波形となるようにしたもので、
相対的に変位するメインスケールとインデックススケールとを有し、
前記メインスケールには3位置に分離され光が透過または反射することにより原点信号を発生するためのマークである第1の格子窓(15a、15b、15c)を有し、
前記メインスケールと対峙して移動するように配置されているインデックススケールには、4個の窓16a、16b、16c、16dからなり、これらの両端からそれぞれ隣接する窓を1組みとして反射光または透過を検出する2組の第2の格子窓(16a、16b)(16c、16d)と、この2組の格子窓の透過光を受光する一対の受光素子を有し、 前記第1の格子窓および2組の第2の格子窓は四角形であってそれぞれスケールの移動方向に沿って直線的に配置され、
前記メインスケールの単位寸法をtとしたとき、第1の格子窓を構成する各格子窓15(a、b、c)は単位寸法tの間隔をあけてスケールの移動方向の窓の長さがそれぞれ1t、7t、1tとなるように形成され、第2の格子窓16を構成する各格子窓16(a、b、c、d)は前記各組内の窓の間隔がtで2つの組の間の窓の間隔が4tであり、かつスケールの移動方向の窓の長さが全部2tの長さとなるように形成され、
前記一対の受光素子から得られた2系統の検出信号をそれぞれ加算及び減算を含む信号処理を行うことで前記メインスケールの特定位置から原点信号が得られるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
前記第2の格子窓の一方の組を透過した光を検出するために1個の受光素子が設けられ、他方の組の格子窓を透過した光を検出するために1個の受光素子が設けられ、
前記メインスケールの第1の格子窓で反射または透過された光を前記インデックススケールに開口して刻設されている第2の格子窓を透過させて前記各受光素子から2系統の検出信号Z1,Z2を得、この検出信号を処理することによって原点信号を得ることで、原点位置で急峻な変化をする信号が得られ、さらに前記検出信号Z1,Z2からそれぞれ加算処理が行われた信号と、減算処理が行われた信号とが形成され、これらの信号の論理積をとることによって原点位置でのみピークレベルとなるパルス信号を得ることができ、より高い精度の信号が得られる。
【0012】
【作用】
本発明によれば、原点が複数個に分割された格子窓によって形成されているので、スケールが相対的に移動したときに、原点位置を検出する検出信号波形の立ち上がり、及び立ち下がり点が急峻になるため、特に反射型のリニヤスケール装置に適応したときに有効である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の限定設定型リニヤスケールの主要部を説明する。
図1は原点設定のためのスケールと格子窓の様子を模式的に示したもので、11は相対的な移動量と原点を測定するためのメインスケール、一点鎖線の部分12は前面側にインデックススケール13が配置されているインデックスホルダである。
このインデックスホルダ12の内部には図示されていないが、例えばスケールの下方から前記メインスケール11を照射する光源が設けられており、さらに一対の受光素子も設けられている。
【0014】
14aはメインスケールに刻設されているメインスリット(主格子)、14bはインデックススケール13に形成されているサブスリット(副格子)であって、前記したようにこのスリットの重なりによってモアレ縞が発生し、メインスケール11とインデックススケール13の相対的な移動量を測定できるようになされている。
【0015】
15はメインスケール11の所定の位置に形成されている原点信号発生用の第1の格子窓であり、本発明の実施例では図示されているように3点の位置15a、15b、15cに反射用のマークが配置されている。
また、この第1の格子窓15によって反射した光が入射するように前記インデックススケール13の側に第2の格子窓16が設けられている。
この第2の格子窓16は16a、16b、16c、16dからなる4個の窓によって構成されており(16a、16b)と(16c、16d)を2組として反射光を検出するように構成されている。
すなわち、図示されていないが第2の格子窓の一方の組(16a、16b)を透過した光を検出するために図示されていないが1個の受光素子が設けられ、同じく他方の組の格子窓(16c、16d)を透過した光を検出するために1個の受光素子が設けられている。
【0016】
図2は、原点位置を検出するための第1の前記格子窓15と、第2の格子窓16の詳細な寸法を示している。
この図にみられるようにスケール上の単位寸法を「t」(例えば0.32mm)とすると、第1の格子窓を構成する各格子窓15(a、b、c)は単位寸法「t」の間隔をあけて、それぞれ1t、7t、1tの長さとなるように構成されている。
また、第2の格子窓16を構成する各格子窓16(a、b、c、d)は同じくスケールの単位寸法を「t」とすると、全部2tの長さとなるように構成され、間隔は16aと16bの間がt、16bと16cの間が4t、16cと16dの間がtとなるように配置されている。
【0017】
図3(a)はメインスケールとインデックススケールの相対的移動によって第2の格子窓16(a、b、c、d)を透過して検出された原点位置近傍の検出信号を示している。
この図で検出信号Z1は第2の格子窓(16a、16b)を透過した光の強度変化であり、検出信号Z2は第2の格子窓(16c、16d)を透過した光の強度変化を示しており横軸は移動距離、縦軸は出力レベルである。
この図から理解できるように検出信号の変化は、特に「t」の期間は単位寸法「t」だけスケールが移動したときに最大レベルの1/2の変化分として得られていることがわかる。
したがって、この期間tの信号変化を信号処理により抽出すると原点信号の立ち上がり立ち下がりが急峻な信号波形を得ることができる。
このように、一対の受光素子の中で一方の受光素子は検出信号Z1を他方の受光素子は検出信号Z2を検出する。
【0018】
図4は原点信号を得るための回路例を示すブロック図でデジタル信号処理回路によって構成されている。
すなわち、デジタル信号に変換された検出信号Z1,Z2はまず加算回路21に供給されて加算処理が行われ、その加算出力がコンパレータ22に供給されることによって図3(b)のA信号を作る。
また検出信号Z1,Z2は同時に減算回路23に供給され、その減算出力をウィンドウコンパレータ24に供給することによって図3(b)のB信号を形成する。
前記A信号、及びB信号は次に論理積回路(アンドゲート)25に供給され論理積をとることによって図3(b)のC信号のように原点位置でのみピークレベルとなるパルス信号を得ることができる。
【0019】
本願発明は上記したようにメインスケールに設けられている第1の格子窓15(a、b、c)で反射された光を、インデックススケール13に開口して刻設されている第2の格子窓16(a、b、c、d)を透過させることによって、2系統の検出信号Z1,Z2を得、この検出信号を処理することによって原点信号が得られるようにしているので、従来の単にモアレ縞をスライスした信号に比較してより精度の高い原点信号を得ることができる。
【0020】
なお、上記の実施例ではメインスケール11の第1の格子窓15(a、b、c)で反射された光を受光するように構成したが、メインスケール11の第1の格子窓15(a、b、c)を透過するようにバックライトを設け、このメインスケールの後面から照射されたバックライトが同時にインデックススケール13の第2の格子窓16(a、b、c、d))を透過する場合の検出光によって原点信号を形成するようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように、メインスケール上に複数個の原点位置を設定すると共に、この原点位置で反射した信号、またはこの原点位置を透過した信号を2組の第2の格子窓を通過するように構成し、透過した光を一対の受光素子によって検出すると共に、2系統の検出信号の信号処理によって原点信号を形成するようにしているので、原点位置で急峻に変化する原点信号を作ることができるという効果を奏する。
そのため、特にスケール間のギャップが広い場合でも、高い精度で原点信号が得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】原点設定型リニヤスケールと、原点及びスケールの相対的な移動量を検出する検出部の説明図である。
【図2】第1の格子窓と第2の格子窓の詳細な寸法関係を説明する説明図である。
【図3】スケールの移動距離と検出信号レベルの関係を示す波形図である。
【図4】2組の検出信号の信号処理を説明するためのブロック図である。
【図5】光学式スケールの原理図である。
【図6】モアレ縞の説明図である。
【図7】モアレ縞の移動を示す図である。
【図8】原点信号を得るためのスケールの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
11 メインスケール
12 インデックスホルダ
13 インデックススケール
14a,14b 主副スリット
15(a、b、c)第1の格子窓
16(a、b、c、d)第2の格子窓
Claims (3)
- 相対的に変位するメインスケールとインデックススケールとを有し、
前記メインスケールには3位置に分離され光が透過または反射することにより原点信号を発生するためのマークである第1の格子窓(15a、15b、15c)を有し、
前記メインスケールと対峙して移動するように配置されているインデックススケールには、4個の窓16a、16b、16c、16dからなり、これらの両端からそれぞれ隣接する窓を1組みとして反射光または透過を検出する2組の第2の格子窓(16a、16b)(16c、16d)と、この2組の格子窓の透過光を受光する一対の受光素子を有し、 前記第1の格子窓および2組の第2の格子窓は四角形であってそれぞれスケールの移動方向に沿って直線的に配置され、
前記メインスケールの単位寸法をtとしたとき、第1の格子窓を構成する各格子窓15(a、b、c)は単位寸法tの間隔をあけてスケールの移動方向の窓の長さがそれぞれ1t、7t、1tとなるように形成され、第2の格子窓16を構成する各格子窓16(a、b、c、d)は前記各組内の窓の間隔がtで2つの組の間の窓の間隔が4tであり、かつスケールの移動方向の窓の長さが全部2tの長さとなるように形成され、
前記一対の受光素子から得られた2系統の検出信号をそれぞれ加算及び減算を含む信号処理を行うことで前記メインスケールの特定位置から原点信号が得られる原点設定型リニヤスケール。 - 前記第2の格子窓の一方の組を透過した光を検出するために1個の受光素子が設けられ、他方の組の格子窓を透過した光を検出するために1個の受光素子が設けられ、
前記メインスケールの第1の格子窓で反射または透過された光を前記インデックススケールに開口して刻設されている第2の格子窓を透過させて前記各受光素子から2系統の検出信号Z1,Z2を得、この検出信号を処理することによって原点信号を得る請求項1の原点設定型リニヤスケール。 - 前記検出信号Z1,Z2からそれぞれ加算処理が行われた信号と、減算処理が行われた信号とが形成され、これらの信号の論理積をとることによって原点位置でのみピークレベルとなるパルス信号を得る請求項1または2の原点設定型リニヤスケール。
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