JP4264770B2 - 光路偏向部材を有する光学系の位置合わせ方法および該光学系の製造方法 - Google Patents
光路偏向部材を有する光学系の位置合わせ方法および該光学系の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光路偏向部材を有する光学系の位置合わせ方法および該光学系の製造方法に関する。さらに詳細には、たとえば反射屈折光学系のように複数の光軸を有する光学系において各光軸と光路偏向部材との相対位置の位置合わせ方法に関し、特にICやLSIのような半導体素子を製造するための投影露光装置における反射屈折型の投影露光光学系に最適な位置合わせ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体技術の進展は近年ますます速度を増しており、それに伴って投影露光装置を用いる微細加工技術の進展も著しい。投影露光装置では、マスクに形成された微細パターンを、投影露光光学系を介して、ウエハのような感光性基板に転写する。現在、たとえばメモリのような半導体素子として16MビットDRAMや64MビットDRAMが主流であるが、256MビットDRAMの領域まで開発が行われつつある。そして、半導体素子の集積度の増大に伴って、投影露光装置における露光光も現在主流のi線(365nm)から、さらに短波長のエキシマレーザー光に移っている。すなわち、波長248nmのKrFエキシマレーザーが既に実用化され、波長193nmのArFエキシマレーザーについても開発が進んでいる。
【0003】
しかしながら、露光光の短波長化により、投影露光光学系に使用可能な硝材(光学材料)の種類は著しく制限される。その結果、投影露光光学系として従来から主流の屈折光学系(凹面反射鏡のような反射光学部材を含むことなく複数の屈折光学部材からなる光学系)では、色収差の補正が困難になる。それに対し、反射屈折光学系(凹面反射鏡のような反射光学部材と屈折光学部材とからなる光学系)では、色収差の補正は容易であり、且つ像面湾曲の補正に必要条件となるペッツバール和を0にすることも容易であるため、屈折光学部材の数も著しく低減することができる。従来より、反射屈折型の投影露光光学系が、特開平2−66510号公報、特開平3−282527号公報、特公平7−111512号公報、米国特許4,779,996号公報等に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、典型的な反射屈折型の投影露光光学系では、マスクからの光が凹面反射鏡によりマスク方向に反射されるので、凹面反射鏡からの反射光をマスクへ戻すことなく光路から分離してウエハ方向へ導くための光路偏向部材が必要となる。その結果、光路偏向部材によって光路が折り曲げられて光軸が直線状に延びることなく、異なる光軸を有する複数の部分光学系が、ひいては異なる軸線を有する複数の鏡筒が必要となる。したがって、たとえば反射屈折型の投影露光光学系のように光路偏向部材を有する光学系では、各光軸と光路偏向部材との相対位置の位置合わせ、すなわち異なる軸線を有する複数の鏡筒と光路偏向部材との相対位置の位置合わせを高精度に行う必要がある。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、光路偏向部材を有する光学系において、異なる軸線を有する複数の鏡筒と光路偏向部材との相対位置すなわち各光軸と光路偏向部材との相対位置を高精度に位置合わせすることのできる位置合わせ方法、およびこの位置合わせ方法を用いて光路偏向部材を有する光学系を高精度に製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明では、第1の光軸を有する第1部分光学系と、前記第1の光軸とは異なる第2の光軸を有する第2部分光学系と、前記第1部分光学系と前記第2部分光学系との間の光路中に配置されて前記第1部分光学系と前記第2部分光学系とを光学的に接続する少なくとも1つの光路偏向部材とを有する光学系に関して、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材を位置合わせする方法において、
前記第1の光軸に沿った所定の位置に所定の焦点距離を有する第1光学部材を位置決めし、
前記第2の光軸に沿った所定の位置に所定の焦点距離を有する第2光学部材を位置決めし、
前記第1光学部材から前記少なくとも1つの光路偏向部材を介して前記第2光学部材までの光路中において前記第1光学部材の焦点位置と前記第2光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出し、
光学的に検出した前記位置関係が所定の位置関係と一致するように前記少なくとも1つの光路偏向部材を微動させることによって、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材を位置合わせすることを特徴とする位置合わせ方法を提供する。
【0007】
本発明の好ましい態様によれば、前記第1光学部材として球面状の反射面を有する凹面反射鏡を用い、該凹面反射鏡の光軸と前記第1の光軸とが一致するとともに前記反射面が光路偏向部材側に向くように前記第1の光軸に対して前記凹面反射鏡を位置決めし、前記第2光学部材として屈折光学部材を用い、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材が正確に位置合わせされた理想状態において前記凹面反射鏡の焦点位置と前記屈折光学部材の焦点位置とが一致するように、前記屈折光学部材の光軸と前記第2の光軸とを一致させて前記屈折光学部材を位置決めする。
この場合、前記第2の光軸に平行な平行光束を前記屈折光学部材に入射させ、前記屈折光学部材の最も光路偏向部材側の基準面で反射されて戻った第1光束と、前記基準面を透過し前記少なくとも1つの光路偏向部材を介して前記凹面反射鏡で反射されて戻った第2光束とに基づいて、前記凹面反射鏡の焦点位置と前記屈折光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出することが好ましい。
【0008】
なお、前記第1光束と前記第2光束との干渉に基づいて、前記凹面反射鏡の焦点位置と前記屈折光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出することが好ましい。
また、前記屈折光学部材としてフィゾーレンズを用い、該フィゾーレンズのフィゾー面が前記基準面を構成するか、あるいは、前記屈折光学部材としてゾーンプレートを用い、該ゾーンプレートのパターン面が前記基準面を構成することが好ましい。この場合、前記屈折光学部材のFナンバーを4以下に設定することが好ましい。
さらに、前記第1光束の集光点と前記第2光束の集光点との位置関係に基づいて、前記凹面反射鏡の焦点位置と前記屈折光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出することもできる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記第1部分光学系と前記第2部分光学系とが、互いに直交する反射面を有する第1光路偏向鏡および第2光路偏向鏡を介して光学的に接続され、前記第1光路偏向鏡の反射面の延長面と前記第2光路偏向鏡の反射面の延長面との交線が前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して垂直になるように、前記第1光路偏向鏡と前記第2光路偏向鏡とを一体的に支持し、光学的に検出した前記位置関係が所定の位置関係と一致するように前記第1光路偏向鏡と前記第2光路偏向鏡とを一体的に微動させることによって、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記第1光路偏向鏡および前記第2光路偏向鏡を位置合わせする。
この場合、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対する前記第1光路偏向鏡および前記第2光路偏向鏡の位置合わせに際して、前記第1の光軸に平行な第1の軸線周りの回転、該第1の軸線に沿った移動、または前記第1の光軸と前記第2の光軸とを含む面内において前記第1の光軸に垂直な第2の軸線に沿った移動を、前記第1光路偏向鏡および前記第2光路偏向鏡に対して一体的に加えることが好ましい。
【0010】
ところで、前記光路偏向部材を有する光学系は、少なくとも1つのレンズ成分と少なくとも1つの凹面反射鏡とを有する反射屈折光学系であることが好ましい。この場合、前記反射屈折光学系は、マスクに形成されたパターンを感光性基板上に投影するための投影露光光学系であることが好ましい。さらにこの場合、前記投影露光光学系は、前記マスク上において前記第1の光軸から偏心した照明領域に形成されたパターンを、前記感光性基板上において前記第2の光軸から偏心した露光領域に投影することが好ましい。
【0011】
また、本発明の別の局面によれば、上述の位置合わせ方法を用いて、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材を位置合わせし、
前記第1の光軸に沿った所定の位置に位置決めされた前記第1光学部材を取り外し、
前記第2の光軸に沿った所定の位置に位置決めされた前記第2光学部材を取り外し、
前記第1の光軸に沿った所定の位置を基準として、前記第1の光軸に沿って前記第1部分光学系を構成する各光学部材を位置決めし、
前記第2の光軸に沿った所定の位置を基準として、前記第2の光軸に沿って前記第2部分光学系を構成する各光学部材を位置決めすることによって、前記光路偏向部材を有する光学系を製造することを特徴とする製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明では、異なる光軸を有する第1部分光学系(第1の光軸)と第2部分光学系(第2の光軸)とが少なくとも1つの光路偏向部材によって光学的に接続されている光学系に関して、各光軸に対して光路偏向部材を位置合わせする。このため、第1の光軸に沿った所定の位置に所定の焦点距離を有する第1光学部材を位置決めする。この場合、第1光学部材として、たとえば球面状に形成された反射面を光路偏向部材側に向けた凹面反射鏡を用いることができる。また、この凹面反射鏡を位置決めする位置として、たとえば第1の光軸と一致する軸線を有する第1鏡筒の中心点から所定距離だけ間隔を隔てた第1の光軸上の点を選択することができる。
【0013】
同様に、第2の光軸に沿った所定の位置に所定の焦点距離を有する第2光学部材を位置決めする。この場合、第2光学部材として、たとえばフィゾーレンズを用いることができる。このフィゾーレンズを位置決めする位置として、たとえば第2の光軸と一致する軸線を有する第2鏡筒の中心点から所定距離だけ間隔を隔てた第2の光軸上の点を選択することができる。
この状態において、凹面反射鏡から光路偏向部材を介してフィゾーレンズまでの光路中において凹面反射鏡の焦点位置とフィゾーレンズの焦点位置との位置関係を光学的に検出する。そして、光学的に検出した位置関係が所定の位置関係と一致するように光路偏向部材を微動させることによって、各光軸に対して光路偏向部材を位置合わせする。
【0014】
以下、凹面反射鏡の焦点位置とフィゾーレンズの焦点位置との位置関係を光学的に検出する工程について説明を簡素化するために、各光軸に対して光路偏向部材が正確に位置合わせされた理想状態において凹面反射鏡の焦点位置とフィゾーレンズの焦点位置とが光路中において一致するように、凹面反射鏡およびフィゾーレンズを各光軸に対して位置決めするものとする。
この場合、第2の光軸に平行な平行光束をフィゾーレンズに入射させると、入射光束の一部がフィゾーレンズのフィゾー参照面(最も光路偏向部材側の基準面)で反射され、第1光束として戻ってくる。一方、フィゾー参照面を透過した光束は、正確に位置合わせされていない光路偏向部材を介して凹面反射鏡で反射され、光路偏向部材およびフィゾーレンズを介して第2光束として戻ってくる。その結果、第1光束と第2光束との干渉に基づいて、凹面反射鏡の焦点位置とフィゾーレンズの焦点位置との位置関係を光学的に検出することができる。また、第1光束の集光点と第2光束の集光点との位置関係に基づいて、凹面反射鏡の焦点位置とフィゾーレンズの焦点位置との位置関係を光学的に検出することもできる。
【0015】
また、光学的に検出した位置関係に基づいて各光軸に対して光路偏向部材を位置合わせする工程について説明を簡素化するために、第1部分光学系と第2部分光学系とが互いに平行な光軸を有し、光路偏向部材として互いに直交する反射面を有する第1光路偏向鏡および第2光路偏向鏡を備えているものとする。
この場合、第1光路偏向鏡の反射面の延長面と第2光路偏向鏡の反射面の延長面との交線が第1の光軸および第2の光軸に対して垂直になるように、所定の支持体に対して第1光路偏向鏡と第2光路偏向鏡とを一体的に支持する。そして、光学的に検出した凹面反射鏡の焦点位置とフィゾーレンズの焦点位置とが一致するように、第1光路偏向鏡と第2光路偏向鏡とを一体的に微動させることによって、各光軸に対して第1光路偏向鏡および第2光路偏向鏡を位置合わせする。
【0016】
ここで、各光軸に対する第1光路偏向鏡および第2光路偏向鏡の位置合わせに際して、第1光路偏向鏡と第2光路偏向鏡との一体的な微動の調整自由度は3つである。すなわち、第1の光軸に平行な第1の軸線周りの回転自由度と、この第1の軸線に沿った移動自由度と、第1の光軸と第2の光軸とを含む面内において第1の光軸に垂直な第2の軸線に沿った移動自由度とである。こうして、上述の3つの調整自由度のうちの少なくとも1つの調整自由度にしたがって第1光路偏向鏡と第2光路偏向鏡とを一体的に微動させることにより、各光軸に対して第1光路偏向鏡および第2光路偏向鏡を高精度に位置合わせすることができる。
【0017】
ところで、本発明は、マスクに形成されたパターンを感光性基板上に投影するための投影露光光学系のような反射屈折光学系、すなわち少なくとも1つの屈折光学部材と少なくとも1つの凹面反射鏡とを有する光学系の位置合わせに対して好適である。特に、マスク上において第1の光軸から偏心した照明領域に形成されたパターンを、感光性基板上において第2の光軸から偏心した露光領域に投影する投影露光光学系にも容易に適用可能である。この種の投影露光光学系において光路偏向鏡の有効反射領域と対応する光軸とが交わらない場合もあるが、この場合においても高精度な位置合わせが可能である。加えて、凹面反射鏡のような反射光学部材を含むことなく複数の屈折光学部材からなる屈折型の光学系や、屈折光学部材を含むことなく凹面反射鏡のような複数の反射光学部材からなる反射型の光学系に対しても同様に本発明を適用することができることはいうまでもない。
【0018】
また、本発明では、上述の位置合わせ方法を用いて、光路偏向部材を有する光学系を高精度に製造することができる。具体的には、上述の位置合わせ方法を用いて各光軸に対して光路偏向部材を高精度に位置合わせした後に、第1の光軸と一致する軸線を有する第1鏡筒から凹面反射鏡を取り外すとともに、第2の光軸と一致する軸線を有する第2鏡筒からフィゾーレンズを取り外す。次いで、第1の光軸に沿った所定の位置、たとえば第1鏡筒の中心点を基準として、従来技術にしたがって第1部分光学系を構成する各光学部材を第1鏡筒に対してその軸線(すなわち第1の光軸)に沿って高精度に位置決めする。また、第2の光軸に沿った所定の位置、たとえば第2鏡筒の中心点を基準として、従来技術にしたがって第2部分光学系を構成する各光学部材を第2鏡筒に対してその軸線(すなわち第2の光軸)に沿って高精度に位置決めする。その結果、光路偏向部材を有する光学系を高精度に製造することができる。
【0019】
以上のように、本発明では、光路偏向部材を有する光学系において、異なる軸線を有する複数の鏡筒と光路偏向部材との相対位置すなわち各光軸と光路偏向部材との相対位置を高精度に位置合わせすることができる。その結果、この高精度な位置合わせに基づいて、光路偏向部材を有する光学系を高精度に製造することができる。
【0020】
以下、本発明の実施例を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例にかかる位置合わせ方法および製造方法を実施するための光学系の構成を概略的に示す図である。
本実施例では、2つの光路偏向部材を有する反射屈折型の投影露光光学系の位置合わせ方法および製造方法に対して本発明を適用している。図1において、第1結像光学系S1の光軸AX1と平行にZ軸を、Z軸に垂直な面内において図1の紙面に平行にY軸を、Z軸に垂直な面内において図1の紙面に垂直にX軸をそれぞれ設定している。なお、図1の紙面であるYZ面は、第1結像光学系S1の光軸AX1と第2結像光学系S2の光軸AX2とを含む平面である。
【0021】
図1の投影露光光学系は、たとえば微細な回路パターンが形成されたマスク1からの光に基づいてパターンの中間像を形成するための第1結像光学系S1と、中間像からの光に基づいて感光性基板であるウエハ2上にパターンの縮小像を形成するための第2結像光学系S2と、中間像が形成される位置の近傍に配置され第1結像光学系S1を介した光を−Y方向へ偏向するための第1光路偏向鏡M1と、この第1光路偏向鏡M1からの光を第2結像光学系S2に向かって−Z方向へ偏向するための第2光路偏向鏡M2とを備えている。
【0022】
図1において、第1結像光学系S1は、マスク側から順に、図中実線で示すように、3つのレンズ成分L1〜L3、および凹面反射鏡CMから構成されている。ここで、各レンズ成分L1〜L3および凹面反射鏡CMは、円筒状の第1鏡筒B1の内部において、Z軸に平行な1つの光軸AX1に沿って配列されている。すなわち、第1結像光学系S1の光軸AX1と第1鏡筒B1の軸線とは一致している。
【0023】
一方、第2結像光学系S2は、マスク側(すなわち第2光路偏向鏡側)から順に、図中実線で示すように、5つのレンズ成分L4〜L8から構成されている。ここで、各レンズ成分L4〜L8は、円筒状の第2鏡筒B2の内部において、Z軸に平行な1つの光軸AX2に沿って配列されている。すなわち、第2結像光学系S2の光軸AX2と第2鏡筒B2の軸線とは一致している。また、第2結像光学系S2の光軸AX2と第1結像光学系S1の光軸AX1とは互いに平行である。
【0024】
なお、第1結像光学系S1と第2結像光学系S2との間の光路中に配置された第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2は、第1結像光学系S1の光軸AX1と第2結像光学系S2の光軸AX2とを含むYZ面(図1の紙面)に直交するとともに互いに対向するように光軸AX1および光軸AX2に対して45度だけ傾いた反射面を有する。すなわち、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面とは互いに直交し、2つの反射面を延長して形成される交線はX軸に平行である。第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2は、支持体B3に取り付けられている。
【0025】
このように、図1の投影露光光学系は、2つの光路偏向鏡M1およびM2を有する反射屈折型の光学系であって、異なる軸線を有する2つの鏡筒B1およびB2を有する。さらに別の観点によれば、図1の投影露光光学系は、3つの異なる光軸、すなわち第1結像光学系S1の光軸AX1と、第2結像光学系S2の光軸AX2と、Y軸に平行な第3の光軸AX3とを有する。ここで、光軸AX3は、所定位置に位置合わせされた第1光路偏向鏡M1の反射面(厳密にはその有効反射領域の延長面)に対して光軸AX1に沿って入射した光が通る軌跡として定義される。また同様に、光軸AX3は、所定位置に位置合わせされた第2光路偏向鏡M2の反射面に対して光軸AX2に沿って入射した光が通る軌跡として定義される。
【0026】
こうして、図1の投影露光光学系では、XY面に平行に位置決めされたマスク1上において光軸AX1から+Y方向に偏心したパターン領域からの光が、第1結像光学系S1を構成する各レンズ成分L1〜L3を介して凹面反射鏡CMで反射された後に、各レンズ成分L3〜L1を介して中間像を形成する。中間像からの光は、第1光路偏向鏡M1の反射面で−Y方向に反射された後、第2光路偏向鏡M2の反射面で−Z方向に反射され、第2結像光学系S2へ導かれる。第2結像光学系S2に導かれた光は、各レンズ成分L4〜L8を介して、XY面に平行に位置決めされたウエハ2上において光軸AX2から−Y方向に偏心した露光領域にマスクパターンの縮小像を形成する。
【0027】
図1の投影露光光学系では、従来技術(説明を省略する)にしたがって、第1鏡筒B1の軸線と第2鏡筒B2の軸線とが所定の間隔を隔てて互いに平行になるように、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2を高精度に位置決めすることができる。また、従来技術(説明を後述する)にしたがって、反射面が互いに直交するように、支持部材B3に対して第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2を高精度に位置決めすることができる。
【0028】
さらに、従来技術(説明を省略する)にしたがって、第1鏡筒B1に対して各光学部材(L1〜L3、CM)を位置決めする際に、第1鏡筒B1の軸線と第1結像光学系S1の各光学部材(L1〜L3、CM)の光軸とをミクロン単位の精度で一致させることができる。同様に、従来技術(説明を省略する)にしたがって、第2鏡筒B2に対して各光学部材(L4〜L8)を位置決めする際に、第2鏡筒B2の軸線と第2結像光学系S2の各光学部材(L4〜L8)の光軸とをミクロン単位の精度で一致させることができる。
【0029】
したがって、図1の投影露光光学系の製造に際して各光学部材(L1〜L8、CM、M1、M2)を高精度に位置決めするには、2つの光路偏向鏡M1およびM2と、2つの光軸AX1およびAX2との相対位置を高精度に位置合わせする必要がある。換言すると、光軸AX1と一致する軸線を有する第1鏡筒B1および光軸AX2と一致する軸線を有する第2鏡筒B2と、2つの光路偏向鏡M1およびM2との相対位置を高精度に位置合わせする必要がある。さらに具体的は、たとえば第1鏡筒B1の中心である基準点Aから第2鏡筒B2の中心である基準点Bまでの光軸(AX1、AX3およびAX2)に沿った距離が所定の長さになるように、2つの鏡筒B1およびB2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2を高精度に位置合わせする必要がある。
【0030】
図2は、図1に対応する図であって、本実施例の位置合わせ方法を説明するための図である。
図2では、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2が既に高精度に位置決めされている状態が示されている。本実施例では、投影露光光学系の製造に際して、本発明にしたがって第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2を高精度に位置合わせし、その後に従来技術にしたがって第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対してその他の各光学部材を位置決めする。なお、図2では、X軸、Y軸およびZ軸が図1と同様に設定されている。
【0031】
本実施例の位置合わせ方法では、図2に示すように、反射面MS1を有する凹面反射鏡MOを、その光軸が第1鏡筒B1の軸線(ひいては光軸AX1)と一致するように、第1鏡筒B1の内部において所定の位置に取り付ける。ここで、反射面MS1は球面状に形成され、凹面反射鏡MOは第1鏡筒B1に取り付けられた状態において第1光路偏向鏡側に反射面MS1を向けている。
また、図2に示すように、調整用光学素子としてのレンズ群Gを、その光軸が第2鏡筒B2の軸線(ひいては光軸AX2)と一致するように、第2鏡筒B2の内部において所定の位置に取り付ける。第2鏡筒B2に取り付けられた状態において、レンズ群Gの最も第2光路偏向鏡側のレンズ面は、フィゾー参照面としての基準面BS1を構成する。
【0032】
なお、凹面反射鏡MOの光軸と第1鏡筒B1の軸線、およびレンズ群Gの光軸と第2鏡筒B2の軸線とをミクロン単位の精度で一致させる技術は広く知られている。また、反射面MS1の曲率半径R、およびレンズ群Gの基準面BS1側の焦点から基準面BS1までの光軸に沿った距離Fは、従来技術にしたがって予め正確に測定することができる。さらに、基準点Aから反射面MS1までの光軸に沿った距離1a、および基準点Bから基準面BS1までの光軸に沿った距離1bも、たとえばデジタルマイクロメータ等を用いて従来技術により正確に測定することができる。
【0033】
本実施例では、次の式(1)で示す関係が成立するように、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して凹面反射鏡MOおよびレンズ群Gをそれぞれ位置決めする。
L=1a+1b+R+F (1)
ここで、Lは、基準点Aから基準点Bまでの光軸に沿った設計距離(設計上規定される距離)である。
【0034】
したがって、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2が正確に位置合わせされた状態において、凹面反射鏡MOの焦点(すなわち反射面MS1から光軸に沿って曲率半径Rだけ離れた点)とレンズ群Gの焦点(すなわち基準面BS1から光軸に沿って距離Fだけ離れた点)とが一致する。すなわち、この状態において、レンズ群Gのウエハ側から光軸(AX2)に平行な平行光束をレンズ群Gへ導入すると、レンズ群Gおよび第2光路偏向鏡M2を介した光束は光軸AX3上の点24(すなわちレンズ群Gの焦点であり且つ凹面反射鏡MOの焦点)において集光する。集光点24からの発散光束は第1光路偏向鏡M1を介して凹面反射鏡MOに垂直入射する。凹面反射鏡MOの反射面MS1で反射された光束は、往路と全く同じ光路に沿って、第1光路偏向鏡M1を介して点24において再び集光した後、第2光路偏向鏡M2およびレンズ群Gを介して光軸(AX2)に平行な平行光束となる。
【0035】
換言すると、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2が正確に位置合わせされた状態では、レンズ群Gの基準面BS1を透過することなく基準面BS1で反射されて戻った第1光束と、レンズ群Gの基準面BS1を透過し凹面反射鏡MOで反射されて戻った第2光束との間に所定の干渉縞が得られる。そこで、本実施例では、上述の第1光束と第2光束との干渉に基づいて、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対する2つの光路偏向鏡M1およびM2の位置合わせを行う。以下、第1光束と第2光束との干渉の検出、および2つの光路偏向鏡M1およびM2の位置合わせについて説明する。
【0036】
まず、第1光束と第2光束との干渉の検出について説明する。
本実施例では、干渉計21から供給された平行光を、第2鏡筒B2に形成された開口部22を介して、第2鏡筒B2の内部へ導入する。第2鏡筒B2の内部へ導入された平行光は、第2鏡筒B2の内部に取り付けられた反射ミラー23によって+Z方向に偏向され、平行光のままレンズ群Gに入射する。レンズ群Gに入射した平行光束の集光点とレンズ群Gの焦点(光軸AX3上の点)とを一致させるには、レンズ群Gに対して光軸AX2に平行な平行光束を入射させる必要がある。そこで、干渉計21は、第1光束と第2光束との干渉を検出する機能に加えて、レンズ群Gに対して光軸AX2に平行な平行光束を入射させる調整機能も備えている。
【0037】
図3は、図2の干渉計21の内部構成を示す図である。
図3に示すように、干渉計21は、コヒーレントな平行光を供給するレーザ光源31を備えている。まず、平行光束の入射調整に際して、レーザ光源31から供給された光は、ビームスプリッター32で+Z方向に反射された後、二軸周りに回転可能な調整用反射ミラー33に入射する。調整用反射ミラー33で+Y方向に反射された光は、第2鏡筒B2に形成された開口部22および反射ミラー23を介してレンズ群G(図3では不図示)に入射する。レンズ群Gの基準面BS1で反射された光は、反射ミラー23および調整用反射ミラー33を介してビームスプリッター32に入射する。ビームスプリッター32に入射した基準面BS1からの反射光は、ビームスプリッター32を透過した後に、ディテクタ34に入射する。なお、レンズ群Gの基準面BS1を透過した光は、たとえばレンズ群Gと第2光路偏向鏡M2との間の光路中に設置されたシャッター(不図示)によって遮られる。
【0038】
一方、レーザ光源31から供給された光のうちビームスプリッター32を透過した光は、シャッター35を通過した後に、反射ミラー36に垂直入射する。反射ミラー36で反射された光は、シャッター35を介してビームスプリッター32に入射する。ビームスプリッター32に入射した反射ミラー36からの反射光は、ビームスプリッター32で反射された後に、ディテクタ34に入射する。こうして、ディテクタ34では、基準面BS1からの反射光と、トワイマンミラーとして機能する反射ミラー36からの反射光との干渉縞が検出される。
【0039】
ところで、レンズ群Gに対して光軸AX2に平行な平行光束が入射した場合、レンズ群Gの基準面BS1に対して平行光束は垂直入射する。その結果、ディテクタ34において基準面BS1からの反射光と反射ミラー36からの反射光との間に所定の干渉縞が検出される。そこで、ディテクタ34において検出される干渉縞に基づいて調整用反射ミラー33を回転微動させることにより、レンズ群Gに対して光軸AX2に平行な平行光束を入射させることができる。こうして、レンズ群Gに対する平行光束の入射調整を行った後に、シャッター35を閉じた状態で第1光束と第2光束との干渉を検出する。
【0040】
すなわち、第1光束と第2光束との干渉の検出に際して、レーザ光源31から供給された光は、ビームスプリッター32で+Z方向に反射された後、調整用反射ミラー33および反射ミラー23を介してレンズ群Gに入射する。レンズ群Gの基準面BS1で反射された第1光束は、反射ミラー23および調整用反射ミラー33を介してビームスプリッター32に入射する。ビームスプリッター32に入射した基準面BS1からの反射光である第1光束は、ビームスプリッター32を透過した後に、ディテクタ34に入射する。
【0041】
一方、レンズ群Gの基準面BS1を透過した第2光束は、図2を再び参照すると、第2光路偏向鏡M2で反射された後に一旦集光し、第1光路偏向鏡M1を介して凹面反射鏡MOに入射する。凹面反射鏡MOの反射面MS1で反射された第2光束は、第1光路偏向鏡M1を介して一旦集光した後、第2光路偏向鏡M2を介してレンズ群Gに入射する。レンズ群Gに入射した第2光束は、反射ミラー23および調整用反射ミラー33を介してビームスプリッター32に入射する。ビームスプリッター32に入射した凹面反射鏡MOの反射面MS1からの反射光である第2光束は、ビームスプリッター32を透過した後に、ディテクタ34に入射する。こうして、ディテクタ34では、フィゾー参照面としての基準面BS1からの反射光である第1光束と、反射面MS1からの反射光である第2光束との干渉縞が検出される。
【0042】
前述したように、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2が正確に位置合わせされた状態において、凹面反射鏡MOの焦点とレンズ群Gの焦点とが一致するように構成されているので、凹面反射鏡MOの反射面MS1に対して平行光束は垂直入射する。その結果、ディテクタ34において基準面BS1からの反射光と凹面反射鏡MOからの反射光との間に所定の干渉縞が検出される。換言すると、ディテクタ34において検出される干渉縞に基づいて第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2を微動させることにより、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2を正確に位置合わせすることができる。
【0043】
次に、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対する2つの光路偏向鏡M1およびM2の位置合わせについて具体的に説明する。
本実施例では、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面とが直交するように、支持体B3に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2を正確に位置決めする。また、直交するように正確に位置決めされた第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面との交線に平行な反射面MS2を支持体B3に対して設定する。支持体B3に対する2つの光路偏向鏡M1およびM2並びに反射面MS2の位置決めは、たとえばオートコリメータ(視準光によって反射鏡の角度偏移を検出する装置)などを利用した従来技術によって容易に達成される。以下、図4を参照して、支持体B3に対する2つの光路偏向鏡M1およびM2並びに反射面MS2の位置決めについて簡単に説明する。
【0044】
まず、図4において、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面とがある程度の精度でほぼ直交するように、支持体B3に対して2つの光路偏向鏡M1およびM2が位置決めされているものとする。この状態において、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面との交線に対してある程度の精度でほぼ平行になるように、反射部材41の反射面41aを位置決めする。そして、第1光路偏向鏡M1の反射面を視準する位置にオートコリメータ42を設置し、オートコリメータ42を用いて反射面41aに対して平行になるように第1平行平面板43を設定する。次いで、支持体B3に取り付けられた反射部材46の反射面MS2を視準する位置にオートコリメータ42を移動させ、オートコリメータ42を用いて反射面41aに対して平行になるように第3平行平面板45を設定する。最後に、第2光路偏向鏡M2の反射面を視準する位置にオートコリメータ42を移動させ、オートコリメータ42を用いて反射面41aに対して平行になるように第2平行平面板44を設定する。こうして、第1平行平面板43と第2平行平面板44と第3平行平面板45とは、所望の高精度で互いに平行に設定される。
【0045】
この状態において、反射部材41を光路から取り外し、オートコリメータ42からの光を第2平行平面板44を介して第2光路偏向鏡M2に入射させる。第2光路偏向鏡M2で反射された光は、第1光路偏向鏡M1で反射され、第1平行平面板43に入射する。第1平行平面板43で反射された光は、第1光路偏向鏡M1、第2光路偏向鏡M2および第2平行平面板44を介してオートコリメータ42に戻る。この場合、2つの平行平面板43と44とが幾何学的に平行に配置されているので、第1光路偏向鏡M1を微動させながら2つの平行平面板43と44とが光学的に平行になるように設定すれば、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面とを高精度で直交させることができる。また、反射部材46の反射面MS2を視準する位置にオートコリメータ42を再び移動させ、オートコリメータ42を用いて第3平行平面板45に対して平行になるように反射部材46の反射面MS2を調整することにより、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面との交線に平行な反射面MS2を支持体B3に対して高精度に設定することができる。
【0046】
一般に、反射面が互いに直交するように設定された第1光路偏向鏡M1と第2光路偏向鏡M2とを一体的に移動または回転させることによって、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対する第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2の位置合わせを行う場合、第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2は5つの調整自由度を有する。すなわち、Y方向の移動(シフト)、Z方向の移動、X軸周りの回転(チルト)、Y軸周りの回転およびZ軸周りの回転である。これに対して、干渉計21において得られる焦点位置ずれ情報、すなわちレンズ群Gの焦点と凹面反射鏡MOの焦点との相対位置ずれ情報は、x方向の位置ずれ情報、y方向の位置ずれ情報、およびz方向の位置ずれ情報からなる3つの位置ずれ情報である。ここで、zは光軸(AX1〜AX3)に沿った局所座標であり、xおよびyはz軸に垂直な面内においてそれぞれ各図の紙面に平行な局所軸および垂直な局所軸である。本実施例では、第1光路偏向鏡M1の反射面と第2光路偏向鏡M2の反射面との交線に平行な反射面MS2をZ軸に沿った第1鏡筒B1の軸線に対して垂直に設定することにより、第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2に対して必要な調整自由度を、Y方向の移動、Z方向の移動およびZ軸周りの回転からなる3つの調整自由度まで減らすことにする。
【0047】
なお、第1鏡筒B1の軸線に対して反射面MS2を垂直に設定することは、たとえばオートコリメータなどを利用した従来技術によって容易に達成される。以下、図1および図5を参照して、第1鏡筒B1の軸線に対する反射面MS2の位置決めについて簡単に説明する。本実施例では、第1鏡筒B1の軸線に対して垂直な平行平面板を第1鏡筒B1の外周部に設置し、この平行平面板と反射面MS2とを平行に設定することにより、第1鏡筒B1の軸線に対して反射面MS2を垂直に位置決めする。なお、前述したように、第1鏡筒B1の軸線と第2鏡筒B2の軸線とが互いに平行になるように2つの鏡筒B1およびB2が位置決めされているので、第1鏡筒B1の軸線に対して反射面MS2を位置決めすることは、反射面MS2を第2鏡筒B2の軸線に対しても垂直に設定することに他ならない。したがって、第2鏡筒B2の軸線に対して垂直な平行平面板を第2鏡筒B2の外周部に設置し、この平行平面板と反射面MS2とを平行に設定してもよいことはいうまでもない。
【0048】
まず、図5に示すように、第1鏡筒B1の内部においてその軸線に沿って平行平面板51を位置決めする。ここで、従来技術にしたがって第1鏡筒B1の軸線ひいては光軸AX1に対して垂直に平行平面板51を設定することは容易であり、詳細な説明を省略する。そして、平行平面板51を視準する位置にオートコリメータ52を設置し、オートコリメータ52を用いて平行平面板51に対して平行に平行平面板53を設定する。次いで、反射面MS2を視準する位置にオートコリメータ52を移動させ、オートコリメータ52を用いて平行平面板53に対して平行になるように平行平面板54を第1鏡筒B1の外周部に設置する。この状態において、平行平面板53を光路から取り外し、オートコリメータ52を用いて平行平面板54の基準面BS2に対して反射面MS2が平行になるように支持体B3を位置決め調整する。
【0049】
こうして、Z軸に沿った第1鏡筒B1の軸線および第2鏡筒B2の軸線に対して支持体B3の反射面MS2を垂直に、すなわち支持体B3の反射面MS2をXY面に平行に設定することができる。換言すると、光軸AX1に沿って第1光路偏向鏡M1に入射した光がY方向に反射されるように設定することができる。その結果、第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2の前述した5つの調整自由度から、X軸周りの回転およびY軸周りの回転からなる2つの調整自由度を減らすことができる。すなわち、x方向の位置ずれ情報、y方向の位置ずれ情報およびz方向の位置ずれ情報からなる3つの位置ずれ情報に応じて、Y方向の移動、Z方向の移動およびZ軸周りの回転からなる3つの自由度をそれぞれ独立に調整すればよいことになる。
【0050】
一般に、基準面BS1からの反射光である第1光束と凹面反射鏡MOの反射面MS1からの反射光である第2光束との間の波面ずれεx 、εy およびεz と、波面収差の変化ΔWとの間には、次の式(2)に示す関係が成立する(サイエンス社、村田和美著の「光学」第151頁を参照)。
ΔW=εz /{8・(FG)2 }−(εx +εy )/(2・FG) (2)
ここで、FGは、フィゾーレンズとしてのレンズ群GのFナンバーである。また、εx 、εy およびεz は、局所座標系xyzにおける第1光束の波面の曲率中心と第2光束の波面の曲率中心との間の位置ずれ、すなわち波面ずれである。
【0051】
式(2)を参照すると、レンズ群GのFナンバーFGが小さいほど、波面ずれεx 、εy およびεz の検出感度は高くなる。たとえば、干渉計において検出可能な波面収差の変化ΔWが0.1μmであるとすると、レンズ群GのFナンバーFGの値を4以下に設定することにより、ミクロン単位の精度での波面ずれの調整が、ひいては鏡筒B1およびB2に対する光路偏向鏡M1およびM2のミクロン単位の精度での位置合わせが可能となる。レンズ群GのFナンバーFGが4を超えると、位置合わせ精度が10ミクロンよりも大きくなり、投影露光装置の投影露光光学系における位置合わせ精度としては不適となる。さらに好ましくは、レンズ群GのFナンバーFGの値を3以下に設定することにより、さらに高い精度の位置合わせを実現することができる。
【0052】
以上のように、本実施例では、第1鏡筒B1の内部に設置した凹面反射鏡MOの焦点と第2鏡筒B2の内部に設置したレンズ群Gの焦点とが一致するように、第1光路偏向鏡M1と第2光路偏向鏡M2とを一体的に微動させることにより、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2を高精度に位置合わせすることができる。換言すると、第1鏡筒B1の光軸AX1および第2鏡筒B2の光軸AX2に対して、第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2の配置によって規定される第3の光軸AX3を高精度に位置合わせすることができる。
【0053】
本実施例では、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して第1光路偏向鏡M1および第2光路偏向鏡M2を高精度に位置合わせした後に、従来技術にしたがって第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に各光学部材を位置決めすることによって光学系の製造を完了する。すなわち、図1に示すように、第1鏡筒B1から凹面反射鏡MOを取り外すとともに第2鏡筒B2からレンズ群Gを取り外した後に、基準点Aを基準として第1鏡筒B1の内部にその軸線(すなわちAX1)に沿って各光学部材(L1〜L3およびMO)を位置決めし、基準点Bを基準として第2鏡筒B2の内部にその軸線(すなわちAX2)に沿って各光学部材(L3〜L8)を位置決めする。
【0054】
なお、第1鏡筒B1の軸線および第2鏡筒B2の軸線に対して各光学部材の光軸をミクロン単位の精度で一致させながら各鏡筒内に各光学部材を高精度に組み込むことは従来技術において広く知られており、重複する説明を省略する。
こうして、本実施例では、光路偏向部材を有する光学系において、異なる軸線を有する複数の鏡筒と光路偏向部材との相対位置すなわち各光軸と光路偏向部材との相対位置を高精度に位置合わせすることができ、その結果光路偏向部材を有する光学系を高精度に製造することができる。
【0055】
なお、上述の実施例では、反射屈折型の投影露光光学系の位置合わせ方法および製造方法に対して本発明を適用している。しかしながら、光路偏向部材と複数の鏡筒(ひいては複数の光軸)との相対位置の位置合わせを高精度に行う必要性は、反射屈折型の投影露光光学系に限定されることなく、光路偏向部材を有する一般の光学系に共通である。すなわち、凹面反射鏡のような反射光学部材のみからなる複数の反射光学系が1つまたは複数の光路偏向部材を介して光学的に接続されている場合や、屈折光学部材のみからなる複数の屈折光学系が1つまたは複数の光路偏向部材を介して光学的に接続されている場合においても、上述の実施例と同様に本発明を適用することができる。
【0056】
また、上述の実施例では、2つの光路偏向部材を介して2つの鏡筒が配置された光学系に対して本発明を適用しているが、1つまたは3つ以上の光路偏向部材を介して複数の鏡筒が配置された光学系に対しても本発明を適用することができることはいうまでもない。
また、上述の実施例では、第1鏡筒B1の内部に凹面反射鏡MOを設置し且つ第2鏡筒B2の内部にレンズ群Gを設置しているが、逆に第1鏡筒B1の内部にレンズ群Gを設置し且つ第2鏡筒B2の内部に凹面反射鏡MOを設置してもよい。
【0057】
さらに、上述の実施例では、調整の容易さおよび所要の精度の確保の容易さなどを考慮し、第1鏡筒B1の軸線と凹面反射鏡MOの光軸とを一致させ、且つ第2鏡筒B2の軸線とレンズ群Gの光軸とを一致させている。また、基準点Aと第1鏡筒B1の中心とを一致させ、且つ基準点Bと第2鏡筒B2の中心とを一致させている。しかしながら、基準点AおよびBを必ずしも第1鏡筒B1の軸線および第2鏡筒B2の軸線上に設定する必要はなく、第1鏡筒B1および第2鏡筒B2に対して任意の位置関係に設定することができる。また、凹面反射鏡MOの光軸およびレンズ群Gの光軸を必ずしも第1鏡筒B1の軸線および第2鏡筒B2の軸線と一致させる必要はない。
【0058】
また、上述の実施例では、干渉計において検出した第1光束と第2光束との干渉に基づいてレンズ群Gの焦点と凹面反射鏡MOの焦点との位置ずれを調整している。しかしながら、干渉計を用いることなく、第1光束の集光点と第2光束の集光点との位置ずれに基づいてレンズ群Gの焦点と凹面反射鏡MOの焦点との位置ずれを検出し、ひいては鏡筒B1およびB2に対する光路偏向鏡M1およびM2の位置合わせを行うことができる。
さらに、上述の実施例では、第1光束と第2光束との干渉の検出に際して、フィゾーレンズとして機能するレンズ群Gを第2鏡筒B2の内部に設置している。しかしながら、このレンズ群Gに代えて、既知の焦点距離を有するゾーンプレートを用いることができる。この場合、ゾーンプレートのパターン面が基準面BS1を構成することになる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、第1の光軸に対して位置決めされた凹面反射鏡のような第1光学部材から光路偏向部材を介して第2の光軸に対して位置決めされたフィゾーレンズのような第2光学部材までの光路中において、第1光学部材の焦点位置と第2光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出する。そして、光学的に検出した位置関係が所定の位置関係と一致するように光路偏向部材を微動させることによって、第1の光軸および第2の光軸に対して光路偏向部材を高精度に位置合わせすることができる。
【0060】
また、本発明では、上述の位置合わせ方法を用いて各光軸に対して光路偏向部材を高精度に位置合わせした後に、第1の光軸と一致する軸線を有する第1鏡筒から凹面反射鏡を取り外すとともに、第2の光軸と一致する軸線を有する第2鏡筒からフィゾーレンズを取り外す。次いで、従来技術にしたがって、第1部分光学系を構成する各光学部材を第1鏡筒に対して高精度に位置決めするとともに、第2部分光学系を構成する各光学部材を第2鏡筒に対して高精度に位置決めする。その結果、本発明では、各光軸に対する光路偏向部材の高精度な位置合わせに基づいて、光路偏向部材を有する光学系を高精度に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる位置合わせ方法および製造方法を実施するための光学系の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に対応する図であって、本実施例の位置合わせ方法を説明するための図である。
【図3】図2の干渉計21の内部構成を示す図である。
【図4】支持体B3に対する2つの光路偏向鏡M1およびM2並びに反射面MS2の位置決めについて説明する図である。
【図5】第1鏡筒B1の軸線に対する反射面MS2の位置決めについて説明する図である。
【符号の説明】
A、B 基準点
B1 第1鏡筒
B2 第2鏡筒
B3 支持体
BS1 基準面
BS2 基準面
CM 凹面反射鏡
M1 第1光路偏向鏡
M2 第2光路偏向鏡
MO 凹面反射鏡
MS1 反射面
MS2 反射面
G レンズ群
S1 第1結像光学系
S2 第2結像光学系
Li 各レンズ成分
1 マスク
2 ウエハ
21 干渉計
22 開口部
23 反射ミラー
Claims (9)
- 第1の光軸を有する第1部分光学系と、前記第1の光軸とは異なる第2の光軸を有する第2部分光学系と、前記第1部分光学系と前記第2部分光学系との間の光路中に配置されて前記第1部分光学系と前記第2部分光学系とを光学的に接続する少なくとも1つの光路偏向部材とを有する光学系に関して、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材を位置合わせする方法において、
前記第1の光軸に沿った所定の位置に所定の焦点距離を有する第1光学部材を位置決めし、
前記第2の光軸に沿った所定の位置に所定の焦点距離を有する第2光学部材を位置決めし、
前記第1光学部材から前記少なくとも1つの光路偏向部材を介して前記第2光学部材までの光路中において前記第1光学部材の焦点位置と前記第2光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出し、
光学的に検出した前記位置関係が所定の位置関係と一致するように前記少なくとも1つの光路偏向部材を微動させることによって、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材を位置合わせすることを特徴とする位置合わせ方法。 - 前記第1光学部材として球面状の反射面を有する凹面反射鏡を用い、該凹面反射鏡の光軸と前記第1の光軸とが一致するとともに前記反射面が光路偏向部材側に向くように前記第1の光軸に対して前記凹面反射鏡を位置決めし、
前記第2光学部材として屈折光学部材を用い、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材が正確に位置合わせされた理想状態において前記凹面反射鏡の焦点位置と前記屈折光学部材の焦点位置とが一致するように、前記屈折光学部材の光軸と前記第2の光軸とを一致させて前記屈折光学部材を位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。 - 前記第2の光軸に平行な平行光束を前記屈折光学部材に入射させ、
前記屈折光学部材の最も光路偏向部材側の基準面で反射されて戻った第1光束と、前記基準面を透過し前記少なくとも1つの光路偏向部材を介して前記凹面反射鏡で反射されて戻った第2光束とに基づいて、前記凹面反射鏡の焦点位置と前記屈折光学部材の焦点位置との位置関係を光学的に検出することを特徴とする請求項2に記載の位置合わせ方法。 - 前記第1部分光学系と前記第2部分光学系とが、互いに直交する反射面を有する第1光路偏向鏡および第2光路偏向鏡を介して光学的に接続され、
前記第1光路偏向鏡の反射面の延長面と前記第2光路偏向鏡の反射面の延長面との交線が前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して垂直になるように、前記第1光路偏向鏡と前記第2光路偏向鏡とを一体的に支持し、
光学的に検出した前記位置関係が所定の位置関係と一致するように前記第1光路偏向鏡と前記第2光路偏向鏡とを一体的に微動させることによって、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記第1光路偏向鏡および前記第2光路偏向鏡を位置合わせすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置合わせ方法。 - 前記第1の光軸および前記第2の光軸に対する前記第1光路偏向鏡および前記第2光路偏向鏡の位置合わせに際して、前記第1の光軸に平行な第1の軸線周りの回転、該第1の軸線に沿った移動、または前記第1の光軸と前記第2の光軸とを含む面内において前記第1の光軸に垂直な第2の軸線に沿った移動を、前記第1光路偏向鏡および前記第2光路偏向鏡に対して一体的に加えることを特徴とする請求項4に記載の位置合わせ方法。
- 前記光学系は、少なくとも1つのレンズ成分と少なくとも1つの凹面反射鏡とを有する反射屈折光学系であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置合わせ方法。
- 前記反射屈折光学系は、マスクに形成されたパターンを感光性基板上に投影するための投影露光光学系であることを特徴とする請求項6に記載の位置合わせ方法。
- 前記投影露光光学系は、前記マスク上において前記第1の光軸から偏心した照明領域に形成されたパターンを、前記感光性基板上において前記第2の光軸から偏心した露光領域に投影することを特徴とする請求項7に記載の位置合わせ方法。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の位置合わせ方法を用いて、前記第1の光軸および前記第2の光軸に対して前記少なくとも1つの光路偏向部材を位置合わせし、
前記第1の光軸に沿った所定の位置に位置決めされた前記第1光学部材を取り外し、
前記第2の光軸に沿った所定の位置に位置決めされた前記第2光学部材を取り外し、
前記第1の光軸に沿った所定の位置を基準として、前記第1の光軸に沿って前記第1部分光学系を構成する各光学部材を位置決めし、
前記第2の光軸に沿った所定の位置を基準として、前記第2の光軸に沿って前記第2部分光学系を構成する各光学部材を位置決めすることによって、前記光路偏向部材を有する光学系を製造することを特徴とする製造方法。
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