JP4264241B2 - 反射防止膜、反射防止フィルム、および画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射防止膜ならびにそれを用いた反射防止フィルムおよび画像表示装置(特に液晶表示装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜は一般に、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するように光学製品などの表面に設置され、特に良好な視認性を求められる陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、その表示面の最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止膜は、通常の多くの例では、高屈折率層の上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低屈折率層素材としては反射防止性能の観点からできる限り屈折率の低い素材が望まれ、同時にディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性及び防汚性が要求される。また低い反射率性能を発現するために膜厚の均一性も重要であり、塗布型材料においては、塗布性、レベリング性も重要なファクターになる。
【0004】
厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性を高めることが重要である。
低屈折率性を保ちながら耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、フッ素の導入、シリコーンの導入等の手段が行なわれている。これらの手段は表面張力を下げるために、レベリング性付与の効果も期待できる。低屈折率層に滑り性の含フッ素ポリマーを用いる場合には、塗布溶剤可溶化のために炭化水素系共重合成分を50%程度導入したフッ素系材料単独では十分な滑り性が得られず、シリコーン化合物と組み合わせることが従来より行なわれてきた。中でも、膜の強度や膜表面の撥水・撥油性の保持性等から、シランカップリング剤と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜が種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1〜3には、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物と、水ガラスまたはシランカップリング剤及びコロイダルシリカとからなるガラス表面の撥水撥油膜が、また、特許文献4には、経時安定性に優れた高撥水・撥油性膜となるパーフルオロアルキル基含有シランカップリング剤とシランカップリング剤とのゾルゲル硬化のハードコート膜が開示されている。
さらに、低屈折率用硬化組成物として、フッ素含有シランカップリング剤を用いることが特許文献5〜8等に提案されている。これらの硬化膜は、フッ素含有炭化水素基が短いために長期間の使用で防汚性低下の惧れがある。
【0006】
更には、膜表面の防汚性が長期間に渡って保持可能となる、ポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物から硬化される膜が、特許文献9〜11等に開示されている。然し、これらの化合物はフッ素含有長鎖基ではあるものの、親水性のエーテル結合基を含有するために撥水・撥油性の効果が損なわれ、防汚性効果に限界を生じる。
一方、近年の画像表示装置は、画像面積の大版化、携帯電話等のモバイル表示装置の多用な使われ方等が著しく普及し、反射防止膜の強度、防汚耐久性等のより一層の向上が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭58−142958号公報
【特許文献2】
特開昭58−147483号公報
【特許文献3】
特開昭58−147484号公報
【特許文献4】
特開平9−157582号公報
【特許文献5】
特開平11−64603号公報
【特許文献6】
特開2000−121803号公報
【特許文献7】
特開2000−329903号公報
【特許文献8】
特開2002−131507号公報
【特許文献9】
特開2000−117902号公報
【特許文献10】
特開2001−48590号公報
【特許文献11】
特開2002−53804号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、第1に、反射率が低く、耐擦傷性と防汚性に優れた反射防止膜を提供することであり、第2に大量生産に適した塗布型の反射防止膜を提供することであり、第3に耐久性、耐候性に優れた反射防止膜を提供することであり、第4に反射が防止されたフィルムまたは画像表示装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下に示す(1)〜(5)の構成により達成されることが見出された。
(1)少なくとも下記一般式(I)で示される主鎖が無置換又は含フッ素置換基を有してもよいパーフルオロエチレニル基を主成分として構成され、かつ該主鎖の末端にシリル基を結合して成るカップリング化合物と、シランカップリング剤の少なくとも1種とを含有する皮膜形成用組成物を塗設、硬化させることにより形成された低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
一般式(I)
【0010】
【化2】
【0011】
一般式(I)において、Rf 0は、フッ素原子、パーフルオロアルキル基、又は「O−Rf 1」基を表わす。ここで、Rf 1は含フッ素脂肪族基を表わす。Xは、主鎖とSi原子を連結する2価の有機残基を表わす。R1は、脂肪族基又はCOR10基を表わす。但し、R10は、炭化水素基を表わす。R2は、炭化水素基を表わす。aは、0又は1を表わす。また、括弧はパーフルオロエチレニル基の繰り返し単位部分を表し、繰り返し単位部分の重量平均分子量は2万以下である。
【0012】
(2)前記低屈折率層が平均粒径5〜50nmのシリカ微粒子を含有することを特徴とする上記(1)項記載の反射防止膜。
(3) 上記(1)又は(2)項に記載の反射防止膜を透明基材上に配置したことを特微とする反射防止フィルム。
(4) 前記低屈折率層と透明基材との間に、無機微粒子を含有する高屈折率層を有することを特徴とする上記(3)項に記載の反射防止フィルム。
(5) 上記(1)又は(2)項に記載の反射防止膜もしくは(3)又は(4)項記載の反射防止フィルムを配置したことを特徴とする画像表示装置。
【0013】
本発明の反射防止膜は、低屈折率層のみからなる単層構成でもよく、また、中・高低屈折率層、ハードコート層などと積層した多層構成であってもよい。この反射防止膜は、前もって反射防止フィルムを形成してから画像表示装置に配置してもよく、また、画像表示装置などに直接(その場で)形成し配置してもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の反射防止膜に関して説明する。
[反射防止膜の層構成]
本発明の反射防止膜の代表的な層構成を図1を参照しながら説明する。
図1は、好ましい反射防止膜の好ましい層構成を示す断面模式図である。図1の(a)に示す態様は、透明支持体4、ハードコート層3、高屈折率層2、そして低屈折率層1の順序の層構成を有する。(a)のように、高屈折率層2と低屈折率層1とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層が下記式(i)、低屈折率層が下記式(ii)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0015】
【数1】
【0016】
式(i)中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率層の屈折率であり、そして、d1は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0017】
【数2】
【0018】
式(ii)中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率層の屈折率であり、そして、d2は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0019】
高屈折率層の屈折率n1は、一般に透明フィルムより少なくとも0.05高く、そして、低屈折率層の屈折率n2は、一般に高屈折率層の屈折率より少なくとも0.1低くかつ透明フィルムより少なくとも0.05低い。更に、高屈折率層の屈折率n1は、一般に1.57〜2.40の範囲にある。
【0020】
図1の(b)に示す態様は、透明支持体(4)、ハードコート層(3)、中屈折率層(5)、高屈折率層(2)、そして低屈折率層(1)の順序の層構成を有する。(b)のように、中屈折率層(5)、高屈折率層(2)と低屈折率層(1)とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記式(iii)、高屈折率層が下記式(iv)、低屈折率層が下記式(v)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0021】
【数3】
【0022】
式(iii)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。
【0023】
【数4】
【0024】
式(iv)中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0025】
【数5】
【0026】
式(v)中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0027】
中屈折率層の屈折率n3は、一般に1.5〜1.7の範囲にあり、高屈折率層の屈折率n4は、一般に1.7〜2.2の範囲にある。
【0028】
図1の(c)に示す態様は、透明支持体(4)、防眩性ハードコート層(6)、そして低屈折率層(1)の順序の層構成を有する。このような反射防止膜は、例えば、特開2001−281410号公報に記載されているように、低屈折率層が、下記式(vi)を満足することが好ましい。
【0029】
【数6】
【0030】
式(vi)中、mは正の奇数(一般に1)であり、n6は低屈折率層の屈折率であり、d6は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0031】
また、式(i)〜(vi)中のλは光線の波長であり、可視領域の反射防止層として用いる場合のλは380〜680nmの範囲の値であり、また、可視光線以外にも可視領域近傍の紫外線、赤外線に対しても有効である。ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。例えば中屈折率層は高屈折率層に添加する高屈折率無機微粒子の含率を変えるなどの方法で作製される。
以上の層構成を有する本発明の反射防止膜において、少なくとも、本発明に従って改良された低屈折率層を用いる。
【0032】
[低屈折率層]
低屈折率層は図1の(a)、(b)及び(c)に示すごとく高屈折率層の上層に配置される。通常、低屈折率層の上側が反射防止膜の表面である。
低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、1.20〜1.45であることがより好ましく、1.20〜1.43であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、10〜400nmであることが好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度試験(JIS K5400)でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0033】
本発明の低屈折率層は、前記一般式(I)で示される、主鎖が無置換又は含フッ素置換基を有してもよいパーフルオロエチレニル基を繰り返し単位として構成されており、該主鎖の末端にシリル基を結合して成るカップリング化合物(FM)と、シランカップリング剤の少なくとも1種とを含有する皮膜形成用組成物を塗設、硬化させることにより形成されたマトリックス層から成る。
【0034】
本発明に係る一般式(I)で示される主鎖が無置換又は含フッ素置換基を有してもよいパーフルオロエチレニル基を主成分として構成されており、該主鎖の末端にシリル基を結合して成る一官能性カップリング化合物(FM、以後一官能性シランカップリング化合物又は一官能性シランカップリングマクロモノマーとも呼ぶ)について説明する。
本発明に係る一官能性カップリング化合物(FM)の重量平均分子量は、2×104以下が好ましい。より好ましくは、1×103〜1.5×104であり、更に好ましくは、2×103〜8×103である。この範囲において、併用するシランカップリング剤との縮合反応が十分に進行し、得られる膜の強度が充分となる。
Rf 0は、フッ素原子、パーフルオロアルキル基、又は「O−Rf 1」基を表わす。ここで、Rf 1は含フッ素の脂肪族基を表わす。
Xは、主鎖とSi原子を連結する2価の有機残基を表わす。
R1は、脂肪族基又はCOR10基を表わす。但し、R10は、炭化水素基を表わす。R2は、炭化水素基を表わす。
aは、0又は1を表わす。
また、括弧はパーフルオロエチレニル基の繰り返し単位部分であり、繰り返し単位部分の重量平均分子量は2万以下である。
【0035】
一般式(I)で示される一官能性カップリング化合物(FM)の繰り返し単位について説明する。
繰り返し単位中のRf 0は、フッ素原子、炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基又は−ORf 1基を表わす。
【0036】
Rf 0がパーフルオロアルキル基の場合、それに相当する単量体の重合反応性の観点から、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基がより好ましい。
【0037】
Rf 1は炭素数1〜22の含フッ素脂肪族基を表わし、炭素数1〜12の含フッ素脂肪族基が好ましい。具体的には、例えば、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基、−CH2F、−CHF2、−CH2CF3、−(CH2)2C2F5、−CH2CF2 CF2CFH2、−CH2(CF2)4H、−CH2(CF2)8CF3、−CH2CH2(CF2)4H等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF3)2、CH2CF(CF3) 2、CH(CH3)CF2CF3、CH(CH3)(CF2)5CF2H等)を有していても良く、また脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)を有していても良く、あるいは含フッ素脂肪族エーテル結合基(例えば-CH2OCH2CF2CF3、-CH2CH2OCH2C4F8H、-CH2CH2OCH2CH2C8F17、-CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H、-CF2CH2OCH2CF3、-(CF2) 2(CH2) 2OCH(CF3) 3等)であってもよい。
【0038】
本発明に係る一官能性シランカップリング化合物(FM)は、前記した一般式(I)の中に示される繰り返し単位(重合成分)の他に、これらの重合成分に相当する単量体と共重合可能な他の重合性単量体を含有してもよい。
例えば下記一般式(Ib)で示される繰り返し単位が挙げられる。
【0039】
【化3】
【0040】
一般式(Ib)中、d1、d2及びd3は、各々同じでも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基(例えばメチル基,エチル基、プロピル基、ブチル基等)を表わす。
好ましいd1、d2及びd3としては、CF2=CF−、CF2=CH−、CFH=CF−、CH2=CF−、CH2=CH−、CH(CH3)=CH−、CH2=C(CH3)−等が挙げられる。
【0041】
U1は−(CH2)dCOO−、−(CH2) dOCO−、−O−、−SO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、−CON(K1)−、−SO2N(K1)−、フェニレン基又は[C(d1)(d2)=C(d3)−]と−R3を直接結合する単結合を表わす(ここで、K1は水素原子又は炭素数1〜12の脂肪族基を示し、dは0又は1〜4の整数を示す)。
U1としては、−O−、フェニレン基、直接結合が好ましい。
【0042】
R3は、炭素数1〜22の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基を表わす。
脂肪族基としては、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基〔例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−フロロエチル基、トリフロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、3−ブロモプロピル基、2−メチルカルボニルエチル基、2,3−ジメトキシプロピル基、フッ化アルキル基{例えば−(CH2)hCiF2i+1基(但しhは1〜6の整数、iは1〜12の整数を表す)基、−(CH2)h−(CF2)j−R36基(但しjは0又は1〜12の整数、R36基は炭素数1〜12のアルキル基、−CF2H、−CFH2、−CF3を表す)、−CH(CF3)2、−CF2Cl、−CFCl2、−CFClH、−CF(CF3)OCiF2i+1、−OCiF2i+1、−C(CF3)2OCiF2i+1等}等〕、炭素数4〜18の置換されてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、フロロベンジル基、パーフルオロベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、パーフロロヘキシル基、テトラフロオロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、メトキシフェニル基、フロロフェニル基、クロロフェニル基、ジフロロフェニル基、パーフルオロフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基等)が挙げられる。
【0043】
R3は、脂肪族基が好ましく、さらにフッ素原子を含有した脂肪族基がとくに好ましい。
【0044】
以下に、一般式(I)における繰り返し単位の具体例を示す。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
一般式(I)におけるXは、Si原子と重合体主鎖部分を連結する2価の有機残基を表わす。
好ましくは総原子数2〜22の連結基を表わし、より好ましくは総原子数4〜18である(ここでいう総原子数は、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)。一般式(I)の中にXが介在することによって、一官能性シランカップリング化合物(FM)の反応性が良好となり、又得られたゾル−ゲル硬化膜の強度、防汚性が向上して好ましい。
【0048】
Xで表される連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0049】
【化6】
【0050】
上記において、r1、r2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、r3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、r4、r5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には上記r3と同一の内容を表わす)を表わす。
【0051】
Xで表される連結基としては、さらに2価の脂環式基(脂環式構造の炭化水素環としては、例えばシクロへプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環、等)、2価のアリール環基(アリール環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等)で示される基等の原子団の任意の組合せで構成されるものをも含む。
連結基Xの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
【化7】
【0053】
次に、一般式(I)中のシリル基[(R1O)3-a(R2)aSi−]について説明する。
(R1O)基は、アルコキシ基(R1が脂肪族基の場合)又はアシルアルコキシ基(R1が−COR10の場合)を表わし、加水分解してシラノール基[典型的には(HO)3-a−Si(R2)a−]となり縮重合反応が進行する。
【0054】
R1が脂肪族基の場合、炭素数1〜8の置換されてもよい直鎖もしくは分岐の脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロエチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等)が挙げられる。
R1が−COR10の場合のR10は炭素数1〜6の置換されてもよい直鎖もしくは分岐の脂肪族基(具体的には上記R1の脂肪族基と同義であり、具体例も同じものが挙げられる)、置換されてもよいフェニル基(例えばフェニル基、メトキシフェニル基、フロロフェニル基、トリル基、キシリル基、等)が挙げられる。
【0055】
その中でも、好ましい(R1O)基としては、(R1O)基の加水分解反応性及び脱離して副生したアルコール類もしくはカルボン酸類の塗膜での乾燥工程での乾燥性の点から炭素数1〜4のアルコキシ基あるいは炭素数1〜3のアシルオキシ基が挙げられる。
【0056】
R2は炭素数1〜12の脂肪族基又は炭素数6〜12のアリール基を表わす。これらの炭化水素基は、置換されていてもよい。具体的には、前記一般式(Ib)中のR3と同義のものが挙げられ、具体例も同じである。又、脂肪族基としては前記一般式(I)中のRf 1の含フッ素脂肪族基と同一の内容のものが挙げられる。
更には、R2の炭化水素基に置換される置換基として、前記した一般式(I)の化合物(FM)と共重合可能な重合性基も挙げられる。本発明の低屈折率層用組成物中に、これら一般式(I)の化合物(FM)と共重合性を有する化合物を併用することによって、形成される低屈折率層の膜性を向上できる。
重合性基としては、ラジカル重合性基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトニルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、等)、カチオン重合性基(例えばエポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、ビニルオキシ基、2−プロペニルオキシ基等)が挙げられる。
【0057】
aは0又は1を表わす。
aが1の場合は、本発明に係る一般式(I)の化合物(FM)の反応性の点から(R1O)基中のR1の炭素数は1〜3のアルキル基が好ましい。
【0058】
本発明に係る一般式(I)の化合物(FM)は、従来公知の合成方法によって製造することができる。例えば、(i)アニオン重合によって得られるリビングポリマーの末端に種々の試薬を反応させて、一般式(I)の形のカップリング化合物にするイオン重合による方法、(ii)分子中に、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等の反応性基を含有した重合開始剤及び/又は連鎖移動剤を用いて、ラジカル重合して得られる末端反応性基結合のオリゴマーと種々の試薬を反応させて、一般式(I)の形のシランカップリング化合物にするラジカル重合による方法等が挙げられる。
【0059】
具体的には、P.Dreyfuss & R.P.Quirk, Encycl.Polym.Sci.Eng., 7, 551(1987)、P.F.Rempp & E.Franta, Adv.Polym.Sci., 58, 1(1984)、V.Percec, Appl.Polym.Sci., 285, 95(1984)、R.Asami & M.Takari, Makvamol.Chem.Suppln.12, 163(1985)、P.Rempp.et al, Makvamol.Chem.Suppln.8, 3(1984)、川上雄資、化学工業、38, 56(1987)、山下雄也、高分子、31, 988(1982)、小林四郎、高分子、30, 625(1981)、東村敏延、日本接着協会誌、18, 536(1982)、伊藤浩一、高分子加工、35, 262(1986)、東貫四郎、津田隆、機能材料、1987, No.10, 5等の総説及びそれに引例の文献・特許等に記載の方法に従って合成することができる。
【0060】
上記した分子中に特定の反応性基を含有した重合開始剤としては、例えば、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2′−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2′−アゾビス(2−シアノペンタノール)、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオアミド〕、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオアミド}、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオアミド}、2,2′−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス〔2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼビン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2′−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン〕、2,2′−アゾビス〔N−(4−アミノフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕等のアゾビス系化合物が挙げられる。
【0061】
又、分子中に特定の反応性基を含有した連鎖移動剤として、例えば該反応性基あるいは該反応性基に誘導しうる置換基を含有するメルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール等)、あるいは上記反応性基又は置換基を含有するヨード化アルキル化合物(例えばヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等)が挙げられる。好ましくはメルカプト化合物が挙げられる。
【0062】
他の方法としては、特定の官能基(例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等)を含有するジチオカルバメート基を含有する化合物および/またはザンテート基を含有する化合物を開始剤として、光照射下に重合反応を行って合成することもできる。例えば、上記の大津等の文献、特開昭64−11号公報、特開昭64−26619号公報、東信行等 "Polymer Preprints, Japan" 36(6), 1511(1987)、M.Niwa, N.Higashi et al,"J.Macromol.Sci.Chem.", A24(5), 567(1987)等に記載の各々の合成方法に従って合成することができる。
【0063】
これらの連鎖移動剤あるいは重合開始剤は、各々一般式(I)の繰返し単位に相当する単量体100重量部に対して0.5〜20重量部を用いることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部である。
【0064】
このようにして製造される重合体主鎖の片末端に選択的に結合した有機残基中に含有される特定の反応性基を利用して、シランカップリング基を導入することで容易に製造することができる。
又、シランカップリング基を置換したメルカプト化合物〔例えば、3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シラン、3−メルカプトプロピル(トリエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピル−(メチル)(ジメチル)シラン、4−メルカプトブチル(トリエトキシ)シラン等〕を連鎖移動剤としてラジカル重合反応により製造することもできる。
【0065】
本発明で用いられるシランカップリング剤について説明する。
本発明のシランカップリング剤は、分子内に少なくとも1つの加水分解によりシラノールを与えることのできる官能基を有するオルガノシラン化合物を表し、本発明の組成物中では、加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをするものである。
本発明のシランカップリング剤は、前記の一官能性カップリング化合物(FM)と共縮合反応することが好ましい。
【0066】
具体的には、下記一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
一般式(II)
(R11)4-bSi(Y) b
式(II)中、R11は、前記式(I)中のR1と同一の内容を表わす。Yは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、−OH、又はOR12を表わす。但し、OR12は、前記式(I)中のR12と同一の内容を表わす。bは、2、3又は4の整数を表わす。
bが4の場合は4官能オルガノシラン、3の場合は3官能オルガノシラン、2の場合は2官能オルガノシランとなる。
4官能オルガノシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラーアセトキシシランなどを挙げることができる。
2又は3官能オルガノシランとしては、R11が脂肪族基、フッ素原子含有の脂肪族基又は重合性ビニル基等の重合性基を含有するものとして、例えば特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0016]〜[0025]、同2000−117902号公報明細書中の段落番号[0040]、同2002−131507号公報明細書中の段落番号[0039]〜[0045]等記載の化合物、エポキシ基含有の炭化水素基を含有するものとして、特開平6−226928号公報明細書中の段落番号[0014]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
これらオルガノシラン化合物は、単独でも2種以上を併用しても良い。
上記の2または3官能性オルガノシランを用いる場合は、R11にフッ素原子を有する脂肪族基を少なくとも1個含有するオルガノシランが屈折率の観点から好ましい。2種以上の上記のオルガノシランを併用する場合、本発明に用いる組成物中における2官能オルガノシランの割合は、4官能オルガノシラン及び3官能オルガノシラン成分に対して0〜150重量%、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。
【0068】
重合性基(ラジカル重合性ビニル基、カチオン重合性基(エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基等))を有する炭化水素基を含有するオルガノシランは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。2種以上の上記のビニル重合性オルガノシランを併用する場合、1重合性オルガノシランの本発明の組成物中における割合は、2重合性オルガノシラン及び3重合性オルガノシラン成分に対して0〜150重量%、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。これらの重合性基含有オルガノシランは、組成物中で加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをすると同時に有機ポリマーによる網目構造を形成し、膜に柔軟性を付与する働きをするものとして好ましい。
【0069】
本発明では一般式(I)で表される含フッ素シランカップリング化合物(FM)の少なくとも一種、及び一般式(II)で表されるシラン化合物を必須成分として、加水分解・重縮合を行うことによって塗布液を作製する。
前記シラン化合物の加水分解重縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができる。溶媒としては有機溶媒が好ましく、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル)、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)等を挙げることができ、2種類以上の溶媒を併用することもできる。
【0070】
加水分解縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシド類、β−ジケトン類或いはβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類等が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0071]〜[0083]記載の化合物等が挙げられる。
【0071】
ゾルゲル触媒化合物の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるオルガノシランに対し、0.011〜50重量%、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。反応条件はオルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0072】
一方、カルボン酸等の有機酸を触媒に用いてゾルゲル縮合を行なう場合には、アルコキシシランとの反応により生成するアルコールあるいは溶媒として添加するアルコールとの縮合反応(エステル化反応)によって系中で水を生成するため別途水を添加しなくても加水分解反応を行うことができる。
このような水を加えない系において、硬化時間と膜強度の点で有利な結果が得られており、本発明では特に水中25℃におけるpKaが4以下のカルボン酸を触媒として水を添加せずにゾル液を調整することが好ましい。好ましいカルボン酸触媒の具体例は、特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0058]〜[0060]記載の化合物が挙げられる。
【0073】
本発明に用いる低屈折率層用組成物には、シランカップリング化合物が重合性基を含有する場合、これらの重合性基と共重合可能な重合性基含有モノマーを併用しても良い。これら重合性モノマーに特に制限はなく、通常のラジカル重合またはカチオン重合で共重合可能なものであれば、好ましく用いることができる。モノマー分子内に重合性基が1個の単官能モノマー、若しくは2個以上の多官能モノマーの何れでもよく、適宜選択して用いることができる。ラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0052]〜[0065]記載の化合物等が挙げられる。又、カチオン重合性モノマーの具体例としては、例えば特開2000−47004号公報明細書中の段落番号[0085]〜[0087]記載の化合物等が挙げられる。
【0074】
重合開始剤
本発明に用いる組成物が、上記重合性化合物を含有する場合には、熱及び/又は光照射でラジカル又はカチオンを発生し、重合性不飽和基又はカチオン重合性基を含有する化合物の重合反応を開始、促進させる化合物を併用する。これらラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤は、重合性化合物の重合性基との組み合わせで、適宜、従来公知の化合物(例えば、「最新UV硬化技術」PP.60〜62((株)技術情報協会刊、1991年等)を用いることができる。
【0075】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、オニウム塩化合物(上記の「最新UV硬化技術」記載等)、有機ハロゲン化化合物(M.P.Hutt" Journal of Heterocyclic Chemistry" 1 (No3), (1970))等に記載等)、カルボニル化合物(「特開平8−134404号明細書の段落[0015]〜[0016]記載等」、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報、同1−304453号公報記載等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(特公平6−29285号記載等)、有機ホウ酸化合物(Kunz, Martin "Rad Tech '98, Proceeding April 19-22, 1998, Chicago" 等に記載等)、ジスルホン化合物(特開昭61−166544号公報記載等)が挙げられる。
【0076】
カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。これらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。他のカチオン重合開始剤として、有機金属/有機ハロゲン化物(特開平2−161445号公報記載等)、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤(米国特許第4,181,531号公報、特開昭60−198538号公報記載等)、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物(特開平2−245756号公報記載等)等が挙げられる。
【0077】
充填剤
本発明の組成物には、得られる塗膜の硬度向上を目的としてコロイド状シリカを添加することも可能である。このコロイド状シリカとしては、水分散コロイド状シリカ、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイド状シリカを挙げることができる。
本発明の組成物には、得られる塗膜の着色、凹凸性の付与、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性、膜の屈折率などの諸特性を発現若しくは調整させるために、上記コロイド状シリカの他に充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらのフッ化物、酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の無機化合物としては、例えば特開平11−106704号公報明細書中の段落番号[0056]、特開2001−188104号公報等記載の無機粒子等が挙げられる。
樹脂粒子としては、特開平10−142403公報明細書中の段落番号[0013]〜[0018]、同11−23803号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0037]等のフッ素原子含有樹脂等が挙げられる。
これらの充填材の平均粒径または平均長さは、通常、5〜500nm、好ましくは10〜200nmである。充填材を用いる場合の組成物中の割合は、組成物の全固形分100重量部に対し、10〜300重量部程度である。
【0078】
その他の添加物
本発明に用いる上記組成物には、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0079】
本発明に用いるゾル液を調製するに際しては、前記の各成分を含有する組成物に水を添加して加水分解する方法或いは前記のカルボン酸類を用いる方法等の如何なる方法でもよい。この時必要に応じて加水分解を促進するために前記の触媒を用いることが好ましい。例えば下記▲1▼〜▲3▼の調製方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
▲1▼シリル基含有成分(必要に応じて、重合性モノマー及び重合開始剤)と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、所定量の水(若しくはカルボン酸)を加えて加水分解・縮合反応を行う方法。▲2▼シリル基成分と溶媒からなる溶液に、所定量の水(若しくはカルボン酸)を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで加水分解触媒と必要に応じて重合性モノマー及び重合開始剤を添加する方法。▲3▼シリル基含有成分と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、所定の水(若しくはカルボン酸)を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで重合性モノマー及び重合開始剤を加えて混合し、さらに縮合反応を行なう方法等が挙げられる。
【0080】
本発明では、上記のようにして調整したゾル液を、カーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の塗布法によって、透明フィルムあるいは高屈折率層または中屈折率層等の上に塗布し、常温での乾燥、あるいは30〜200℃程度の温度で1分〜100時間程度加熱することにより、低屈折率層は形成される。又、本発明の組成物が光重合性化合物を併用する場合には、塗布後に光照射工程を設ける。光照射は、活性エネルギー光線であればいずれでもよいが、照射装置の簡易性から紫外線照射が好ましい。
同時重層塗布をする場合には、多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液のそれぞれが必要な塗布量になるように吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的に支持体に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が特に好ましい。
【0081】
[高・中屈折率層]
本発明の反射防止膜が、多層膜の態様をとる場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、前記の高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。
【0082】
上記低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性皮膜(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);皮膜組成物(例、メラミン皮膜、フェノール皮膜、またはエポキシ皮膜などを硬化剤とする皮膜組成物);ウレタン形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ);およびラジカル重合性組成物(上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性皮膜またはプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。これらの皮膜形成性組成物のいずれを用いてもよいが、高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。低屈折率層より高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。この層に使用される有機材料としては、一般に無機系微粒子が高屈折率を有するため有機材料単独で用いる場合よりも低屈折率のものも用いることができる。そのような材料として、上記した有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド皮膜、繊維素系重合体、ウレタン皮膜およびこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0083】
さらに有機置換されたケイ素系化合物も高・中屈折率層に含ませることができる。これらのケイ素系化合物は下記一般式で表される化合物、あるいはその加水分解生成物である。
【0084】
Ra mRb nSiZ(4-m-n)
上記一般式において、Ra及びRbは、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子及びアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。
【0085】
これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、即ち粉末または水および/またはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用する。
これらの具体例としては、例えば特開平11−295503号公報、同11−153703号公報などに記載の化合物が挙げられる。
【0086】
低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料(例、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。これらの具体的な例としては、前記のゾルゲル反応の触媒として例示した化合物と同様なものを挙げることができる。
【0087】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。屈折率は、アッペ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0088】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0089】
[その他の層]
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設け、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0090】
[透明支持体]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は透明支持体を有することが好ましい。透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、Al2O3,TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。
透明支持体には表面処埋を施してもよい。
【0091】
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0092】
[反射防止膜の形成]
反射防止膜が、単層又は前記のように多層の構成をとる場合は、各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができる。また、二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。具体的には450〜650nmの波長領域での平均反射率が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0093】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0094】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用し、それにより膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば特開2000−281410号、同2000−95893号等)、低屈折率層表面に物理的に凹凸形状を転写(エンボス加工方法等)する方法(例えば特開平11−268800号)が挙げられる。
【0095】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ〈ELD〉や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。反射防止膜は、高屈折率層が画像表示装置の画像表示面側になるように配置する。
反射防止膜が透明支持体を有する場合は、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。反射防止膜は、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0096】
【実施例】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[一官能性カップリング化合物(FM)の合成例]
(一官能性カップリング化合物(FM)の合成例1:一官能性カップリング化合物(FM−1))
内容量1Lのステンレス製攪拌機付オートクレーブにトルエン75g、下記構造の単量体(F−1)20g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.5g、及び2,2′−アゾビス(イソバレロニトリル)(略称:A.I.V.N.)1.0gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)30.0gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2(529kPa)であった。このまま4時間反応後、A.I.V.N. 0.3gをトルエン5mlに溶解した液を窒素ガス圧を利用して添加した。
更に7時間反応を続けた後、加熱を止め放冷した。室温まで内温が下がった時点で、オートクレーブを開放して反応液を取り出し、n−ヘキサン200ml中に再沈した。
沈降物を捕集し、減圧乾燥して、収量43gで、質量平均分子量6×103の生成物を得た。(質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算によるGPC法測定値)。
【0097】
【化8】
【0098】
(一官能性カップリング化合物(FM)の合成例2:一官能性カップリング化合物(FM−2))
内容量1Lのステンレス製攪拌機付オートクレーブにテトラヒドロフラン75ml、下記構造の単量体(F−2)27.5g、2,2′−アゾビス(2−シアノヘプタノール(略称:A.B.C.H.)2.5gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)22.5gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2(529kPa)であった。このまま4時間反応後、A.B.C.H. 1.5gをテトラヒドロフラン5mlに溶解した液を窒素ガス圧を利用して添加した。
更に6時間反応を続けた後、加熱を止め放冷した。室温まで内温が下がった時点で、オートクレーブを開放して反応液を取り出し、200mlの3つ口フラスコに投入した。
これに、3−トリメトキシシクロプロパンイソシアナート4.0g及びジブチルスズジラウレート0.05gを加えて、50℃で6時間攪拌した。放冷後、石油エーテル800mLに再沈した。沈殿物を捕集し、減圧乾燥して得られた生成物の収量は、40gで、質量平均分子量は8×103であった。
【0099】
【化9】
【0100】
(一官能性カップリング化合物(FM)の合成例3:一官能性カップリング化合物(FM−3))
400rpmで作動する攪拌器を備えた2リットル AISI 316 オートクレーブの側壁に石英の丸窓を挿入し、該石英の丸窓に合わせてHanau(商標登録)TQ−150 UVランプを配置した。このランプは高圧水銀灯であって、240〜600nmの光を発し、波長240〜330nmの光では13.2Wのエネルギーを有する。
この装置に、下記構造の単量体(F−3)45g、下記構造の光重合開始剤2.0g、及びテトラヒドロフラン100gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにオクタフルオロブテン55gをオートクレーブ中に導入して45℃まで昇温した。10時間反応を続けた後、加熱を止め放冷した。室温まで内温が下がった時点で、オートクレーブを開放して反応液を取り出し、テトラヒドロフランを濃縮した後、トルエンの30質量%溶液とした。
得られた生成物の質量平均分子量Mwは5×103であった。
【0101】
【化10】
【0102】
[反射防止膜構成層用塗布液の調製]
(防眩性高屈折率層用塗布液Aの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125g、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(MPSMA、住友精化(株)製)125gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)5.0gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)3.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.60であった。さらにこの溶液に平均粒径3μmの不定形シリカ粒子(商品名:ミズカシルP−526、水澤化学工業(株)製)10gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性高屈折率層の塗布液Aを調製した。
【0103】
(ハードコート層用塗布液Hcの調製)
上記ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)125gおよびウレタンアクリレートオリゴマー(UV−6300B(商品名、日本合成化学工業(株)製)125gを439gのエタノールに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤イルガキュア907、7.5gおよび光増感剤カヤキュアーDETX5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。混合物を攪拌した後、1ミクロンメッシュのフィルターでろ過してハードコート層塗布液Hcを調製した。
【0104】
<高屈折率層用塗布液Hnの調製>
上記 ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)250gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(50/50)混合溶媒に溶解した。得られた溶液に光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)を7.5g及び光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を添加して攪拌した。この溶液を塗布し、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.53であった。孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して高屈折率層の塗布液Hnを調製した。
【0105】
[実施例1]
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製)上に、防眩性高屈折率層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ約1.5μmの防眩性高屈折率層を形成した。その上に、下記低屈折率層用塗布液L−1をバーコーターを用いて塗布し、100℃で3時間間乾燥し、厚さ約0.1μmの低屈折率層を形成し、本発明の試料1を作製した。
(低屈折率層用塗布液L−1の調製)
蓚酸2.4gをエタノール12g及びパーフルオロブチルエチルエーテル(HFE−7200:3M社製)3gに溶解した溶液に、テトラエトキシシラン、2.35gと本発明に係る一般式(I)の化合物(FM−1)1.6gを加え、5時間加熱還流した。得られた溶液の5gにn−ブタノールの2gを加え、全量で13gになるようにメチルエチルケトンを加えて低屈折率層用塗布液Aを調整した。
【0106】
[実施例2]
実施例1における低屈折率層塗布液L−1の替わりに、下記低屈折率層塗布液L−2を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の試料2を作製した。
(低屈折率層用塗布液L−2の調製)
蓚酸2.4gをエタノール10g及びHFE−7200 5gに溶解した溶液に、テトラエトキシシランの1.35g、メチルトリメトキシシラン1.0gと本発明に係る一般式(I)の一官能性カップリング化合物(FM−2)1.55gを加え、5時間加熱還流した。得られた溶液の5g、コロイダルシリカ溶液(MIBK−ST、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.33g、n−ブタノール3gを混合しさらに全量で26gになる様にテトラヒドロフランを加えて希釈し低屈折率層用塗布液(L−2)を調整した。
【0107】
[比較例1」
実施例1における低屈折率層塗布液L−1の替わりに、下記低屈折率層塗布液LR−1を用いた以外は実施例1と同様にして比較用試料R−1を作製した。
(低屈折率層比較用塗布液LR−1の調整)
メチルトリメトキシシラン(特開平10−726号等に記載の低屈折率層用オルガノシラン)8.7gに0.01N塩酸水溶液3gを加え、室温で3時間攪拌した。該溶液の1.1gとメチルエチルケトンの8.9gを混合して比較用塗布液LR−1を調整した。
【0108】
[比較例2]
実施例1における低屈折率層塗布液L−1において、一般式(I)に係る化合物FM−1の代わりに、トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリエトキシシランを用いた他は、実施例1と同様にして比較用試料R−2を作製した。
【0109】
[比較例3]
実施例1における低屈折率層塗布液L−1において、本発明の化合物FM−1の代わりに、特開昭8−147484号公報の合成例3に記載の下記構造のシラン化合物を用いた他は、実施例1と同様にして比較用試料R−3を作製した。
比較用シラン化合物
【0110】
【化11】
【0111】
前記の実施例および比較例で用いた低屈折率層の屈折率はいずれも1.3〜1.43の範囲内にあった。
【0112】
<反射防止膜の評価>
こうして得られた第1〜4層を塗設した各膜(実施例1及び比較例1〜2)について、下記性能評価を実施し、その結果を表−Cに記載した。
【0113】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの鏡面平均反射率を用いた。
【0114】
(2)ヘイズ
得られたフィルムのヘイズをヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
(3)鉛筆硬度評価
反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS K5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0115】
(4)防汚性
試料表面に指紋を付着させてから、それをベンコットン(旭化成(株)製)で拭き取った時の状態を観察して、以下の基準で評価した。
◎:簡単に拭き取れる。
○:しっかり擦れば拭き取れる。
△:一部が拭き取れずに残る。
×:殆んど拭き取れずに残る。
【0116】
(5)耐傷性試験
膜表面をスチールウール#0000を用いて、200gの荷重下で10回擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全くつかない :○
細かい傷がつく :△
傷が著しい :×
【0117】
(6)防眩性評価
作製した防眩性フィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる
△:蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる
×:蛍光灯がほとんどぼけない
【0118】
(7)ギラツキ評価
作製した防眩性フィルムにルーバー付きの蛍光灯拡散光を映し、表面のギラツキを以下の基準で目視評価した。
殆どギラツキが見られない:○、
僅かにギラツキがある:△、
識別できるサイズのギラツキがある;×
実施例1〜2および比較例1〜2の結果を表1に示す
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示すように、実施例1〜2の試料は、光学特性、鉛筆硬度、耐傷性及び防汚性に優れ、防眩性、ギラツキに関しても良好な性能を示した。
一方、比較例1〜3は、いずれも耐傷性及び防汚性が悪化した。
このように本発明の試料のみが各特性要件に亘って良好な性能を示した。
【0121】
[実施例3〜10]
実施例2において用いた低屈折率層用塗布液(L−2)の代わりに、下記内容の各塗布液を用いた他は、実施例2と同様にして各反射防止膜試料3〜10を作製した。
【0122】
【表2】
【0123】
得られた実施例3〜10の各反射防止膜試料について、実施例2と同じ内容の性能評価試験項目について評価した。その結果は実施例2と同等の性能を示し、良好であった。
【0124】
[実施例11]
実施例2における低屈折率層用塗布液L−2の替わりに、下記内容の低屈折率層用塗布液L−11を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の試料11を作製した。
(低屈折率層用塗布液L−11の調製)
蓚酸3gをエタノール18gに溶解した溶液に、テトラエトキシシランの2.35g、本発明に係る一官能性カップリング化合物FM−2、1.55g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの0.3g、3−アミノプロピルトリメトキシシランの0.15gを加え5時間加熱還流した。得られた溶液の5g、コロイダルシリカ溶液(MIBK−ST、固形分濃度30%、日産化学製)1.33g、n−ブタノール1.5gを混合しさらに全量で20gになる様にテトラヒドロフランを加えて希釈し低屈折率層用塗布液L−11を調製した。
得られた試料を、実施例1、2と同様の内容の性能評価を行なった。得られた結果は、実施例2と同様の良好な性能を示した。
【0125】
[実施例12]
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製)上に、上記ハードコート層用塗布液Hcをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ約4.0μmのハードコート層を形成した。その上に、上記高屈折率層用塗布液Hnをバーコーターを用いて塗布し、上記ハードコート層と同じ条件で乾燥し、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ約1.5μmの高屈折率層を形成した。その上に、下記低屈折率層用塗布液L−12をバーコーターを用いて塗布し、風乾の後、さらに100℃で6時間間乾燥し、厚さ約0.096μmの低屈折率層を形成し、本発明の試料12を作製した。
【0126】
(低屈折率層用塗布液L−12の調製)
テトラエトキシシランの2.35g、本発明の化合物FM−2、1.55g及びテトラヒドロキシフラン20gを混合した溶液中にトリフルオロ酢酸(99%純度)1g及びアセチルアセテートZr塩0.1gを加え室温で6時間攪拌した。得られた溶液の3.0g、3−アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン0.08g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.03g、重合開始剤の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.01g、コロイダルシリカ溶液(MIBK−ST、固形分濃度30%、日産化学製)1.28g、n−ブタノール3gを混合しさらに全量で25gになる様にメチルイソブチルケトンを加えて希釈し低屈折率層用塗布液L−12を調製した。
【0127】
(防眩性の付与)
得られた反射防止膜に、片面エンボシングカレンダー機(由利ロール(株)製)を用いて、プレス圧力1000kg/cm、プレヒートロール温度100℃、エンボスロール温度140℃、処理速度2m/分の条件下で、スチール製エンボスロールとポリアミド素材で表面を覆ったバックアップロールをセットし、算術平均粗さ(Ra)が4μmのエンボスロースを用いてエンボス処理を行なった。
【0128】
得られた試料を、実施例1、2と同様の内容の性能評価を行なった。得られた結果は、実施例2と同様の良好な性能を示した。
【0129】
実施例13
実施例1〜12で得られた各反射防止膜を用いて防眩性反射防止偏光板を作成した。
これらの各偏光板を用いて反射防止層を最表面に配置した液晶表示装置を作製した。各表示装置の何れも、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
【0130】
【発明の効果】
一般式(I)で表される一官能性カップリング化合物と、シランカップリング剤とを含有する低屈折率層を有する本発明の反射防止膜によれば、反射率が低く、耐擦傷性と防汚性に優れた反射防止膜を得ることができる。更に、本発明の反射防止膜は、耐久性、耐候性に優れている。また、本発明の反射防止膜は塗布型であり、大量生産に適しており、また、防眩性に優れて反射像が目立たず優れた視認性を有している。
本発明の反射防止膜を設けることにより、反射が有効に防止されたフィルムまたは画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の反射防止膜が複合膜である場合の層構成の例示する断面模式図であり、(a)は4層構成、(b)は5層構成、(c)は3層構成の例を示す。
【符号の説明】
1 低屈折率層
2 高屈折率層
3 ハードコート層
4 透明支持体
5 中屈折率層
6 防眩性ハードコート層
Claims (3)
- 少なくとも下記一般式(I)で示される主鎖が無置換又は含フッ素置換基を有してもよいパーフルオロエチレニル基を主成分として構成され、かつ該主鎖の末端にシリル基を結合して成るカップリング化合物と、シランカップリング剤の少なくとも1種とを含有する皮膜形成用組成物を塗設、硬化させることにより形成された低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
一般式(I)
- 請求項1に記載の反射防止膜を、透明支持体上に配置したことを特徴とする反射防止フィルム。
- 請求項1に記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする画像表示装置。
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