JP4263026B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、カーカス層とベルト層の一体化により軽量化を可能にした空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来技術】
一般に空気入りラジアルタイヤは、両ビード部間に跨がる少なくとも1層のカーカス層を有し、さらにこのカーカス層の外周にベルト層をタイヤ周方向に沿わせる構成からなり、このカーカス層とベルト層とによりタイヤの内圧保持機能と形状規定のタガ機能とを具備するようにしている。しかし、ベルト層はカーカス層とは独立していて両端部に段差を形成するようになっているため、そのベルト層両端部に応力が集中してセパレーションなどの破損が生じ易くなっている。
【0003】
一方、近年の研究によると、ベルト層下に位置するカーカス層の部分は殆ど内圧保持に寄与しておらず、その内圧保持をベルト層が負担していることが判明している。このような技術的背景の下に、特許文献1は、カーカス層を2層設け、これら2層のカーカス層のトレッド領域でカーカスコードを斜めに傾斜させると共に、互いに交差させることにより、カーカス層にベルト層の機能を一体に具備させるようにした空気入りラジアルタイヤを提案している。
【0004】
しかし、上記提案のタイヤは、カーカス層にベルト層を一体にした構造にして、ベルト層端部での故障を低減しているとはいえ、カーカス層とベルト層とが必ず同一コードで構成されるため、タイヤの設計自由度が制約され、タイヤ性能を多様に設計しようとする場合に限界がある。また、カーカス層が最低2層以上であることを余儀なくされているので、軽量化にも限界がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−144446号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カーカス層とベルト層の一体構造化により軽量化や故障低減を図る場合、設計自由度を高めて多様な性能の設計を可能にする空気入りタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、タイヤ両側のビード部とトレッド端部域との間をそれぞれコードを交互に折り返しながら往復させ、該コードがタイヤ径方向に並列する互いに独立のカーカス層を形成し、これら両カーカス層のタイヤ外側の端部をそれぞれビードコアに係止させると共に、タイヤ内側の互いに対向しあう縁部間に、前記コードとは別のコードを前記両縁部に交互に係合させながらタイヤ周方向に斜めに進行させ、該コード同士が交差するベルト層を一体に形成したことを特徴とするものである。
【0008】
上記のようにカーカス層とベルト層を一体構造にして、分離独立したベルト層を設けていないのでベルト層両端部でのセパレーション故障が無く、かつ一段と軽量化することができる。また、カーカス層のコードとベルト層のコードとが互いに独立しているため、タイヤ設計時のコードの種類の選択によりタイヤ性能を多様に変えることができ、設計の自由度を増すことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態を参照して具体的に説明する。
【0010】
図1は、本発明の空気入りタイヤの一例を示す縦断面図であり、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。タイヤの内側に左右に独立した一対のカーカス層4,4が配置され、これらカーカス層4,4のタイヤ内側に対向しあう縁部間に、ベルト層5が両端部を連結して一体化している。また、カーカス層4,4のタイヤ外側の端部は、それぞれビードコア6,6にタイヤ内側から外側へ折り返すように係止されている。
【0011】
図2(A),(B)は、左右一対のカーカス層4,4にベルト層5を一体化した構造体を展開図として示し、図2(A)は形成の過程を示し、図2(B)は形成後の状態を示す。
【0012】
左右のカーカス層4,4は、それぞれ1本のコード4aをビード部3とトレッド部1の端部域との両端部間で、その両端部を折り返し部として交互にループ状に折り返しながらタイヤ径方向に往復移動を繰り返し、その途中の往復経路で互いに平行に並ぶように形成したものである。このように形成された左右一対のカーカス層4,4が互いにタイヤ内側で対向しあう両縁部間に、図2(A)に示すように、縁部でコード4aを折り返して形成されて並ぶループに、順次別のコード5aを係合させながらタイヤ周方向に対して斜めにジグザグ状に横切らせ、これをタイヤ全周に繰り返すことにより、図2(B)に示すように、多数本の横切るコード5a同士が互いに逆方向に交差したベルト層5を形成する。このようにして、左右一対のカーカス層4,4の間にベルト層5が一体に連結したシート構造体が形成される。
【0013】
上記のようなカーカス層4とベルト層5との一体構造体を成形する方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、図4に示すようなタイヤ内空洞と実質的同一外形を有する中子40を使用すると成形を効率よく行なうことができる。図4の成形方法は、それぞれ中子40の左右の表面にコード4aを半径方向に往復移動させて、カーカス層4,4を貼り付けるように形成し、しかる後、別のコード5aを使用してカーカス層4,4の内側同士の縁部間をジグザグ状に係合させてベルト層5を形成する。
【0014】
このベルト層5を形成は、図5に示すような方法で行なってもよい。図5では、左右のカーカス層4,4の内側同士の両縁間を、1本のコード5aを同じ一方向だけに平行に傾斜するように一定ピッチで往復移動させた後、別のコード5aにより上記と反対方向に傾斜するように平行に往復移動させて、コード同士が交差したベルト層5を形成するようにしている。
【0015】
本発明において、上記ベルト層5は総幅BWがトレッド部1の展開幅TDWの25〜75%の範囲になるように設定することが好ましい。また、ベルト層5のコード5aはタイヤ周方向に対する角度が10°〜70°の範囲になるように設定することが好ましい。このようにベルト層5の総幅BWとコード5aのコード角度とを設定することにより、ベルト層5にベルト層として必要なタガ機能を具備させることができる。
【0016】
コード4a及びコード5aがそれぞれカーカス層4及びベルト層5を編成するときの本数としては、1本のコードを移動させればよいが、複数本を1本の状態にまとめて移動させるようにしてもよい。すなわち、例えば2〜10本の単位の複数本を引き揃えた状態にするか、さらに必要により加撚状態にして編成に使用するのである。いずれの形態にするかは、設計するタイヤに要求される性能に応じて選択すればよい。
【0017】
また、カーカス層4を形成するコード4aとベルト層5を形成するコード5aの種類は、有機繊維コード及びスチールコードのいずれでもよく、この選択も設計するタイヤに要求される性能に応じて決めればよい。
【0018】
また、図1に例示した空気入りタイヤは、乗用車用として、内側の骨格が左右一対のカーカス層4,4とベルト層5との一体構造体だけで構成されている。しかし、重荷重用のタイヤ用の場合には、図3に例示するように、ベルト層5の外周に、さらに従来構造のベルト層7を追加するとよい。このように追加するベルト層7のプライ数は特に限定されないが、例えば2〜5層の範囲で選択し、かつ層間でコードが互いに交差するように積層するのがよい。
【0019】
本発明によれば、カーカス層とベルト層が一体構造になっているので、従来のラジアルタイヤ構造のように分離独立したベルト層が無く、そのためベルト層両端部のセパレーション故障も発生せず、しかも分離独立したベルト層が無い分だけ一段と軽量化することができる。また、カーカス層4を形成するコード4aとベルト層5を形成するコード5aとが、互いに独立の関係になっているので、設計するタイヤの要求特性に応じて自由に異なるコードを選択することができる。したがって、タイヤの設計自由度を大幅に向上することが出来る。
【0020】
例えば、空気入りラジアルタイヤのベルト層5はタガ機能を備える必要があるので、その剛性がカーカス層4より高い設定になることが望ましい。本発明において、この要求に対応するタイヤ設計をするため、例えばコード4aと5aを共に有機繊維コードにする場合は、コード5aにコード4aよりも高い弾性率のコードを使用すればよい。コード4aをナイロンコードにする場合、ベルト層5のコード5aとして、コード4aよりも繊度の大きいナイロンコードにするか、或いは、アラミドコードやポリエステルコードなどの弾性率が大きいコードを選択する。
【0021】
コード4aと5aに有機繊維コードとスチールコードを使用する場合は、コード4aの方に有機繊維コードを使用し、ベルト層5のコード5aにスチールコードを使用するようにすることができる。また、両コード4a,5aともスチールコードにする場合は、ベルト層5用のコード5aの方にカーカス層4のコード4aよりも太いスチールコードを使用する。或いは、高弾性率のスチールで製造されたコードを使用する。このようにタイヤの要求特性に併せたコード選択を自由に行なうことができる。
【0022】
【発明の効果】
上述したように、本発明の空気入りタイヤによれば、カーカス層とベルト層を一体構造にして、分離独立したベルト層を設けていないのでベルト層両端部でのセパレーション故障が無く、かつ一段と軽量化することができる。また、カーカス層のコードとベルト層のコードとが互いに独立しているため、タイヤ設計時のコードの種類の選択によりタイヤ性能を多様に変えることができ、設計の自由度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤを例示した子午線断面図である。
【図2】(A)は、図1の空気入りタイヤに使用されるカーカス層とベルト層の形成過程の展開図、(B)は形成後の展開図である。
【図3】本発明の空気入りタイヤの他の実施形態を示す子午線断面図である。
【図4】本発明の空気入りタイヤに使用されるカーカス層とベルト層の形成方法の説明図である。
【図5】本発明の空気入りタイヤに使用されるカーカス層とベルト層の他の形成方法の説明図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ベルト層
4a,5a コード
6 ビードコア
7 ベルト層
Claims (7)
- タイヤ両側のビード部とトレッド端部域との間をそれぞれコードを交互に折り返しながら往復させ、該コードがタイヤ径方向に並列する互いに独立のカーカス層を形成し、これら両カーカス層のタイヤ外側の端部をそれぞれビードコアに係止させると共に、タイヤ内側の互いに対向しあう縁部間に、前記コードとは別のコードを前記両縁部に交互に係合させながらタイヤ周方向に斜めに進行させ、該コード同士が交差するベルト層を一体に形成した空気入りタイヤ。
- 前記カーカス層を構成するコードが有機繊維コード又はスチールコードである請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ベルト層を構成するコードが有機繊維コード又はスチールコードである請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記カーカス層を構成するコードが有機繊維コードであり、前記ベルト層を構成するコードがスチールコードである請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ベルト層の総幅が前記トレッドの展開幅TDWの25〜75%である請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記ベルト層を構成するコードのタイヤ周方向に対する角度が10°〜70°である請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ内空洞と実質的同一外形を有する中子表面にタイヤ材料を貼り付けてグリーンタイヤを成形することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
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