JP4261721B2 - スピーカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、いわゆるダイナミックスピーカに関するものであり、特に、そのボイスコイルと振動板との固定構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スピーカの一形式として、従来よりダイナミックスピーカが知られている。このダイナミックスピーカは、例えば特開平6−178390号公報に開示されているように、一般に、振動板と、この振動板に一端部が固定されたボイスコイルと、このボイスコイルの他端部を収容する筒状磁気間隙が形成された磁気回路ユニットとを備えた構成となっている。
【0003】
上記ボイスコイルの上記振動板に対する固定構造としては、上記公報にも開示されているように、図5(a)に示すようなI字形の巻回断面形状を有するボイスコイル2の一端部2aを振動板4に接着固定するようにしたものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような固定構造を有するスピーカにおいては、大きな接着面積を確保することができないので、固定強度が不十分となり、使用中にボイスコイル2が振動板4から剥離して外れてしまうおそれがある。特に、このスピーカを自動車等に搭載する場合には、大きな振動や衝撃荷重が作用する環境下で使用されることとなるので、ボイスコイル2の外れが一層発生しやすくなる。
【0005】
これに対し、同図(b)に示すように、ボイスコイル2の巻回厚さを厚くすれば、その一端部2aと振動板4との間に比較的大きな接着面積を確保することができ、これにより固定強度を十分に確保することが可能となる。
【0006】
しかしながら、このようにした場合には、磁気回路ユニット6の筒状磁気間隙Gの幅が広くなってしまうので、スピーカの電気音響変換効率が低下してしまうという問題がある。また、ボイスコイル2の巻回厚さを厚くした分だけボイスコイル2の重量が大きくなり、これにより接着面に大きな荷重が作用するので、期待したほどは大きな外れ防止効果を得ることができないという問題もある。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ダイナミックスピーカにおいて、その音響特性を悪化させることなくボイスコイルの外れ防止を図ることができるスピーカを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、ボイスコイルの巻回断面形状に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係るスピーカは、
振動板と、この振動板に一端部が接着固定されたボイスコイルと、このボイスコイルの他端部を収容する筒状磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、を備えてなるスピーカにおいて、
上記ボイスコイルの上記一端部における巻回厚さが、該ボイスコイルの他の部分に比して大きい値に設定されており、
上記ボイスコイルにおける上記他の部分が、I字形の巻回断面形状を有しており、
上記振動板に、上記ボイスコイルの上記一端部が接着固定される平面部が形成されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「振動板」および「磁気回路ユニット」は、ダイナミックスピーカの構成要素として使用可能なものであれば、その材質、形状等の具体的構成は特に限定されるものではない。
【0011】
また上記「ボイスコイル」は、その一端部における巻回厚さが他の部分に比して大きい値に設定されているものであれば、その具体的な巻回断面形状は特に限定されるものではない。
【0012】
【発明の作用効果】
上記構成に示すように、本願発明に係るスピーカは、ボイスコイルの一端部が振動板に接着固定されているが、このボイスコイルは上記一端部における巻回厚さが他の部分に比して大きい値に設定されているので、該ボイスコイルの重量をあまり増大させることなく、その一端部と振動板との間に大きな接着面積を確保することが可能となる。このため、単にボイスコイルの巻回厚さを全体的に大きくした場合のように、ボイスコイルの重量増大により接着面に大きな荷重を作用させてしまうことなく、ボイスコイルの振動板に対する固定強度を十分に確保することができる。
【0013】
また、ボイスコイルの他の部分の巻回厚さは相対的に小さい値に設定されているので、磁気回路ユニットの筒状磁気間隙の幅を広げることを必要とせずに、その一端部と振動板との間に大きな接着面積を確保することが可能となる。このため、スピーカの電気音響変換効率を低下させることなく上記作用効果を得ることができる。
【0014】
このように本願発明によれば、ダイナミックスピーカにおいて、スピーカの特性を悪化させることなくボイスコイルの外れ防止を図ることができる。
【0015】
上記構成において、ボイスコイルの巻回断面形状が特に限定されるものでないことは上述したとおりであるが、該巻回断面形状を、上記一端部に径方向内方へ突出するフランジ部が形成されてなる略L字形に設定すれば、ボイスコイルの重量増大を最小限に抑えた上で大きな接着面積を確保することができ、しかも、ボイスコイルの巻回作業をあまり複雑化することなくその一端部における巻回厚さを他の部分に比して大きい値に設定することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本願発明の一実施形態に係るスピーカ10を上向きに配置した状態で示す側断面図であり、図2は、そのII部詳細図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るスピーカ10は、振動板12と、フレーム14と、ボイスコイル16と、磁気回路ユニット18とを備えてなるダイナミックスピーカである。このスピーカ10は、外径30mm程度の小型スピーカであって、その用途としては、例えば、図示しないケースに収容された状態で基板に実装されて自動車等に搭載され、警報音等の発生手段として使用されるようになっている。
【0019】
上記振動板12は、同心円状に形成された複数の凹凸を有するダイヤフラム状の部材であって、合成樹脂製フィルムに熱プレス成形を施すことにより形成されている。この振動板12の外周縁平坦部12aと中央寄りの中間平坦部12bとは、同一水平面上に位置する環状平面として形成されている。
【0020】
上記フレーム14は鋼製部材であって、中央部に位置する有底円筒部14Aと、この有底円筒部14Aの外周面上端部近傍から径方向外方へ延びる環状のマウンティング部14Bとからなっている。このマウンティング部14Bには、複数の透孔(図示せず)が周方向に所定間隔をおいて形成されている。そして、このマウンティング部14Bの外周縁部には、有底円筒部14Aの上端面14Aaよりも上方に位置する環状平坦部14Baと、この環状平坦部14Baから上方へ延びるフランジ部14Bbとが形成されている。
【0021】
上記振動板12は、その外周縁平坦部12aにおいて、フレーム14のマウンティング部14Bの環状平坦部14Baに接着固定されている。この接着固定は、スピーカ10の中心軸線Axに関して振動板12とフレーム14とが互いに同心となるように配置された状態で行われている。
【0022】
上記ボイスコイル16は、振動板12と同心となるように配置された状態で、その上端部16a(一端部)が振動板12の中間平坦部12bに接着固定されている。この固定構造については後に詳述する。
【0023】
上記磁気回路ユニット18は、上記フレーム14の有底円筒部14Aと、マグネット20と、鋼製のヨーク22とで構成されている。上記マグネット20およびヨーク22は、いずれもディスク状に形成されており、有底円筒部14aの底面にこの順で互いに同心となるように載置され、フレーム14に接着固定されている。この磁気回路ユニット18は、ヨーク22の上端面22aと有底円筒部14Aの上端面14Aaとが略同一高さになるように設定されており、そしてヨーク22の外周面と有底円筒部14aの内周面との間には、筒状(円筒状)磁気間隙Gが全周同一幅で形成されている。そして、この筒状磁気間隙Gにおいてボイスコイル16の下端部16b(他端部)を収容するようになっている。
【0024】
図2に示すように、上記ボイスコイル16の巻回断面形状は、上端部16aに径方向内方へ突出するフランジ部16a1が形成されてなるL字形に設定されている。そしてこれにより、上記ボイスコイル16の上端部16aと振動板12の中間平坦部12bとの接着面積を十分に確保するようになっている。
【0025】
上記振動板12およびボイスコイル16は、スピーカ駆動により、図2において2点鎖線で示す範囲内で上下動するようになっている。上記フランジ部16a1は、通常のスピーカ駆動における最大振幅での振動時でもヨーク22の上端面22aとの間にある程度のクリアランスが確保されるよう、その高さ寸法が設定されている。
【0026】
上記ボイスコイル16は、図3に示すような巻回押え治具102および巻回受け治具104を用いて成形されるようになっている。
【0027】
上記巻回押え治具102は、ボイスコイル16よりも大径の円柱状に形成されている。一方、下側の巻回受け治具104は、その外径寸法がボイスコイル16の内径寸法と同じ値に設定されており、その上端部はボイスコイル16のフランジ部16a1の内周面および下端面と同一形状の小径凹部104aとして形成されている。そして、これら巻回押え治具102の下端面と巻回受け治具104の上端面とを互いに当接させた状態で、コイル線材Cの先端部を巻回受け治具104の小径凹部102aに巻き掛けた後、両治具102、104を中心軸線Ax(図1参照)回りに回転させるとともにコイル線材Cを所定範囲にわたって上下動させることにより、巻回受け治具104の外周面にコイル線材Cを巻き付け、これにより上端部16aにフランジ部16a1が形成されたL字形の巻回断面形状を有するボイスコイル16を形成するようになっている。
【0028】
上記コイル線材Cとしては、融着性合成樹脂の被覆が施されたものが用いられている。そして、上記巻付けの直前にコイル線材Cに熱風を吹き付けてその被覆を溶融させることにより、巻き付けられたコイル線材Cを相互に融着させてボイスコイル16の成形を行うようになっている。なお、ボイスコイル16の巻き始め線および巻き終わり線がいずれもボイスコイル16の上端部16aから延出するよう、コイル線材Cの巻き数は偶数回(例えば、上端部16aが12重巻きで他の部分が4重巻き)に設定されている。
【0029】
以上詳述したように、本実施形態に係るスピーカ10は、ボイスコイル16の上端部16aが振動板12の中間平坦部12bに接着固定されているが、このボイスコイル16は、その上端部16aにフランジ部16a1が形成されてなるL字形の巻回断面形状を有しているので、通常のI字形の巻回断面形状を有するボイスコイルに対して重量を僅かに増大させるだけで、その上端部16aと振動板12との間に大きな接着面積を確保することができる。
【0030】
このため、I字形の巻回断面形状を有するボイスコイルにおいて単にその巻回厚さを全体的に厚くした場合のように、ボイスコイルの重量増大により接着面に大きな荷重を作用させてしまうことなく、ボイスコイル16の振動板12に対する固定強度を十分に確保することができる。
【0031】
また、上記ボイスコイル16における上端部16a以外の部分については通常の巻回厚さとなっているので、磁気回路ユニット18の筒状磁気間隙Gの幅を広くする必要がなく、このためスピーカ10の電気音響変換効率を低下させてしまうことなく上記作用効果を得ることができる。
【0032】
このように本実施形態によれば、ダイナミックスピーカにおいて、スピーカの特性を悪化させることなくボイスコイル16の外れ防止を図ることができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係るスピーカ10を、車載用スピーカ等のように大きな振動や衝撃荷重が作用する環境下で使用した場合においても、十分使用に耐え得るものとなる。
【0034】
特に本実施形態においては、ボイスコイル16の上端部16aにおいてフランジ部16a1が径方向内方へ突出するように形成されているので、ボイスコイル16の巻回作業を行うに当たり、上記巻回受け治具104の上端部に所定の小径凹部104aを形成しておくことにより、容易にL字形の巻回断面形状を有するボイスコイル16を成形することができる。
【0035】
ところで、上記実施形態においてはフランジ部16a1の断面形状が矩形に設定されているが、これ以外の断面形状でフランジ部16a1を形成することももちろん可能である。
【0036】
例えば、図4(a)に示すように、径方向内方へ向かって上下幅が徐々に狭まる楔形の断面形状を有するフランジ部16a1を採用することも可能である。このような断面形状を採用することにより、ボイスコイル16の重量増大を最小限に抑えた上で、その上端部16aと振動板12との間に大きな接着面積を確保するとともにボイスコイル16自体の剛性を高めることができる。
【0037】
また、同図(b)に示すように、ボイスコイル16の上端部16aに、径方向内方へ突出するフランジ部16a1のみならず、径方向外方へ突出するフランジ部16a2を形成することにより、該上端部16aと振動板12との間に大きな接着面積を確保するようにすることも可能である。
【0038】
なお、上記実施形態においては、スピーカ10が小型スピーカである場合について説明したが、もっとサイズが大きいスピーカである場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより、該実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態に係るスピーカを上向きに配置した状態で示す側断面図
【図2】図1のII部詳細図
【図3】上記実施形態においてボイスコイルを成形する工程を示す要部側断面図
【図4】上記実施形態の変形例を示す、図2と同様の図
【図5】従来例を示す、図2と同様の図
【符号の説明】
10 スピーカ(ダイナミックスピーカ)
12 振動板
12a 外周縁平坦部
12b 中間平坦部
14 フレーム
14A 有底円筒部
14Aa 上端面
14B マウンティング部
14Ba 環状平坦部
14Bb フランジ部
16 ボイスコイル
16a 上端部(一端部)
16a1、16a2 フランジ部
16b 下端部(他端部)
18 磁気回路ユニット
20 マグネット
22 ヨーク
22a 上端面
102 巻回受け治具
104 巻回押え治具
104a 小径凹部
Ax 中心軸線
C コイル線材
G 筒状磁気間隙
Claims (2)
- 振動板と、この振動板に一端部が接着固定されたボイスコイルと、このボイスコイルの他端部を収容する筒状磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、を備えてなるスピーカにおいて、
上記ボイスコイルの上記一端部における巻回厚さが、該ボイスコイルの他の部分に比して大きい値に設定されており、
上記ボイスコイルにおける上記他の部分が、I字形の巻回断面形状を有しており、
上記振動板に、上記ボイスコイルの上記一端部が接着固定される平面部が形成されている、ことを特徴とするスピーカ。 - 上記ボイスコイルの巻回断面形状が、上記一端部に半径方向内方へ突出するフランジ部が形成されてなる略L字形に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載のスピーカ。
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