JP4260944B2 - 支柱一体型焼成用棚板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、棚板本体に支柱が一体的に接合されて成る支柱一体型焼成用棚板に関し、特に、支柱の取付構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、陶磁器やセラミック製品等を製造するに際しては、所定形状に成形された成形体(被焼成物)を焼成炉内において十分な耐火度を有する焼成用棚板に載せた状態で所定の焼成温度で焼成する。この焼成工程においては、焼成炉の利用効率を可及的に高める目的で、一般に、複数枚の焼成用棚板が被焼成物の高さに応じた所定の間隔を以て所定の大きさの支柱体を介して複数段に積み重ねられる。
【0003】
上記の焼成用棚板の一つとして、被焼成物の高さに応じた所定高さの複数個の支柱体が棚板本体の周縁部の複数箇所に固定された支柱一体型焼成用棚板(以下、一体型棚板という)が知られている。このような一体型棚板によれば、複数枚の焼成用棚板を積み重ねるに際して棚板相互の間に配置される支柱体が予め一体的に設けられていることから、焼成工程における棚板の積み上げ作業が容易になる。しかも、積み上げ作業において支柱体と棚板との相対的な位置ずれが生じ得ないため、台車上に棚板を載置して搬送しつつ焼成するトンネル炉等においても振動等による棚板のずれや崩れが生じ難くなると共に、積み上げ・積み下ろし作業等の自動化が容易になるという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような一体型棚板は、例えば平板状の棚板本体構成部分と支柱体構成部分とを粉末プレス成形や泥漿鋳込成形等で一体的に成形して焼成する方法や、別個に成形・焼成して製造した支柱体を棚板本体の周縁部に無機接着剤等で固着する方法等で製造される。後者の製造方法によれば、個別に成形・焼成される各構成部材の形状が簡単であることから一体型棚板の製造が容易であると共に、被焼成物の寸法・形状に応じた適当な棚板間隔が、支柱体の高さ寸法を変更することで容易に実現されるという利点がある。しかも、例えば高い耐火度を有することからムライト質或いはコーディエライト質耐火物に代えて高温用途に用いられる炭化珪素(SiC )質の棚板では、成形するに際して多量の水分を必要とすることから成形体が軟質となるため、固着する方法によることが一層望ましい。成形体が軟質である場合には、棚板本体と支柱体とを一体成形して焼成するとその焼成過程において棚板本体が大きく変形(湾曲)させられ得るが、この方法によれば、棚板本体の平面度を可及的に高く保つことができる。
【0005】
図1(a) は、棚板本体への支柱体の固着方法の一例を説明する図である。図において、棚板本体10は矩形平板であり、支柱体12は棚板本体10の厚さ方向の高さ寸法すなわち積み上げ方向の高さ寸法がその棚板本体10の厚さ寸法よりも十分に大きくされて、高さ方向の中間部には棚板本体10の周縁部が嵌め込まれる嵌合溝14が設けられている。棚板本体10に支柱体12を固着するに際しては、棚板本体10の表面(上面16、下面18、側面20等)および支柱体12の嵌合溝14内の少なくとも一方に炭化珪素モルタル等の耐火モルタルから成る無機接着剤を塗布して、棚板本体10が嵌合溝14内に入るように図の矢印方向すなわち支柱体12を固着するその棚板本体10の一側面(端面)20に垂直な方向からその支柱体12を嵌め込み、無機接着剤を硬化させる。
【0006】
また、図2(a) 、(b) は、固着方法の他の例を説明する図である。図において、棚板本体22の上面24には支柱体26が固着される一辺28に沿ってそれに直交する他辺30から固着位置に連続する案内溝32が設けられており、支柱体26の嵌合溝34にはその案内溝32と係合させられる突起36が設けられている。そのため、棚板本体22に支柱体26を固着するに際しては、棚板本体22の表面(案内溝32内を含む上面24、下面38)および支柱体26の嵌合溝34内の少なくとも一方に無機接着剤を塗布し、他辺30から案内溝32に突起36を係合させた状態(図2(b) 参照)で一辺28に沿って支柱体26を図の矢印方向に移動させて嵌め込み、無機接着剤を硬化させる。
【0007】
しかしながら、図1(a) に示される固着方法では、棚板本体10の上面16および下面18にそれぞれ対向する支柱体12の嵌合溝14の内面が何れも平坦であるため、それらは専ら無機接着剤の接着力だけで固着されて機械的な係合力は何ら作用し得ない。そのため、例えば、棚板本体10が炭化珪素質、支柱体12がムライト質、無機接着剤が炭化珪素モルタル等で構成される場合等のように、支柱体12と接着剤との間等における十分な接着強度を確保し難い場合には、一体型棚板の使用中に与えられる振動や衝撃等で無機接着剤が棚板本体10或いは支柱体12から剥離させられると、支柱体12が棚板本体10から容易に抜け落ちるという問題がある。なお、例えば特開平4−366389号公報には、図1(b) に示されるように、嵌め込み方向に垂直すなわち一辺20に沿った方向に伸びる溝39を支柱体12の嵌合溝14内或いは棚板本体10の表面に設け、溝38内に充填されて硬化させられた無機接着剤とその溝39との係合に基づいて上記の抜け落ちを抑制する方法が記載されている。しかしながら、このような構成としても、その溝39の長手方向においては機械的な係合力が殆ど作用しないことから、その方向における支柱体10の位置ずれが生じ得るため、固着が十分であるとは言い難かった。
【0008】
一方、図2に示される固着方法では、支柱体26が固着された一辺28に垂直な方向に抜け落ちることが案内溝32と突起36との係合に基づいて好適に抑制される。しかしながら、支柱体26が棚板本体22に嵌め込まれるに際しては、その移動中に棚板本体22の表面と嵌合溝34とが摺動させられつつ一辺28に沿って長距離を移動させられる。そのため、予め塗布された無機接着剤が棚板本体22と支柱体26との間から排出されることから、固着位置においてそれらの間の無機接着剤の量が不十分になって高い接着強度が得られないという問題がある。したがって、上記係合に基づいて支柱体26の抜け落ちは抑制されるが、接着強度が不十分になって棚板本体22と支柱体26とのがたつきが生じ、或いは、図1(b) に示される場合と同様に一辺28に沿った方向において支柱体26が位置ずれして、一体型棚板の搬送中やトンネル炉内での焼成中において積み上げられた棚板の崩れが生じ得る。すなわち、上記何れの固着方法においても、支柱体10、26の固着強度は十分ではなかった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、棚板本体と支柱体との位置ずれを一層抑制し得る支柱一体型焼成用棚板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、平板状の棚板本体と、その棚板本体の周縁部が嵌め込まれる嵌合溝をそれぞれ有してその周縁部の所定位置に固着された複数の支柱体とを備える支柱一体型焼成用棚板であって、(a) 前記棚板本体の一面のうちその棚板本体の外周縁よりも内周側の所定位置と前記支柱体の嵌合溝内のその所定位置に対向する第1内面との一方に備えられた嵌合凹部と、(b) 前記一面の所定位置と前記第1内面との他方に前記嵌合凹部と嵌め合わされるように設けられた嵌合凸部と、(c) 前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とが嵌め合わされた状態で前記棚板本体の一面とは反対側に位置する他面と前記嵌合溝内のその他面に対向する第2内面との隙間に介挿されて、それら他面および第2内面の少なくとも一方に固着された介挿耐火物とを、含み、 (d) 前記第1内面、前記第2内面、前記一面の所定位置、および前記他面のその第2内面に対向する位置の少なくとも一箇所に、前記嵌合凹部および前記嵌合凸部とは独立した凹所を備え、 (e) 前記支柱体は、前記棚板本体との隙間に無機接着剤を充填されることによりその棚板本体に固着され、 (f) 前記凹所は、前記第1内面、前記第2内面、前記一面の所定位置、および前記他面のその第2内面に対向する位置の何れかにおいて、互いに対向する面に対を成して設けられたことにある。
【0011】
【発明の効果】
このようにすれば、棚板本体の一面の内周側の所定位置において棚板本体および支柱体の一方および他方にそれぞれ設けられた嵌合凹部および嵌合凸部が棚板本体の厚み方向に互いに嵌め合わされた状態で、その棚板本体の他面と支柱体の第2内面との間に介挿耐火物が介挿され、且つそれら他面および第2内面の少なくとも一方に固着されることにより、支柱体が棚板本体に固定される。そのため、棚板本体と支柱体との相対移動は、その棚板本体の一面の所定位置において嵌合凹部と嵌合凸部との嵌め合いに基づく機械的な係合力で制限されることとなる。このとき、その嵌合状態は、その棚板本体の他面とその支柱体の第2内面との間に介挿耐火物が介挿されることで維持されているが、その介挿耐火物は、それら他面および第2内面の少なくとも一方に固着されているため、それらの間から脱落することはなく、棚板本体の厚み方向における支柱体との相対移動が抑制される。したがって、嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合状態が維持されることから、その嵌合に基づく機械的な係合力によって、棚板本体と支柱体との位置ずれが好適に抑制される。また、嵌合凹部および嵌合凸部とは独立して設けられた凹所により棚板本体と支柱体との隙間が部分的に拡大され、それらの隙間に無機接着剤が充填される際には、その凹所によって拡大された隙間にもその無機接着剤が充填されるため、その無機接着剤が加熱処理等によって硬化させられた後には、嵌合凹部と嵌合凸部との嵌め合いに加えてその凹所とそこに充填された無機接着剤との機械的な係合状態が実現されるので、棚板本体と支柱体との位置ずれが一層抑制される。また、無機接着剤が硬化させられた後には、その凹所が設けられている位置においてその無機接着剤と棚板本体および支柱体の両方との間で機械的な係合状態が実現されることから、それらの位置ずれ延いては棚板本体からの支柱体の脱落が一層抑制される。
【0012】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、(c-2) 前記介挿耐火物は、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とが嵌め合わされた状態で前記隙間に充填された無機接着剤を加熱処理して生成されたものである。このようにすれば、介挿耐火物が無機接着剤で構成されることから、棚板本体の他面側でその棚板本体と支柱体とがその介挿耐火物で強固に接合される。そのため、棚板本体と支柱体との相対移動延いては位置ずれが一層抑制される。なお、「無機接着剤」は、焼成炉内での使用等の高温使用に耐える耐火モルタル等の無機質材料を主成分とする無機材料系の接着剤である。
【0013】
また、好適には、前記嵌合凹部および前記嵌合凸部は、前記支柱体の各々毎に前記一面の所定位置および前記第1内面のそれぞれ複数箇所に備えられたものである。このようにすれば、互いに嵌め合わされる嵌合凹部および嵌合凸部による機械的な係合状態が複数箇所で発生することから、一箇所だけで嵌め合わされる場合に比較して棚板本体と支柱体との相対移動、特に前記一面の面方向における相対移動が一層抑制される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図3は、本発明の一実施例の支柱一体型焼成用棚板(以下、単に一体型棚板という)40を示す斜視図である。図において、一体型棚板40は、矩形平板状の棚板本体42と、その棚板本体42のうち互いに反対側に位置する一対の端面44、46側に固着された3個の支柱体48とから構成された支柱一体型板状耐火物である。
【0018】
上記の棚板本体42は、例えば炭化珪素質耐火物(例えば組成がSiC 90% 、SiO2 9% 、その他のボンド成分 1% )であって、例えば410 ×260 ×厚さt=9(mm) 程度の寸法に形成されている。棚板本体42と支柱体48とを分離して表した図4に示されるように、棚板本体42の上面50には、後述するように支柱体48と機械的に係合するための嵌合凹部52が各支柱体48毎に2つずつ設けられている。この嵌合凹部52は、支柱体48が固着された側の端面44、46よりも例えばdi =5(mm) 程度だけ内周側(内側)の位置であって、その支柱体48のその端面44、46の長手方向に沿った幅方向の両端部に対応する位置に備えられる。嵌合凹部52の各々は、開口部における平面寸法が底部における平面寸法よりも大きくされた深さ2(mm) 程度の開口側に開いた平面形状が長方形の平皿状を成している。嵌合凹部52の端面44、46を結ぶ他端面54、56に沿った方向における幅寸法は、開口部でwxo=11(mm)、底面でwxb=9(mm) 程度であり、端面44、46に沿った方向における幅寸法は、開口部でwyo=8(mm) 、底面でwyb=6(mm) 程度である。
【0019】
なお、図3において裏面側に位置する棚板本体42の下面57には嵌合凹部52が設けられていない。また、嵌合凹部52の深さ寸法は、棚板本体42の機械的強度を実質的に低下させることのないように、厚さ寸法tに対して十分に小さい 0.2t〜 0.3t程度の値に設定されている。また、図において58は、棚板本体42に成形過程および焼成過程において生じた内部歪による変形や破損を防止するために各端面44、46、54、56のそれぞれ1か所から内側に向かって伸び且つ厚み方向に貫通して設けられた切込であり、例えばそれぞれ幅2(mm) 程度、長さ50〜80(mm)程度の寸法を有している。
【0020】
一方、前記の支柱体48は、例えばムライト質或いはムライト・コーディエライト質セラミックス(例えば組成が SiO2 30〜60%、Al2O3 40〜70%、 MgO 0〜7 %程度)から成るものである。この支柱体48の概略外形寸法は、端面44側において2個設けられているものが高さ(棚板本体42の厚さ方向寸法)65(mm)×幅(端面44、46に沿った方向の長さ寸法)30(mm)×厚さ(端面44、46に垂直な方向の長さ寸法)33(mm)程度に、端面46側において1個だけ設けられているものが例えば高さ65(mm)×幅60(mm)×厚さ33(mm)程度にそれぞれ設定されている。
【0021】
上記の支柱体48の棚板本体42側の側面60には、高さ方向の中央に例えば開口幅がwo =12(mm)程度、側面60からの溝深さがdd =15(mm)程度の寸法で、端面44或いは46の長手方向に沿った支柱体48の幅方向において一様な断面形状で貫通する嵌合溝62が備えられている。図5(a) 、(b) に示すように、この嵌合溝62の内面のうち棚板本体42の上面50に対向する第1内面64には、支柱体48の幅方向の両端部であってその嵌合溝62の開口側位置に、一対の嵌合凸部66が備えられる。嵌合凸部66の各々は、先端部における平面寸法が基部における平面寸法よりも小さくされた高さ2(mm) 程度の四角錐台形状を成している。嵌合凸部66の側面60から嵌合溝62の底部に向かう方向に沿った幅寸法は、先端部でwxb=9(mm) 、基部でwxo=11(mm)程度であり、嵌合溝62の長手方向に沿った方向における幅寸法は、先端部でwyb=6(mm) 、基部でwyo=8(mm) 程度である。すなわち、支柱体48に備えられた嵌合凸部66は、棚板本体42に備えられた嵌合凹部52を反転した形状であって、相互に隙間なく嵌まり合う寸法に形成されている。なお、支柱体48において第1内面64に対向して位置する第2内面68は、全体が平坦に形成されて嵌合凸部66のようなものは何ら設けられていない。
【0022】
一体型棚板40は、以上のように構成された嵌合凹部52および嵌合凸部66が互いに嵌め合わされた状態で、支柱体48が棚板本体42に無機接着剤70で固着されることで構成されている。無機接着剤70は、例えば炭化珪素モルタル等の耐火物を主成分とし、微量の二酸化珪素や炭酸カルシウム等を含むものである。このとき、各部の寸法を前述したように、嵌合溝62の開口幅はwo =12(mm)程度であって、そこに嵌め込まれる棚板本体42の厚さ寸法t=9(mm) 程度よりも3(mm) 程度厚いため、それらの嵌め合い状態において隙間が生じるが、この隙間は無機接着剤70で埋められる。棚板本体42と支柱体48との間に介在させられる無機接着剤70の厚さは、その棚板本体42の上面50側および端面44側においては1(mm) 程度であり、下面57側においては2(mm) 程度である。したがって、嵌合凹部52と嵌合凸部66とは、厚さ1(mm) 程度の無機接着剤70を介して嵌め合わされており、下面57と第2内面68との間には、g=2(mm) 程度の隙間71が形成され、そこに上面52側よりも厚く無機接着剤70が充填されることによってその嵌め合い状態が維持されている。本実施例においては、無機接着剤70が介挿耐火物に相当する。
【0023】
以下、一体型棚板40の製造方法の概略を工程の各段階の要部を示した図6(a) 〜(d) を参照して説明する。先ず、成形工程S1においては、粉末プレス成形や鋳込成形等によって棚板本体42および支柱体48の生成形体をそれぞれ成形し、焼成工程S2においてそれらをそれぞれ焼成することにより、棚板本体42および支柱体48を別個に製造する。なお、これらの焼成処理は、例えば何れも酸化雰囲気で行う。次いで、接着剤塗布工程S3においては、棚板本体42の端部表面(上面50、下面57、端面44、46)および支柱体48の嵌合溝62内面(第1内面64および第2内面68)の両方或いは一方に前記の無機接着剤70を含む接着剤ペースト72を適度な厚さに塗布する。図6(a) は、この状態を示している。但し、下面57および第2内面68には、塗布された接着剤ペースト72によって後述する嵌め込みが妨げられないように、両者への合計塗布厚みが薄くされ、或いは全く塗布されない。なお、接着剤ペースト72には、無機接着剤70に適度な流動性や乾燥強度を付与するための水、有機結合剤、および熱硬化性樹脂等が混合されたものである。
【0024】
続く嵌込工程S4において、同図に矢印で示されるように、嵌合溝62の長手方向に垂直な嵌め込み方向で、棚板本体42の端部を支柱体48のその嵌合溝62内に端面44、46がその底面に突き当たるまで嵌め込む。図6(b) は、このように嵌め込んだ状態を示している。なお、端面44、46と溝62底面との間には微量の接着剤ペースト72が存在するため、厳密にはそれらは突き当てられていない。このとき、棚板本体42の厚さがt=9(mm) 程度に設定されている一方、支柱体48の嵌合溝62の開口幅はwo =12(mm)程度とそれよりも3(mm) 程度大きく設定されているため、高さ2(mm) 程度の嵌合凸部66が備えられている位置においても実質的な開口幅は10(mm)程度であって棚板本体42の厚さ寸法よりも1(mm) 程度は大きい。このため、嵌合凹部52が上面50の内周部に設けられて端部44、54等の何れにも連続されていないにも拘わらず、嵌め込む際の棚板本体42と支柱体48との干渉は発生しない。嵌合溝62の開口幅は、このように嵌め込み時における干渉が好適に回避されるように、棚板本体42の厚みと上面50および第1内面64に塗布される接着剤ペースト72の厚みとを考慮して、上記の嵌め込みが容易に行われる得るように設定されている。
【0025】
そして、嵌合工程S5において、上記の図6(b) に矢印で示されるように、支柱体48の第1内面64を棚板本体42の上面50に向かって押しつけ、嵌合凸部66と嵌合凹部52とを嵌め合わせる。これにより、嵌合凸部66と嵌合凹部52とは、接着剤ペースト72の薄い層を介して係合させられる。図6(c) は、この状態を示している。これにより、棚板本体42の所定位置に支柱体48が嵌め合わされる。そして、接着剤充填工程S6において、例えば図6(d) に示されるように薄いへら74等で接着剤ペースト72を押し込み、或いはディスペンサ等で注入することによって、隙間71内に接着剤ペース72を高密度に充填する。なお、接着剤ペースト72の流動性が十分に高く、へら74等による押込みを施さなくとも高密度充填が可能な場合には、この接着剤充填工程S6は不要である。
【0026】
接着剤ペースト72を隙間71に充填した後、硬化工程S7においては、互いに嵌め込まれた棚板本体42および支柱体48を例えば常温で24時間程度或いは60〜 80(℃) 程度の温度で 1〜 2時間乾燥する。これにより、隙間71内を含む棚板本体42と支柱体48との間に充填された接着剤ペースト72が硬化させられて成る無機接着剤70によって図5(a) 、(b) に示されるように棚板本体42と支柱体48が接着されると同時に、隙間71に充填されたまま硬化した無機接着剤70によって棚板本体42の厚み方向におけるそれと支柱体48との相対位置が固定されることで嵌合凹部52と嵌合凸部66との嵌合状態が維持される。すなわち、無機接着剤70の化学的(或いは物理的)な接着力に加えて、嵌合凹部52と嵌合凸部66との機械的な係合状態が発生することにより、棚板本体42に支柱体48が強固に固定され、取扱中や使用中における支柱体48のがたつきや脱落等が好適に抑制される。
【0027】
なお、無機接着剤70の本来の接着強度を発現させるためには、更に高温の焼成処理を施して焼結(或いは溶着)させることが必要である。しかしながら、無機接着剤70の接着強度は、上記の乾燥・硬化によって実用上十分な程度まで高められることから、その状態で一体型棚板40を焼成後と同様に取り扱い得る。しかも、一体型棚板40の使用中には無機接着剤70の焼成温度程度の高温に曝されて実質的にそこでその無機接着剤70の焼成処理が為されることから、例えば、乾燥・硬化した一体型棚板40に、そのまま被焼成物を載置して焼成処理を施しても何ら支障はない。すなわち、上記の乾燥・硬化した状態で一体型棚板40の製造工程は実質的に完了している。
【0028】
要するに、本実施例によれば、棚板本体42の上面50の内周側の所定位置において棚板本体42に設けられた嵌合凹部52と、支柱体48の嵌合溝62の第1内面64に設けられた嵌合凸部66とが互いに嵌め合わされた状態で、その棚板本体42の下面57と支柱体48の第2内面68との間に無機接着剤70が介挿され、その無機接着剤70によってそれら下面57および第2内面68が固着されることにより、支柱体48が棚板本体42に固定される。そのため、棚板本体42と支柱体48との相対移動は、その棚板本体42の上面50側において嵌合凹部52と嵌合凸部66との嵌め合いに基づく機械的な係合力で制限されることとなる。このとき、その嵌合状態は、その棚板本体42の下面57とその支柱体48の第2内面68との間に無機接着剤70が介挿されることで維持されているが、その無機接着剤70は、それら下面57および第2内面68を相互に接着するものであるため、それらの間から脱落することはない。したがって、嵌合凹部52と嵌合凸部66との嵌合状態が維持されることから、その嵌合に基づく機械的な係合力によって、棚板本体42と支柱体48との位置ずれが好適に抑制される。
【0029】
また、本実施例においては、棚板本体42の下面57と支柱体48の第2内面68との間に介挿される耐火物すなわち無機接着剤70は、前記嵌合凹部52と前記嵌合凸部66とが嵌め合わされた状態で前記隙間71に充填された接着剤ペースト72を加熱処理して生成されたものである。そのため、介挿耐火物が無機接着剤70で構成されることから、棚板本体42の下面57側でその棚板本体42と支柱体48とがその無機接着剤70で強固に接合される。そのため、棚板本体42と支柱体48との相対移動延いては位置ずれが一層抑制される。
【0030】
また、本実施例においては、棚板本体42の上面50に設けられた嵌合凹部52、および支柱体48の第1内面64に設けられた嵌合凸部66は、その支柱体48の各々毎に2箇所に備えられる。そのため、互いに嵌め合わされる嵌合凹部52および嵌合凸部66による機械的な係合状態が支柱体48毎に2箇所で発生することから、一箇所だけで嵌め合わされる場合に比較して棚板本体42と支柱体48との相対移動、特に上面50の面方向における相対移動が一層抑制される。
【0031】
しかも、本実施例においては、棚板本体42および支柱体48にそれぞれ予め設けられている嵌合凹部52および嵌合凸部66を嵌め合わせることで、棚板本体42の所定位置に支柱体48が固定される。そのため、嵌込工程S4において特に位置決め用の治具等を用意しなくとも、棚板本体42の予め定められた位置に高精度で支柱体48を固定できることから、高い作業性が得られる利点もある。因みに、前記図1(a) 、(b) に示されていた従来の嵌込構造では、棚板本体10と支柱体12との相対位置を決定するものがそれらには何ら設けられていない。そのため、一般に多段積みして用いられる一体型棚板では、炉内等における棚板の崩れを防止するために支柱体12が高精度で配置される必要があることから、このような構造では嵌込工程S4において専用の治具を用いる必要があって、高い作業性を得ることができなかった。
【0032】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前述の実施例と共通する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図7は、他の実施例において棚板本体42と支柱体48とを分離して示した前述の実施例の図4に対応する図である。本実施例においては、棚板本体42は図4の場合と同様に構成されているが、支柱体48には、第2内面68に嵌合溝62の長手方向に沿って並ぶ3つの半球状の凹所76が備えられている。凹所76は、例えば直径5(mm) 程度の寸法を有するものであって、相互に5(mm) 程度の間隔を以て互いに独立した窪みである。
【0034】
そのため、前述の工程に従って支柱体48に棚板本体42を嵌め込んで固定するに際しては、隙間71に充填される接着剤ペースト72がその凹所76内すなわち凹所76によって拡大された隙間内にも充填される。この接着剤ペースト72は、そのままの形状で硬化させられて無機接着剤70となることにより、支柱体48と棚板本体42との固着状態においては、図8に凹所76を通る断面が示されるように、その凹所76内とそこに入り込んで硬化した無機接着剤70とが嵌め合わされることとなる。すなわち、棚板本体42の下面57側においても、硬化した無機接着剤70と凹所76との間で機械的な係合状態が発生する。したがって、本実施例によれば、前記の図4に示される場合に比較して、一層確実に支柱体48と棚板本体42との相対移動延いてはその支柱体48の脱落が抑制される。
【0035】
しかも、本実施例においては、凹所76が支柱体48に備えられているが、支柱体48は、前述したようにムライト質耐火物等から構成されるものであって、炭化珪素質モルタルとの接合強度は略同材質から成る棚板本体42に比較して低い。そのため、無機接着剤70と支柱体48との界面では相対的に剥離し易いが、たとえ剥離しても、図4に示されるような第2内面68が平坦になっている場合に比較して、下面57側では凹所76と無機接着剤70との機械的な係合によって棚板本体42と支柱体48との相対移動が好適に抑制される。すなわち、本実施例によれば、上面50側では嵌合凹部52と嵌合凸部66との嵌め合いにより、下面57側でも上記のような嵌め合いにより、何れも機械的な係合力で上面50および下面57の面方向に沿った相対移動が抑制され、支柱体48が棚板本体42に一層確実に固定されることとなる。
【0036】
図9は、更に他の実施例を説明する図であって、上記の図8に対応する図である。本実施例においては、上記の凹所76が、更に支柱体48の第1内面64、棚板本体42の上面50、および下面57にも設けられている。なお、第1内面64の凹所76は、そこに備えられている一対の嵌合凸部66、66の間の位置に設けられており、上面50および下面57の凹所76は、第1内面64および第2内面68にそれぞれ備えられている凹所76に対向する位置に設けられている。そのため、図に示されるように無機接着剤70が棚板本体42と支柱体48との隙間に充填され且つ硬化させられた状態においては、それらの間に無機接着剤70から成る略球状の係合突起が形成され、その係合突起と凹所76との機械的な係合状態が発現する。このようにすれば、図4や図8等に示されている場合に比較して一層機械的な係合力が高められて支柱体48の位置ずれや脱落が一層抑制される。
【0037】
図10(a) 、(b) は、更に他の実施例を説明する図である。図において、隙間71には、無機接着剤70に加えて隙間71の大きさよりも十分に薄いスペーサ78が配置されている。このスペーサ78は、例えば棚板本体42と同様な炭化珪素質耐火物から成り、無機接着剤70との接合強度が十分に高いものである。このようにしても、スペーサ78と無機接着剤70との接着に基づき隙間71内には耐火物が介挿された状態が維持されるため、上面50側における嵌合凹部52と嵌合凸部66との嵌合状態が好適に維持される。しかも、スペーサ78を構成する材料は、無機接着剤70との高い接合強度が求められる他は選択する範囲を特に限定されないことから、隙間71内の介挿耐火物の全体としての緻密性を適宜設定し得る。すなわち、無機接着剤70だけから成る場合よりも緻密質にすることもでき、反対に多孔質にすることもできる。
【0038】
なお、スペーサ78の配設状態は、図10(a) に示されるように支柱体48との間に無機接着剤70が存在しない状態、或いは、図10(b) に示されるように無機接着剤70が存在する状態の何れであってもよい。前者の場合には、支柱体48とスペーサ78延いては下面57側における支柱体48と棚板本体42との間には接着力が全く作用しないことになる。しかしながら、その場合でも、上面50側においては嵌合凹部52と嵌合凸部66とが嵌合させられることでその面方向の相対移動が抑制され、且つ下面57側においては棚板本体42と支柱体48との間に無機接着剤70とスペーサ78とによって構成される介挿耐火物が介挿されて隙間が無くなっていることに基づき棚板本体42の厚み方向の相対移動も抑制されていることから、棚板本体42と支柱体48との相対移動が生じ或いはその支柱体48が脱落することはない。
【0039】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施される。
【0040】
例えば、実施例においては、炭化珪素質の棚板本体42にムライト質或いはムライト・コーディエライト質セラミックスの支柱体48が固着された一体型棚板40に本発明が適用された場合について説明したが、棚板本体42や支柱体48の材質や各部の寸法・形状は一体型棚板40の用途に応じて適宜変更される。
【0041】
また、実施例においては、棚板本体42の端面44、46側に合計で3個の支柱体48が固着されていたが、支柱体48の個数は棚板本体42の大きさや用途(例えば焼成条件等も含む)に応じて適宜変更される。
【0042】
また、実施例においては、棚板本体42および支柱体48にそれぞれ一対の嵌合凹部52および嵌合凸部66が、嵌合溝62の長手方向における支柱体48の両端部位置に備えられていたが、その長手方向における位置は適宜変更され、また、個数は一個ずつでもよく、或いはそれぞれ3個以上であってもよい。
【0043】
また、実施例においては、棚板本体に嵌合凹部52が、支柱体48に嵌合凸部66がそれぞれ備えられていたが、反対に、棚板本体42に嵌合凸部66が備えられる一方、支柱体48に嵌合凹部52が備えられてもよい。また、棚板本体42および支柱体48のそれぞれに嵌合凹部52および嵌合凸部66の両者が1乃至複数個ずつ設けられても差し支えない。
【0044】
また、実施例においては、嵌合凸部66が支柱体48の嵌合溝62の開口部に備えられていたが、その位置は適宜変更され、第1内面64上のうち側面60と嵌合溝62底面との中間の位置に設けられていてもよい。上面50の面方向における嵌合凹部52および嵌合凸部66の位置は、支柱体48と棚板本体42との間に介在させられる無機接着剤70の厚みを考慮して、それらが緩みなく嵌め合わされるように適宜設定される。
【0045】
また、実施例においては、棚板本体42の厚さ寸法よりも嵌合溝62の開口幅寸法が3(mm) 程度大きくなるように設定されると共に、嵌合凹部52の深さ寸法および嵌合凸部66の高さ寸法がそれぞれ2(mm) 程度に設定されていたが、これらの寸法は棚板本体42の厚さや要求される機械的な係合力等に応じて適宜変更される。
【0046】
また、凹所76は、図8示される実施例においては支柱体48の第2内面68だけに備えられ、一方、図9に示される実施例においては棚板本体42と支柱体48との対向面の全てに備えられていたが、その形成位置は適宜設定され、例えば、棚板本体42の上面50だけに設けても同様な効果を享受し得る。この凹所76は、無機接着剤70の接着強度が不足する場合にこれを補うものであり、棚板本体42、支柱体48、および無機接着剤70相互の界面のうち、相対的に接着強度が低い部分に設けることが効果的である。したがって、実施例に示したものとは各材料が異なる場合において無機接着剤70と棚板本体42との接合強度が支柱体48との接合強度に対して相対的に低い場合には、図8に示される場合において接合強度が相対的に弱い界面、すなわち下面57に凹所76を設けることが好ましい。
【0047】
また、実施例においては、嵌合凹所52および嵌合凸部66の平面形状が長方形状にされていたが、その形状は適宜変更される。例えば更に縦横比の大きい長手状、正方形、円形、或いは楕円形等の種々の形状に設け得る。また、嵌合凹部52の底面形状および嵌合凸部66の頂面形状は、実施例で示したような平坦なものでなくとも差し支えなく、球面等の曲面で構成することもできる。
【0048】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) は、従来の支柱一体型焼成用棚板の構成の一例を説明する図であり、(b) は、(a) の棚板本体と支柱体との嵌込構造において支柱体の嵌合溝内面の形状を変更した例を説明する図である。
【図2】 (a) は従来の支柱一体型焼成用棚板の他の例の構成を説明する図であり、(b) は支柱体が棚板本体に嵌め込まれた状態の要部断面を示す図である。
【図3】本発明の一実施例の支柱一体型焼成用棚板の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図3の支柱一体型焼成用棚板において、棚板本体と支柱体とを分離して要部を示す図である。
【図5】 (a) は、図3の支柱一体型焼成用棚板の嵌込構造を嵌合溝の長手方向に垂直な断面で示す要部断面図であり、(b) は、(a) におけるb−b視断面の要部を示す図である。
【図6】 (a) 〜(d) は、図3の支柱一体型焼成用棚板の製造方法を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施例の支柱一体型焼成用棚板を棚板本体と支柱体とを分離して要部を示す図である。
【図8】図7の支柱一体型焼成用棚板の嵌込構造を嵌合溝の長手方向に垂直な断面で示す要部断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施例の支柱一体型焼成用棚板の嵌込構造を説明する図である。
【図10】 (a) 、(b) は、それぞれ本発明の更に他の実施例の支柱一体型焼成用棚板の嵌込構造を説明する図である。
【符号の説明】
40:支柱一体型焼成用棚板
42:棚板本体
48:支柱体
50:上面
52:嵌合凹部
57:下面
62:嵌合溝
64:第1内面
66:嵌合凸部
68:第2内面
70:無機接着剤
Claims (3)
- 平板状の棚板本体と、該棚板本体の周縁部が嵌め込まれる嵌合溝をそれぞれ有して該周縁部の所定位置に固着された複数の支柱体とを備える支柱一体型焼成用棚板であって、
前記棚板本体の一面のうち該棚板本体の外周縁よりも内周側の所定位置と前記支柱体の嵌合溝内の該所定位置に対向する第1内面との一方に備えられた嵌合凹部と、
前記一面の所定位置と前記第1内面との他方に前記嵌合凹部と嵌め合わされるように設けられた嵌合凸部と、
前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とが嵌め合わされた状態で前記棚板本体の一面とは反対側に位置する他面と前記嵌合溝内の該他面に対向する第2内面との隙間に介挿されて、該他面および該第2内面の少なくとも一方に固着された介挿耐火物とを、含み、
前記第1内面、前記第2内面、前記一面の所定位置、および前記他面の該第2内面に対向する位置の少なくとも一箇所に、前記嵌合凹部および前記嵌合凸部とは独立した凹所を備え、
前記支柱体は、前記棚板本体との隙間に無機接着剤を充填されることにより該棚板本体に固着され、
前記凹所は、前記第1内面、前記第2内面、前記一面の所定位置、および前記他面の該第2内面に対向する位置の何れかにおいて、互いに対向する面に対を成して設けられたものであることを特徴とする支柱一体型焼成用棚板。 - 前記介挿耐火物は、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とが嵌め合わされた状態で前記隙間に充填された無機接着剤を加熱処理して生成されたものである請求項1の支柱一体型焼成用棚板。
- 前記嵌合凹部および前記嵌合凸部は、前記支柱体の各々毎に前記一面の所定位置および前記第1内面のそれぞれ複数箇所に備えられたものである請求項1または2の支柱一体型焼成用棚板。
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