JP4259930B2 - ボール用表皮材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボール用表皮材に関するものである。さらに詳しくは耐摩耗性に優れながら、柔らかく衝撃吸収性に優れた、バレー、バスケット、ラグビー、アメリカンフットボール、ハンドボール等の球技ボールに適したボール用表皮材に関する。
【0002】
【従来の技術】
球技用ボールの表皮材としては、古くから天然皮革が用いられてきたが、近年取り扱いの容易さなどから繊維と高分子弾性体からなるいわゆる人工皮革が広く用いられるようになってきている。このような人工皮革としては、例えば特許文献1などには繊維絡合体と該絡合空間に存在する多孔質弾性体、および多孔質基体層とその表面に形成された多孔質表面層からなるボール用皮革様シートが開示されている。
【0003】
しかし、人工皮革は、繊維とそれに接着した高分子弾性体から形成されているために、衝撃吸収力が弱いという問題があり、特に衝撃吸収性と耐摩耗性が両立したボール用人工皮革は得られておらず、バレー、バスケット、ラグビー、アメリカンフットボールなどの手で扱うことが多い球技に最適な、ボールの受け渡しの際の衝撃力の減少に優れたボール用の人工皮革表皮材が求められていた。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−328465号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、これら従来の表皮材では持ちえなかった、耐摩耗性に優れながら、柔らかく衝撃吸収性に優れた、バレー、バスケット、ラグビー、アメリカンフットボール、ハンドボール等の球技ボールに適したボール用表皮材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のボール用表皮材は、基体層表面に多孔質高分子弾性体からなるコート層と高分子弾性体からなる被覆層とが積層されたシート状物からなるボール用表皮材において、該シート状物の最表面に高分子弾性体からなる被覆層が存在し、40%圧縮応力が0.4〜2.2kg/cmあり、表面に高低差0.1mm以上の凹凸が存在し、凸部頂上部と凹部谷底部の間の側面部には1000個/cm 以上の孔が存在することを特徴とする。
【0007】
さらには、被覆層を構成する高分子弾性体の100%伸長応力が30〜150kg/cm2であること、被覆層が2層以上の複層構造からなり、被覆層の表面側の層がグリッピー向上剤を含むこと、表面に1000個/cm2以上の孔が存在することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のボール用表皮材は、基体層の表面に多孔高分子弾性体からなる表皮層を有するコート層が積層されたシート状物からなるものである。
【0009】
基体層としては、繊維質基材と高分子弾性体からなるシートであることが好ましい。ここで繊維質基材に用いられる繊維としては、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの再生繊維、あるいは天然繊維などの単独または混合した繊維を挙げることができる。さらに好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド繊維や、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維を挙げることができる。
【0010】
そしてこの繊維質基材は、このような繊維をカード、ウェバー、レーヤー、ニードルパンチングなど公知の手段で作成した絡合繊維不織布が好ましく、特に0.2dtex以下の極細繊維から成るものが好ましい。そのような極細繊維を得る方法としては、例えば溶剤溶解性の異なる2成分以上の繊維形成性高分子重合体からなる複合繊維または混合紡糸繊維を作成し、絡合繊維不織布を作成し、1成分を抽出除去して極細繊維絡合繊維質基材とすることができる。
【0011】
また、衝撃吸収性を高めるためには繊維質基材の密度が低いことが好ましく、見かけ密度が0.09〜0.14g/cm3、さらには0.1〜0.12g/cm3であることが好ましい。
【0012】
このとき繊維質基材とともに基体層に好適に用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタンエラストマー、ポリウレエタンウレアエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリエステルエラストマー、合成ゴムなどを挙げることが出来るが中でもポリウレタン系エラストマーが好ましい。衝撃吸収性を高めるためには高分子弾性体の100%伸長応力が80〜100kg/cm2であることが好ましい。さらには基体層の高分子弾性体は多孔質であることが好ましく、DMF溶解性の湿式凝固用ポリウレタンなどが好ましく用いられる。
【0013】
また、基体層の高分子弾性体の繊維質基材中の繊維に対する比率は、高分子弾性体/繊維(以下R/Fとする)が20/100〜40/100の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明は、このような基体層の表面にコート層を積層したボール用表皮材であるが、コート層としても高分子弾性体が好ましく用いられ、基体層で用いられるものと同じく、ポリウレタンエラストマー、ポリウレエタンウレアエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリエステルエラストマー、合成ゴムなどを挙げることが出来るが中でもポリウレタン系エラストマーが好ましい。表皮層の高分子弾性体の100%伸長応力も80〜100kg/cm2であることが好ましい。
【0015】
コート層や基体層に好ましく用いられるポリウレタン系エラストマーの具体例としては、分子量800〜4000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等の単独又は混合ジオ−ルと、ジフェニルメタン4,4’ジイソシアネートを主とする有機ジイソシアネート、及び低分子ジオール、ジアミン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体などからなる鎖伸長剤とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0016】
本発明では、高分子弾性体からなるコート層は多孔質である必要がある。さらには、コート層に表面スキン層が薄く存在し、断面を見た場合にその表面側に頂点部を向けた円錐状多孔構造をとるものが好ましい。さらにはコート層は長径が10〜200μm、好ましくは30〜100μmの縦穴状構造を有するものであることが好ましい。さらには本発明の表皮材のコート層、基材層の高分子弾性体含浸部は連続微多孔構造であることが好ましい。このような多孔質をとることにより、強度がありながらより柔軟なシートとなり、さらには通気、透湿性を付与することができる。
【0017】
このような本発明に用いられる基体層の表面にコート層を有するシートは、繊維質基材に高分子弾性体を処理して得ることができ、例えば繊維質基材に高分子弾性体の有機溶剤の溶液を含浸し、さらにその表面に高分子弾性体の溶液を被覆した後に凝固させることによって得ることができる。特にこの時の凝固方法としては、高分子弾性体を多孔質状に凝固させる方法を用いることが好ましく、そのような方法としては、例えば繊維質基材に高分子弾性体の有機溶剤の溶液を含浸及び/又は被覆した後に、高分子弾性体の非溶剤中に浸漬し高分子弾性体を凝固させる湿式凝固法や、あるいは高分子弾性体の有機溶剤溶液に、高分子弾性体の非溶剤を混合した乳濁液を作成し、その後溶剤を蒸発除去する特殊乾式凝固方法などが挙げられる。
【0018】
さらにコート層を円錐状多孔構造とするためには特に湿式凝固法を採用することが好ましい。その際には、湿式凝固させる高分子弾性体の溶剤溶液中に多孔調整剤としてアニオン系、又はノニオン系、カチオン系の親水基を持つ界面活性剤を添加することが有効である。界面活性剤としては、スルホン酸ナトリウムジアルキルサクシネート、ポリオキシエチレン変性シリコン、ポリオキシエチレン変性アルキルフェニル等が好ましく挙げられる。
【0019】
本発明のボール用表皮材はその最表面に高分子弾性体からなる被覆層が存在することが必要である。ここで最表面とは、ボールを把持したときに手にふれる再表層のことをさし、凹凸が存在する場合にはその凸部頂上のみに被覆層が存在することで足りる。被覆層の厚さとしては1μm以上が好ましく、さらには2〜20μm、最も好ましくは3〜10μmであることが好ましい。厚さが1μm未満では耐摩耗性が十分でない傾向にあり、厚さが厚すぎる場合には吸水性に必要な開孔が減少し、湿潤時のグリッピー性が低下する傾向にある。さらに被覆層は充実層であることが好ましく、より耐摩耗性を向上させることができる。この充実層には耐摩耗性を満足すれば、透湿性などを満足するために微小な開口部が存在することはかえって好ましいことである。
【0020】
またここで用いる高分子弾性体としてはその100%伸長応力が30〜150kg/cm2であることが好ましい。例えばこのような高分子弾性体としてはポリウレタンエラストマーであることが最適である。被覆層の高分子弾性体の100%伸長応力が30未満ではモジュラスが低く、耐摩耗性が不十分な傾向にあり、一方150kg/cm2を超える場合、耐摩耗性は優れるもののグリッピー性低下する傾向にある。さらに好ましくは被覆層の100%伸長応力は40〜100kg/cm2であり、最も好ましくは60〜80kg/cm2であることである。
【0021】
さらには、本発明のボール用表皮材は、その被覆層が2層以上の複層構造からなることが好ましい。この場合、そのコート層側の層の高分子弾性体の強度が高く、表面側の層が摩擦係数が高い成分を含むことが好ましい。
【0022】
被覆層が2層以上の場合に、コート側の層を形成する高分子弾性体としてはポリウレタン樹脂が好ましく、その具体例としては、分子量1000〜3000のポリエチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、などのポリエーテルジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのカーボネートジオール、ポリテトラメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオールなどのポリエステルジオールなどのポリマージオールの単独或いは混合ジオールとジシクロヘキシルメタン4,4’ジイソシアネート、3,3,5トリメチル5イソシアネートメチルシクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂環族または脂肪族ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’ジイソシアネートを主とする芳香族ジイソシアネート、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、アミノ酸ヒドラジド、3,3,5トリメチル5アミノメチルシクロヘキシルアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの低分子鎖伸長剤を反応させたポリウレタン樹脂が挙げられる。さらにそのジオール成分がポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールであることが好ましく、その場合には耐加水分解性、耐久性などが向上する。また、イソシアネート成分として、脂環族、又は脂肪族ジイソシアネートであることも好ましく、耐変色性が向上する傾向にある。このようなポリウレタン樹脂を用いる場合には、ジイソシアネート、低分子鎖伸長剤の含有量を調整することにより、100%伸長応力を容易に調整することができる。
【0023】
2層以上の場合の表皮側の層を形成する高分子弾性体としては、前述のコート層側の高分子弾性体として挙げたポリウレタンエラストマーのうち100%伸長応力が30〜150kg/cm2の低モジュラスポリウレタンエラストマーが好ましく、さらには40〜120kg/cm2であることが好ましい。100%伸長応力が小さい場合には、グリッピー性は向上するが耐摩耗性が低下する傾向にあり、逆に100%伸長応力が大きい場合には、耐摩耗性は向上するがグリッピー性が低下する傾向にある。
【0024】
さらには、表皮側の層にはグリッピー向上剤を含むものであることが好ましい。本発明で用いられるグリッピー向上剤としては、ロジン樹脂や液状ゴムなどが挙げられ、単独または混合して用いることができる。なかでも液状ゴムである分子量1000〜4000の低分子量合成ゴムが好ましく、低分子量ポリブタジエン、低分子量アクリロニトリル・ブタジエン共重合物、低分子量ポリジシクロペンタジエンなどが特に好ましい。また、グリッピー性向上剤を含む層におけるグリッピー向上剤の含有量は、高分子弾性体固形分100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、さらには10部〜85部、最も好ましくは20部〜70部である。添加量は要求される触感、グリッピー性のレベルで最適量を決める必要があるが、添加量が多すぎる場合には被膜層の強度低下、耐摩耗性の不足などを生じる傾向にある。またこの表皮側の層にシリカ等の艶調整剤、着色顔料、安定剤をブレンドすることも好ましく、表面のつやなどの質感を調整することができる。
【0025】
本発明のボール用表皮材は、該シート状物の40%圧縮応力が0.4〜2.2kg/cm2であることが必要である。40%圧縮強力が0.4kg/cm2未満では、ボールにしたときの弾性の減衰が大きく、跳ね返りが小さすぎ好ましくない。2.2kg/cm2より大きい場合にはボール受け渡しの際の衝撃力が強く好ましくない。圧縮応力がこのような範囲のボール用表皮材は、上記のように基体層、コート層、被覆層を調整することによって得ることができる。また、本発明のボール用表皮材の厚さは0.4〜4mmであることが、さらには0.5〜2mmであることが好ましい。厚さが厚いとボール用のボディーの反撥性が少なくなり、薄いと強度が不足する。
【0026】
このような本発明のボール用表皮材は、耐衝撃吸収性が大きく、手で扱う用途に特に適したものであるが、さらには手の汗などの吸収性を上げるために、表面に1000個/cm2以上の孔が存在することが好ましい。
【0027】
このような表面の孔は、例えば、表皮層の多孔高分子弾性体の溶剤を含有する有機溶剤でグラビア処理することによって得ることができる。より具体的には被覆層を形成する高分子弾性体の溶剤を含有する有機溶剤を50〜200メッシュ好ましくは70〜100メッシュのグラビアロールを用いて被覆層に塗布して被覆層のスキン層を溶解して開孔する方法である。このような方法を取ることにより表皮表面にあらかじめ開孔部を形成できる。
【0028】
さらに、特に手でボールを把持して扱う、アメリカンフットボールやハンドボールに用いる場合には、その表面に高低差0.1mm以上の凹凸が存在し、該凹凸の凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%の割合で存在することが好ましい。さらにはその高低差は、0.15〜1.2mmであることが好ましく、0.2〜1.0mmであることがもっとも好ましい。また、凸部頂上部の面積の合計が表皮材の面積に占める割合は20〜70%、さらには30〜60%であることが好ましい。ここで表皮材のシート面積とはシート状物自体の面積であるシート状物を表面側から見た時の投影面積をさし、表面に存在する凹凸を考慮した表面積とは異なるものである。ここで頂上部とは、表皮材の側面から凹凸を観察したときに、凸部頂上と谷底の距離の、頂上から1/10の部分を頂上部とする。このように凹凸部を有することにより、グリッピー性と耐久性が高い次元で達成される。
【0029】
さらに凹凸を有する表皮材では、グリッピー性を増加させるために凸部が独立した凸部から形成されていることが好ましい。独立した凸部の各頂上部の平均面積としては0.5〜7mm2であることが好ましく、さらには1.5〜4.0mm2であることが好ましい。またその個数としては1cm2当たり5〜100個程度であることが好ましい。さらには10〜60個/cm2であることが好ましい。
【0030】
独立した凸部の形状としては、耐久性の面などから特に円錐台形状であることが好ましく、さらには円錐台形状凸部の頂上部の直径の大きさは0.8〜3.0mm、好ましくは1.2〜2.5mmであることが好ましい。
【0031】
さらに、該凸部頂上部と凹部谷底部の間の側面部には1000個/cm2以上の孔が存在することが好ましい。さらには2000個/cm2以上の孔が存在することが好ましく、もっとも好ましくは5000個/cm2以上であることが好ましい。また耐久性の観点などからは10万個/cm2以下であることが好ましい。また孔の直径は0.5〜50μmであることが好ましい。このような凹凸を有するボール用表皮材では、側面部に多数の孔が存在することにより、耐久性を低下させずに湿潤時のグリッピー性を向上させることができる。
【0032】
ここで凸部頂上部、凹部谷底部、その間の側面部とは、表皮材の側面から凹凸を観察したときに、凸部頂上と凹部谷底の高低差の、頂上から1/10の部分を頂上部、谷底から2/10の部分を谷底部、その間の頂上から1/10〜8/10の部分を側面部とする。
【0033】
さらに凹凸を有するボール用表皮材では、側面部以外にも開孔が存在していることが好ましいが、凹凸側面部の孔の個数が凸部頂上部の孔の個数よりも多いことが好ましく、さらには頂上部の孔の個数が側面部の80%以下、もっとも好ましくは60%以下であることが好ましい。凹部の谷底部にも孔が存在することが好ましく、シート面積あたりの開孔部の合計は、2000個/cm2以上の孔が存在することが好ましい。また耐久性等の観点からは、10万個/cm2以下であることが好ましい。このような開孔部が存在することにより、湿潤時にその表面の水膜が吸収され、湿潤時のグリッピー性を向上させることができる。
【0034】
また、凸部が独立して存在している場合には、本発明のボール用表皮材は、その表面にある凸部一つあたりの、頂上部と谷底部を除く側面部に0.5〜50μmの孔が50個以上存在するものであることが好ましい。また、耐防汚性などの観点からは5000個以下であることが好ましい。
【0035】
さらにこのような凹凸を有するボール用表皮材では、その側面部に開孔している孔が表皮材の内部に連続孔として通じていることが好ましく、側面部のなかでも頂上部に近いショルダー部分の孔の個数が多いことが好ましい。
【0036】
このような凹凸を有するボール用表皮材は、例えば次のようなボール用表皮材の製造方法によって得ることができる。すなわち、基体層の表面に多孔高分子弾性体からなるコート層が積層されたシートを、0.1mm以上の凹凸部を有する金型でエンボスし、凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%の割合で存在するシートとし、次いで凸部頂上部に高分子弾性体からなる被覆層を塗布する方法である。さらには金型の凹凸部の高低差としては0.2〜1.5mmであることが、もっとも好ましくは0.3〜1.0mmであることが好ましい。
【0037】
0.1mm以上の凹凸部を有する金型でエンボスすることにより、その凹凸の斜面となる側面の部分が伸ばされることにより、その表皮層の表面に孔を開けることができる。さらにはその金型は、独立した凹部を有することが好ましく、さらには円錐台形状凸部と逆の雌型金型であることが好ましい。雌型金型によってシートの表面に凹凸部を形成させることが出来る。凸部の頂上部の大きさは、金型の形状を調整することで、行うことが出来、凹凸部の高さは、金型の深さとエンボス加工時の圧力、温度、時間を調整して行うことが出来る。
【0038】
さらには、そのエンボスの条件は、コート層の高分子弾性体の軟化温度マイナス40℃〜プラス20℃であることが好ましく、さらにはマイナス20℃〜プラス5℃の温度範囲で高分子弾性体被覆層をプレスすることが好ましい。
【0039】
また、凹凸を有するボール用表皮材の頂上部に高分子弾性体からなる被覆層を塗布する方法は、前記の被覆層を塗布する条件と基本的には同一だが、円錐台形等の形状の凸部に形成させた開孔を閉塞しないように塗布することが必要であり、このためには塗布溶液の濃度、溶液粘度を低めとし、塗布に使用するグラビアロールメッシュは細かいものを使用し1回当たりの塗布量を低めに抑えることが好ましい。すなわち被膜層を構成する高分子弾性体の低沸点の有機溶剤溶液を調整し、エンボス加工した高分子弾性体被膜層の凸部の頂上部に塗布し、乾熱乾燥することが好ましい。さらにはシート厚さの70〜98%のクリアランスでグラビア塗布する方法であることが好ましい。このような条件で塗布することにより、頂上部のみ高分子弾性体を塗布し、側面や谷部には高分子弾性体を塗布しないことが可能である。このようにして高分子弾性体を凸部の頂上部に塗布することにより、表面耐磨耗性を向上させ、汚れをつきにくい表皮材とすることが可能となった。
【0040】
また、被覆層が複数の層からなる場合には、これらの樹脂の低沸点有機溶剤溶液をグラビアロール、スプレー法などにより順次塗布することができるが、ここで表面に大きな凹凸が発生しているボール用表皮材の場合、その側面に存在する開孔部は、頂上部、さらに谷部と比べても閉塞されにくい。
【0041】
さらには、凹凸を有するボール用表皮材でも、凹凸を有さないボール用表皮材と同様にエンボス前にあらかじめ、表皮層の多孔高分子弾性体の溶剤を含有する有機溶剤でグラビア処理することも好ましい。このような方法を取ることにより表皮表面にあらかじめ開孔部を形成できるため、より開孔部の数を増加することができる。ただし有機溶剤をエンボス前に塗布する際に、高分子弾性体を含む溶液を塗布しないことが好ましい。塗布した高分子弾性体の層が、本発明のエンボスによる開孔部の形成を阻害し、また塗布した高分子弾性体がエンボスの熱によって剥離する問題が生じるためである。
【0042】
本発明のボール用表皮材は、その表面の湿潤摩擦係数が1.5〜4.5であることが好ましい。さらには1.8〜4.0、もっと好ましくは2.0〜3.5、特に好ましくは2.3〜3.0であることが好ましい。湿潤摩擦係数が低い場合には滑りやすくグリッピー性が低下する傾向にあり、高い場合には粘着性が強く、触感や防汚性が低下する傾向にある。また乾摩擦係数は、1.5〜4.5であることが好ましく、さらには湿潤摩擦係数と同等の範囲であることが好ましい。このような範囲のボール用表皮材を得るためには、前述のように被覆層、及び表面の多孔の開口部の数を調整する。
【0043】
また、本発明の表皮材の表面吸水度を吸水時間で表示すると、後述する方法で測定した吸水度は500秒以下であることが好ましい。さらに好ましい吸水時間は300秒以下、最も好ましくは200秒以下である。このように吸水時間の短い表皮材は、表面孔より水膜を吸収し表面に水膜を残さないために、汗に濡れた場合でもボールのグリッピー性が低下しない。
【0044】
また、さらには表面の水との接触角は90度以下であることが好ましく、そのようにするためには開孔部表面及び高分子弾性体被覆層を親水性にすれば良い。このために高分子弾性体からなる被覆層の表面及び内部に親水性の界面活性をしめす物質を存在させることが好ましい。例えば、アニオン界面活性剤、HLBが10以上のノニオン界面活性剤などを添加することが挙げられる。または、被覆層がポリウレタンエラストマーの場合、ポリエーテルジオール成分としてポリオキシエチレングリコールをセグメントとして有する、親水性ポリウレタンエラストマーであることも好ましい。
【0045】
このようにして得られた本発明のボール用表皮材は、圧力空気を入れ膨らませたボディーに張り合わせることにより球技用ボールとすることが出来、バレーボール、バスケットボール、ラグビーボール、アメリカンフットボール、ハンドボール、等に好適に用いられる。
【0046】
【実施例】
以下本発明を実施例で詳細に説明する。なお本発明は実施例の範囲に制限されるものではなく、また特に断りのない限り部または%は、重量部、重量%をしめす。
また本発明の測定項目は下記により測定したものである。
【0047】
(1)伸長応力
JIS K 6301 2号型ダンベル試験片の厚さ0.1mmのフィルムを試料とし、恒速伸長試験機で伸長速度100%/minの条件で測定した。
【0048】
(2)乾摩擦係数
温度23℃、相対湿度60%の条件で24時間調湿した、表面に凸部を有する表皮材(幅 2.5cm、 長さ 5cm)を、ステンレス平滑板に表面を接触させて置き、500gの荷重をかけ、速度2m/minで動かしたときの摩擦力(F)を測定し、乾摩擦係数μd=F/500 をもとめた。なお、摩擦力(F)は試験片を動かしている時の平均値である。
【0049】
(3)湿潤摩擦係数
表面に凸部を有する表皮材(幅 2.5cm、長さ 5cm)の試験片を23℃の水に24時間つけた後、表面付着水をテイッシュペーパーでふき取り、ステンレス平滑板に表面を接触させて置き、500gの荷重をかけ、速度2m/minで動かしたときの摩擦力(F)(単位;g)を測定し、湿潤摩擦係数μw=F/500 を求めた。なお、摩擦力(F)は試験片を動かしている時の平均値である。
【0050】
(4)耐摩耗性
JIS L1079 6.15.3 C法(テーバー磨耗試験)に準拠して測定する。磨耗輪には280メッシュのサンドペーパーを装着したものを用い、加重は500gとし、100回磨耗させた後の試験片の表面損傷状態を、下記ランクで評価した。
5級:色変化も少なく目立たない。
4級:表面被覆層の損傷のみで外観上実用的には問題ない。
3級:多孔質コート層の一部が損傷している。(実用的には許容限界)
2級:多孔質コート層がかなり損傷し、一部基材層の繊維が露出。
1級:基材層もかなり損傷し、繊維等が露出。
【0051】
(5)40%圧縮応力
圧縮弾性試験機を用いて試験用シート(10cm×10cm)の厚さ方向に荷重をかけその厚さを測定する。荷重100g/cm2の時の厚さを基準とし、厚さが40%減少した時の荷重を読みとり、1cm2当たりの荷重に変換し40%圧縮応力とする。
【0052】
(6)凹凸部の頂上部、谷底部、側面部の孔数及びサイズ
表皮材の表面に存在する凸部頂上部、凹部谷底部、その間の側面部とは、表皮材の側面から凹凸を観察したときに、凸部頂上と凹部谷底の高低差の、頂上から1/10の部分を頂上部、谷底から2/10の部分を谷底部、その間の頂上から1/10〜8/10の部分を側面部とする。
【0053】
実施例では下記のようにして、各凹凸における孔数とサイズを測定し、その平均値に1cm2当たりの凸部の数を乗じて計算した。
【0054】
凸部頂上部の孔数とサイズは、走査型電子顕微鏡により200倍で写真撮影し、異なる5点の凸部の頂上部について孔数、孔サイズを測定し0.5〜50μmの孔数とその平均値を求め表示した。
【0055】
谷底部の孔数とサイズは、表皮材の谷底部に焦点を合わせ、走査型顕微鏡により200倍で写真撮影し、孔数、孔サイズを測定し0.5〜50μmの孔数とその平均値を求め、1cm2当たりに換算して表示した。また独立した凸部を有する場合は、異なる5点の凸部周辺で測定し平均値を出した。
【0056】
側面部の孔数とサイズの測定は、側面は立体的な凸部の側面となるので焦点がぼけるのを防ぐために、凸部を4等分又はそれ以上に縦割りにカットし、それぞれの凸部の側表面を、走査型電子顕微鏡により200倍で写真撮影したものを用いた。異なる5点の凸部について、孔数、孔サイズを測定し0.5〜50μmの孔数とその平均値を求め表示した。
【0057】
(7)表皮材全層の厚さ
加重150g/cm2のスプリングダイアルゲージで測定した。
【0058】
(8)被覆層の平均厚さ
被覆層部分を走査型電子顕微鏡を使用し、2500〜3000倍で写真撮影し被覆層の厚さを計測する。複数の層が判別できる場合はそれぞれの厚さを測定した。
【0059】
(9)汚れにくさ
表皮材を用いて作成したバスケットボールを、10ゲームの試合に使用し、その後、ボールの汚れ状態を下記により評価した。
5級:汚れが無く良好。
4級:若干色差があるが問題ない。
3級:汚れがあるが実用上許容範囲である。
2級:汚れやや大きい。
1級:汚れ大、拭いても落ちにくい。
【0060】
(10)グリッピー性、触感
表皮材を用いて作成したバスケットボールを、乾燥状態、水に濡らした湿潤状態にし、選手にグリッピー性を評価させ、5段階にて評価した。5級が、非常に良く、3級が、実用許容範囲で、1級が、不良である。
【0061】
(11)表面吸水度
表皮材の凸部頂上部に、高さ10mmの距離より、ビュウレットを用いて1滴(0.02cc)を滴下し、滴下直後から吸水するまでの時間を測定した。
【0062】
参考例1]
ナイロン6と低密度ポリエチレンを50/50で混合、エクストルダーで溶融、混合し290℃で混合紡糸し、延伸、油剤を処理しカットし5.5dtex、51mmの繊維を得た。これをカード、クロスラッパー、ニードルロッカー、カレンダーの工程を通し、重さ400g/m、厚さ1.6mm、見掛け密度0.25g/cmの絡合繊維質基材を得た。
【0063】
一方、多孔凝固用の高分子弾性体として、分子量2050のポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量1950のポリジエチレンアジペートとの50/50混合ジオール、ジフェニルメタン4,4’ジイソシアネート、エチレングリコールをジメチルホルムアミドを溶剤として反応させた100%伸長応力60kg/cm2、熱軟化温度180℃のポリウレタンエラストマー溶液(固形分:20%)を得た。
【0064】
このポリウレタンエラストマー溶液100部、ジメチルホルムアミド150部、多孔調整剤(ポリオキシエチレン変性シリコン:FG−10 松本油脂製薬(株)製)0.5部、茶色顔料 0.5部の溶液(PU濃度:8%)を混合し、基材含浸用の高分子弾性体溶液(含浸液)とした。
【0065】
また、前述のポリウレタンエラストマー溶液100部、ジメチルホルムアミド54部、多孔調整剤(ポリオキシエチレン変性シリコン:FG−10 松本油脂製薬(株)製)0.5部、低分子量セルロースプロピオネート:FG−220松本油脂製薬(株)0.5部)、茶色顔料0.5部の溶液(PU濃度:13%)を混合し、コート層用の高分子弾性体溶液とした。
【0066】
ついで繊維質基材を基材含浸用の含浸液に浸漬し、基材厚さの90%でスクイズした後、基材の圧縮が回復する前にコート層用の高分子弾性体溶液を固形分で180g/m2となるように塗布し、10%のジメチルホルムアミドを含有する40℃の水中で高分子弾性体を湿式凝固させ、水洗、乾燥を行った。得られたシートを90℃の熱トルエン中で圧縮、緩和を繰り返し、繊維中のポリエチレン成分を抽出除去し、0.003dtexの極細繊維を繊維質基材とする高分子弾性体コート層を有するシート状物を作成した。コート層は、表面から長さ50μmの涙滴状多孔構造を有していた。
【0067】
このコート層を有するシート状物の表面に、110メッシュのグラビアロールを用いて、ジメチルホルムアミド:メチルエチルケトン=7:3の混合溶剤を塗布し、表面に存在する高分子弾性体のスキン層を溶解、開孔させ、平滑開孔シートを得た。この平滑なシートの表面には、平均値15μmの孔が1800個/cm2存在していた。さらにこの表面に血筋柄のエンボスロールを用いて140℃でエンボスを行い、スムーズな外観のシート状物とした。
【0068】
次にポリオキシエチレングリコール(分子量 2020)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量 2000)、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(分子量 1980)をモル比で2:4:4の割合で混合したポリマージオールと、3,3,5トリメチル5イソシアネートメチルシクロヘキシルイソシアネートとを、イソシアネート過剰で反応させプレポリマーを作成し、ジメチルホルムアミドに溶解させ濃度40%とした後、3,3,5トリメチル5アミノメチルシクロヘキシルアミンのトルエン溶液を滴下し鎖伸長反応させ、濃度30%、25℃で1000ポイズの粘度の被覆層(1)用のポリウレタンエラストマーを得た。このものの溶剤を除去し作成した厚さ0.15mmフィルムで測定した100%伸長応力は110kg/cm2であった。
【0069】
このポリウレタンエラストマー 100部、メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール;ジメチルホルムアミド=5:4:1の混合溶剤 200部、茶色顔料 1部を混合し、濃度10.3%、粘度140センチポイズ(25℃)の被覆層用の塗布液を作成した。
【0070】
先のスムーズな外観のシート状物に、この被覆層用の塗布液を200メッシュのグラビアロールを装着したグラビア塗装機で、グラビアロールの塗布間隙をシートの厚さの90%に調整して塗布し、被覆層(1)を有するシート状物を得た。
【0071】
次に、別の被覆層用の高分子弾性体溶液として、ポリオキシエチレングリコール(分子量 2020)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(分子量 1980)をモル比で3:3:4の割合で混合したポリマージオールと、3,3,5トリメチル5イソシアネートメチルシクロヘキシルイソシアネートとを、イソシアネート過剰で反応させプレポリマーを作成し、ジメチルホルムアミドに溶解させ濃度40%とした後、さらに3,3,5トリメチル5アミノメチルシクロヘキシルアミンのトルエン溶液を滴下し鎖伸長反応し、濃度30%、25℃で1000ポイズの粘度の被覆層(2)用のポリウレタンエラストマーを得た。このものの溶剤を除去して作成した厚さ0.15mmフィルムで測定した100%伸長応力は100kg/cm2であった。
【0072】
このポリウレタンエラストマー 100部、メチルエチルケトン:イソプロピルアルコール;ジメチルホルムアミド=5:4:1の混合溶剤 343部、茶色顔料 0.6部、シリカ 0.3部、分子量2000のポリブタジエン15部、を混合溶解し、濃度 10.8%、粘度 150センチポイズの被覆層(2)用の塗布液を作成した。
【0073】
先の被覆層(1)を有するシート状物に、この被覆層用の塗布液を200メッシュのグラビアロールを装着したグラビア塗装機で、グラビアロールの塗布間隙をシートの厚さの90%に調整して塗布し、被覆層(1)と(2)の複数の被覆層を有するシート状の表皮材を得た。
【0074】
このものの40%圧縮応力は1.0kg/cm2であった。また、この平滑なシートの表面には、平均値5.2μmの孔が680個/cm2存在しており、被覆層(1)と(2)の厚さの合計は3.0μmであった。得られた表皮材の特性を測定した結果を表1に示した。
【0075】
また空気を入れ膨らましたバレーボール用ボディーに、得られた表皮材を貼りボールとしてテストしたところ、ボール受け渡し時の衝撃が少なく、触感がよくかつ汗がついても滑り難く表面の耐摩耗性にも優れていた。
【0076】
[比較例1]
参考例1の被覆層(1)と被覆層(2)を有さない以外は、参考例1と同様に行いスムーズな外観のシート状物を得た。このものは表面の耐磨耗性が劣っており、汚れやすく球技用ボール表皮材としては不十分であった。シート状物の測定結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
参考例1の基材含浸用の100%伸長応力60kg/cmのポリウレタンエラストマーを用いた含浸液(PU濃度:8%)に変えて、100%伸長応力90kg/cmのポリウレタンエラストマーを用いた含浸液(固型分:13%)を用い、PU濃度13%のコート層用の高分子弾性体溶液に変えてPU濃度15%のものを用いた以外は参考例1と同様にしてシート状物を作成した。
【0078】
得られた表皮材は40%圧縮応力が2.7kg/cm2と高く、ソフト性にかけていた。
【0079】
参考例2]
参考例1で使用した被覆層(2)用の塗布液に変え、この被覆層(2)用の塗布液中のポリブタジエンの代わりに、分子量3000の低分子量ポリシクロペンタジエン樹脂をポリウレタンエラストマー100部に対し60部混合溶解させた塗布液を用いた以外は、参考例1と同様の条件でシート状の表皮材を作成した。
【0080】
得られた表皮材の40%圧縮応力は0.92kg/cm2であった。また、この平滑なシートの表面には、平均値5.5μmの孔が700個/cm2存在しており、被覆層(1)と(2)の厚さの合計は3.2μmであった。また耐摩耗性、グリッピー性、とも良好であった。この表皮材の測定結果を表1に併せて示した。
【0081】
[実施例
参考例1と同様の繊維を用い、カード、クロスラッパー、ニードルロッカー、カレンダーの工程を通し、重さ480g/m、厚さ1.9mm、見掛け密度0.25g/cmの絡合繊維質基材を得た。
【0082】
参考例1と同じ、基材含浸用の高分子弾性体溶液(含浸液、ポリウレタンエラストマー溶液、固形分:20%)と、コート層用の高分子弾性体溶液(PU濃度:13%)を用い、参考例1と同様に、含浸、塗布、湿式凝固、ポリエチレン成分の抽出除去し、0.003dtexの極細繊維を繊維質基材とする高分子弾性体コート層を有するシート状物を作成した。コート層は、表面から長さ50μmの涙滴状多孔構造を有していた。
【0083】
得られたシート状物の表面を、エンボスロールを装着したエンボス装置でエンボスロール表面温度160℃でプレスし、独立した凸部を有するシート状物を得た。エンボスロールとしては、円錐台形状の独立した凹部を24個/cm2有し、転写した後の凸部の頂上部の最大径が1.8mm、凸部の裾部分の最大径が2.3mm、円錐台形の高さが0.6mmの形状の雌型金型を有する熱媒加熱可能なロールを作成し、使用した。
【0084】
エンボス後のシート状物は、円錐台形状凸部を持ち、その凸部の側面には1〜20μmの開孔が一つの凸部当たり平均2000コ存在していた。またその開孔は側面の凸部側のショルダー部に多い分布を示していた。
【0085】
次に実施例1と同じ100%伸長応力は110kg/cm2のポリウレタンエラストマーを同じ配合で用いた被覆層用の塗布液を作成した。
【0086】
先にエンボスした独立した凸部を有するシート状物に、この被覆層用の塗布液を200メッシュのグラビアロールを装着したグラビア塗装機で、グラビアロールの塗布間隙をシートの厚さの90%に調整して塗布し、被覆層(1)を有するシート状物を得た。この被覆層は、その頂上部のみに塗布されており、凸部の側面部に存在する開孔は閉塞されていなかった。
【0087】
次に、別の被覆層用の高分子弾性体溶液として、参考例1と同じ被覆層(2)用のポリウレタンエラストマー(100%伸長応力は100kg/cm)を参考例1と同じ配合で用いた被覆層(2)用の塗布液を作成した。
【0088】
先の被覆層(1)を有するシート状物に、この被覆層用の塗布液を200メッシュのグラビアロールを装着したグラビア塗装機で、グラビアロールの塗布間隙をシートの厚さの90%に調整して塗布し、被覆層(1)と(2)の複数の被覆層(厚さ3μm)を有するシート状の表皮材を得た。この被覆層は、その頂上部のみに塗布されており、凸部の側面部に存在する開孔は閉塞されていなかった。
【0089】
このものの40%圧縮応力は1.0kg/cm2であった。また、凸部の頂上部の直径は1.64mm、面積は2.1mm2、高さは0.32mmであった。シート面積に占める凸部の頂上部の面積の割合は50%であり、また凹凸の側面部の孔はシート面積1cm2あたりに30000個/cm2存在していた。円錐台形状凸部の山頂部と谷部には孔は存在しておらず、一つの凸部当たり側表面のみに平均2.0μmの孔が1200個存在していた。得られた表皮材の特性を測定した結果を表1に示した。
【0090】
[実施例
参考例1と同様の繊維を用い、実施例の条件でカード、クロスラッパー、ニードルロッカー、カレンダーの工程を通し、実施例と同じ重さ480g/m、厚さ1.9mm、見掛け密度0.25g/cmの絡合繊維質基材を得、参考例1と同じ、基材含浸用の高分子弾性体溶液(含浸液、ポリウレタンエラストマー溶液、固形分:20%)と、コート層用の高分子弾性体溶液(PU濃度:13%)を用い、参考例1、実施例1と同様に、含浸、塗布、湿式凝固、ポリエチレン成分の抽出除去し、0.003dtexの極細繊維を繊維質基材とする高分子弾性体コート層を有するシート状物を作成した。コート層は、表面から長さ50μmの涙滴状多孔構造を有していた。
【0091】
得られたシート状物の表面に、参考例1と同様に110メッシュのグラビアロールを用いて、ジメチルホルムアミド:メチルエチルケトン=7:3の混合溶剤を塗布し、表面に存在する高分子弾性体のスキン層を溶解、開孔させ、平滑開孔シートを得た。この平滑なシートの表面には、平均値15μmの孔が1600個/cm存在していた。
【0092】
次に、この平滑開孔シートを、実施例と同じエンボス装置を使用し同条件でエンボスを行い、円錐台形状の独立した凸部を有するシート状物とした。このシート状物の凸部の側表面の孔は引き伸ばされ、頂上部、谷部の孔は若干小さくなっているが残存していた。
【0093】
次に参考例1で使用した被覆層(2)用の塗布液の代わりに、100%伸長応力が60kg/cmのポリカーボネート:ヘキサメチレンジイソシアネート:イソホロンジアミンからなるポリウレタンエラストマーを主とし、そのポリウレタンエラストマー固型分重量に対して15%の液状ゴム(低分子量アクリロニトリル・ブタジエン共重合物)を混合し、メチルエチルケトン:トルエン=3:7の混合溶剤に溶解させた、濃度10%、粘度150センチポイズ(25℃)の溶液を塗布液とし、参考例1と同様の条件でシート状の表皮材を作成した。
【0094】
さらにこの表皮材をソジウムジオクチルスルホサクシネートの1.0%水溶液に浸漬、スクイズして乾燥させた。このものの40%圧縮応力は0.9kg/cm2であり、被覆層(1)と(2)の厚さの合計は4.5μmであった。得られた表皮材は、吸水度が180秒で吸水しやすく、触感、グリッピー性も良く、実使用での表面耐摩耗性にも優れていた。このものの凸部の頂上部の高さは0.30mmであった。シート面積に占める凸部の頂上部の面積の割合は50%であり、また凹凸の側面部の孔はシート面積1cm2あたりに11000個/cm2存在していた。一つの凸部当たり円錐台形状凸部の山頂部には平均3.0μmの孔が250個、側表面には平均5.5μmの孔が460個、谷部には平均2μmの孔が130個存在していた。この表皮材の測定結果を表1に併せて示した。
【0095】
また空気を入れ膨らましたバスケットボール用ボディーに、得られた表皮材を貼りボールとしてテストしたところ、ボール受け渡し時の衝撃が少なく、触感がよくかつ実施例1のシート状物よりもさらに汗がついても滑り難く、表面の耐摩耗性にも優れていた。
【0096】
【表1】
Figure 0004259930
【0097】
【発明の効果】
耐摩耗性に優れながら、柔らかく衝撃吸収性に優れた、バレー、バスケット、ラグビー、アメリカンフットボール、ハンドボール等の球技ボールに適したボール用表皮材を提供することができる。

Claims (9)

  1. 基体層表面に多孔質高分子弾性体からなるコート層と高分子弾性体からなる被覆層とが積層されたシート状物からなるボール用表皮材において、該シート状物の最表面に高分子弾性体からなる被覆層が存在し、40%圧縮応力が0.4〜2.2kg/cmあり、表面に高低差0.1mm以上の凹凸が存在し、凸部頂上部と凹部谷底部の間の側面部には1000個/cm 以上の孔が存在することを特徴とするボール用表皮材。
  2. 被覆層を構成する高分子弾性体の100%伸長応力が30〜150kg/cmである請求項1記載のボール用表皮材。
  3. 被覆層2層以上の複層構造からなり、被覆層の表面側の層がロジン樹脂または液状ゴムからなるグリッピー向上剤を含む請求項1または2記載のボール用表皮材。
  4. グリッピー向上剤が、分子量1000〜4000の低分子量合成ゴムである請求項3記載のボール用表皮材。
  5. 表面に1000個/cm以上の孔が存在する請求項1〜4のいずれか1項記載のボール用表皮材。
  6. 表面に存する凹凸の凸部頂上部の合計面積がシート面積の20〜70%の割合で存在する請求項1〜5のいずれか1項記載のボール用表皮材。
  7. 湿潤摩擦係数が1.5〜4.5である請求項1〜6のいずれか1項記載のボール用表皮材。
  8. 表面吸水度が500秒以下である請求項1〜7のいずれか1項記載のボール用表皮材。
  9. ボール用ボディーに請求項1〜8のいずれか1項記載のボール用表皮材を貼り付けることを特徴とするボール。
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