JP4259215B2 - 銅線の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶解炉からの溶銅を、ベルトキャスター式連続鋳造機を用いて、連続して低酸素の銅線に成形する銅線の製造方法及び製造装置に関し、とくに、電子ワイヤ、リードワイヤ、巻線、線状電気部品などの製造に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、低酸素銅線の製造方法には、銅の種線を溶融金属槽に通過させ、種線の外周に溶融金属を付着させて棒状銅材を得、これを圧延して線にすることにより、溶銅から低酸素銅線を一連の生産ラインで連続製造するディップフォーミング法や、この他アップワード法などがある。また、低酸素銅線の製造方法には、ビレットの押出し加工による製造方法もある。
これらの製造方法は、装置全体を体系的に制御、管理しなければならず、高価な設備を要するので、銅線の製造コストが高いという問題があった。
【0003】
さらに、低酸素銅線の製造方法には、例えば特許文献1や特許文献2に開示されるベルトキャスター方式の連続鋳造機を用いたものがある。この製造方法に用いられるベルトキャスター式連続鋳造機は、その主要部が、周回移動するベルトとこの無端ベルトに円周の一部を接触させて回転する鋳造輪とから構成されたものであって、シャフト炉などの大型の溶解炉と連続され、さらに圧延機と連結される。
これにより、溶解炉からの溶銅を連続鋳造圧延して銅線を一連の生産ラインで高速に製造することができるので、銅線の製造コストを低減させることが可能となっている。また、この製造方法では、溶銅の移送過程で還元ガス及び/または不活性ガスによる還元処理を行うことで低酸素の溶銅を得、それをベルトキャスター式連続鋳造機で鋳造銅材としてから圧延することにより、低酸素銅線を製造するようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特公昭59−6736号公報
【特許文献2】
特開昭55−126353号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうしたベルトキャスター式連続鋳造機では、溶銅の移送過程を気密に保持し、還元ガス及び/または不活性ガスでシールして脱酸した溶銅を実際に鋳造すると、鋳造された鋳造銅材にホールが生成し、この鋳造銅材の圧延時に、線表面に傷が発生して表面品質を低下させるという問題があった。
そのため、ベルトキャスター式連続鋳造機を用いて製造された低酸素銅線は、ほとんど市場に出ておらず、低酸素銅線は主に上記のディップフォーミング法などで製造されているのが現状である。
【0006】
ホールは、溶銅の凝固時に、溶銅中の水素(H)と酸素(O)との溶解度が減少するために、これらが結合して生成される水蒸気(HO)に起因する。すなわち、溶銅中で水蒸気の気泡が生成され、この気泡が、溶銅の湯面から雰囲気ガス中に抜ける前に、溶銅の冷却・凝固によりトラップされれば、鋳造銅材中にホールが形成される。
このホールの径が大きいものであると、圧延後の低酸素銅線表面に多数の傷となって表れるような、有害なホールとなってしまうのであり、とくに、ベルトキャスター式連続鋳造機では、冷却速度が高く、気泡が溶銅中から抜ける前にトラップされやすくなっているため、こうした有害なホールが生成されやすくなっている。
【0007】
ここで、溶銅中における水素と酸素との濃度は、熱力学的には次式で表される関係にある。
〔H〕〔O〕=pH2O・K ………式(A)
なお、
〔H〕 : 溶銅中の水素濃度
〔O〕 : 溶銅中の酸素濃度
H2O : 雰囲気中の水蒸気分圧
K : 平衡定数
である。
【0008】
平衡定数Kは、温度の関数であり、一定温度下では定数となるため、溶銅中の酸素濃度と水素濃度は反比例の関係となる。そのため、還元によって脱酸するほど水素濃度が高くなり、溶銅の凝固時にホールが形成されやすく、傷の多い、表面品質の悪い低酸素銅線しか製造できなくなる。
つまり、脱酸のみではなく、脱水素も行わなければ、凝固時にホールが大量に生成されることとなって、表面品質の良好な低酸素銅線を製造することができないのである。
【0009】
こうしたことから、脱酸素処理のみではなく脱水素処理をも充分に行うことにより、有害なホールの生成を抑制する方法が検討されており、具体的には、溶銅の移送過程において、不活性ガスによるバブリングや溶銅の攪拌を行うといったものである。銅の凝固温度である1083゜C程度では、水蒸気、水素との平衡から、例えば酸素濃度が10ppmの場合には水素濃度を0.2ppm以下、酸素濃度が1ppmの場合には水素濃度を0.4ppm以下としなければ、気泡が発生して鋳造銅材中にホールが生成される。
このように水素濃度を低くするための脱水素装置は、概ね大規模かつ複雑なものであり、その設置場所の確保や脱水素処理時間の確保が困難となっている。また、常時こういった製造条件を維持することも困難である。
【0010】
なお、溶銅中にリン(P)を添加することにより、リンを酸素と結合させ、酸素のもつ化学ポテンシャルを低下させることで、溶銅の凝固時に酸素と水素とを結合しにくくする、すなわちホールを生成させにくくするという方法が知られているが、リンを溶銅中に添加することによって、鋳造圧延されてできる低酸素銅線の導電率をはじめとした諸特性が変化するデメリットがあり、効果的な解決手段とはなり得ない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、溶銅の凝固時に生成される有害なホールを抑制して、表面品質の良好な低酸素銅線を得ることのできる、銅線の製造方法及び製造装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
鋳造銅材に有害なホールが発生してしまうのは、溶銅中の酸素と水素とが、溶銅の凝固時に結合して水蒸気の気泡となるためであって、これを抑制する対策として、
・溶銅中のガス成分を下げる
・溶銅中への第3成分の添加で酸素の化学ポテンシャルを下げる
・溶銅中への第3成分の添加で固溶可能な水素量を増やす
・溶銅中への第3成分の添加で結晶粒を微細化し、粒界あたりのガス成分を下げる
などが公知の方法として挙げられるが、本発明は、これらのいずれの方法とも異なり、「ベルトキャスター式連続鋳造機に供給された溶銅の凝固速度を高速化することにより、溶銅の凝固時に生成される水蒸気の気泡が粗大化する前にこれをトラップして、その後の圧延時には消失して傷とならない程に微細で無害なホールにする」という点に着目してなされたものである。
【0013】
ここで、例えば鋳造冷却水の圧力や流量などを上昇させると、溶銅の凝固速度は上がると考えられるが、実際には、凝固の極初期に形成されるシェルが、急激な冷却によって凝固収縮することで、ベルトキャスター式連続鋳造機におけるベルト及び/または鋳造輪から剥離(型離れ)し、冷却水による冷却が全く効かなくなる。そのため、溶銅の凝固速度は、全体から見れば上がるどころかむしろ下がってしまうという現象が生じるのであった。
この他、凝固速度を上げるために考えられる方法として、
・溶銅温度を下げる
・鋳造速度を下げる
・ベルトや鋳造輪の材質を変え、熱伝導率を上げる
・ベルト及び鋳造輪に塗布する離型剤(及び冷却剤)であるススの量を減らし、その膜厚を薄くする
などが挙げられるが、安全に鋳造でき、かつ割れ等がない健全な鋳造組織が得られる範囲では、上記と同様の理由で、実際には、目的とする凝固速度には至らないか全く変化が見られない。
【0014】
このような事実は、ベルトキャスター式連続鋳造機から導出された鋳造銅材を観察することで容易に確認することができる。つまり、鋳造銅材のマクロ組織は柱状晶であるが、同じ柱状晶でも、凝固速度が遅いと1つ1つの結晶が大きくなり、凝固速度が速いと1つ1つの結晶が細長くなっているのである。
上記でいくつか例示した方法では、それによって得られる鋳造銅材のマクロ組織に、大きな柱状晶しか見られず、本発明者らが探求した細長い柱状晶とは大きく異なっていた。
【0015】
ところで、一般に、ベルトキャスター式連続鋳造機におけるベルト及び鋳造輪には、アセチレン燃焼によってススを塗布するようにしている。このススは、離型剤の役割に加えて冷却剤の役割を果たすものであって、ススの付け方によって製品の品質が大きく影響され、非常に重要な工程となっている。
しかしながら、アセチレンの圧力や流量を一定にしても必ず同じようにススが付くわけではなく、例えば鋳造後にベルトや鋳造輪に残存するススの燃えかすなどにも大きく影響を受けてしまう。また、塗布するススの膜厚を均一にすることも極めて困難である。すなわち、製造条件を一定の設定値に定めることが困難であり、再現性に乏しいのである。
【0016】
本発明者らは、鋭意検討を続けた結果、ベルトキャスター式連続鋳造機におけるベルト及び鋳造輪に対して、離型剤としてのススを塗布するだけではなく、これらベルト及び鋳造輪のうちの少なくとも一方に対して、油を塗布することによって、溶銅の凝固速度を高速化できることを見出した。
【0017】
溶銅に接触することになるベルトや鋳造輪の表面に対して、油と離型剤とを塗布する、例えば油を塗布した後に離型剤としてのススを塗布すると、これらベルトや鋳造輪の表面が平滑になる。
このように、油を塗布することで、ススと無端ベルトあるいは鋳造輪との濡れ性が向上し、ススが均一に付きやすくなる。また、塗布したススの空隙に油が充填することによって、冷却を阻害する空気層をなくすことが可能となる。
すると、溶銅が凝固していく際の型離れが抑制され、しかも、溶銅に対する冷却効果を阻害していた要因である空気の層がなくなるのに加えて、溶銅が凝固していくときの核生成がしづらくなって過冷却の状態に陥るので、溶銅の冷却速度が上がるとともにその凝固速度も上がり、結果として細長い柱状晶のマクロ組織を有する鋳造銅材を得ることができる。また、油を塗布することによって、鋳造銅材の温度が下がることでも、冷却が効果的に行われて、凝固速度が上がったことが確認できる。
【0018】
このようにしてなされた本発明の銅線の製造方法は、溶銅を、ベルトとこのベルトに一部を接触させて回転する鋳造輪とを備えたベルトキャスター式連続鋳造機に供給し、このベルトキャスター式連続鋳造機から導出された鋳造銅材を圧延して、酸素濃度が10ppm以下とされた低酸素銅線を連続的に製造する銅線の製造方法であって、前記ベルト及び/または前記鋳造輪に対して、油を塗布する油塗布工程と離型剤を塗布する離型剤塗布工程とを有しており、前記油塗布工程における油の塗布量を、鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定し、前記溶湯の凝固速度を高速化して、凝固時に生成される水蒸気の気泡を微細化することを特徴とするものであり、また、本発明の銅線の製造装置は、溶銅を、ベルトとこのベルトに一部を接触させて回転する鋳造輪とを備えたベルトキャスター式連続鋳造機に供給し、このベルトキャスター式連続鋳造機から導出された鋳造銅材を圧延して、酸素濃度が10ppm以下とされた低酸素銅線を連続的に製造する銅線の製造装置であって、前記ベルト及び/または前記鋳造輪に対して、油を塗布する油塗布手段と離型剤を塗布する離型剤塗布手段とを有しており、前記油塗布手段における油の塗布量が、鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定されており、前記溶湯の凝固速度を高速化して、凝固時に生成される水蒸気の気泡を微細化することを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、上述したように、ベルトキャスター式連続鋳造機に供給された溶銅の凝固速度を高速化することが可能となっているので、この溶銅の凝固時に生成される水蒸気の気泡が粗大化する前にこれをトラップして、その後の圧延時には消失して傷とならない程に微細で無害なホールにした鋳造銅材を得ることができる。
ここで、塗布する油の量が少なすぎると、溶銅の凝固速度を上げる効果を期待できなくなるおそれがあり、一方、塗布する油の量が多すぎても、油が溶銅に接触したときに燃えてしまい、この燃焼によるまきあげによって余計にホールが残留してしまう。これらのことから、塗布する油の量は、鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定されていることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
本実施形態による銅線の製造装置10は、図1に示すように、その主要部が、溶解炉Aと、保持炉Bと、鋳造樋Cと、ベルトキャスター式連続鋳造機Dと、圧延機Eと、コイラーFとから大別構成されている。
【0021】
溶解炉Aは、還元性の雰囲気で燃焼を行い溶銅(湯)をつくるものであって、円筒形の炉本体を有する、例えばシャフト炉が好ましく用いられており、この溶解炉Aの下部には、円周方向に複数のバーナー(図示略)が、上下方向に多段状に設けられている。
還元性の雰囲気は、例えば、天然ガスと空気との混合ガスにおいて、燃料比を高めることで得られる。より具体的には、排ガス中のCO濃度が通常は0.2〜0.6%であるのに対し、2.0〜5.0%となるように空燃費を調整する。
【0022】
保持炉Bは、溶解炉Aから送られた湯を、一旦貯蔵するとともに、所定の温度に保持したまま鋳造樋Cに送るためのものである。
鋳造樋Cは、保持炉Bから送られた溶銅を、非酸化雰囲気でシールしてタンディッシュ20まで移送する。シールは、鋳造樋Cの溶銅流路(溶銅の流路)の上面を、カバーにより覆うことでなされ、非酸化雰囲気は、不活性ガスや還元性ガスを鋳造樋C内に吹き込むことで形成される。
【0023】
保持炉Bには、鋳造樋Cを介して、ベルトキャスター式連続鋳造機Dが連結されており、このベルトキャスター式連続鋳造機Dには、タンディッシュ20に設けられた注湯ノズル21から、溶銅(湯)が供給されるようになっている。
ベルトキャスター式連続鋳造機Dは、周回移動する無端ベルト40と、この無端ベルト40に円周の一部を接触させて回転する鋳造輪41とにより構成されている。
【0024】
ここで、ベルトキャスター式連続鋳造機Dには、図2に示すように、注湯ノズル21から供給される溶銅に接触する前の状態にある無端ベルト40及び鋳造輪41の表面に対して、それぞれ、油を塗布するための油塗布手段42,44と、離型剤(及び冷却剤)としてのススを塗布するための離型剤塗布手段43,45とが設けられている。
【0025】
油塗布手段42,44は、例えば油をスプレーすることによって、無端ベルト40及び鋳造輪41の表面に対して油を塗布するものであり、離型剤塗布手段43,45は、例えばアセチレンガスを燃焼させながら吹き付けることによって、無端ベルト40及び鋳造輪41の表面に対して離型剤(及び冷却剤)としてのススを塗布するものである。
また、油塗布手段42,44は、離型剤塗布手段43,45よりも、無端ベルト40及び鋳造輪41の移動方向における手前側に配置されている、つまり、無端ベルト40及び鋳造輪41の表面には、油塗布手段42,44によって油が塗布された後に、離型剤塗布手段43,45によってススが塗布されるのである。
【0026】
このベルトキャスター式連続鋳造機Dは、さらに圧延機Eと連結されている。圧延機Eは、ベルトキャスター式連続鋳造機Dから導出された鋳造銅材50を圧延して銅線60とするものであり、探傷器70を介してコイラーFに連結されている。
【0027】
このような構成とされた低酸素導線の製造装置10では、溶解炉Aから保持炉Bへ移送された溶銅が、昇温された後、鋳造樋C、タンディッシュ20を経てベルトキャスター式連続鋳造機Dに供給される。
ここで、ベルトキャスター式連続鋳造機Dにおいては、供給される溶銅に接触する前の状態にある無端ベルト40及び鋳造輪41の表面に対して、油塗布手段42,44によって油が塗布され(油塗布工程)てから、離型剤塗布手段43,45によって離型剤(及び冷却剤)としてのススが塗布されて(離型剤塗布工程)いる。また、無端ベルト40及び鋳造輪41に対する油の塗布量は、それぞれ、このベルトキャスター式連続鋳造機Dでの鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定されている。
【0028】
そして、互いに接触しあう無端ベルト40と鋳造輪41との間の隙間に供給される溶銅が連続鋳造され、ベルトキャスター式連続鋳造機Dを出たところで鋳造銅材50に成形される。このとき、溶銅に接触している無端ベルト40及び鋳造輪41の表面は、油が塗布された後にススが塗布されているために平滑な状態となっている。
このように、油を塗布することで、ススと無端ベルト40及び鋳造輪41との濡れ性が向上し、ススが均一に付きやすくなり、さらに、塗布したススの空隙に油が充填することによって、冷却を阻害する空気層をなくすことが可能となる。これにより、溶銅が凝固していくときの型離れが抑制され、しかも、溶銅に対する冷却効果を阻害していた要因である空気の層がなくなるとともに、溶銅が凝固していくときの核生成がしづらくなって過冷却の状態に陥るので、溶銅の冷却速度が上がってその凝固速度も高速化され、結果として細長い柱状晶のマクロ組織を有する鋳造銅材50が得られる。
【0029】
このベルトキャスター式連続鋳造機Dから導出された鋳造銅材50は、圧延機Eによって圧延されることで銅線(低酸素銅線)60となり、探傷器70で傷の有無が検知されながらコイラーFに巻回される。
【0030】
本実施形態によれば、上述したように、溶銅が鋳造されて鋳造銅材50になるときの凝固速度を高速化することが可能となっているので、この溶銅の凝固時に生成される水蒸気の気泡が粗大化する前にこれをトラップして微細で無害なホールとすることができる。それゆえ、ベルトキャスター式連続鋳造機Dから導出された鋳造銅材50の圧延時には、この鋳造銅材50に形成された微細で無害なホールは消失し、線表面に傷となって現れることがなくなり、表面品質の良好な銅線60を得ることができる。
また、溶銅の冷却効果が高められることによって、鋳造時の冷却不足に起因する鋳造銅材50の割れを抑制する効果を得ることもでき、このような割れ防止効果は、割れの生じやすい脱酸銅線、ある種の低酸素銅合金線や、タフピッチ銅合金線の製造時などにも有効である。
【0031】
さらに、無端ベルト40及び鋳造輪41の表面に、油を塗布した後に、ススを塗布するようになっているため、後から塗布したススを無端ベルト40及び鋳造輪41の表面から剥離しやすくして、ススの燃えかすを出にくくすることができるという効果も得ることができる。このため、比較的同じ鋳造状態を保つことが可能となって、製品の品質を安定させることにつながる。
【0032】
ここで、無端ベルト40及び鋳造輪41のそれぞれに対する油の塗布量が、鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定されていることによって、溶銅の凝固速度の高速化を十分に図ることができているとともに、この油が燃えてしまうという不具合が生じるのを抑制することができている。
この油の塗布量が3cc/Tonより少なくなってしまうと、溶銅の凝固速度を上げる効果を期待できなくなるおそれが生じ、一方、油の塗布量が100cc/Tonより多くなっても、油が溶銅に接触したときに燃えてしまい、この燃焼によるまきあげで他の部分にホールが形成されるおそれが生じてしまう。
なお、上述したような効果をより確実なものとするためには、油の塗布量は、鋳造量に対して、10〜50cc/Tonの範囲に設定することが好ましい。
【0033】
また、本実施形態において、無端ベルト40及び鋳造輪41へのスス以外の塗布剤として油を選択したのは、以下のような理由による。
まず、スス以外の塗布剤は、可燃性であることが望ましい。不燃性の場合、塗布後、無端ベルト40や鋳造輪41から剥離した塗布剤が溶湯中に混入し、そのまま鋳造銅材50中に異物として残留してしまい、例えば、伸線時に断線するなどの不具合が懸念されるからである。さらに、塗布剤の主成分としては、炭素、酸素、水素であることも望まれる。これは、塗布剤が燃えた際に有毒ガスが発生しないためである。これらのことを鑑みると、塗布剤としては、油が最適である。
ここで、このような塗布剤としての油は、具体的には、鉱物油、植物油、合成油が挙げられるが、中でも鉱物油が最も適している。
【0034】
なお、以上説明してきた本実施形態においては、ベルトキャスター式連続鋳造機Dにおける無端ベルト40及び鋳造輪41の両方に対して、油を塗布するようになっているが、例えば、無端ベルト40の表面のみに油を塗布するようにしてもよいし、さらには、鋳造輪41の表面のみに油を塗布するようにしてもよい。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の一例による銅線の製造方法で得られた鋳造銅材と、従来の銅線の製造方法で得られた鋳造銅材とを比較する。
ここで、本発明の一例による銅線の製造方法では、鉱物油(商品名:FBKオイルRO−46)を無端ベルトの表面にスプレーで塗布し、鉱物油(商品名:FBKオイルRO−32)を鋳造輪の表面にスプレーで塗布し、その後、アセチレンガスを燃焼させながら吹き付けることによって、無端ベルト及び鋳造輪の表面に対してススを塗布した。ここで、油の塗布量は、20cc/Tonに設定し、アセチレンの燃焼量は、無端ベルトで800〜900L/hr、鋳造輪で150〜200L/hrに設定した。
【0036】
図3における上側図に示されるように、従来の銅線の製造方法で得られた鋳造銅材は、1つ1つの結晶が大きくなっていて、溶銅の凝固速度が遅かったため、鋳造銅材中にホールが形成されていることが分かる。
これに対して、図3における下側図に示されるように、本発明の一例による銅線の製造方法で得られた鋳造銅材は、1つ1つの結晶が細長くなっていて、溶銅の凝固速度が速かったため、鋳造銅材中にはホールが形成されていないことが分かる。また、本発明の一例による銅線の製造方法で得られる鋳造銅材が凝固していくときの時間の経過と、温度及び疵との関係は、図4のグラフに示すようになる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、ベルトキャスター式連続鋳造機におけるベルト及び/または鋳造輪に対して、油を塗布することによって、このベルトキャスター式連続鋳造機に供給される溶銅の凝固速度を高速化することが可能となっている。
そのため、溶銅の凝固時に生成される水蒸気の気泡が粗大化する前にこれをトラップして、その後の圧延時には消失して傷とならない程に微細で無害なホールにした鋳造銅材を得ることができ、表面の傷を著しく減少させた表面品質の良好な低酸素銅線を、低コストで大量生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態による銅線の製造装置を概略的に示した構成図である。
【図2】 図1におけるベルトキャスター式連続鋳造機を概略的に示した構成図である。
【図3】 本発明の一例による銅線の製造方法によって得られた鋳造銅材の断面図(上側図)と、従来の銅線の製造方法によって得られた鋳造銅材の断面図(下側図)である。
【図4】 本発明の一例による銅線の製造方法で得られる鋳造銅材が凝固していくときの時間の経過と、温度及び疵との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 銅線の製造装置
40 無端ベルト
41 鋳造輪
42,44 油塗布手段
43,45 離型剤塗布手段
50 鋳造銅材
60 銅線(低酸素銅線)
A 溶解炉
B 保持炉
C 鋳造樋
D ベルトキャスター式連続鋳造機
E 圧延機
F コイラー

Claims (4)

  1. 溶銅を、ベルトとこのベルトに一部を接触させて回転する鋳造輪とを備えたベルトキャスター式連続鋳造機に供給し、このベルトキャスター式連続鋳造機から導出された鋳造銅材を圧延して、酸素濃度が10ppm以下とされた低酸素銅線を連続的に製造する銅線の製造方法であって、
    前記ベルト及び/または前記鋳造輪に対して、油を塗布する油塗布工程と離型剤を塗布する離型剤塗布工程とを有しており、
    前記油塗布工程における油の塗布量を、鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定し、
    前記溶湯の凝固速度を高速化して、凝固時に生成される水蒸気の気泡を微細化することを特徴とする銅線の製造方法。
  2. 請求項1に記載の銅線の製造方法において、
    前記油塗布工程において塗布される油が、鉱物油とされていることを特徴とする銅線の製造方法。
  3. 溶銅を、ベルトとこのベルトに一部を接触させて回転する鋳造輪とを備えたベルトキャスター式連続鋳造機に供給し、このベルトキャスター式連続鋳造機から導出された鋳造銅材を圧延して、酸素濃度が10ppm以下とされた低酸素銅線を連続的に製造する銅線の製造装置であって、
    前記ベルト及び/または前記鋳造輪に対して、油を塗布する油塗布手段と離型剤を塗布する離型剤塗布手段とを有しており、
    前記油塗布手段における油の塗布量が、鋳造量に対して、3〜100cc/Tonの範囲に設定されており、
    前記溶湯の凝固速度を高速化して、凝固時に生成される水蒸気の気泡を微細化することを特徴とする銅線の製造装置。
  4. 請求項3に記載の銅線の製造装置において、
    前記油塗布手段において塗布される油が、鉱物油とされていることを特徴とする銅線の製造装置。
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