JP4259132B2 - 焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板および高張力めっき鋼板ならびにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の構造部材や足周り部材等の使途に供して好適な高張力熱延鋼板および高張力めっき鋼板ならびにそれらの製造方法に関し、特に焼付硬化性および延性の有利な向上を図ろうとするものである。
なお、本発明でいう焼付硬化性の向上とは、加工−焼付塗装後の降伏強さだけでなく、引張り強さの向上をも意味する。また、延性の向上とは、同一強度レベルで見た時の伸びの向上、すなわちいわゆる強度−延性バランス(TS×El)の向上を意味する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、Nを多量に含有した鋼を、熱間圧延したのち、350 ℃以下まで急冷して巻き取ることからなる焼付硬化型高張力熱延鋼板の製造方法が提案されている。
しかしながら、上記の技術で製造された熱延鋼板は、フェライトとマルテンサイトを主体とする複合組織を有し、N添加により焼付硬化性を付与する技術であり、加工−塗装焼付処理後の引張強さは増加するものの、耐常温時効性への配慮がないため、耐常温時効性が劣化するという問題を残していた。
【0003】
また、特許文献2には、結晶粒の微細化および固溶Nの量、存在形態を制御することによって、焼付硬化性と耐常温時効性を改善した熱延鋼板が提案されている。
しかしながら、この技術を用いて焼付硬化性のさらなる向上を図ろうとすると、結晶粒を一層微細化するか、固溶N量をさらに増大させる必要があるが、結晶粒をさらに微細化することは現実的ではなく、また固溶Nを増加させることは常温時効による延性の劣化を招くことから、この技術による改善には限界があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−74824 号公報
【特許文献2】
特開2000−297350号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した特許文献2に開示の技術の改良に係わり、結晶粒を一層の微細化や固溶N量のさらなる増大などの必要なしに、焼付硬化性および延性を一層向上させ、しかも耐常温時効性にも優れた高張力熱延鋼板および高張力めっき鋼板を、それらの有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、鋼の成分組成を所定の範囲に調整した上で、鋼板の製造工程を厳密に管理し、熱延鋼板の組織を適正な組成に制御することによって、耐常温時効性の劣化なしに、焼付硬化性および延性の著しい向上が達成されることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で
C :0.05〜0.15%、
Si :0.5%以下、
Mn:1.2〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
P :0.05%以下、
Al :0.001〜0.1%および
N :0.005〜0.02%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、低温変態フェライト相が面積率で10〜50%で、かつ低温変態フェライト相とポリゴナルフェライト相の面積率の合計が90%以上である鋼組織を有し、しかも上記の低温変態フェライト相とポリゴナルフェライト相の2相の平均結晶粒径が8μm以下であることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板。
【0008】
2.上記1において、鋼板が、さらに質量%で
Cr:1.0 %以下および
Ni:1.0 %以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成になることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板。
【0009】
3.上記1または2において、鋼板が、さらに質量%で
Ti:0.1 %以下および
Nb:0.1 %以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成になることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板。
【0011】
4.質量%で
C :0.05〜0.15%、
Si :0.5%以下、
Mn:1.2〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
P :0.05%以下、
Al :0.001〜0.1%および
N :0.005〜0.02%
を含有する組成になる鋼素材を、1000〜1300℃に加熱し、ついで粗圧延後、仕上圧延出側温度:(Ar3+10℃)〜(Ar3+100℃)の条件で仕上圧延を終了したのち、1.7秒以内に50℃/s以上の速度で750〜600℃の温度域まで冷却し、この温度域に3〜15秒間保持したのち、20℃/s以上の速度で冷却し、500〜250℃の温度で巻き取ることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法。
【0012】
なお、この製造方法に用いる鋼素材としては、上記したC:0.05〜0.15%、Si:0.5 %以下、Mn:1.2 〜3.0 %、Mo:0.05〜1.0 %以下、P:0.05%以下、Al:0.001 〜0.1 %およびN:0.005 〜0.02%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるものであっても、鋼中にさらに、Cr:1.0 %以下およびNi:1.0 %以下のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるもの、および/またはさらに鋼中に、Ti:0.1 %以下およびNb:0.1 %以下のうちから選んだ1種または2種を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるものであっても良い。
【0013】
5. 上記4において、巻取り後、鋼板表面にめっき処理を施すことを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力めっき鋼板の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
また、本発明において、鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%(mass%)を意味するものとする。
C:0.05〜0.15%
Cは、鋼の強度を増加させるだけでなく、結晶粒の粗大化を抑制するためにも有用な元素であるが、含有量が0.05%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.15%を超えると溶接性が劣化するので、C量は0.15%以下とする必要があり、より好ましくは0.12%以下とする。
【0015】
Si:0.5 %以下
Siは、固溶強化により鋼の強度を増加させる元素であり、必要な強度に応じて適宜含有量を調整できる。しかしながら、含有量が 0.5%を超えると加工性を劣化させるだけでなく、低温変態フェライトの生成を阻害するので、Si量は 0.5%以下に限定した。
【0016】
Mn:1.2 〜3.0 %
Mnは、固溶強化元素であり、高強度鋼板を得るための基本的構成元素である。また、低温変態フェライトの生成にも有効に寄与する。しかしながら、含有量が1.2 %に満たないとその添加効果に乏しく、一方 3.0%を超えると加工性が劣化するだけでなく、溶接性にも悪影響を与えるので、Mn量は 1.2〜3.0 %の範囲に限定した。
【0017】
Mo:0.05〜1.0 %
Moは、固溶強化により鋼の強度上昇に有効に寄与するだけでなく、オーステナイトを安定化する作用により、熱間圧延において低温変態フェライト相を形成し易くして、熱間圧延後、冷却を開始するまでの時間に余裕を持たせる効果がある。しかしながら、含有量が0.05%に満たないと、その添加効果に乏しく、一方1.0 %を越えると低温フェライト相の生成を阻害してしまう為、0.05〜1.0 %に限定する。さらに、Moの含有量は、好ましくは0.1 超〜0.5 %、より好ましくは0.20%以下とすることが推奨される。
【0018】
P:0.05%以下
Pは、鋼の強度を増加させる元素であり、必要に応じて適宜含有量を調整する。しかしながら、含有量が0.05%を超えると溶接性が劣化し、またPが粒界に偏析して粒界割れを発生するおそれが生じ、さらには低温変態フェライトの生成をも阻害するので、P量は0.05%以下に限定した。
【0019】
Al:0.001 〜0.1 %
Alは、脱酸剤として有用な元素であり、鋼の脱酸のためには少なくとも 0.001%の含有を必要とするが 0.1%を超えると表面性状が劣化するだけでなく、所定量の固溶Nの確保が難しくなるので、Alは 0.001〜0.1 %の範囲で含有させるものとした。
【0020】
N:0.005 〜0.02%
Nは、本発明において特に重要な元素であり、鋼中に固溶して加工−塗装焼付処理後の降伏強さおよび引張強さを増加させるのに有効に作用する。この目的のためには、0.005 %以上のNの含有を必要とするが、0.02%を超えると内部欠陥の発生率が高くなるだけでなく、連続鋳造時にスラブ割れなどが多発するようになる。そこで、N量は 0.005〜0.02%の範囲に限定した。より好ましくは 0.007〜0.02%の範囲である。
【0021】
以上、必須成分について説明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cr:1.0 %以下およびNi:1.0 %以下のうちから選んだ1種または2種以上
CrおよびNiはいずれも、固溶強化により鋼の強度上昇に有効に寄与するだけでなく、オーステナイトを安定化する作用により、熱間圧延において低温変態フェライト相を形成し易くする効果がある。この効果を得るためには、CrおよびNiの含有量はそれぞれ 0.1%以上とすることが好ましい。しかしながら、いずれも含有量が 1.0%を超えるとかえって低温変態フェライト相の生成を阻害するので、それぞれ 1.0%以下で含有させるものとした。
【0022】
Ti:0.1 %以下およびNb:0.1 %以下のうちから選んだ1種または2種
TiおよびNbはそれぞれ、炭化物、窒化物を形成することによって、強度および靱性の向上に有効に寄与する。この効果を得るためには、Ti, Nbの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。しかしながら、いずれも含有量が 0.1%を超えると固溶Nを窒化物として固定してしまい、却って焼付硬化性を低下させるので、それぞれ 0.1%以下で含有させるものとした。
以上、必須成分および選択成分について説明したが、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
【0023】
また、本発明では、成分組成範囲を上記の範囲に調整するだけでは不十分で、その組織および粒径も併せて規定する必要がある。
低温変態フェライト相の面積率V(αB ) :10〜50%
ここでいう低温変態フェライトαB は、通常の意味のフェライト(ポリゴナルフェライト:αP )とは区別され、低温域(概ね 500℃以下)において生成するフェライトで、ベイニティックフェライトあるいは上部ベイナイトのことを意味する。この組織は、本発明において特に重要で、高い焼付硬化性を担うものである。
焼付硬化は、鋼中の侵入型固溶元素(C,N)が鋼中の転位を固着し、転位の運動に対する抵抗力が高くなることにより強度が高くなる現象である。低温変態フェライト組織内では、元々転位密度が高くなっているためにその効果が促進され、固着された転位が塑性変形時の転位の運動の抵抗として働くために、極めて高い焼付硬化性を示すようになる。
そして、この組織により、焼付け硬化の向上を効果的に生ぜしめるためには、面積率V(αB ) で少なくとも10%の低温変態フェライトを必要とする。しかしながら、50%を超えると相対的にポリゴナルフェライトの量が低減して延性が劣化するので、本発明では低温変態フェライト相の量は面積率V(αB ) で10〜50%の範囲に限定した。
【0024】
低温変態フェライト相以外は、実質的にポリゴナルフェライト相からなる。このように、低温変態フェライト以外をポリゴナルフェライトとすることにより、延性の著しい向上を図ることができる。
なお、上記した低温変態フェライト相、ポリゴナルフェライト相以外の相としては、マルテンサイト相やパーライト相が生成する場合があるが、これらの相があまりに多くなると所期した効果を得ることが難しくなる。そのため、本発明では、上記した低温変態フェライト相とポリゴナルフェライト相の2相の面積率の合計を90%以上とする。
【0025】
低温変態フェライト相とポリゴナルフェライト相の2相の平均結晶粒径が8μm以下
ここでいう平均結晶粒径とは、低温変態フェライト相(αB ) とポリゴナルフェライト相(αP ) の2相の平均結晶粒径のことであり、この平均結晶粒径を8μm 以下に制限することが重要である。
図1に、後述する表1中の鋼種Aについて、平均結晶粒径が8μm 以下のものと10〜15μm のものについて、低温変態フェライト相の面積率と製品板の焼付け硬化量(ΔTS)との関係について調べた結果を示すが、同図に示したとおり、平均結晶粒径が8μm を超える10〜15μm の場合には、平均結晶粒径8μm 以下の場合程の引張強さの上昇は望めない。
なお、結晶粒を微細にすることによって固溶Nの存在位置としての粒界面積が増大するが、粒界中に存在する固溶Nは室温においては安定で拡散できないため、常温時効性の劣化が抑制される。この点、平均結晶粒径が8μm を超えるとこの効果は著しく減少する。
【0026】
上記のような構成にすることにより、高い焼付硬化性が得られる理由については、以下のように考えられる。
焼付硬化は、予加工されたときに生じる可動転位と固溶Nとの相互作用により、可動転位が固溶Nによって固着されるために生じるものであるが、その際、結晶粒が微細化され、結晶粒界が増加すると、同一歪み量だけ加工されても、可動転位は高密度に分布するようになる。また、低温変態フェライト組織は予加工を加える前からあらかじめ多量の可動転位を含んでおり、予加工後の転位密度も高密度になるため、高い焼付硬化性を呈するようになるものと考えられる。
【0027】
次に、本発明の製造条件を前記のように限定した理由について説明する。
鋼素材加熱温度(スラブ加熱温度):1000〜1300℃
熱延板で所望の固溶Nを確保するためには、熱間圧延前の加熱時に窒化物を溶解させておく必要がある。しかしながら、鋼素材であるスラブの加熱温度が1000℃に満たないと熱延板中に固溶状態で所望量のNを残存させるのが難しく、一方1300℃を超えると加熱時のオーステナイト粒が粗大化し、平均結晶粒径を8μm以下にすることが困難となる。従って、スラブ加熱温度は1000〜1300℃の範囲に限定した。より好ましくは、1100〜1250℃の範囲である。
なお、加熱後のスラブをシートバーとする粗圧延は、常法に従って行えば良い。
【0028】
仕上圧延出側温度:(Ar3+10℃)〜(Ar3+100 ℃)
仕上圧延では、鋼板の組織を均一かつ微細に整えるために、仕上圧延出側温度(FDT と記す)を(Ar3+10℃)〜(Ar3+100 ℃)の範囲に制御する必要がある。というのは、FDT が(Ar3+10℃)を下回ると仕上圧延温度が低くなりすぎて組織が不均一となり、一部に加工組織が残留したりして、プレス成形時に種々の不具合を発生する危険性が高まり、一方 FDTが(Ar3+100 ℃)を超えると結晶粒の微細化が困難になる。
【0029】
圧延後の冷却:仕上圧延終了後、1.7 秒以内に50℃/s以上の速度で 750〜600 ℃の温度域まで冷却し、この温度域に3〜15秒間保持したのち、20℃/s以上の速度で巻取り温度まで冷却する
仕上圧延を行ったのち、1.7 秒以内に冷却を開始しないと、結晶粒が粗大になるだけでなく、低温フェライト相の形成が困難となり、またNが析出して固溶Nの確保が困難となるので、冷却開始時間は仕上圧延終了後 1.7 秒以内とした。なお、ここでは、Moの含有によって、オーステナイトを安定化することにより、低温フェライト相の形成が容易になるため、仕上圧延終了後 1.7 秒以内という、ある程度の余裕を持って冷却に供することができる。
【0030】
また、その時の、冷却速度が50℃/s未満では、冷却中に結晶粒が成長し微細化が困難になると共に、Nが析出し固溶Nの確保が難しくなるので、冷却速度は50℃/s以上の強冷却とした。
そして、 750〜600 ℃の温度域まで冷却するが、この理由は、この温度域で特にポリゴナルフェライト変態が促進され、著しい延性の向上が期待できるからである。しかしながら、この温度域での保持時間が3秒未満ではポリゴナルフェライトの生成量が不足してその効果が望めず、一方15秒を超えるとフェライト粒が粗大化するだけでなく、ポリゴナルフェライトの量が多くなりすぎて、その後に十分な量の低温変態フェライトを確保することが難しくなり、所期したほどの焼付硬化量が得られなくなるので、 750〜600 ℃の温度域での保持時間は3〜15秒の範囲に限定した。
【0031】
なお、この温度域での保持処理は、一定温度に維持するいわゆる保定処理でも、また20℃/s未満程度の速度で冷却するいわゆる徐冷処理でも、いずれでもよい。
さらに、その後、巻取り温度までの冷却速度を20℃/s以上としたのは、冷却速度が20℃/sに満たないと、さらなるポリゴナルフェライトの成長により、所定の低温変態フェライト相分率の確保が困難になるからである。
【0032】
巻取り温度:500 〜250 ℃
上記の制御冷却後、 500〜250 ℃の温度範囲で巻き取る。というのは、巻取り温度が 500℃より高い場合には、所定量の低温変態フェライト相を得るのが難しくなるだけでなく、結晶粒径の微細化が達成されず、一方巻取り温度が 250℃より低い場合には、マルテンサイトなどのより低温の変態相が支配的となり、やはり所望の低温変態フェライト相を得るのが困難になるからである。
【0033】
図2に、上記した本発明に従う、冷却曲線を示す。
同図に示したとおり、本発明では、ポリゴナルフェライト相のノーズの近傍まで急冷したのち、ポリゴナルフェライト相の生成温度域に一定時間保持して、所定量のポリゴナルフェライト相を生成させたのち、低温変態フェライト相の生成温度域まで冷却し、この温度域で巻き取ることによって所定量の低温変態フェライト相を生成させるのである。
【0034】
上記のようにして得られた熱延鋼板は、各種めっき用原板として好適であるので、必要に応じて各種のめっき処理を施すことができる。
ここに、めっさの種類としては、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、電気錫めっき、電気クロムめっきおよび電気ニッケルめっき等が挙げられるが、本発明ではいずれのめっき処理も有利に適用することができる。
【0035】
【実施例】
表1に示す成分組成になる溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブとしたのち、表2に示す条件で熱間圧延を施して、熱延鋼板とした。なお、一部については巻き取り後溶融亜鉛めっき処理を施した。
得られた熱延鋼板およびめっき鋼板について、組織試験、引張試験、焼付硬化性試験および常温時効性試験を行った。
【0036】
なお、鋼組織は、熱延鋼板の圧延方向と直角な方向の断面のナイタールによる腐食現出組織の拡大像によって調査した。
引張試験は、熱延鋼板の圧延方向に対し直角の方向からJIS 5号引張試験片を採取し、歪速度:10-3/sの条件で実施した。
焼付硬化性試験は、引張試験と同じく、熱延鋼板の圧延方向に対し直角な方向からJIS 5号引張試験片を採取し、予歪付与後時効処理を施し、歪速度:10-3/sの条件で実施した。なお、焼付処理条件は、予歪量:5%、時効処理条件:170 ℃×20分とした。
そして、焼付け硬化量BHおよび引張り強さの増加代ΔTSはそれぞれ、次式
BH=(時効後の降伏応力)−(時効処理前の予変形応力)
ΔTS=(時効後の引張強さ)−(熱延ままの引張強さ)
によって求めた。
常温時効性試験は、50℃,400 hの時効処理を施したのち、圧延方向に対し直角の方向からJIS 5号引張試験片を採取し、歪速度:10-3/sで引張試験を実施し、伸びElA を測定し、時効処理前の伸び(熱延ままの伸び)Elとの差、ΔEl=El−ElA で評価した。なお、得られたΔElが 2.0%以下であれば、常温時効性は問題ないといえる。
得られた結果を表3に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
表3から明らかなように、本発明に従い、所定の成分調整をした上で、鋼組織を低温変態フェライト相が面積率で10〜50%含有する組織とすることにより、強度−延性バランスが 16000 MPa・%以上と、同一強度レベルで見た時の延性に優れ、またBH 100 MPa以上、ΔTS 90 MPa 以上、ΔEl 1.5%以下の、焼付硬化性および耐常温時効性に優れた高張力熱延鋼板および高張力めっき鋼板を得ることができた。
【0041】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、自動車の内板部品等に使用して好適な、焼付硬化性および延性に優れ、また耐常温時効性も良好な高張力熱延鋼板および高張力めっき鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 製品板の焼付け硬化量(ΔTS)に及ぼす低温変態フェライト相の影響を、鋼板の平均結晶粒径をパラメータとして示した図である。
【図2】 本発明に従う冷却曲線を示した模式図である。
Claims (5)
- 質量%で
C :0.05〜0.15%、
Si :0.5%以下、
Mn:1.2〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
P :0.05%以下、
Al :0.001〜0.1%および
N :0.005〜0.02%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、低温変態フェライト相が面積率で10〜50%で、かつ低温変態フェライト相とポリゴナルフェライト相の面積率の合計が90%以上である鋼組織を有し、しかも上記の低温変態フェライト相とポリゴナルフェライト相の2相の平均結晶粒径が8μm以下であることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板。 - 請求項1において、鋼板が、さらに質量%で
Cr :1.0%以下および
Ni :1.0%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成になることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板。 - 請求項1または2において、鋼板が、さらに質量%で
Ti :0.1%以下および
Nb:0.1%以下
のうちから選んだ1種または2種を含有する組成になることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板。 - 質量%で
C :0.05〜0.15%、
Si :0.5%以下、
Mn:1.2〜3.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
P :0.05%以下、
Al :0.001〜0.1%および
N :0.005〜0.02%
を含有する組成になる鋼素材を、1000〜1300℃に加熱し、ついで粗圧延後、仕上圧延出側温度:(Ar 3 +10℃)〜(Ar 3 +100℃)の条件で仕上圧延を終了したのち、1.7秒以内に50℃/s以上の速度で750〜600℃の温度域まで冷却し、この温度域に3〜15秒間保持したのち、20℃/s以上の速度で冷却し、500〜250℃の温度で巻き取ることを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法。 - 請求項4において、巻取り後、鋼板表面にめっき処理を施すことを特徴とする焼付硬化性および延性に優れた高張力めっき鋼板の製造方法。
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