JP2004323925A - 常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板およびその製造方法 - Google Patents
常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.2%以下、 Si:0.7%以下、 Mn:3.0%以下、P:0.1%以下、 S:0.02%以下、N:0.0030〜0.0180% 、Cr:0.2〜1.5%、 Al:0.020%以下、O:0.0020〜0.02% を含み、Cr/N:25以上、固溶C量:0.0040%以下、固溶N量: 0.0020〜0.0085% 、固溶C+12/14(固溶N):0.0020〜0.012%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、フェライト面積率が 80%以上で、5%引張変形+ 170℃×20分熱処理後の焼付硬化量BH170 と、5%引張変形+ 150℃×20分熱処理後の焼付硬化量BH150 の比・BH150/BH170: 0.9以上、BH150 が 40MPa以上で、 100℃×1hr 時効後の全伸びの低下量が3%以下、降伏点伸びの増加量が0.6%以下である鋼板。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の構造部材・足廻り部材・パネル部材の使途に好適である常温保持中の品質劣化の少ない歪時効硬化型鋼板およびその製造方法に関するものであり、引張強度で250MPaから1500MPa程度の幅広い強度の鋼板に適用が可能である。本発明は塗装焼付処理工程を経て使用される建築物等の構造材料、缶用材料にも適用することが可能である。
【0002】
【従来の技術】
地球環境保護の観点から自動車が排出するCO2 軽減が重要な課題となっている。CO2 軽減のためには車体重量の軽減が有効であり、そのために鋼材高強度化のニーズが高まっている。ところが、一般的に材料の高強度化は形状凍結性の低下や成形時の割れといったプレス成形性の劣化を伴うことが知られており、加工性を低下させずに高強度化する方法が強く望まれていた。
【0003】
このような要望に対し、成形加工性を確保した上で高強度化を達成する技術として、成形加工時には軟質に保たれ、成形加工後の電着塗装焼付工程で起こる歪時効硬化現象を利用して降伏強度あるいは引張強度を増加させる、いわゆる焼付硬化性(Bake Hardenability: BH)を利用した技術が知られている。この種の鋼材は、成形加工時には炭素原子あるいは窒素原子を固溶させて成形性を確保しておき、電着塗装焼付工程において成形加工時に鋼材内に生じた転位に炭素原子あるいは窒素原子を固着させるか、あるいは転位上に炭化物あるいは窒化物を微細分散析出させることによって、降伏強度あるいは引張強度の上昇を図るものである。
【0004】
この一例として、特許文献1には極低炭素鋼に多量のNbとB、さらにはTiを複合添加して焼鈍後の組織をフェライト相と低温変態生成相との複合組織とし高r値、高BH、高延性および常温非時効性を兼ね備えた冷延鋼板が開示されている。しかしながら、この技術には以下のような実操業上の問題点を有する。
すなわち、1)このような多量のNb,BさらにはTiを含有する成分の鋼では、α→γ変態点が低下するわけではなく、複合組織を得るためには極めて高い温度の焼鈍が必須となり、連続焼鈍時に板破断等のトラブルの原因となること、2)α+γの温度領域が極めて狭いため、板幅方向に組織が変化し、結果として材質が大きくばらついたり、数℃の焼鈍温度の変化によって複合組織になる場合とならない場合があり、製造がきわめて不安定となる。近年の傾向として低温化が進みつつある塗装焼付工程には対応することが難しい。
【0005】
また特許文献2には、Nbを添加した極低炭素冷延鋼板において焼鈍後の冷却速度を制御することによって粒界中の炭素濃度を高めて、高BHと常温遅時効性との両立が可能であることが示されている。しかしながら、これによっても高BHと常温遅時効性とのバランスは十分とは言えず、延性の常温劣化も防ぐことはできない。また低温化が進みつつある塗装焼付工程には対応することも難しい。
また特許文献3には、極低炭素鋼をベースに優れた焼付硬化性と常温非時効性を兼備した冷延鋼板と溶融亜鉛メッキ鋼板およびその製造方法が開示されている。しかしながら、所定の鋼成分、製造プロセスにおいて、所定の鋼成分において低温塗装焼付時のBH量と常温遅時効性と常温での耐伸び劣化性のバランスは十分とは言えない。
【0006】
また特許文献4には、組織を高温変態フェライト相と低温変態フェライト相とすることにより常温非時効性を有する高張力冷延鋼板およびその製造方法が開示されている。しかしながら、TSで400MPa以上の高張力鋼にしか適用できず、さらにNをBH特性増加に積極的に利用しないことから低温焼付処理での時効硬化量が安定的に得られず、また常温時効中の伸び劣化とBH量とのバランスが不十分であるという問題点を有していた。
【0007】
また特許文献5には、固溶状態のCおよびN量とフェライト結晶粒径を制御することにより降伏応力と引張強度の双方を上昇させた歪時効硬化特性、耐衝撃性および加工性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法が提案されている。
また特許文献6には、フェライト粒径を制御した、固溶N利用型の耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法が提案されている。
また特許文献7には、加工性および歪み時効硬化特性に優れた高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法が提案されている。
しかし、これらの方法は高いBH特性を得ることは可能であるものの、常温非時効性および伸びの常温劣化性とのバランスが悪いという問題を有していた。
【0008】
【特許文献1】
特公平3−2224号公報
【特許文献2】
特開平7−300623号公報
【特許文献3】
特開平6−81081号公報
【特許文献4】
特許公報2818319号公報
【特許文献5】
特開2001−335889号公報
【特許文献6】
特開2001−226744号公報
【特許文献7】
特開2001−247946号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の如き実状に鑑みてなされたものであって、電着塗装工程を経て作られる自動車用の構造部材・足廻り部材・パネル部材用途、建築用の構造部材、電機製品の内外板パネルに好適な、低温塗装焼付温度でも高BH性を有し、さらに常温保管時における伸び劣化と降伏点伸び発生が少ない焼付硬化型鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成するために、はじめに低温塗装焼付温度でも高BHが得られる方法について研究を進めた。その結果、適正量の固溶Nを含有させ、かつ固溶C量を低く抑えることが有効であることを見出した。
次いで発明者らは、Nをベースとした鋼の常温での降伏点伸びの発生を抑制するための方法について検討を重ねた。常温保持時において降伏点伸びの発生が抑制される特性は常温遅時効性、耐常温時効性、非時効性と呼ばれ、固溶状態のCまたはN原子の常温保持中の拡散を防止し、降伏強度に寄与する自由転位を残存させることによりこの特性を引き出すことができると言われている。
【0011】
そこで本発明者らは、N原子の拡散を遅延する方法について鋭意検討を重ねた結果、適正量のCrを添加することによりN原子の拡散を抑制することができ、その結果、常温保持時における降伏点伸びの発生すなわちストレッチャーストレインの発生を抑制できることを見出した。
【0012】
次いで発明者らは、常温保持時における伸びの劣化原因を明らかにすべく研究を行った。なぜなら常温保持中において降伏点伸びの発生を抑制できた場合でも、破断伸びあるいは全伸びで代表される伸び値が大幅に低下する場合が多く、その結果、成形できる形状が大幅に制限される場合が多いからである。
そこで、発明者らは常温保持時に伸びの劣化が生じる原因を解析した結果、降伏点伸びの発生とは異なるメカニズムで伸び劣化が起こっていることを突き止めた。即ち、常温保持中のCあるいはN原子が粒界に拡散し、非常に微細な炭窒化物の析出およびクラスタリングが起こることがその原因であることを知見した。
【0013】
次いで発明者らは、N原子の粒界への拡散と炭窒化物の析出を同時に抑制する方法について鋭意研究を進めた結果、フェライトベースの組織において適正量のCrとOを添加し、さらに鋼中のCr/N比を適正に制御することが有効であるという全く新しい知見を見出し、本発明に至った。
【0014】
本発明は、前記課題を解決するため次の構成を要旨とする。
(1)第1の発明は、常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板であって、質量%で、
C :0.2%以下、 Si:0.7%以下、
Mn:3.0%以下、 P :0.1%以下、
S :0.02%以下、 N :0.0030〜0.0180%、
Cr:0.2〜1.5%、 Al:0.020%以下、
O :0.0010〜0.02%
を含み、かつCrとNの量比が質量%でCr/N:25以上を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに
固溶C:0.0040%以下、
固溶N:0.0015〜0.0085%、
固溶C+12/14×(固溶N):0.0020〜0.012%
であり、さらにフェライト面積率が80%以上であることを特徴とする。
(2)第2の発明は、前記組成に加えて、質量%で、下記のa群〜e群のうち、1群または2群以上を含むことを特徴とする。
a群:Mo、Wのうち1種または2種の合計を0.1〜1.0%。
b群:Nb、Ti、V、Taのうち1種または2種以上の合計を0.001〜0.2%。
c群:Cu、Niのうち1種または2種の合計を:0.1〜4.0%以下。
d群:Bを0.0003〜0.010%。
e群:Ca、Mg、Zr、REMのうち1種または2種以上を合計で0.001〜0.01%。
【0015】
(3)第3の発明は、5%引張変形後170℃×20分の熱処理を施した際の焼付硬化量BH170と、5%引張変形後150℃×20分の熱処理を施した際の焼付硬化量BH150を比較した際に、BH150/BH170:0.9以上の関係を満たし、かつBH150が40MPa以上であり、さらに100℃×1hrの時効による全伸びの低下量が3%以下、降伏点伸びの増加量が0.6%以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の歪時効硬化型鋼板である。
(4)第4の発明は、前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の歪時効硬化型鋼板であって、電気めっき又は溶融めっきが施されていることを特徴とする。
【0016】
更に本発明は常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板の製造方法であって、
(5)第5の発明は、前記(1)又は(2)に記載の組成からなるスラブを(Ar3 −150)℃以上で熱間圧延を行い、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上で冷却し、次いで550℃以下で巻取り、100〜300℃間の滞留時間が20s以上である冷却を行うことを特徴とする。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1)
(6)第6の発明は、前記(1)又は(2)に記載の組成からなるスラブを(Ar3 −150)℃以上で熱間圧延を行い、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上で冷却し、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である冷却を行うことを特徴とする。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1)
(7)第7及び第8の発明は、前記(1)又は(2)に記載の組成からなる熱延鋼板を冷間圧延した後、該冷延板を(Ar3 −150)℃〜(Ac3 +120)℃間の最高到達温度で一次熱処理した後、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上である冷却を行い、必要に応じて過時効処理を行い、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である時効処理または冷却を行うことを特徴とする。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1)
【0017】
(8)第9及び第10の発明は、前記(1)〜(3)の何れかに記載の組成からなる熱延鋼板を冷間圧延した後、該冷延板を(Ac3 −150)℃〜(Ac3 +120)℃間の最高到達温度で一次熱処理した後、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上である冷却を行い、次いで前記鋼板表面に溶融亜鉛めっき層を形成し、必要に応じて合金化処理を行い、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である時効処理または冷却を行うことを特徴とする。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1)
(9)また第11の発明は、前記(5)〜(8)の何れかに記載の方法により製造した鋼板に、伸び率3%以下の調質圧延またはレベラー加工を施すことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず成分の限定理由について説明する。成分含有量は質量%である。
C:Cは鋼の歪時効硬化の発現およびミクロ組織の制御に必須の添加元素である。しかし、0.2%を超えると常温で非時効化することが難しくなり、また溶接性も低下する。このため本発明ではCの範囲を0.2%以下に限定した。下限は特に限定することなく本発明の効果を奏することができるが、製鋼のコスト上0.0001%以上とすることが好ましい。
【0019】
Si:Siは鋼材のミクロ組織および強度の調整に用いられる。しかしながら、0.7%を超えると低温塗装焼付温度で40MPa以上の得ることが難しくなり、また化成処理性やめっきの密着性が悪くなる。従ってSi含有量を0.7%以下の範囲に制限した。0.5%以下がより好ましい範囲である。下限は特に限定することなく本発明の効果を奏することができるが、不純物として不可避的に0.001%以上含有する場合が多い。
【0020】
Mn:Mnは鋼材のミクロ組織および強度の調整に用いられる。しかしながら、3.0%を超えると成形加工性の劣化を招く。従ってMn含有量を3.0%以下の範囲に制限した。Sの熱間脆性を抑制させる意味では、0.005%以上の添加が望ましい。
【0021】
P:Pは熱延組織の微細化能を有し、また強力な固溶強化元素であることから鋼材の強度の調整に用いられる。ただし、添加量が0.1%を超えると、スポット溶接後の疲労強度が劣悪となったり、降伏強度が増加し過ぎてプレス時に面形状不良を引き起こす。さらに、連続溶融亜鉛メッキ時に合金化反応が極めて遅くなり、生産性が低下する。また2次加工性も劣化する。また、0.1%を超えると成形加工時の割れを起こす可能性があるので、P含有量の範囲を0.1%以下に制限した。下限は特に限定することなく本発明の効果を奏することができるが、不純物として不可避的に0.001%以上含有する場合が多い。
【0022】
S:SはMnS、CuSとして鋼中に存在させ、結晶粒径の制御を通じて鋼材の強度・延性の調整に用いられる。しかしながら、0.02%を超えると熱間脆性を起こす可能性があるので、その範囲を0.02%以下に限定した。下限は特に限定することなく本発明の効果を奏することができるが、不純物として不可避的に0.0001%以上含有する場合が多い。
【0023】
N:Nは鋼の歪み時効硬化の発現およびミクロ組織の制御に必須の添加元素である。しかし、0.0030%未満であると低温での塗装焼付硬化量40MPa以上およびBH150/BH170:0.9以上を達成できない。また0.018%を超えると、BHと常温遅時効性および耐延性劣化を両立することが困難になる。このため本発明ではNの範囲を0.0030〜0.018%に限定した。
【0024】
Cr:Crは本発明における重要元素の一つである。0.2%以上のCr添加によって、初めて高BH性と常温保持中の降伏点伸びの発生抑制および伸び劣化の抑制を両立することが可能となる。これらの元素によって高BHと耐常温時効性が向上する機構は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
すなわち、常温付近ではこれらの元素とNとがペアやクラスターを形成し、Nの拡散を抑えるため耐常温時効性が確保されるのに対して、150〜170℃での塗装焼付処理を行う温度域においては、Nがこれらのペアやクラスターから脱出し、転位を固着するため高BH性が発現する。Cr含有量が1.5%を超えると、製造工程中に微細なCr炭窒化物が形成し、BH150=40MPa以上を達成することが困難になる。従ってCr添加の範囲を0.2〜1.5%に制限した。なお、めっき性やより良好なBH特性と常温での耐伸び劣化性のバランスを得るためには、0.3〜1.2%がより好ましい範囲である。
【0025】
Cr/N比:Nの拡散を抑制し、さらに常温保持中の炭窒化物の析出を抑制するためには、添加N量に比べて多量のCrが鋼中に存在していることが必要である。Cr/Nが25未満であるとその抑制効果が小さく、100℃×1hrの促進時効による全伸びの低下量:3%以下、降伏点伸びの増加量が0.6%以下を達成することができない。従ってCr/N量の範囲を25以上に限定した。
より安定的に常温時効中の全伸び劣化の抑制効果と降伏点伸び発現の抑制を図るという観点で、40以上であることがより好ましい。なお、上限は特に定めないが、高いN含有量の場合にはCrも多量添加するとCrが窒化物として析出し、その結果BH150=40MPa以上を満足しない場合があるので、Nが0.01%以上の時には、Cr/N比は100以下であることが望ましい。
【0026】
Al:Alは鋼材のミクロ組織および強度の調整に用いられ、また脱酸調製元素として使用しても良い。ただし、AlはNと結合しAlNを形成する結果、BH性が低下するので、その添加は製造技術上無理のない範囲で必要最小限にとどめることが望ましい。Al量が0.020%を超えるとAlN析出が起こり、固溶Nがこの析出物に吸収される結果、BH150=40MPa以上を達成することができない。従ってAl量の範囲0.020%以下に制限した。
なお、高いBHと常温での伸び劣化抑制を両立するという観点からは、Al量の範囲は0.014%以下がより好ましく、0.0050%以下がさらに好ましい上限である。なお、後述のようにAl系の酸化物と鉄の界面はNの拡散トラップサイトとなるが、0.0025%未満の添加であるとであると酸化物の密度が十分でなくなる。従って常温遅時効性を充分に得るためには、Al含有量の範囲を0.0025%以上とすることが好ましい。
【0027】
O:Oは本発明において重要な元素の一つである。Crを適正量添加した上でOを所定の量に制御することによって、常温遅時効性と耐伸び劣化性が顕著に改善される。この理由は必ずしも明らかではないが、酸化物の周辺の歪み場にCrとNが優先的に偏析し、上述したように、Crが常温でNの拡散を抑制する効果を助長し、さらに粒界での炭窒化物析出を抑制しているものと推察される。
O量は、0.0010%以上とすることでこのような効果が明確になるためこれを下限とする。一方でOが0.02%を超えると、このような効果が飽和する傾向となるだけでなく、r値が劣化するため0.02%を上限とする。Nの拡散と粒界炭窒化物の析出を抑制するという観点からは0.0050%以上の添加がより好ましいOの範囲である。
【0028】
Oは通常はFeの酸化物として存在するが、Al、Zr、Mg、Si、Mn、Ti、Nb、La、Ceなどの酸化物またはそれらの複合酸化物として存在しても構わない。また、酸化物の形態やサイズ、分布は特に限定しないが、表面積を大きくする観点で球状が好ましく、その鋼中に占める体積分率で1×10−5以上、平均酸化物直径は0.8μm以下であることが好ましい。これらの要件はいずれもCrとNの偏析に有効なサイトを極力増加させる観点に立つものである。
【0029】
固溶C量:CrあるいOを適正量添加しても、固溶C量が0.0040%を超えるとBHと常温遅時効性あるいは耐伸び劣化性の両立を図ることが困難になる。従ってその適正範囲を0.0040%以下、好ましくは0.0030%以下に制限した。
【0030】
固溶N量:固溶Nを積極的に利用することにより、低温塗装焼付条件でも大きな歪み時効硬化を得ることができる。固溶N量が0.0015%未満であるとBH150=40MPa以上を達成することができず、また0.0085%を超えると、BHと常温遅時効あるいは耐伸び劣化性の両立を図ることが困難になる。従ってその適正範囲を0.0015〜0.0085%に制限した。なお、より好ましい上限は0.0065%以下である。
【0031】
固溶C量+12/14×(固溶N量):固溶C量+12/14×(固溶N量)が0.0020%未満であると、BH150=40MPa以上を達成することができず、また0.012%を超えると、BHと常温遅時効あるいは常温延性劣化の両立を図ることが困難になる。従ってその適正範囲を0.0020〜0.012%に制限した。なお、より好ましい上限は0.0080%以下である。
【0032】
本発明では、上記した組成に加えて、更にa群〜e群のうちの1群または2群以上を含有しても、本発明の目的を達成することができる。
a群:Mo、Wの1種または2種の合計を0.1〜1.0%。
Mo、Wは炭窒化物形成元素であり、これらの元素の合計を0.1%以上含有することにより、熱間圧延中、冷却中、あるいは一次熱処理工程中に主に炭窒化物として析出させることで、鋼材の強度を調整するのに用いられる。しかしながら、合計で1.0%を超えると炭窒化物の析出量が多くなり、BH150=40MPa以上を得ることが難しくなり、また成形加工性の劣化も招く。従ってその合計量の範囲を0.1〜1.0%とした。
【0033】
b群:Nb、Ti、V、Taのうち1種または2種以上の合計を0.001〜0.2%。
Nb、Ti、V、Taは炭窒化物形成元素であり、鋼材のミクロ組織およびC量、N量を調整するのに用いられるので、1種又は2種以上の合計を0.001%以上含有することが好ましい。しかしながら合計で0.2%を超えると、炭窒化物の析出量が多くなり、BH150=40MPa以上を得ることが難しくなり、0.001%以下では添加効果が現れない。従ってその合計量の範囲を0.001〜0.2%とした。
【0034】
c群:Cu、Niのうち1種または2種の合計を:0.1〜4.0%以下。
CuとNiはミクロ組織および強度の制御に用いられるので、0.1%以上含有することが好ましい。しかしながら、添加量が4.0%を超えると熱間加工割れが起こり、またコスト的にも割高になる。従ってその適正添加範囲を4.0%以下、好ましくは3.0%以下に限定した。
【0035】
d群:Bを0.0003〜0.010%。
Bは0.0003%以上含有することにより粒界に偏析し、Pによる2次加工割れを抑制する効果があり、さらに成形加工性を改善させる効果がある。しかし、0.010%を超えると粒界に粗大析出物を形成して、加工割れが発生する。従ってその範囲を0.0003〜0.010%と限定した。
【0036】
e群:Ca、Mg、Zr、REMのうち1種または2種以上を合計で0.001〜0.01%。
Ca、Mg、ZrおよびREMは介在物の形態、分布の制御に用いる元素であり、1種又は2種以上を合計で0.001%以上含有することが好ましい。しかしながら合計の含有量が0.01%を超えると、成形加工性の悪化の原因となる。そのため合計量の範囲を0.001〜0.01%とした。なお、本発明において、REMとはLaおよびランタノイド系列の元素を指すものとする。
【0037】
本発明に係る鋼板はCrおよびOの効果を十分に発現させるために、フェライト面積率を80%以上、できれば95%以上とすることが好ましい。なお本発明においては、ポリゴナルフェライトの分率が100%の時に最も良好なBHと常温遅時効性と耐常温延性劣化のバランスが得られる。
【0038】
なお、本発明において「フェライト」とは、ISIJ international 35巻(1995)941〜944頁に示すような、ポリゴナルフェライト、擬ポリゴナルフェライトあるいはM/A複合体を含むグラニュラーベイニティックフェライトを指す。フェライト以外の残部組織はマルテンサイト、オーステナイト、ラス状ベイナイト、パーライトの1種又は2種以上を含有しても良い。なお、フェライトの平均結晶粒径は常温での伸び劣化を効果的に防止する観点から、8μm以上であることが望ましい。
【0039】
次に、BH量と常温時効による降伏伸び変化量と全伸びの変化量の限定理由について説明する。
本発明によって得られる鋼板は、BH150が40MPa以上、およびBH150/BH170が0.9以上である。本発明では、BH150が60MPa以上でも常温遅時効性と常温耐伸び劣化性を両立することが可能である。BHの上限は特に限定しないが、BH150が100MPaを超えると耐常温時効性を確保することが困難となる。
なおBH150およびBH170は、5%引張予変形後、150℃および170℃にて20分間の熱処理を施した後、再引張を行った際に、再引張時における下部降伏応力と予変形時の最大応力の差で評価されるBHを表す。
【0040】
常温遅時効性は、人工時効後の降伏点伸びによって評価するのが簡易で好適である。本発明によって得られる鋼板は、100℃にて1時間熱処理後の引張試験による降伏点伸びの増加量が0.6%以下で、さらに好ましくは0.3%以下である。
また本発明によって得られる鋼板は、100℃にて1時間熱処理後の引張試験による全伸びの低下量が3.0%以下、好ましくは2.0%以下である。
なお、本発明では低温の塗装焼付条件として、150℃×20分の熱処理を選択しているが、本発明が有効な成形加工後の焼付塗装温度T(℃)は、120℃以上であり、また焼付時間t(分)は、T・ln(t)>250以上であれば本発明の目的を達成することができる。
【0041】
次に、製造方法の限定理由について説明する。
熱間圧延に供するスラブは特に限定するものではない。すなわち、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものであればよい。また、鋳造後に直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
【0042】
熱延鋼板を最終製品とする場合には、以下のように製造条件を限定する必要がある。すなわち、熱延の仕上げ温度は、(Ar3 −150)℃以上とする。(Ar3 −150)℃未満では、加工性を確保するのが困難であったり板厚精度の問題を生じたりする。Ar3 点以上がより好ましい範囲である。仕上げ温度の上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、r値を確保するためには1000℃以下とすることが好ましい。
なお、熱延の加熱温度は特に限定するものではないが、固溶Nを確保するために窒化物を溶解させる必要のある場合には、1150℃以上とすることが望ましい。
【0043】
熱延後はCr含有量に応じて、680℃から少なくとも550℃までの間は、平均冷却速度が2.5×(Cr含有量)+2.5℃/s以上となるように冷却する必要がある。ここでCr含有量は質量%で表される量である。この温度域はCr炭窒化物の析出が急速に起こる温度域に相当し、これによってCr炭窒化物の析出が抑制され、BHに寄与する固溶Cあるいは固溶N量を調整する。高BH化という観点からは、冷却速度が5×(Cr含有量)+2.5℃/s以上がより好ましい。
平均冷却速度の上限は特に定めないが、あまり高すぎると組織が不均一になりやすいので1000℃/s以下とすることが好ましい。また550℃未満の温度域の冷却速度は特に制限しないが、1℃/s以上であることが好ましい条件である。
【0044】
巻取を行う場合は、巻取温度が550℃を超えると炭窒化物の析出が起こり、BH150=40MPaを達成することが困難となる。従ってその範囲を550℃以下に制限した。巻取り温度の下限は特に限定せず室温でも構わないが、後述の温度域で滞留時間を確保するため、100〜300℃とすることが熱効率上好ましい。
巻取りを行わない場合、550℃〜室温までの何れの温度まで冷却しても構わない。
【0045】
冷却あるいは巻取後は100〜300℃間で20s以上滞留させる。詳細なメカニズムは定かではないが、この工程中にCr原子と固溶NあるいはCr原子と固溶C原子とのペアリングが起こり、さらに酸化物周囲へのNあるいはCの偏析が起こると考えられ、常温保持中の降伏点伸び発現抑制および全伸び劣化抑制を得るために必須の工程である。100〜300℃間が結晶粒内において以上の原子移動を最も迅速に起こさせるための温度域であり、この温度範囲内の滞留時間が20s未満ではBH性と常温遅時効性および耐常温延性劣化のバランスを達成することができない。従って、滞留時間の範囲を20s以上に制限した。
なお、より優れた常温遅時効性および耐常温延性劣化特性を得るという観点からは、60s以上の保持がより好ましい。滞留時間の上限については特に定めないが、60000sを超えると粒界への粗大炭窒化物の析出が起こり、高BHが得られない場合があり、また伸び値が顕著に低下するので、その上限としては60000s以下であることが好ましい。
熱延後は必要に応じて酸洗し、その後インラインまたはオフラインで圧下率3%以下の調質圧延または圧下率40%程度までの冷間圧延を施しても構わない。
【0046】
次に冷延板あるいはめっき板を最終製品とする場合の製造条件について示す。
素材である熱延板の製造条件は特に規定する必要はなく、常法に従って行えばよい。続いて酸洗等の通常公知の処理を行い、冷間圧延を行う。
冷間圧延の条件については、圧延パスの回数、圧下率については特に規定する必要はなく常法に従えばよい。ただし、冷間圧延の圧下率が90%超では設備への負荷が過大となり、さらに製品の機械的性質の異方性が大きくなるので、90%以下であることが好ましい。
【0047】
連続焼鈍工程又は連続焼鈍及びめっき工程における加熱速度については常法に従えばよい。一次熱処理時の最高到達温度については、(Ac3 −150)℃未満では再結晶が完了せず、加工性が劣悪となる。一方、一次熱処理温度が(Ac3 +120)℃を超えると、転位密度の高い組織あるいは第2相分率が大きくなり、BH性と常温遅時効性および耐常温延性劣化特性を両立することが困難になる。従って一次熱処理の最高到達温度の範囲を(Ac3 −150)〜(Ac3 +120)℃に制限した。
【0048】
一次熱処理終了後、680℃から550℃までは、Cr含有量に応じて680℃から少なくとも550℃までの間は、平均冷却速度が2.5×(Cr含有量)+2.5℃/s以上となるような冷却を行なう。この温度域はCr炭窒化物の析出が急速に起こる温度域に相当し、これによって炭窒化物の析出が抑制され、BHに寄与する固溶Cあるいは固溶N量を調整する。
高BH化という観点からは、平均冷却速度が5×(Cr含有量)+2.5℃/s以上がより好ましい。平均冷却速度の上限は特に定めないが、あまり高すぎると組織が不均一になりやすいので1000℃/s以下とすることが好ましい。
【0049】
溶融亜鉛めっきを施す場合には、一次熱処理後、少なくとも680℃から550℃までの平均冷却速度が2.5×(Cr含有量)+2.5℃/s以上、好ましくは5×(Cr含有量)+2.5℃/s以上、更に好ましくは10℃/s以上となるような冷却を施した後、亜鉛めっきを行い、その後必要に応じてめっき相の合金化処理を行う。亜鉛めっきおよび合金化の条件は特に定めないが、添加したNあるいはCの粒界への析出を抑止する観点からめっき浴中への浸漬時間および合金化炉中の保持時間はそれぞれ40s以下、より好ましくは20s以下であることが好ましい。
溶融亜鉛めっきを施さない場合は、1次熱処理後、上記の550℃までの冷却をした後は、過時効処理として550℃〜室温までの何れの温度まで冷却しても構わない。
【0050】
1次熱処理後、あるいは過時効帯を利用した熱処理後、あるいはめっき処理後(合金化処理後も含む)に100〜300℃間の滞留時間が20s以上である冷却を行う。なお、過時効処理を行なう場合には、前述の温度域で滞留時間を確保するため、100〜300℃とすることが熱効率上好ましい。なお、100〜300℃間の滞留時間が20s以上である冷却工程は、上に述べたように常温保持中の降伏点伸び発現抑制および全伸び劣化抑制を得るために必須の工程である。
100〜300℃間は結晶粒内において以上の原子移動を最も迅速に起こさせるための温度域であり、この温度範囲内の滞留時間が20s未満では、BH性と常温遅時効性および耐常温延性劣化のバランスを達成することができない。従って滞留時間の範囲を20s以上に制限した。
なお、より優れた常温遅時効性および常温耐伸び劣化性を得るという観点からは、60s以上の保持がより好ましい。滞留時間の上限については特に定めないが、60000sを超えると粒界への粗大炭窒化物の析出が起こり、高BHが得られない場合があり、また伸び値が顕著に低下するので、その上限としては60000s以下であることが好ましい。
【0051】
調質圧延は、常温遅時効性の向上と形状強制のために行い、圧下率3%以下の範囲で行うのがよい。3%を超えると常温保持中の全伸びの劣化量が大きくなる傾向があるので、これを上限とする。
【0052】
1次熱処理後にめっき工程あるいはめっき合金化工程を経ずに作られた本発明の冷延鋼板は、各種めっき用原材として好適である。めっき層の形成は電気めっき法、溶融めっき法のいずれでも良く、めっきの主成分としては亜鉛、クロム、錫、ニッケルが例として挙げられる。
【0053】
固溶N量はJISA5523に記述のN定量方法に準じて、ろ液を分析することにより求める。また固溶C量は、初めに全C量を求め、次いで試料を適切な電解液、例えばテトラメチルアンモニウムクロリド+アセチルアセトン混合液で電解した後、十分に洗浄した抽出残渣を酸素気流中高周波燃焼赤外線吸収法により分析しこれを析出C量とし、最後に全C量から析出C量を引くことにより求める。不溶解残さをろ過するフィルターとしてはAgを使用するのが好適である。
【0054】
なお、固溶C量および固溶N量はアトムプローブ電界イオン顕微鏡法により測定することも可能である。この場合、データを3次元原子マップで表示した時に1nm3 の体積の中に炭素原子と窒素原子が合計で5個以上含む領域を集合体と判断し、これを除いた領域のマトリックス中の平均CあるいはN濃度を固溶C量あるいは固溶N量とする方法が簡易である。なお、固溶C量あるいは固溶N量を内部摩擦法で定量することも可能であるが、スネークピークの高さは添加した合金元素の量により変化してしまうため、固溶C量あるいは固溶N量の測定法としては好ましくない。
【0055】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
表1に示す成分の鋼を溶製し、表2に示す条件で熱間圧延工程を行った。なお、熱間圧延時のスラブ加熱温度は1050〜1250℃で、最終板厚を4mmとした。調質圧延は全て1.5%の伸び率で行った。このようにして得られた鋼板について、引張試験、BH試験および組織観察を行った。
【0056】
また、表1に示す成分の鋼について、1050〜1250℃にスラブを再加熱し、熱間圧延終了温度840〜930℃で最終板厚4mmまで熱延し、450〜550℃で巻取り、このようにして得られた熱延鋼板を酸洗の後、70〜85%の冷延率で冷間加工を行い、脱脂処理を行ったのち、表3に示す条件で連続熱処理および連続亜鉛めっき工程を行った。調質圧延率は全て1.5%で行った。
このようにして得られた鋼板について、引張試験、BH試験および組織観察を行った。各試験、観察の条件を以下に示す。
【0057】
降伏伸びあるいは全伸びの変化を観察するための引張試験はJIS5号試験片を用い、歪み速度10−3/sの条件で行った。常温保持中の材質変化は、100℃×1hrの促進時効前後の引張試験結果を比較することにより評価した。一方、BH量を観察するための引張試験はJIS13B試験片を用い、歪み速度10−3/sの条件で行った。
BH試験の予変形量は5%、塗装焼付処理に対応する時効条件は170℃×20分あるいは150℃×20分で行い、再引張時において下部降伏点で評価したBH量をそれぞれBH170,BH150とした。フェライトの平均結晶粒径はJISG0552の試験方法に従って行った。試験結果を表4に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【発明の効果】
本発明は、電着塗装焼付処理を施す自動車用の構造部材・足廻り部材・パネル部材用途、電機製品用内外板パネル、建築物等の構造物用途に好適な、成形限界値が優れ、常温保持中の材質劣化が少なく、高い歪み硬化能を有する歪み時効硬化型鋼板を安価に提供することができ、工業的に価値が高い。さらに本発明は、従来より低温での塗装焼付でも高い歪み時効硬化を達成できることから、製造コスト削減の効果も有する。
Claims (11)
- 質量%で、
C :0.2%以下、
Si:0.7%以下、
Mn:3.0%以下、
P :0.1%以下、
S :0.02%以下、
N :0.0030〜0.0180%、
Cr:0.2〜1.5%、
Al:0.020%以下、
O :0.0010〜0.02%
を含み、かつCrとNの量比が質量%でCr/N:25以上を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに
固溶C:0.0040%以下、
固溶N:0.0015〜0.0085%、
固溶C+12/14×(固溶N):0.0020〜0.012%
であり、フェライト面積率が80%以上であることを特徴とする常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板。 - 前記組成に加えてさらに、下記a群〜e群の1群または2群以上を含むことを特徴とする請求項1記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板。
a群:Mo、Wのうち1種または2種の合計を0.1〜1.0%。
b群:Nb、Ti、V、Taのうち1種または2種以上の合計を0.001〜0.2%。
c群:Cu、Niのうち1種または2種の合計を:0.1〜4.0%以下。
d群:Bを0.0003〜0.010%。
e群:Ca、Mg、Zr、REMのうち1種または2種以上を合計で0.001〜0.01%。 - 5%引張変形後170℃×20分の熱処理を施した際の焼付硬化量BH170と、5%引張変形後150℃×20分の熱処理を施した際の焼付硬化量BH150を比較した際に、BH150/BH170:0.9以上の関係を満たし、かつBH150が40MPa以上であり、さらに100℃×1hrの時効による全伸びの低下量が3%以下、降伏点伸びの増加量が0.6%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載の鋼板に電気めっき又は溶融めっきが施されていることを特徴とする常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板。
- 請求項1又は2に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 −150)℃以上で熱間圧延を行い、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上で冷却し、次いで550℃以下で巻取り、100〜300℃間の滞留時間が20s以上である冷却を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1) - 請求項1又は2に記載の化学成分を有するスラブを(Ar3 −150)℃以上で熱間圧延を行い、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上で冷却し、次いで100〜300℃間で20s以上滞留させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1) - 請求項1又は2に記載の化学成分を有する熱延鋼板を冷間圧延した後、該冷延板を(Ac3 −150)℃〜(Ac3 +120)℃間の最高到達温度で一次熱処理した後、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上で冷却し、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である時効処理または冷却を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1) - 平均冷却速度Y℃/s以上で冷却した後、過時効処理を行い、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である時効処理または冷却を行うことを特徴とする請求項7記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
- 請求項1又は2に記載の化学成分を有する熱延鋼板を冷間圧延した後、該冷延板を(Ac3 −150)℃〜(Ac3 +120)℃間の最高到達温度で一次熱処理した後、680℃から550℃の間を下記(1)式で計算される平均冷却速度Y℃/s以上で冷却し、次いで前記鋼板表面に溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である時効処理または冷却を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
Y=2.5×Cr含有量+2.5(℃/s) …………(1) - 溶融亜鉛めっき層を形成した後、合金化処理を行い、次いで100〜300℃間の滞留時間が20s以上である時効処理または冷却を行うことを特徴とする請求項9記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
- 請求項5〜10の何れか1項に記載の方法により製造した鋼板に、伸び率3%以下の調質圧延またはレベラー加工を施すことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の常温での耐伸び劣化性、常温遅時効性および低温焼付硬化特性に優れた歪時効硬化型鋼板を製造する方法。
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