JP4259106B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子ならびに該有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)は、自己発光型デバイスであり、広視野角、高コントラスト、高速応答性などの利点を有することから、近年、実用化を含めた開発が盛んになっている。
有機EL素子は、一般に基材上に、対向する陽極と陰極と、これらの電極間に狭持された1層以上の有機化合物層とを備えた構造を有しており、前記有機化合物層内に蛍光性化合物を含有しているため、消燈時にも外部から入射する紫外線により蛍光発光してしまい、コントラスト低下の原因となっていた。
【0003】
このため、発光側(光取り出し側)となる透明導電性基板に紫外線吸収剤を添加することによりコントラストの向上を試みたが、紫外線吸収剤を含有する基材に、透明導電膜であるITO(インジウム錫酸化物)を、従来の物理的気相堆積法(PVD法)、たとえば、スパッタ法で形成しようとした場合には、基材表面に紫外線吸収剤が滲出する問題があった。
【0004】
すなわち、通常、有機EL素子の作製においては、基材に電極となる透明導電膜を形成した後、該透明導電膜表面を清浄にするために有機溶媒で洗浄を行うが、上記のように基材表面への紫外線吸収剤の滲出を伴った状態で、透明導電膜を形成した場合には、この洗浄工程の際に透明導電膜が基材から剥がれてしまうという問題があった。
【0005】
さらに、基材の透明導電膜を形成していない面からは紫外線吸収剤が揮発してしまい、工程を汚染するとともに、揮発により基材の紫外線吸収剤含有量が減少し、紫外線吸収剤によるコントラスト向上の効果も充分に発揮できなかった。
他にITO膜を形成する方法としては、ゾルゲル法、熱CVD法などがあるが、ゾルゲル法では、基材との接着性が悪く、電気特性もPVD法に比較すると劣る。また、熱CVD法は400℃から500℃の高温処理が必要でプラスチックフィルム基材への製膜は困難であるという問題があった。
【0006】
また、従来、透明導電膜、金属酸化物層、紫外線吸収剤を含有する硬化樹脂層、透明高分子フィルム、硬化樹脂層が積層されている構造の透明導電性基板が開示されている(特許文献1参照)。
しかしながら、この場合にも、高温下のスパッタ法で透明導電膜を形成しているため、該透明導電膜の形成時に、紫外線吸収剤が透明導電膜と金属酸化物層との間に滲出してしまう。このため、その後の有機溶媒、たとえばイソプロパノールによる洗浄時に、透明導電膜が部分的に基板から剥離して浮いてしまい、該透明導電膜を電極として有機EL素子を形成すると、その部分が欠陥となり、ダークスポットが発生するという問題があった。
【0007】
本発明者らは、このような状況に鑑みて、鋭意検討した結果、紫外線吸収剤を含有する基材を、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に放電することによりプラズマ状態とした反応性ガスに晒すことによって、該基材上に透明導電膜を形成することにより、紫外線吸収剤を含有し、かつ、有機溶媒で洗浄した際にも膜剥がれが無く、層間密着性の良好な有機EL素子用透明導電性基板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−52636号公報
【0009】
【発明の目的】
本発明は、紫外線吸収剤を含有する、層間密着性の良好な有機EL素子用透明導電性基板、これを用いた高コントラストの有機EL素子および該有機EL素子を備えた有機EL表示装置を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明にかかる有機EL素子用透明導電性基板は、
紫外線吸収剤を含有する基材と、
該基材を、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に放電することによりプラズマ状態とした反応性ガスに晒すことによって、該基材上に形成させた透明導電膜とからなることを特徴としている。
【0011】
本発明では、前記反応性ガスは、有機金属化合物を含有することが好ましい。
また、本発明では、前記反応性ガスは、さらに還元性ガスを含有することが望ましく、前記還元性ガスは水素であることが望ましい。
さらに本発明では、前記透明導電膜は、インジウム錫酸化物(ITO)を主成分とすることが好ましい。
【0012】
本発明にかかる有機EL素子は、前記有機EL素子用透明導電性基板上に、1層以上の有機化合物層と、対向電極とを備えてなることを特徴としている。
また、本発明では、前記有機化合物層は、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を少なくとも1種含有していることが好ましい。
本発明にかかる有機EL表示装置は、前記有機EL素子を備えたことを特徴としている。
【0013】
本発明にかかる有機EL素子用透明導電性基板の製造方法は、紫外線吸収剤を含有する基材を、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に放電することによりプラズマ状態とした反応性ガスに晒すことによって、該基材上に透明導電膜を形成することを特徴としている。
本発明では、前記対向する電極間に、0.5kHzを超えた高周波電圧で、かつ、0.1W/cm2以上、好ましくは1W/cm2以上100W/cm2以下の電力を供給して放電させ、反応性ガスをプラズマ状態とすることが好ましい。
【0014】
また、前記高周波電圧の波形としては、矩形波、パルス波など任意のものを用いることができるが、連続したサイン波であることが好ましい。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、本発明について具体的に説明する。
<有機EL素子用透明導電性基板およびその製造方法>
本発明にかかる有機EL素子用透明導電性基板は、紫外線吸収剤を含有する基材と、該基材を、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に放電することによりプラズマ状態とした反応性ガスに晒すことによって、該基材上に形成させた透明導電膜とからなる。
《基材》
本発明に用いられる基材としては、紫外線吸収剤を含有させられるものであれば特に限定されないが、可撓性が高く、軽量で割れにくいこと、有機EL素子のさらなる薄型化を可能にできる点から樹脂基材が好ましい。
【0016】
前記樹脂基材としては、特に限定はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレートなどのセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂などのシクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、有機無機ハイブリッド樹脂などを挙げることができる。有機無機ハイブリッドとしては、たとえば、特開2000−22038号公報に記載の有機樹脂とゾルゲル反応を組み合わせて得られるものが挙げられる。これらのうちでは、特にアートン(商品名JSR(株)製)あるいはアペル(商品名三井化学(株)製)といったシクロオレフィン系樹脂が好ましい。これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。
【0017】
また、本発明においては、前記樹脂基材の片面または両面に下引き層を有していてもよく、下引き層の具体例としては、ゾル−ゲル法により形成されたシリカ層、ポリマーの塗布などにより形成された有機層などが挙げられる。前記有機層としては、たとえば、重合性基を有する有機材料膜に紫外線照射や加熱などの手段で後処理を施した膜を含む。
【0018】
さらに、前記樹脂基材の片面または両面にバリア層を有していてもよい。バリア層は、水分や酸素などが素子内に入ることを抑止する機能を有していればよく、具体的にはSiO、SiO2、TiO2、CaO、BaO、ITO、IZOなどの金属酸化物、Si3N4などの金属窒化物、SiOxNyで表されるような金属酸窒素化物、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレンなどの重合体が挙げられる。バリア層は、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法、塗布法、インクジェット法、印刷法などの任意の方法で形成することができる。基材の厚さとしては、10μm以上1cm以下であることが素子の生産上好ましい。
《紫外線吸収剤》
本発明で用いられる紫外線吸収剤としては、無機紫外線吸収剤または有機紫外線吸収剤挙げられる。これらのうちでは、有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤(たとえば、サリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリチル酸など)、安息香酸系紫外線吸収剤(たとえば、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート)などが挙げられる。これらのうち、好ましく用いられるのは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤等であり、本発明に記載の効果を奏するという観点から、不要な着色等がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0019】
本発明に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
【0020】
【化1】
Figure 0004259106
【0021】
式〔1〕中、R1、R2、R3、R4およびR5は同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基(たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、アミノプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、クロロブチル、n−アミル、iso−アミル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ステアリルアミドブチル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなど)、アルケニル基(たとえば、ビニル、アリル、メタアリル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、オクタデセニルなど)、アリール基(たとえばフェニル、4−メチルフェニル、4−エトキシフェニル、2−ヘキソキシフェニル、3−ヘキソキシフェニルなど)、アルコキシ基(たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、クロロブトキシ、デコキシ、ジアミノフェノキシ、エトキシ、ペンタデコキシ、オクタデコキシなど)、アシルオキシ基(たとえば、カルボメトキシ、カルボブトキシ、カルボヘキソキシ、カルボペンタデコキシなど)、アリールオキシ基(たとえば、フェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−プロピルフェノキシ、3−アミルフェノキシなど)、アルキルチオ基(たとえば、メチルチオ、エチルチオ、t−ブチルチオ、t−オクチルチオ、ベンジルチオなど)、アリールチオ基(たとえば、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、エチルフェニルチオ、メトキシフェニルチオ、エトキシフェニルチオ、ナフチルチオなど)、モノまたはジアルキルアミノ基(たとえば、N−エチルアミノ、N−t−オクチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジ−t−ブチルアミノなど)、アシルアミノ基(たとえば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、メタンスルホニルアミノなど)、酸素または窒素を含む5または6員の複素環基(たとえば、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ、ピペラジノなど)を示し、R4とR5は閉環して炭素原子からなる5または6員環を形成してもよい。
【0022】
一般式〔1〕において、R1〜R5で示される置換基は、炭素数5〜36が好
ましく、アルキル基は炭素数1〜18であることが好ましい。
上記一般式〔1〕で表される化合物例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1−1)2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−2)2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−3)2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
(1−4)2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
(1−5)2−(2′−ヒドロキシ−5′−イソオクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−6)2−(2′−ヒドロキシ−5′−n−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−7)2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−8)2−(2′−ヒドロキシ−5′−ドデシルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−9)2−(2′−ヒドロキシ−5′−ヘキサデシルフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−10)2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−アミル−5′−ベンゾフェニル)−ベンゾトリアゾール、
(1−11)2−(2′−ヒドロキシ−3′−ドデシル−5−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール。
【0023】
なお、本発明においては、上記の化合物を含めて本発明と同一の出願人による特開昭60−128434号公報第10頁〜第12頁に記載されている化合物例の(IV−1)〜(IV−39)を用いることができる。
本発明に用いられる上記のベンゾトリアゾール系化合物は、たとえば特公昭44−29620号公報に記載の方法、またはそれに準じた方法により容易に合成することができる。
【0024】
また、本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤のひとつであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
【0025】
【化2】
Figure 0004259106
【0026】
式〔2〕中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、およびフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基およびフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n-1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。mおよびnは1または2を表す。
【0027】
上記において、アルキル基としては、たとえば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としてはたとえば、炭素数18までのアルコキシ基、アルケニル基としてはたとえば、炭素数16までのアルケニル基でたとえばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換基としてはハロゲン原子、たとえば塩素原子、臭素原子、フッ素原子など、ヒドロキシル基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
【0028】
以下に一般式〔2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
【化3】
Figure 0004259106
【0030】
【化4】
Figure 0004259106
【0031】
【化5】
Figure 0004259106
【0032】
本発明に用いる紫外線吸収剤の使用量は、化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常は、樹脂基材を構成する樹脂に対して0.2〜20質量%の範囲が好ましく、0.6〜5質量%の範囲がさらに好ましい。
添加方法としては、前記紫外線吸収剤を予め有機溶剤(たとえばメタノール、メチレンクロライドなど)に溶解したものを本発明にかかる基材を作製するドープ組成物中に添加してもよく、紫外線吸収剤を直接、該ドープ組成物中に添加してもよい。
【0033】
また、本発明において好ましく用いられる紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤などとともに、樹脂などの劣化防止剤として用いられるエポキシ系化合物、弱有機酸、飽和多価アルコール類や有機材料の酸化防止剤として用いられるヒンダードフェノール系、チオエーテル系、亜リン酸エステル系などの化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
《有機EL素子用透明導電性基板の製造方法》
本発明では、上記の樹脂基材および紫外線吸収剤を用いて、公知の方法を採用して、紫外線吸収剤を含有する基材を作製した後、該基材を大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に放電することによりプラズマ状態とした反応性ガスに晒すこと(以下、大気圧プラズマCVD処理ともいう。)によって、該基材上に透明導電膜を形成し、紫外線吸収剤を含有した、有機EL素子用透明導電性基板を作製する。ここで大気圧近傍とは、20kPa〜110kPaの圧力をいい、さらに好ましくは93kPa〜104kPaをいう。
【0035】
前記大気圧プラズマCVD処理によれば、基板温度を制御できる上、減圧とする必要がないことから、紫外線吸収剤を含有する基材を用いて、該基材上に透明導電膜を形成する際にも、該基材から紫外線吸収剤が滲出することがない。したがって、その後の有機溶媒による洗浄においても、透明導電膜の剥離がなく、層間密着性に優れた有機EL素子用透明導電性基板を得ることができる。
【0036】
まず、このような大気圧プラズマCVD処理に用いることができる装置について、図を参照しながら説明する。
図1は、プラズマ製膜装置に備えられるプラズマ放電処理室の1例である。このプラズマ放電処理室は、紫外線吸収剤を含有した長尺状の樹脂基材に透明導電膜を形成するのに適している。
【0037】
図1のプラズマ放電処理室10において、基材(紫外線吸収剤を含有した樹脂基材を示す、以下同じ。)Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻き回されながら搬送される。ロール電極25の周囲に固定されている複数の固定電極26はそれぞれ円筒で構成され、ロール電極25に対向させて設置される。
【0038】
プラズマ放電処理室10を構成する放電容器11はパイレックス(R)ガラス製の処理容器が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。たとえば、アルミニウムまたはステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂などを貼り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0039】
ロール電極25に巻き回された基材Fは、ニップローラ15、16で押圧され、ガイドローラ24で規制されて放電容器11内部に確保された放電処理空間に搬送され、プラズマ放電処理され、次いで、ガイドローラ27を介して次工程に搬送される。本発明では、真空系ではなくほぼ大気圧に近い圧力下で放電処理により製膜できることから、このような連続工程が可能となり、高い生産性をあげることができる。
【0040】
なお、仕切板14は前記ニップローラ15、16に近接して配置され基材Fに同伴する空気が放電容器11内に進入するのを抑制する。この同伴される空気は、放電容器11内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ15および16により、それを達成することが可能である。
【0041】
なお、放電プラズマ処理に用いられる混合ガスは、給気口12から放電容器11に導入され、処理後のガスは排気口13から排気される。
ロール電極25はアース電極であり、印加電極である複数の固定電極26との間で放電させ、当該電極間に前述したような反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極25に巻き回しされた長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、透明導電膜を形成する。
【0042】
前記電極間には、高いプラズマ密度を得て製膜速度を大きくし、緻密な膜を形成するため、下記の周波電圧で、下記の電力を供給することが好ましい。具体的には、対向する電極間に、0.5kHzを越えた周波数で、かつ、0.1W/cm2以上の電力を供給し、反応性ガスを励起してプラズマを発生させる。本発明において、電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下であり、さらに好ましくは15MHz以下である。また、周波数の下限値としては、好ましくは0.5kHzを超え、さらに好ましくは10kHz以上であり、より好ましくは100kHz以上である。また、電極間に供給する電力の下限値は、好ましくは0.1W/cm2以上であり、より好ましくは1W/cm2以上である。上限値としては、好ましくは100W/cm2以下、さらに好ましくは60W/cm2以下である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0043】
また、電極間に印加する前記周波電圧の波形は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であってもよいが、製膜速度が大きくなる点から、サイン波であることが好ましい。
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものが好ましく挙げられる。少なくとも固定電極26とロール電極25のいずれか一方に誘電体を被覆したもの、好ましくは、両方に誘電体を被覆したものが望ましい。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物が好ましく挙げられる。
【0044】
電極25、26の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から、0.5mm〜20mmが好ましく、より好ましくは1mm±0.5mmの範囲である。この電極間の距離は、電極周囲の誘電体の厚さ、印加電圧の大きさを考慮して決定される。
【0045】
また、基材を電極間に載置あるいは電極間を搬送してプラズマに晒す場合には、基材を片方の電極に接して搬送できるロール電極仕様にするだけでなく、さらに誘電体表面を研磨仕上げし、電極の表面粗さRmax(JIS B 0601)を10μm以下にすることで誘電体の厚みおよび電極間のギャップを一定に保つことができ放電状態を安定化できる。さらに、誘電体の熱収縮差や残留応力による歪みやひび割れをなくし、かつ、ノンポーラスな高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることができる。
【0046】
また、金属母材に対する誘電体被覆による電極製作において、前記のように、誘電体を研磨仕上げすることや、電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であるので、母材表面に、応力を吸収できる層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングすることが好ましい。特に材質としては琺瑯などで知られる溶融法により得られるガラスであることがよく、さらに導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密かつひび割れなどの発生しない良好な電極を得ることができる。
【0047】
また、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10体積%以下まで緻密に行い、さらにゾルゲル反応により硬化する無機質の材料を用いて封孔処理を行うことが挙げられる。ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が好ましく、さらに封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、より一層無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極を得ることができる。
【0048】
図2(a)および図2(b)はロール電極25の一例としてロール電極25c、25Cを示したものである。
アース電極であるロール電極25cは、図2(a)に示すように、金属などの導電性母材25aに対し、セラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体を1mm被覆し、ロール径を被覆後φ200mmとなるように製作し、アースに接地する。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ、窒化珪素などが好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、さらに好ましく用いられる。
【0049】
あるいは、図2(b)に示すロール電極25Cのように、金属などの導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせから構成してもよい。ライニング材としては、珪酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩系ガラス、バナジン酸塩ガラスが好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工しやすいので、さらに好ましく用いられる。
【0050】
金属などの導電性母材25a、25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄などの金属などが挙げられるが、加工の観点からはステンレスが好ましい。
また、図示しないが、実施の形態によっては、ロール電極の母材は冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用することができる。
【0051】
さらに、ロール電極25c、25C(ロール電極25も同様)は、図示しないドライブ機構により軸部25d、25Dを中心として回転駆動されるように構成されている。
図3(a)は固定電極26の概略斜視図である。なお、固定電極は、円筒形状に限らず、図3(b)の固定電極36のような角柱型でもよい。円柱型の電極26に比べて、角柱型の電極は放電範囲を広げる効果があるので、形成する膜の性質などに応じて好ましく用いられる。
【0052】
また、固定電極26および36のいずれであっても上記記載のロール電極25c、ロール電極25Cと同様な構造を有する。すなわち、中空のステンレスパイプ26a、36aの周囲を、ロール電極25(25c、25C)と同様に、誘電体26b、36bで被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。誘電体26b、36bは、セラミック被覆処理誘電体およびライニング処理誘電体のいずれでもよい。
【0053】
なお、固定電極は誘電体の被覆後φ12mmまたはφ15mmとなるように製作され、当該電極の数は、たとえば上記ロール電極の円周上に沿って14本である。
図4は、プラズマ製膜装置に備えられるプラズマ放電処理室の別の1例である。図4中、プラズマ放電処理室30は、図3(b)の角型の固定電極36をロール電極25の周りに配設した構造を有する。なお、図4において、図1と同じ部材については同符号を付して説明を省略する。
【0054】
図5に、図4のプラズマ放電処理室30が備えられたプラズマ製膜装置の例を示す。図5のプラズマ製膜装置50においては、プラズマ放電処理室30の他に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット55などが配置されている。電極冷却ユニット55は、冷却剤の入ったタンク57とポンプ56とからなる。冷却剤としては、蒸留水、油などの絶縁性材料が用いられる。
【0055】
図5のプラズマ放電処理室30内の電極間のギャップは、たとえば1mm程度に設定される。このようなプラズマ放電処理室30内にロール電極25、固定電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52より供給し、放電容器11内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し、不要分については排気口13より排気する。
【0056】
次に電源41により固定電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材FFからロール54を介して基材が供給され、ガイドロール24を介して、プラズマ放電処理室30内の電極間をロール電極25に片面接触した状態で搬送される。このとき放電プラズマにより基材Fの表面が放電処理され、その後にガイドロール27を介して次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極25に接触していない面のみ放電処理がなされる。
【0057】
また、放電時の高温による悪影響、たとえば、基材の損傷、紫外線吸収剤の基材からの滲出を防止するため、基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満、さらに好ましくは常温〜100℃内で抑えられるように必要に応じて電極冷却ユニット55で冷却する。
図6は、本発明に用いることができるプラズマ製膜装置の別の一例である。このプラズマ製膜装置60は、予めプラズマ状態にした反応性ガスを基材上に噴射して透明導電膜を形成するためのものである。
【0058】
図6のプラズマ製膜装置において、35aは誘電体、35bは金属などの導電性母材、65は電源である。金属などの導電性母材35bに誘電体35aを被覆したスリット状の放電空間に、上部から不活性ガスおよび反応性ガスからなる混合ガスを導入し、電源65により高周波電圧を印加することにより反応性ガスをプラズマ状態とし、該プラズマ状態の反応性ガスを基材61上に噴射することにより基材61表面に膜を形成する。なお、金属などの導電性母材および誘電体としては、上述したものを用いることができる。
【0059】
図5の電源41および図6の電源65などのプラズマ製膜装置の電源は、特に限定されないが、ハイデン研究所製インパルス高周波電源(連続モードで使用100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)などを使用することができる。
【0060】
このようなプラズマ製膜装置を用いて、後述する反応性ガスの存在下で、大気圧プラズマCVD処理することにより、紫外線吸収剤を含有する基材上に透明導電膜を形成することができる。
前記透明導電膜の膜厚は、反応性ガスの濃度を上げたり、プラズマ放電処理の時間を増やしたり、処理回数を重ねたりすることによって調整することができるが、通常0.1nm〜1000nmの範囲である。
【0061】
次に、前記大気圧プラズマ放電処理に用いる反応性ガスについて説明する。
本発明の有機EL素子用透明導電性基板の製造方法において、使用するガスは、基材上に設けようとする透明導電膜の種類によって異なるが、基本的には、キャリアとなる不活性ガスと、透明導電膜を形成するためにプラズマ状態となる反応性ガスとの混合ガスである。
【0062】
なお、本発明で用いる反応性ガスには、還元性ガスが含有されることが好ましい。この還元性ガスとしては、分子内に酸素を含まない、化学的還元性を有する無機ガスが挙げられる。具体的な例としては、水素および硫化水素を挙げることができ、水素が好ましい。還元性ガスの量は、混合ガス全量に対して、0.0001〜5.0体積%の範囲で用いることができ、0.001〜3.0体積%が好ましい。還元性ガスは、透明導電膜を形成する反応性ガスに作用し、良好な電気特性を有する透明導電膜を形成させる効果があると考えられる。
【0063】
さらに、前記混合ガスは実質的に酸素ガスを含まないことが好ましい。ここで、実質的に酸素ガスを含まないとは、上述したような還元性ガスによる良好な電気特性を付与する作用を阻害しないことを意味する。すなわち、酸素ガスの存在は、透明導電膜の電気特性を劣化させる傾向があり、劣化させない量であれば存在していてもかまわない。実質的に酸素ガスを含まない雰囲気を形成するためには、用いる不活性ガスとして高純度ガスを用いることが好適である。
【0064】
前記不活性ガスとしては、窒素ガス、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどが挙げられるが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
反応性ガスは、放電空間でプラズマ状態となり、透明導電膜を形成する成分を含有するものであり、β−ジケトン金属錯体、金属アルコキシド、アルキル金属などの有機金属化合物が用いられ、これらのうちでは、分子内に酸素原子を有する有機金属化合物が好ましい。具体的には、たとえば、インジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、インジウムメチル(トリメチル)アセチルアセテート、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシド、インジウムトリフルオロペンタンジオネート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、ジンクアセチルアセトナートなどを挙げることできる。
【0065】
これらのうち、インジウムスズ酸化物(ITO)を主成分とする透明導電膜を得る点からは、インジウムアセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル3,5−ヘプタンジオネート)インジウム、ジ−n−ブチルジアセトキシスズを用いることが好ましい。なお、これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
これらの化合物を反応性ガスとして用いる際には、放電空間である電極間に、常温常圧で、気体、液体、固体のいずれかの状態で導入すればよい。すなわち、前記化合物が気体の場合は、そのまま放電空間に導入でき、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射などの手段により気化させて使用すればよい。その際に溶媒によって希釈して使用してもよく、希ガスでバブリングして反応性ガスとして使用してもよい。前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒およびこれらの混合溶媒が使用できる。
【0067】
前記反応性ガスは、混合ガス全量に対して、0.01〜10体積%の量で含有させることが好ましく、0.1〜5体積%の量で含有させることがより好ましい。
このように本発明では、透明導電膜の形成するための反応性ガスに有機金属化合物を使用するため、形成された透明導電膜は微量の炭素を含有している場合がある。その場合の炭素含有率は、0〜5.0原子数濃度であることが好ましく、0.01〜3.0原子数濃度の範囲内にあることがより好ましい。このような濃度で炭素を含有している透明導電膜は柔軟な膜となり、基材との密着性が向上する。
<有機EL素子>
本発明にかかる有機EL素子は、紫外線吸収剤を含有した前記有機EL素子用透明導電性基板上に、1層以上の有機化合物層(以下、有機EL層ともいう。)と、対向電極とを備えてなる。ここで、前記有機化合物層には、少なくとも発光層が含まれるが、発光層とは、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指し、具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する有機化合物を含有する層のことを指す。
【0068】
本発明にかかる有機EL素子は、必要に応じ、前記発光層の他に、正孔注入層(陽極バッファー層)、電子注入層(陰極バッファー層)、正孔輸送層、電子輸送層、正孔阻止層および電子阻止層を有していてもよく、これらの層が陰極と陽極とで狭持された構造をとる。
具体的には、
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
などの構造が挙げられる。
《発光層》
上記発光層は、発光層自体に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層などを設けてもよい。すなわち、発光層に(1)電界印加時に、陽極または正孔注入層より正孔を注入することができ、かつ陰極または電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能のうちの少なくとも1つ以上の機能を付与してもよく、この場合は、発光層とは別に正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層の少なくとも1つ以上は設ける必要がなくなることになる。
【0069】
また、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層および電子輸送層などに発光する化合物を含有させることで、発光層としての機能を付与させてもよい。なお、発光層は、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送機能に大小があってもよいが、少なくともどちらか一方の電荷を移動させる機能を有するものが好ましい。
【0070】
発光層に使用される材料(以下、発光材料という。)は、蛍光または燐光を発する有機化合物または錯体であることが好ましく、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
このような発光材料は主に有機化合物であり、所望の色調により、たとえば、Macromol.Synth.125巻17頁〜25頁に記載の化合物などを用いることができる。
【0071】
また、発光材料は、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でもよく、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
さらに、発光層にはドーパント(ゲスト物質)を併用してもよく、有機EL素子のドーパントとして使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0072】
ドーパントの具体例としては、たとえばキナクリドン、DCM(ジシアノメチレンピラン)、クマリン誘導体、ローダミン、ルブレン、デカシクレン、ピラゾリン誘導体、スクアリリウム誘導体、ユーロピウム錯体などが挙げられる。
また、燐光性化合物をドーパントとして用いることもできる。この場合、燐光性化合物とは、25℃において燐光量子収率が0.001以上であるものを意味し、好ましくは周期律表でVIII族の金属を中心金属とする錯体系化合物であり、より好ましくはオスミウム錯体系化合物、イリジウム錯体系化合物、白金錯体系化合物である。
【0073】
これらのうち、本発明の有機EL素子では、前記有機化合物層が三重項励起子からの発光が可能な発光材料を少なくとも1種含有していることが好ましい。
以下に、本発明で用いられる三重項励起子からの発光が可能な発光材料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704−1711に記載の方法等により合成できる。
【0074】
【化6】
Figure 0004259106
【0075】
【化7】
Figure 0004259106
【0076】
【化8】
Figure 0004259106
【0077】
前記発光層は、前記発光材料を用いて、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜化することにより、形成することができるが、該発光層は、分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態または液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0078】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することもできる。
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である
《正孔輸送層》
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する材料(以下、正孔輸送材料という。)からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
【0079】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものや、EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。具体的には、たとえばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。これらのうちでは、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0080】
上記芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、たとえば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(以下、α−NPDと略す。)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0081】
また、p型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔輸送材料として使用することができる。
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、たとえば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0082】
正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の1種または2種以上からなる1層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
《電子輸送層》
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料(以下、電子輸送材料という。)からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。
【0083】
従来、発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)として、下記の材料が知られている。また、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して電子輸送材料として用いることもできる。
【0084】
電子輸送材料の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、本発明者らが検討の結果、電子輸送材料として用いうることが分かった。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、たとえばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alq3と略す。)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛など、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、従来、発光層の材料として用いられているジスチリルピラジン誘導体も電子輸送材料として用いることができるし、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0085】
この電子輸送層は、上記化合物を、たとえば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。
電子輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料の1種または2種以上からなる1層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
《注入層》;電子注入層、正孔注入層
注入層は、必要に応じて設けることができ、電子注入層と正孔注入層とがある。この注入層は、上記のように陽極と発光層または正孔輸送層との間、および、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0086】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機化合物層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0087】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報などにもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェンなどの導電性高分子を用いた高分子バッファー層などが挙げられる。
【0088】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報などにもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウムなどに代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層などが挙げられる。
【0089】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
《阻止層》;正孔阻止層、電子阻止層
阻止層は、上記のような有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。具体的には、たとえば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁などに記載されている正孔阻止(ホールブロック)層が挙げられる。
【0090】
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。
一方、電子阻止層とは広い意味では、正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。
【0091】
さらにその他、必要に応じて、他の機能を有する層を積層してもよい。
《陽極》
有機EL素子の陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、金属の電気伝導性化合物あるいはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。ここで、「金属の電気伝導性化合物」とは、電気伝導性を有する、金属と他の物質との化合物をいい、具体的にはたとえば、金属の酸化物、ハロゲン化物などであって電気伝導性を有するものをいう。
【0092】
このような電極物質の具体例としては、Auなどの金属、CuI、インジウム錫酸化物(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられるが、本発明では、前述したように紫外線吸収剤を含有する基材に大気圧プラズマCVD処理で透明導電膜を設けた、有機EL素子用透明導電性基板を用いるため、この透明導電膜が通常、陽極の役割を果たす。この場合、該透明導電膜は、インジウム錫酸化物(ITO)を主成分とすることが好ましい。陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
【0093】
《陰極》
本発明の有機EL素子を構成する対向電極、すなわち、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV未満)金属(電子注入性金属と称する)、合金、金属の電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、インジウム、希土類金属、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物などが挙げられる。これらの中では、電子注入性および酸化などに対する耐久性の点からは、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二の金属または該金属の電気伝導性化合物との混合物、たとえばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などのほか、アルミニウムが好ましく挙げられる。上記陰極は、これらの電極物質を用いて、蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成することにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0094】
なお、本発明の有機EL素子は、さらにその外表面に無機物あるいは重合膜などからなる保護膜を有していてもよい。このような保護膜を設けることにより、さらに外気由来の酸素や水を有効に封止し素子の劣化を防止して、素子の長寿命化を図ることができる。
<有機EL表示装置>
本発明にかかる有機EL表示装置は、前記有機EL素子を備えてなる。すなわち、前記有機EL素子を用いて、パッシブマトリクス方式あるいはアクティブマトリクス方式を採用することにより、有機ELディスプレイを作製することができる。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、紫外線吸収剤を含有する基材を用いても、該基材から紫外線吸収剤を滲出させることなく該基材上に透明導電膜を形成することができ、その後の有機溶媒による洗浄を経ても、透明導電膜の剥離のない、層間密着性に優れた有機EL素子用透明導電性基板を提供することができる。
【0096】
したがって、該基板を利用することで、有機EL素子および有機EL表示装置のコントラストを向上し、より輝度が高く、鮮明で寿命の長い発光および表示を達成することができる。
【0097】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
【実施例1】
<紫外線吸収剤含有基材Aの作製>
(添加液Aの作製)
チヌビン109(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)10質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。
(ドープ液の作製)
リンター綿から合成されたトリアセチルセルロース 85質量部
木材パルプから合成されたトリアセチルセルロース 15質量部
メチレンクロライド 428質量部
エタノール 90重量部
添加液A 10質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら完全に溶解し、濾過してドープ液を調製した。
【0099】
次いでベルト流延装置を用い、温度33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が25重量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。
剥離したフィルムを1300mm幅にスリットし、その後、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥し、厚さ80μmの紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース基材Aを得た。
【0100】
この基材Aの片面に図4に示すプラズマ製膜装置を用い、周波数13.56MHzでかつ20W/cm2の電力を供給して、電極間に下記の混合ガスを流すことにより、酸素原子と窒素原子との数の比をx:yとした場合のx/(x+y)の値が0.6の酸窒化珪素膜を100nmの厚さで形成した。
(混合ガス)
不活性ガス:アルゴン
反応性ガス1:酸素
反応性ガス2:ヘキサメチルジシラザン蒸気(125℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリングして蒸発させる)
<有機EL素子用紫外線吸収剤含有透明導電性基板Aの作製>
上記の紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース基材Aに、図4のプラズマ製膜装置を用い、周波数13.56MHzでかつ5W/cm2の電力を供給し、電極間に以下の組成の混合ガスを流すことにより、厚さ150nmのインジウム錫酸化物(ITO)透明導電膜を形成し、紫外線吸収剤を含有した有機EL素子用透明導電性基板Aを得た。製膜速度は12nm/minであった。
(混合ガス組成)
不活性ガス:ヘリウム 98.5体積%
反応性ガス1:水素 0.25体積%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナート 1.2体積%
反応性ガス3:ジ−n−ブチルジアセトキシスズ 0.05体積%
【0101】
【比較例1】
<透明導電性基板Bの作製>
実施例1において、添加液Aに代えて10質量部のメチレンクロライドを添加した他は、同様にしてトリアセチルセルロース基材Bを得た。
この基材Bの片面に実施例1と同様にして、酸窒化珪素膜およびITO透明導電膜を形成し、透明導電性基板Bを作製した。
【0102】
【比較例2】
<紫外線吸収剤含有透明導電性基板Cの作製>
実施例1の紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース基材Aを真空槽内に装着し、該真空槽を1×10-4Pa以下まで減圧した。スパッタリングターゲットとして重量比で酸化インジウム:酸化錫=95:5の組成のものを用いて、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス(体積比でAr:O2=1000:3)を1×10-3Paとなるまで導入し、スパッタ出力100W、基板温度100℃にてDCマグネトロンスパッタリング法で製膜を行うことにより、厚さ150nmのITO透明導電膜を形成し、紫外線吸収剤含有透明導電性基板Cを得た。製膜速度は0.3nm/minであった。
【0103】
【実施例2】
<有機EL素子A1、A2、A3の作製>
前記基板Aに真空蒸着法により、有機EL層として、α−NPD層(蒸着速度0.1nm/sec、膜厚45nm)、CBP(4,4′−N,N′−ジカルバゾール−ビフェニル)とIr−1の共蒸着層(蒸着速度;CBP0.1nm/sec、Ir−10.01nm/sec、共蒸着層の膜厚20nm)、BC(バソクプロイン)層(蒸着速度0.1nm/sec、膜厚10nm)、Alq3層(蒸着速度0.1nm/sec、膜厚40nm)、フッ化リチウム層(膜厚0.5nm)を順次積層した。
【0104】
次いで、所定形状のマスクを介して、膜厚100nmのアルミニウムからなるカソード(陰極)を形成した。
その後、マスクを替え、図6に示すプラズマ製膜装置を用いた他は実施例1と同様にして、酸素原子と窒素原子との数の比をx:yとした場合のx/(x+y)の値が0.6の酸窒化珪素膜を保護膜として300nmの厚さで形成し、有機EL素子A1を得た。
【0105】
透明導電膜を陽極、アルミニウム膜を陰極として5Vの直流電圧をかけ点灯したところ、該有機EL素子A1からは緑色の発光が得られ、コントラストは良好だった。
燐光性化合物をIr−1からIr−12またはIr−9に変更した以外は有機EL素子A1と同様にして作製した有機EL素子A2、A3においても同様に良好なコントラストが得られた。なお、Ir−12を用いた素子A2からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子A3からは赤色の発光が得られた。
【0106】
【比較例3】
<有機EL素子B1の作製>
前記基板Aに代えて前記基板Bを用いた他は、実施例2の有機EL素子A1の作製と同様にして有機EL素子B1を作製した。コントラストは、有機EL素子A1に比べて劣っていた。
【0107】
【比較例4】
<有機EL素子C1の作製>
前記基板Aに代えて前記基板Cを用いた他は、実施例2の有機EL素子A1と同様にして有機EL素子C1を作製した。コントラストは、有機EL素子A1に比べてやや劣っていた。
【0108】
【試験例】
<有機EL素子の評価>
上記の有機EL素子A1、B1、C1を用いて、下記の評価方法によりその性能を評価した。結果を下記表1に示す。
<評価方法>
《ダークスポット数の評価》
前記有機EL素子A1、B1、C1にそれぞれ10Vの直流電圧を印加し、その直後に50倍の拡大写真を撮影した。この撮影された像におけるダークスポットの数を評価した。
【0109】
《発光寿命の評価》
前記有機EL素子A1、B1、C1をそれぞれ2.5mA/cm2で駆動した場合の有機EL素子C1の発光輝度が半減するまでの時間を100として、相対値で評価した。なお、発光輝度(cd/m2)については、ミノルタ製CS-1000を用いて測定した。
【0110】
【表1】
Figure 0004259106
【0111】
表1から分かるように、有機EL素子C1は、他の有機EL素子と比較して、初期のダークスポット数が多かった。これは、スパッタ法で形成した透明導電膜が、部分的に基材から剥離して浮いてしまい、その部分が欠陥となりダークスポットが形成されたものと推測される。
また、有機EL素子B1は、有機EL素子A1と比較して発光寿命が短いが、これは、該有機EL素子B1では、発光時間が長くなるに伴い、次第に透明導電膜が基材から剥離していき浮きが生じたためと推測される。
【0112】
これに対し、有機EL素子A1では、初期のダークスポット発生も極めて少なく、素子寿命も長い。
【0113】
【実施例3】
<有機EL表示装置の作製>
実施例2で作製したそれぞれ緑色、青色、赤色発光有機EL素子(A1、A2、A3)を同一基板上に並置し、図7に示すアクティブマトリクス方式フルカラー有機EL表示装置を作製した。
【0114】
図7に、作製したフルカラー有機EL表示装置の表示部の模式図を示した。すなわち、同一基板上に、複数の走査線75およびデータ線76を含む配線部と、並置した複数の画素73(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線75および複数のデータ線76は、それぞれ導電材料からなり、走査線75とデータ線76は格子状に直交して、直交する位置で画素73に接続している(詳細は図示せず)。
【0115】
前記複数画素73には、それぞれの発光色に対応した有機EL素子にアクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタとがそれぞれ設けられ、アクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線75から走査信号が印加されると、データ線76から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に赤、緑、青の各画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0116】
該フルカラー有機EL表示装置を駆動したところ、輝度の高い鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プラズマ放電処理室の一例を示す概略図である。
【図2】 ロール電極の一例を示す概略図である。
【図3】 固定電極の概略斜視図である。
【図4】 角型の固定電極をロール電極の周りに配設したプラズマ放電処理室の一例を示す概略図である。
【図5】 プラズマ放電処理室が設けられたプラズマ製膜装置の一例を示す概略図である。
【図6】 プラズマ製膜装置の一例を示す概略図である。
【図7】 フルカラー有機EL表示装置の表示部の模式図である。
【符号の説明】
FF 元巻き基材
F 紫外線吸収剤含有基材
10、30 プラズマ放電処理室
12 給気口
13 排気口
15、16 ニップローラ
24、27 ガイドローラ
25、25c、25C ロール電極
26、26c、26C、36、36c、36C 電極
25a、25A、26a、36a 金属などの導電性母材
25b、26b、36b セラミック被覆処理誘電体
25B ライニング処理誘電体
41、65 電源
51 ガス発生装置
55 電極冷却ユニット
73 画素
75 走査線
76 データ線

Claims (14)

  1. 紫外線吸収剤を含有する基材を
    大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に放電することによりプラズマ状態とした透明導電膜形成用の反応性ガスに晒すことによって、
    該基材上に電極となる透明導電膜を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法
  2. 前記紫外線吸収剤を含有する基材が、片面または両面にバリア層を有する基材であることを特徴とする請求項 1 に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法。
  3. 前記バリア層が、大気圧プラズマCVD法で形成されることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法。
  4. 前記バリア層が、金属酸窒素化物からなることを特徴とする請求項2または3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法。
  5. 前記透明導電膜形成用の反応性ガスが、有機金属化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法
  6. 前記透明導電膜形成用の反応性ガスが、さらに還元性ガスを含有することを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法
  7. 前記透明導電膜形成用の還元性ガスが水素であることを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法
  8. 前記透明導電膜が、インジウム錫酸化物(ITO)を主成分とすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法
  9. 前記対向する電極間に、0.5kHzを超えた高周波電圧で、かつ、0.1W/cm2以上の電力を供給して放電させ、反応性ガスをプラズマ状態とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法。
  10. 前記対向する電極間に、0.5kHzを超えた高周波電圧で、かつ、1W/cm2以上の電力を供給して放電させ、透明導電膜形成用の反応性ガスをプラズマ状態とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法。
  11. 前記高周波電圧の波形が連続したサイン波であることを特徴とする請求項または10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明導電性基板の製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造した透明導電性基板上に、1層以上の有機化合物層と、対向電極とを形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
  13. 前記有機化合物層が、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を少なくとも1種含有していることを特徴とする請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
  14. 請求項12または13に記載の製造方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法
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