JP4259027B2 - プレス成形用金型およびプレス成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形品の意匠面に発生する歪を抑えるための技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4には、従来形状を有するドアアウタフレーム1の、挿入部近傍を斜視図で示している。ドアアウタフレーム1は、上面2と、折り曲げ部3を挟んで上面2に連続する立壁面4と、立壁面4の先に連なる部分5とを有している。上面2は、ドアアウタフレームの意匠面である。また、立壁面4および立壁面4の先に連なる部分5は、ドアアウタフレーム挿入部となる部分である。また、立壁面4の先に連なる部分5は、ドアアウタフレーム1の挿入部に必要な形状として、一般形状部分6と、一般形状部分6に対する段差部分7とを有している。
【0003】
上記従来のドアアウタフレーム1は、上面2の矢印Dで示す範囲に、凹状の歪が慢性的に発生するという問題があった。この、上面2の矢印Dで示す範囲は、具体的には、立壁面4の先に連なる部分5に形成された、一般形状部分6と段差部分7の双方に対し、立壁面4を挟んで隣接する範囲であるが、この上面2の凹状歪は、ドアアウタフレーム1の加工工程に起因するものであることが、発明者らの調査・研究により明らかとなった。その発生メカニズムを、図4〜図6を参照しながら、以下に説明する。
【0004】
なお、図5、図6は、ドアアウタフレーム1の半製品11に曲げ成形を行う工程における、半製品11と曲げ成形用金型との関係を、断面図で示したものであり、図5は、図4に示すドアアウタフレーム1の、a−a線の部分に関する、曲げ成形工程の断面図であり、図6は、図4のb−b線の部分に関する、曲げ成形工程の断面図である。さらに、図5、図6に点線で示す部分は、曲げ成形工程以前の半製品11の形状(絞り成形工程および抜き成形工程終了後の形状)を示している。
【0005】
ドアアウタフレーム1は、プレス成形手順として、最初に、絞り成形によって、上面2と、折り曲げ部3を挟んで上面2に連続する立壁面4と、立壁面4の先に連なる部分5とを有するプレス半製品11を成形する。この時点で、立壁面4の先に連なる部分5は、図5、図6に点線で示すように、立壁面4に対して折れ曲がった、棚形状をなしている。続いて、製品外形を決定するための抜き成形を行う。その後、曲げ成形によって、立壁面4の先に連なる部分5の、一般形状部分6に対する段差部分7を成形する。
以上の手順で成形されたドアアウタフレーム1は、ドアアウタフレーム1と組み合わされる部品(ドアインナフレーム)に対し、所定のフランジ部分を、ヘミング加工によって折り曲げ(図4中、点線で示している)、結合されるものである。
【0006】
半製品11に曲げ成形を行う金型は、図5、図6の如く、ポンチ12、パッド13、および曲刃14を有するダイス15を備えており、立壁面4の先に連なる部分5の、一般形状部分6に対する段差部分7は、この曲げ成形用金型により成形するものである。この曲げ成形の際、段差部分7(図5)については、ポンチ12とダイス15とで、ドアアウタフレーム半製品11を挟み込んで曲げ成形を確実に行い、一方、一般形状部分6(図6)については、パッド13とポンチ12とでドアアウタフレーム半製品11を挟み込み、段差部分7の曲げ成形の影響を受けないようにする必要がある。
【0007】
この条件を満足するための、パッド13のパッドプロファイルを、ドアアウタフレーム1上に当てはめて図示すると、図7に太い点線で示すように、パッドプロファイル13Lは、一般形状部分6(6b)に対しては棚形状の外形に沿って延び、段差部分7に対しては段差部分7を避けるように上面2へと回り込んでダイス15の曲刃14(図5)が直接的に立壁面4および段差部分7に接触するように構成され、さらに、折り曲げ部3に沿ったまま半製品11の形状端部8まで延びるものとなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ドアアウタフレーム半製品11の立壁面4には、図5に示すように、絞り成形時のスプリングバックにより、金型の開閉方向に対し幾らかの傾斜角度θ(3°〜6°)を生じている。このスプリングバックを解消するには、ドアアウタフレーム半製品11を成形する絞り工程で、見込み代を考慮する必要がある。しかしながら、絞り工程で見込み代を考慮しても、スプリングバックを完全に解消するには、多くのチューニング工数が必要となるといった問題があった。
一方、絞り工程でスプリングバックを解消しないと、パッド13は、その機能上、スプリングバックを矯正するだけの荷重を立壁面4に付与するものではないことから、傾斜角度θを有する立壁面4にパッド13が接触して、パット13の下降が阻まれるといった問題があった。
【0009】
このため、従来は、傾斜角度θを有する立壁面4にパッド13が接触して、パット13の下降が阻まれることの無いように、図6に符号13aで示すように、パッド13の側を、スプリングバックを生じた立壁面4から逃げるよう切削除肉して、かかる問題に対応していた。その結果として、一般形状部分6(6b)に隣接する立壁面4B(図7)には、スプリングバックに起因する傾斜が、曲げ成形後もそのまま残ることとなる。一方、段差部分7(および一般形状部分6a)については、ダイス15の曲刃14によって、曲げ成形が施され、この際に、立壁面4には、スプリングバックの矯正につながる方向への力が加えられ、図5に示すように、立壁面4A部分の傾斜が矯正されることとなる。
【0010】
すなわち、段差部分7に隣接する立壁面4A(図7)の、スプリングバックに起因する傾斜は、曲げ成形により解消されることとなるが、一般形状部分6(6b)に隣接する立壁面4B(図7)は、スプリングバックに起因する傾斜が、曲げ成形後もそのまま残ることとなる。その結果として、連続する立壁面の4A部と4B部とで面の捩れが発生し、その内部応力が上面2に影響して、上面2の矢印Dで示す範囲に、凹状の歪を慢性的に発生させることとなっている。
しかも、上面2は意匠面を構成するものであることから、かかる歪の除去は必要不可欠の課題であり、ドアアウタフレーム1の挿入部に必要な形状である、一般形状部分6と段差部分7の形状を確保しつつ、歪を抑えるための有効な対策が望まれていた。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、必要な面形状を確保しつつ、プレス成形品に発生する歪を除去することが可能な、プレス成形用金型およびプレス成形方法を提供し、歪のないプレス成形品を得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための、本発明の請求項1に係るプレス成形用金型は、上面と、折り曲げ部を挟んで前記上面に連続する立壁面と、当該立壁面の先に連なる部分に棚形状を有するプレス半製品の、前記立壁面および立壁面に連なる部分に、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えて、一般形状部分と、該一般形状部分に対する段差部分を成形するプレス金型であって、ポンチ、パッドおよび曲刃を有するダイスを備え、前記立壁面形状を、前記立壁面の先に連なる部分を固定・支持することにより維持しつつ、前記立壁面の先に連なる部分に対し、前記段差部分、並びに、前記一般形状部分および前記一般形状部分と同一高さの棚形状部分のプレス成形を同一工程で施すことが可能なパッドプロファイルとして、前記一般形状部分に対しては、前記棚形状の外形に沿って延び、前記段差部分が設けられた部位においても、前記立壁面から一定幅の範囲に関しては、前記一般形状部分に対する部位と同一の高さを維持するパッドプロファイルを備えることにより、前記ポンチおよび前記パッドは、前記プレス半製品の立壁面の先に連なる部分のうち前記立壁面から一定幅の範囲を挟持する、棚形状成形部を有し、前記ダイスの曲刃は、前記ポンチおよび前記パッドの棚形状成形部で挟持された部分より先に連なる部分にのみ、曲げ成形を施すように構成されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、前記立壁面および立壁面に連なる部分の一部にのみ、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えて、所定のプレス成形を行う際に、一般形状部分のみならず段差部分においても、前記立壁面の先に連なる前記立壁面から一定幅の範囲の部分を固定・支持することにより、前記立壁面形状を維持することによって、前記力が前記立壁面および立壁面に連なる部分の一部に作用して、前記立壁面の一部のみスプリングバックが矯正されてしまうことに起因する、前記立壁面の捩れを防止することができる。
【0013】
また、本発明によれば、前記パッドおよびポンチで、前記プレス半製品の立壁面に連なる部分を挟持することで、前記立壁面形状を維持することができる。そして、前記ダイスによって、前記パッドおよびポンチで挟持する立壁面の先に連なる部分に対し、前記所定のプレス成形を行うことにより、前記立壁面の一部のみスプリングバックが矯正されてしまうことに起因する、前記立壁面の捩れを防止することができる。
【0014】
また、前記ダイスは曲げ刃を有することから、前記パッドおよびポンチで挟持する立壁面の先に連なる部分に対し、曲げ成形を行うことができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係るプレス成形用金型は、請求項1記載のプレス成形用金型において、前記パッドおよび前記ポンチは、前記プレス半製品の立壁面の先に連なる部分のうち前記立壁面から一定幅の範囲を、前記プレス半製品の端部近傍まで挟持可能な形状のパッドプロファイルを有することとしたものである。
本発明によれば、前記プレス半製品の立壁面の先に連なる部分を、前記パッドおよび前記ポンチにより、プレス半製品の端部近傍まで挟持することで、前記立壁面とその先に連なる部分を確実に固定・支持し、前記立壁面形状を維持して、前記立壁面の一部のみスプリングバックが矯正されてしまうことに起因する、前記立壁面の捩れを防止することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための、本発明の請求項3に係るプレス成形方法は、上面と、折り曲げ部を挟んで前記上面に連続する立壁面と、当該立壁面の先に連なる部分に棚形状を有するプレス半製品を成形する第一工程と、前記プレス半製品の立壁面および立壁面の先に連なる部分に、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えて、一般形状部分と、該一般形状部分に対する段差部分を成形する第二工程とを含むプレス成形方法であって、前記第二工程で、第二工程以前の前記立壁面形状を、前記立壁面の先に連なる前記立壁面から一定幅の範囲の部分を固定・支持することにより維持しつつ、前記立壁面の先に連なる部分に対し、前記段差部分、並びに、前記一般形状部分および前記一般形状部分と同一高さの棚形状部分のプレス成形を行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、前記立壁面および立壁面に連なる部分の一部にのみ、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えて、所定のプレス成形を行う前記第二工程で、当該プレス成形工程以前の前記立壁面形状を、前記立壁面の先に連なる前記立壁面から一定幅の範囲の部分を固定・支持することにより維持することによって、前記力が前記立壁面および立壁面に連なる部分の一部に作用して、前記立壁面の一部のみスプリングバックが矯正されてしまうことに起因する、前記立壁面の捩れを防止することができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に係るプレス成形方法は、請求項3記載のプレス成形方法において、前記第一工程で、前記立壁面の先に連なる棚形状を、プレス半製品の端部近傍まで連続するようにプレス成形するものである。
本発明によれば、前記プレス半製品の立壁面に連なる棚形状を、プレス半製品の端部近傍まで連続するようにプレス成形し、かかる棚形状を保持することによって、前記立壁面とその先に連なる部分を確実に固定・支持し、それによって前記第二工程以前の前記立壁面形状を維持し、前記立壁面の捩れを防止することができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に係るプレス成形方法は、請求項3または4記載のプレス成形方法の、前記第一工程において、前記上面に対する前記立壁面のスプリングバックを見込んだプレス成形を行うものである。
本発明によれば、前記第一工程で、前記上面に対する前記立壁面のスプリングバックの見込みを実施することで、前記第二工程以前に、予めスプリングバックを矯正しておき、前記第二工程において、スプリングバックが部分的にのみ矯正されてしまうことによる捩れの発生を抑える。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分および相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明は省略する。
【0020】
図1には、本発明の実施の形態に係る、プレス成形用金型によってプレス成形されたドアアウタフレーム21の、挿入部近傍を斜視図で示している。ドアアウタフレーム21は、一般形状部分6a、6bの間に、ドアアウタフレーム21の挿入部に必要な形状として、立壁面4の先に連なる部分5に、段差部分22が形成されている。加えて、段差部分22と立壁面4との間には、一般形状部分6a、6bと同一平面をなす棚形状部分23が形成されたものである。
【0021】
図2には、ドアアウタフレーム21の半製品11に曲げ成形を行う工程における、半製品11と本発明の実施の形態に係る曲げ成形用金型との関係を、図1に示すドアアウタフレーム21のa−a線の部分における、断面図で示している。
図示の如く、本発明の実施の形態に係る曲げ成形用金型は、ポンチ24、パッド25、および、曲刃26を有するダイス27を備えている。そして、ポンチ24およびパッド25は、棚形状部分23を挟持するための、棚形状成形部24a、25aを有している。また、ダイス27の曲刃26は、棚形状部分23の、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持された部分より先に連なる部分にのみ、曲げ成形を施すものである。なお、図1に示すドアアウタフレーム21の、b−b線の部分に関する曲げ成形工程の断面図は、従来技術(図6)と同様であることから、詳しい説明を省略する。
【0022】
ここで、図3に、パッド25のパッドプロファイルを、ドアアウタフレーム21上に当てはめて図示する。パッドプロファイルは、太い実線25Lで示すように、一般形状部分6(6b)に対しては棚形状の外形に沿って延び、さらに、棚形状部分23の縁端部に沿って一般形状部分6aまで延び、一般形状部分6aの端部で上面2へと回り込み、折り曲げ部3に沿ったまま、半製品11の形状端部8まで延びるものとなっている。すなわち、パッドプロファイル25Lは、一般形状部分6a、6bおよび棚形状部分23は、全て、ポンチ24およびパッド25で挟持されることとなる。
なお、従来技術との比較のために、従来のドアアウタフレーム1に係るパッドプロファイル13Lについても、図3に示している。
【0023】
ここで、本発明の実施の形態に係るプレス金型を用いて、ドアアウタフレーム21をプレス成形する手順を説明する。
最初に、上面2と、折り曲げ部3を挟んで上面2に連続する立壁面4と、立壁面4の先に連なる部分5とを有するプレス半製品を、絞り型によって絞り成形する(第一工程)。この時点で、立壁面4の先に連なる部分5は、図2に点線で示すように、立壁面4に対して折れ曲がり、棚形状をなしている。なお、本発明の実施の形態では、上面2に対する立壁面4のスプリングバックの発生を抑えるため、図示しない絞り型による見込みを行う。
【0024】
また、上記絞り成形に続いて、製品外形を決定するための抜き成形を行う。その後、図2に示す曲げ成形用金型によって、立壁面4の先に連なる部分5の、一般形状部分6に対する段差部分22を、曲げ成形する(第二工程)。
この曲げ成形の際に、先行する絞り成形工程で成形された立壁面4の先に連なる部分5の、立壁面4から一定幅の範囲を、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持し、立壁面4の先に連なる部分5を確実に固定・支持し、曲げ成形工程以前の立壁面4の形状を維持する。そして、ダイス27の曲刃26によって、半製品11の、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持された部分より先に連なる部分にのみ、段差部分22を曲げ成形する。
【0025】
上記構成をなす本発明の実施の形態により得られる作用効果は、以下の通りである。まず、本発明の実施の形態に係る曲げ成形用金型は、曲げ成形工程以前の立壁面4の形状を維持しつつ、立壁面4の先に連なる部分5に対し、段差部分22を成形することが可能なパッドプロファイル25Lを有している。
そして、プレス半製品11の立壁面4の先に連なる部分5を、パッド24およびポンチ25の棚形状成形部24a、25aで挟持することにより、立壁面4とその先に連なる部分5を確実に固定・支持し、曲げ成形工程以前の立壁面形状4を維持する。この状態で、ダイス27の曲刃26によって、半製品11の、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持された部分より先に連なる部分にのみ、段差部分22を曲げ成形する。
【0026】
よって、曲げ成形工程において、立壁面4の先に連なる部分5(図2に点線で示す)に、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えても、当該力が立壁部分4に作用することが無くなり、従来のように、立壁面4の一部のみスプリングバックが矯正されてしまうことがなくなり、それに起因する立壁面4の捩れの発生を防ぐことができる。その結果として、立壁面4の内部に、捩れに起因する内部応力が生じることが無くなり、上面2に凹状の歪を発生させる原因が除去される。このため、意匠面である上面2に発生する歪を抑えることができる。
【0027】
また、図3に示すように、パッドプロファイル25Lは、段差部分22が設けられた部位においても、立壁面4から一定幅の範囲に関しては、一般形状部分6a、6bに対する部位と同一の高さを維持し、一般形状部分6a、6bおよび棚形状部分23は、全て、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持されることとなる。しかも、パッド24およびポンチ25は、立壁面4の先に連なる部分5のうち立壁面4から一定幅の範囲を、プレス半製品形状の端部8近傍まで挟持可能な形状を有している。
したがって、曲げ成形工程において、立壁面4とそれに連なる棚形状部分23を、確実に固定・支持し、曲げ成形工程以前の立壁面4の形状を維持して、従来の如く、立壁面4の一部のみスプリングバックが矯正されてしまうことに起因する、立壁面4の捩れを防止することができる。
【0028】
しかも、一般に、プレス半製品の端部8の近傍は、スプリングバックの発生が少ない部位であり、かかるプレス半製品の端部8の近傍まで、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持することで、壁面4とそれに連なる棚形状部分23を固定・支持を、より確実なものとすることができる。
【0029】
また、本発明の実施の形態では、曲げ成形工程に先行する絞り成形工程において、半製品11の上面2に対する立壁面4のスプリングバックの見込みを実施することで、曲げ成形工程以前に、予めスプリングバックを矯正する。よって、その後の、曲げ成形工程において、発生したスプリングバックが部分的にのみ矯正されることによる捩れの発生を、根本的に抑えることができる。なお、スプリングバックの見込みは、スプリングバックを完全に解消するものである必要はなく、一般形状部分6a、6bおよび棚形状部分23を、全て、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持することによって、若干スプリングバックが残った状態でも、その影響を受けることなく必要な曲げ成形を行うことができる。
【0030】
よって、本発明の実施の形態によれば、ドアアウタフレーム21の、挿入部近傍に必要な面形状を確保しつつ、ドアアウタフレーム21の意匠面である上面2に発生する歪を除去することが可能となり、歪のないドアアウタフレーム21を得ることが可能となる。
【0031】
なお、本発明においては、絞り工程におけるスプリングバックの見込みは、必ずしも必要なものではない。すなわち、半製品11において、上面2に対する立壁面4のスプリングバックが生じていても、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aを、スプリングバックが生じた状態の立壁面4と立壁面4の先に連なる部分5とを挟持することが可能な形状とすれば、立壁面4と立壁面4の先に連なる部分5とを確実に固定・支持し、曲げ成形工程以前の立壁面形状4を維持することができる。この状態で、ダイス27の曲刃26によって、立壁面4の先に連なる部分5の、ポンチ24およびパッド25の棚形状成形部24a、25aで挟持された部分より先に連なる部分に、段差部分22を曲げ成形することで、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
さらに、本発明の実施の形態では、ドアアウタフレーム21の、挿入部近傍に所定の絞り、曲げ成形を行う場合を例示して説明したが、本発明は、かかる形状部分のプレス成形に限定適用されるものではなく、例えば、絞り成形の後に曲げ成形を行うといった手順による他のプレス成形品においても、最初の絞り成形で生じたスプリングバックを、後の曲げ成形で部分的に矯正してしまうことに起因する歪の発生を防止し、上記と同様の作用効果を得ることが可能である。また、曲げ成形の後に曲げ成形を行うといった手順によるプレス成形品においても、最初の曲げ成形で生じたスプリングバックを、後の曲げ成形で部分的に矯正してしまうことに起因する歪の発生を防止し、上記と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明はこのように構成したので、必要な面形状を確保しつつ、プレス成形品に発生する歪を除去することが可能な、プレス成形用金型およびプレス成形方法を提供し、かつ、歪のないプレス成形品を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るプレス成形用金型によってプレス成形されたドアアウタフレームの、挿入部近傍を示す斜視図である。
【図2】 図1に示すドアアウタフレームの、a−a線の部分における、曲げ成形工程の断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係るプレス成形用金型のパッドプロファイルを、図1に示すドアアウタフレーム上に当てはめて図示した斜視図である。
【図4】 従来のドアアウタフレームの、挿入部近傍を示す斜視図である。
【図5】 図4に示すドアアウタフレームの、a−a線の部分における、曲げ成形工程の断面図である。
【図6】 図4に示すドアアウタフレームの、b−b線の部分における、曲げ成形工程の断面図である。
【図7】 従来のプレス成形用金型のパッドプロファイルを、図4に示すドアアウタフレーム上に当てはめて図示した斜視図である。
【符号の説明】
2 上面
3 折り曲げ部
4 立壁面
5 立壁面の先に連なる部分
6、6a、6b 一般形状部分
8 形状端部
11 ドアアウタフレーム半製品
21 ドアアウタフレーム
22 段差部分
23 棚形状部分
24 ポンチ
24a 棚形状成形部
25 パッド
25a 棚形状成形部
25L パッドプロファイル
26 曲刃
27 ダイス
Claims (5)
- 上面と、折り曲げ部を挟んで前記上面に連続する立壁面と、当該立壁面の先に連なる部分に棚形状を有するプレス半製品の、前記立壁面および立壁面に連なる部分に、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えて、一般形状部分と、該一般形状部分に対する段差部分を成形するプレス金型であって、
ポンチ、パッドおよび曲刃を有するダイスを備え、
前記立壁面形状を、前記立壁面の先に連なる部分を固定・支持することにより維持しつつ、前記立壁面の先に連なる部分に対し、前記段差部分、並びに、前記一般形状部分および前記一般形状部分と同一高さの棚形状部分のプレス成形を同一工程で施すことが可能なパッドプロファイルとして、
前記一般形状部分に対しては、前記棚形状の外形に沿って延び、前記段差部分が設けられた部位においても、前記立壁面から一定幅の範囲に関しては、前記一般形状部分に対する部位と同一の高さを維持するパッドプロファイルを備えることにより、
前記ポンチおよび前記パッドは、前記プレス半製品の立壁面の先に連なる部分のうち前記立壁面から一定幅の範囲を挟持する、棚形状成形部を有し、
前記ダイスの曲刃は、前記ポンチおよび前記パッドの棚形状成形部で挟持された部分より先に連なる部分にのみ、曲げ成形を施すように構成されていることを特徴とするプレス成形用金型。 - 前記パッドおよび前記ポンチは、前記プレス半製品の立壁面の先に連なる部分のうち前記立壁面から一定幅の範囲を、前記プレス半製品の端部近傍まで挟持可能な形状のパッドプロファイルを有することを特徴とする請求項1記載のプレス成形用金型。
- 上面と、折り曲げ部を挟んで前記上面に連続する立壁面と、当該立壁面の先に連なる部分に棚形状を有するプレス半製品を成形する第一工程と、前記プレス半製品の立壁面および立壁面の先に連なる部分に、スプリングバックの矯正につながる方向への力を加えて、一般形状部分と、該一般形状部分に対する段差部分を成形する第二工程とを含むプレス成形方法であって、
前記第二工程で、第二工程以前の前記立壁面形状を、前記立壁面の先に連なる前記立壁面から一定幅の範囲の部分を固定・支持することにより維持しつつ、前記立壁面の先に連なる部分に対し、前記段差部分、並びに、前記一般形状部分および前記一般形状部分と同一高さの棚形状部分のプレス成形を行うことを特徴とするプレス成形方法。 - 前記第一工程において、前記立壁面の先に連なる棚形状を、前記プレス半製品の端部近傍まで連続するようにプレス成形することを特徴とする請求項3記載のプレス成形方法。
- 前記第一工程において、前記上面に対する前記立壁面のスプリングバックを見込んだプレス成形を行うことを特徴とする請求項3または4記載のプレス成形方法。
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