JP4258953B2 - 高レベル放射性廃液のガラス溶融炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高レベル放射性廃液をガラス固化する際に用いられるガラス溶融炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
使用済み核燃料の再処理後に生ずる高レベル放射性廃液は、極めて高い放射線と崩壊熱を有しており、液体のままでは処分が困難であることから、図3及び図4に示すような構造をしたガラス溶融炉1内に送られ、ここでほう珪酸ガラス等のガラス原料と共に高温で溶かし合わされながらキャニスタcと称される耐食性のステンレス容器内に詰め込まれてガラス固化体として安定化された後、一定期間自然冷却されてから地中深く地層処分することが計画されている。
【0003】
図示するように、このガラス溶融炉1は、炉本体2の内底部を漏斗状(四角錐状)に窄めると共にその最下端部に炉2内の溶融ガラスを流下する流下孔3を有する底部電極4を備え、さらにその内部に一対の主電極5,5と補助電極6,6とを備えた構造となっている。
【0004】
そして、この炉本体2の天井壁に設けられた投入口7から高レベル放射性廃液とガラス原料を投入した後、先ず、主電極5,5間に電流を流すことでその表層部付近の高レベル放射性廃液とガラス原料とを十分に溶かし合わせ、次に、その下部に位置する補助電極6,6間に電気を流してその下層部の高レベル放射性廃液とガラス原料とを溶かし合わせ、最後に、底部電極4と主電極5,5間に電気を流して全体を溶融した後、その流下孔3から延びる流下ノズル8をその周囲の高周波加熱コイル9で加熱してその内部に詰まっている固化ガラスを溶かして抜き出すことで炉2内の溶融ガラスをその下部に位置しているキャニスタc内に流下させてその内部にガラス固化体として収容するようにしている。
【0005】
その後、このキャニスタc内に一定量の溶融ガラスが収容されたならば、電熱コイル9への通電を停止すると共に、冷却空気配管10から底部電極4内に低温(室温)の冷却空気を吹き込み、これを一気に冷却して流下孔3内の溶融ガラスを固化させることで流下孔3内を閉塞して溶融ガラスの流下を瞬時に停止するようにしている。
【0006】
尚、この溶融炉1内で発生したガスはオフガスとして排気口7aから排気され、図示しないHEPAフィルター等で放射性物質が完全に捕集除去されて無害化された後、大気中に放出するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この冷却空気配管10から底部電極4側に送られてきた冷却空気は、図5及び図6に示すように、流下ノズル8の周囲に形成されたコ字形状の冷却空気流路11の一方からその内部に導入され、その冷却空気流路11に沿って流れた後、他方から冷却空気配管10側に排気されるようになっている。
【0008】
しかしながら、この底部電極4はその温度が900℃以上となっているため、このように冷却空気流路11の一方から低温の冷却空気を流し込むと、その大きな温度差によって、特にその冷却空気の入口側が一気に冷却されて大きな熱応力が発生して底部電極4が変形することが考えられる。そして、最悪の場合には、その変形によって図5に示すように流下ノズル8が大きく曲がってその周囲の高周波加熱コイル9に接触、短絡してしまい、これによってガラス流下時の流下ノズルの高周波加熱が不可能となって溶融ガラスの流下できなくなるといったおそれが考えられる。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、底部電極に対して優れた冷却機能を発揮しつつ底部電極の変形を確実に防止できる新規な高レベル放射性廃液のガラス溶融炉を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、漏斗状をした炉本体の内底部に矩体ブロック状をした底部電極を備えると共に、その底部電極の中央部にこれを上下に貫通する流下孔を備えた高レベル放射性廃液のガラス溶融炉において、上記底部電極内の一側部に冷却空気を給排する二重配管を接続し、上記底部電極内の他側部に温度計測用孔を形成し、流下孔の外周となる底部電極内に、二重配管から温度計測用孔の近傍までコ字状の流路を対称に形成して上記底部電極内にその流下孔を囲繞するように環状の冷却空気流路を形成すると共に、その冷却空気流路を対称なコ字状の仕切壁によって温度計測用孔の近傍で連通させた内周側流路と外周側流路とに仕切り、かつその内周側流路に二重配管の内管側を連通すると共に、その外周側流路に二重配管の外管側を連通し、二重配管の外管に冷却空気を吹き込み、吹き込んだ冷却空気を外周側流路に流して内周側流路に戻し、二重配管の内管から排気するようにしたものである。
【0011】
従って、この二重配管の外管側を冷却空気供給管、内管側を冷却空気排気管として用い、この外管側から冷却空気流路の外周側流路側に冷却空気を流せば、この冷却空気が比較的温度の低い外周側流路側を流れる際に加熱されてから温度の高い内周側流路側に流れた後、内管側から排気されるようになる。そのため、底部電極全体が均一にかつ効率的に冷却されるようになることから、優れた冷却機能を維持しつつ冷却時の底部電極の変形を効果的に防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1及び図2は本発明に係るガラス溶融炉1の炉本体2の底部に設けられた略矩体ブロック状をした底部電極4及びその付近を示したものである。
【0014】
図示するように、この底部電極4の中央部には、その上下に貫通する流下孔3が形成されており、その底面には炉本体2内の溶融ガラスを流下すべく、この流下孔3と連通する流下ノズル8が鉛直下方に延びるように接続されている。さらに、この流下ノズル8の周囲には、これを高周波加熱すべく一定の間隔を隔てて高周波加熱コイル9が設けられている。
【0015】
この底部電極4内には、その流下孔3を囲繞するように環状の冷却空気流路11が形成されており、その内部は上下に延びる仕切壁12によって内周側流路13と外周側流路14とに仕切られている。
【0016】
また、この冷却空気流路11の一部には、外部から延びる二重配管15の端部が接続されており、詳しくはその二重配管15の外管16側が外周側流路14に、また、その内管17側が内周側流路13側にそれぞれ連通するように接続されている。
【0017】
また、この冷却空気流路11であって、二重配管15が接続される部分の反対側には、図示しない熱電対を取り付けるための温度計測用孔18が独立して形成されている。
【0018】
さらに、この温度計測用孔18付近はその仕切壁12の一部が切り欠かれた状態となっており、この切欠き部分を介して外周側流路14と内周側流路13とが互いに連通した状態となっている。
【0019】
そして、このような構成をした底部電極4内に対して二重配管15の外管16側から冷却空気を吹き込むと、図中破線に示すようにこの冷却空気は冷却空気流路11の外周側流路14に流れ込み、底部電極4を比較的温度の低い外側から環状に冷却した後、その反対側の仕切壁12切欠き部分から内周側流路13側に流れ込み、これを二重配管15側に戻るように流れることで温度の高い中心部分、すなわち流下孔3付近をその外側から環状に冷却し、その後、内管17から排気されることになる。
【0020】
従って、前述した従来の構成のように底部電極4の一部が一気に冷却されるのではなく、底部電極全体が比較的温度の低い外側から中心方向に向かって均一にかつ効率的に冷却されるようになることから、優れた冷却機能を維持しつつ冷却時における緩和されるため、底部電極4の変形を効果的に防止することができる。
【0021】
この結果、その底部電極4から延びる流下ノズル8が大きく曲がったりすることがなくなるため、高周波加熱コイル9への接触・短絡による、その機能の装置といった不都合を未然に回避することができる。
【0022】
尚、この冷却空気の流通方向は、本実施の形態と逆方向、すなわち、二重配管15の内管17側から冷却空気流路11の冷却空気を流して内周側流路13に流して外管16側から排気するようにしても良いが、この場合、温度の低い冷却空気がいきなり底部電極4の中心部分に吹き付けられ、その部分が一気に冷やされて大きな熱応力が発生する虞があることから、本実施の形態のように外管16側から冷却空気を吹き込むような構成とした方が好ましい。
【0023】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、底部電極全体が均一に、かつ効率的に冷却されるようになることから、優れた冷却機能を維持しつつ冷却時における熱応力が緩和されるため、底部電極の変形を効果的に防止することができる。この結果、その底部電極から延びる流下ノズルが大きく曲がったりすることがなくなるため、高周波加熱コイルへの接触・短絡による、その機能の装置といった不都合を未然に回避することができ、ガラス溶融処理工程における安定性及び信頼性が大幅に向上する等といった優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガラス溶融炉の底部電極の実施の一形態を示す平断面図である。
【図2】図1中A−A線断面図である。
【図3】従来のガラス溶融炉の構成を示す説明図である。
【図4】図3中X−X線断面図である。
【図5】図3中Y部を示す部分拡大図である。
【図6】図5中X−X線断面図である。
【符号の説明】
2 炉本体
3 流下孔
4 底部電極
11 冷却空気流路
12 仕切壁
13 内周側流路
14 外周側流路
15 二重管
16 外管
17 内管
18 温度計測用孔
Claims (1)
- 漏斗状をした炉本体の内底部に矩体ブロック状をした底部電極を備えると共に、その底部電極の中央部にこれを上下に貫通する流下孔を備えた高レベル放射性廃液のガラス溶融炉において、上記底部電極内の一側部に冷却空気を給排する二重配管を接続し、上記底部電極内の他側部に温度計測用孔を形成し、流下孔の外周となる底部電極内に、二重配管から温度計測用孔の近傍までコ字状の流路を対称に形成して上記底部電極内にその流下孔を囲繞するように環状の冷却空気流路を形成すると共に、その冷却空気流路を対称なコ字状の仕切壁によって温度計測用孔の近傍で連通させた内周側流路と外周側流路とに仕切り、かつその内周側流路に二重配管の内管側を連通すると共に、その外周側流路に二重配管の外管側を連通し、二重配管の外管に冷却空気を吹き込み、吹き込んだ冷却空気を外周側流路に流して内周側流路に戻し、二重配管の内管から排気することを特徴とする高レベル放射性廃液のガラス溶融炉。
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- 2000-05-09 JP JP2000142242A patent/JP4258953B2/ja not_active Expired - Lifetime
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