JP4255728B2 - 液晶表示パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビやディスプレイ等の液晶表示パネルに関し、特に重合性材料を含む液晶を滴下注入法によって封入した液晶表示パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示パネルは、2枚の基板の間に液晶を封入し、この液晶の電気光学異方性を利用して電気的な刺激を光学的なスイッチンングに利用する表示デバイスである。液晶の有する屈折率異方性を利用し、液晶に電圧を印加することでこの屈折率異方性の軸の向きを変えることにより、液晶パネルの透過光の明るさを制御している。
【0003】
このような液晶表示パネルにおいては、液晶に電圧が印加されていない状態での液晶分子の並び方を制御することが非常に重要になってくる。初期の並び方が安定していないと、液晶に電圧を印加した際の液晶分子の方向が不安定になり、結果的に屈折率の制御ができなくなる。そのような制御因子の代表的なものとしては、基板表面と液晶との初期形成角度(プレチルト角)の制御やバスラインと画素電極との間に形成される横電界の制御などが挙げられる。
【0004】
このような液晶表示パネルにおいては、特開2002−23199号公報や特開2002−357830号公報に記載されている如く、液晶に光重合性材料を添加して用いる方法が提案されている。
【0005】
光重合性材料を添加した液晶を用いる液晶表示パネルの場合、この初期状態の形成を、液晶を封入した後で感光することにより行う。このとき同時に電圧を印加するなどの方法により、初期の配向状態をコントロールすることも提案されている。このような液晶を用いる場合はその添加濃度が配向形成のスピードから重要になってくるが、特に特開2001−222017号公報にあるような滴下注入法で用いる場合には、その析出濃度限界がさらに重要なパラメータとなってくる。
【0006】
通常の注入の場合は、液晶の温度状態は安定しており、加熱をしながら注入することも可能であるため、母液晶に対して添加された光重合性材料は安定に溶けていられる。
【0007】
しかしながら、滴下注入法の場合には、以下の2つの点で不利である。すなわち、基板上に液晶を滴下した際に、その表面張力の効果で、添加剤の濃度分布が起こることと、高速で真空度を上げるため、チャンバ内や基板表面の温度が下がることである。
【0008】
そのため、部分的に濃度が濃くなる現象が発生し、添加した光重合性材料の析出がおこり、図1に示すような輝点現象として障害となっていた。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−23199号公報
【特許文献2】
特開2002−357830公報
【特許文献3】
特開2001−222017号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、滴下注入により液晶を封入した液晶表示パネルにおいて、上記の如き輝点現象の障害を生じることのない液晶表示パネルを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記課題を解決するため、滴下注入により液晶が封入された液晶表示パネルにおいて、前記液晶には光または熱で重合するモノマーまたはオリゴマーからなる重合性材料が添加されたおり、前記重合性材料の添加濃度が常温での析出濃度の55%以下である液晶表示パネルが提供される。
【0012】
本発明によれば、また、滴下注入により液晶が封入された液晶表示パネルにおいて、前記液晶には光または熱で重合するモノマーまたはオリゴマーからなる重合性材料が添加されており、前記重合性材料の添加濃度が前記液晶の凝固温度まで析出しない濃度である液晶表示パネルが提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明における液晶としては、従来用いられている液晶を用いることができ、特に負の誘電率を有する液晶が有用である。かかる液晶の代表例としては、下記の表1に示す物性値を有する液晶があり、これらは何れも本発明に好適に使用することができる。
【0014】
【表1】
【0015】
一方、本発明に有用な重合性材料としては、光または熱によって重合するモノマーまたはオリゴマーを用いることができ、特に光重合性のアクリレート等の材料を挙げることができ、特に常温で固体であるものが好ましい。常温で固体であり、光重合性の材料としては、具体的には、約350の分子量を有し、融点以上で液晶性を示す液晶性ジアクリレートのほか、ビスフェノールAジメタクリレート(分子量364)、スルホン酸ソーダエトキシアリレート(分子量202)、N−ビニルカプロラクタム(分子量139)、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート(分子量437)、亜鉛ジアクリレート(分子量207)などが挙げられる。
【0016】
本発明において、常温での析出濃度とは、液晶に重合性材料を添加して混合した後、常温(25℃)で10日間放置しても重合性材料の析出が生じない重合性材料の濃度をいう。すなわち、重合性材料の析出濃度については、重合性材料が未添加の液晶に光重合性材料を加え、十分に混合した後で、重合性材料が析出するかどうかで判定することができる。混合の方法としては、例えば、液晶と重合性材料との混合物を加温しながら攪拌する方法がある。また、析出濃度は、具体的には、例えば、上記の方法で析出が確認できる液晶および重合性材料の混合液の上澄み液について、ガスクロマトグラフィ、エキクロマトグラフィ等により成分の定量分析を行い、重合性材料の混合量を求めることにより、決定することができる。
【0017】
本発明は、液晶と重合性材料からなる液晶組成物を滴下注入により2枚のパネルにより構成されるセル内に封入する際に、添加剤である重合性材料の析出を回避するために、重合性材料の添加量を所定範囲に規定したことを特徴とするものである。本発明者らが行った実験の結果、表2に示すように、液晶に添加した光重合性材料の量により、図1に示す如き輝点現象の発生の有無に差があることが確認された。ここで使用した液晶組成物材料は、母液晶に対して重合性材料が常温(25℃)で0.5質量%の濃度で溶ける材料系である。添加量がこの濃度の55%以下(すなわち、0.1質量%や0.2質量%)であれば、重合性材料の析出が生じることなく、液晶組成物をセル内に充填することができる。表3は、この材料系での析出濃度の温度依存性を示している。これによれば母液晶に対して重合性材料の濃度が0.1質量%および0.2質量%のものでは、低温になっても安定に溶けていられることがわかる。なお、本発明者らが行った一連の実験の結果からは、本発明においては、重合性材料の添加濃度は、常温における析出濃度の5〜50%であるのが好ましく、10〜45%であるのが特に好ましいことが認められる。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
また、本発明においては、重合性材料の添加濃度は、用いる液晶の凝固温度まで重合性材料の析出が生じない濃度、すなわち、滴下注入によりセル内に封入される液晶と重合性材料とからなる液晶組成物において液晶が液晶相を維持する間には重合性材料の析出が生じない濃度である。ここで、液晶の凝固温度とは、液晶が液晶相から固体相へと変化するときの温度である。
【0021】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに説明する。
【0022】
なお、以下の実施例においては、液晶として平均分子量が約350であり、誘電率異方性が負のネマティック液晶(表1の液晶A)を用い、また重合性材料として平均分子量が約350であり、常温で固体であり、融点以上で液晶性を示す光重合性ジアクリレートを用いた。
【0023】
実施例1
まず、一方の基板に重合性材料を添加した液晶を滴下する。このとき重合性材料の添加量を、常温で析出する量の55%以下になるように制限する。滴下する方法としては、1パネルあたり1ポイント、所望の液晶量を滴下するやり方と、複数ポイント滴下するやり方がある。この基板の周辺を真空に排気する。排気した後もう一方の基板を貼り合わせる。このとき上下の基板は、滴下した液晶をぐるりと囲むように形成されたシール剤(接着剤)を挟持した状態で接着される。貼り合わせた後、基板の周辺の環境を真空状態から大気圧に開放し、シール剤の内側の圧力と周辺の圧力の差圧を利用して液晶を押し広げていく。次に、シール剤を熱もしくは光を用いて硬化させる。光を用いて硬化させる場合は、液晶の部分に光が当たらないようにするか、光の波長域を制御するなどの工夫をすることが必要である。その後、液晶部分に光を照射し、液晶の配向状態を規定する。
【0024】
実施例2
まず、2枚の基板の上に配向膜を形成する。このとき配向膜には垂直配向性を示すポリイミド膜を用いたが、この場合配向膜の材料としては特にポリイミドに限定されるものではなく、垂直配向性を示すものであればいかなる材料であってもよい。
【0025】
次に、一方の基板に重合性材料を添加した液晶を滴下する。重合性材料の添加濃度を、析出濃度の55%以下に制限している。
【0026】
滴下する方法としては、1パネルあたり1ポイント、所望の液晶量を滴下するやり方と、複数ポイント滴下するやり方がある。この基板の周辺を真空に排気する。排気した後もう一方の基板を貼り合わせる。このとき上下の基板は、滴下した液晶をぐるりと囲むように形成されたシール剤(接着剤)を挟持した状態で接着される。貼り合わせた後、基板の周辺の環境を真空状態から大気圧に開放し、シール剤の内側の圧力と周辺の圧力の差圧を利用して液晶を押し広げていく。次に、シール剤を熱もしくは光を用いて硬化させる。光を用いて硬化させる場合は、液晶の部分に光が当たらないようにするか、光の波長域を制御するなどの工夫をすることが必要である。その後液晶部分に光を照射し、液晶の配向状態を規定する。
【0027】
液晶に光を照射する際に液晶部分に電圧をかけながら行なうこともできる。本実施例では、液晶層に電圧を印加しながら光を照射した。この場合、印加する電圧を、液晶のスイッチング電圧以上の値に設定する。
【0028】
実施例3
まず、一方の基板に重合性材料を添加した液晶を滴下する。このとき重合性材料の添加量は常温で析出する量の55%以下になるように制限する。滴下された基板をステージ上で25℃以上の温度で加温する。この加温のタイミングは、真空排気前であれば重合性材料を滴下する前後のどちらであってもよい。このあと基板の周辺を真空に排気する。排気した後もう一方の基板を貼り合わせる。このとき上下の基板は、滴下した液晶をぐるりと囲むように形成されたシール剤(接着剤)を挟持した状態で接着される。貼り合わせた後、基板の周辺の環境を真空状態から大気圧に開放し、シール剤の内側の圧力と周辺の圧力の差圧を利用して液晶を押し広げていく。次に、シール剤を熱もしくは光を用いて硬化する。光を用いて硬化する場合は、液晶の部分に光が当たらないようにするか、光の波長域を制御するなどの工夫をすることが必要である。その後液晶部分に光を照射し、液晶の配向状態を規定する。
【0029】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、輝点現象の障害が生じることのない液晶表示パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】重合性材料を添加した液晶を滴下注入によりセル内に封入した従来の液晶表示パネルにおける輝点現象を説明する模式図。
Claims (2)
- 滴下注入により液晶が封入された液晶表示パネルにおいて、前記液晶には光で重合するモノマーまたはオリゴマーからなる重合性材料が添加されており、前記重合性材料の添加濃度が、前記液晶に前記重合性材料を添加して混合した後、常温(25℃)で10日間放置しても重合性材料の析出が生じない濃度の55%以下であり、
前記重合性材料が、液晶性ジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、および亜鉛ジアクリレートのいずれか1つであることを特徴とする液晶表示パネル。 - 前記重合性材料の添加濃度が、液晶に前記重合性材料を添加して混合した後、常温(25℃)で10日間放置しても重合性材料の析出が生じない濃度の10〜45%であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示パネル。
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