JP4254188B2 - 畜肉加工食品に用いる生地肉の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンバーグやメンチカツ,ミートボール等の畜肉加工食品に用いる生地肉の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
畜肉加工食品は、牛肉や豚肉等の畜肉を主原料とし、玉ねぎ等の野菜類、パン粉等のつなぎ材、各種の油脂類、塩等の調味料を副原材料として製造されるが、従来は、畜肉をミートチョッパーで細断したミンチ肉、あるいはさらにミキサーで混練して粘りを出したミンチ肉を原料肉として製造していた。
【0003】
しかしながら、上記のように製造された従来の畜肉加工食品では、食したときに肉粒感(肉を粒々として感じる食感)が殆んど感じられないという不具合があった。
【0004】
そこで、原料肉であるミンチ肉の中に細切りのナスを混入し、擬似的に肉粒感を感じさせたり、このナスに油脂を含ませてジューシー感を出す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−303948号公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、細切りのナスによる擬似的な肉粒感は、肉そのものの肉粒感とは全く異なり、食感上好ましいものではなく、また、得られるジューシー感も良好ではない。
【0007】
そこで本発明は、肉粒感のある畜肉加工食品に用いる生地肉の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の生地肉の製造方法は、原料肉を投入せずに、つなぎ材を含む副原料を混ぜ合わせたのち、原料肉として、ダイスカッターにより1片の重量が0.04g〜0.1gのダイス状にカットしたダイスカット肉を70%以上配合したものを混ぜ合わせたことを特徴としている。
【0010】
ここで、原料肉とは、畜肉加工食品の製造に直ちに使用できるように前処理した肉を意味し、本発明ではカット肉を用いる。カット肉とは、畜肉を物理的ストレスをかけることなく切断した肉のことで、肉組織が破壊されずに残っている肉のことである。
【0011】
また、副原材料とは、玉ねぎやニンジン等の野菜類、パン粉や乾燥粉末卵白,大豆蛋白,精製ポテトパルプ等のつなぎ材料、動物脂、植物油、乳化油脂等の油脂類,食塩やコショウ,醤油等の調味料をいい、この内、油脂類の使用は適宜であるが、ジューシー感を付与するときは必須である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図3は、ハンバーグやメンチカツ,ミートボール等の畜肉加工食品の製造工程を説明するフローチャートで、原料→計量→細断→配合→混合→成型→加熱→冷却→凍結→包装の作業工程からなっている。各工程の詳細を以下に説明する。
【0014】
〔原料・計量〕
畜肉加工食品の原料として、前記原料肉と副原材料を予め歩留まりを見込んで計量する。
【0015】
〔細断〕
この工程では、畜肉と玉ねぎとを細断する。畜肉は、ダイスカッターの鋭利な刃物を用いた切断装置によってカット処理(ダイスカット)し、肉の組織が破壊されないようにする。また、この細断で従来からのミートチョッパーを用いると、例え目皿を大きくしても荒挽きのミンチ肉となるだけで、肉組織が破壊・押潰され肉粒感が得られない。
【0016】
原料肉のカットサイズは、全てが所定範囲の大きさにあることが好ましく、形状はダイス状が好ましい。具体的には、1片の重量が0.04g〜0.1gの範囲のダイス状にカットすることが好ましく、1片の重量が0.04g未満の場合には、粒が小さいため肉粒感は低下し、一方、0.1gよりも大きい場合には、肉同士の結着力が弱くなって成型性が低下する。
【0017】
また、1片が上記重量範囲のカット肉が原料肉の70%以上あると自然な肉粒感が得られ、残りの30%未満については、0.04g未満のカット肉やあるいはミンチ肉でよい。なお、0.04g未満の肉片の割合が30%以上だと、得られる畜肉加工食品は肉粒感の乏しいものになり、一方、0.1gを超える肉片の割合が30%以上になると、肉片が大きすぎて好ましくない。
【0018】
〔原料の配合〕
畜肉加工食品の生地肉は原料肉と副原材料を混合して造るが、配合割合は畜肉加工食品の味覚に応じて適宜選択する。また、畜肉加工食品にジューシー感を付与するには油脂類を添加する。
【0019】
油脂類の添加に際しては、動物脂の乳化油脂(動物脂と水を混合したものを乳化したもの)や植物油の乳化油脂を用いる。この場合、その乳化油脂の水分率が40〜60%で、かつ乳化がO/W型を用いることが好ましい。さらに、流動性が高いものを使用することがより好ましい。
【0020】
原料肉がミンチ肉の場合は、肉組織が壊されて油脂分が散在するので親油性が高いW/O型の乳化油脂が油脂の流出抑制に効果的であるが、原料肉がカット肉の場合は、油脂よりも水に対する親和性が高い赤身部分が多いので、W/O型の乳化油脂では効果的でなく、O/W型の乳化油脂がよい。O/W型の乳化油脂を用いると、肉片と油脂分の親和性が増し、加熱時の油脂分および水分の流出を抑制する効果があり、加熱時の歩留まりが向上する。また、流動性の高い乳化油脂を使用することで生地肉の混合性が上がり、混合時間の短縮が図れる。
【0021】
〔混合〕
原料肉にミンチ肉を用いる場合は、原料肉を副原材料と混合して、結着性を出すのが一般的で、総原料量が例えば200〜300kgの場合の総混合時間は、一般に15分〜25分程度である。
【0022】
これに対して、原料肉にカット肉を用いる本形態例では、混合工程でカット肉の組織が潰れてしまうのを極力避けるため、図1に示すように混合工程を2段階にし、第1混合工程ではカット肉(原料肉)を投入せず、少なくともつなぎ材を調味料等の他の副原材料と混ぜ合わせておき、第2混合工程でカット肉を投入し、全部の原料が均等に混ざり合う程度に短時間に軽く混合する。第1,第2混合工程における総混合時間は、上記した一般的な総混合時間の25%〜50%程度とすることで、肉粒感を残した食感になり、かつ、ねちゃつきを抑えることが可能となる。また、あらかじめ調味料等をつなぎ材であるパン粉に充分吸着させることで、加熱時に流出するのを極力防ぐとともに、添加量が少なくても効果を発揮できる。
【0023】
〔成型〕
成型機を用いた形成型の場合も、打ち出し式の成型機等を使用する等、生地肉にストレスを与えることの少ない機種を選択して生地肉をさらに練ることがないようにする。
【0024】
さらに、この成型工程では、ジューシー感を持たせるため、以下のごとき包餡型の畜肉加工食品が提案できる。すなわち、カット肉を用いて上記のように形成された生地肉を中種とし、この中種を、ミンチ肉を用いた生地肉を外皮として包むようにしてもよい。
【0025】
このようにして得られた畜肉加工食品は、中種に使用したカット肉によって充分な肉粒感が得られ、さらに外皮部分に使用した結着性の高いミンチ肉(練り肉)が、加熱工程での油脂分と水分の流出を充分に防ぐので、非常にジューシー感のある畜肉加工食品が得られる。
【0026】
〔加熱〕
加熱方法は、最終的に得られる畜肉加工食品の種類によって適宜決定すればよい。具体的には、鉄板式の焼成機あるいはオーブン等で焼成してもよいし、フライヤーにより油ちょうすることも可能であり、あるいはこれらを適宜組合せしてもよい。肉粒感のある本畜肉加工食品の場合、肉粒部と非肉粒部の収縮状態が異なり、焼成すると肉粒部分が表面に表れて、焼き色が画一的でなくなるので、あたかも手作りしたような外観が得られる。
【0027】
なお、蒸し加熱については、加熱時に肉の組織が詰まってしまい、食感がねちゃつくものとなってしまうばかりでなく、表面と中心部がほぼ均一に加熱され、内部の油脂分や水分の保持が困難であるため、極力避けることが望ましい。また、この加熱工程で、まず表面を高温で一気に加熱したのち、熱源の温度を下げ、ゆっくりと中心まで加熱する方法とすることで、内部に油脂分と水分とを効率よく閉じ込めることが可能となる。
【0028】
〔放冷・凍結・包装〕
加熱後の畜肉加工食品は、放冷後に凍結・包装して冷凍食品として流通させる。なお、放冷後に冷却・包装してチルド品として流通させたり、放冷してそのまま常温品として提供することもできる。したがって、図3のフローチャートに示す凍結工程は、前者のチルド品の場合には冷却工程となり、また後者の常温品の場合には凍結工程が省略されることとなる。
【0029】
次に、代表的な畜肉加工食品であるハンバーグを例に行った本形態例品と従来品との比較実験例を説明する。
【0030】
実験例1〔肉粒感の評価〕
本形態例品と従来品のハンバーグに用いる総原料量をそれぞれ250kgとし、原料名とその配合割合を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
肉粒感の評価を目的に実験例1で行った実験数は、表3の官能評価結果に示すごとく、原料肉にカット肉を用いた本形態例品が5区、ミンチ肉を用いた従来品が2区の合計7区で、本形態例品の実験区5例では、表3の肉片重量分布に示すごとく、原料肉1片の重量配分を異ならせている。乳化油脂は、本形態例品では親水性のO/W型を、また従来品では親油性のW/O型をそれぞれ用いた。
【0033】
上記表1に示す本形態例品と従来品の原料肉(牛、豚)を、それぞれ以下の方法にて処理した。
【0034】
本形態例品のカット処理:原料肉をダイスカッターにて5mmダイス設定にてカット処理したのち、肉片を重量毎に選別して各実験区に供した。
従来品のミンチ処理:目皿直径9mmのミートチョッパーを使用し、原料肉を粗いミンチに挽いたのち、重量毎に選別して各実験区に供した。
なお、本形態例品のカット肉の組織が破壊されていないことを確認するため、牛肉について、以下の方法により溶出蛋白質濃度を測定し、従来品のミンチ肉の場合と比較した。
【0035】
〔蛋白質濃度の測定〕
試料の調製:
以下の方法によって、5mmにダイスカット処理または6mm,9mm目皿でチョッパー処理した肉の溶出蛋白質濃度を測定した。カット肉では、カット状態の際の影響を避けるため、1片が0.06g〜0.08g重量範囲であるものを選別して試験に供した。
【0036】
測定方法:
▲1▼単位量の選別後の各肉片サンプルを希釈水により希釈する。
▲2▼トネインTP試薬(大塚製薬株式会社製)により呈色させる。
▲3▼590nmで吸光度を測定し、予め作成した検量線より濃度を算出する。
蛋白質濃度測定の結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示す測定結果によれば、ダイスカット肉の蛋白質濃度は、ミンチ肉に比べ234÷308で、約76%以下であり、肉の組織がしっかりと残っていることが確認できた。また、ミンチ肉には、粗挽き用の比較的大きな目皿を用いたが、組織が細断されていることを示す結果となった。
【0039】
上記のようにカット処理またはミンチ処理した肉と、その他の副原材料原料を図1または図2に示す工程で混合し、それぞれハンバーグの生地肉を得た。混合機には300L容量のリボン式ミキサーを用いた。
【0040】
図1は本形態例品の混合工程を、図2は従来品の混合工程をそれぞれ示しており、いずれの場合も第1混合工程と第2混合工程とに分けられている。
【0041】
従来品の第1混合工程では、ミンチ肉をつなぎ材である鶏卵や食塩と15分間充分に練り合わせて、肉の結着性を引き出すのに対し、本形態例品の第1混合工程では、ダイスカット肉と食塩を除く副原材料のみを、10分間均等に混ぜ合わせる程度とし、できるだけ練らないようにする。
【0042】
また、従来品の第2混合工程では、第1混合工程の生地肉に玉ねぎとパン粉を投入し、全体がよく混ざるように10分間攪拌して、原料肉やつなぎ材を主体とする材料の結着性を充分に引き出す。この結果、第2混合工程後の原料肉は結着性の高い練り肉となる。
【0043】
これに対して、本形態例品では、第1混合工程で混合した副原材料の生地に、第2混合工程で初めてダイスカット肉を食塩とともに投入し、その混合も原料全体が均一に混ざる程度の6分間とする。したがって、本形態例品のダイスカット肉の混合時間は、ミンチ肉を用いた従来品の場合のおよそ24%である。
【0044】
成型工程では、ダイスカット肉を用いた本形態例品の生地肉を、成型時に肉成分を練ってしまうのを避けるため、成型機には打ち出し式のものを用い、またミンチ肉を用いた従来品の生地肉も、本形態例品の生地肉に条件を合わせて打ち出し式のものを用いた。そして、ハンバーグ1個あたり150g重量で成型し、この成型生地肉を、従来から公知の鉄板式連続焼成機にて両面を焼成した。
【0045】
このようにして得られたハンバーグを、パネラー20人のパネルテストにて喫食し、官能評価を行った。表3は、評価結果を示すもので、ミンチ肉を用いた従来品の粗挽ハンバーグの官能を基準(0)とし、肉粒感とハンバーグ全体の食感と切断具合と総合評価の項目について、基準(0)を中心に+3〜−3までの7段階評価を行った。
【0046】
【表3】
【0047】
上記表3によれば、カット肉を用いた本形態例品の実験区C,Dの2例に、充分な肉粒感があるとの高評価を得た。
【0048】
実験例2〔ジューシー感の評価〕
本形態例品によるハンバーグは、カット肉を用いた中種をミンチ肉を用いた外皮で包んだ包餡型とし、従来品のハンバーグは実験例1と同じとした。また、これらのハンバーグに用いる総原料量はそれぞれ250kgとした。本形態例品の包餡型ハンバーグは、中種の原料と配合割合を表1と同じとし、外皮の原料名とその配合割合を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
油脂に関しては、実験例1と同様に本形態例品のダイスカット肉と従来品のミンチ肉に応じてO/W型またはW/O型を使用した。
【0051】
上記表4に示す本形態例品と従来品の原料肉(牛、豚)を、それぞれ以下の方法にて処理した。
【0052】
本形態例品のカット処理:原料肉をダイスカッターにて5mmダイス設定にてカット処理したのち、肉片を重量毎に選別し、0.04gから0.1gの大きさの肉片が70%となるように配合した。
従来品のチョッパー処理:目皿直径3mmのミートチョッパーを使用し、原料肉をミンチに挽いたのち、肉片を重量毎に選別し、各実験区の重量分布に合わせて混合した。
【0053】
配合,混合の各工程は、本形態例品と従来品のいずれも、実験例1と同様に行った。成型工程では、実験区に応じて、成型時に肉を練らない打ち出し式成型機と、中種を外皮で包み込むように成型する包餡式成型機の2種類の成型機を使用し、ハンバーグ1個あたり150gで成型した。
【0054】
加熱工程と官能評価は、それぞれ実験例1と同様に行った。表5は、このようにして行った本形態例品の実験区3例と従来品の実験区2例の合計5区の官能評価結果を示しており、包餡式ハンバーグの本形態例品の実験区3例に充分なジューシー感があるとの高評価を得た。
【0055】
【表5】
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、肉粒感のある畜肉加工食品が得られ、また、油脂類を添加することにより肉粒感とジューシー感の両方を満たす畜肉加工食品が得られる。
【0057】
そして、肉粒感のある本畜肉加工食品では、加熱時に肉粒部と非肉粒部の収縮状態が異なるので、加熱した際の表面の色が画一的でなくなって、あたかも手作り感のある外観が得られ、しかも喫食時には口の中でほぐれやすく、かつ噛んだ際には、肉粒感が感じられ、さらに、結着力が弱いため、冷めても箸切れがよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示す本形態例品のハンバーグの混合工程図
【図2】 従来品ハンバーグの混合工程図
【図3】 本発明の一形態例を示す畜肉加工食品の製造工程を説明するフローチャート
Claims (1)
- 原料肉を投入せずに、つなぎ材を含む副原料を混ぜ合わせたのち、原料肉として、ダイスカッターにより1片の重量が0.04g〜0.1gのダイス状にカットしたダイスカット肉を70%以上配合したものを混ぜ合わせたことを特徴とする畜肉加工食品に用いる生地肉の製造方法。
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JP2002287936A JP4254188B2 (ja) | 2002-09-30 | 2002-09-30 | 畜肉加工食品に用いる生地肉の製造方法 |
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