JP4252840B2 - スクロール式流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空気、冷媒等の圧縮機や真空ポンプ等に用いて好適なスクロール式流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スクロール式流体機械は、旋回スクロールを固定スクロールに対して旋回運動させることにより、空気、冷媒等の圧縮やポンプ動作を行うものである(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−141379号公報
【非特許文献1】
発明協会公開技報公技番号2001−1746号
【0004】
この従来技術によるスクロール式流体機械は、固定スクロールと旋回スクロールとが互いに対向して設けられ、これらの固定スクロールと旋回スクロールとは、円板状に形成された鏡板と、該鏡板に軸方向に立設された渦巻状のラップ部とによりそれぞれ構成されている。
【0005】
また、固定スクロールと旋回スクロールのラップ部は、鏡板の内径側から外径側に向けて渦巻状に巻回するように延びて形成され、互いに重なり合うことによって複数の圧縮室を画成している。
【0006】
そして、スクロール式流体機械は、旋回スクロールが旋回運動を行うことにより、固定スクロールの外周側に設けた吸込口から流体を吸込み、この流体を各圧縮室内で順次圧縮しつつ、固定スクロールの内周側に設けた吐出口から外部に向けて圧縮流体を吐出するものである。
【0007】
また、従来技術では、例えば固定スクロールと旋回スクロールの各ラップ部の周面に凹凸を形成することにより、各ラップ部間の隙間を小さくして圧縮室の密閉性を高め、圧縮効率を向上する構成としている。
【0008】
この場合、各ラップ部の周面には、軸方向に延びる複数本の突起(凹溝)が形成され、隣合う突起間のなす角度は、ラップ部の渦巻方向、即ち内径側から外径側にわたってほぼ等しい角度に形成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、ラップ部の周面に複数本の突起(凹溝)を設け、隣合う突起間のなす角度を内径側から外径側にわたってほぼ等しくする構成としている。しかし、この場合には、旋回スクロールが固定スクロールに対して旋回運動すると、例えばラップ部の渦巻方向に対して特定の位置にある複数本の突起が、固定スクロールの周面に対してほぼ等しいタイミングで最接近(または接触)するようになる。
【0010】
そして、このように突起が相手方の周面に最接近した部位では、これらの間に形成される微小な隙間を介して高圧側の圧縮室から低圧側の圧縮室に流体が流れ込み、このときに流れの渦が生じることによって笛の原理で異音が発生する。
【0011】
このため、従来技術では、スクロール式流体機械を運転するときに、固定スクロールと旋回スクロールとの間で複数の箇所から異音が一斉に発生し、これらは高い周波数の大きな騒音となって流体の吸込口等から外部に漏れ出ることがあり、これによって機械の運転環境が悪化するという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ラップ部の突起によって圧縮効率を高めることができ、この状態で突起による騒音等を抑制できると共に、低騒音で良好な運転環境を実現できるようにしたスクロール式流体機械を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、鏡板に内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に該一方のスクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するために内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された他方のスクロールとを備え、少なくとも前記一方のスクロールのラップ部の周面には、渦巻方向に間隔をもって軸方向に延びる複数本の突起を設けてなるスクロール式流体機械に適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、複数本の突起は少なくとも一部が非等間隔になるように形成し、一方のスクロールに対して他方のスクロールが最接近している複数箇所のうち、少なくとも1箇所は常に前記突起がないように前記複数本の突起を配設する構成とし、前記各突起間の角度は前記ラップ部の渦巻方向の内径側よりも外径側で小さく形成したことにある。
【0015】
このように構成することにより、例えば一方のスクロールが旋回運動するときには、一方のスクロールの突起を各圧縮室の閉込み位置(圧縮室の境界となる位置)で他方のスクロールのラップ部に最接近または接触させることができ、突起により各圧縮室の密閉性を高めることができる。
【0016】
また、少なくとも一部の突起間の間隔(渦巻方向の寸法)を非等間隔に形成し、例えば一方のスクロールの1巻目、2巻目、…n巻目の各部位が他方のスクロールに最接近するときには、これら複数箇所の最接近部位のうち少なくとも1箇所において、常に突起のない部位(ラップ部の周面)が他方のスクロールに最接近するように構成したので、これらの最接近部位で各突起が相手方のラップ部に一斉に最接近するのを防止でき、各突起が相手方のラップ部に最接近するタイミングをずらして設定することができる。これにより、各突起がラップ部に最接近するときに空気の渦流等が生じて異音が発生するとしても、これらの異音の発生タイミングを時間的にずらして分散させることができる。
また、請求項1の発明によると、各突起間の角度はラップ部の渦巻方向の内径側よりも外径側で小さく形成する構成としている。これにより、ラップ部は、内径側よりも外径側で曲率半径が大きくなるから、ラップ部の外径側で各突起間の角度を小さくすることにより、外径側で各突起間の寸法が広がり過ぎるのを防止することができる。
また、請求項2の発明によると、各突起間の角度はラップ部の渦巻方向の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成する構成としている。これにより、ラップ部の曲率半径は、内径側から外径側に向けて徐々に大きくなるので、ラップ部の各部位に配置する各突起間の角度を、当該部位の曲率半径に応じて設定することができる。
【0017】
また、請求項3の発明によると、各突起は隣合う突起間のなす角度を前記ラップ部の内径側と外径側とで異ならしめる構成としている。これにより、各突起が相手方のラップ部に最接近するタイミングをずらして設定でき、異音の発生タイミングを時間的に分散させることができる。
【0018】
また、請求項4の発明によると、各突起は一方のスクロールのラップ部の外周面と他方のスクロールのラップ部の外周面とにそれぞれ形成し、前記一方のスクロールの突起と前記他方のスクロールの突起とは渦巻方向に対する位置を互いにずらして配置する構成としている。
【0019】
これにより、スクロールの旋回運動時には、個々のスクロールの外周面に配置した突起を相手方のスクロールの平滑な内周面に最接近させることができる。また、一方のスクロールの突起が他方のスクロールに最接近するタイミングと、他方のスクロールの突起が一方のスクロールに最接近するタイミングとを異ならしめることができる。
【0020】
また、請求項5の発明によると、各突起は一方のスクロールのラップ部の内周面と他方のスクロールのラップ部の内周面とにそれぞれ形成し、前記一方のスクロールの突起と前記他方のスクロールの突起とは渦巻方向に対する位置を互いにずらして配置する構成としている。これにより、スクロールの旋回運動時には、個々のスクロールの内周面に配置した突起を相手方のスクロールの平滑な外周面に最接近させることができる。
【0021】
また、請求項6の発明によると、各突起は一方のスクロールのラップ部の内周面と外周面とにそれぞれ形成し、前記内周面の突起と前記外周面の突起とは渦巻方向に対する位置を互いにずらして配置する構成としている。
【0022】
これにより、他方のスクロールには突起を形成する必要がなくなり、スクロールの旋回運動時には、一方のスクロールに配置した突起を相手方のスクロールの平滑な内周面および外周面に最接近させることができる。
【0025】
また、請求項7の発明によると、各突起はラップ部のうち渦巻方向の内径側のみに形成し、ラップ部の外径側には非突起形成部位を設ける構成としている。これにより、例えばラップ部の最も外径側に画成される圧縮室の閉込み位置(圧縮開始位置)等では、各ラップ部の平滑な周面同士を最接近または接触させることができ、圧縮時の体積効率に対して影響が大きい外径側の圧縮室を良好にシールすることができる。
【0026】
また、請求項8の発明によると、ラップ部の非突起形成部位は、一方のスクロールのラップ部と他方のスクロールのラップ部とが最も外径側で最接近する圧縮開始位置から内径側に向けて略1巻分にわたる部位として構成している。これにより、例えば圧縮開始位置等における外径側の圧縮室のシール性を高めることができる。
【0027】
さらに、請求項9の発明では、ラップ部の最内径1巻分に位置する突起間の間隔のうち最も大きな間隔を内径側の最大間隔とし、ラップ部の最外径1巻分に位置する突起間の間隔のうち最も大きな間隔を外径側の最大間隔としたときに、前記外径側の最大間隔を前記内径側の最大間隔よりも大きく形成する構成としている。これにより、ラップ部の曲率半径が大きな外径側と曲率半径が小さな内径側とに対して、それぞれ適切な間隔で突起を配置することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0029】
まず、図1ないし図6は本発明による第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、スクロール式空気圧縮機を例に挙げて述べる。
【0030】
図中、1はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール1は、筒状に形成されたケーシング(図示せず)の端部に取付けられている。また、固定スクロール1は、後述する駆動軸8の軸線O1−O1と同軸に配設された略円板状の鏡板2と、該鏡板2の表面に立設された渦巻状のラップ部3と、鏡板2の外径側からラップ部3を取囲むように軸方向に突出した筒部4と、該筒部4から径方向外側に突出したフランジ部5とによって大略構成されている。
【0031】
ここで、固定スクロール1には、鏡板2の外径側に位置して後述の圧縮室13に空気を吸込む吸込口6が設けられ、鏡板2の中央には圧縮室13で圧縮した空気を外部に吐出する吐出口7が設けられている。
【0032】
また、ラップ部3は、図2に示す如く、例えばエンドミル等の切削工具を用いて切削加工を行うことにより、内径側(半径方向の内側)が巻始め端となり、外径側(半径方向の外側)が巻終り端となるn巻の渦巻状に形成されている。この場合、ラップ部3の各部位の半径方向の間隔、即ち1巻目と2巻目、2巻目と3巻目、…(n−1)巻目とn巻目との間隔は、図3中に示す径方向寸法Tに設定されている。また、ラップ部3の内周面3Aは凹凸のない平滑な湾曲面として形成され、ラップ部3の外周面3Bには後述の固定側外周突起14が設けられている。
【0033】
8はケーシングに回転可能に設けられた駆動軸で、該駆動軸8は、回転中心となる軸線O1−O1(軸心O1)を有している。また、駆動軸8の端部側は、軸線O1−O1に対して旋回半径δだけ偏心した軸線O2−O2(軸心O2)を有するクランク8Aとなり、該クランク8Aには、旋回軸受9を介して後述の旋回スクロール10が回転可能に取付けられている。
【0034】
10は固定スクロール1と対向して駆動軸8に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール10は、クランク8Aの軸線O2−O2と同軸に配設された円板状の鏡板11と、該鏡板11の表面から軸方向に立設された渦巻状のラップ部12とによって大略構成されている。
【0035】
ここで、ラップ部12は、図2に示す如く、内径側が巻始め端となり、外径側が巻終り端となる渦巻状に形成されている。また、ラップ部12の内周面12Aは凹凸のない平滑な湾曲面として形成され、ラップ部12の外周面12Bには後述の旋回側外周突起15が設けられている。また、ラップ部12は、固定スクロール1のラップ部3に対して例えば180度だけずらして重なり合うように配設され、これらのラップ部3,12の間には複数の圧縮室13が画成されている。
【0036】
そして、スクロール式空気圧縮機は、駆動軸8のクランク8Aが旋回半径δ分だけ偏心しているため、駆動軸8が回転駆動されると、旋回スクロール10が自転防止機構(図示せず)等により自転を規制された状態で公転し、固定スクロール1に対して旋回半径δの旋回運動を行う。
【0037】
これにより、空気圧縮機は、吸込口6から外周側の圧縮室13に吸込んだ空気を各圧縮室13内で順次圧縮しつつ、中心側(最内径側)の圧縮室13から吐出口7を介して外部に圧縮空気を吐出する。このとき、各圧縮室13は、ラップ部3,12の外周突起14,15によって高い密閉状態に保持されるものである。
【0038】
14は固定スクロール1のラップ部3の外周面3Bに設けられた複数本の突起としての固定側外周突起で、該各固定側外周突起14は、図3ないし図5に示す如く、例えば略三角形の横断面形状を有する突部として形成され、ラップ部3の外周面3Bから径方向外向きに突出すると共に、その軸方向に延びている。
【0039】
ここで、旋回スクロール10が固定スクロール1に対して旋回運動するときには、その位置に対応する一部の固定側外周突起14とラップ部12の内周面12Aとが最接近するか、または両者が接触した状態となり、これらの最接近(接触)部位は各圧縮室13内に空気を閉込める閉込み位置となる。そして、固定側外周突起14は、各圧縮室13の閉込み位置でラップ部3の外周面3Bとラップ部12の内周面12Aとの間の隙間を減少させ、これによって各圧縮室13の密閉性を高めるものである。
【0040】
また、各外周突起14は、図3に示す如く、ラップ部3の渦巻方向(長さ方向)にある間隔をもって配置されている。この場合、各外周突起14間の間隔を、後述の如く縮閉線Cを用いて定義される角度θにより表すと、互いに隣合う2個の外周突起14間の角度θは、例えばラップ部3の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成され、内径側と外径側とで異なる角度に設定されている。
【0041】
これにより、旋回スクロール10が旋回運動するときには、後述の図6に示す如く、例えば旋回スクロール10のラップ部12が各固定側外周突起14に対してそれぞれ異なるタイミングで最接近するようになる。このため、個々の外周突起14とラップ部12とが最接近するときに異音が発生するとしても、この異音の発生タイミングを時間的に分散できる構成となっている。
【0042】
また、隣合う突起14間の角度θを内径側から外径側に向けて徐々に小さくすることにより、ラップ部3の渦巻方向に対する突起14間の間隔P(例えば、図3中に示す間隔P1,P2,P3)は非等間隔に形成されている。
【0043】
これにより、突起14間の間隔Pをラップ部3の内径側と外径側とでそれぞれ適切な大きさに設定することができる。この場合、ラップ部3のうち曲率半径が小さく曲がりが急な内径側の部位では、突起14間の間隔P1を適度に小さくして圧縮室13の密閉性を高めつつ、各突起14が接近し過ぎるのを防止することができる。また、曲率半径が大きく曲がりが緩やかな外径側の部位では、突起14間の間隔P3が広がり過ぎて各圧縮室13の密閉性が低下するのを防止でき、中間位置の間隔P2についても同様に、適切な寸法に設定できる構成となっている。
【0044】
また、ラップ部3の最内径1巻分に位置する突起14間の間隔のうち最も大きな間隔は、図2に示す如く、例えば1巻目の巻終り端に位置する突起14間の間隔(以下、内径側の最大間隔Pinという)となっている。一方、ラップ部3の最外径1巻分に位置する突起14間の間隔のうち最も大きな間隔は、例えばラップ部3の巻終り端に位置する突起14間の間隔(以下、外径側の最大間隔Poutという)となっており、この外径側の最大間隔Poutは、内径側の最大間隔Pinよりも大きな寸法に形成されている(Pout>Pin)。
【0045】
さらに、固定側外周突起14は、図4に示す横断面からみると、狭幅な頂部14Aと、該頂部14Aとラップ部3の外周面3Bとを滑らかにつなぐ左,右の裾野となる凹円弧面14B,14Bとによって形成されている。この場合、頂部14Aは、例えば0〜2mm程度、好ましくは0.1〜0.3mm程度の幅寸法W1をもって狭幅に形成されている。
【0046】
また、固定側外周突起14の裾野部位の幅寸法W2は、頂部14Aの幅寸法W1に対してW2≧W1×2となる関係を満たすように形成されている。さらに、各凹円弧面14Bの半径寸法(曲率半径)Rは、ラップ部3の径方向寸法T(図3参照)に対して、例えば1/4×T≦R≦T、好ましくは2/5×T≦R≦3/5×Tとなる関係を満たすように設定されている。
【0047】
一方、15は旋回スクロール10のラップ部12の外周面12Bに設けられた複数本の突起としての旋回側外周突起で、該各旋回側外周突起15は、各圧縮室13の閉込み位置で固定スクロール1のラップ部3の内周面3Aに最接近することにより、ラップ部3の内周面3Aとラップ部12の外周面12Bとの間の隙間を減少させるものである。
【0048】
そして、旋回側外周突起15は、固定側外周突起14とほぼ同様に、例えば略三角形の横断面形状を有し、ラップ部12の渦巻方向に非等間隔となる間隔Pをもって配置されると共に、外周突起14とほぼ等しい形状、寸法(幅寸法W1,W2、半径寸法R等)をもって形成されている。また、旋回側外周突起15間の間隔Pは、ラップ部12の最内径1巻分に位置する内径側の最大間隔(外周突起14の最大間隔Pinに相当)よりも外径側の最大間隔(最大間隔Poutに相当)が大きな寸法に形成されている。
【0049】
また、旋回側外周突起15間の角度θは、固定側外周突起14の場合とほぼ同様に、例えばラップ部12の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成され、内径側と外径側とで異なる角度に設定されている。これにより、各外周突起15が固定スクロール1のラップ部3に最接近することによる異音の発生タイミングを時間的に分散できる構成となっている。
【0050】
ここで、図3を参照しつつ、固定側外周突起14間(旋回側外周突起15間)の角度θと、旋回スクロール10の縮閉線Cとの関係について説明する。
【0051】
まず、縮閉線Cは、ラップ部12のインボリュート(伸開線)の基準となる仮想的な円として公知のものであり、クランク8Aの軸心O2を中心として所定の半径(縮閉線半径)aを有している。この場合、縮閉線半径aは、旋回スクロール10の旋回半径δとラップ部12の板厚寸法とによって定まる固有値である。
【0052】
そして、固定側外周突起14を例に挙げて述べると、隣合う突起14間の角度θとは、個々の突起14の中心を通って縮閉線Cに接する接線(例えば、接線L1,L2,L3,L4)をひいたときに、互いに隣接する2本の接線が形成する角度(例えば、角度θa,θb,θc)として定義される。
【0053】
また、外周突起14間の角度θは、ラップ部3の渦巻方向の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成されているため、例えば内径側から外径側に向けて順次配置された突起14間の角度θa,θb,θcの大小関係は、θa>θb>θcとなるように設定されている。この場合、最も内径側に位置する2個の突起14間の角度θは、例えば9〜11°程度の最大値となり、最も外径側に位置する2個の突起14間の角度θは、例えば5〜7°程度の最大値となるように設定されている。
【0054】
このように、隣合う外周突起14間の角度θを内径側と外径側とで異なるように設定すると、旋回スクロール10が固定スクロール1に対して旋回運動するときには、例えば個々の外周突起14に対して相手方のラップ部12が最接近するタイミングを突起14毎に異ならしめることができる。
【0055】
即ち、旋回スクロール10の旋回運動時には、図6に示す如く、例えば点Aの位置で1個の固定側外周突起14に対して旋回スクロール10のラップ部12が最接近したとすると、これと同じタイミングで最接近状態となる突起の位置は、点Aを通って縮閉線Cに接する接線La上の位置と、この接線Laと軸心O2を挟んで点対称の位置関係にある接線La′上の位置となる。
【0056】
このため、外周突起14の角度θを内径側から外径側にわたって適切な割合で変化させることにより、全ての外周突起14に対応する接線La,La′に対して、当該突起14のみが接線La上に配置され、他の外周突起14は接線La,La′から外れた位置となるように、各外周突起14の配置を定めることができる。そして、この配置状態では、点Aの外周突起14に対してラップ部12が最接近したときに、他の外周突起14に対してラップ部12が最接近しないような位置関係とすることができる。
【0057】
また、旋回側外周突起15も、固定側外周突起14の場合とほぼ同様に、各外周突起15が相手方のラップ部3に最接近するタイミングを突起15毎に異ならしめることができ、前述した点Aの固定側外周突起14が最接近状態となるときには、例えば接線La′上に位置する点A′で1個の旋回側外周突起15のみが相手方のラップ部3に最接近する構成とすることができる。
【0058】
従って、本実施の形態では、例えばラップ部12の1巻目、2巻目、…n巻目の各部位が接線La,La′上で相手方のラップ部3に対して同時に最接近するときに、旋回スクロール10は、前記点Aの位置を除いた複数箇所において、常にラップ部12が外周突起14のない部位(ラップ部3の内周面3A)に最接近する。また、旋回スクロール10は、前記点A′の位置を除いた複数箇所において、常に外周突起15のない部位(ラップ部12の外周面12B)がラップ部3に最接近するように構成されている。
【0059】
これにより、旋回スクロール10の旋回運動時には、例えば点A,A′に位置する1個ずつの外周突起14,15のみが相手方のラップ部3,12に対して同じタイミングで最接近し、この最接近状態となる突起のグループが旋回スクロール10の旋回運動に応じて順次交代するように構成できるものである。
【0060】
本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0061】
まず、電動モータ等の駆動源(図示せず)により駆動軸8を回転駆動すると、旋回スクロール10は、駆動軸8の軸線O1−O1を中心として旋回半径δの旋回運動を行ない、固定スクロール1のラップ部3と旋回スクロール10のラップ部12との間に画成される各圧縮室13は、外径側から内径側に向けて連続的に縮小するようになる。これにより、固定スクロール1の吸込口6から吸込んだ空気を各圧縮室13で順次圧縮しつつ、吐出口7から圧縮空気として外部のタンク(図示せず)等に吐出することができる。
【0062】
このとき、各圧縮室13の閉込み位置では、固定スクロール1側の外周突起14が旋回スクロール10のラップ部12の内周面12Aに最接近し、また旋回スクロール10側の外周突起15が固定スクロール1のラップ部3の内周面3Aに最接近するので、これらの外周突起14,15によって各圧縮室13内に空気を閉込めることができ、その密閉性を高めて圧縮性能を向上させることができる。
【0063】
また、各外周突起14,15が相手方のラップ部3,12に最接近するタイミングは、角度θが非等角度となる設定によって時間的に少しずつずれるので、多数の外周突起14,15が一斉に最接近状態となるのを防止することができる。
【0064】
かくして、本実施の形態では、隣合う固定側外周突起14間(旋回側外周突起15間)の間隔Pを非等間隔に形成し、突起間の角度θを、ラップ部3,12の内径側と外径側とで異ならしめる構成としたので、圧縮機の運転時には、個々の固定側外周突起14がラップ部12に最接近するタイミングを互いにずらして設定でき、また各旋回側外周突起15がラップ部3に最接近するタイミングを互いにずらして設定することができる。
【0065】
この結果、外周突起14,15が相手方のラップ部3,12に最接近するときに空気の渦流等による異音が発生しても、これらの異音の発生タイミングを時間的にずらして分散でき、これらの異音が圧縮機の吸込口6等から外部へと一斉に漏れ出ることによって大きな騒音が発生するのを確実に防止することができる。
【0066】
従って、圧縮機の運転時には、外周突起14,15によって各圧縮室13の密閉性を高め、圧縮効率を向上できると共に、圧縮動作時の騒音レベルを抑制でき、低騒音で良好な運転環境を実現することができる。
【0067】
この場合、隣合う外周突起14間(外周突起15間)の角度θを、ラップ部3,12の内径側から外径側に向けて徐々に小さくしたので、内径側よりも外径側で曲率半径が大きくなる渦巻状のラップ部3,12に対して、これらの外径側で各突起14間(各突起15間)の寸法が広がり過ぎて各圧縮室13の密閉性が低下するのを防止でき、ラップ部3,12の外径側から内径側にわたって圧縮動作を安定的に行うことができる。そして、ラップ部3,12の各部位に配置する突起14,15の角度θを、当該部位の曲率半径に応じて適切な大きさに設定することができる。
【0068】
また、固定側外周突起14の外径側の最大間隔Poutを内径側の最大間隔Pinよりも大きく形成したので、ラップ部3の曲率半径が大きな外径側と曲率半径が小さな内径側とに対して、それぞれ適切な寸法の間隔Pをもって突起14を配置することができる。また、旋回側外周突起15の場合も同様に、外径側の最大間隔を内径側の最大間隔よりも大きく形成したので、ラップ部12の外径側と内径側とに対して、それぞれ適切な寸法の間隔Pをもって突起15を配置することができる。
【0069】
また、固定スクロール1のラップ部3に固定側外周突起14を設け、旋回スクロール10のラップ部12に旋回側外周突起15を設けたので、これらの外周突起14,15を相手方のラップ部12,3の平滑な内周面12A,3Aに最接近させることができ、突起同士の接触、かじり等を防止することができる。
【0070】
一方、固定側外周突起14の頂部14Aを、例えば0〜2mm程度、好ましくは0.1〜0.3mm程度の幅寸法W1をもって狭幅に形成したので、頂部14Aは、旋回スクロール10のラップ部12と接触したときに、容易につぶれたり、摩耗して変形でき、その内周面12Aに速やかに馴染むことができる。これにより、ラップ部12と外周突起14とが何度も接触するのを防止でき、圧縮室13の密閉性を高めつつ、動力損失、かじり等を防止することができる。
【0071】
そして、外周突起14の裾野部位の幅寸法W2を、頂部14Aの幅寸法W1の2倍以上となるように形成したので、外周突起14が旋回スクロール10のラップ部12と接触した場合でも、突起全体が損傷しない十分な強度を確保でき、耐久性、信頼性を向上することができる。
【0072】
また、外周突起14の凹円弧面14Bの半径寸法Rを、ラップ部3の径方向寸法Tに対して、例えば1/4×T≦R≦T、好ましくは2/5×T≦R≦3/5×Tとなるように設定したので、例えばエンドミル等の切削工具を用いてラップ部3の外周面3Bと各外周突起14とを切削加工するときには、これらを同じ切削工具で連続的に効率よく加工でき、生産性を高めることができる。
【0073】
一方、旋回側外周突起15も、外周突起14の幅寸法W1,W2、半径寸法R等とほぼ等しい寸法に形成したので、これと同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
次に、図7は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ラップ部の外径側に非突起形成部位を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0075】
21はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール21は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板22、ラップ部23、筒部24、フランジ部(図示せず)等により構成されている。そして、ラップ部23は、内周面23Aと外周面23Bとを有する渦巻状に形成されている。
【0076】
しかし、ラップ部23には、その外径側(巻終り端側)に位置して固定側外周突起14を形成しない非突起形成部位23Cが設けられ、この非突起形成部位23Cは、例えばラップ部23の外径側端部から内径側に向けて略1巻分にわたる長さをもって延びている。
【0077】
この場合、非突起形成部位23Cは、ラップ部23のうち後述する外径側の圧縮室13′,13″の周壁となる部位に配置され、ラップ部23の外周面23Bには、非突起形成部位23Cを除いた部位(非突起形成部位23Cよりも内径側に位置する部位)に複数本の固定側外周突起14が設けられている。
【0078】
25は固定スクロール21と対向して配置された旋回スクロールで、該旋回スクロール25は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板(図示せず)に立設された渦巻状のラップ部26を有し、該ラップ部26は、内周面26Aと外周面26Bとを有している。
【0079】
また、ラップ部26には、固定スクロール21のラップ部23とほぼ同様に、その外径側に位置して旋回側外周突起15を形成しない非突起形成部位26Cが設けられ、この非突起形成部位26Cは、例えばラップ部26の外径側端部から内径側に向けて略1巻半にわたる長さをもって延びている。
【0080】
この場合、非突起形成部位26Cは、ラップ部26のうち外径側の圧縮室13′,13″の周壁となる部位に配置され、ラップ部26の外周面26Bには、非突起形成部位26Cを除いた部位(非突起形成部位23Cよりも内径側に位置する部位)に複数本の旋回側外周突起15が設けられている。
【0081】
ここで、旋回スクロール25のラップ部26の巻終り端側が固定スクロール21のラップ部23に最接近する位置を圧縮開始位置Sとすると、この圧縮開始位置Sでは、ラップ部23,26の外径側によって2つの圧縮室13(外径側の圧縮室13′,13″)が画成され、これら外径側の圧縮室13′,13″には、吸込口6から吸込まれて間もない吸込空気が閉込められた状態となる。
【0082】
そして、本実施の形態では、ラップ部23,26のうち外径側の圧縮室13′,13″に面した部位に非突起形成部位23C,26Cを配設している。このため、圧縮機の運転時には、外径側の圧縮室13′,13″の位置で固定スクロール21のラップ部23と旋回スクロール25のラップ部26とを滑らかに連続的に摺接させることができる。
【0083】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、固定スクロール21のラップ部23のうち、外径側に位置する略1巻分の部位に非突起形成部位23Cを設け、旋回スクロール25のラップ部26には、外径側の略1巻半の部位に非突起形成部位26Cを設ける構成としている。
【0084】
これにより、例えばラップ部23,26の最も外径側に画成される圧縮室13′の閉込み位置(圧縮開始位置S)、圧縮室13″の閉込み位置等では、各ラップ部23,26の平滑な内周面23Aと外周面26B、外周面23Bと内周面26Aとをそれぞれ最接近または接触させることができる。
【0085】
このため、圧縮開始位置Sの位置における圧縮室13′のシール性や、これと隣接する圧縮室13″のシール性を良好に保持することができる。従って、圧縮時の体積効率に対して影響が大きい外径側の圧縮室13′,13″で空気を安定的に圧縮でき、圧縮性能を高めることができる。
【0086】
次に、図8ないし図10は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、固定スクロールの突起と旋回スクロールの突起とをラップ部の渦巻方向に対して異なる位置に配置する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0087】
31はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール31は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板32、ラップ部33、筒部34、フランジ部(図示せず)等により構成されている。そして、ラップ部33は内周面33Aと外周面33Bとを有する渦巻状に形成され、その外径側には、前記第2の実施の形態とほぼ同様に、後述の固定側外周突起35を形成しない非突起形成部位33Cが設けられている。
【0088】
35は固定スクロール31のラップ部33に設けられた複数本の突起としての固定側外周突起で、該各固定側外周突起35は、第1の実施の形態とほぼ同様に、例えば略三角形の横断面形状を有する突部として形成され、非突起形成部位33Cを除いてラップ部33の外周面33Bから径方向外向きに突出すると共に、その軸方向に延びている。
【0089】
また、各固定側外周突起35は、ラップ部33の渦巻方向に間隔Pをもって配置され、この間隔Pは、ラップ部33の各部位で非等間隔に設定されている。また、隣合う外周突起35間の角度θは、ラップ部33の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成され、例えば図9中に示す突起35間の角度θd,θeは、θd>θeとなる関係を満たしている。
【0090】
36は固定スクロール31と対向して配置された旋回スクロールで、該旋回スクロール36は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板(図示せず)に渦巻状のラップ部37が立設され、該ラップ部37は、内周面37Aと外周面37Bとを有している。また、ラップ部37の外径側には、後述の旋回側外周突起38を形成しない非突起形成部位37Cが設けられている。
【0091】
38は旋回スクロール36のラップ部37に設けられた複数本の突起としての旋回側外周突起で、該各旋回側外周突起38は、第1の実施の形態とほぼ同様に、非突起形成部位37Cを除いてラップ部37の外周面37Bから径方向外向きに突出している。また、各旋回側外周突起38間の間隔Pは、第1の実施の形態とほぼ同様に、ラップ部37の各部位で非等間隔に設定され、突起38間の角度θは、例えばラップ部37の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成されている。
【0092】
しかし、各旋回側外周突起38は、例えば渦巻方向に対して各固定側外周突起35の中間となる位置に配設され、これらの外周突起35,38は、ラップ部33,37の渦巻方向に対する位置を千鳥にずらして配置されている。
【0093】
この場合、外周突起35,38を千鳥にずらした状態とは、図9に示す如く、例えば各固定側外周突起35を通って縮閉線Cに接する複数本の接線Lkと、各旋回側外周突起38を通って縮閉線Cに接する複数本の接線Lsとをひいたときに、これらの接線Lk,Lsが異なる角度となり、渦巻方向に対して交互に配置される状態である。
【0094】
このように、外周突起35間(外周突起38間)の角度θをラップ部33,37の内径側と外径側とで異なる設定とし、渦巻方向に対する突起35,38の位置をずらして配置すると、個々の固定側外周突起35が相手方のラップ部37に最接近するタイミング(旋回側外周突起38が相手方のラップ部33に最接近するタイミング)をそれぞれ異ならしめることができる上に、固定側外周突起35と旋回側外周突起38との間でも、これらが相手方のラップ部33、37に最接近するタイミングを互いにずらして設定することができる。
【0095】
即ち、例えば図10を参照しつつ、各外周突起35,38の最接近タイミングについて説明する。まず固定側外周突起35について述べると、第1の実施の形態(図6)で説明した場合とほぼ同様に、例えば点Aの位置で1個の固定側外周突起35に対して旋回スクロール36のラップ部37が最接近したときに、この突起35と同じタイミングで最接近状態となる突起の位置は、接線La,La′上の位置となる。
【0096】
このため、外周突起35間の角度θを内径側から外径側にわたって適切な割合で変化させることにより、全ての外周突起35に対応する接線La,La′に対して、例えば当該突起35のみが接線La上に配置され、他の突起35は接線La,La′から外れた位置となるようにすることができる。また、旋回側外周突起38についても同様に、突起38間の角度θを適切に変化させることにより、全ての外周突起38に対応する接線La,La′に対して、例えば当該突起38のみが接線La上に配置されるように設定することができる。
【0097】
さらに、突起35,38の位置を千鳥にずらして配置することにより、旋回スクロール36がいずれの位置にある場合でも、全ての外周突起35,38のうち1個の突起のみが接線La,La′上に配置され、固定側と旋回側とを含めても2個以上の突起が同じタイミングで最接近状態とならないように構成することができる。
【0098】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1,第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、ラップ部33、37の渦巻方向に対して固定側外周突起35と旋回側外周突起38の位置を互いにずらして配置する構成としたので、各固定側外周突起35が相手方のラップ部37に最接近するタイミングと、各旋回側外周突起38が相手方のラップ部33に最接近するタイミングとを異ならしめることができる。
【0099】
これにより、固定スクロール31と旋回スクロール36とを含めた圧縮機全体において、同じタイミングで最接近状態となる突起35,38の個数をより減少させることができ、圧縮機の騒音レベルを十分に低減することができる。
【0100】
次に、図11および図12は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、固定スクロールと旋回スクロールのラップ部の内周面に突起を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0101】
41は固定スクロールで、該固定スクロール41は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板42、ラップ部43、筒部44、フランジ部(図示せず)等により構成されている。そして、ラップ部43は内周面43Aと外周面43Bとを有する渦巻状に形成され、その外径側には、前記第2の実施の形態とほぼ同様に、後述の固定側内周突起45を形成しない非突起形成部位43Cが設けられている。
【0102】
45は固定スクロール41のラップ部43の内周面43Aに設けられた複数本の突起としての固定側内周突起で、該各固定側内周突起45は、例えば略三角形の横断面形状を有する突部として形成され、非突起形成部位43Cを除いてラップ部43の内周面43Aから径方向内向きに突出すると共に、その軸方向に延びている。
【0103】
また、各内周突起45は、ラップ部43の渦巻方向に間隔Pをもって配置され、この間隔Pは、ラップ部33の各部位で非等間隔に設定されている。また、隣合う内周突起45間の角度θは、ラップ部43の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成され、例えば図12中に示す突起45間の角度θf,θgは、θf>θgとなる関係を満たしている。
【0104】
46は固定スクロール41と対向して配置された旋回スクロールで、該旋回スクロール46は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板(図示せず)に渦巻状のラップ部47が立設され、該ラップ部47は、内周面47Aと外周面47Bとを有している。また、ラップ部47の外径側には、後述の旋回側内周突起48を形成しない非突起形成部位47Cが設けられている。
【0105】
48は旋回スクロール46のラップ部47の内周面47Aに設けられた複数本の突起としての旋回側内周突起で、該各旋回側内周突起48は、各固定側内周突起45とほぼ同様に、非突起形成部位47Cを除いてラップ部47の内周面47Aから径方向内向きに突出している。
【0106】
また、隣合う内周突起48間の間隔Pは、第1の実施の形態とほぼ同様に、ラップ部47の各部位で非等間隔に設定され、突起48間の角度θは、例えばラップ部47の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成されている。また、固定側内周突起45と旋回側内周突起48とは、第3の実施の形態とほぼ同様に、ラップ部43,47の渦巻方向に対する位置が千鳥にずれている。
【0107】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1ないし第3の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、固定スクロール41に各固定側内周突起45を設け、旋回スクロール46に各旋回側内周突起48を設ける構成としたので、圧縮機の運転時には、これらの内周突起45,48を相手方のラップ部47,43の平滑な外周面47B,43Bに最接近させることができ、圧縮動作を安定的に行うことができる。
【0108】
次に、図13および図14は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、一方のスクロールのラップ部の内周面と外周面とに突起を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0109】
51は固定スクロールで、該固定スクロール51は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板52、ラップ部53、筒部54、フランジ部(図示せず)等により構成されている。そして、ラップ部53は、内周面53Aと外周面53Bとを有する渦巻状に形成されている。
【0110】
55は固定スクロール51と対向して配置された旋回スクロールで、該旋回スクロール55は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板(図示せず)に渦巻状のラップ部56が立設され、該ラップ部56は、内周面56Aと外周面56Bとを有している。また、ラップ部56の外径側には、第2の実施の形態とほぼ同様に、後述の突起57,58を形成しない非突起形成部位56Cが設けられている。
【0111】
57は旋回スクロール55のラップ部56の内周面56Aに設けられた複数本の突起としての旋回側内周突起で、該各旋回側内周突起57は、前記第4の実施の形態とほぼ同様に、非突起形成部位56Cを除いてラップ部56の内周面56Aから径方向内向きに突出し、その軸方向に延びている。
【0112】
そして、各内周突起57間の間隔Pは、ラップ部56の各部位で非等間隔に設定されている。また、各内周突起57間の角度θは、ラップ部56の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成され、例えば図14中に示す突起57間の角度θh,θiは、θh>θiとなる関係を満たしている。
【0113】
58は旋回スクロール55のラップ部56の外周面56Bに設けられた複数本の突起としての旋回側外周突起で、該各旋回側外周突起58は、前記第1の実施の形態とほぼ同様に、非突起形成部位56Cを除いてラップ部56の外周面56Bから径方向外向きに突出している。
【0114】
この場合、隣合う外周突起58間の間隔Pは、ラップ部56の各部位で非等間隔に設定され、突起58間の角度θは、例えばラップ部56の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成されている。また、内周突起57と外周突起58とは、第3の実施の形態とほぼ同様に、ラップ部53,56の渦巻方向に対する位置が千鳥にずれている。
【0115】
この場合、突起57,58を千鳥にずらした状態とは、図14に示す如く、例えば各内周突起57を通って縮閉線Cに接する複数本の接線Liと、各外周突起58を通って縮閉線Cに接する複数本の接線Loとをひいたときに、これらの接線Li,Loが異なる角度となり、渦巻方向に対して交互に配置される状態である。
【0116】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1ないし第3の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、旋回スクロール55のラップ部56に対して内周面56Aに各旋回側内周突起57を設け、外周面56Bに各旋回側外周突起58を設ける構成としたので、旋回スクロール55よりも重量が大きな固定スクロール51のラップ部53に突起等を加工、形成する必要がなくなり、その加工作業を容易に行うことができる。
【0117】
なお、前記各実施の形態では、突起14,15,35,38,45,48,57,58の角度θ(θa〜θi)を、ラップ部3,12,23,26,33,37,43,47,56の内径側から外径側に向けて徐々に小さくする構成とした。しかし、本発明における角度θの異なり具合は実施の形態に限定されるものではなく、例えば図15に示す変形例のように構成してもよい。
【0118】
この場合、旋回スクロール55のラップ部56′の内周面56A′には、複数本の旋回側内周突起57′が間隔Pをもって設けられ、隣合う突起57′間の間隔P(角度θ)は、それぞれラップ部56′の内径側から外径側にわたり不規則に変化する寸法(角度)として設定されている。また、ラップ部56′の外周面56B′に設けられた旋回側外周突起58′間の間隔P(角度θ)も同様に、ラップ部56′の各部位で不規則に変化する寸法(角度)として設定されている。
【0119】
また、本発明では、第1ないし第4の実施の形態のうちいずれかの実施の形態に対して図15の変形例を組合せることにより、突起14,15,35,38,45,48,57,58の角度θを不規則に変化する角度として構成してもよいのは勿論である。
【0120】
また、第1ないし第4の実施の形態では、固定スクロール1,21,31,41に突起14,35,45を設け、旋回スクロール10,25,36,46に突起15,38,48を設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば固定スクロールの内周面と外周面のうちいずれか一方または両方に突起を設け、旋回スクロールの突起を省略する構成としてもよい。また、本発明は、固定スクロールの突起を省略し、旋回スクロールの内周面と外周面のうちいずれか一方に突起を設ける構成としてもよい。
【0121】
また、実施の形態では、ケーシングに固定された固定スクロール1,21,31,41,51に対して旋回スクロール10,25,36,46,55を旋回運動させるスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば特開平9−133087号公報に示すように、互いに対向して配置された2つのスクロールをそれぞれ回転駆動する全系回転式スクロール流体機械等に適用してもよい。
【0122】
さらに、実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機等の他のスクロール式流体機械に適用してもよい。
【0123】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、ラップ部の各突起は少なくとも一部が非等間隔になるように形成し、一方のスクロールに対して他方のスクロールが最接近している複数箇所のうち、少なくとも1箇所は常に突起がないように構成したので、個々の突起が相手方のラップ部に最接近するタイミングをずらして設定することができる。これにより、各突起が相手方のラップ部に最接近するときに異音が発生しても、これらの異音の発生タイミングを時間的にずらして分散でき、これらの異音が機械の外部へと一斉に漏れ出ることによって大きな騒音が発生するのを確実に防止することができる。従って、ラップ部の突起によって各圧縮室の密閉性を高め、圧縮効率を向上できると共に、機械全体の騒音レベルを抑制でき、低騒音で良好な運転環境を実現することができる。
また、請求項1の発明によれば、各突起間の角度をラップ部の内径側よりも外径側で小さく形成する構成としたので、ラップ部の外径側で各突起間の寸法が広がり過ぎて圧縮室の密閉性が低下するのを防止でき、ラップ部の外径側から内径側にわたって圧縮動作を安定的に行うことができる。
また、請求項2の発明によれば、各突起間の角度をラップ部の渦巻方向の内径側から外径側に向けて徐々に小さくする構成としたので、ラップ部の各部位に配置する突起の角度を、当該部位の曲率半径に応じて適切な大きさに設定でき、ラップ部の外径側から内径側にわたって圧縮動作を安定的に行うことができる。
【0124】
また、請求項3の発明によれば、隣合う突起間の角度をラップ部の内径側と外径側とで異ならしめる構成としたので、各突起が相手方のラップ部に最接近するときの異音の発生タイミングを時間的に分散することができる。
【0125】
また、請求項4の発明によれば、一方のスクロールと他方のスクロールとに対してラップ部の外周面にそれぞれ突起を設け、これらの突起の位置を渦巻方向にずらして配置する構成としたので、スクロールの旋回運動時には、突起同士の接触、かじり等を確実に防止でき、耐久性、信頼性を高めることができる。また、両方のスクロールを含めた機械全体において、同じタイミングで最接近状態となる突起の個数をより減少させることができ、機械の騒音レベルを十分に低減することができる。
【0126】
また、請求項5の発明によれば、一方のスクロールと他方のスクロールとに対してラップ部の内周面にそれぞれ突起を設け、これらの突起の位置を渦巻方向にずらして配置する構成としたので、突起同士の接触、かじり等を確実に防止できると共に、同じタイミングで最接近状態となる突起の個数を減少させることができ、低騒音な機械を実現することができる。
【0127】
また、請求項6の発明によれば、一方のスクロールに対してラップ部の内周面と外周面とに突起を設け、内周面の突起と外周面の突起の位置を渦巻方向にずらして配置する構成としたので、突起同士の接触、かじり等を確実に防止できると共に、同じタイミングで最接近状態となる突起の個数を減少させることができ、低騒音な機械を実現することができる。また、他方のスクロールに突起等を加工、形成する必要がなくなり、その加工作業を容易に行うことができる。
【0130】
また、請求項7の発明によれば、各突起はラップ部のうち渦巻方向の内径側のみに形成し、ラップ部の外径側には非突起形成部位を設ける構成としたので、圧縮時の体積効率に対して影響が大きい外径側の圧縮室を良好にシールでき、圧縮性能を高めることができる。
【0131】
また、請求項8の発明によれば、ラップ部の非突起形成部位は、ラップ部の圧縮開始位置から内径側に向けて略1巻分にわたる部位として構成したので、例えば圧縮開始位置等における外径側の圧縮室のシール性を高め、ラップ部の外径側から内径側にわたって圧縮動作を安定的に行うことができる。
【0132】
さらに、請求項9の発明によれば、各突起は、ラップ部の外径側の最大間隔を内径側の最大間隔をよりも大きく形成する構成としたので、ラップ部の曲率半径が大きな外径側と曲率半径が小さな内径側とに対して、それぞれ適切な寸法の間隔で突起を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】スクロール式空気圧縮機を図1中の矢示II−II方向からみた横断面図である。
【図3】図2中の固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部とを拡大して示す要部拡大の横断面図である。
【図4】図3中の固定側外周突起を拡大して示す要部拡大の横断面図である。
【図5】固定スクロールの鏡板、ラップ部および固定側外周突起の一部を拡大して示す一部破断の外観斜視図である。
【図6】旋回スクロールが旋回運動するときの各外周突起の状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。
【図9】図8中の固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部とを拡大して示す要部拡大の横断面図である。
【図10】旋回スクロールが旋回運動するときの各外周突起の状態を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。
【図12】図11中の固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部とを拡大して示す要部拡大の横断面図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。
【図14】図13中の固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部とを拡大して示す要部拡大の横断面図である。
【図15】本発明の変形例によるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。
【符号の説明】
1,21,31,41,51 固定スクロール
2,11,22,32,42,52 鏡板
3,12,23,26,33,37,43,47,53,56,56′ ラップ部
3A,12A,23A,26A,33A,37A,43A,47A,53A,56A,56A′ 内周面(周面)
3B,12B,23B,26B,33B,37B,43B,47B,53B,56B,56B′ 外周面(周面)
8 駆動軸
10,25,36,46,55 旋回スクロール
13,13′,13″ 圧縮室
14,35 固定側外周突起(突起)
14A 頂部
14B 凹円弧面
15,38,58,58′ 旋回側外周突起(突起)
23C,26C,33C,37C,43C,47C,56C 非突起形成部位
45 固定側内周突起(突起)
48,57,57′ 旋回側内周突起(突起)
P,P1〜P3 間隔
Pin,Pout 最大間隔
θ,θa〜θi 角度
S 圧縮開始位置
Claims (9)
- 鏡板に内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に該一方のスクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するために内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された他方のスクロールとを備え、少なくとも前記一方のスクロールのラップ部の周面には、渦巻方向に間隔をもって軸方向に延びる複数本の突起を設けてなるスクロール式流体機械において、
前記複数本の突起は少なくとも一部が非等間隔になるように形成し、
前記一方のスクロールに対して前記他方のスクロールが最接近している複数箇所のうち、少なくとも1箇所は常に前記突起がないように前記複数本の突起を配設する構成とし、
前記各突起間の角度は前記ラップ部の渦巻方向の内径側よりも外径側で小さく形成したことを特徴とするスクロール式流体機械。 - 鏡板に内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に該一方のスクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するために内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された他方のスクロールとを備え、少なくとも前記一方のスクロールのラップ部の周面には、渦巻方向に間隔をもって軸方向に延びる複数本の突起を設けてなるスクロール式流体機械において、
前記複数本の突起は少なくとも一部が非等間隔になるように形成し、
前記一方のスクロールに対して前記他方のスクロールが最接近している複数箇所のうち、少なくとも1箇所は常に前記突起がないように前記複数本の突起を配設する構成とし、
前記各突起間の角度は前記ラップ部の渦巻方向の内径側から外径側に向けて徐々に小さく形成したことを特徴とするスクロール式流体機械。 - 前記各突起は隣合う突起間のなす角度を前記ラップ部の内径側と外径側とで異ならしめる構成としてなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
- 前記各突起は前記一方のスクロールのラップ部の外周面と前記他方のスクロールのラップ部の外周面とにそれぞれ形成し、前記一方のスクロールの突起と前記他方のスクロールの突起とは渦巻方向に対する位置を互いにずらして配置する構成としてなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
- 前記各突起は前記一方のスクロールのラップ部の内周面と前記他方のスクロールのラップ部の内周面とにそれぞれ形成し、前記一方のスクロールの突起と前記他方のスクロールの突起とは渦巻方向に対する位置を互いにずらして配置する構成としてなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
- 前記各突起は前記一方のスクロールのラップ部の内周面と外周面とにそれぞれ形成し、前記内周面の突起と前記外周面の突起とは渦巻方向に対する位置を互いにずらして配置する構成としてなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
- 前記各突起は前記ラップ部のうち渦巻方向の内径側のみに形成し、前記ラップ部の外径側には非突起形成部位を設けてなる請求項1,2,3,4,5または6に記載のスクロール式流体機械。
- 前記ラップ部の非突起形成部位は、前記一方のスクロールのラップ部と他方のスクロールのラップ部とが最も外径側で最接近する圧縮開始位置から内径側に向けて略1巻分にわたる部位である請求項7に記載のスクロール式流体機械。
- 前記ラップ部の最内径1巻分に位置する突起間の間隔のうち最も大きな間隔を内径側の最大間隔とし、前記ラップ部の最外径1巻分に位置する突起間の間隔のうち最も大きな間隔を外径側の最大間隔としたときに、前記外径側の最大間隔を前記内径側の最大間隔よりも大きく形成してなる請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載のスクロール式流体機械。
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