JP4252699B2 - スペクトラム拡散変調方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信信号に拡散符号によるスペクトラム拡散変調を施すとともに、取り込んだ電波に拡散符号による逆拡散を行って受信信号を得るスペクトラム拡散変調方法及びその装置に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
従来、この種の装置は、スペクトラム拡散変調方式を利用したレーダ装置や通信装置等に用いられており、例えば図7に示す構成のものがあった。
すなわち、図7に示す送信回路10において、PN符号発生器11からの疑似雑音信号(以下、「PN符号」)によって、送信信号である中間周波数帯域の信号(以下、「中間周波信号」という)IFを二重平衡変調器12でスペクトラム拡散変調している。さらに、上記変調された信号FIFは、分配器14を介して入力する局部発振器13からの高周波信号FLOによって、周波数変換器15でアップコンバートされた後に、ろ波器16を経てFLO+FIF=Fcの信号となって送信空中線17から送信されていた。
【0003】
また、伝搬される電波は、受信回路20の受信空中線21で受信信号として受信されており、周波数変換器22で局部発振器13からの高周波信号FLOによってダウンコンバートされた後に、低雑音増幅器23で増幅され、さらに遅延回路24で遅延された上記PN符号に基づき、相関器18で逆拡散を行って自己相関を検出していた。このように検出された自己相関は、図8の理想的な自己相関特性に示すように、ピークaとフラットなサイドローブbを持っており、例えば上記スペクトラム拡散変調装置を用いてレーダ装置を実現すると、検出部26でこの自己相関のピークaを計測し、サイドローブbよりもやや大きいレベルに設定された閾値Thに基づき、制御部27でこの相関のピークaを検出することでターゲットの有無を検出していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記装置では、送信信号の一部がろ波器や周波数変換器のミスマッチや周波数選択性等によって反射し、図7中の点線のように、受信回路に漏れ出してくる。これを「回り込み」と呼ぶが、この回り込みによって発生する回り込み信号は、局部発振器から出力される高周波信号とともに、受信回路の周波数変換器に入力され、中間周波信号に変換されてしまう。上記信号は、受信空中線によって受信された電波と周波数軸上で分別することができないため、相関器で自己相関が検出されると、一種の反射信号として受信されることとなる。上記信号は、回路内を回り込んでくる信号であるため、ほとんど遅延がない受信信号であり、また本来の検出したい受信信号の有無、すなわちレーダ装置に用いた場合、ターゲットの有無にかかわらず常に存在する受信信号となる。
【0005】
従って、本来検出したい受信信号と回り込み信号が受信回路の周波数変換器に同時に入力されると、両信号が全く同じ周波数帯域に周波数変換されてしまう。このため、上述の本来検出したい受信信号が回り込み信号の信号レベルに比べて小さい時には、図9に示すように、回り込み信号による自己相関特性でのサイドローブb1がターゲットの自己相関特性のピークa2よりも高くなることがある。この結果、この受信信号が回り込み信号によってマスクされてしまい、すなわち設定される閾値Thよりもターゲットの自己相関ピークa2が下回ってしまい、自己相関を検出できなくなってしまうという問題点があった。
【0006】
また、上述したごとく、回り込み信号は、上記受信信号の有無にかかわらず常に存在するので、レーダ装置の受信感度を著しく劣化させてしまい、誤検出が生じることがあるという問題点もあった。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、本来検出したい受信信号と回り込み信号を分離して上記受信信号を正確に検出することができるスペクトラム拡散変調方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、送信回路で送信信号に拡散符号によるスペクトラム拡散変調を施して送信するとともに、受信回路で取り込んだ電波に拡散符号による逆拡散を行い、相関を検出して受信信号を得るスペクトラム拡散変調方法において、前記取り込んだ電波を所定周波数の信号によって2つのサイドバンドを有する周波数成分の受信信号に分けた後に、前記送信回路からの回り込み信号が含まれる所定の高周波信号で周波数変換し、さらに前記受信信号及び前記回り込み信号の周波数成分を前記所定周波数の信号を用いて周波数変換して、前記受信信号及び回り込み信号の周波数成分を、周波数軸上のプラス側の平行移動とマイナス側の平行移動で合成させて、前記受信信号の周波数成分だけを重畳させるスペクトラム拡散変調方法及びその装置が提供される。
【0008】
すなわち、受信回路で受信された電波は、所定の高周波信号でダウンコンバートされる前に、例えば入力するスイッチで所定の周波数信号によってスイッチングされることで、2つのサイドバンドを有する周波数成分が発生する。この周波数成分の受信信号を上記ダウンコンバートした後に、所定の周波数信号で周波数変換することで、検出したい受信信号の周波数成分のみを重畳させて抽出可能にする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係るスペクトラム拡散変調方法及びその装置の一実施形態を図1乃至図6の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るスペクトラム拡散変調装置の構成の一実施例を示す構成図である。なお、以下の図において、図7の従来例と同様の構成部分に関しては、説明の都合上、同一符号を付記する。
【0010】
図1に示す本実施例において、送信回路10は上記従来例と同様の構成であり、受信回路20では、受信空中線21と周波数変換器22の間に、本発明の分別手段を構成するスイッチ28が接続されており、スイッチ28は、IF局部発振器29からの周波数FSWでスイッチングされて、取り込まれた電波を本発明の第1の周波数変換手段を構成する周波数変換器22に出力している。周波数変換器22では、局部発振器13からの高周波信号FLOにろ波器16からの回り込み信号Fcが含まれた高周波信号が入力しており、スイッチ28から出力された受信信号を上記高周波信号によってダウンコンバートしている。
【0011】
また、低雑音増幅器23と相関器25との間には、本発明の第2の周波数変換手段を構成する周波数変換器30と、本発明の通過手段を構成するろ波器31が接続されている。周波数変換器30では、周波数変換器22でダウンコンバートされ、かつ低雑音増幅器23で信号増幅された信号を、IF局部発振器29からの周波数FSWによって周波数変換している。なお、IF局部発振器29は、本発明の分別手段及び第2の周波数変換手段の一部を構成している。
【0012】
ろ波器31では、FIF+Δfを中心周波数とした所定帯域の信号を通過させるように設定されている。これにより、ろ波器31は、上記周波数変換された信号の帯域制限を行って相関器25に出力しており、相関器25での検出したい電波(受信信号)の相関検出を可能にしている。
次に本実施例の装置をレーダに用いた場合の動作を図2、図3の各部の周波数スペクトルに基づいて説明する。まず、受信空中線21で受信された図示しないターゲットからの反射信号(以下、「ターゲット信号」という)は、図2(a)に示すように、例えば中心周波数がFc+Δfのスペクトルとなる。ここで、ターゲット信号は、レーダに用いた場合の表現で、受信信号と同じ意味であり、Δfはドップラーシフト量である。
【0013】
このターゲット信号は、スイッチ28によってIF局部発振器29の周波数FSWでスイッチングされると、図2(b)に示すように、周波数軸上に(Fc+Δf−FSW)と(Fc+Δf+FSW)の2つのサイドバンドが発生する。つまり、本実施例では、受信信号をスイッチ28でオン・オフすることで振幅偏移変調(ASK)がかかったのと同じ状態になり、受信信号の周波数(この場合は、Fc+Δf)を中心として、その両側に対称に広がった周波数成分を持つ信号(サイドバンド)が、周波数軸上に得られることとなる。
【0014】
次に、図2(b)に示した信号は、局部発振器13からの高周波信号FLOで周波数変換されるが、実際には、図2(c)に示すように、中心周波数が(FLO−FIF)と(FLO+FIF)からなる回り込み信号を含む高周波信号で周波数変換される。すなわち、周波数変換器22では、図2の(b)と(c)の信号を混合することになり、出力される中間周波信号は、図3(a)に示すようになる。
【0015】
ところで、実際には、図3(a)に示した信号の他にも多くの周波数成分の信号が出力されるが、この図では、ターゲット検出に影響を与えるFIF+Δfの近隣の周波数帯域の中間周波信号、すなわち中心周波数(FIF+Δf−FSW)、(FIF+Δf)及び(FIF+Δf+FSW)の信号とFIFの回り込み信号のみのスペクトルを表示した。
【0016】
なお、周波数変換器において、図2の(b)と(c)の信号の混合では、FIFの回り込み信号は論理的に現れない。しかし、本発明者は、実験の結果、FIFの回り込み信号が存在することを確認し、さらにその原因が周波数変換器の一方の入力ポートに複数の周波数信号が入力すると、同じ入力ポートの信号同士で混合が行われることによることを検証した。従って、本実施例に示すように周波数軸上には、図2(c)の信号同士の混合によってFIFの回り込み信号が現れることとなる。
【0017】
図3(a)に示した信号は、低雑音増幅器23を通り、周波数変換器30に入力されて、IF局部発振器29の周波数、すなわちスイッチング周波数FSWで周波数変換される。この結果、図3(b)に示すように、中心周波数FIF+Δfのターゲット信号と、中心周波数(FIF+Δf−FSW)及び(FIF+Δf+FSW)の回り込み信号は、周波数軸上のプラス側の平行移動とマイナス側の平行移動で合成されて、周波数FSWだけ離れた信号となり、ターゲット信号の周波数成分だけが重畳される。
【0018】
このIF局部発振器29からの周波数信号は、図4に示すように、スイッチング周波数FSWのデジタル信号からなり、スイッチ28は、閾値Th1とTh2によってオン・オフ切り替えを行っている。このスイッチング周波数FSWは、ろ波器31で分別が可能なように、PN符号発生器11のPN符号のチップレートfrの2倍以上の帯域幅を満たす周波数とし、好ましくは周波数軸上のマイナスの周波数成分がプラス側に折り返してこない範囲2fr≦FSW≦2(FIF−fr)で、ただしfr≦FIFの高周波とするのが理想である。
【0019】
ろ波器31は、バンドパスフィルタからなり、図3(c)に示すように、中心周波数FIF+Δfのターゲット信号のみを相関器25へ通すことができる。
このように、本実施例では、受信空中線からの受信信号を局部発振器からの高周波信号でダウンコンバートする前に、スイッチをスイッチング周波数によってスイッチングさせて上記受信信号を出力することで、サイドバンドの周波数成分を発生させ、この周波数成分を有する信号を上記ダウンコンバートした後に、所定の周波数信号で周波数変換することで、回り込み信号をろ波器の通過帯域外にし、かつ検出したい受信信号の周波数成分のみを重畳させて抽出することが可能になり、本来検出したい受信信号と回り込み信号を分離して上記受信信号を正確に検出することができる。
【0020】
ここで、本実施例の装置を自動車用ミリ波レーダに用いた場合、例えば局部発振器13の周波数FLOを75.5GHz、中間周波信号の周波数FIFを1GHz、PN符号のチップレートfrを40MHzとすると、送信空中線17から送信される送信電波の中心周波数Fcは76.5GHzで、帯域幅が80MHzとなり、IF局部発振器29の周波数FSWは上記範囲内の90MHzに設定できる。
【0021】
これにより、本実施例では、図5の自己相関特性に示すように、回り込み信号の自己相関とターゲット信号の自己相関の検出が同等のレベルで行われることとなって、ターゲットの自己相関ピークa2の検出が可能となる。従って、本実施例は、図7の従来例を上記と同じ設定条件で自己相関検出を行った場合に比べて、回り込み改善量として20dB以上が期待できる。
【0022】
本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、図1のスイッチの代わりに、図6に示す低雑音増幅器32を、受信空中線21と周波数変換器22の間に設ける。そして、この低雑音増幅器32の電源バイアスをIF局部発振器29からのスイッチング周波数でオン・オフすることで、上記スイッチと同様に受信信号を出力することが可能となり、本来検出したい受信信号と回り込み信号を分離して上記受信信号を正確に検出することができる。
【0023】
また、本実施例では、低雑音増幅器を用いることにより、受信回路の雑音指数を改善することが可能になり、さらに高感度なスペクトラム拡散変調装置を提供することが可能になる。すなわち、受信回路全体の雑音指数は、主として受信空中線に接続される初段の回路の利得で決まることが知られている。また、低雑音増幅器は、雑音指数が小さく、かつ利得が大きい。そこで、本実施例のように、低雑音増幅器32を受信空中線21の初段に接続させれば、受信回路20全体の雑音指数を小さく抑えることができる。
【0024】
また、本実施例では、レーダに用いた場合を説明したが、本発明はこれに限らず、信号伝送を行う通信装置に用いた場合でも、同様の効果を得ることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、送信回路で送信信号に拡散符号によるスペクトラム拡散変調を施して送信するとともに、受信回路で取り込んだ電波を拡散符号による逆拡散を行い、相関を検出して受信信号を得るスペクトラム拡散変調方法において、前記取り込んだ電波を所定の周波数信号によって2つのサイドバンドを有する周波数成分の受信信号に分けた後に、前記送信回路からの回り込み信号が含まれる所定の高周波信号で周波数変換し、さらに前記受信信号及び前記回り込み信号の周波数成分を前記所定の周波数信号を用いて周波数変換するので、本来検出したい受信信号と回り込み信号を分離して、受信信号の周波数成分のみを重畳させて抽出することが可能になり、受信信号のみを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスペクトラム拡散変調装置の構成の一実施例を示す構成図である。
【図2】図1に示した各部の周波数スペクトルを示す図である。
【図3】同じく、各部の周波数スペクトルを示す図である。
【図4】図1に示したIF局部発振器からの周波数信号の波形を示す波形図である。
【図5】図1の装置における自己相関特性を示す特性図である。
【図6】本発明に係るスペクトラム拡散変調装置の構成の他の実施例を示す構成図である。
【図7】スペクトラム拡散変調装置の構成の従来例を示す構成図である。
【図8】理想的な自己相関特性を示す特性図である。
【図9】図7に示した装置における自己相関特性を示す特性図である。
【符号の説明】
10 送信回路
11 PN符号発生器
12 二重平衡変調器
13 局部発振器
14 分配器
15,22,30 周波数変換器
16 ろ波器
17 送信空中線
20 受信回路
21 受信空中線
23,32 低雑音増幅器
24 遅延回路
25 相関器
26 検出器
27 制御部
28 スイッチ
29 IF局部発振器
31 ろ波器

Claims (6)

  1. 送信回路で送信信号に拡散符号によるスペクトラム拡散変調を施して送信するとともに、受信回路で取り込んだ電波を拡散符号による逆拡散を行い、相関を検出して受信信号を得るスペクトラム拡散変調方法において、
    前記取り込んだ電波を所定の周波数信号によって2つのサイドバンドを有する周波数成分の受信信号に分けた後に、前記送信回路からの回り込み信号が含まれる所定の高周波信号で周波数変換し、さらに前記受信信号及び前記回り込み信号の周波数成分を前記所定の周波数信号を用いて周波数変換することを特徴とするスペクトラム拡散変調方法。
  2. 前記所定の周波数信号を用いた周波数変換にて、前記受信信号及び回り込み信号の周波数成分を、周波数軸上のプラス側の平行移動とマイナス側の平行移動で合成されて、前記受信信号の周波数成分だけを重畳させることを特徴とする請求項1に記載のスペクトラム拡散変調方法。
  3. 送信回路で送信信号に拡散符号によるスペクトラム拡散変調を施して送信するとともに、受信回路で取り込んだ電波に拡散符号による逆拡散を行い、相関を検出して受信信号を得るスペクトラム拡散変調方法において、
    前記電波を所定の周波数信号によって2つのサイドバンドを有する周波数成分の受信信号に分別する分別手段と、
    前記分別された周波数成分を、前記送信回路からの回り込み信号が含まれる所定の高周波信号で周波数変換する第1の周波数変換手段と、
    前記周波数変換された受信信号及び回り込み信号の周波数成分を前記所定周波数の信号によって周波数変換する第2の周波数変換手段とを備えたことを特徴とするスペクトラム拡散変調装置。
  4. 前記第2の周波数変換手段は、前記所定周波数の信号によって前記受信信号及び回り込み信号の周波数成分を、周波数軸上のプラス側の平行移動とマイナス側の平行移動で合成させて、前記受信信号の周波数成分だけを重畳させることを特徴とする請求項3に記載のスペクトラム拡散変調装置。
  5. 前記スペクトラム拡散変調装置にて、前記重畳された受信信号の周波数成分を通過させる通過手段を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載のスペクトラム拡散変調装置。
  6. 前記所定周波数の信号は、前記逆拡散を行う拡散符号のチップレートの2倍以上の帯域幅を有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のスペクトラム拡散変調装置。
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