無線基地局装置において、受信部での受信増幅器の異常監視をパイロット信号を用いて行なうようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
図9はかかる従来の無線基地局装置の全体構成をブロック図であって、1はカプラ、2はLNA(低雑音増幅器)、3はカプラ、4はBPF(バンドパスフィルタ)、5はミクサ、6はIF(中間周波)増幅器、7はIFフィルタ、23はデュプレクサ、8は復調部、9はパイロット検波部、10’はパイロットシンセサイザ部、11は受信IFローカル部、12はIF増幅器、13はBPF、14はミクサ、15はBPF、16はパワー増幅器、17はアイソレータ、18’はローカル部、19は受信部、20は送信部、21,22はアンテナ、23はデュープレクサ、24は信号処理部、25は制御部である。
同図において、この無線基地局装置は2つのアンテナ21,22を備え、ダイバーシチ受信を行なうものとしている。アンテナ21の受信信号とアンテナ22の受信信号とは夫々デュープレクサ23で帯域制限され、受信部19において、夫々RX1系,RX0系として別々に処理されて信号処理部24に供給される。制御部25は受信部19や送信部20,信号処理部24を制御するものであって、信号処理部24では、この制御部25の制御のもとに、RX1,RX0のいずれの系でも受信が良好な場合には、受信部19で処理されたこれらの系の受信信号が合成され、また、いずれか一方の系の受信状態や受信部が異常である場合には、異常でない他方の系の受信部19からの受信信号が選択され、所定の処理がなされる。
ここで、受信部19について説明するが、RX1系とRX0系とは同一構成をなしているので、これら系の間では、対応する同じ回路に同一符号を付け、一方の系について説明する。
デュープレクサ23で帯域制限されたRF(無線周波)帯の受信信号は、LNA2で増幅された後、このBPF4で帯域制限されて不要成分が除去され、受信信号のみが抽出される。この受信信号はミクサ5に供給され、ローカル部18’からのローカル信号Lと混合されてIF(中間周波)帯の受信信号に変換される。ここで、ローカル部18’で生成されるローカル信号Lは、ミクサ5で規定のIF帯の受信信号が生成されるように、周波数が設定されている。ミクサ5の出力信号は、IF増幅器6で増幅された後、IFフィルタ7で帯域制限されて規定のIF帯の受信信号のみが抽出され復調部8に供給される。この復調部8では、受信IFローカル部11からのローカル信号(搬送波)LIFにより、直交復調されて情報信号が得られる。この情報信号が信号処理部24に供給される。
次に、送信部20について説明すると、信号処理部24で生成された直交変調されてIF帯にある送信信号が供給される。この送信信号はIF増幅器12で増幅され、BPF13で帯域制限されてミクサ14に供給される。このミクサ14では、この送信信号がローカル部18’からのローカル信号Lと混合され、規定のRF帯の送信信号に変換される。この送信信号はBPF15で帯域制限され、電力増幅器16で電力増幅された後、アイソレータ17を経由し、さらに、デュープレクサ23で帯域制限されて一方のアンテナ22から送信される。
上記特許文献1に記載の技術は、このような受信部19において、パイロットシンセサイザ部10’とパイロット検波部9とカプラ1,3とを設け、受信部19でのLNA2の性能低下を監視するものである。
即ち、パイロットシンセサイザ部10’はデュープレクサ23からカプラ1に供給される受信信号の帯域外の周波数のパイロット信号Pを生成しており、このパイロット信号Pがカプラ1に供給されて受信信号と多重化される。なお、このパイロット信号Pは、その周波数が受信信号の帯域外、即ち、デュープレクサ23の通過帯域外に設定されているので、アンテナ21,22から送信されることはない。この受信信号とパイロット信号Pとの多重化信号はLNA2で増幅され、カプラ3でBPF4とパイロット検波部9とに分配される。BPF4に供給された多重化信号は帯域制限されてパイロット信号Pが除去され、受信信号のみが抽出される。
このパイロット検波部9では、図10に示すように、カプラ3から分配された多重信号がBPF9aに供給されてパイロット信号Pが抽出され、この抽出されたパイロット信号Pが増幅器9bで検波可能なレベルに増幅され、検波回路9cでこのパイロット信号Pが検波される。LNA2(図9)の利得が一定であれば、この検波回路9cの検波出力が一定であるが、LNA2が性能劣化して利得が低下すると、この検波回路9cの検波出力が低下する。従って、この検波回路9cの検波出力により、LNA2の性能劣化を監視することができる。
図11は図9に示す従来の無線基地局装置でのLNA2の利得の監視動作を示すフローチャートである。
同図において、装置の電源がONすると(ステップ100)、パイロットシンセサイザ部10’の出力周波数が所定のパイロット周波数に設定され、このパイロット周波数のパイロット信号Pを出力する(ステップ101)。また、ローカル部18’も所定周波数の上記のローカル信号Lを発生し、受信ローカル部11も上記のローカル信号(搬送波)LIFを発生する(ステップ102)。かかる状態で、受信部19は受信が行なわれる。
これとともに、パイロット検波部9では、カプラ3によって分配される多重信号からこのパイロット信号Pが抽出され、この抽出されたパイロット信号Pを用いてLNA2の利得が監視される(ステップ103)。そして、このLNA2の利得に異常がなければ(ステップ104)、LNA2の利得の監視が続けられるが、異常があれば(ステップ104)、アラームを出力して受信部が故障していることを通知する(ステップ105)。
このようにして、受信部19の故障の有無を監視することができるようにしている。
また、他の従来技術として、移動体通信システムの基地局のおいて、送信時に送信信号の一部を受信部に供給し、受信部で処理された信号のレベルと送信のために送信部に供給されるこの送信信号とのレベルとを比較することにより、受信部の故障を判定するようにしたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平5ー122170号公報
特開2002ー246978
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。
図1は本発明による無線基地局装置の一実施形態を示す構成図であって、10はパイロットシンセサイザ部、18はローカル部であり、図9に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
同図において、この実施形態は、図9に示す従来の無線基地局装置と基本的には同じ構成をなすものであるが、パイロットシンセサイザ部10が、上記のパイロット周波数fPのパイロット信号Pとともに、このパイロット信号Pとは周波数が異なる周波数の受信部故障確認信号TC(その周波数を、以下、故障確認周波数fTCという)も発生し、また、ローカル部18は、パイロットシンセサイザ部10がパイロット信号Pを発生するときと受信部故障確認信号TCを発生するときとで、周波数が異なるローカル信号LVを発生するものである。受信IFローカル部11は、図9における受信IFローカル部11と同様のIFローカル信号(搬送波)LIFを発生する。
なお、図2に示すように、パイロット周波数fPは受信信号の周波数帯域FR外に設定され、また、故障確認周波数fTCはデュープレクサ23の通過帯域FD外であるが、それに近い周波数(即ち、受信時にデュープレクサ23から供給される受信信号の帯域内、もしくはこれに近い周波数)に設定されている。ここで、アンテナ21,22で受信される受信信号は、図2でSR’として示すように、周波数帯域FRの信号であるが、デュープレクサ23によって帯域制限することにより、図2でSRとして示すように、デュープレクサ23の通過帯域FDの信号となって受信部19に供給される。
受信部19が受信動作を行なうときには、図9に示す従来の無線基地局装置と同様、パイロットシンセサイザ部10は、図2に示すように、受信信号の周波数帯域外のパイロット周波数fPのパイロット信号Pを発生し、このパイロット信号Pがカプラ1で受信信号と多重化される。この多重化信号はLNA2で増幅され、カプラ3でBPF4とパイロット検波部9とに分配される。このパイロット検波部9は図10に示す上記の構成をなしており、供給された多重化信号がBPF9aで帯域制限されてパイロット信号Pのみが抽出される。このパイロット信号Pが増幅器9bで検波可能なレベルに増幅されて、検波回路9cで検波される。この検波回路9cの検波出力により、図9に示す従来の無線基地局装置と同様、LNA2の性能劣化を監視することができる。これにより、受信中、LNA2の性能劣化が検出される。
装置の電源がONされると、直ちに受信が開始されるものではなく、受信部故障確認信号TCを用いて受信部19全体の故障確認動作が行なわれる。この故障確認動作で故障が確認されず、正常であることが確認されると、受信が開始されて受信部19で受信動作が行なわれる。この受信部故障確認信号TCがパイロットシンセサイザ部10から発生される。
即ち、装置の電源がONされると(ローカル部18は、受信部故障確認信号TCのローカル信号として設定されているので、RX1系とRX0系に入力された受信信号は、ミクサ5で違うIF周波数となるため、IFフィルタ7で除去されて復調部8に供給されない。即ち、RX1系とRX2系の受信信号がスイッチなどで遮断された状態と同じであるが、受信部故障確認信号TCの周波数fTCを図2における通過帯域fD内に設定する場合には、例えば、デュープレクサ23の受信信号の出力端子側にON,OFFの開閉スイッチを設け、RX1系とRX0系との受信信号を遮断してもよい)、パイロットシンセサイザ部10から故障確認周波数fTCの受信部故障確認信号TCが出力され、カプラ1に供給される。このカプラ1では、この受信部故障確認信号TCがそのまま出力され、LNA2で増幅されてカプラ3に供給される。このカプラ3により、この受信部故障確認信号TCがBPF4とパイロット検波部9とに分配されるが、このパイロット検波部9では、図10におけるBPF9aによって減衰されて除かれる。これにより、検波回路9cからは検波出力は得られない。なお、この場合には、検波回路9aの検波出力からLNA2の利得を監視する図示しない判定手段は不動作状態に設定されており、このため、LNA2の利得を監視しない。
一方は、BPF4に分配された受信部故障確認信号TCは、その周波数fTCがデュープレクサ23からの受信信号の周波数内、もしくはその近傍に設定されているので、このBPF4を通過し、ミクサ5に供給される。ここで、このミクサ5には、ローカル部18からローカル信号LVが供給されるが、このときのローカル信号LVの周波数は、これがミクサ5でBPF4からの受信部故障確認信号TCと混合することにより、この受信部故障確認信号TCの周波数fTCが受信時にこのミクサ5によって得られる上記のIFの受信信号の帯域内の周波数となるように、設定されている。このため、ミクサ5でローカル信号LVを用いて周波数変換された受信部故障確認信号TCは、IF増幅器5で増幅された後、IFフィルタ7を通過する。IFフィルタ7で不要成分が除かれた受信部故障確認信号TCは復調部8に供給される。
図3はこの復調部8の一具体例を示すブロック図であって、30は分配器、31は直交復調器、32は搬送波発生器、33I,33QはLPF(ローパスフィルタ)、34はA/D(アナログ/デジタル)コンバータ、35はRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度表示)検波器、36はA/Dコンバータ、37は受信信号処理部、38は受信制御部、39はメモリである。
同図において、復調部8には、受信信号を復調するための直交復調器31と受信電力を監視するためのRSSI検波器35とが設けられている。まず、この具体例の受信時の復調動作について説明する。
図1で説明したように、この復調部8には、IFフィルタ8(図1)からIF帯の受信信号が供給されるが、この受信信号は、分配器30により、直交復調器31とRSSI検波器35とに分配される。
直交復調器31では、受信IFローカル部11(図1)での搬送波発生器32からの搬送波LIFにより、直交変調されているIF帯の受信信号がI,Q信号に復調される。これらI,Q信号は夫々、LPF33I,33Qで高調波成分が除去された後、A/Dコンバータ34でデジタル変換され、信号処理部24(図1)での受信信号処理部37に供給される。このようにして、受信信号を復調したI,Q信号が得られ、これが受信信号処理部37で処理されてもとの情報信号が得られる。
また、RSSI検波器35では、分配器30からの受信信号が検波され、平滑され受信信号の電力に応じた検波値が出力される。この検波値はA/Dコンバータ36でデジタル値に変換され、受信信号処理部37を介して制御部25(図1)における受信制御部38に供給される。受信制御部38は、この検波値をメモリ39に格納されている第1の基準値と比較し、検波したレベルが異常であるとき、受信部19が故障したものと判定される。
次に、受信開始前の受信部19の故障確認動作時でのこの復調部8の具体例の動作を説明する。
この場合には、IFフィルタ7(図1)からIF帯の受信信号の帯域内の受信部故障確認信号TCが入力され、分配器30によって直交復調器31とRSSI検波器35とに分配される。
直交復調器31では、この受信部故障確認信号TCが搬送波発生器32からの搬送波LIFを用いて直交復調されるが、この受信部故障確認信号TCの周波数がこの搬送波LIFの周波数と等しいと、I,Q信号としては、この受信部故障確認信号TCの直流成分しか得られず、受信部故障確認信号TCの電力を検出することができない。このために、復調部8に入力される受信部故障確認信号TCの周波数をこの搬送波LIFの周波数からずれた(例えば、1MHz程度)周波数に設定する。このために、このときのローカル部18(図1)からのローカル信号LVの周波数を受信動作時の周波数とは異ならせている。
ここで、受信部故障確認信号TCの周波数について、まとめて説明すると、受信部故障確認信号TCの周波数fTCは、パイロットシンセサイザ部10から発生されるときには、デュープレクサ23の通過帯域外、または、その通過帯域の近傍に設定される。BPF4は、受信信号やこの受信部故障確認信号TCを通過させるが、パイロットシンセサイザ部10から発生されるパイロット周波数fPのパイロット信号Pを遮断する通過帯域が設定されている。また、ローカル部18からのローカル信号LVは、受信部19の受信動作時には、ミクサ5で受信信号の搬送周波数が復調部8の直交復調器31での搬送波発生器32からの搬送波LIFの周波数と等しくなるように、設定されるが、受信部19の故障確認動作時には、ミクサ5で受信部故障確認信号TCの周波数がこの搬送波発生器32からの搬送波LIFの周波数から上記のようにずれるように、設定されるのである。IFフィルタ7は、このようなIF帯の受信信号と受信部故障確認信号TCとを通過させる通過帯域が設定されている。このように、パイロットシンセサイザ部10とローカル部18との出力周波数が、受信部19の受信動作時と故障確認動作時とで切り替えられる。
図3において、直交復調器31では、以上の周波数の搬送波LIFを用いて受信部故障確認信号TCを直交復調することにより、図4に示す90゜位相が異なる波形のI,Q信号が得られる。これらI,Q信号は夫々、LPF33I,33Qで不要信号が除去された後、A/Dコンバータ34でデジタル信号に変換され、受信信号処理部37に供給される。この受信信号処理部37では、これらデジタル信号を演算処理して受信部故障確認信号TCの電力値、即ち、受信電力値が求められ、この受信電力値は受信制御部25に供給される。
また、RSSI検波器35では、受信部故障確認信号TCが検波,平滑されることにより、この受信部故障確認信号TCが入力レベル値として検出され、A/Dコンバータ36でデジタル値に変換されて受信信号処理部37に供給される。この入力レベル値も、受信信号処理部37から受信制御部38に供給される。
受信制御部25では、これら受信電力値,入力レベル値とを夫々メモリ39に格納されている該当基準電力値と比較し、これら受信電力値,入力レベル値が異常であるか否かを検出する。受信部故障確認信号TCは図1でのカプラ1から復調部8までの受信部19全体を通して供給されるものであるから、これら受信電力値,入力レベル値の異常の有無を検出することにより、受信部19全体の故障の有無を判定することがてきる。これら受信電力値,入力レベル値の少なくとも1つが異常であるとき、受信制御部38は、受信部19に故障があるとして、アラームを出力する。
なお、直交復調器31の出力から検出した受信電力値とRSSI検波器35でで検出した入力レベル値のいずれか一方を用いて、受信部19の故障の有無を判定するようにしてもよい。
このようにして、受信部19の故障の有無を判定することができ、受信制御部38は、この故障を検出しないときには、ローカル部18を図2における通過帯域FDを受信する帯域に設定し(故障確認周波数fTCを通過帯域FD内に設定したときには、デュープレクサ23での開閉スイッチをONする)受信部19を故障確認状態から受信動作状態に切り替え、受信動作を開始する。受信動作が開始すると、上記のように、パイロットシンセサイザ部10の出力周波数が故障確認周波数fTCからパイロット周波数fPに切り替わり、パイロットシンセサイザ部10からこのパイロット周波数fPのパイロット信号Pがカプラ1に供給されて、パイロット検波部9でLNA2の利得が監視される。
図5は図1におけるパイロットシンセサイザ部10の第1の具体例を示すブロック図であって、40はVCO(電圧制御型発振器)、41aはPLL(位相ロックループ)回路、42はLPF、43は分配器である。
この第1の具体例は、パイロット周波数fPと故障確認周波数fTCとの周波数間隔が比較的狭い(即ち、故障確認周波数fTCがパイロット周波数fPに比較的近い)場合のものである。
同図において、VCO40の出力信号はPLL回路41aに供給される。このPLL回路41aは、VCO40の出力信号を分周する分周回路とこの分周回路の出力信号と基準信号とを位相比較する位相比較回路とからなり、この位相比較回路の出力信号がLPF42に供給されてその直流成分が検出され、この直流成分が制御電圧としてVCO40に供給される。VCO40からはこの制御電圧に応じた周波数、即ち、上記分周回路の分周比をM(>1)とすると、基準信号のM倍の周波数の信号が出力される。
ここで、PLL回路41aでの分周回路は、分周比が可変のものであって、受信部19(図1)が故障確認動作状態と受信動作状態とで分周比を異ならせ、いずれの状態でも、VCO40の出力信号を分周して基準信号と同じ周波数の信号を生成するものである。この分周比を異ならせる方法としては、単一の分周回路を用いて分周比を異ならせてもよいが、故障確認動作状態で用いる分周回路と受信動作状態で用いる分周回路との2つの分周回路を用い、かかる状態の切り替えとともにこれら分周回路を切り替えて使用するようにしてもよい。
受信部19(図1)が故障確認動作状態にあるときには、PLL回路41aの分周回路の分周比Mを所定の値M1に設定される(あるいは、分周比M1の分周回路を用いる)ことにより、VCO40から基準信号の周波数のM1倍の上記周波数fTCの故障確認信号TCが出力され、分配器43により、受信部19(図1)でのRX1系とRX0系のカプラ1に供給される。また、受信部19が受信動作状態に切り替わると、PLL回路41aの分周回路の分周比MがM1からM2(図2の場合、M2>M1)に切り替わる(あるいは、分周比M2の分周回路に切り替わる)。これにより、VCO40から基準信号の周波数のM2倍の上記周波数fPのパイロット信号Pが出力される。このパイロット信号Pは、分配器43により、受信部19(図1)でのRX1系とRX0系とのカプラ1に分配される。
このようにして、パイロット周波数fPと故障確認周波数fTCとの間隔が比較的狭い場合には、PLL回路41aの分周回路の分周比Mを切り替えるというソフトウェアを追加するだけで、パイロット信号Pと受信部故障確認信号TCとを共通の構成が簡単なハードウェアから取得することができる。
図6は図1におけるパイロットシンセサイザ部10の第2の具体例を示すブロック図であって、41bはPLL回路、44a,44bは切替スイッチ、45はN分周回路、46はミクサであり、図5に対応する部分には同一符号を付けている。
この第2の具体例は、パイロット周波数fPと故障確認周波数fTCとの周波数間隔が比較的広い場合のものである。
同図において、VCO40の出力信号はPLL回路41bに供給される。このPLL回路41bは、VCO40の出力信号を一定の分周比で分周する分周回路とこの分周回路の出力信号と基準信号とを位相比較する位相比較回路とからなり、この位相比較回路の出力信号がLPF42に供給されてその直流成分が検出され、この直流成分が制御電圧としてVCO40に供給される。VCO40からはこの制御電圧に応じた周波数、即ち、上記分周回路の分周比をM(>1)とすると、基準信号のM倍の周波数の信号が出力される。ここでは、図2に示すように、パイロット周波数fP>故障確認周波数fTCとすると、VCO40のこの出力信号が周波数fTCの受信部故障確認信号TCであり、切替スイッチ44aに供給される。
受信部19(図1)が故障確認動作状態にあるときには、切替スイッチ44aは切替スイッチ44b側を選択し、切替スイッチ44bは切替スイッチ44a側を選択している。これにより、VCO40から出力される受信部故障確認信号TCは切替スイッチ44a,44bを介して分配器43に供給され、この受信部19でのRX1系とRX0系とのカプラ1に分配される。
受信部19(図1)が受信動作状態に切り替わると、切替スイッチ44aがN分周回路45やミクサ46側に切り替わり、切替スイッチ44bがミクサ46側に切り替わる。これにより、VCO40から出力される故障確認周波数fTCの受信部故障確認信号TCがN分周回路45とミクサ46とに供給される。この分周回路45で分周された周波数fTC/Nの信号はミクサ46に供給されて故障確認周波数fTCの信号と混合され、(N+1)fTC/Nの周波数の信号が生成される。分周回路45の分周比N(>1)は、この周波数(N+1)fTC/Nがパイロット周波数fPと等しくなるように、設定されており、これにより、ミクサ46から周波数fPのパイロット信号Pが生成される。このパイロット信号Pが切替スイッチ44bを介して分配器43に供給され、受信部19(図1)でのRX1系とRX0系とのカプラ1に分配される。
なお、この第2の具体例では、切替スイッチ44aを省き、VCO40から出力される受信部故障確認信号TCを切替スイッチ44aやN分周回路45,ミクサ46に常時供給するようにしてもよい。
このように、この具体例では、N分周器45やミクサ46などといった簡単な構成の回路を追加するだけで、異なる周波数のパイロット信号Pと受信部故障確認信号TCとを取得することができる。
図7は図1におけるパイロットシンセサイザ部10の第3の具体例を示すブロック図であって、40a,40bはVCO、41cはPLL回路、44c,44dは切替スイッチ、45はN分周回路、46はミクサであり、図5に対応する部分には同一符号を付けている。
この第2の具体例は、パイロット周波数fPと故障確認周波数fTCとの周波数間隔が非常に広い場合のものである。
同図において、VCO40aはパイロット周波数fPのパイロット信号Pを発生し、VCO40bは故障確認周波数fTCの受信部故障確認信号TCを発生するためのものである。また、PLL回路41cは、このパイロット信号Pを分周して基準信号と同じ周波数の信号を生成する第1の分周回路と、この受信部故障確認信号TCを分周して基準信号と同じ周波数の信号を生成する第2の分周回路と、受信部19が故障動作確認動作状態にあるときには、第2の分周回路の出力信号を選択し、受信部19が受信動作状態にあるときには、第1の分周回路の出力信号を選択する選択回路と、選択回路で選択された信号を基準信号と位相比較する位相比較回路とを備えており、この位相比較回路の出力信号がPLL回路41cの出力信号となる。さらに、切替回路44cは、受信部19が故障動作確認動作状態にあるときには、PLL回路41cの出力信号がLPF42で処理されて得られる直流電圧をVCO40bに制御電圧として供給し、受信部19が受信動作状態にあるときには、PLL回路41cの出力信号をLPF42で処理されて得られる直流電圧をVCO40aに制御電圧として供給される。
かかる構成により、受信部19が故障動作確認動作状態にあるときには、VCO40bから故障確認周波数fTCの受信部故障確認信号TCが出力される。このときには、切替スイッチ44dはVCO40b側を選択しており、これにより、このVCO40bで発生される受信部故障確認信号TCが、分配器43により、受信部19(図1)でのRX1系とRX0系とのカプラ1に分配される。また、受信部19が受信動作状態にあるときには、VCO40aからパイロット周波数fPのパイロット信号Pが出力される。このときには、切替スイッチ44dはVCO40a側を選択しており、これにより、このVCO40aで発生されるパイロット信号Pが、分配器43により、受信部19(図1)でのRX1系とRX0系とのカプラ1に分配される。
このように、この第3の具体例では、VCOを1つ追加するだけで、周波数が大きく異なるパイロット信号Pと受信部故障確認信号TCとを取得することができる。
以上のように、パイロットシンセサイザ部10(図1)を、パイロット信号Pと受信部故障確認信号TCとの周波数の関係によるが、ほとんどの構成部分でこれら信号に共用できるようにした回路構成として、異なる周波数のパイロット信号Pと受信部故障確認信号TCとを発生させることができる。
なお、図1でローカル部18においても、受信部19が故障動作確認動作状態にあるときと受信動作状態にあるときとで、異なる周波数のローカル信号LVが発生されるようにしているが、このための構成も、図5〜図7に示す構成のいずれかと同様のものとすることができる。勿論、このローカル信号LVの周波数を一定にしてもよいことは上記の通りである。
図8は以上の構成の図1に示す実施形態の動作の一具体例を示すフローチャートである。
同図において、操作の電源がONすると(ステップ200)、受信19は故障確認動作状態に設定され、パイロットシンセサイザ部10から故障確認周波数fTCの受信部故障確認信号TCが発生され、カプラ1に供給される(ステップ201)。また、ローカル部18も、この受信部故障確認信号TCに応じた上記の周波数のローカル信号LVが発生され、ミクサ5に供給される。さらに、受信IFローカル部11は規定の周波数の搬送波LIFを発生し、これを復調部8に供給する(ステップ202)。
以上のように各周波数が設定されることにより、受信部19でその故障確認動作が行われる。そして、復調部8において、図3で説明したように、この受信部故障確認信号TCの直交復調で得られる受信電力値が規定される範囲内にあるかどうか検出され(ステップ203)、この規定範囲内にないときには、受信部19が異常な状態にあると判定してアラームを出力する(ステップ204)。また、図3でのRSSI検波器35で受信部故障確認信号TCを検波,平滑することによって得られる入力レベル値についても、これが規定の範囲内にあるか否か検出され(ステップ205)、この規定範囲内にないときには、受信部19が異常な状態にあると判定してアラームを出力する(ステップ206)。
上記の受信電力値と入力レベル値とが同時に夫々の規定範囲内にあるときには、受信部19は正常であると判定し(ステップ203,205)、受信部19を受信動作状態に切り替え、パイロットシンセサイザ部10からパイロット信号Pを出力させ(ステップ101)、ローカル部18からのローカル信号LVの周波数を上記のように切り替えて(ステップ102)、ステップ103〜ステップ105の動作を行なう。かかる動作は、従来の図11に示した動作と同様である。
このようにして、この実施形態では、受信部19の各部の故障(例えば、図3において、A/Dコンバータ34の測定値が正常でA/Dコンバータ36の測定値が異常であるとき、RSSI検出器35の故障。A/Dコンバータ36が正常でA/Dコンバータ34が異常のとき、搬送波発生器32を含む直交復調器31系の異常。両方が異常の場合には、ローカル部18を含むカプラからIFフィルタまでの故障)の有無を検出することができ、しかも、この検出は受信動作開始前に行なわれるものであるから、受信部19が故障した状態で受信を開始することを防止することが可能となる。
また、故障した系の電源を断とすることにより、低消費電力化を行なうことも可能である。
さらに、この受信動作開始前の故障確認動作のための期間は、この確認ができる期間であればよいから、格別長い期間である必要はなく、このための受信部19での消費電力はわずかなものである。