JP3665562B2 - 移動通信装置及び受信信号処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、所定の周波数範囲でチューニングすることにより、通信サービス圏内において提供されるチャネルを検出して通信を可能とする移動通信装置に係り、特に、スペクトラム拡散が施された信号を送受信して通信を行う移動通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば携帯電話機といった、無線信号を送受信して通信を行う移動通信装置には、相手先との通信を可能とするために、予め定められた周波数範囲でチューニングして移動体通信システムの基地局等から提供されるチャネルを検出し、初期同期を確立するための処理を実行するものがある。
【0003】
例えば、いわゆる第3世代の移動体通信システムであるIMT−2000(International Mobile Telecommunication-2000)のシステムでは、通信方式としてW−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式が採用され、移動通信装置が基地局との間でスペクトラム拡散が施された無線信号を送受信する。
このIMT−2000のシステムでは、1つのチャネルに対して約5MHzの帯域が割り当てられ、また、チャネルの中心周波数として設定されうる周波数の間隔(チャネルセパレーション)は、200kHzである。
【0004】
こうした移動体通信システムに適用される移動通信装置は、チャネルを検出する際に、所定の周波数範囲をスキャンニングして受信信号の電力が最大となった周波数を、チャネルの中心周波数であると特定して通信を実行することが考えられる。
しかし、フェージング等を考慮すると、受信信号の電力が最大となった周波数が、必ずしも基地局にて設定されたチャネルの中心周波数に一致するとは限らない。
【0005】
このため、移動通信装置は、受信信号の電力が最大となった周波数の付近で再度スキャンニングして、例えば相関値を検出するといった、初期同期を確立するための処理を実行することが考えられる。
この際、従来の移動通信装置は、無線周波数帯の受信信号を中間周波数帯にダウンコンバートするために用いる発振信号の周波数を、200kHzステップで切り換えつつ、例えば相関値の検出といった、初期同期を確立するための処理を実行する。
【0006】
ここで、移動通信装置が、発振信号の周波数の設定に250μs、受信信号の電力の測定に750μsの時間を、それぞれ費やすものとする。すなわち、受信信号の周波数を1回設定するごとに、移動通信装置は1msの時間を費やして、受信信号の電力を測定する。
【0007】
IMT−2000のシステムでは、下り無線リンクとして、2110MHz〜2170MHzからなる60MHzの周波数範囲を使用することができる。ただし、下り無線リンクとして使用可能な周波数範囲の外部に信号が漏洩することを防止するため、チャネルの中心周波数を設定可能な周波数範囲は、2112.6MHz〜2167.4MHzである。
この周波数範囲において、チャネルの中心周波数として設定されうる周波数が200kHzステップで存在することから、移動通信装置は、受信信号の電力を測定してチャネルを検出する際に、275通りの周波数を受信信号の周波数に設定して、受信信号の電力を測定すると考えられる。
従って、下り無線リンクのために提供されるチャネルを検出する際には、受信信号の電力を測定するために、約275msの時間を要する。
【0008】
こうして受信信号の電力を測定したのち、例えば所定の閾値を超える受信信号電力が測定された周波数が存在した場合等に、従来の移動通信装置は、さらに15MHzの範囲を200kHzステップでスキャンニングして、初期同期を確立するための処理を実行する。
この際、移動通信装置が、発振信号の周波数の設定や相関値の検出等を含めて、受信信号の周波数を1回設定するごとに、約1msの時間を費やすものとすると、15MHzの範囲を200kHzステップでスキャンニングすることから、約75msの時間を要することになる。
【0009】
従って、従来の移動通信装置が、移動体通信システムにて提供されるチャネルを検出して初期同期を確立するための処理を1回実行すると、例えば350msの時間を費やすこととなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、チャネルを検出するために受信信号の電力を測定する処理と、初期同期を確立するために相関値の検出等を行う処理とのいずれにおいても、受信信号の周波数を規定する発振信号の周波数を200kHzステップで切り換えている。
【0011】
この点、移動通信装置が初期同期を確立して通信サービス圏内に復帰し、待受状態に入るまでには、多くの電流を消費することから、こうした処理に費やす時間は短い方が好ましい。
【0012】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、チャネルを検出して初期同期を確立するための処理を簡単化し、通信サービス圏内に素早く復帰可能とした移動通信装置を、提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係る移動通信装置は、
スペクトラム拡散が施された信号を受信し、拡散コードとの相関値を検出して初期同期を確立するための処理を実行することにより通信を可能とするものであって、
受信信号からベースバンド信号を復調する復調手段と、
前記復調手段がベースバンド信号を復調するためのローカル発振信号を生成するローカル発振信号生成手段と、
前記復調手段により復調されたベースバンド信号と拡散コードとの相関演算により、相関値を検出する相関検出手段とを備え、
前記ローカル発振信号生成手段は、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成して前記復調手段に供給する、
ことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ローカル発振信号生成手段は、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成して復調手段に供給する。
これにより、相関検出手段は、復調手段により復調されたベースバンド信号から、チャネルの中心周波数が設定されうる複数の周波数の受信信号について、同時に相関値を検出することができ、初期同期を確立するための処理を簡単化して通信サービス圏内に素早く復帰することができる。
【0015】
より具体的には、前記復調手段は、複数の復調用キャリアに相当する各周波数成分の大きさをほぼ同一とするための通過帯域特性を有し、前記ローカル発振信号生成手段により生成されたローカル発振信号をフィルタリングして、ベースバンド信号の復調に供する帯域通過フィルタを備えることが望ましい。
【0016】
また、前記ローカル発振信号生成手段は、
所定の基準周波数を有する参照信号を生成する基準発振器と、
ローカル発振信号を生成する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器により生成されたローカル発振信号と前記基準発振器により生成された参照信号との位相差に対応した大きさを有する電圧信号を生成する電圧信号生成回路と、
通信を実行する際に、前記電圧信号生成回路により生成された電圧信号をフィルタリングする第1のフィルタと、
初期同期を確立するための処理を実行する際に、前記電圧信号生成回路により生成された電圧信号をフィルタリングする第2のフィルタと、
前記電圧信号生成回路により生成された電圧信号を、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタのいずれか一方にフィルタリングさせて前記電圧制御発振器に供給するスイッチとを備えることが望ましい。
【0017】
ここで、前記第2のフィルタは、前記第1のフィルタのカットオフ周波数より大なるカットオフ周波数を有する低域通過フィルタであり、リファレンスリークが含まれた電圧信号を前記電圧制御発振器に供給可能とすることが望ましい。
【0018】
また、所定の周波数範囲で発振信号の周波数を切り換えることにより、受信信号の周波数を切り換える受信周波数制御手段を備え、
前記受信周波数制御手段は、相関値を検出して初期同期を検出するための処理を実行する際に、発振信号の周波数を、チャネルの中心周波数が設定されうる周波数の間隔よりも広いステップ幅で切り換えることが望ましい。
【0019】
この発明の第2の観点に係る受信信号処理方法は、
スペクトラム拡散が施された信号を受信し、拡散コードとの相関を検出して初期同期を確立するための処理を実行することにより通信を可能とする方法であって、
受信信号からベースバンド信号を復調する復調ステップと、
前記復調ステップにてベースバンド信号を復調するためのローカル発振信号を生成するローカル発振信号生成ステップと、
前記復調ステップにて復調したベースバンド信号と拡散コードとの相関演算により、相関値を検出する相関検出ステップとを備え、
前記ローカル発振信号生成ステップは、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成して前記復調ステップにおけるベースバンド信号の復調に供する、
ことを特徴とする。
【0020】
前記ローカル発振信号生成ステップにて生成したローカル発振信号をフィルタリングして、複数の復調用キャリアに相当する各周波数成分の大きさをほぼ同一に調整し、前記復調ステップにおけるベースバンド信号の復調に供するフィルタリングステップを備えることが望ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る移動通信装置について詳細に説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係る移動通信装置100の構成を示す図である。
この移動通信装置100は、例えば通信方式としてW−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式を採用したIMT−2000(International Mobile Telecommunication-2000)のシステムといった、移動体通信システムに適用され、スペクトラム拡散が施された信号を受信する。
【0022】
この移動通信装置100は、図1に示すように、第1のミキサ1と、シンセサイザー2と、第1のBPF(Band Pass Filter)3と、直交検波器4と、ローカル発振信号生成回路5と、相関器6と、相関パターン生成器7とを備えて構成される。
【0023】
第1のミキサ1は、例えばアンテナ等により受信したのちLNA(Low Noise Amplifier)等により増幅された無線周波数帯の受信信号を受け、シンセサイザー2により生成された発振信号と乗積するためのものである。
【0024】
シンセサイザー2は、所定の周波数範囲内で発振周波数を切換可能な発振回路であり、無線周波数帯の受信信号を中間周波数(IF;Intermediate Frequency)帯に変換するための発振信号を生成する。例えば、シンセサイザー2は、200kHzステップで発振周波数を切換可能であり、1チャネル分の周波数範囲に含まれる信号が第1のBPF3を通過するように、受信信号の周波数を変換するための発振信号を生成する。すなわち、シンセサイザー2は、発振周波数を制御することにより、受信信号の周波数(受信周波数)を規定する。
例えば、シンセサイザー2は、2112.6MHz〜2168.4MHzの周波数範囲に含まれる所定の帯域を、第1のBPF3の通過帯域と一致させるべく、受信信号の周波数を変換するための発振信号を生成する。
【0025】
第1のBPF3は、第1のミキサ1から受けた信号をフィルタリングすることにより、中間周波数帯に変換された受信信号を抽出するためのものである。すなわち、第1のBPF3は、1つのチャネルに割り当てられる帯域幅と同一の通過帯域幅(例えば、5MHz)を有し、第1のミキサ1から受けた信号のうち、所定の周波数成分のみを通過させる。
【0026】
直交検波器4は、第1のBPF3を通過した信号から、スペクトラム拡散が施されたベースバンド信号を復調するためのものである。
直交検波器4は、第2及び第3のミキサ10、11と、第2のBPF12と、90度移相器13とを備えて構成される。
【0027】
第2のミキサ10は、第1のBPF3を通過した中間周波数帯の受信信号に、第2のBPF12を通過したローカル発振信号を、乗積するためのものである。これにより、例えば、第2のミキサ10は、ベースバンド信号のI(In-phase;同相)成分を復調可能とする。
【0028】
第3のミキサ11は、第1のBPF3を通過した中間周波数帯の受信信号に、90度移相器13により位相が90度だけシフトされたローカル発振信号を乗積するためのものである。これにより、例えば、第3のミキサ11は、ベースバンド信号のQ(Quadrature;直交)成分を復調可能とする。
【0029】
第2のBPF12は、ベースバンド信号を復調するためにローカル発振信号生成回路5により生成されたローカル発振信号をフィルタリングすることにより、ローカル発振信号の大きさを周波数成分ごとに調整するためのものである。すなわち、第2のBPF12は、例えば図2に示すような通過帯域特性を有し、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分がほぼ同一の大きさとなるように調整する。
【0030】
90度移相器13は、第2のBPF12を通過したローカル発振信号の位相を90度だけシフトさせて第3のミキサ11に供給するためのものである。
【0031】
ローカル発振信号生成回路5は、直交検波器4がベースバンド信号を復調するために利用されるローカル発振信号を、生成するためのものである。
ローカル発振信号生成回路5は、電圧制御発振器14と、基準発振器15と、PLL(Phase Locked Loop)回路16と、第1及び第2のスイッチ17、18と、第1及び第2のLPF(Low Pass Filter)19、20とを備えている。
【0032】
電圧制御発振器14は、電圧信号の振幅に対応した周波数を有するローカル発振信号を生成するための発振回路である。すなわち、電圧制御発振器14は、第1のスイッチ17の接続先に応じて、第1のLPF19と第2のLPF20のいずれか一方によりフィルタリングされた電圧信号を受け、その電圧信号の大きさに対応した周波数を有するローカル発振信号を生成する。
【0033】
基準発振器15は、例えば水晶発振器等から構成され、所定の周波数を有する参照信号を生成し、PLL回路16に供給するためのものである。ここで、基準発振器15は、比較周波数として、チャネルの中心周波数が設定されうる周波数の間隔(チャネルセパレーション)に相当する周波数を、参照信号の周波数に規定し、PLL回路16に供給する。
【0034】
PLL回路16は、例えば1チップのIC(Integrated Circuit)上に設けられたプログラマブル分周器、プリスケーラ、位相比較器、チャージポンプ等から構成され、基準発振器15により生成された参照信号と、電圧制御発振器14により生成されたローカル発振信号を受ける。PLL回路16は、参照信号と、ローカル発振信号との位相差に対応した大きさを有する電圧信号を生成し、第2のスイッチ18の接続先に応じて、第1のLPF19と第2のLPF20のいずれか一方に供給する。
【0035】
第1及び第2のスイッチ17、18は、例えば半導体スイッチ等から構成され、連動して接続先を切り換えて、PLL回路16から出力された電圧信号を、第1のLPF19と第2のLPF20のいずれか一方にフィルタリングさせる。
第1のスイッチ17は、第1のLPF19と第2のLPF20のいずれか一方によりフィルタリングされた電圧信号を、電圧制御発振器14に供給する。
第2のスイッチ18は、PLL回路16から出力された電圧信号を、第1のLPF19と第2のLPF20のいずれか一方に入力して、フィルタリングさせる。
【0036】
第1のLPF19は、移動通信装置100が初期同期を確立したのちに通信を実行する際、電圧制御発振器14にローカル発振信号を生成させるために用いられるループフィルタである。すなわち、第1のLPF19は、PLL回路16から出力された電圧信号に含まれるリファレンスリークを低減して電圧制御発振器14に供給することで、所定の周波数を有するローカル発振信号を生成させる。
【0037】
第2のLPF20は、移動通信装置100が初期同期を確立する際に、電圧制御発振器14にローカル発振信号を生成させるために用いられるループフィルタである。ここで、第2のLPF20は、一定程度のリファレンスリークを含んだ電圧信号を電圧制御発振器14に供給することで、複数の復調用キャリアに相当するスプリアス成分を含んだローカル発振信号を生成させる。
すなわち、第2のLPF20のカットオフ周波数は、第1のLPF19のカットオフ周波数よりも大きな値に設定されている。
【0038】
相関器6は、直交検波器4により復調されたベースバンド信号と、相関パターン生成器7により生成された相関パターンに従った拡散コードとの相関演算を実行し、相関値を検出するためのものである。
【0039】
相関パターン生成器7は、ベースバンド信号を逆拡散するための拡散コードの生成パターン(コードパターン)を、相関器6に供給する。
【0040】
以下に、この発明の実施の形態に係る移動通信装置100の動作を説明する。この移動通信装置100は、チャネルを検出して初期同期を確立する際に、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分(スプリアス成分)を含んだローカル発振信号を用いてベースバンド信号を復調することにより、初期同期を確立するための処理を簡単化することができる装置である。
【0041】
この移動通信装置100は、電源投入時や通信サービス圏外に存在するときに、シンセサイザー2が生成する発振信号の周波数を切り換えることにより、所定の周波数範囲でスキャンニングして、受信信号の電力を測定する。
【0042】
例えば、シンセサイザー2は、受信信号の周波数を2112.6MHz〜2168.4MHzの範囲で順次切り換える。この際、例えば直交検波器4が復調したベースバンド信号等から、受信信号の電力を特定することができる。
【0043】
ここで、第1のBPF3は、例えば5MHzの通過帯域幅を有している。この通過帯域幅は、移動体通信システムにて提供される1つのチャネルに対して割り当てられる帯域幅とほぼ同一である。
第1のミキサ1によりシンセサイザー2が生成した発振信号と乗積された受信信号のうち、第1のBPF3の通過帯域に相当する中間周波数帯の受信信号は、受信信号の電力を測定する際に観測の対象として検出される。
このため、例えば図3(a)に示すように、周波数Fを中心周波数とするチャネルを通じて伝送される信号(W−CDMA信号)が存在すると、この移動通信装置100における受信信号の周波数が図3(b)に示す周波数Fから周波数Fまでの間であるときに、受信信号電力として測定可能となる。
なお、図3(a)の点線は、第1のBPF3を通過して受信信号電力の測定対象となる周波数成分の範囲を示している。
【0044】
このようにして周波数Fを中心周波数とするチャネルを通じて伝送されたW−CDMA信号を検出すると、シンセサイザー2は、発振信号の周波数を再び順次切り換えて、受信信号の周波数が周波数Fから周波数Fまでとなる範囲を、スキャンニングする。
【0045】
相関器6は、相関パターン生成器7により生成されたパターンに従った拡散コードと、直交検波器4により復調されたベースバンド信号との相関演算を実行する。このようにして得られた相関値が最大となる受信信号の周波数をチャネルの中心周波数として特定することで、チャネルを検出するとともに初期同期を確立することができる。
【0046】
この際、ローカル発振信号生成回路5は、第1及び第2のスイッチ17、18を制御して、PLL回路16から出力された電圧信号を、第2のLPF20によりフィルタリングしたのち、電圧制御発振器14に供給する。
ここで、第2のLPF20は、一定程度のリファレンスリークが含まれる電圧信号を電圧制御発振器14に供給することで、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分(スプリアス成分)を含んだローカル発振信号を生成させる。すなわち、第2のLPF20は、ローカル発振信号生成回路5によりローカル発振信号を生成するための動作が破綻しない程度のリファレンスリークを含んだ電圧信号を、電圧制御発振器14に供給可能とする。
【0047】
これにより、電圧制御発振器14は、例えば図4(a)、(b)、(c)のそれぞれに示すような周波数分布を有する信号α、β、γを合成したローカル発振信号を生成する。
すなわち、電圧制御発振器14は、図5(a)に示すような周波数スペクトラムを有するローカル発振信号を生成し、直交検波器4に送る。
【0048】
直交検波器4は、ローカル発振信号生成回路5から受けたローカル発振信号を、第2のBPF12に入力してフィルタリングする。
ここで、第2のBPF12は、図2に示すような通過帯域特性を有しており、図5(a)に示すような周波数スペクトラムを有するローカル発振信号をフィルタリングすることにより、図5(b)に示すような3つの復調用キャリアに相当する周波数成分Sα、Sβ、Sγを有するローカル発振信号に調整する。
【0049】
この第2のBPF12により調整されたローカル発振信号は、各周波数成分Sα、Sβ、Sγが、ほぼ同じ大きさになるように調整されており、チャネルの中心周波数が設定されうる周波数の間隔に対応した周波数差を有している。
これにより、相関器6は、チャネルの中心周波数が設定されうる3通りの周波数の受信信号について、同時に相関値を検出することができる。
例えば、相関器6は、図6に示すように、ローカル発振信号に含まれる周波数成分Sα、Sβ、Sγに対応した相関値分布Dα、Dβ、Dγを検出し、チャネルの中心周波数を特定可能とする。
【0050】
このように、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分Sα、Sβ、Sγを有するローカル発振信号を用いてベースバンド信号を復調し、相関値を検出することから、シンセサイザー2が発振信号の周波数を切り換えるステップ幅を広くして、周波数を切り換える回数を低減することができる。
すなわち、シンセサイザー2は、相関値を検出して初期同期を確立するための処理を実行する際に、チャネルの中心周波数が設定されうる周波数の間隔よりも広いステップ幅で発振周波数を切り換えて、受信信号の周波数を切り換えることができる。
【0051】
例えば、シンセサイザー2が、例えば図7に示すように600kHzステップで発振信号の周波数を切り換えることで相関値を検出することができ、200kHzステップで切り換えた場合の3分の1の時間にて、スキャンニングが完了する。
これにより、初期同期を確立するための処理を簡単化することができ、通信サービス圏内に復帰するまでの時間を短縮することができる。
【0052】
なお、ベースバンド信号を復調するために用いるローカル発振信号は、3つの復調用キャリアに相当する周波数成分Sα、Sβ、Sγを有する場合に限定されず、さらにより多くの復調用キャリアに相当する周波数成分を含んでいてもよい。
ここで、移動体通信システムが移動通信装置100に初期同期を確立させるために提供するチャネルを通じて伝送される信号は、拡散率の利得が高いため、複数の復調用キャリアで同時にベースバンド信号を復調しても、相関値を検出することができる。
複数の復調用キャリアを用いて復調した信号は、互いに相関のない信号となるため、干渉波と同様に扱うことができる。
【0053】
例えば、復調用キャリアを2つ同時に用いてベースバンド信号を復調すると、復調用キャリアが1つの場合に比べて、3dBだけS/N(Signal/Noise)比が悪化する。また、復調用キャリアを3つ同時に用いると、4.6dBだけS/N比が悪化する。復調用キャリアを4つ同時に用いると、6dBだけS/N比が悪化する。復調用キャリアを5つ同時に用いると、7dBだけS/N比が悪化する。
このように、復調用キャリアの数を2倍にすると、S/N比が約3dBずつ悪化する。
【0054】
ベースバンド信号を復調するために同時に用いる復調用キャリアの数を増大させると、チャネルの中心周波数を絞り込む範囲が広がるため、再び1つの復調用キャリアでベースバンド信号を復調する回数が増大し、多くの時間を費やす可能性がある。また、相関器6により検出される相関値は、S/N比が悪化するに従って低下するので、チャネルの位置を特定することが困難になる。
ベースバンド信号を復調するために同時に用いる復調用キャリアの数を決定する際には、以上の点を考慮して、初期同期を確立するために費やす時間が最短となるように、第2のBPF12の通過帯域等を設定すればよい。
【0055】
また、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を含んだローカル発振信号を用いてベースバンド信号を復調する際には、前述のように、チャネルの位置を特定することが困難になる可能性がある。そこで、この場合には、シンセサイザー2が周波数を切り換えるステップ幅を狭くすることで、より確実にチャネルの位置を特定するようにしてもよい。
【0056】
例えば、復調用キャリアを5つ用いて同時にベースバンド信号を復調する際に、図8に示すように、シンセサイザー2が生成する発振信号の周波数を200kHzステップで切り換えて受信信号の周波数を順次切り換える。この際、相関器6は、ある周波数を中心周波数とするチャネルを通じて伝送された信号の相関値を、シンセサイザー2が発振信号を数回(例えば、5回)切り換えるごとに繰り返し検出することができる。
これにより、受信信号がフェージング等により瞬間的に劣化した場合であっても、チャネルの位置を確実に特定して初期同期を確立することができる。
【0057】
以上説明したように、この発明によれば、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を用いてベースバンド信号を復調し、相関値を検出することで、シンセサイザー2が生成する発振信号の周波数を切り換える回数を低減することができる。
これにより、チャネルを検出して初期同期を確立するための処理を簡単化することができ、通信サービス圏内に素早く復帰することができる。
【0058】
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施の形態では、ローカル発振信号生成回路5が、通信を実行する際に用いる第1のLPF19の他に、第2のLPF20を備えるものとして説明したが、これに限定されない。
すなわち、例えば、図9に示すように、変調用キャリアとなるローカル発振信号を生成するための変調用キャリア生成回路30が生成した信号を利用して、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成してもよい。この場合、第2のBPF20は不要である。
【0059】
この場合、例えば、復調用キャリアが190MHzで、変調用キャリアが380MHzであるとすると、チャネルを検出する際には、例えば変調用キャリア生成回路30により生成される発振信号の周波数を、380.4MHzに調整する。こうして変調用キャリア生成回路30により生成された発振信号を1/2分周器31により周波数変換したのち、結合器32により、ローカル発振信号生成回路5が生成したローカル発振信号と合成することで、2つの復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成することができる。この場合には、上記実施の形態において直交検波器4が備えていた第2のBPF12も不要である。
【0060】
また、図10に示すように、ローカル発振信号生成回路5により生成されたローカル発振信号をAM(Amplitude Modulation)変調器33により振幅変調を施したのち、直交検波器4に供給するようにしてもよい。
この場合、例えば200kHzの方形波を生成する発振器34により生成された発振信号をAM変調器33に供給して、この方形波でローカル発振信号を振幅変調することで、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明のように、この発明によれば、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を用いてベースバンド信号を復調し、相関値を検出することで、受信周波数を規定する発振信号の周波数を切り換える回数を低減することができる。
これにより、チャネルを検出して初期同期を確立するための処理を簡単化することができ、通信サービス圏内に素早く復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る移動通信装置の構成を示す図である。
【図2】第2のBPFの通過帯域特性を例示する図である。
【図3】移動通信装置が受信信号の電力を測定する際の動作を説明するための図である。
【図4】電圧制御発振器が生成するローカル発振信号について説明するための図である。
【図5】直交検波器がベースバンド信号を復調するためのローカル発振信号について説明するための図である。
【図6】相関器が検出する相関値分布を例示する図である。
【図7】相関値を検出する際の動作の一例を説明するための図である。
【図8】復調用キャリアを5つ同時に用いて相関値を検出する際の動作の一例を説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態に係る移動通信装置の変形例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態に係る移動通信装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1、10、11 ミキサ
2 シンセサイザー
3、12 BPF
4 直交検波器
5 ローカル発振信号生成回路
6 相関器
7 相関パターン生成器
13 90度移相器
14 電圧制御発振器
15 基準発振器
16 PLL回路
17、18 スイッチ
19、20 LPF
30 変調用キャリア生成回路
31 1/2分周器
32 結合器
33 AM変調器
34 発振器
100 移動通信装置

Claims (7)

  1. スペクトラム拡散が施された信号を受信し、拡散コードとの相関値を検出して初期同期を確立するための処理を実行することにより通信を可能とする移動通信装置であって、
    受信信号からベースバンド信号を復調する復調手段と、
    前記復調手段がベースバンド信号を復調するためのローカル発振信号を生成するローカル発振信号生成手段と、
    前記復調手段により復調されたベースバンド信号と拡散コードとの相関演算により、相関値を検出する相関検出手段とを備え、
    前記ローカル発振信号生成手段は、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成して前記復調手段に供給する、
    ことを特徴とする移動通信装置。
  2. 前記復調手段は、複数の復調用キャリアに相当する各周波数成分の大きさをほぼ同一とするための通過帯域特性を有し、前記ローカル発振信号生成手段により生成されたローカル発振信号をフィルタリングして、ベースバンド信号の復調に供する帯域通過フィルタを備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の移動通信装置。
  3. 前記ローカル発振信号生成手段は、
    所定の基準周波数を有する参照信号を生成する基準発振器と、
    ローカル発振信号を生成する電圧制御発振器と、
    前記電圧制御発振器により生成されたローカル発振信号と前記基準発振器により生成された参照信号との位相差に対応した大きさを有する電圧信号を生成する電圧信号生成回路と、
    通信を実行する際に、前記電圧信号生成回路により生成された電圧信号をフィルタリングする第1のフィルタと、
    初期同期を確立するための処理を実行する際に、前記電圧信号生成回路により生成された電圧信号をフィルタリングする第2のフィルタと、
    前記電圧信号生成回路により生成された電圧信号を、前記第1のフィルタと前記第2のフィルタのいずれか一方にフィルタリングさせて前記電圧制御発振器に供給するスイッチとを備える、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動通信装置。
  4. 前記第2のフィルタは、前記第1のフィルタのカットオフ周波数より大なるカットオフ周波数を有する低域通過フィルタであり、リファレンスリークが含まれた電圧信号を前記電圧制御発振器に供給可能とする、
    ことを特徴とする請求項3に記載の移動通信装置。
  5. 所定の周波数範囲で発振信号の周波数を切り換えることにより、受信信号の周波数を切り換える受信周波数制御手段を備え、
    前記受信周波数制御手段は、相関値を検出して初期同期を検出するための処理を実行する際に、発振信号の周波数を、チャネルの中心周波数が設定されうる周波数の間隔よりも広いステップ幅で切り換える、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の移動通信装置。
  6. スペクトラム拡散が施された信号を受信し、拡散コードとの相関を検出して初期同期を確立するための処理を実行することにより通信を可能とする受信信号処理方法であって、
    受信信号からベースバンド信号を復調する復調ステップと、
    前記復調ステップにてベースバンド信号を復調するためのローカル発振信号を生成するローカル発振信号生成ステップと、
    前記復調ステップにて復調したベースバンド信号と拡散コードとの相関演算により、相関値を検出する相関検出ステップとを備え、
    前記ローカル発振信号生成ステップは、複数の復調用キャリアに相当する周波数成分を有するローカル発振信号を生成して前記復調ステップにおけるベースバンド信号の復調に供する、
    ことを特徴とする受信信号処理方法。
  7. 前記ローカル発振信号生成ステップにて生成したローカル発振信号をフィルタリングして、複数の復調用キャリアに相当する各周波数成分の大きさをほぼ同一に調整し、前記復調ステップにおけるベースバンド信号の復調に供するフィルタリングステップを備える、
    ことを特徴とする請求項6に記載の受信信号処理方法。
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