JP4251681B2 - 油性インキ用ボールペンチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップ先端を1段のかしめ処理によりかしめ、ボールを回転自在にボール抱持室に抱持した油性インキ用ボールペンチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールペンチップの形成においては、ボールを回転自在にボール抱持室に抱持するためにチップ先端をかしめ処理するが、1段のみのかしめ処理により、または特公平5−64120号公報に開示されているように、チップ先端を第1段目のかしめ処理した後、前記かしめ角度より小さい角度の第2段目のかしめ処理による方法がある。どちらの方法を採用するかは、各ボールペンまたはボールペンチップの製造業者が適宜選択している。当社における油性インキ用ボールペンチップは、フェライト系ステンレス鋼のチップ本体のボール抱持室にボールを回転自在に抱持するために、傾斜角30度に形成したチップ本体の外周面の先端部を2段のかしめ処理により形成しているが、その理由は、そうしたかしめ処理により、良好な筆跡が得られかつインキの垂れ下がりがない好適なボールとチップ本体の内壁面とのクリアランスが確保できるからである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、当然に、2段のかしめ処理は1段のかしめ処理より工程数が多く、ボールペンチップの生産数が多くなればなる程、その数を供給するのに掛かる時間(日数)の差は大きなものとなる。そこで、本発明者達は、当社の油性インキ用ボールペンチップにおいて、チップ先端に1段のかしめ処理を施したものであっても、従来の2段のかしめ処理を施した場合と同等の良好な筆跡が得られ、かつインキの垂れ下がりがないものが得られないかと、日頃より種々検討していた。その結果、チップ先端からのボールの突出量、チップ先端の外径およびかしめ角度を特定することにより、良好な筆跡が得られ、かつインキの垂れ下がりがないのが得られることが判り、本発明に至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼のチップ本体に、ボール径が1.2mm〜2.0mmのボールを回転自在にボール抱持室に抱持したボールペンチップであって、傾斜角30度に形成したチップ本体の外周面の先端部を、チップ先端からのボール突出量がボール径の27%〜29%とし、筆記時におけるチップ先端が紙面と当接する角度であるボールとチップ本体の先端との接線と筆記具の中心線とでなす紙当たり角度が45度より大きい角度とならないように、チップ先端の外径をボール径の94%〜99%とし、かしめ角52度〜54度の1段のかしめ処理で形成してなる油性インキ用ボールペンチップである。
【0006】
本発明においては、チップ本体の材質およびチップ先端の傾斜角を特定しているが、例えば、従来、チップ本体の材質においては、ブラスやフェライト系ステンレス鋼等が用いられており、材質によってかしめ処理によるチップ先端の変形量が異なり、チップ先端に同じかしめ処理を施しても、同一のボールとチップ本体の内壁面とのクリアランスが得られないからである。また、チップ本体の外周面の傾斜角度が相違したものを、同じかしめ処理を施してもチップ先端の変形の仕方は相違し、同様に、同じかしめ処理を施しても同一のクリアランスが得られないからである。
【0007】
ボールとチップ本体の内壁面とのクリアランスは、チップ本体の材質およびチップ先端の傾斜角が特定されているならば、チップ先端からのボールの突出量、チップ先端の外径およびかしめ角度が、お互いに影響をしあってクリアランスが形成されることが、種々検討した結果判った。ボールペンチップには、ボール径が0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.2mm、1.6mm等の各大きさのボールを挿着した油性ボールペンが市販されているが、ボール径が0.5mm、0.7mm、1.0mmのボールを挿着したボールペンチップと、1.2mm、1.6mm等のボールを挿着したボールペンチップとでは、チップから供給されるインキの流出量が大幅に相違するために、両者では適正なクリアランス量は相違している。
【0008】
かしめ処理は、適切な手段により、例えば、ローラー等により行う。かしめ角度は、ボールペンチップをチップホルダー等を介して軸筒に装着して筆記した際に、一般的に筆記時は筆記具を寝かせて筆記することが普通であり、チップ先端が紙面と接触しないようにするため等の理由から、かしめ角度は40〜60度の範囲に設定されているのが一般的である。チップ先端は、かしめることにより延びるので、チップ先端の外径やチップ先端からのボールの突出量を特定することにより、かしめ量を特定し、ボールとチップ本体の内壁面とのクリアランスが適正なものとなるようにするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明すると、先ず、油性インキ用ボールペンチップ1は、フェライト系ステンレス鋼製で外周面2を傾斜角Mを30度に形成したチップ本体3に、インキ通路孔4と該インキ通路孔4から放射状に延びた放射状溝5を有したボール座6を形成してある。チップ本体3のボール抱持室7に、ボール径Dが0.5〜1.0mmの各ボール8を挿入し、前記ボール座6で支承する。次に、ローラーRにより、チップ先端9からのボール8の突出量Hがボール径Dの30%〜32%、チップ先端9の外径Lがボール径Dの100%〜104%となるように、かしめ角Nを44度〜48度の1段のみのかしめ処理を施す。
【0010】
または、同様に形成したチップ本体3のボール抱持室7に、ボール径Dが1.2〜2.0mmの各ボール8を挿入し、前記ボール座6で支承する。次に、ローラーRにより、チップ先端9からのボール8の突出量Hがボール径Dの27%〜29%、チップ先端9の外径Lがボール径Dの94%〜99%となるように、かしめ角Nを52度〜54度の1段のみのかしめ処理を施す。
【0011】
本発明において、ボールペンチップ1におけるチップ先端9からのボール8の突出量Hは、前述したような範囲に限定しているが、従来のその数値は、チップ先端9が紙面(図示せず)と接触しないように、かつ良好な筆跡が得られ、落下による衝撃等によりボール8がチップ先端9から抜け落ちないように、ボール径Dの25〜35%の範囲内にしてあるのが普通であり、本発明における数値もその範囲を超えるものではない。
【0012】
【実施例】
前記した油性インキ用ボールペンチップ1のチップ本体3のボール抱持室7に、ボール径Dが0.5mm、0.7mm、1.0mm、1.2mm、1.6mm、2.0mmのボール8を挿入し、ローラーRによりかしめ、チップ先端9の外周面9aの傾斜角度、チップ先端9からのボールの突出量H(ボール径の割合:H/D)を変化させたボールペンチップを作製し、当社より販売している油性インキボールペン(商品名:スーパーグリップ)のレフィールに挿着して油性インキボールペンとして作製した。この各油性インキボールペンを、下記に記載した要領で試験および評価を行った。
【0013】
試験方法
▲1▼筆跡の状態:走行試験器により、筆記角度70度、荷重200g、筆記速度4m/min の諸条件下で、100mのらせん書きを行い、筆跡状態を目視観察した。
▲2▼インキの垂れ下がり:キャップオフ状態で、ボールペンをボールペンチップを下向きに直立して、温度30℃、湿度95%RHで24時間放置後の、チップ先端からのインキの垂れ下がりの有無を目視で観察した。
【0014】
評価
▲1▼筆跡の状態
当社により市販している油性インキボールペン(商品名:スーパーグリップ)と同等の良好な筆跡が得られたもの・・・○
前記油性インキボールペンより筆跡の状態が若干劣っていると思われるもの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・△
前記油性インキボールペンより筆跡の状態が劣っているもの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・×
▲2▼インキの垂れ下がり
インキの垂れ下がり無し・・・・・・・・・・・・・・・○
少しでもインキの垂れ下がりがあったもの・・・・・・・×
【0015】
試験結果に基づき、良好なものを実施例として表1に、それ以外を比較例として表2に示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
以上の結果より、良好な筆跡が得られ、かつインキの垂れ下がりがない油性インキ用ボールペンチップを得るには、フェライト系ステンレス鋼のチップ本体に、ボール径が0.5〜1.0mmのボールを回転自在にボール抱持室に抱持したボールペンチップにおいて、従来の2段のかしめ処理の場合と同等の良好な筆跡が得られかつ垂れ下がりのない油性インキ用ボールペンチップを得るには、傾斜角30度に形成したチップ本体の外周面の先端部を、チップ先端からのボールの突出量をボール径の30%〜32%、かしめ角44度〜48度のかしめ処理を施すことにより達成できることが判った。
【0019】
また、ボール径が1.2mm〜2.0mmのボールを挿着したボールペンチップにおいては、チップ先端からのボールの突出量がボール径の27%〜29%、チップ先端の外径がボール径の94%〜99%となるように、かしめ角52度〜54度のかしめ処理を施すことにより達成できることが判る。
【0020】
ところで、一般的に筆記時は筆記具を寝かせて筆記することが普通であり、チップ先端が紙面と接触しないようにするため等の理由から、かしめ角度は40〜60度の範囲に設定されているのが一般的であると述べたが、図3で示すように、紙面10等にチップ先端が当接して不快な筆記感を与えないようにと、油性インキ用ボールペンチップ1におけるボール8とチップ先端9との接線と筆記具の中心線とのなす角度、すなわち紙当たり角度Pは従来の経験則から45度以下が良いことが判っている。従来より、ボールペンの書き味を判断する上での重要な一つの構成要件となっている。
【0021】
本実施例のボールペンチップ1においても、前記事象に当てはまるように形成するには、ボールの突出量Hが一定でないのでチップ先端の外径Lを特定してやる必要がある。ボール径が1.2mm〜2.0 mmのボール8を抱持したボールペンチップ1においては、チップ先端の外径Lをボール径Dの99%以下とする必要がある。反面、チップ先端の外径Lが小さすぎると、チップ先端9の肉壁が薄いことになり、落下などの衝撃によりボール8がチップ先端9より飛び出してしまう危険がある。従って、チップ先端の外径Lは、ボール径Dの94%〜99%とするのが好ましい。
【0022】
【発明の効果】
本発明の油性インキ用ボールペンチップは前述した通りなので、チップ先端を1段のかしめ処理を施したものであっても、従来の2段のかしめ処理を施した場合と同等の良好な筆跡が得られ、かつ垂れ下がりのないものが得られた。また、1段のかしめ処理の方が従来の2段のかしめ処理の場合より製造工程が少ないので、単位日数における生産数が大幅に向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における油性インキ用ボールペンチップのかしめ処理前の状態を示す、要部の平面断面図である。
【図2】1段のかしめ処理を施した状態を示す、油性インキ用ボールペンチップの要部の平面断面図である。
【図3】チップ先端の紙当たりを説明するための説明図である。
【符号の説名】
1 油性インキ用ボールぺンチップ
2 外周面
3 チップ本体
7 ボール抱持室
8 ボール
9 チップ先端
D ボール径
H ボールの突出量
L チップ先端の外径
M 傾斜角
N かしめ角
Claims (1)
- フェライト系ステンレス鋼のチップ本体に、ボール径が1.2mm〜2.0mmのボールを回転自在にボール抱持室に抱持したボールペンチップであって、傾斜角30度に形成したチップ本体の外周面の先端部を、チップ先端からのボール突出量がボール径の27%〜29%とし、筆記時におけるチップ先端が紙面と当接する角度であるボールとチップ本体の先端との接線と筆記具の中心線とでなす紙当たり角度が45度より大きい角度とならないように、チップ先端の外径をボール径の94%〜99%とし、かしめ角52度〜54度の1段のかしめ処理で形成してなる油性インキ用ボールペンチップ。
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JPH11227378A JPH11227378A (ja) | 1999-08-24 |
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP2002356084A (ja) * | 2001-05-31 | 2002-12-10 | Pentel Corp | ボールペンまたは塗布具のチップ |
-
1998
- 1998-02-19 JP JP05426198A patent/JP4251681B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11227378A (ja) | 1999-08-24 |
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