本発明は、作業車両のアームレストの構成に関する。詳細には、前後位置を調整可能なシートを備える作業車両において、そのシートに座するオペレータが腕を置くアームレストの構成に関する。
フォークリフト等の作業車両においては、オペレータの体格に応じてシート位置を前後にスライドして調整できる構成が良く知られている。この構成は、例えば体格が大柄で足の長いオペレータが操作するときは、シートを後方に引いて足が窮屈になるのを防止でき、一方、体格が小柄なオペレータの場合はシートを前側に移動させて、作業車両が例えば操作ペダルを備える場合は、その操作ペダルに容易に足が届くようにできる。
また、オペレータの腕を置いて疲労を低減できるようにするために、シートの脇の位置にアームレストが設置されることがある。例えば作業車両が荷役操作のためのジョイスティックや小型レバーを搭載している場合、アームレストを設け、オペレータがアームレストに腕を置きながらジョイスティック等を操作できるように構成すると、腕の位置が安定し、指先でジョイスティック等を細かく操作する場合も的確に行える利点がある。
特許文献1は、建設機械等の作業車両について、オペレータシートをスライドレールによって前後スライド移動可能とするとともに、当該オペレータシートのシートフレームにコンソール調整装置を介してコンソールを支承し、コンソールの上面にアームレストを装着する構成を開示する。この特許文献1では、オペレータシートの前後移動に連動して、コンソール及びアームレストはオペレータシートと一体的に(オペレータシートの前後移動距離と等しい距離だけ)前後移動する。
一方、特許文献2は、建設機械において、肘掛けを作業者が所望する安楽な腕位置に最も良く適合するように調節可能であるようにするための制御機構を、建設機械の機枠に固定取付板を介して固定する構成を開示する。
特開2002−322675号公報(段落番号0011、図1、図2)
特開平9−104272号公報(段落番号0011、0012、図1、図3)
ここで、フォークリフトが稼動する倉庫や工場では、オペレータに1人1台のフォークリフトが固定して割り当てられる場合は少なく、その時その時に空いているフォークリフトを使って作業することが多い。即ち、1台のフォークリフトを複数の者が交代して乗る場合が多い。オペレータの体格は様々であるから、オペレータの交代の都度、新しいオペレータの体格に応じて、シートを前後スライド移動させて調整することになる。
特許文献1のアームレストはシートと一体的に移動する構成であるので、例えば中程度の体格を有するオペレータが乗車した場合を想定し、その場合に最も適切な位置となるようにシートに対するアームレストの位置を設定したとしても、大柄なオペレータの乗車の際にシートを後方に引くと、アームレストが後方に移動し過ぎてしまい、その大柄のオペレータは腕が引けた不適切な姿勢になってしまいやすい。逆に、小柄なオペレータに合うようにシートを前方に移動させる場合は、アームレストも前方に移動し過ぎてしまい、その小柄のオペレータは腕が伸びた不適切な姿勢になってしまう。
特許文献1はそのような場合にアームレストの前後位置を調整可能となるようにコンソール調整装置を設けているが、シートの位置調整に加えて、アームレストの位置調整をオペレータの交代の都度行うのは煩雑である。また、前述のようにアームレストが前方又は後方に移動しすぎた状態からアームレストを位置調整することになるため、最適位置へアームレストを移動させるための調整距離が長くなってしまい、調整に長時間を要し、作業効率を低下させてしまう。また、アームレストが前方又は後方に移動しすぎた位置を基準に前記コンソール調整装置による調整を行うこととなるため、当該調整装置によるアームレストの位置調整可能範囲も無制限ではないことから、場合によっては適切な位置にアームレストを調整するのが不可能となってしまうおそれもある。これに対し、コンソール調整装置によるアームレストの位置調整可能ストロークを大きくすれば良いとの考えもあるが、それではコンソール調整装置の大型化を招いてしまう。
上記特許文献2にはシートがスライド自在である旨の記載はないが、肘掛け(アームレスト)を移動させるための調節機構は建設機械の機枠に固定されている。従って、特許文献2の建設機械に前後スライド自在のシートを適用した場合でも、シートの前後移動に連動して肘掛けが移動することはないと考えられる。従って、例えば大柄なオペレータに合うようにシートを後方に引く場合は、アームレストは全く動かないので相対的に前方に位置し過ぎてしまい、その大柄のオペレータは腕が伸びた不適切な姿勢になってしまいやすい。一方、小柄なオペレータに合うようにシートを前方に移動させる場合は、アームレストは相対的に後方に位置し過ぎてしまい、逆に腕が引けた不適切な姿勢になってしまう。
特許文献2はそのような場合に肘掛けの前後位置を調整可能となるように調節機構を設けているが、特許文献1と同様に、肘掛けの位置調整をオペレータの交代の都度行うのは煩雑である。また、前述のようにアームレストが前方寄り又は後方寄りに位置しすぎた状態からアームレストを位置調整しようとするので、アームレストの調整距離が長くなって調整時間が長くなったり、調節機構の調節可能範囲の観点から調整が不可能な場合が出てきてしまう。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
◆本発明の第1の観点によれば、前後位置を調整可能なシートを備える作業車両のアームレストであって、当該アームレストは、前記シートの前後移動に連動して前後移動するように構成し、前記シートをxの距離だけ前後に移動させたときの前記アームレストの前後移動距離をyとすると、0<y<xである、アームレストが提供される。
この構成では、オペレータの誰かがシートの前後位置を自分の体格に合わせて調整したときに腕が最もしっくりくる位置にアームレストの前後位置を一度設定(あるいは調整)してしまえば、そのオペレータと異なる体格を有するオペレータが当該フォークリフトに乗る場合でも、その者の体格に合わせてシートの前後位置を調整するだけで、アームレストもほぼ適当な位置に移動させ得る。従って、オペレータの体格に応じて前述の特許文献1、2にいうようなアームレストの特別な調整をしなくても、腕をアームレストに置いたときの姿勢が不自然になりにくい。
◆前記のアームレストにおいては、前記シートをxの距離だけ前後に移動させたときの前記アームレストの前後移動距離をyとすると、0.4×x≦y≦0.7×xであることが好ましい。
これにより、オペレータの体格が大柄な場合も小柄な場合も、アームレストを、腕を当該アームレストに置いたときの姿勢をより楽なものとできる位置に、シートを前後移動させるだけで位置させることができる。
◆前記のアームレストにおいては、当該アームレストは、前記シートの前後移動に連動して、前後に移動するとともに左右方向にも移動することが好ましい。
これにより、アームレストを、シートのスライド方向と垂直な方向からみても、オペレータの腕がより楽となる位置に位置させることができる。従って、より一層の操作性の向上を実現できる。
◆前記のアームレストにおいては、当該アームレストは前記シートに対する前後位置を調整可能に構成されていることが好ましい。
これにより、例えばオペレータの個人的な好みや、腕の長短などの個体差等に応じて、アームレストの前後位置を調整することもできることになる。なお、オペレータは通常はシートの前後位置を調整してからアームレストの前後位置を調整することとなるが、本構成によれば、シートの前後位置の調整を完了した時点で、アームレストは前方過ぎでもなく後方過ぎでもない中間的な位置に移動している。従って、アームレストの前後位置の調整をする場合であっても、その調整のための必要量を小さくできる。
◆前記のアームレストにおいては、当該アームレストは機械的な機構により前記シートに連動して前後移動するように構成されていることが好ましい。
これにより、電気的な制御で連動させる構成に比較して簡素な構成とでき、製造コストを低減できるとともに故障の頻度も少なくなる。
◆前記のアームレストにおいては、前記機械的な機構は平行リンク機構であることが好ましい。
これにより、簡素な機構によってアームレストとシートとを連動させる構成とできるので、部品点数を低減でき、製造コストを低減できる。
◆前記のアームレストにおいては、以下のように構成することが好ましい。前記平行リンク機構は、一側を前記シート側に枢結され他側をスライド自在に支持された前リンク及び後リンクを含み、これら前リンク及び後リンクに前記アームレストを取り付けている。前記前リンク及び後リンクは、前記シートを前側に移動させたときに、当該シートへの枢結側が前側となるように傾動する。
これにより、例えば小柄なオペレータがシートを前側に移動させたときは、前リンク及び後リンクが、シートに近い側が前側となるように傾動する。従って、これらのリンクに取り付けられるアームレストも前側に連動して移動させ得るとともに、その移動量yとシートの移動量xとの間で前述の0<y<xの関係を実現することができる(なお、シートを後側に移動させる場合も同様に連動させることができる)。更に、前リンク及び後リンクは一側をシート側に枢結されるとともに他側をスライド自在に支持されているから、シートを前側に移動させて前リンク及び後リンクが傾動したときには、その傾動分だけ、両リンクの中途部や前記他側はシートに近づくように引き寄せられる形となる。従って、シートを前側に移動させたときに、アームレストを前側に移動させるとともにシートに近い側へ移動させることができる。即ち、アームレストを、シートの前後スライドに連動させて、シートのスライド方向と垂直な方向(左右方向)からみても、オペレータの腕が一層楽となる位置に移動させることができる。
◆前記のアームレストにおいては、前記前リンク及び後リンクの前記他側は長孔を介してスライド自在に支持されていることが好ましい。
これにより、前リンク及び後リンクの前記他側をスライド自在とする簡素な構成が達成される。
図1には、本発明の一実施形態に係るアームレストが示される。図1は作業車両(具体的には、荷役作業に用いられるフォークリフト)の運転座席の車両右手側部分を示す要部背面断面図であり、図2は同じく要部平面図である。
図1において、フォークリフトの機台は、その上部側を覆う鉄板製のフード1を有している。このフード1の上面には下レール2を、車両前後方向(図1における紙面直交方向)に長手方向を向けて配置している。この下レール2は、ボルト3によってフード1に固定される。下レール2には上レール4が嵌合されて取り付けられる。上レール4も前記下レール2と同様に車両前後方向に長手方向を有しており、下レール2に対して前後方向にスライド移動自在とされている。この上レール4の上側にはシート5が設けられている。
この構成で、上レール4が下レール2に沿って前後に摺動することで、上レール4の上側のシート5の位置を前後方向に調整することができる。なお、オペレータの体格や好み等に応じてシート5の位置を調整した後、その位置でシート5を固定できるように、図示しないロック機構が設けられている。
図1及び図2に示すように、前記上レール4の右側側部からは、ブラケット7が前後に1つずつ、それぞれシート5から離れる方向に突出するように配設されている。このブラケット7・7には、前リンク11と後リンク12の一側の端部が、それぞれピン8を介して枢結される。前リンク11と後リンク12はいずれも車両の略左右方向に細長い形状に構成されるとともに、互いに平行に配置される。両リンク11・12において、前記ブラケット7に枢結される側と長手方向反対側(他側)の端部には、長孔9を設けている。前記フード1にはピン13が固定され、このピン13が前記長孔9内を挿通している。この結果、リンク11・12の前記他側は、フード1に対し回動可能かつリンクの長手方向にスライド可能に支持される。なお、図2においては、シート5は鎖線で透視的に図示されている。
図2に示すように、前リンク11及び後リンク12のそれぞれ中途部には、ピン14を介してアームレストブラケット15の前部及び後部が枢結される。図1に示すように、アームレストブラケット15は板状に構成されるとともに右側部が上方へ折り曲げられ、その上端にはアームレスト16が固定される。アームレスト16の上面には、オペレータの腕をおくことが可能な平坦な肘掛け面を形成している。上レール4、前リンク11、後リンク12、アームレストブラケット15の4者は、平行リンク機構を構成している。
この構成において、図2にはシート5を最も後側に引いた状態が示されており、この図2のシート5の位置では、大柄な体格のオペレータが乗車した場合に、足が窮屈にならない適切な姿勢をとることができる。この図2の状態では、アームレスト16も、最も後側に位置している。このときのアームレスト16は、シート5を最も後側に引いた状態で乗るオペレータ(即ち、大柄なオペレータ)にとって、その位置に右腕を置くことが一般的(平均的)にみて最も楽な姿勢であろうと推測される位置に、その前後及び左右位置が予め設定されている。
そして、上記の図2の状態からシート5を前側にスライドさせた様子が図3に示される。この図3に示すように、図2の位置からシート5を前側にスライドすると、上レール4に固定されるブラケット7・7が前リンク11及び後リンク12の左端(シート5に近い側の端部)を前方に引っ張る。従って、二本のリンク11・12は、右端(シート5から遠い側の端部)の長孔9をピン13に対し滑らせスライドさせながら、ピン8を中心として、シート5に近い側が前側となるように傾く。こうして、両リンク11・12の中途部にアームレストブラケット15を介して連結される(取り付けられる)アームレスト16は、シート5の前方へのスライド移動に連動して、前方へ移動する。なお、シート5を後方にスライドさせる場合は、上記と全く逆に、アームレスト16は前記シート5に連動して後方に移動する。
ここで、図2の状態から図3の状態までシート5を前方に移動させた距離をx(図3)とすると、図2の状態から図3の状態までアームレスト16が前方へ移動した距離(即ち、シート5に連動してアームレスト16が移動した前後距離)yとの関係について、0<y<xの式が成立する。即ち、アームレスト16を支持しているアームレストブラケット15はリンク11・12の途中部に連結されているため、シート5を前方へ移動すれば、リンク11・12の傾きに伴って若干前方に移動する(0<y)。しかし、アームレストブラケット15は上レール4(ブラケット7)やシート5に直接取り付けられている訳ではないので、アームレスト16の前方移動距離yは、シート5を動かした距離xよりも小さくなる(y<x)。
このようにすれば、オペレータの体格が大柄な場合も、小柄な場合も、シート5の前後位置を調整するだけでアームレスト16の位置も適当な位置に移動させ得る。従って、適当な者(体格は大柄でも小柄でも良い)を想定し、その者がシート5の前後位置を自分の体格に合わせてセットしたときに一般的にみて右腕が最もしっくりくるだろうと予測できる位置にアームレスト16の前後位置を一度調整してしまえば、その者と異なる体格を有するオペレータが当該フォークリフトに乗る場合でも、新しく乗車するオペレータの体格に合わせてシート5の前後位置を調整することで、アームレスト16も、そのオペレータにとってほぼ適当であろう位置に移動することになる。従って、オペレータの体格に関わらず、右腕をアームレスト16に置いたときの姿勢が不自然になりにくい。
本実施形態では、シート5を最も後方に引いた状態で乗る大柄なオペレータを想定し、シート5を最も引いた状態(図2)で、その想定されたオペレータにとって腕が楽であろう位置にアームレスト16の前後位置及び左右位置を設定している。小柄なオペレータはシート5を例えば図3に示す距離xだけ前側に移動させて乗ることになるが、その際にアームレスト16が移動する位置は距離yであり、シート5の移動距離xよりは小さい(y<x)。従って、アームレスト16が前方に移動し過ぎてしまうことがないから、その小柄のオペレータが右腕が伸びた不適切な姿勢になる可能性は少なくなる。更に、アームレスト16はフード1側に固定されて全く動かない訳でもないので(0<y)、アームレスト16がシート5に対して後方に位置し過ぎることも回避され、その小柄のオペレータが右腕の縮こまった不適切な姿勢になる可能性も少なくなる。
なお、上記xとyの具体的な関係、即ちシート5の前後移動距離に対してアームレスト16をどの程度の距離移動させるかについては、アームレストブラケット15のリンク11・12に対する取付位置(換言すれば、前記平行リンク機構のリンク比)を調整することによって変更することができる。xとyの関係は、0<y<xの関係を満たす限り任意に定めて良い。しかしながら、発明者が実験・研究を鋭意進めた結果、0.4×x≦y≦0.7×xの関係を満たすと良く、更に望ましくはyがxのほぼ半分であると、種々の体格のオペレータでも、その体格に応じてシート5を調整しさえすれば、右腕をアームレスト16に置いたときの姿勢を安定して適切なものとできる場合が多い(アームレスト16の前後位置の特別な調整が必要ない場合が多い)ことが判った。従って、xとyは0.4×x≦y≦0.7×xの式を満たすことが望ましく、更に望ましくは、y≒0.5×xであるのが良い。
また、上述のとおり本実施形態のアームレスト16はシート5の前方移動に連動して前方に移動するのであるが、それと同時に、リンク11・12が前記ピン8(シート5に対し枢結されている側)を中心に回動して傾く分だけ、リンク11・12の中途部や長孔9側の端部は、やや内方側(シート5に近づく側)にも引き寄せられるように移動する(図3参照)。即ち、シート5の前後移動に連動して、アームレスト16が前後に移動するとともに左右方向にも移動する構成である。従って、車両前後方向のみならず左右方向においても、右腕をより自然な姿勢に置くことができる。具体的には、肩幅の狭い小柄なオペレータが乗ったときにはシート5を前方に移動させる際にアームレスト16がシート5側に近づくので、オペレータが右脇を外に開き過ぎる姿勢になることがない。また、肩幅の広い大柄なオペレータが乗ったときにはシート5を後方に引く際にアームレスト16がシート5側から離れるので、オペレータが右脇を閉め過ぎる窮屈な姿勢になることがない。
なお、前記アームレスト16は、前記シート5に対する前後位置を調整することが可能に構成されていることが好ましい。詳細は図示しないが、具体例としては、上レール4に対するブラケット7・7の位置を前後調節可能に構成すれば良く、例えば上レール4に溝を形成し、ブラケット7・7をこの溝に沿って前後移動可能とするとともに、溝内の任意の位置で上レール4に対しボルト等の締結手段で固定できるようにすれば良い。この構成で、シート5の前後位置は丁度良いがアームレスト16の位置を微妙に調整したいとオペレータが考えた場合、そのオペレータは、前記のロック機構をロックしてシート5の前後移動を阻止した状態で、前記ボルトを緩めてブラケット7・7の上レール4に対する移動を許容し、オペレータの右腕がしっくりくる最適位置にアームレスト16を前後移動させて、再びボルトを締めれば良い。このような調整機構を有することで、例えばオペレータの個人的な好みに応じてアームレスト16の位置を調整可能であるから、右腕が楽な自然な姿勢とでき、オペレータの疲労を軽減できる。
なお、各人の好みによってアームレスト16の前後位置を特別に調整できる構成は前記特許文献1、2にも示されているが、本実施形態のように前述の0<y<xの移動量の関係を満たすようにアームレスト16とシート5とが連動する構成においてアームレスト16の前後位置を調整する機構を設けることとすると、以下のような利点がある。即ち、普通はオペレータは、シート5の前後位置を先ず自分の体格に合わせて調整し、シート5の位置が決まったら前記ロック機構によりシート5の前後移動を阻止した上で、その後に必要があればアームレスト16の位置を調整することになる。本実施形態では、シート5の前後位置の調整が完了した時点で、アームレスト16もその体格の者にとって前方過ぎでもなく後方過ぎでもない中間的な位置に自動的に移動させることができる。従って、アームレスト16の特別な位置調整は殆ど不要とでき、あるいは調整が必要になるにしても、その者にとって最適なアームレスト位置へ移動させるのに必要な距離は、(余程そのオペレータが極端な好みを有していない限り)短くできる。また、アームレスト16は、上記の中間的な位置を中心に前記調整機構によって調整することとなるので、調整可能ストロークが狭い簡素でコンパクトなものを調整機構として採用した場合でも、オペレータにとっての最適位置がそのストロークを外れてしまって調整できない場合を少なくできる。
なお、上レール4に対するブラケット7の位置を調整することに代えて、フード1に対するピン13・13の前後位置を移動可能に構成することでも、アームレスト16のシート5に対する前後位置を調整可能とすることができる。
上記実施形態は、アームレスト16とシート5とを平行リンク機構によって連結した構成とし、これにより構成の簡素化が実現されているが、アームレスト16とシート5とを機械的に連動させる他の構成としては、例えば図4に示すものが考えられる。即ち、前記アームレストブラケット15は第2上レール17に固定するものとし、この第2上レール17は前記上レール4と同様に、図示しない下レールに対しスライド自在に取り付けられるものとする。そして、シート5側(前記上レール4の右側側面)にラック18を設け、フード1上に回転自在に軸支した歯車20を上記ラック18に噛合させる。更に、2段状の減速歯車21をフード1上に回転自在に軸支し、この減速歯車21の大径ギアを前記歯車20に噛合させるとともに、小径ギアは、アームレスト16側(第2上レール17の左側面)に設けたラック19に噛合させる。この構成によると、減速歯車21の減速作用によって、前述の0<y<xの関係となるようにアームレスト16の前後移動とシート5の前後移動とを連動できる。また、減速歯車21の減速比を適宜設定すれば、例えば0.4x≦y≦0.7xとなるように両者16・5の移動量の関係を定めることも容易である。
図4の構成では、第2上レール17は前記上レール4と平行に設置されており、従って、シート5の前後移動に連動してアームレスト16は前後に移動するのみである。ただし、例えば第2上レール17のスライド方向をやや傾けて設置すれば、小柄なオペレータが乗車してシート5を前側に移動させる際に、それに連動して、アームレスト16を前方に移動させるとともにシート5に近づく方向にも移動させることが可能である。
また、アームレスト16とシート5とを機械的に連動させる構成に限らず、電気的な制御によって連動させる構成も考えられる。詳細は図示しないが、シート5の前後移動量を例えばリニアゲージで検出し、検出された前後移動量xに基づいてアームレストを移動すべき量yを算出し(例えばy=0.5×xの式によりyを算出する)、算出された移動量yだけアームレスト16の移動用モータを駆動することが考えられる。この構成は、アームレスト16の移動用モータを、シート5に連動させてアームレスト16を移動させる用途のほか、前述のようなアームレスト16の特別な位置調整のために兼ねさせることで、構成を簡素とできる。また、アームレスト16とシート5とを機械的に連結しないので、アームレスト16の特別な位置調整が行い易く、また、その位置調整可能なストローク範囲を容易に大きくできるという利点がある。
以上に本発明の実施形態および各種の変形例を示したが、例えば以下のように変更することもできる。
(1)図2や図4において、アームレスト16のシート5に対する前後位置を調整することが可能な構成(アームレスト16の特別な位置調整のための機構)としては、例えば次のようなものも考えられる。即ち、前記アームレストブラケット15にアームレスト16を単に固定することに代えて、アームレストブラケット15に前後方向の長孔を形成し、その長孔を介して、アームレスト16をボルト等で締結固定するようにする。
(2)平行リンク機構の2本のリンク11・12は、図2に示すように、シート5を一番後方に引いたときに車両左右方向に(即ち、シート5のスライド方向に対し垂直に)向いている必要は必ずしもない。例えば、シート5を一番後方に引いたときでも、リンク11・12が、シート5に近い側が前側となるように傾いていても差し支えない。この場合は、シート5を前側に移動させたときは、リンク11・12はその傾きを更に増大させることとなる。
(3)また、シート5を一番後方に引いたときに、リンク11・12が、シート5に近い側が後側となるように傾いていても良い。この場合でも、前述の0<y<xの関係を満たす構成とすることはできる。ただしこの場合、少なくともシート5を最も後方に引いた状態の近傍の領域では、シート5を前方に移動させると、アームレスト16がシート5から離れる方向(好ましい方向とは逆の方向)に移動してしまう。従って、シート5を一番後方に引いたときのリンク11・12の姿勢としては、車両左右方向に(即ち、シート5のスライド方向に対し垂直に)向いているか、シート5に近い側が前側となるように傾いているのが好ましい。
(4)図1〜図4は右腕用のアームレストの構成を示しているが、本発明を左腕用のアームレストにも適用できるのはいうまでもない。その場合は、図1〜図4の構成の左右を全く逆にすれば良い。
(5)2本のリンク11・12は一端をピン8でシート側に枢結され、他端を長孔9及びピン13を介してスライド自在に支持されているが、当該他端側の支持構成は長孔9によるものでなくても良い。要は、リンク11・12の前記他端側は、フード1に対して回転自在かつ当該リンクの長手方向に移動自在となるように支持されていれば良い。
(6)本発明はフォークリフトのアームレストのみならず、荷役以外の用途に用いる作業車両(例えば、建設機械、農業機械)に適用することも可能である。
本発明の一実施形態に係るアームレストの構成をシートとともに示す要部背面断面図。
シートを最も後側に引いた場合のシートとアームレストを示す要部平面図。
図2の状態からシートを前側に移動させた様子を示す要部平面図。
シートとアームレストとを機械的に連動させる他の例を示す要部平面図。
符号の説明
5 シート
9 長孔
11 前リンク(平行リンク機構(機械的な機構)の一部)
12 後リンク(平行リンク機構(機械的な機構)の一部)
16 アームレスト
x シートの前後移動量
y アームレストの前後移動量