JP4250723B2 - シリンダヘッドの冷却水通路構造及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の気筒が直列に配置される車載用エンジンに用いられるシリンダヘッドの冷却水通路構造及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば実開平7−35741号公報に開示されているように、シリンダヘッドに設けられる冷却水通路を、吸気側通路と排気側通路とに分離して形成したものが知られている。
このように、冷却水通路を吸気側通路と排気側通路に分離し、冷却水を並行に流す構成としたときは、冷却水通路が連続して設けられている直列通路の場合に比べて、通路毎の距離が短縮されることから、圧損が低減されることになり、使用する冷却水ポンプを小型化できるという有利さがある。このような構造の冷却水通路を有するシリンダヘッドは、例えば特開平9−203346号公報や実開平7−35741号公報に記載されている。
【0003】
ところで、シリンダヘッドに形成される冷却水通路は、特にポート周辺を冷却するように設定される。図15は一般的なポート周辺の冷却水通路構造を示す断面図である。図示のように、多くの場合、シリンダヘッド50の冷却水通路は、吸気ポート51周りを通る吸気側通路53、排気ポート52周りを通る排気側通路54、そして吸気ポート51と排気ポート52との中間部(燃焼室の中央上方)を通る中央通路55との3つの通路を有する。
ポート間を通る中央通路55は、一般には図15に示す如く、略逆三角形状に形成されており、そして、吸気側通路53と排気側通路54とに分離して冷却水を並行に流す通路構造を採用した場合、吸気側通路53又は排気側通路54のいずれか一方に従属(連通)される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリンダヘッド50を冷却する場合において、吸気ポート51と排気ポート52が最も接近するポート間の下端部付近56は、熱的影響を受ける上に壁厚が薄いことから、熱疲労亀裂を生じ易い箇所であり、従って、最も冷却が必要な箇所である。
ところが、上記のような冷却水通路構造の場合、中央通路55の断面形状を略逆三角形に設定してあるため、冷却水流れとしては、流量によらず上側Uと下側Lでは流れる量に不均衡が生ずる。すなわち、上側Uが流れ易い反面、下側Lが流れ難い。このため、最も冷却が必要とされる吸気ポート51と排気ポート52間の下端部付近56を通る通路の冷却水流れが淀み、又は遅く、十分な冷却効率が得難いという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の気筒が直列に配置される車載用エンジンにおいて、特に吸気ポートと排気ポートとの間の壁部に関する冷却効率を高める上で有効なシリンダヘッドの冷却水通路構造及び製造方法を提供することにある。
【0006】
上記課題を達成するため、本発明は特許請求の範囲に記載の通りの構成を備えた。従って、請求項1及び2に記載の発明によれば、吸気ポートと排気ポートとの間を通る中央通路を上下2段に分けて形成したので、上側の中央通路と下側の中央通路とに関して流量によらず流れる量に不均衡が生じ難い。このため、上下の中央通路に前述した従来の1つの通路によって構成されている中央通路と同じ量の冷却水を流すとすれば、下側の中央通路を流れる冷却水の流量を、従来の中央通路の下部側を流れる量に比べて増やすことが可能になる。その結果、シリンダヘッドにおけるポート間下端部の冷却効率を高めることができる。
また、中央通路を上下2段に分けたことにより、その仕切壁がシリンダヘッドの剛性向上に役立つ。
【0007】
また、請求項1に記載した発明のように、一方の中央通路を吸気側通路に、他方の中央通路を排気側通路に連通する構成としたときは、シリンダヘッドを鋳造によって製造する場合において、冷却水通路を形成するために用いられる中子が2本で済むことになり、その取り扱いが容易になる。
【0008】
また、請求項2に記載した発明によれば、ポート間下端部の冷却効率を高めることが可能な冷却水通路を備えたシリンダヘッドの製造方法を提供することができる。そして、この製造方法によれば、吸気側通路形成用中子と排気側通路形成用中子との対向面間、すなわち、吸気側通路と排気側通路との間に階段状の壁を設定できる。この階段状の壁は、換言すれば、吸気ポートと排気ポートとの間に、所定間隔を持って離間した縦リブを2本配置した構造ということができ、このリブ構造によって冷却水通路断面積を特に縮小することなくシリンダヘッドの縦方向の剛性を向上することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は複数の気筒が直列に配列され、かつ1つの気筒に吸気弁と排気弁がそれぞれ2個ずつ備えられたシリンダ直列配置のディーゼル4弁DI(直接噴射)エンジンを適用対象としたものであり、図1に示す模式図に基づいて本実施の形態に係る冷却水通路構造の概略を説明する。ただし、模式図は1つの気筒(燃焼室)に関して示してある。
【0010】
シリンダヘッド1に形成される冷却水通路は、吸気ポート5に沿って長手方向に延びる吸気側通路2と、排気ポート6に沿って長手方向に延びる排気側通路3と、吸気ポート5と排気ポート6との間、すなわち、気筒7(以下、燃焼室ともいう)の中央上方を通る中央通路4とから構成されている。そして、中央通路4は上下2つの通路に分けられ、一方(下側)の中央通路4bが吸気側通路2に連通され、他方(上側)の中央通路4aが排気側通路3に連通されている。
かくして、シリンダヘッド1の冷却水通路は、下側の中央通路4bを有する吸気側通路2と、上側の中央通路4aを有する排気側通路3との並行する2つの独立した通路に分離されている。また、吸気側通路2と排気側通路3に流す冷却水量がそれぞれ適量に分配されるように、それぞれの通路入口面積が設定されている。
【0011】
なお、図示省略のウォーターポンプから送られる冷却水は、シリンダブロックの冷却水通路を経てシリンダヘッド1の吸気側通路2と排気側通路3とへ分流され、吸気側通路2と排気側通路3から流出後は合流してラジエータへ送られる。上記のように構成することによって、ある箇所の断面積を小さくしても、そのことに伴う圧力損失の増加分は、吸気側通路と排気側通路が連続している直列通路のときに比べて大きくならず、冷却水給送用として小型のウォーターポンプを使用することが可能となる。
【0012】
ところで、シリンダ直列配置のディーゼル4弁DIエンジンでは、図3に示すすように、吸気バルブ11と排気バルブ12を配置したとき、両バルブ11,12によって挟まれるバルブ挾間部13の壁厚は、厚肉に設定することが難しい。そして、バルブ挾間部13は最も熱的影響を受ける箇所でもあることから、このバルブ挾間部13で熱疲労亀裂が生じ易い。従って、このバルブ挾間部13は冷却水によって強く冷却することが望ましい。
【0013】
そこで、本実施の形態では、このような要求に応えるべく、上記のように、シリンダヘッド1の冷却水通路を、中央通路4aを有する吸気側通路2と、中央通路4bを有する排気側通路3との並行する2つの独立した通路に分離し、かつ中央通路4を上下に分けて形成したものである。
以下、上記の冷却水通路の具体的構造を図2〜図7に基づいて説明する。図2はシリンダヘッドを上面側から見た平面図、図3は同じくシリンダヘッドを下面側から見た平面図である。図4〜図6は冷却水通路を示す断面図であり、図4は図1及び図2のA−A線断面図、図5は図1及び図2のB−B線断面図、図6は図1及び図2のC−C線断面図である。図7はシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【0014】
冷却水はシリンダブロック(図示省略)側の通路から図7に示したガスケット8の流通孔21,22を経てシリンダヘッド1の吸気側通路2と排気側通路3に並行して流入される。吸気側と排気側の流通孔21,22は、冷却水が吸気側通路2と排気側通路3に適量に分配されるように設定される。
【0015】
吸気ポート5の外側を通って長手方向に吸気側通路2と、吸気側(下側)の中央通路4bとは、1つの気筒7に関して、吸気ポート5に対応する部位及び隣接する吸気ポート5相互間では、図4及び図5に示す如く分離されているが、隣接する気筒7の吸気ポート5との間では、図6に示す如く合流されている。
【0016】
一方、排気ポート6の外側を通って延びる排気側通路3は、1つの気筒7に関して、排気ポート6に対応する部位及び隣接する排気ポート6相互間では、図4及び図5に示す如く排気ポート6を挟んで上下2つの通路に分けられている。また、排気側(上側)の中央通路4aは、排気ポート6に対応する部位では、図4に示す如く排気ポート6と吸気ポート5との間に設定され、隣接する排気ポート6相互間では、図6に示す如く排気側通路3の上側通路に合流されている。
また、排気側通路3及び中央通路4aは、隣接する気筒7の排気ポート6との間では、図6に示す如く合流(1つの通路)されている。
【0017】
そして、吸気側の中央通路4bと排気側の中央通路4aとは、図4に示すように、相互に上下に重なり合うように設定され、このことにより、吸気側の中央通路4bと排気側の中央通路4aとを区画する仕切壁9が、結果として吸気ポート5側と排気ポート6側の壁を繋いでいる。また、吸気側の中央通路4bと排気側の中央通路4aとは、その断面積が略等しく設定されている。
【0018】
このように、本実施の形態においては、吸気ポート5と排気ポート6との間に設定される中央通路4を、上下に分けたことによって、上側の中央通路4aと下側の中央通路4bとについて冷却水の流量に不均衡が生じ難い。
このため、上下の中央通路4a,4bに前述した従来の1つの通路によって構成されている中央通路55と同量の冷却水を流すとすれば、下側の中央通路4bを流れる冷却水の量を、従来の中央通路55の下部側を流れる量に比べて増やすことが可能になる。このようなことから、シリンダヘッド1におけるポート間下端部、すなわち、図3に示す吸気バルブ11と排気バルブ12によって挟まれるバルブ挾間部13の冷却効率を高めることが可能となり、バルブ挾間部13の熱疲労破壊を防止する上で有効となる。
【0019】
この場合において、中央通路4a,4bを流れる冷却水の流量を多くしたいときは、ポート外側を流れる吸気側通路2及び排気側通路3の断面積をそれぞれ中央通路4a,4bの断面積よりも小さく設定することで可能となる。このような設定としたときは圧力損失が増加することになるが、その増加分は、本実施の形態のように冷却水通路を吸気側通路2と排気側通路3とに分けて形成し、冷却水を並行して流す構成とすれば、吸気側と排気側の通路が連続している直列の通路構造に比べてそれほど大きくならずに済む。
【0020】
また、本実施の形態では、中央通路4を上下に分けることによって、上下の両通路4a,4b間の板状の仕切壁9でポート壁が連結される結果、ポート間の剛性を高めることが可能となる。
【0021】
上記のように構成される冷却水通路構造を備えたシリンダヘッド1は、所定形状に形成された鋳型内に中子をセット後、該鋳型に溶湯を注入することによって製作される。すなわち、シリンダヘッド1は鋳造によって製造されるが、その製造に際して冷却水通路は、図8〜図14に示すような中子を用いて製作される。
【0022】
図8は吸気側通路形成用中子を示す斜視図、図9は排気側通路形成用中子を示す斜視図、図10は吸気側通路形成用中子と排気側通路形成用中子を組み合わせた状態の斜視図、図11は同じく概略正面図である。また、図12は図3の断面図に相当する部位から切断した状態の斜視図、図13は図4の断面図に相当する部位から切断した状態を示す斜視図、図14は図5の断面図に相当する部位から切断した状態を示す斜視図である。
【0023】
図8に示すように、吸気側通路形成用中子31は吸気側通路形成部31a及び中央通路形成部31bを備えており、断面略L字形に形成されている。一方、図9に示すように、排気側通路形成用中子32は排気側通路形成部32a及び中央通路形成部32bを備えており、断面略L字形に形成されている。
そして、上記のように形成される両中子31,32は、図10及び図14に示す如く、相互の中央通路形成部31b、32bが所定間隔を置いて上下方向に重なり合うように配置された状態で鋳型内にセットされる。
【0024】
従って、上記のように配置された吸気側通路形成用中子31と排気側通路形成用中子32との対向面間には、略N型の対向隙間Sが形成される。従って、鋳造後のシリンダヘッド1には、吸気側通路2と排気側通路3との間に階段状の壁が設定されることになる。この階段状の壁は、換言すれば、吸気ポート5と排気ポート6との間に、所定間隔を持って離間した縦リブを2本配置した構造ということができる。従って、このようなリブ構造によって冷却水の通路断面積を特に縮小することなくシリンダヘッド1の縦方向の剛性を向上することが可能となる。
【0025】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、中央通路4a,4bを、吸気側通路2及び排気側通路3から完全に独立した形態に設定してもよい。すなわち、冷却水通路を、吸気側通路2と排気側通路3と上下の中央通路4a,4bとの並行する4分割構造としてもよい。このような構成を採用したときは、冷却水が各通路に適量に分配されるように断面積を設定する場合の選択肢を広げることができる。
また、吸気側通路2及び排気側通路3への冷却水の流入は、ガスケット8に設けた流通孔21,22を通す代わりに、パイプ等を用いてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、複数の気筒が直列に配置される車載用エンジンにおいて、特に吸気ポートと排気ポートとの間の壁部に関する冷却を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る冷却水通路構造の概略を説明する模式図である。
【図2】シリンダヘッドを上面側から見た平面図である。
【図3】シリンダヘッドを下面側から見た平面図である。
【図4】図1及び図2のA−A線断面図である。
【図5】図1及び図2のB−B線断面図である。
【図6】図1及び図2のC−C線断面図である。
【図7】シリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図8】吸気側通路形成用中子を示す斜視図である。
【図9】排気側通路形成用中子を示す斜視図である。
【図10】吸気側通路形成用中子と排気側通路形成用中子を組み合わせた状態の斜視図である。
【図11】同じく概略正面図である。
【図12】図3の断面図に相当する部位から切断した状態の斜視図である。
【図13】図4の断面図に相当する部位から切断した状態を示す斜視図である。
【図14】図5の断面図に相当する部位から切断した状態を示す斜視図である。
【図15】従来の一般的なポート周辺の冷却水通路構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド
2…吸気側通路
3…排気側通路
4…中央通路
4a…排気側の中央通路
4b…吸気側の中央通路
5…吸気ポート
6…排気ポート
Claims (2)
- 複数の気筒が直列に配列されているエンジンのためのシリンダヘッドの冷却水通路構造であって、
吸気ポート周辺を通って長手方向に延びる吸気側通路と、排気ポート周辺を通って長手方向に延びる排気側通路と、前記吸気ポートと前記排気ポートとの間を通る中央通路とを備え、中央通路が上下2段に分けて形成され、
前記上下の中央通路のうちの一方の中央通路が前記吸気側通路に連通され、他方の中央通路が前記排気側通路に連通されていることを特徴とするシリンダヘッドの冷却水通路構造。 - 複数の気筒が直列に配列されているエンジンのシリンダヘッドを所定形状の鋳型を用いて鋳造する際に、吸気ポート周辺を通って長手方向に延び、かつ吸気ポートと排気ポートとの間を通る中央通路を持つ吸気側通路を形成するための断面略L形に形成された吸気側通路形成用中子と、排気ポート周辺を通って長手方向に延び、かつ前記吸気ポートと前記排気ポートとの間を通る中央通路を持つ排気側通路を形成するための断面略L形に形成された排気側通路形成用中子とを、相互の中央通路が上下方向に重なり合うように配置後、前記鋳型内に溶湯を注入することを特徴とするシリンダヘッドの製造方法。
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