JP4249890B2 - アーチ型覆蓋 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は覆蓋に係り、特にスパンの長い架設場所に用いられる軽量化されたアーチ型覆蓋に関する。
【0002】
【従来の技術】
水槽や水路を覆う覆蓋は、所定の荷重強度や長期間の耐久性が要求される。特に蓋受け部の受け枠間隔が長い架設場所では、覆蓋自体がロングスパンに対応して大型になるため、覆蓋自体の強度が要求されると共に軽量であることが要求される。
【0003】
このような覆蓋は近時、軽量で耐久性を有する繊維強化プラスチック(FRP)などの素材で成したものが用いられ、最近ではガラス長繊維強化プラスチック発泡体を素材とした合成木材を用いて成されたものが広く用いられている。
【0004】
は、ロングスパン用として用いられるアーチ型覆蓋100の一例を示す斜視図である。 覆蓋100は、上弦材101、下弦材102、垂直材103および斜材104で構成される本格的なトラス構造の上部に面板105を接合したもので、ロングスパン用として充分な強度を有している。
【0005】
則ち、ロングスパン用の覆蓋100は長尺になるため、覆蓋100自体の剛性を確保すると共に、架設場所の要求する耐荷重強度を有する必要がある。図に示すような本格的なトラス構造を有した覆蓋100は、例えば、幅60cm、長さ5mのタイプで60kgもの重量があり架設工事が大がかりになり、覆蓋100自体のコストも高い。
ところで、架設環境によってはロングスパンであっても人が覆蓋の上に乗らないような場所もある。このような場合、覆蓋に要求される荷重強度は、人が乗る場合の荷重強度(例えば360kgf/m2 )に比べて50〜100kgf/m2と遙かに低い値になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ロングスパン用の覆蓋としては、これまで前記した本格的なトラス構造を有するものしかなかった。このため、ロングスパンの架設場所では荷重強度を要しない場合でも不必要に補強された重い覆蓋を用いるため、架設が大がかりでコストが嵩むため改善が望まれていた。
そこで、ロングスパンを有する架設場所に多数の支持枠を橋渡し、これらの支持枠に小型の覆蓋を架設する方法が採られることもあるが、架設工事に手間が掛かり省コスト化を図ることができなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みて提案されるもので、要求される荷重強度に応じて軽量化、低コスト化を図ることのできる覆蓋、特にロングスパン用の覆蓋を提供することを目的とする。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために提案される本発明は、方形平面状の面板の裏面に長手両側縁に沿って予め凸型アーチ状に湾曲させて形成した曲り主梁を接合した構造を有する。
面板に曲り主梁を接合することにより、長手方向の断面二次モーメントを効果的に増加することができ曲げ剛性(EI)が向上する。
また、曲り主梁の間に複数の小梁を掛け渡してその両端を曲り主梁に接合することもでき、覆蓋の剛性が一層向上する。
【0017】
曲り主梁を複数の板材を積層して構成することができる。例えば、曲り主梁を合成木材を用いて成する場合、合成木材をアーチ形状に切り出すときに繊維方向がアーチの略円周方向になるようにする。このようにしてアーチ形状に切り出した複数の板材を、接合部をずらせて積層接合して湾曲させた構成とすれば、繊維方向がアーチ状に揃うため曲り主梁の曲げ剛性が向上する。
また、繊維方向が互いに交差するようにアーチ形状に切り出した板材を積層して曲り主梁としても良い。この積層構造によれば、アーチ形の円周方向から繊維方向がずれる部分の曲げ剛性を積層板同士で補強しあうため、曲り主梁の曲げ剛性が向上する。
【0018】
また、面板を単層板で形成する場合には、その表面に繊維強化樹脂層(FRP樹脂層)を被覆して強化させることができる。また、薄板を積層して面板を形成する場合には、面板の表面や積層される薄板同士の間に繊維強化樹脂層を設けて強度を増した構成とすることもできる。
【0019】
このようなFRP樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。FRP樹脂層の厚さは強度に応じて定められる。通常は、ガラスロービング、ガラスロービングクロス、ガラスマット、コンティニュアスストランドマットなどのガラス繊維を組み合わせたものを積層して被覆することにより耐久性が向上する。
【0020】
前記本発明において、面板を構成する板材として、硬質フォーム材、樹脂注入木材、チップ材、合成樹脂廃材(所謂ハイプラ材)、ボード材或いはハニカム材などの素材を用いることが可能である。
【0021】
また、本発明では、覆蓋を構成する部材、則ち、面板や係止部材、支柱部材、曲り主梁などを繊維強化硬質樹脂発泡体を素材とする合成木材で成することが好適である。
則ち、紫外線劣化を受けないガラス繊維強化プラスチック発泡体の板材で成された覆蓋であれば、耐久性、加工性が向上すると共に軽量化を実現できる。さらに好ましくは、覆蓋を構成する板材は、長手方向に向けて埋設した長繊維で補強した樹脂(これを「合成木材」という)により形成することができ、より好ましくはガラス長繊維を長手方向に引き揃えて埋設した熱硬化性樹脂発泡体により形成することができる。また、上記合成木材単体からなる板材によって覆蓋を構成してもよいが、合成木材や樹脂発泡体などからなる板材を上下に積層してなる複合材により覆蓋を形成することもできる。なお、合成木材の密度は、一般的には500〜1000kg/m3(0.5〜1.0g/cm3)であり、補強材である長繊維の含有量は40〜60重量%程度のものとすることができる。長繊維としては、無機質、有機質のいずれを使用してもよいが、ガラス繊維を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂発泡体としては、硬質ポリウレタン樹脂や硬質ポリエステル樹脂を好適に使用できる。
【0022】
発泡体における発泡樹脂の種類としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であって硬質のものが好適に使用される。尚、圧縮強度の向上や低コスト化を図るために、発泡樹脂中に炭酸カルシウム、石膏、タルク、水酸化アルミニウム、クレーなどの無機充填材や、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーンなどの軽量骨材を添加しても良い。
【0023】
また、発泡体を補強する繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機質繊維、天然繊維、合成樹脂などの有機質繊維のいずれであっても良いが、強度や経済性の面からガラス繊維が適している。ガラス繊維としては、ガラスロービング、ガラスロービングクロス、ガラスマット、コンティニュアスストランドマットなどの形態のものが挙げられる。この繊維は、単独で使用しても良いし、二層以上積層して使用しても良く、また、長繊維と短繊維を混ぜて使用しても良い。尚、ガラス長繊維を長手方向に引き揃えて補強繊維としたガラス長繊維強化硬質ウレタン発泡体(例えば、積水化学工業株式会社製 商品名「エスロンネオランバーFFU」など)を採用するのが、軽量化、耐久性および加工性の確保のために最も好ましい。
【0024】
【実施例】
以下に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
後述する面板10に合成木材などの単層板を用いる場合、図(a)に示すように、単板層P1の表面に繊維強化樹脂層(FRP樹脂層)S1,S2を設けて補強することができる。
また、図(b)に示すように、薄板層P1,P3,P5と薄板層P2,P4との繊維方向を交差させて接合した積層板によって天板10を構成することもでき、撓み強度を向上させることができる。
また、図(b)に示す積層板の表面および各薄板層間に図(c)に示すように繊維強化樹脂層(FRP樹脂層)S1〜S6を設けて一層強化した天板10とすることも可能である。
【0037】
本発明における覆蓋では、面板10を構成する板材として、前記した合成木材の他に、硬質フォーム材、樹脂注入木材、チップ材、ハイプラ材、ボード材或いはハニカム材などの軽量且つ強度を有する素材を好適に用いることができる。
【0038】
(実施例
は、別の実施例に係るアーチ型覆蓋5を斜視図で示したものである。
覆蓋5は、方形平面状の面板10の裏面に、面板10の長手両側縁に沿って予め凸型アーチ状に湾曲させた曲り主梁15,15を接合し、この曲り主梁15同士の間に複数の小梁16を掛け渡してその両端を曲り主梁15に接合した構成である。
この覆蓋5では、湾曲形状の曲り主梁15で面板10をアーチ状に湾曲させており、曲り主梁15によって面板10の長手方向の断面二次モーメントを増加させて曲げ剛性(EI)を向上させている。
このように、覆蓋5では、天板10および曲り主梁15、小梁16だけの部材で構成されるので、ロングスパンであるにも拘わらず極めて軽量化することが可能である。
【0039】
本実施例では、平面状の面板10を曲り主梁15,15に接合することによってアーチ状に湾曲させているが、予めアニーリング処理などを施してアーチ状に湾曲させた面板10を用いても良い。
【0040】
覆蓋5は合成木材を用いて成しているが、特に、湾曲形状の曲り主梁15は合成木材の繊維方向を交差させるように積層させて強度を増すのが好ましい。
則ち、図(a)に示すように、曲り主梁を合成木材を用いて成する場合、合成木材をアーチ形状に切り出すときに繊維方向がアーチの略円周方向になるようにする。このようにしてアーチ形状に切り出した複数の板材T1〜T5を、接合部をずらせて積層接合して湾曲させた構成とすれば、繊維方向がアーチ状に揃うため曲り主梁15の曲げ剛性が向上する。
また、図(b)に示すように、繊維方向が互いに交差するようにアーチ形状に切り出した薄板U1,U2を積層して曲り主梁15としても良い。この積層構造により、アーチ形の円周方向から繊維方向がずれる部分の曲げ剛性を積層板同士で補強しあうため、曲り主梁15の曲げ剛性が向上する。
【0041】
尚、本実施例における覆蓋5についても、前記した覆蓋1〜4と同様にガラス長繊維強化硬質ウレタン発泡体を素材とした合成木材を用いて成した。しかし、図に示した積層板やFRP樹脂で補強された積層板を用いることも可能である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、ロングスパンの架設場所用として軽量で且つ低コストの覆蓋を提供できる。また、架設場所に要求される荷重強度に応じた軽量な覆蓋を用いることにより、架設の作業性を向上させ、コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(c)は天板を構成する単層板及び積層板を示す断面図である。
【図2】 本発明の実施例に係る覆蓋の斜視図である。
【図3】 (a),(b)は図に示す覆蓋の曲り主梁を構成する薄板材の繊維方向を示す模式図である。
【図4】 従来のロングスパン用の覆蓋を示す斜視図である。
【符号の説明】
アーチ形覆蓋
10 面
15 曲り主梁
16 小梁
S1〜S6 繊維強化樹脂層

Claims (8)

  1. 方形平面状の面板の長手両側縁に沿って凸型アーチ状に湾曲した曲り主梁を接合して形成され、
    前記曲り主梁が複数の板材を積層して成ることを特徴とするアーチ型覆蓋。
  2. 方形平面状の面板の長手両側縁に沿って凸型アーチ状に湾曲した曲り主梁を接合して形成され、
    前記曲り主梁の間に複数の小梁を掛け渡してその両端を曲り主梁に接合されることを特徴とするアーチ型覆蓋。
  3. 方形平面状の面板の長手両側縁に沿って凸型アーチ状に湾曲した曲り主梁を接合して形成され、
    前記曲り主梁の間に複数の小梁を掛け渡してその両端を曲り主梁に接合される
    前記曲り主梁が複数の板材を積層して成ることを特徴とするアーチ型覆蓋。
  4. 前記面板の表面および面板を構成する積層板同士間の少なくともいずれかに繊維強化樹脂層が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアーチ型覆蓋。
  5. 前記面板を構成する板材が硬質フォーム材、樹脂注入木材、チップ材、合成樹脂廃材、ボード材またはハニカム材のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアーチ型覆蓋。
  6. 覆蓋は繊維強化硬質樹脂発泡体を素材とする合成木材で成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアーチ型覆蓋。
  7. 前記曲り主梁が繊維強化硬質樹脂発泡体を素材とする合成木材で成され、前記曲り主梁の繊維方向が凸型アーチの略円周方向になるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアーチ型覆蓋。
  8. 前記曲り主梁が繊維強化硬質樹脂発泡体を素材とする合成木材で成され、前記曲り主梁が、凸型アーチ形状に切り出された薄板を繊維方向が互いに交差するように積層して形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアーチ型覆蓋。
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