JP4249870B2 - 油圧モータ駆動系の潤滑構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧モータ駆動系において潤滑構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばスキッドローダ等に備えられる油圧モータ駆動系は、油圧モータの回転が減速機およびチェーン等を介して左右のドライブシャフトに伝達されるようになっている。
【0003】
従来、この種の油圧モータ駆動系の潤滑構造として、油圧モータと減速機の間に設けられるシールを取り去り、油圧モータの作動油を減速機に循環させるようにしたものがある。
【0004】
この場合、減速機の潤滑油を単独で交換する必要がなく、減速機のメンテナンスフリー化がはかられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の油圧モータ駆動系の潤滑構造にあっては、減速機のギア室に油圧モータの作動油が充満するため、高速作動時に減速機のギア等が潤滑油を攪拌する抵抗が大きく、動力の伝達効率が低くなるという問題点があった。さらに、減速機の磨耗粉が油圧モータに侵入し、油圧モータの作動油を濾過するフィルタの交換頻度が増えるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、油圧モータ駆動系に適した潤滑構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、作動油圧によってモータシャフトを回転する油圧モータと、モータシャフトの回転をギアを介して出力シャフトに伝達する減速機と、出力シャフトの回転をチェーンを介して他のシャフトに伝達するチェーン伝達機構とを備える油圧モータ駆動系の潤滑構造に適用する。
【0008】
そして、油圧モータを収装するモータ室と、減速機を収装するギア室と、チェーン伝達機構を収装するチェーン室と、チェーン室とギア室の油面が同一レベルになるようにチェーン室とギア室を連通する連通路とを備え、減速機の一部がギア室の油面下に没するようにし、出力シャフトと共に回転しチェーンが掛け回されるスプロケットと、チェーン室の底部より高い位置にあってスプロケットのまわりに対峙して皿状に窪む凹部とを備え、連通路の一端を凹部の内側に開口させたことを特徴とするものとした。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、凹部をチェーン室の油面下に没するように形成したことを特徴とするものとした。
【0011】
【発明の作用および効果】
第1の発明によると、減速機の一部が油面下に没するように所定量の潤滑油を封入することにより、ギア室に油圧モータの作動油が充満する従来構造に比べて、高速作動時に減速機が潤滑油を攪拌する抵抗を大幅に減らし、減速機の駆動損失を低減し、動力の伝達効率を高められる。そして、潤滑油の温度上昇が抑えられるため、潤滑油の劣化が遅いとともに、機器の耐久性を低下させない。
【0012】
チェーン室に所定量の潤滑油を入れることで、ギア室にも潤滑油が入り、潤滑油の交換をギア室とチェーン室でいっぺんにできる。したがって、減速機の潤滑油を単独で交換する必要がなく、減速機のメンテナンスフリーを達成できる。
【0013】
ギア室をチェーン室に連通させているため、ギア室をチェーン室に連通させない構造に比べて、ギア室を循環する潤滑油の量が多くなるとともに、チェーン室における潤滑油の劣化が遅いため、潤滑油の交換時期を延ばすことができる。
【0014】
モータ室とギア室はそれぞれ画成されているため、油圧モータを循環する作動油がギア室を循環する従来構造のように、減速機の磨耗粉が油圧モータに侵入することがなく、油圧モータの作動油を濾過するフィルタの交換頻度を減らすことができる。
【0015】
そして、油圧モータの高速作動時等にスプロケットやチェーン等によって潤滑油が掻き上げられてチェーン室の油面が低下しても、スプロケットやチェーンから飛散する潤滑油が凹部によって集められ、凹部から連通路を通してギア室へと導かれるため、ギア室の潤滑油が不足することが抑えられ、減速機の潤滑性が維持される。
【0016】
第2の発明によると、凹部がチェーン室から連通路に流入する潤滑油の流れをせき止めることがなく、連通路を介してチェーン室の油面とギア室の油面が同一高さに保たれる。これにより、油圧モータの運転開始時から減速機とチェーン伝達機構の潤滑が十分に行われる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をスキッドローダの駆動系に適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1、図2に示すように、スキッドローダの駆動系は、作動油圧によってモータシャフト15を回転する油圧モータ1と、モータシャフト15の回転を遊星歯車機構を介して出力シャフト41に伝達する減速機2と、出力シャフト41の回転を各チェーン3,4を介して左右のドライブシャフトに伝達するチェーン伝達機構6とを備える。
【0019】
油圧モータ1と減速機2およびチェーン伝達機構6のスプロケット3,4が中心軸O上に設けられる。そして、油圧モータ1を収装するモータ室10と、減速機2を収装するギア室30と、チェーン伝達機構6を収装するチェーン室40とが中心軸Oに沿って並んで設けられる。
【0020】
モータケース11とモータカバー12の間に油圧モータ1を収装するモータ室10が画成される。モータケース11とモータカバー12の間にはモータシャフト15が各ベアリング23,24を介して回転可能に支持され、モータシャフト15にシリンダブロック13が連結される。
【0021】
モータシャフト15の外周とモータケース11の間にはシール9が介装され、シール9によってモータ室10とギア室30の間が密封される。
【0022】
シリンダブロック13には中心軸Oを中心とする円上に等しい間隔で複数のシリンダ16が形成され、各シリンダ16にピストン17が摺動可能に収装される。各ピストン17の先端はシュー19を介して斜板18に摺接する。
【0023】
図示しない油圧源からの加圧作動油が通路21を介してシリンダ16に導かれると、油圧力によりシリンダ16からピストン17が突出し、シュー19を斜板14に押し付けてシリンダブロック13を回転させる。
【0024】
また、モータケース11とシリンダブロック13の間には斜板14の傾転角度を切り換える変速機構8が設けられている。さらに、モータケース11とシリンダブロック13の間には両者の相対回転を拘束するブレーキ機構5が設けられている。
【0025】
シリンダブロック13が回転するのに伴い、各ピストン17が往復動し、シリンダ16から排出される作動油はモータ室10と通路22を介して図示しないタンクへと戻される。こうしてモータ室10には油圧モータ1を回転駆動した作動油が充満し、シュー19や各ベアリング23,24等を潤滑する。
【0026】
モータケース11にはギアケース31が複数のボルト32を介して締結され、両者の間に減速機2を収装するギア室30が画成される。
【0027】
減速機2はモータシャフト15と共に回転するサンギア33と、ギアケース31の内周に形成されたリングギア34と、両ギア33,34に噛み合う複数のプラネタリギア35と、各プラネタリギア35を回転可能に支持して中心軸Oまわりに回転するキャリア36とを備え、これらによりモータシャフト15の回転を出力シャフト41に減速して伝達する遊星歯車機構を構成している。サンギア33はギアシャフト29の一端に一体形成され、ギアシャフト29の他端がモータシャフト15に結合している。キャリア36は出力シャフト41の一端に結合される。
【0028】
図2に示すように、チェーン伝達機構6は、出力シャフト41に形成されたスプロケット3,4と、左右のドライブシャフト(図示せず)に結合される各スプロケット42と、各スプロケット3,42に掛け回されるチェーン43と、各スプロケット4,42に掛け回されるチェーン44とを備え、減速機2からの回転を減速して各ドライブシャフトに伝達する。
【0029】
出力シャフト41はギアケース31に各ベアリング45,46を介して回転可能に支持される。出力シャフト41はその一端にキャリア36の内周端が結合され、その他端に各スプロケット3,4が一体形成され、キャリア36と各スプロケット3,4を一体に回転させる。
【0030】
各スプロケット3,4の中心軸Oと各スプロケット42の中心軸Sは直線L上に並び、この直線Lおよび中心軸Oが略水平に延びるように搭載される。
【0031】
ギアケース31にはチェーンカバー39が複数のボルトを介して締結され、両者の間にチェーン伝達機構6を収装するチェーン室40が画成される。
【0032】
そして本発明の要旨とするところであるが、チェーン室40とギア室30を連通する連通路37を設け、チェーン室40の潤滑油が連通路37を通ってギア室30に導かれるようにする。
【0033】
連通路37はギアケース31を貫通して形成され、出力シャフト41の上下に一対で設けられる。下方の連通路37は停止状態で潤滑油の中に位置し、ギア室30の油面とチェーン室40の油面が連通路37を介して同一レベルになる。この状態において、各チェーン43,44の一部がチェーン室40の下部に溜まった潤滑油に浸かるとともに、減速機2の一部がギア室30の下部に溜まった潤滑油に浸かるようになっている。
【0034】
ギアケース31には一対の受け凹部38が各スプロケット3,4を囲むように出力シャフト41の上下に形成される。各凹部38は各スプロケット3,4に対峙して皿状に窪み、各凹部38の内側に各連通路37の一端が開口している。油圧モータ1の作動時に各凹部38は各スプロケット3,4および各チェーン43,44から飛散する潤滑油を集め、各連通路37を介してギア室30に導く。
【0035】
下方の凹部38は油圧モータ1の停止状態で潤滑油の中に沈む高さに形成され、チェーン室40から連通路37に流入する潤滑油の流れをせき止めないようになっている。
【0036】
以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0037】
ギア室30に潤滑油が充満することなく、プラネタリギア35の一部が潤滑油の中を回動するため、ギア室に潤滑油が充満する従来構造に比べて、高速作動時にプラネタリギア35等が潤滑油を攪拌する抵抗を大幅に減らし、減速機2の駆動損失を低減し、動力の伝達効率を高められる。そして、潤滑油の温度上昇が抑えられるため、潤滑油の劣化が遅いとともに、機器の耐久性を低下させない。
【0038】
チェーン室40に所定量の潤滑油を入れることで、ギア室30にも潤滑油が入り、潤滑油の交換をギア室30とチェーン室40でいっぺんにできる。したがって、減速機2の潤滑油を単独で交換する必要がなく、減速機2のメンテナンスフリーを達成できる。
【0039】
ギア室30をチェーン室40に連通させているため、ギア室30をチェーン室40に連通させない構造に比べて、ギア室30を循環する潤滑油の量が多くなるとともに、チェーン室40における潤滑油の劣化が遅いため、潤滑油の交換時期を延ばすことができる。
【0040】
モータ室10とギア室30が互いに仕切られているため、油圧モータの作動油がギア室を循環する従来構造のように、減速機2の磨耗粉が油圧モータ1に侵入することがなく、油圧モータ1の作動油を濾過するフィルタの交換頻度を減らすことができる。
【0041】
油圧モータ1の高速作動時に各スプロケット3,4,42および各チェーン43,44等によって潤滑油が掻き上げられ、チェーン室40の油面が低下するが、各スプロケット3,4および各チェーン43,44から飛散する潤滑油が凹部38によって集められ、凹部38から連通路37を介してギア室30へと導かれるため、ギア室30の潤滑油が不足することが抑えられ、減速機2の潤滑性が維持される。
【0042】
油圧モータ1の停止状態で凹部38がチェーン室40から連通路37に流入する潤滑油の流れをせき止めることがなく、連通路37を介してチェーン室40の油面とギア室30の油面が同一高さに保たれる。これにより、油圧モータ1の運転開始時から減速機2とチェーン伝達機構6の潤滑が十分に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す断面図。
【図2】同じく正面図。
【符号の説明】
1 油圧モータ
2 減速機
3 スプロケット
4 スプロケット
6 チェーン伝達機構
10 モータ室
15 モータシャフト
29 ギアシャフト
30 ギア室
37 連通路
38 凹部
40 チェーン室
41 出力シャフト
Claims (2)
- 作動油圧によってモータシャフトを回転する油圧モータと、前記モータシャフトの回転をギアを介して出力シャフトに伝達する減速機と、前記出力シャフトの回転をチェーンを介して他のシャフトに伝達する前記チェーン伝達機構と、を備える油圧モータ駆動系において、前記油圧モータを収装するモータ室と、前記減速機を収装するギア室と、前記チェーン伝達機構を収装するチェーン室とを画成し、前記チェーン室と前記ギア室の油面が同一レベルになるように前記チェーン室と前記ギア室を連通する連通路を備え、前記減速機の一部が前記ギア室の油面下に没するようにし、前記出力シャフトと共に回転し前記チェーンが掛け回されるスプロケットと、前記チェーン室の底部より高い位置にあって前記スプロケットのまわりに対峙して皿状に窪む凹部とを備え、前記連通路の一端を前記凹部の内側に開口させたことを特徴とする油圧モータ駆動系の潤滑構造。
- 前記凹部を前記チェーン室の油面下に没するように形成したことを特徴とする請求項1に記載の油圧モータ駆動系の潤滑構造。
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