JP4248920B2 - 地中埋設管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地熱を利用した冷暖房システムの構築等に使用可能な地中埋設管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、外気に左右されず年間を通して安定した温度に保たれる地熱を利用した冷暖房システムとして、2重の鋼管からなる地熱利用チューブを縦向き状態に地中に埋設し、外気を、このチューブに通して地中熱と熱交換させて屋内に送りこみ、屋内空間を、夏は涼しく、冬は暖かくすることができる冷暖房システムが提案されている(例えば、特許文献1)。前記冷暖房システムで使用される地熱利用チューブは、外管鋼管の内部に、内管が同芯状態に入れられ、内管と外管の間に上下方向に延びる環状の通気部が形成されたものであり、外気は、地熱利用チューブの上部で環状通気部に吸い込まれ、この環状通気部を下降していき、この下降の過程で、外管を通じて地中熱と熱交換を行う。熱交換された空気は、内管内に吸い込まれ、内管内を上昇して上端から屋内に送りこまれる。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−35455号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記地熱利用チューブでは、外気は環状通気部を下降していく過程で地中熱と熱交換を行うものであるため、例えば、夏期のように外気の温度が30℃を越えるような場合や、冬期のように外気の温度が5℃以下のような場合では、地熱利用チューブを極端に長くしなければ、外気と地中熱の十分な熱交換を行えないという問題がある。また、上記地熱利用チューブでは、特に夏期において、外気が地中熱と熱交換して冷やされることで結露を起こし、外管内部や内管外部に錆が発生するという問題もある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、地熱を利用した冷暖房システムの構築等に好適に使用することができる地中埋設管を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の材料を含む配合物の硬化体からなり、かつ、パイプを内蔵する地中埋設管であれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、少なくとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径2mm以下の細骨材、無機粒子、減水剤、及び水を含む配合物の硬化体からなる地中埋設管であって、前記無機粒子は、ブレーン比表面積が2500〜30000cm 2 /gで、かつ前記セメントよりも大きなブレーン比表面積を有するものであり、前記硬化体の熱伝導率が2.0W/(m・k)以上であり、前記地中埋設管が、外径20〜120cm、厚さ2〜15cm、高さが2〜15mの中空管であり、かつ、硬化体内部に地中埋設管の高さの10〜30倍となる長さのパイプを内蔵することを特徴とする地中埋設管である(請求項1)。このように構成した地中埋設管は、高熱伝導率を有する硬化体からなるので、パイプ内に液体や気体を流すことにより、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換を効果的に行うことができる。また、パイプの配置を工夫することによって、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換距離を長くすることができるので、地中埋設管自体の長さを極端に長くする必要はなくなる。また、本発明の配合物の硬化体は、130MPa以上の圧縮強度と20MPa以上の曲げ強度を発現するので、該硬化体からなる本発明の地中埋設管は、構造部材として使用することも可能である。
上記無機粒子は、ブレーン比表面積5000〜30000cm2/gの無機粒子Aと、ブレーン比表面積2500〜5000cm2/gの無機粒子Bとから構成することができる(請求項2)。このようにブレーン比表面積の異なる2種の無機粒子を用いることによって、配合物の流動性をより一層向上させることができる。
上記地中埋設管は、配合物に、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維を含むことができる(請求項3)。このように金属繊維等を含むことによって、地中埋設管の曲げ強度や破壊エネルギー等を向上させることができる。
上記地中埋設管は、表面に凹凸を形成させることができる(請求項4)。このように表面に凹凸を形成させることによって伝熱面積が大きくなり、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換をより効果的に行うことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
最初に、地中埋設管(硬化体)の製造に使用する材料およびその配合割合について説明する。
本発明で使用するセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。
本発明において、地中埋設管の早期強度を向上させようとする場合には、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、配合物の流動性を向上させようとする場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0009】
セメントのブレーン比表面積は、2500〜5000cm2/gが好ましく、3000〜4500cm2/gがより好ましい。該値が2500cm2/g未満であると、水和反応が不活発になって、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下する等の欠点があり、5000cm2/gを超えると、セメントの粉砕に時間がかかり、また、所定の流動性を得るための水量が多くなるため、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下する等の欠点がある。
【0010】
ポゾラン質微粉末としては、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。
一般に、シリカフュームやシリカダストは、そのBET比表面積が5〜25m2/gであり、粉砕等をする必要がないので、本発明のポゾラン質微粉末として好適である。
ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、5〜25m2/gが好ましく、8〜25m2/gがより好ましい。該値が5m2/g未満であると、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下する等の欠点があり、25m2/gを超えると、所定の流動性を得るための水量が多くなるため、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下する等の欠点がある。
ポゾラン質微粉末の配合量は、セメント100質量部に対して5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部である。配合量が5〜50質量部の範囲外では、流動性が極端に低下するので地中埋設管の製造に手間がかかる、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下する等の欠点がある。
【0011】
本発明においては、粒径2mm以下の細骨材が用いられる。ここで、細骨材の粒径とは、85%質量累積粒径である。細骨材の粒径が2mmを超えると、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下するので好ましくない。
なお、本発明においては、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度等から、最大粒径が2mm以下の細骨材を用いることが好ましく、最大粒径が1.5mm以下の細骨材を用いることがより好ましい。また、配合物の流動性等から、75μm以下の粒子の含有量が2.0質量%以下である細骨材を用いることが好ましく、75μm以下の粒子の含有量が1.5質量%以下である細骨材を用いることがより好ましい。
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂等又はこれらの混合物を使用することができる。
細骨材の配合量は、配合物の流動性、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度等の観点から、セメント100質量部に対して50〜250質量部であることが好ましく、80〜200質量部であることがより好ましい。
【0012】
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することができる。これらのうち、減水効果の大きな高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することが好ましく、特に、ポリカルボン酸系の高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することが好ましい。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で0.1〜4.0質量部が好ましく、0.1〜2.0質量部がより好ましい。配合量が0.1質量部未満では、混練が困難になるとともに、流動性が低下し、地中埋設管の製造に手間がかかる等の欠点がある。配合量が4.0質量部を超えると、材料分離や著しい凝結遅延が生じ、また、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下することもある。
なお、減水剤は、液状または粉末状のいずれでも使用することができる。
【0013】
水量は、セメント100質量部に対して、10〜30質量部が好ましく、より好ましくは12〜25質量部である。水の量が10質量部未満では、混練が困難になるとともに、流動性が低下し、地中埋設管の製造に手間がかかる等の欠点がある。水の量が30質量部を超えると、硬化体の熱伝導率や地中埋設管の強度が低下する。
【0014】
本発明においては、配合物の流動性や、地中埋設管の強度や耐久性を向上させる観点から、前記配合物に、ブレーン比表面積が2500〜30000cm2/gで、かつ上記セメントよりも大きなブレーン比表面積を有する無機粒子を含ませることが好ましい。
無機粒子としては、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。中でも、スラグ、石灰石粉末、石英粉末は、コストの点や硬化後の品質安定性の点で好ましく用いられる。
無機粒子は、ブレーン比表面積が好ましくは2500〜30000cm2/g、より好ましくは4500〜20000cm2/gで、かつセメント粒子よりも大きなブレーン比表面積を有する。無機粒子のブレーン比表面積が2500cm2/g未満であると、セメントとのブレーン比表面積の差が小さくなり、高い流動性(自己充填性)を確保することが困難になるので地中埋設管の製造に手間がかかる等の欠点があり、30000cm2/gを超えると、粉砕に手間がかかるため材料が入手し難くなったり、高い流動性が得られ難くなるので地中埋設管の製造に手間がかかる等の欠点がある。
【0015】
無機粒子がセメントよりも大きなブレーン比表面積を有することによって、無機粒子が、セメントとポゾラン質微粉末との間隙を埋める粒度を有することになり、高い流動性(自己充填性)等を確保することができる。
無機粒子とセメントとのブレーン比表面積の差は、配合物の流動性と地中埋設管の強度の観点から、1000cm2/g以上が好ましく、2000cm2/g以上がより好ましい。
無機粒子の配合量は、配合物の流動性や、地中埋設管の強度や耐久性等の観点から、セメント100質量部に対して55質量部以下が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
【0016】
本発明においては、無機粒子として、異なる2種の無機粒子A及び無機粒子Bを併用することができる。
この場合、無機粒子Aと無機粒子Bは、同じ種類の粉末(例えば、石灰石粉末)を使用してもよいし、異なる種類の粉末(例えば、石灰石粉末及び石英粉末)を使用してもよい。
無機粒子Aは、ブレーン比表面積が5000〜30000cm2/g、好ましくは6000〜20000cm2/gのものである。また、無機粒子Aは、セメント及び無機粒子Bよりもブレーン比表面積が大きいものである。
無機粒子Aのブレーン比表面積が5000cm2/g未満であると、セメントや無機粒子Bとのブレーン比表面積の差が小さくなり、前記の1種の無機粒子を用いる場合と比べて、流動性等を向上させる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粒子を用いているために、材料の準備に手間がかかるので、好ましくない。該ブレーン比表面積が30000cm2/gを超えると、粉砕に手間がかかるため、材料が入手し難くなったり、高い流動性が得られ難くなるので地中埋設管の製造に手間がかかる等の欠点がある。
【0017】
また、無機粒子Aが、セメント及び無機粒子Bよりも大きなブレーン比表面積を有することによって、無機粒子Aが、セメント及び無機粒子Bと、ポゾラン質微粉末との間隙を埋めるような粒度を有することになり、より優れた流動性等を確保することができる。
無機粒子Aとセメント及び無機粒子Bとのブレーン比表面積の差(換言すれば、無機粒子Aと、セメントと無機粒子Bのうちブレーン比表面積の大きい方とのブレーン比表面積の差)は、配合物の流動性と地中埋設管の強度の観点から、1000cm2/g以上が好ましく、2000cm2/g以上がより好ましい。
【0018】
無機粒子Bのブレーン比表面積は、2500〜5000cm2/gである。また、セメントと無機粒子Bとのブレーン比表面積の差は、100cm2/g以上が好ましく、配合物の流動性と地中埋設管の強度の観点から、200cm2/g以上がより好ましい。
無機粒子Bのブレーン比表面積が2500cm2/g未満であると、流動性が低下して自己充填性が得られ難くなるので地中埋設管の製造に手間がかかる等の欠点があり、5000cm2/gを超えると、ブレーン比表面積の数値が無機粒子Aに近づくため、前記の1種の無機粒子を用いる場合と比べて、流動性等を向上させる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粒子を用いているために、材料の準備に手間がかかるので、好ましくない。
また、セメントと無機粒子Bとのブレーン比表面積の差が100cm2/g以上であることによって、配合物を構成する粒子の充填性が向上し、より優れた流動性等を確保することができる。
【0019】
無機粒子Aの配合量は、セメント100質量部に対して50質量部以下が好ましく、10〜40質量部がより好ましい。無機粒子Bの配合量は、セメント100質量部に対して40質量部以下が好ましく、5〜35質量部がより好ましい。無機粒子A及び無機粒子Bの配合量が前記の数値範囲外では、前記の1種の無機粒子を用いる場合と比べて、流動性等を向上させる効果が小さくなるばかりか、2種の無機粒子を用いているために、材料の準備に手間がかかるので、好ましくない。
なお、無機粒子Aと無機粒子Bの合計量は、セメント100質量部に対して55質量部以下が好ましく、より好ましくは10〜50質量部である。
【0020】
本発明においては、地中埋設管の曲げ強度や破壊強度等を大幅に高める観点から、配合物に、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維を配合することが好ましい。
金属繊維は、地中埋設管の曲げ強度等を大幅に高める観点から、配合される。
金属繊維としては、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、強度に優れており、また、コストや入手のし易さの点からも好ましいものである。金属繊維の寸法は、配合物中における金属繊維の材料分離の防止や、硬化体の曲げ強度の向上の点から、直径が0.01〜1.0mm、長さが2〜30mmであることが好ましく、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mmであることがより好ましい。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
【0021】
金属繊維の形状は、直線状よりも、何らかの物理的付着力を付与する形状(例えば、螺旋状や波形)が好ましい。螺旋状等の形状にすれば、金属繊維とマトリックスとが引き抜けながら応力を担保するため、曲げ強度が向上する。
金属繊維の好適な例としては、例えば、直径が0.5mm以下、引張強度が1〜3.5GPaの鋼繊維からなり、かつ、120MPaの圧縮強度を有するセメント系硬化体のマトリックスに対する界面付着強度(付着面の単位面積当たりの最大引張力)が3MPa以上であるものが挙げられる。本例において、金属繊維は、波形または螺旋形の形状に加工することができる。また、本例の金属繊維の周面上に、マトリックスに対する運動(長手方向の滑り)に抵抗するための溝または突起を付けることもできる。また、本例の金属繊維は、鋼繊維の表面に、鋼繊維のヤング係数よりも小さなヤング係数を有する金属層(例えば、亜鉛、錫、銅、アルミニウム等から選ばれる1種以上からなるもの)を設けたものとしてもよい。
【0022】
金属繊維の配合量は、配合物中の体積百分率で、好ましくは4%以下、より好ましくは0.5〜3%、特に好ましくは1〜3%である。該配合量が4%を超えると、流動性等を確保するために単位水量が増大するうえ、配合量を増やしても金属繊維の補強効果が向上しないため、経済的でなく、さらに、混練物中でいわゆるファイバーボールを生じ易くなるので、好ましくない。
【0023】
有機繊維及び炭素繊維は、地中埋設管の破壊エネルギー等を高める観点から、配合される。
有機繊維としては、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。中でも、ビニロン繊維及び/又はポリプロピレン繊維は、コストや入手のし易さの点で好ましく用いられる。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が挙げられる。
有機繊維及び炭素繊維の寸法は、配合物中におけるこれら繊維の材料分離の防止や、硬化後の破壊エネルギーの向上の点から、直径が0.005〜1.0mm、長さ2〜30mmであることが好ましく、直径が0.01〜0.5mm、長さ5〜25mmであることがより好ましい。また、有機繊維及び炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは30〜150である。
【0024】
有機繊維及び炭素繊維の配合量は、配合物中の体積百分率で好ましくは10.0%以下、より好ましくは1.0〜9.0%、特に好ましくは2.0〜8.0%である。配合量が10.0%を超えると、流動性等を確保するために単位水量が増大するうえ、配合量を増やしても繊維の増強効果が向上しないため、経済的でなく、さらに、混練物中にいわゆるファイバーボールを生じ易くなるので、好ましくない。
【0025】
次に、配合物および硬化体の物性(フロー値、圧縮強度、曲げ強度、破壊エネルギー、熱伝導率)を説明する。
配合物のフロー値は、好ましくは230mm以上、より好ましくは240mm以上である。なお、本明細書中において、フロー値とは、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定した値(本明細書中において、「0打フロー値」ともいう。)である。
また、前記フロー試験において、フロー値が200mmに達する時間は、好ましくは10.5秒以内、より好ましくは10.0秒以内である。
硬化体の圧縮強度は、好ましくは130MPa以上、より好ましくは135MPa以上である。
硬化体の曲げ強度は、好ましくは20MPa以上、より好ましくは22MPa以上、特に好ましくは25MPa以上である。特に、配合物が金属繊維を含む場合には、硬化体の曲げ強度は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは32MPa以上、特に好ましくは35MPa以上である。
硬化体の破壊エネルギーは、例えば、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維のいずれか1種以上を配合した場合において、好ましくは10KJ/m2以上、より好ましくは20KJ/m2以上である。
硬化体の熱伝導率は、好ましくは2.0W/(m・k)以上、より好ましくは2.1W/(m・k)以上である。
【0026】
なお、前記熱伝導率は、以下の方法で測定する。
図1は、本発明の材料で製造した硬化体の熱伝導率を測定するための円筒供試体の模式図である。
図1に示すように、鋼管1(φ1.8×60cm)を内蔵した円筒供試体2(φ20×40cm)の上面および下面には、断熱材(図示せず)が設置されている。そして、該鋼管1の中には、直径1.6cmの電気ヒーターが配設され、高さ方向の中心部に熱電対3がセットされている。
【0027】
熱伝導率を測定する場合、円筒供試体を温度制御された液体(水)に漬し、一定電力を電気ヒーターに供給する。
該円筒供試体中心部と外面の温度が平衡状態になったとき、両者の温度を測定し、下記の式から熱伝導率を算出する。
λ=Q・ln(b/a)/(2・π・L・(Ta−Tb))・・・・(1)
ここで、λ :熱伝導率(W/(m・k))
Q :電力(W)
a :鋼管の外径(m)
b :供試体の外径(m)
L :供試体の高さ(m)
Ta:供試体中心部温度(℃)
Tb:供試体の外面温度(℃)
【0028】
次に、本発明の地中埋設管について説明する。
本発明の地中埋設管は、高熱伝導率に着眼し、地熱を利用した冷暖房システムの構築用等に開発されたものである。
本発明の地中埋設管の寸法は、地中埋設管の製造の手間やコスト、地中埋設管を地中に埋設する際の手間、地中埋設管の耐久性、地中埋設管中のパイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換の効率等から、外径20〜120cm、厚さ2〜15cm、高さが2〜15mの中空管であることが好ましい。
【0029】
本発明の地中埋設管は、その表面(外面)に、凹凸が形成されていることが好ましい。表面(外面)に凹凸を形成することにより、表面(外面)の表面積(伝熱面積)を増大させることができ、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換をより効果的に行うことができる。
本発明において凹凸を形成した場合は、その表面積は凹凸を形成しない場合の表面積の8.00倍以下であることが好ましく、1.05〜5.00倍がより好ましく、1.10〜3.00倍が特に好ましい。該数値が8.00倍を越えると、熱交換の効果は向上するのであるが、地中埋設管の製造が困難となるうえ、地中埋設管の耐久性(特に、凹凸部分の耐久性)が低下するので好ましくない。表面(外面)に形成する凹凸は、特に限定するものではなく、例えば、断面が台形の長尺のリブを高さ方向に多数平行に形成すればよい。
なお、本発明においては、地中埋設管の耐久性(特に、凹凸部分の耐久性)から、凹凸部の高さの差は、10mm以下であることが好ましく、0.5〜5mmであることがより好ましい。
【0030】
本発明の地中埋設管は、パイプを内蔵するものである。パイプとしては、ステンレスパイプ、スチールパイプ、樹脂パイプ等が挙げられる。本発明の地中埋設管では、パイプ内に液体や気体を流すことにより、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換を行うものである。
本発明の地中埋設管は、地熱を利用した冷暖房システムの構築等に使用することから、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換を効果的に行わせる必要がある。そのため、地中埋設管内のパイプの長さは、地中埋設管の高さの10〜30倍となるように配設することが好ましく、地中埋設管の高さの15〜25倍となるように配設することが好ましい。
【0031】
本発明の地中埋設管の製造方法について説明する。
配合物の混練方法は、特に限定するものではなく、例えば、(a)水、減水剤以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材、水及び減水剤をミキサに投入し、混練する方法、(b)粉末状の減水剤を用意し、水以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材及び水をミキサに投入し、混練する方法、(c)各材料を各々個別にミキサに投入し、混練する方法、等を採用することができる。
混練に用いるミキサは、通常のコンクリートの混練に用いられるどのタイプのものでもよく、例えば、揺動型ミキサ、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ等が用いられる。
混練後、配合物を所定の型枠に流し込み、養生することにより、本発明の地中埋設管が得られる。パイプの内蔵は、前記型枠内にパイプを設置し、配合物を該型枠に流し込むことにより行うことができる。なお、本発明では、遠心成形を行うこともできる。
前述したように、本発明で用いる配合物は、0打フロー値が230mm以上と流動性に優れ、自己充填性を有するので、型枠への投入等を容易に行なうことができる。
なお、養生方法は、特に限定するものではなく、蒸気養生や気中養生等を行なえばよい。
【0032】
本発明の地中埋設管の利用について説明する。
本発明の地中埋設管は、縦向き状態に地中に埋設して、地熱を利用した冷暖房システムの構築に使用する。すなわち、地中熱と熱交換されたパイプ内の液体や気体を、建築構造物の床、壁等にパイプを通して流すことにより、屋内空間を、夏は涼しく、冬は暖かくすることができる。
また、本発明の配合物の硬化体は、130MPa以上の圧縮強度と20MPa以上の曲げ強度を発現するので、該硬化体からなる本発明の地中埋設管は、構造部材としての使用も可能である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
[1.使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製;ブレーン比表面積3200cm2/g)
(2)ポゾラン質微粉末;シリカフューム(BET比表面積10m2/g)
(3)無機粒子A;石英粉末A(ブレーン比表面積7500cm2/g)
(4)無機粒子B;石英粉末B(ブレーン比表面積4000cm2/g)
(5)細骨材;珪砂(最大粒径0.6mm、75μm以下の粒子の含有量0.3質量%)
(6)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:13mm)
(7)減水剤;ポリカルボン酸系高性能AE減水剤
(8)水;水道水
【0034】
実施例1
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム32質量部、石英粉末A39質量部、珪砂120質量部、高性能AE減水剤1.0質量部(セメントに対する固形分)、水22質量部をニ軸ミキサに投入し、混練した。
該配合物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定した。その結果、フロー値は260mmであった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠内に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した。該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は210MPaであった。
また、前記配合物を4×4×16cmの型枠内に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した。該硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は25MPaであった。
また、前記配合物を用いて図1に示すような鋼管を内蔵した円筒供試体(φ20×40cm)を作製し(養生は、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した)、その上面および下面に断熱材を貼付したのち、該円筒供試体を精密冷水槽および制御測定装置((株)チノー社製)内に設置した(水槽内には水を満たした)。そして、該鋼管内に直径1.6cmの電気ヒーターを配設したのち、一定電力(90W)を供給し、円筒供試体中心部と外面の温度が平衡状態になったとき、両者の温度を測定し、前記(1)式から熱伝導率を算出した。該硬化体の熱伝導率は2.05W/m・kであった。
【0035】
実施例2
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム32質量部、石英粉末A26質量部、石英粉末B13質量部、珪砂120質量部、高性能AE減水剤1.0質量部(セメントに対する固形分)、水22質量部をニ軸ミキサに投入し、混練した。
該配合物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定した。その結果、フロー値は285mmであった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠内に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した。該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は230MPaであった。
また、前記配合物を4×4×16cmの型枠内に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した。該硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は28MPaであった。
また、実施例1と同様に熱伝導率を算出した。該硬化体の熱伝導率は2.1W/m・kであった。
【0036】
実施例3
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム32質量部、石英粉末A26質量部、石英粉末B13質量部、珪砂120質量部、高性能AE減水剤1.0質量部(セメントに対する固形分)、水22質量部、鋼繊維(配合物中の体積の2%)をニ軸ミキサに投入し、混練した。
該配合物のフロー値を、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで測定した。その結果、フロー値は265mmであった。
また、前記配合物をφ50×100mmの型枠内に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した。該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)は230MPaであった。
また、前記配合物を4×4×16cmの型枠内に流し込み、20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生した。該硬化体の曲げ強度(3本の平均値)は47MPaであった。
また、実施例1と同様に熱伝導率を算出した。該硬化体の熱伝導率は2.4W/m・kであった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の地中埋設管は、高熱伝導率を有する硬化体からなるので、パイプ内に液体や気体を流すことにより、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換を効果的に行うことができる。そして、地中熱と熱交換されたパイプ内の液体や気体を、建築構造物の床、壁等にパイプを通して流すことにより、屋内空間を、夏は涼しく、冬は暖かくすることができる。このように、本発明の地中埋設管は、地熱を利用した冷暖房システムの構築に好適に使用することができる。なお、本発明の地中埋設管では、パイプの配置を工夫することによって、パイプ内の液体や気体と地中熱との熱交換距離を長くすることができるので、地中埋設管自体の長さを極端に長くする必要はない。
【0038】
本発明の配合物の硬化体は、130MPa以上の圧縮強度と20MPa以上の曲げ強度を発現するので、該硬化体からなる本発明の地中埋設管は、構造部材として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の材料で製造した硬化体の熱伝導率を測定するための円筒供試体の模式図である。
【符号の説明】
1 鋼管
2 円筒供試体
3 熱電対
Claims (4)
- 少なくとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径2mm以下の細骨材、無機粒子、減水剤、及び水を含む配合物の硬化体からなる地中埋設管であって、
前記無機粒子は、ブレーン比表面積が2500〜30000cm 2 /gで、かつ前記セメントよりも大きなブレーン比表面積を有するものであり、
前記硬化体の熱伝導率が2.0W/(m・k)以上であり、
前記地中埋設管が、外径20〜120cm、厚さ2〜15cm、高さが2〜15mの中空管であり、
かつ、硬化体内部に地中埋設管の高さの10〜30倍となる長さのパイプを内蔵することを特徴とする地中埋設管。 - 無機粒子が、ブレーン比表面積5000〜30000cm2/gの無機粒子Aと、ブレーン比表面積2500〜5000cm2/gの無機粒子Bとからなる請求項1記載の地中埋設管。
- 配合物に、金属繊維、有機繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維を含む請求項1又は2に記載の地中埋設管。
- 表面に、凹凸が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の地中埋設管。
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