JP4248856B2 - 発射誤差補正方法および装置ならびに武器システムのシステムコンピュータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は武器システムの、砲身を有する砲の、それぞれ請求項1および請求項12の前提部分の言うところによる砲の静的幾何形状誤差(static gun geometry errors)により生じる発射誤差(firing error)を補正する方法および装置ならびに請求項17の前提部分の言うところの武器システムのシステムコンピュータに関する。
【0002】
原則として、本発明は砲の、起こり得る全ての静的幾何形状誤差およびそれらの補正に関する。
【0003】
【従来の技術】
砲は夥しい数の部品から構成されており、それらは互いに堅くまたは可動的に連結されている。個々の部品は、決して精確な寸法精度で製作されたものでなく、むしろある製作公差(manufacturing tolerances)および/または理論上で決められた寸法とのずれ(deviation)をもって製造されており、また意図した(intended)部品間相互の位置からの、固定的組上げ許容誤差(fixed assembly tolerances)内のずれもまた組上げにおいて生じている。ずれの全体により、結果としてあらゆる砲はその理想的幾何形状からのずれを有し、これを砲の幾何形状誤差と呼んでいる。そのような砲の幾何形状誤差は夥しい種類の誤差から構成されている。例えば、砲の幾何形状誤差はゼロ位置における砲身の方位αに現われる。そのとき砲の方位ディスプレイでは実際にはαを0°ではなく、僅かな角度Δαだけずれている。同様に、ゼロ位置にある砲身の仰角λは、砲の仰角表示では0°とならず、僅かに0°からΔλだけずれている。ある場合においては、ΔαおよびΔλはゼロかもしれないが、このようなケースは、相異なる砲の幾何形状誤差が互いに補償し合っている場合のみに限られる。
【0004】
もし、個々の部品が常に、磨耗することのない、もしくは精確に調節可能なツールを用いて温度条件のような外的条件を同一にして、同じ機械で製作されるのならば、その一連の砲における個々の同一部品に関し、製作公差は等しくまたはほぼ等しくなる。しかしながら組み立て後では、砲の幾何形状誤差は砲ごとに異なるものとなる。
【0005】
砲の幾何形状誤差、特に角度の誤差は一定ではなく、むしろ別の理由によって変化するという点で、問題はさらに悪化している。そもそもそのような変化は、個々の可動部品に関せば磨耗の結果であるので、時間の経過とともに誤差は拡大する。しかしながら誤差の変化はまた、気温および砲温度といった環境条件とも関連があり、従って誤差は交互に拡大・縮小する。
【0006】
機械的負荷およびそれによる個々の部品の変形は部分的には位置に依存するので、砲の幾何形状誤差は個々の部品の位置からも影響を受けるという、厄介な問題が生じる。
【0007】
最終的には、特定の時間、特定の位置にある砲身に現われる、砲の幾何形状誤差は砲身を特定の位置へ向かわせる回転方向の関数であるとも言える。
【0008】
砲の幾何形状誤差は個々の砲を特徴付けるものであり、それ故に実際の砲のパラメータである。発射誤差および/または砲の正確度性能の低下は砲の幾何形状誤差の結果であり、特に角度の誤差の結果である。砲身の砲口と、砲身から発射された発射体が命中すべき標的との間の長い距離のために、砲身の僅かな角度のずれが攻撃すべき標的と発射体との間に著しいずれを生じさせる。
【0009】
もし、砲の幾何形状誤差および/または砲のパラメータを知っているのなら、照準値決定に際し砲に割り当てられたコンピュータソフトウェアで他のデータとともに検討され、誤差により発生する発射誤差は補正される。砲に割り当てられたコンピュータという概念は、砲のコンピュータ(gun computer)および/または発射制御装置のコンピュータを意味すると解されるべきである。コンピュータにて考慮されるべきその他のデータには、特に、標的の位置および運動に関する標的データ、各気象条件に関する気象データ、実際の砲口の速度と理論上決定されている砲口の速度とのずれに関するV0データ、および可能であれば、発射する各砲弾を特徴付けているシェル(shell)データが含まれる。
【0010】
砲の幾何形状誤差および/または砲パラメータ(gun parameter)の決定、補正関数算出のための計算、およびコンピュータのソフトウェアにおける補正関数の実行は砲が動作する前に行われなければならず、また砲ごとに個別に行われなければならない。
【0011】
以前より知られている砲パラメータ測定の方法には夥しい数の欠点がある。全ての種類の、砲の幾何形状誤差が計測されるのではない。計測は自動化された方法で行うことができず、それ故に、多大な時間を必要とし、結果、砲身の計測位置ごとに、僅かな計測しか行えず、その結果ランダムな計測誤差を消去し得なかった。計測は多大な時間を必要とするのみならず、多くの人員を必要とするので、非常に費用の嵩むものである。加えて、計測に従事する人員のうちの何人かは比較的甚大な危険に曝される。なぜなら彼らは計測を行うために砲口領域にいなければならず、大きな仰角および長い砲身であれば、それは計測にあたる人員がリフト装置を用いて砲口領域まで持ち上げられるか、または梯子に乗って計測をしなければならないということを意味するからである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、
砲の幾何形状誤差を完全に検出することが可能でありかつ精確、迅速、少数の人員、および好ましくは自動的に行われる、冒頭に記述した種類の発射誤差の補正の方法を示すこと、
上記方法を実施する装置を提案すること、
ならびに上記の新規な装置と接続されるべき、武器システムの発射制御コンピュータおよび/もしくはシステムコンピュータを提案すること、である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明により上記目的は達成され、
方法は請求項1に記載の特徴によって、
装置は請求項12に記載の特徴によって、
ならびに発射制御コンピュータおよび/もしくはシステムコンピュータは請求項17に記載の特徴によって、実現される。
【0014】
本発明による方法および本発明による装置の好ましい改善は各従属クレームによって定義される。
【0015】
本発明を用いて実現される有利な点は、本質的には以下の通りである。
砲の静的幾何形状誤差によって生じている、あらゆる角度の誤差が検出され、補正されること。
今までは多大な費用をかけて不正確にしか決定されなかった砲の静的幾何形状誤差が、今や正確に計測され、それと相応し効果的に補正されること。
ジャイロスコープによる計測システムの利用により、計測に先立って武器を水平にすることなく角度の計測を行えるようになったこと。
光−電子ジャイロスコープ、特にファイバ−光ジャイロスコープを使用することにより、以前から実行可能だった計測よりも正確性、信頼性、および再現性において、以前のそれを遥かに凌ぐ角度の計測を実行可能になり、以前から可能だった計測から得られる結果よりも、より詳細な結果が得られ、かくのごとく、砲の幾何形状誤差によって生じる発射誤差のより精確な補正が可能になったこと。計測が迅速にかつ自動的に行われるようになり、砲を計測するためにかかる費用と人員が少なくなり、大幅なコストの節約になっていること。
計測に参加している人に及ぶ事故の危険性が大きく減少したこと。
【0016】
以下で本発明に関する詳細な説明を展開する前に、幾つかの基本的な概念について説明する。
【0017】
方位同期誤差、仰角同期誤差、垂直オフセット誤差(perpendicular offset error)、揺動誤差(wobble error)、および斜視誤差(squint error)とそれらの補正のみが、以下に、より詳細に説明されているが、本発明の基本理念は、起こり得るあらゆる砲の幾何形状誤差に適用可能である。
【0018】
その位置が、砲の幾何形状誤差の影響を被る砲身は往復的旋回または完全な回転を通じて様々な位置に到達し、それぞれの位置は、対応する方位つまりは対応する横方向角度および対応する仰角つまりは対応する鉛直方向角度によって明確にされている。鉛直方向軸周りの回転によって方位が変化し、横方向軸周りの回転によって仰角が変化する。鉛直方向軸および横方向軸は、好ましくは直交する空間座標系の二軸であり、それら軸については表1にて定義する。本発明の枠組みにおいては、方位とは北とのずれを示すものではなく、発射動作におけるゼロ位置からのずれと解される。
【表1】
【0019】
砲身の実際の位置は設定値とは異なるため、発射誤差が生じる。設定値は、数ある中でもとりわけ、発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータが決定した方位および仰角の値で明確化されているのだが、砲の静的幾何形状誤差を想定したものではない。発生する砲身の位置の角度誤差、該誤差を生じさせる砲の幾何形状誤差、および砲の幾何形状誤差の主要な原因を表2に示す。方位誤差および仰角誤差として表される角度の誤差は、以下の五つの種類の誤差を有するが、それらは互いに独立したものではない。
(1) 方位同期誤差 Δα1
(2) 揺動誤差 Δτ
(3) 仰角同期誤差 Δλ
(4) 垂直オフセット誤差 Δα2
(5) 斜視誤差 Δσ
【表2】
【0020】
これら部分的な誤差を決定するために、複数の計測が行われる。手順を効率良くするためには、砲身の各位置において一よりも多くの種類の誤差に関する計測を行うので、三つの計測手順で計測を行うことが有利である。三つの計測手順、部分的な誤差、およびそれぞれで用いられる計測装置を表3に示す。
【表3】
砲の静的幾何形状誤差により生じる発射誤差を補正するために、手順は基本的には以下の通りである。一つの回転軸に関する砲身の運動の際に生じる角度誤差を決定している。砲身は、ゼロ位置から段階的に上述の回転軸周りを一つの回転方向に回転し、連続的に存在する計測位置を通り、それ自身もまた計測位置である最終位置に至る。その回転はコンピュータで制御されている。計測設備から適切な計測ユニットを使用し、各段階の後、砲身が回転した実際の角度を決定し、この角度を実値と呼ぶことにする。同時に、各段階の後でたとえば砲のスケールに示される情報または発射制御コンピュータおよび/もしくはシステムコンピュータに指示した情報に基づく砲身が回転すべき理論上の角度が決定され、この角を設定値と呼ぶことにする。各計測位置に関して、設定値と実値との角度の差を算出し、その差を誤差値と呼ぶことにする。補正値は誤差値から得られ、これは発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータのソフトウェアで実行され、照準値、つまりは方位および仰角の値、を決定する際に考慮される。照準値は主として標的データ、つまりは攻撃すべき標的の位置および可能性のある運動に関して記述されているデータ、ならびに射撃特性データ(ballistics data)を用いて算定される。この主要な計算を、本発明による方法によって補正する。
【0021】
特に、補正値の決定のためには実値が設定値の関数として表されてもよく、また補正値がそれから作成されてもよい。計測される角度の誤差に起因している補正値に関し、そのような作成過程は、数値的におよび/もしくは表計算によって(with tabular aids)、または数学的にもしくは数値的/数学的に協同して行われる。
【0022】
数値的手法に関しては、二つの値の対が表形式で記録され、その第一の値は設定値であり、第2の値は実値または各値の対における実値および設定値の差である。この値の対は、実験的誤差曲線ともみなされる。そして、表および/または実験的誤差曲線は、表および/または実験的誤差曲線を考慮して照準値の計算を補正するような方法で、照準値を計算することを可能にする。
【0023】
数学的方法に関しては、先ず誤差値が表形式で、設定角の関数および/または実験的誤差曲線として示され、少なくとも一つの数学的関数で近似、つまりは実験的誤差曲線の全体が単一の数学的誤差関数で近似されるかまたは各区分において部分的に数学的誤差曲線で近似され、全体として複数の部分的な数学的誤差関数で近似される。それから数学的誤差関数がコンピュータで取り扱い可能にされ、それから補正関数が決定され、砲身の照準値つまりは方位および仰角の算出の際に考慮される。
【0024】
数値的手法は、発射誤差の補正に必要な精度を確保するように計画される。しかし、以下に記すように数学的手法には、数学的誤差関数を単に解析すればよいという利点を有するが、特に周知の数学的手法を用いれば、単に発射誤差を補正するための値がそれから得られるのみならず、誤差関数に与える個々の組み立て条件(individual constructive conditions)の影響について見識を得、それにより組み立ての改善が、砲の幾何形状によって発生する発射誤差を最終的な解析においては根絶し、そして砲の幾何形状誤差が除去される。組み立て(constructive)の概念は、観念上の条件ならびに製作および組み立てに関する条件に関する。
【0025】
ランダム誤差を除去するために、上記の計測手順を一度または複数回にわたり繰り返して、表形式で得た値を平均化することは有効である。代わりに、平均実験的誤差曲線を、個別に行われた全ての計測手順から形成してもよく、または数学的誤差関数を個々の実験的誤差曲線から形成してもよく、平均数学的誤差関数はこれらの関数から形成してもよく、または補正関数は個々の実験的誤差曲線から形成してもよく、平均補正関数を全ての補正関数から形成してもよい。
【0026】
上記の計測に関しては、砲身の回転は常に同一の回転方向であり、この方法で得られる誤差値は単一方向で(mono-directionally)決定した誤差値であり、これらは数値的にまたは数学的に用意してもよい。特に、実験的誤差曲線および/または数学的誤差関数は、単一方向的に決定され、ならびに/または単一方向的誤差曲線および/もしくは誤差関数である。しかし、上記誤差値は上記のように、一般的には、数ある中でも、行われた回転の方向の関数である。従って二回計測を行うことが望ましい。本目的のため、砲身は同一の回転軸周りを第一の計測において一つの回転方向に回転し、第二の計測において反対方向に回転する。第一の回転における計測位置および第二の回転における計測位置は一致してよいが、一致しなければならないものではない。これらの回転の間に、第一方向の誤差値および第二方向の誤差値を得る。もし、第一方向と第二方向の誤差値のずれが小さいのであれば、自由方向性(direction-free)誤差値が得られ、および作成され、ならびに/またはさらに解析される。特に、第一方向実験的誤差曲線および第二方向実験的誤差曲線から平均自由方向性実験的誤差曲線が確立され、これより平均自由方向性数学的誤差関数を得、これより平均自由方向性補正関数が確立され、補正関数は照準値の算定に考慮される。しかしながら回転方向の影響は、誤差値全体に渡って系統だった誤差成分として現われるので、第一方向の誤差値および第二方向の誤差値は個別に作成および/または解析されることが望ましい。
【0027】
既に記したように、検出されるべき誤差によって、さまざまな計測装置が用いられる。特に、水準器、好ましくは電子式水準器およびジャイロスコープ計測システム、好ましくは光−電子ジャイロスコープ計測システムが用いられ、特にこれにはリングレーザジャイロスコープおよびファイバ−光学ジャイロスコープが含まれると解するべきである。上記計測装置は一般的に、砲および/または砲身に設置された後、計測手順を始める前に、目盛の調整を行わなければならない。ジャイロスコープ計測システムの使用に関しては、連続的に変化するジャイロスコープのドリフトも一般的には検出されなければならず、ジャイロスコープのドリフトに基づいて計測値を補正しなければならない。ジャイロスコープのドリフトの検出および考察の例はヨーロッパ特許出願第00126917.4号に記載されている。
【0028】
上記記述は補正関数の確立に関するもので、砲身の一つの軸周りの回転の間に生じる誤差値を検出することに基づいている。しかしながら、砲身は一軸の周りのみで回転するものではなく、非同時的に、一般的に直交する二つの軸の周りを回転する。第一軸は好ましくは鉛直方向軸Aであり、第二軸は好ましくは横方向軸Lである。方位αは鉛直方向軸Aの周りの回転と定め、仰角λは横方向軸Lの周りの回転と定めている。
【0029】
第一の計測手順において、方位同期誤差Δα1および揺動誤差Δτを得る。
【0030】
方位同期誤差Δα1を検出するために、砲身は仰角0°で段階的に変化させられる。数学的手法に関しては、確立された方位誤差は一般的に、正弦関数によって近似されるような方位誤差曲線をもたらし、砲身の360°の回転が正弦関数の一またはそれよりも多くの周期に対応している。ジャイロスコープ計測システムの第一計測ユニットが計測装置として用いられる。
【0031】
揺動誤差Δτも第一計測手順で検出される。この目的のため、方位同期誤差Δα1を検出するための砲身の回転が繰り返される。しかしながら、実際の方位と設定された方位および/またはそれらの差は検出および/または確立されていない。実際の砲身軸の水平との傾きを検出し、この傾斜角を実揺動角および/または実値と称する。この場合、計測手順が仰角0°で行われているので、設定揺動角および/または設定値と称する理論上の傾斜角は常にゼロである。従い、鉛直方向軸A周りの回転の際の揺動運動が検出される。しかしながら、0°ではない、一定の仰角で計測手順を踏むことも可能であり、そのような場合には、その設定揺動角は一定値、設定仰角に対応し、実揺動角が理論上の仰角からの実仰角のずれに対応する。水準器、好ましくは電子式水準器が計測システムとして使用される。
【0032】
仰角同期誤差Δλおよび垂直オフセット誤差Δα2は、第二の計測手順で決定される。
【0033】
仰角同期誤差Δλは二成分からなり、それらは一緒にのみ検出される。
【0034】
仰角同期誤差Δλの第一成分は―方位同期誤差と同様に―砲身の実際の角度が設定された角度と一致していないという事実に基づいている。仰角同期誤差Δλのこの成分を記述する部分的な誤差曲線および/または部分的な誤差関数は正弦関数の性質を有し、それは、場合によっては複数の角周波数を有している。
【0035】
仰角同期誤差Δλの別の成分は、砲身の重量により砲台にかかるトルクが仰角の増加に伴って減少するという事実に基づいており、このトルクは砲身を下方に回転させる傾向を有し、拘束位置(tied down position)にあるとき、例えば方位0°で低い仰角にあるとき、砲は前方に傾く傾向を有する。仰角の増加に伴うトルクの減少のため、砲が前方に傾きにくくなる結果、砲身が下方に引っ張られにくくなり、かつ/または、拘束位置にあるときと比較して砲は後方に傾く。仰角同期誤差のこの成分を記述する部分的誤差曲線および/または部分的誤差関数は、1から単一の角周波数を有する正弦曲線を引いた曲線の性質を有する。
【0036】
決定した仰角同期誤差を利用する第二の計測手順による計測は、検出された方位同期誤差を利用して行う計測手順と同じように行われる。数学的手法のために、本計測は仰角同期誤差の第一成分に対応する正弦関数のような誤差関数を与えるのだが、この正弦関数は水平方向に振動せず、仰角同期誤差の第二成分に対応している、1から余弦曲線を引いた、単調増加曲線の周りで振動する。二つの部分的誤差関数は数学的には分離されてもよい。結果のみが、特に、仰角同期誤差全体に関する補正が重要であるので、そのような分離を補正関数の計算のために行う必要はない。しかしながら、部分的誤差関数は、砲の構成、個々のアセンブリの温度依存性、磨耗、およびその他の誤差についてより明瞭に示しているので、部分的誤差関数はひょっとすると興味深いものかもしれない。ジャイロスコープ計測システムの第二計測ユニットがその計測に用いられる。
【0037】
垂直オフセット誤差Δα2もまた第二の計測手順で得られるものであり、これは仰角の軸Lと方位の軸Aは、望むようには直交しておらず、砲身の軸と仰角の軸Lは、望むようには直交していない。砲を水平にしたところで、仰角λの変化によって、方位αの誤差が生じる。垂直オフセット誤差Δα2は原則としては記述され、および/または、適切に補正され、そこでは本質的にλの正接関数およびλの逆余弦関数の和に比例する関数、特にΔα2=a×tan(α)+(b/cosλ)−bを用いて補正している。仰角90°または90°近傍において、(1/cosλ)は無限大となるので、この関数を基にした補正は明らかに破綻している。垂直オフセット誤差Δα2は、ジャイロスコープ計測システムの第一計測ユニットを用いて計測される。
【0038】
最後に、斜視誤差Δσが第三の計測手順で検出される。この誤差は砲身の軸と視線との非平行性を表している。斜視誤差Δσは、本発明による方法において、標準的な方法で確立され、作成されるので、ここではこれ以上詳細な記述はしない。
【0039】
さらなる本発明の特質および利点は、図および例を参照し、以下に記述する。
【0040】
例えば、方位または仰角の検出可能誤差は、その絶対値に照らせば小さいことが知られているので、関数の形状が明瞭に視認可能であるように、誤差曲線および誤差関数を示すダイアグラムにはスケールを付していない。
【0041】
【発明の実施の形態】
図1Aは武器システム10を概略的に示している。武器システム10は、砲身10.2、発射制御装置10.3、並びに発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータ10.4を備えた砲10.1を有する。武器システム10はまた、設定している砲身10.2の位置を検知するのに用いる設定値センサ10.5を有する。
【0042】
さらに、図1Aには、本発明による方法を実施するための装置20が示されている。装置20は、照準を合わせた後の砲身10.2の実際の位置を表している、実値を検知するための計測設備20.1およびコンピュータユニット20.2を有する。設定値センサ10.5は、一般に武器システム10の構成要素であるが、その機能はまた装置20に含まれてもよい。
【0043】
図1Bは、武器システム10の砲10.1を示しており、それには下方砲台(lower gun carriage)12、上方砲台(upper gun carriage)14、および砲身10.2が含まれる。下方砲台12は、水平支持面1に三本の脚部12.1、12.2、12.3を介して支持されている。図1Bにおいては、三軸からなる直交系も示されており、Aで示される鉛直軸、Lで示される横軸、Rで示される縦軸が示されている。砲身10.2は鉛直軸周りに回転して横方向各および/または方位αを変化させ、また横軸Lまわりに変化して鉛直角および/または仰角λを変化させる。
【0044】
計測設備20.1の構成要素である、光−電子ジャイロスコープ計測システム22は砲身10.2の砲口部領域に位置する。ジャイロスコープ計測システム22は、第一計測ユニットおよび/またはα−計測ユニット、並びに第二計測ユニットおよび/またはλ−計測ユニットを有し、砲身10.2の方位αおよび/または仰角λの変化による角度の変化を検知するのに使用する。
【0045】
後文において、第一計測手順にて、それぞれ個別の手順で検知可能である、方位同期誤差Δα1および揺動誤差Δτを補正する手順を記す。
【0046】
図2Aないし図2Cは、方位同期誤差Δα1に関する部分的手順に関する。図2Aにおいては、砲10.1は非常に簡略化されて平面的に示されている。砲身の軸の形に簡略化されて表されている砲身10.2はそのゼロ位置において実線で示され、その計測位置の一つにおいて破線でしめされており、それは、ゼロ位置と例えば20°の角度を構成する。砲身10.2はそのゼロ位置から、徐々に、例えば5°ずつ矢印D1の方向に、最終位置まで総計180°回転する。砲身10.2の回転は、発射制御コンピュータにより制御されている。計測位置それぞれは、対応する横方向角および/または対応する方位αによって決定される。個々の段階の後、理論的には砲身10.2は設定位置(intended position)にあり、これは対応する設定値および/または設定方位α1(theor)によって規定され、例えば砲10.1上に示されている。しかし実際には砲身は実位置(actual position)にあり、それは計測設備20.1のジャイロスコープ計測システム22のα−計測ユニットによって検出される実値(actual value)および/または実方位(actual azimuth)α1(eff)で示されている。個々の場合において、コンピュータユニット20.2は誤差値および/または誤差角を算出する。つまり、設定値α1(theor)と実値α1(eff)との偏差(deviation)を算出する。誤差値は、α1(theor)の関数として、第一方向実験的方位誤差曲線fα1(D1)1として示されている。この時点までの本方法の段階は、実方位および設定方位の検出におけるランダム誤差を除去するために可能な限りにおいて複数回にわたって繰り返される。このようにして、さらなる第一方向実験的方位誤差曲線、fα1(D1)2、fα1(D1)3、fα1(D1)iを得る。図2Bに示されているように、最終的に全ての第一方向実験的方位誤差曲線から平均第一方向実験的方位誤差曲線fα1(D1)を得る。続いて、上記本方法が繰り返し実施され、砲身10.2は逆方向、つまり矢印D2の方向に回転させられる。これにより、複数の第二方向実験的方位誤差曲線fα1(D2)1、fα1(D2)2、fα1(D2)3および図2Bに示す平均第二方向実験的方位誤差曲線fα1(D2)が得られる。次に、図2Bに示されている平均自由方向性実験的方位誤差曲線fα1(D0)が、平均第一方向実験的方位誤差曲線fα1(D1)および平均第二方向実験的方位誤差曲線fα1(D2)から計算される。図2Bに示されるように、平均自由方向性実験的方位誤差曲線fα1(D0)は方位同期誤差(azimuth synchronization error)Δα1であり、ほぼその形は2倍の角周波数を有する正弦曲線を描く。これは、横方向ピボット軸受けには僅かに楕円性が存在することを示している。数値的な手法において、平均自由方向性実験方位誤差曲線fα1(D0)および/またはこの曲線を決定している値のペアは、さらなる照準値(aiming value)の計算の際に発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータで利用することができる。数値的手法においても、全ての計測手順は同じように行われてよい。
【0047】
数学的手法においては、平均自由方向性実験的方位誤差曲線fα1(D0)は、数学的方位誤差関数Fα1として近似される。近似は各区間における数学的区分誤差関数により、その総体を数学的誤差関数とするか、または全体を単一の数学的誤差関数によって行われる。数学的誤差関数Fα1は、補正関数を作るために用いられ、これが他の有用なデータとともに照準値計算の過程で考慮される。システムコンピュータ10.4のソフトウェアにて補正関数が作成された後、チェックのために記述されている本方法のこれまでの段階を再び実行してもよく、このようにして規定された補正方位誤差曲線fα1(D0)korrは、無補正誤差曲線fα1(D0)よりも非常に平坦であり、それ故、本来の可観測の方位同期誤差は非常に小さな残留誤差にまで減少、および/またはほぼ完全に補正されている。
【0048】
上記の本方法の段階は別のシークエンスにおいて実行されてもよく、結果に顕著なまたは一切の影響を与えない。特に、第一方向実験的方位誤差曲線および第二方向実験的方位誤差曲線の計測を交互に行うことは時間の節約になる。
【0049】
より精確な結果を得るため、自由方向性方位誤差曲線fα1(D0)の作成を省いてもよく、これに代わって数学的方位誤差関数Fα1(D1)およびFα1(D2)を、第一方向実験的方位誤差曲線fα1(D1)および第二方向実験的方位誤差曲線fα1(D2)からそれぞれ決定し、それらから対応する補正関数を決定する。
【0050】
図3Aないし図3Cは、揺動誤差Δτに関する。砲身10.2は、仰角0°において理論上は水平方向を向き、つまり設定仰角(intended elevation)は0°でなければならない。実際には、砲身10.2は常に水平に対して僅かに傾斜しており、つまり、実際の仰角は0°ではなく、Δτだけ0°からずれている。角Δτは方位αの関数である。鉛直軸Aまわりの360°回転の間に、それ故砲身は揺動誤差関数で記述される揺動運動を起こす。揺動誤差を検出するため、砲身10.2は方位同期誤差Δα1の確立に使用したものと同じステップ幅で仰角なしで砲身10.2が動く。しかしながら、砲身10.2の実効傾斜度および/または揺動角は、各計測段階の後で検出され、これを砲身の揺動角τ(eff)としている。設定値および/または設定揺動角とみなされている、理論上の傾斜度および/または揺動角はゼロである。実値および/または実揺動角τ(eff)は、方位α(theor)の関数として表されてもよい。次に、平均実験的方位誤差曲線fα(D1)およびfα(D2)の決定と同じように、平均第一方向および平均第二方向実験的揺動誤差誤差曲線fτ(D1)およびfτ(D2)をそれぞれ決定する。最後に、これらより自由方向性実験的方位誤差曲線fτ(D0)が決定され、数学的揺動誤差関数Fτにより近似される。図3Aにおいては、決定されている複数の実験的揺動誤差曲線のうち二つの極端な揺動誤差曲線を示し、その間に全ての揺動誤差曲線が含まれており、曲線は互いに僅かしかずれていないことから、計測はかなり正確なものとわかる。揺動運動は正弦運動を行う。揺動運動を計測したデータの解析から、図3Bおよび図3Cに示されている結果を得る。故に揺動誤差には二つの原因があり、第一は方位下方砲台の方位依存性を有する剛性であり、それに起因した揺動誤差の成分は図3Bに示しており、第二は脚部による硬化の影響で、これもまた方位依存性を有しており、揺動誤差のこの成分は、図3Cに示す。図3Bおよび図3Cにおいては、揺動誤差の正値を実線にて、揺動誤差の負値を破線にて示す。
【0051】
次に、第二の計測手順により検出される、仰角同期誤差Δλの補償について記述する。仰角同期誤差Δλには二つの誤差成分が含まれている。両誤差成分は、計測設備20.1のジャイロスコープ計測システム22の第二計測ユニットおよび/またはλ−計測ユニットを用いることで、両誤差の和としてのみ検出可能である。従って、λは総仰角同期誤差Δλに関するデータおよび/もしくは関数を/に、参照しならびに/またはインデックスを付ける。この場合、仰角λは、方位αを固定した状態の砲身10.2を仮定して、砲身10.2の水平からの傾斜角と解される。仰角λは、水平位置つまり仰角0°、また垂直偏差も0°、からスタートして、例えば5°ずつのステップで最終位置、例えば85°、まで変化する。砲身10.2の運動はコンピュータにより制御されている。各ステップが終了の後、砲身10.2は計測位置にある。この場合、仰角は理論上、設定値および/または設定仰角λ(theor)と呼ばれる値であり、それは設定値センサ10.5によって示されている(indicated)。しかし、砲身10.2は別の位置にあり、それは実値および/または実仰角λ(eff)によって記されるものである。方位同期誤差に関する上記記述のように、λ(theor)とλ(eff)の差は、λ(theor)の関数に表されている。砲身10.2の回転は、両回転方向に関して複数回行われる。平均第一方向実験的仰角誤差曲線fλ(D1)および平均第二方向実験的仰角誤差曲線fλ(D2)は、この場合、記録されたデータより得る。自由方向性仰角誤差曲線fλ(D0)はそれらより得られ、それは図4Aにおいて実線で示されている。仰角λの増加に伴い、つまり砲身10.2の位置が連続的により急峻となるにつれて、仰角誤差曲線fλ(D0)は上昇している。そして、実験的仰角誤差曲線fλ(D0)は、数学的仰角誤差曲線Fλによって近似され、補正関数が決定されて、それが照準値の計算の際に考慮される。補正関数を考慮せずに計測を繰り返せば、補正された仰角誤差関数は補正を受けていない仰角誤差関数よりも、より平坦になる。
【0052】
計測では個別に検出できない仰角同期誤差Δλの誤差成分は、数学的仰角誤差関数Fλの数学的解析を用いて得られる。
【0053】
仰角同期誤差の第一誤差成分は、それだけでは、本質的には複数の角周波数(multiple angular frequencies)を有する正弦関数と一致する。
【0054】
仰角同期誤差の第二誤差成分は、単独では、fλ(D0)2であり、これは本質的には1から引いた余弦関数に従うもので、図4Aに破線にて示す。このことは以下の事実と一致している。仰角が増加するにつれ、砲身10.2の重量の作用線と横方向軸Lとの距離が減少するので、砲台上で砲身10.2の重量が発生するトルクが減少する。このトルクは、砲10.1を傾ける傾向、従って砲身10.2を前方へ送る傾向があり、このトルクの減少は、砲10.1が砲身10.2を前方に傾けることを少なくし、および/または総体的に後方に傾ける効果をもたらす。
【0055】
誤差成分の総和は、計測の結果である仰角誤差曲線fλ(D0)と一致する。このことは、増加曲線が第二誤差成分に対応し、その上の振動が第一誤差成分に対応することを表している。
【0056】
第二の計測の、仰角同期誤差Δλに関する上記計測は、方位αを固定して行われる。さらに複数の計測系(measurement series)を、さらに別の方位にて、それぞれにおいて方位を固定して行い、可能な固定方位の角度間隔は、例えば5°である。この場合も同様に、方位に対して二つの計測系で、それぞれ第一計測系に対しては第一回転方向で、第二計測系に対しては逆の回転方向で行うことが望ましい。図4Bは、仰角同期誤差Δλを、方位αの関数として様々の仰角λをパラメータに採用して空間的にパラメータを示した図であり、底面の曲線が最小の仰角に対応する。
【0057】
仰角同期誤差を補正するためのさらなる段階は、上記方位同期誤差の補正と同じように行われる。
【0058】
方位同期誤差の補正に関する上記記述のように、個々の計測および解析の手順において、少なくとも部分的に異なった、結果には影響を与えない手続きで行われてもよい。
【0059】
垂直オフセット誤差Δα2は、第二計測の手順で決定される。このために、それぞれの計測位置において、λ−計測ユニットの助けを借りて仰角同期誤差Δλを決定し、垂直オフセット誤差Δα2は、α−計測ユニットの助けを借りて決定される。図5は垂直オフセット誤差を仰角λの関数として示している。破線にて示されている実験的垂直オフセット誤差曲線fα2は、実線で示された数学的垂直オフセット誤差関数Fα2によって、例えば2次オーダの多項式で近似してよい。
【0060】
垂直オフセット誤差Δα2の検出および補正は、上記の方位同期誤差Δα1の補正と同様に行われる。
【0061】
最後に、第三の計測手順が、斜視誤差Δσの補正を行う手順を用いて実行される。斜視誤差Δσは、砲身の軸の方向性と砲の視線(line of vision)との不一致の為に生じ、むしろ両者によって斜視角を構成する。斜視誤差の決定の為に、砲身の軸と視線を延伸し、砲身の砲口からある程度距離をとって表示する。例えば、投射によって砲身の軸と視線を点として表示する。二点のずれを斜視誤差として計測され、砲身−投射面間距離もこの誤差を決定する上で考慮されなければならない。斜視誤差を決定する本方法は、新規なものではなく、砲の静的幾何形状誤差により生じる発射誤差を完全に補正するには斜視誤差も考慮しなければならないので、それを補助する目的でのみ、記載している。
【0062】
上記記述は主に本発明による方法に関するもので、以下、本方法の実施に用いる装置に関しより詳細に記述する。
【0063】
この新規な方法は、図1Aに示されているような、武器システム10に関する新規な装置を用いて実施されることをここに再度注記する。武器システム10は、少なくとも一つの砲身10.2を有し、その運動は砲のサーボモータを用い、標準的な方法で制御されている。さらには、武器システム10は、発射制御装置10.3を有する。武器システムには、システムコンピュータおよび/または発射制御コンピュータ10.4も含み、これは発射制御装置10.3の上にあり、また少なくとも部分的には砲10.1の上にある。武器システム10は標準として設定値センサ10.5を有し、これが設定値を示し、特にシステムコンピュータ10.4にて決定された砲身10.2の照準の設定値を表す方位αおよび仰角λを示す。
【0064】
この新規な方法を実施するにあたり、複数の構成要素が必要とされており、これらを以下に記す。
【0065】
第一の構成要素は設定値センサ10.5より構成され、これは設定値を示す目的で使用され、設定値および/または想定されている砲身の位置を示す。武器システム10上の設定値センサはいかなる場合においても、設定値センサとして使用される。
【0066】
この新規な装置の第二の構成要素は、計測設備20.1により構成され、砲身10.2の実際の位置を示す実値を検出するために用いられる。計測設備20.1は、少なくとも光−電子ジャイロスコープ計測システム22.1を有し、それは例えばファイバ−光計測システムである。ジャイロスコープ計測システム22.1は、少なくとも第一および/またはα−計測ユニットを有し、それが砲身10.2の角度の変化、望ましくは方位αを検出する。望ましくは、ジャイロスコープ計測システム22.1は、砲身10.2の仰角λの変化を検出するための第二および/またはλ−計測システムユニットも有している。
【0067】
本発明の枠組みにおいて、光−電子ジャイロスコープ計測システムにはファイバ−光計測システムのみが含まれるのではなく、他の計測システム、例えばリングレーザジャイロスコープ計測システムが含まれると解されるべきである。ジャイロスコープ計測システムは、一般に独立的に(autonomously)動作する利点を有し、それ故、システムの外部と利用関係を持たなくてよいのである。砲が別個の計測ステーション(mesurement station)を組み込む必要はない。しかし、システム外部と関係(reference)を持たないので、やがてシステムは一般的には、浮動的になる。本ケースにて現われるジャイロスコープの浮動性は計測されなければならず、計測結果の解析において考慮されなければならない。このことに関連して、レーザーポジショニングシステムが使用される。
【0068】
より完全に砲の静的幾何形状誤差を検出するために、それ故これらに起因する発射誤差をより精確に補正するために、新規な装置の第二の構成要素、つまり計測設備20.1もさらなる誤差、特に揺動誤差Δτおよび斜視誤差Δσを検出するための計測システムを有することが望ましい。
【0069】
揺動誤差Δτを検出するために、ジャイロスコープによる計測システム22.1に加えて、標準的な、好ましくは電子的な水準器の構成を有するさらなる計測システム22.2を使用する。この水準器が水平となす角度を計測する。本模範的実施形態においては、砲身軸と水平のそれぞれの角度をけて決定する。電子的水準器は、水平角つまり水平と成す角を計測し、その角度に関連した電気信号を出力する。本計測においては重力の効果を用いており、これにより鉛直および水平も規定する。
【0070】
砲10.1の傾きも電子水準器によって決定されることをここに注記しておく。傾きとは以下のように解するべきである。もし砲身10.2が方位に関してのみ移動するなら、砲身の砲口の運動は、平面を規定する円形であると近似的にみなせる。この平面と水平面がなす角度を傾きと呼ぶ。換言すれば、傾きがなければ、この平面は水平面である。一般に、新しい砲においては、傾きは自動的に補正され、および/または砲が自動的に水平になる。しかし、砲を水平にすることは本方法を実施する上では必要というわけではない。
【0071】
斜視誤差Δσを検出するために、ジャイロスコープによる計測システム22.1および電子的水準器22.2に加えて、標準的な、好ましくは光学式の、装置で構成されるさらなる計測システム22.3が用いられる。本装置が砲身軸と砲10.1の視線との間の角度のずれを計測する。
【0072】
コンピュータは、本方法を実施するための第三の構成要素として必要である。図1Aに示されているように、コンピュータは別個のコンピュータユニット20.2として導入され、専ら本方法または他の目的のためだけに使用され、その目的のみのために武器システム10と接続されている。しかし、武器システム10の発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータ10.4を、本コンピュータとして使用することも可能である。
【0073】
本装置の第三構成要素、本ケースにおけるコンピュータユニット20.2は、データ入力体および/またはデータインターフェースを有し、これを介して少なくとも検出した設定値および実値のデータが入力される。データは、どのような望ましい適切な方法であっても、コンピュータユニット20.2で利用可能であればよく、例えばディスケットのようなデータ運搬体によっても、またデータ回路を介してでもよく、その有形無形は問わない。
【0074】
もし、発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータ10.4が上記コンピュータとして用いられるのであれば、該コンピュータは既に設定値を承知しており、実値はデータ入力体および/またはデータインターフェース24を介して利用可能である。
【0075】
本装置の第三構成要素、本ケースにおけるコンピュータユニット20.2にはさらに、設定値および実値から補正値を決定するため、ソフトウェアが導入される。この場合に実行される段階に関しては、上記にて、本発明による方法に関連してより詳細に記述している。
【0076】
もし、発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータ10.4が、上記コンピュータとして用いられるのであれば、算定された補正値は、発射制御のソフトウェアにて、直ちに実施される。
【0077】
もし、発射制御コンピュータおよび/またはシステムコンピュータが、上記コンピュータとして用いられないで、別個のコンピュータユニット20.2が用いられれば、算定された補正値はデータ入力体および/またはデータインターフェース24を介して発射制御コンピュータおよびまたはシステムコンピュータ10.4にて利用可能とし、コンピュータの発射制御ソフトウェアで実施される。
【0078】
第三の構成要素、つまりコンピュータは、特に、別個のコンピュータユニット20.2で構成されている場合、好ましくはキーボードのような入力ユニット20.3を有し、それを介してさらなるデータを利用可能にしている。このことには、例えば本方法の進行を制御するデータ、つまり、それはとりわけサーボモータによる計測位置への砲身の段階的な回転(step-by-step rotaion)を制御し、使用される各計測システムおよび/または計測ユニットの接続を制御する。
【0079】
【発明の効果】
本発明を用いて実現される利点は、本質的には以下の通りである。
砲の静的幾何形状誤差によって生じている、あらゆる角度の誤差が検出され、補正されること。
今までは多大な費用をかけて不正確にしか決定されなかった砲の静的幾何形状誤差が、今や正確に計測され、それと相応し効果的に補正されること。
ジャイロスコープによる計測システムの利用により、計測に先立って武器を水平にすることなく角度の計測を行えるようになったこと。
光−電子ジャイロスコープ、特にファイバ−光ジャイロスコープを使用することにより、以前から実行可能だった計測よりも正確性、信頼性、および再現性において、以前のそれを遥かに凌ぐ角度の計測を実行可能になり、以前から可能だった計測から得られる結果よりも、より詳細な結果が得られ、かくのごとく、砲の幾何形状誤差によって生じる発射誤差のより精確な補正が可能になったこと。
計測が迅速にかつ自動的に行われるようになり、砲を計測するためにかかる費用と人員が少なくなり、大幅なコストの節約になっていること。
計測に参加している人に及ぶ事故の危険性が大きく減少したこと。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 本発明による装置を有する武器システムの概略図である。
【図1B】 直交系を示す三軸と図1Aに示す武器システムの簡略図である。
【図2A】 方位同期誤差を説明するための概略図である。
【図2B】 実験による方位同期誤差の誤差曲線の図である。
【図3A】 実験による揺動誤差の誤差曲線の図である。
【図3B】 実験による、揺動誤差の誤差曲線の下方砲台から生じる誤差成分のみを示す図である。
【図3C】 実験による、揺動誤差誤差曲線の脚部から生じる誤差成分のみを示す図である。
【図4A】 実験による、一定方位からの仰角同期誤差の誤差曲線の図である。
【図4B】 様々な仰角をパラメータにとり、方位の関数として仰角同期誤差を示す図である。
【図5】 垂直オフセット誤差の、実験的誤差曲線および数学的誤差関数の図である。
【符号の説明】
10 ・・・ 武器システム
10.1 ・・・ 砲
10.2 ・・・ 砲身
10.3 ・・・ 発射制御装置
10.4 ・・・ コンピュータ
10.5 ・・・ 設定値センサ
20.1 ・・・ 計測設備
20.2 ・・・ コンピュータ
20.3 ・・・ 入力ユニット
Claims (17)
- 砲身(10.2)の照準を照準値に合わせたときの前記砲身(10.2)の位置に影響が及ぶ、砲の静的幾何形状誤差に起因する、前記砲身(10.2)を有する前記砲の発射誤差を補正する方法であって、
前記砲身(10.2)を、軸(A、L)周りの回転によって段階的に計測位置に到達させる段階、
前記計測位置それぞれにおいて、前記砲身(10.2)の設定位置を示す設定値および前記砲身(10.2)の実際の位置を示す実値を検出し、誤差値として、前記実値と前記設定値の差を計算する段階、
複数の前記誤差値をもとに補正値を確立する段階、および、
後の砲身(10.2)の照準の際に前記補正値を考慮する段階を有し、
前記砲の前記静的幾何形状誤差は、方位同期誤差(Δα1)、垂直オフセット誤差(Δα2)、仰角同期誤差(Δλ)、揺動誤差(Δτ)、および、斜視誤差(Δσ)、の少なくとも1つを含む、方法。 - 補正値を求めるために、
補正値は実験的に示され、実験的に示されている誤差値が数学的誤差関数によって近似され、後の砲身(10.2)の照準値の計算で考慮される補正値が数学的誤差関数によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 補正値が補正関数の形で決定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 第一計測ユニットを含む、光−電子ジャイロスコープ計測システム(22.1)を有する計測設備(20.1)を、検出された方位同期誤差(Δα1)および/または垂直オフセット誤差(Δα2)を用いて、実値の検出に用いることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 第二計測ユニットを含む、光−電子ジャイロスコープ計測システム(22.1)を有する計測設備(20.1)を、検出された仰角同期誤差(Δλ)を用いて、実値の検出に用いることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
- 好ましくは電子的な、水準器を備えた計測システム(22.2)を有する計測設備(20.1)を、検出された揺動誤差(Δτ)を用いて、実値の検出に用いることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
- 斜視誤差(Δσ)を検出する装置を備えた計測システム(22.3)を有する計測設備(20.1)を、実値の検出に用いることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
- 設定値および実値をコンピュータ(20.2、10.4)で利用可能にし、それらによって補正値および/または補正関数が決定されることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
- 砲身(10.2)の照準を定めるための照準値を算出する際に使用される補正値が、砲(10.1)に配されているシステムコンピュータ(10.4)に記録されていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
- 計測位置へ向かう回転の間に、砲身(10.2)は砲(10.1)の鉛直軸(A)周りを回転し、好ましくは砲(10.1)の横方向軸(L)の周りも回転することを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
- 光−電子ジャイロスコープ計測システム(22)を用いて実値を検出する際に、時間的な間隔をおいてまたは連続的にジャイロスコープ計測システム(22)のジャイロスコープのドリフトを割り出し、検出された実値に考慮することを特徴とする、請求項4または5のいずれかに記載の方法。
- 砲身(10.2)の照準を計算によって求めた照準値に合わせたときの前記砲身(10.2)の位置に影響が及ぶ、砲の静的幾何形状誤差に起因する、前記砲身(10.2)を有する前記砲の発射誤差を補正する装置であって、
前記砲身の位置を示す、実値を得るための計測設備(20.1)を有し、
該計測設備(20.1)は前記砲身(10.2)に光−電子ジャイロスコープ計測システム(22.1)を備え、
該光−電子ジャイロスコープ計測システムは方位同期誤差(Δα1)および垂直オフセット誤差(Δα2)を検出するための第一計測ユニットを備え、
前記砲の前記静的幾何形状誤差は、方位同期誤差(Δα1)、垂直オフセット誤差(Δα2)、仰角同期誤差(Δλ)、揺動誤差(Δτ)、および、斜視誤差(Δσ)、の少なくとも1つを含む、装置。 - 上記光−電子ジャイロスコープ計測システム(22.1)が、仰角同期誤差(Δλ)を検出するための第二計測ユニットを有することを特徴とする、請求項12に記載の装置。
- 計測設備(20.1)が、揺動誤差(Δτ)を検出するための、好ましくは電子式の水準器を備えた計測システム(22.2)および/または斜視誤差(Δσ)を検出するための、好ましくは光学式の装置を備えた計測システム(22.3)を有していることを特徴とする、請求項12または13のいずれかに記載の装置。
- 設定されている砲身(10.2)の位置を示す設定値を得られるようにする設定値センサ(10.5)と、実値を得られるようにする計測設備(20.1)が入力側に接続され、
発射誤差を補正するために砲身(10.2)の照準値を計算する際に考慮するための、設定値および実値に基づく補正値の計算を目的として導入され、かつ、
補正値を示すデータをシステムコンピュータ(10.4)で利用可能とするために出力側でシステムコンピュータ(10.4)に接続されている、コンピュータユニット(20.2)を有することを特徴とする、請求項12ないし14のいずれかに記載の装置。 - コンピュータユニット(20.2)が、データ入力のための入力ユニット(20.3)を有することを特徴とする、請求項15に記載の装置。
- 武器システム(10)に含まれる砲(10.1)の砲身(10.2)の照準を定めるための照準値を計算する、前記武器システム(10)に含まれるコンピュータであって、
データ入力部を有し、
前記データ入力部を通じて入力されたデータを用いて、前記砲の静的幾何形状誤差に起因し、前記砲身(10.2)の照準を照準値に合わせたときの前記砲身(10.2)の位置に影響が及ぶ前記砲身(10.2)を有する前記砲の発射誤差を補正した照準値を算出し、
前記砲の前記静的幾何形状誤差は、方位同期誤差(Δα1)、垂直オフセット誤差(Δα2)、仰角同期誤差(Δλ)、揺動誤差(Δτ)、および、斜視誤差(Δσ)、の少なくとも1つを含む、前記武器システム(10)に含まれるコンピュータ。
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