JP4248076B2 - 表皮付き発泡複合体及びその製造方法 - Google Patents

表皮付き発泡複合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,表皮付き発泡複合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来,ポリオレフィン等の発泡成形体の表面に表皮シートを被覆した表皮付き発泡複合体が知られている。
この表皮付き発泡複合体は,軽量,高強度,断熱性,耐水性等に優れ,建材,自動車,航空機,家電等の分野で多用されている。
そして,上記表皮付き発泡複合体は,従来,例えばブロー押出機を用いて筒状のパリソンを形成し,このパリソンの中に発泡成形体を挿入配置して,成形型により成形する方法が採用されている。また,上記成形に当っては,パリソンと発泡成形体とを熱融着させている。
【0003】
【解決しようとする課題】
しかしながら,この方法では,パリソンの押出後に早急に発泡成形体の挿入配置,成形型による成形をする必要があり,成形操作が煩雑である。また,筒状のパリソンの中に発泡成形体を挿入配置する操作が困難である。
また,表皮シートとなるパリソンと発泡成形体とは熱融着させるが,成形時に表皮シートが熱融着に必要な高温状態に維持されていないと,表皮シートと発泡成形体との密着性が低下し,両者間に空洞を生ずることもある。
【0004】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑み,成形操作が容易であると共に発泡成形体と表皮シートとの密着性に優れた表皮付き発泡複合体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,減圧可能な上型と下型とを有する成形型を用い,加熱した熱可塑性樹脂の表皮シートにより熱可塑性樹脂の発泡成形体の外周を被覆して,表皮付き発泡複合体を製造する方法であって,
上記表皮シートは上側シートと下側シートとを用い,両者を張架した状態で両者の間に間隙を置いて,側面に支持用突起部を有する上記発泡成形体を,上記支持用突起部を支持して挿入配置し,
次いで,上記上型と下型とを用いて,加熱状態にある上記上側シート及び下側シートを上記発泡成形体の外周に被覆すると共に該上型及び下型により上記発泡成形体の周縁部を上側シート及び下側シートと共に減圧しながら挟圧し,かつ上記上型と下型にて真空成形することを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法にある。
【0006】
本発明において最も注目すべきことは,熱可塑性樹脂の発泡成形体の外周に熱可塑性樹脂の表皮シートを被覆するに当り,表皮シートとしての上側シートと下側シートとの間に間隙を置いて発泡成形体を挿入配置し,次いで上型と下型を閉じて加熱状態にある上側シート及び下側シートを発泡成形体の外周に被覆すると共に発泡成形体の周縁部を上側シート及び下側シートと共に挟圧すること,そして成形に当っては真空成形を行なうことである。
【0007】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明においては,上側シートと下側シートとの間に間隙を置いて発泡成形体を挿入配置する。この挿入配置は,上側シートと下側シートの間に発泡成形体を挿入すること,或いは発泡成形体の上下に上側シートと下側シートを配置することなど,両者を横方向に相対的に移動配置することにより行なう。
【0008】
次いで,上型を上側シートの上方から,下型を下側シートの下方からそれぞれ近付けて,型締めを行なっていく。この型締めにより,上側シート,下側シートは発泡成形体の上下の表面に接触し,更に発泡成形体の側面にも接触し,発泡成形体は上側シートと下側シートによってその外周が被覆される。
ここに重要なことは,上記上側シート,下側シートは上記型締めに先立って,予め加熱されていることである。この加熱は,例えば電気ニクロム線ヒータ,遠赤外線ヒータなどにより行なう。
【0009】
そして,上記発泡成形体の外周を被覆した,上側シート,下側シートは,上記の加熱状態と上記上型,下型の型締め圧力とによって,発泡成形体の表面に熱融着する。
また,上記型締めの最終時点においては,発泡成形体の周縁部を上側シート及び下側シートと共に挟圧する。また,上型と下型の型面を減圧状態として,真空成形する。
【0010】
上記のごとく,本発明においては,上下に配置した上側シートと下側シートの間に,横方向から,相対的に発泡成形体を挿入配置する。そのため,発泡成形体の挿入配置が容易であり,その成形操作が容易である。
また,上側シート,下側シートは,成形に先立って,成形時に発泡成形体と充分に熱融着できる温度に加熱しておき,また成形は上記のごとく真空成形を行なう。
【0011】
そのため,表皮シートと発泡成形体との密着性が高く,更に表皮付き発泡複合体における表皮シートの表面の外観性が向上する。
したがって,本発明によれば,成形操作が容易であると共に発泡成形体と表皮シートとの密着性に優れた表皮付き発泡複合体の製造方法を提供できる。
【0012】
次に,請求項2の発明のように,上記発泡成形体の周縁部を上側シート及び下側シートと共に挟圧すると共に,発泡成形体の周縁部を挟圧して該周縁部における上側シートと下側シートとを熱融着することが好ましい。
この場合には,発泡成形体の全ての周縁部において上側シートと下側シートとが互いに熱融着し,発泡成形体の全外周が表皮シートによって被覆された表皮付き発泡複合体を得ることができる。
【0013】
次に,請求項3の発明のように,上記上側シート及び下側シートの加熱は,両者の間に上記発泡成形体を挿入配置する以前,挿入配置した以後,または挿入配置しながら行なうことが好ましい。
【0014】
そして,発泡成形体を挿入配置する前に上側シート,下側シートを加熱する場合には,両者の間に発泡成形体が介在しないので,上記加熱操作が容易である。本方法は,採用する表皮シートの加熱によるドローダウンが比較的大きい場合に最適である。目安として,該表皮シートが0.5〜2.5mmの薄肉であり,該発泡成形体の密度も0.02〜0.05g/cm3と低く,また製品のサイズとしては,長さ400mm以下,幅300mm以下,厚み30mm以下で,比較的,表面形状の凹凸が小さい製品の成形に適している。
【0015】
また,発泡成形体を挿入配置した以後に上記加熱をする場合には,即に発泡成形体が挿入配置されているので,加熱された上側シートが発泡成形体の上方へ若干垂れを生じても支障がない。また,上記加熱時に,発泡成形体の表面も若干加熱されるので,発泡成形体と表皮シートとの密着性が高くなる。
【0016】
この方法は,採用する表皮シートの加熱によるドローダウンが比較的小さい場合に最適である。目安として,該表皮シートが2.5〜5.0mmの厚肉であり,該発泡成形体の密度も0.05〜0.10g/cm3と高く,また製品のサイズとしては,長さ400mm以上,幅300mm以上,厚み30mm以上で,比較的,表面形状の凹凸が小さい製品の成形に適用できる。
【0017】
また,上側シート及び下側シートを加熱しながら,その間へ発泡成形体を挿入配置する場合には,両操作を併行して行なうので,生産速度が高い。
この方法は,採用する表皮シートの加熱によるドローダウンが中位である場合に最適である。
目安として,該表皮シートの厚みが2.5mmであり,該発泡成形体の密度が0.05g/cm3で,また製品のサイズとしては,長さ400mm,幅300mm,厚み30mm前後である。また,この場合は,表皮シートと発泡成形体との加熱時間をそれぞれ別個に設定できるため,表面形状で比較的凹凸は小さいが,複雑な形状の製品の成形に適用できる。
【0018】
次に,請求項4の発明のように,上記上側シート及び下側シートの加熱は,これらシートの融点よりも10℃低い温度以上に,又はこれらシートの軟化点よりも30℃以上高い温度に加熱することが好ましい。
この場合には,表皮シートと発泡成形体との熱融着による密着性が高くなる。
【0019】
ところで,上記上側シート,下側シートに用いる樹脂としては,結晶性樹脂と非晶性樹脂とがある。
そこで,上記加熱を行なう場合,その温度の基準は,結晶性樹脂については,融点が,一方非晶性樹脂については軟化点がその目安となる。従って,上記の「上側シート及び下側シートの加熱は,その融点よりも10℃低い温度以上に加熱する」とは,例えば,結晶性樹脂であるポリプロピレン樹脂の場合,融点が160〜170℃であれば,その時の加熱温度は150〜160℃以上のことをいう。
同様に「軟化点よりも30℃以上高い温度に加熱する」とは例えば,ABS樹脂のような非晶性樹脂でその軟化点が100〜120℃であれば,その時の加熱温度は130〜150℃以上のことをいう。
【0020】
次に,上記の上側シート及び下側シートは,その融点よりも10℃低い温度以上で加熱する。上記10℃以上低い温度では,上記密着性が充分でないおそれがある。
なお,上限は融点よりも50℃高い温度である。この温度を越えると上側シート,下側シートがドローダウン(垂れ下がり)し,複合体表面の外観性が低下するおそれがある。
【0021】
また,上記の上側シート及び下側シートは,その軟化点よりも30℃以上高い温度に加熱した場合には,上記密着性が高くなる。なお,その上限は,軟化点よりも100℃以上高い温度である。これを越えると,上側シート,下側シートが,過度に軟化してドローダウン(垂れ下がり)し,型締め前に上側シートが発泡成形体に接触し,表皮付き発泡複合体の表面の外観性が低下するおそれがある。
【0022】
次に,請求項5の発明のように,上記上側シート及び下側シートと,上記発泡成形体とは同系統の熱可塑性樹脂により構成されていることが好ましい。
この場合には,表皮シートと発泡成形体との密着性及びリサイクル性が更に向上する。
【0023】
また,上記同系統の熱可塑性樹脂の例としては,例えば,次のものがある。
[表皮シート] ・・・ [発泡成形体]
ABS樹脂 ・・・ 発泡ABS樹脂,発泡ポリスチレン樹脂
ポリプロピレン樹脂 ・・・ 発泡ポリプロピレン樹脂
高密度ポリエチレン樹脂 ・・・ 発泡ポリエチレン樹脂
ポリスチレン樹脂 ・・・ 発泡ポリスチレン樹脂,発泡ABS樹脂
【0024】
次に,請求項6の発明のように,上記成形前の発泡成形体の厚みT,上型と下型とを閉止したときの成形キャビティの高さをH,上記上側シート及び下側シートのそれぞれの厚みをSとしたとき,
関係式 T=(H−S×2)/K
における係数Kは0.6〜1.2であることが好ましい。
【0025】
上記のKが0.6未満では,発泡成形体の肉厚が成形キャビティの高さより厚すぎて型締め圧力により,発泡成形体を大きく圧縮することになり,発泡成形体の密度が上がってしまう問題がある。
一方,Kが1.2を越えると,発泡成形体の肉厚が成形キャビティの高さに対し,薄すぎて,成形中の加熱温度により発泡成形体を更に発泡させても,金型との界面に空隙が生じ,そのため製品表面の一部に「ひけ」や「凹み」が発生し,賦形させることが困難である。
【0026】
なお,上記係数Kが1.0を越える場合は,成形キャビティの高さより,上側シートと下側シート及び発泡成形体とを合わせた肉厚の方が小さいため,それらの間に間隙が生じる。
このため,加熱により,該間隙以上の肉厚になるような発泡力を有した発泡成形体を用いることが好ましい。
【0027】
次に,請求項7の発明のように,上記発泡成形体の密度は0.02〜0.10g/cm3,上側シート及び下側シートの厚みは0.5〜5mmであることが好ましい。
この場合には,より優れた密着性が得られると共に表皮付き発泡複合体の軽量化を図ることができる。
【0028】
発泡成形体の密度が0.02g/cm3未満の場合には,強度が低下するおそれがある。一方0.10g/cm3を越えると,重量が大きくなり,成形サイクルも長くなり,コストアップになるおそれがある。
【0029】
また,表皮シートである上側シート,下側シートの厚みが0.5mm未満の場合には,強度が低下するおそれがある。一方,5mmを越えると,重量が大きくなり,成形サイクルも長くなり,コストアップになるおそれがある。
【0030】
次に上記発泡成形体はその側面に支持用突起部を有し,該支持用突起部を支持して,該発泡成形体を上記上側シートと下側シートの間に挿入配置することが好ましい。
この場合には,上記支持用突起部を支持して発泡成形体を上側シートと下側シートの間に挿入配置するので,発泡成形体の挿入配置が容易である。また,成形型の型締めの際にも,発泡成形体を所望位置にズレなく配置保持することができる。
【0031】
上記支持用突起部は,上記上型及び下型による上記挟圧の際に薄いソリッド状態になし,上記上側シートと下側シートとの間に挟まれた形態で熱融着することが好ましい。
この場合には,上記支持用突起部は,上側シート,下側シートと三者一体に熱融着され,その部分の強度が向上する。
【0032】
また,成形時においては,加熱された表皮シートが成形型による成形前に発泡成形体と接触し,加熱軟化した表皮シートが変形することを防止するため,挿入する発泡成形体は,相対する上側シートと下側シートの中央付近,つまり表皮シートと発泡成形体とが触れない位置にセットする必要がある。
【0033】
その対策としては,例えば,発泡成形体の側面に,板状あるいは翼状の突起体などの支持用突起部を設け,それらを少なくとも2箇所以上でピストン等の支持具により押圧保持しながら発泡成形体を挿入配置する方法がある。
あるいは,成形型の両サイドに設置した支持具等に載置しながら成形型へ移動できるような形状の支持用突起部を発泡成形体に形成しておく。これにより,発泡成形体と表皮シートとの接触防止はもちろんのこと,発泡成形体を成形型周縁部の,成形型の挟圧に支障をきたさず,正確な位置にセットすることが可能となる。
【0034】
上記支持用突起部は,成形前は発泡成形体と同一密度,例えば0.02〜0.10g/cm3で,厚みは1〜10mmとすることが好ましい。
成形後,成形型パーティングラインよりはみ出た前記支持用突起部をトリミングすれば,上側シートと下側シート及びそれらの間の薄いソリッド状突起部との間は,三者一体となった熱融着により高い強度を有する。
【0035】
次に,被覆成形は,外観的に最も優れるため,主として真空成形を行なうことが好ましいが,他に圧空・真空−圧空の併用も適用可能である。
【0036】
次に,請求項8の発明のように,熱可塑性樹脂よりなる発泡成形体の外周に,上側シートと下側シートとよりなる表皮シートを被覆してなる表皮付き発泡複合体であって,
該表皮付き発泡複合体を製造する際に用いた,上記発泡成形体の側面に設けた支持用突起部が,ソリッド状態をなし,上記上側シートと下側シートとの間に挟まれた形態で熱融着されており,
上記発泡成形体の密度は0.02〜0.10g/cm3,上側シート及び下側シートの厚みは0.5〜5mmであることを特徴とする表皮付き発泡複合体にある。
【0037】
この場合には,上記請求項7に示したように,より優れた密着性が得られると共に軽量の表皮シートを得ることができる。
【0038】
次に上記表皮付き発泡複合体を製造する際に用いた,上記発泡成形体の側面に設けた支持用突起部が,ソリッド状態をなし,上記上側シートと下側シートとの間に挟まれた形態で熱融着されていることが好ましい。
この場合には,上側シートと下側シート及びそれらの間のソリッド状突起部との間は,三者一体となった熱融着により高い強度を有する。
【0039】
本発明により得られる表皮付き発泡複合体は,例えば,建材分野における壁,床,天井材等,自動車,航空機,船舶分野における各種パネルや棚板,シートバック材等,家電分野における各種内装,パネル材等,事務機器分野におけるパーテーションパネル,机の天板等に用いられる。
【0040】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる表皮付き発泡複合体の製造方法につき,図1〜図5を用いて説明する。
まず,本例の製造方法において得ようとする表皮付き発泡複合体10は,図5に示すごとく,発泡成形体1と,その外周を被覆した表皮シート2とよりなる。表皮シート2は,上側シート21と下側シート22とからなり,両者は表皮付き発泡複合体10の側面中央部において熱融着部25を形成している。この熱融着部25は,表皮付き発泡複合体10の周囲に環状に形成されている。
【0041】
次に,上記製造方法は,図2〜図4に示すごとく,減圧可能な上型31と下型32とを有する成形型3を用い,加熱した熱可塑性樹脂の表皮シートにより熱可塑性樹脂の発泡成形体1の外周を被覆して,表皮付き発泡複合体10を製造する方法である。
上記表皮シートは上側シート21と下側シート22とを用い,両者を張架した状態で両者の間に間隙を置いて上記発泡成形体1を挿入配置する。
【0042】
次いで,上記上型31と下型32とを用いて,加熱状態にある上記上側シート21及び下側シート22を上記発泡成形体1の外周に被覆すると共に,該上型31及び下型32により上記発泡成形体1の周縁部を上側シート21及び下側シート22と共に減圧しながら挟圧する。そして,引き続き,上記上型31と下型32にて真空成形する。
【0043】
以下,これらにつき詳述する。
本例は,図2に示すごとく,発泡成形体1を挿入配置した状態で上側シート21,下側シート22を加熱する方法を示す。
【0044】
まず,上側シート21と下側シート22との間に挿入配置する発泡成形体1は,図1に示すごとく,断面長方形状の肉厚状の本体部11と,その両側面に突出形成した板状の支持用突起部12とを有する。
また,上側シート21,下側シート22は図2に示すごとく,表皮シート把持具5のチャック51により把持し,張架する。
【0045】
次に,本例においては,図2(A)(B)に示すごとく,まず上側シート21と下側シート22との間に発泡成形体1を挿入配置する。この挿入配置に当っては,発泡成形体1の支持用突起部12に対して支持具4のアーム41を伸長当接させ,この状態で発泡成形体1を移動させて,上記挿入配置を行なう。
そして,そのままの状態に支持具4を固定し,発泡成形体1を上側シート21と下側シート22との間に,間隙を保った状態に保持する(図2A)。
【0046】
次に,上記上側シート21の上方,下側シート22の下方に電気ニクロム線ヒータ48をそれぞれ位置させて,上側シート21,下側シート22を所望温度まで加熱する。
次いで,図3に示すごとく,上記電気ニクロム線ヒータ48を取去すると共に上側シート21の上方に上型31を,一方下側シート22の下方に下型32を位置させる。上型31,下型32は,成形面310,320を減圧状態にするための,吸引通路312,322,吸引口313,323を有する。
また,上型31,下型32は,発泡成形体1の周縁部14(図1,図3)を挟圧するためのエッジ部311,321を有する。
【0047】
次に,図4に示すごとく,型締めを行なう。
即ち,上型31,下型32を,それぞれ発泡成形体1の方向へ上下方向から近づけていく。
このとき,上側シート21は上型31のエッジ部311(図3)によって発泡成形体1の上面へ,下側シート22は下型32のエッジ部321によって発泡成形体1の下面へ近づき,更に接触する。
【0048】
更に,型締めを続行すると,最終的には,図4に示すごとく,発泡成形体1の外周が上側シート21,下側シート22によって被覆され,また発泡成形体1の支持用突起部12は上記エッジ部311,321により挟圧され,薄いソリッド状態となる。
また,支持用突起部12が挟圧による薄いソリッド状態になることによって,発泡成形体1の側面中央付近は,上側シート11と下側シート12との間に挟まれた形態で熱融着する。また,上側シート21,下側シート22は,発泡成形体1の表面に被覆されて,両シートと発泡成形体1とは,互いに熱融着する。
【0049】
また,上記型締め完了後に上記吸引通路312,322,吸引口313を通じて,上型31と下型32との間を減圧状態となし,真空成形を行なう。
また,上記型締め完了後には,上記支持具4のアーム41はその長さを縮少し,発泡成形体の支承を解除する。
その後,成形物を成形型3より取り出し,上側シート21と下側シート22及びそれらの間の薄くソリッド状態化した部分との熱融着部分の外周をカッターにより切除する。
これにより,上記図5に示した表皮付き発泡複合体10が得られる。
【0050】
次に,本例の作用効果につき説明する。
本例において重要なことは,上記上側シート21,下側シート22は上記型締めに先立って,予め加熱されていることである。
そして,上記発泡成形体1の外周を被覆した,上側シート21,下側シート22は,上記の加熱状態と,加熱による発泡体の更なる発泡力及び上記上型31,下型32の型締め圧力とによって,発泡成形体1の表皮に熱融着する。
また,上記型締めの最終時点においては,発泡成形体1の周縁部14(図1)を上側シート21及び下側シート22と共に挟圧する。また,成形型3の型面を減圧状態として,真空成形する。
【0051】
また,本例においては,上下に配置した上側シート21と下側シート22との間に,横方向から,発泡成形体1を挿入配置する。そのため,発泡成形体1の挿入配置が容易であり,その成形操作が容易である。
また,上側シート21,下側シート22は,成形に先立って,成形時に発泡成形体1と充分に熱融着できる温度に加熱しておき,また成形は上記のごとく真空成形を行なう。
【0052】
そのため,表皮シートと発泡成形体との密着性が高く,更に表皮付き発泡複合体10における表皮シートの表面の外観性が向上する。
したがって,本例によれば,成形操作が容易であると共に発泡成形体1と表皮シート21,22との密着性に優れた,表皮付き発泡複合体10の製造方法を提供できる。
【0053】
また,本例では発泡成形体1を挿入配置した以後に上記加熱をするので,加熱された上側シート21が発泡成形体の上方へ若干垂れを生じても支障がない。また,上記加熱時に,発泡成形体1の表面も若干加熱され,更に発泡するので,発泡成形体1と表皮シートとの密着性が高くなる。
【0054】
実施形態例2
本例は,図6(A),(B)に示すごとく,上側シート21,下側シート22を加熱した後に,両者の間に発泡成形体1を挿入配置する例を示すものである。即ち,本例においては,図6(A)に示すごとく,まず上側シート21,下側シート22を電気ニクロム線ヒータ48により所定温度に加熱する。
その後,図6(B)に示すごとく,電気ニクロム線ヒータ48を取去すると共に,上側シート21,下側シート22の間に発泡成形体1を挿入配置する。
【0055】
その後は,実施形態例1の図3,図4に示したごとく,上型31,下型32を用いて成形を行なう。その他は,実施形態例1と同様である。
本例によれば,上側シート,下側シートを加熱する際には,両者の間に発泡成形体1が介在しないので,上記加熱操作が容易である。
その他,実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
実施形態例3
本例は,図7に示すごとく,上側シート21,下側シート22を電気ニクロム線ヒータ48により加熱しながら,発泡成形体1を上側シート21と下側シート22との間に挿入配置する例である。
上記加熱後は,電気ニクロム線ヒータ48を取去し,実施形態例1に示したごとく,上型31,下型32を用いて成形を行なう(図3,図4参照)。
その他は,実施形態例1と同様である。
本例においても実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
また,上側シート21及び下側シート22を加熱しながら,その間へ発泡成形体を挿入配置するので,両操作を併行して行なうことができ,生産速度が高い。
【0057】
実施形態例4
本例は,図8〜図10に示すごとく,発泡成形体1の本体部11の側面に,逆L字状の支持用突起部13を設けた例である。図8,図9に示すごとく,支持用突起部13は,平板状の先端板131を有する。
本例において,発泡成形体1の支持は,上記支持用突起部13の先端板131を,成形型外に設けた支持台45に支持させる(図9)。これにより,発泡成形体1を上側シート21と下側シート22の間に挿入配置する。
【0058】
そして,図10に示すごとく,成形時には,最終的に,上型31,下型32のエッジ部311,321によって支持用突起部13は挟圧される。そして,その挟圧部分においては,上側シート21,下側シート22及びそれらの間の発泡体の薄くソリッド化した部分が熱融着し,熱融着部25を形成する(図5参照)。
その他は,実施形態例1と同様である。
本例においても実施形態例1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
(実施例)
次に,具体例について説明する。
(実施例1)
本例は,上記実施形態例3の方法,即ち表皮シートを加熱しながら,発泡成形体を挿入配置する方法を用いた例である。
本例では,厚み30mm,長さ400mm,幅300mmの表皮付き発泡複合体を製造した。
【0060】
芯材となる発泡成形体1には,本体11の寸法が,厚み28.2mm,長さ395mm,幅295mm,密度が0.05g/cm3の発泡ポリプロピレン樹脂を用いた。また,表皮シート21,22の材料には,厚み2.5mm,長さ700mm,幅600mmの,上記発泡成形体1と同系統のポリプロピレン樹脂を使用した。
【0061】
また,成形型3のキャビティは,発泡成形体の経時寸法収縮率を考慮し,厚み30.4mm,長さ406.0mm,幅304.5mmとした。なお,発泡成形体1に設けた支持用突起部は,厚み8mm,突出長さ80mmとした。
また,表皮シートの加熱に当っては,電気ニクロム線ヒータの温度300℃で2分間行なうことにより,表皮シートの表面温度は150〜170℃が得られた。
【0062】
なお,上記表皮シート21,22は,各両端に設置されたチャック51により張設された状態で,電気ニクロム線ヒータ48が移動し,成形型のキャビティ/コアーが上下または左右に移動する。
【0063】
また,上記成形時において,型締め最終段階では,成形型のパーティングライン部で支持用突起部12は型締め圧力により薄いソリッド状態になる。同時に真空成形による成形型内減圧により,2枚の表皮シートは所定の形状に延展成形され,それと同時に発泡成形体1も加熱により軟化し,その残存発泡力が発生する。そのため,それらの接触界面は,全体において完全に融着接合し,一体化される。
【0064】
なお,発泡成形体1と上側シート21および下側シート22とが合わさるパーティングライン接合部には必然的に挟圧された,上記支持用突起部12の一部が薄いソリッド状態で複合体内に取り残される。しかし,双方の材料が同系統の樹脂であるため完全に融着接合しており,複合体として,強度面,または商品価値上で全く問題がなかった。
【0065】
(実施例2)
本例は,実施形態例1の方法,即ち上下側シート間に芯材となる発泡成形体を挿入後,該上下側シートを両面より電気ニクロム線ヒータにて加熱する方法である。上記加熱シートが融点近傍の160℃になった時,電気ニクロム線ヒータを移動し,成形型(キャビティ/コアー)を接近させた。
その他は実施例1と同様であり,同様の製品が得られた。
【0066】
(実施例3)
本例は,下記の関係式に関して実験した。
上記実施例1においては,発泡成形体1の厚みを28.2mmとした。ここで,上記の関係式T=(H−S×2)/Kを計算すると,T=28.2mm,H=30.4mm,S=2.5mmであり,Kの値は0.90となる。
本例によれば,発泡成形体と上側シートおよび下側シートとの界面に間隙が生じることなく,また上記発泡成形体の厚みが大きすぎて膨張することはなかった。そのため,双方が接合一体化し,目標寸法どうりの厚みの製品を成形することができた。
【0067】
次に,確認のため,該発泡成形体の厚みを19.5mm,K=1.3として,実施例1と同一成形条件にて成形した。その結果,製品表面の一部に「ひけ」や「凹み」,更には部分的に融着不良現象が発生した。
【0068】
(実施例4)
実施例3と同じ目的で,発泡体の厚みを42.3mmとし,実施例1と同一成形条件で成形した(K=0.6)。その結果,離型後,製品表面の中央部で若干の膨張が起きたが,成形品の厚みとして支障なかった。
更に,50.8mmの厚みで(K=0.5),前回と同一成形条件にて成形したところ,離型後,目標製品厚みから大きく外れ不良品となった。
【0069】
【発明の効果】
上述のごとく,本発明によれば,成形操作が容易であると共に発泡成形体と表皮シートとの密着性に優れた,表皮付き発泡複合体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,発泡成形体の斜視図。
【図2】実施形態例1における,(A)上側シートと下側シートの間への発泡成形体の挿入配置,(B)上側シート,下側シートの加熱を示す説明図。
【図3】実施形態例1における,成形前の状態を示す説明図。
【図4】実施形態例1における,成形完了時の状態を示す説明図。
【図5】実施形態例1における,成形された表皮付き複合発泡体の断面図。
【図6】実施形態例2における,(A)上側シート,下側シートの加熱,(B)発泡成形体の挿入配置の説明図。
【図7】実施形態例3における,上側シートと下側シートを加熱しながら,それらの間に発泡成形体を挿入配置する場合の説明図。
【図8】実施形態例4における,発泡成形体の斜視図。
【図9】実施形態例4における,成形前の説明図。
【図10】実施形態例4における,成形完了後の説明図。
【符号の説明】
1...発泡成形体,
11...発泡成形体の本体部,
12...発泡成形体の支持用突起部,
2...表皮シート,
21...上側シート,
22...下側シート,
31...上型,
32...下型,
4...支持具,
48...電気ニクロム線ヒータ,
5...表皮シート把持具,

Claims (8)

  1. 減圧可能な上型と下型とを有する成形型を用い,加熱した熱可塑性樹脂の表皮シートにより熱可塑性樹脂の発泡成形体の外周を被覆して,表皮付き発泡複合体を製造する方法であって,
    上記表皮シートは上側シートと下側シートとを用い,両者を張架した状態で両者の間に間隙を置いて,側面に支持用突起部を有する上記発泡成形体を,上記支持用突起部を支持して挿入配置し,
    次いで,上記上型と下型とを用いて,加熱状態にある上記上側シート及び下側シートを上記発泡成形体の外周に被覆すると共に該上型及び下型により上記発泡成形体の周縁部を上側シート及び下側シートと共に減圧しながら挟圧し,かつ上記上型と下型にて真空成形することを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  2. 請求項1において,上記発泡成形体の周縁部を上側シート及び下側シートと共に挟圧すると共に,発泡成形体の周縁部を挟圧して該周縁部における上側シートと下側シートとを熱融着することを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  3. 請求項1又は2において,上記上側シート及び下側シートの加熱は,両者の間に上記発泡成形体を挿入配置する以前,挿入配置した以後,または挿入配置しながら行なうことを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において,上記上側シート及び下側シートの加熱は,これらシートの融点よりも10℃低い温度以上に,又はこれらシートの軟化点よりも30℃以上高い温度に加熱することを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において,上記上側シート及び下側シートと,上記発泡成形体とは同系統の熱可塑性樹脂により構成されていることを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において,上記成形前の発泡成形体の厚みをT,上型と下型とを閉止したときの成形キャビティの高さをH,上記上側シート及び下側シートのそれぞれの厚みをSとしたとき,
    関係式 T=(H−S×2)/K
    における係数Kは0.6〜1.2であることを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項において,上記発泡成形体の密度は0.02〜0.10g/cm3,上側シート及び下側シートの厚みは0.5〜5mmであることを特徴とする表皮付き発泡複合体の製造方法。
  8. 熱可塑性樹脂よりなる発泡成形体の外周に,上側シートと下側シートとよりなる表皮シートを被覆してなる表皮付き発泡複合体であって,
    該表皮付き発泡複合体を製造する際に用いた,上記発泡成形体の側面に設けた支持用突起部が,ソリッド状態をなし,上記上側シートと下側シートとの間に挟まれた形態で熱融着されており,
    上記発泡成形体の密度は0.02〜0.10g/cm 3 ,上側シート及び下側シートの厚みは0.5〜5mmであることを特徴とする表皮付き発泡複合体
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