JP4244402B2 - 光記録保護膜用スパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ビームを用いて情報を記録、再生および消去することができる光記録メディア用保護膜形成用スパッタリングターゲットに関するものであり、特にスパッタリング時にパーティクルの発生が少ないスパッタリングターゲットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ビームを用いて情報を記録、再生および消去することができる光ディスクの保護膜としてはZnSとSiO2の混合膜が多く用いられており、また、その形成方法としてはスパッタリング法が多く用いられている。
【0003】
このような光記録媒体の保護膜形成用に用いられるスパッタリングターゲットの製造は、HIP(高温静水圧プレス)法、CIP(低温静水圧プレス)法と焼成を併用する方法、HP(ホットプレス)法等の方法で行われており、工業的に安価に製造できる方法としてHP法が主に採用されている。
【0004】
HP法による高純度、高密度のスパッタリングターゲットとしては、例えば、特開平6−65725に、純度5Nの高純度硫化亜鉛粉末および高純度二酸化ケイ素粉末を原料粉末とし、特定の加圧・焼成条件を採用することにより、相対密度が90%以上の焼結体からなるスパッタリングターゲットが得られることが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のスパッタリングターゲットは、原料粉末に粒径の大きい二酸化ケイ素を用いて作製された焼結体で構成れており、そのようなスパッタリングターゲットではスパッタリング中にターゲットのスパッタ面の表面に存在する二酸化ケイ素の粗粒に電荷が集中し易いため、異常放電等が生じ易く、その結果パーティクルが発生するという問題があった。また、粒径が小さい二酸化ケイ素が分散されたスパッタリングターゲットにおいても、密度が低い場合、二酸化ケイ素の粒子がスパッタリング中に脱落し、異常放電の原因やパーティクル発生の原因となる問題点があった。
【0006】
本発明はこのような事情に着目してなされたものであり、その目的は放電特性やパーティクル特性の良好なスパッタリングターゲットを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題に鑑みて、鋭意検討を行った結果、焼結体の相対密度を高くするとともに、比表面積の大きい不規則な形状を有し、かつ粒径の小さい二酸化ケイ素の粒子を焼結体中に均一に分散させることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は光記録メディアの保護膜をスパッタリング成膜する際に用いられる硫化亜鉛および二酸化ケイ素を主成分とする焼結体からなるスパッタリングターゲットであって、前記焼結体中の二酸化ケイ素の粒径が30μm以下であることを特徴とする光記録保護膜用スパッタリングターゲットである。また、前記焼結体は、硫化亜鉛からなる緻密なマトリックス中に、比表面積の大きい不規則な形状を有し、かつ粒径が30μm以下の微細な二酸化ケイ素の粒子が均一に分散した焼結体組織を有するものであることが好ましい。なお、本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを構成する焼結体の相対密度は95%以上であることが好ましく、該相対密度は96.5%以上であることが更に好ましい。
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを構成する焼結体は、硫化亜鉛(ZnS)からなる緻密なマトリックス中に二酸化ケイ素(SiO2)の微細な粒子が均一に分散した焼結体組織を有するものであり、分散させる二酸化ケイ素粒子を、例えば球状粒子のように比表面積が小さい粒子ではなく、粒子表面に凹凸を有し、比表面積の大きい不規則な形状の粒子とすることにより、二酸化ケイ素粒子の焼結体への付着力を増大させることができ、スパッタリング中の二酸化ケイ素粒子の脱落を防止することができる。
【0011】
なお、上記のように不規則な形状の二酸化ケイ素粒子を分散させると、スパッタリングの際、ターゲットのスパッタ面の表面に存在する二酸化ケイ素の粗粒に電荷が集中し、異常放電を生じ易くなることがあるため、分散させる二酸化ケイ素の粒子を十分に小さくすることが必要である。二酸化ケイ素粒子の粒径としては、粒径が30μm以下であれば良いが、20μm以下であることがより好ましい。
【0012】
また、二酸化ケイ素粒子の焼結体への付着力は、焼結体の密度の増加によっても増大するため、焼結体の相対密度を95%以上とすることが好ましく、それによりスパッタリング中の二酸化ケイ素粒子の脱落をより低減することができ、スパッタリングターゲットの放電特性を更に向上させることができる。この焼結体の相対密度は96.5%以上とすることが更に好ましく、それにより異常放電やパーティクルの発生をより一層低減することが可能となる。なお、本発明においては、相対密度の算出に用いる焼結体の理論密度として、硫化亜鉛単体の密度と二酸化ケイ素単体の密度の、焼結体の構成比を重みとした加重平均値を用いる。
【0013】
本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを構成する焼結体の研磨面や破断面を電子顕微鏡等により観察すると、硫化亜鉛からなる緻密なマトリックス中に二酸化ケイ素の微細な粒子が均一に分散した焼結体組織が観察されるが、任意の研磨面又は破断面において、マトリックス中に分散する二酸化ケイ素粒子は、比表面積の大きい不規則な形状を有し、粒子の大きさはいずれも30μm以下であることが観察される。
【0014】
本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを構成する焼結体の作製に用いられる硫化亜鉛の原料粉末としては市販の硫化亜鉛粉末で良く、特には限定されないが、1〜10μmの範囲内の平均粒径を有する粉末を用いることが好ましい。また、二酸化ケイ素の原料粉末としては、粒径が30μm以下の粉末であれば良いが、粒径100μm以上の二酸化ケイ素粉を粉砕して得られた、不規則な形状を有し、かつ粒径が30μm以下の破砕粉を用いることが好ましい。この破砕紛は、必要に応じて、分級処理を施すことにより粒径が所定値より大きな粗粒を除去することが好ましい。なお、二酸化ケイ素の原料粉末の粒径は20μm以下とすることが更に好ましく、粒径が20μm以下の粉末を用いることで、作製されたスパッタリングターゲットの放電特性は更に向上する。
【0015】
二酸化ケイ素の原料粉末の形状は、例えば球状の粒子のように比表面積が小さい粒子を用いると、二酸化ケイ素の粒子がスパッタリング中に脱落し易くなるため、例えば、上記のように、大きな粒子を粉砕して得られる破砕粉のように、粒子表面に凹凸を有し、比表面積の大きい不規則な形状の粒子を用いることが好ましい。このような粒子を用いることにより、二酸化ケイ素粒子の焼結体への付着力を増大させることができ、スパッタリング中の二酸化ケイ素粒子の脱落を防止することができる。
【0016】
本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを構成する焼結体の製造方法としては、例えば、上記の原料粉末を所定の組成となるように配合し、ボールミルにて混合した後、得られた混合粉末をホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気あるいは真空中で、圧力:200〜300kg/cm2、温度:1000〜1200℃、時間:1〜5hrの範囲内のホットプレス条件で焼結する方法を例示することができる。上記の方法により、実質的に原料粉末の配合組成と同一の成分組成を有し、焼結体組織中に粒径が30μm以下の二酸化ケイ素(SiO2)の粒子が均一に分散し、かつ相対密度95%以上の焼結体を得ることができる。なお、本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを構成する焼結体の組成は特には限定されないが、二酸化ケイ素の含有量5〜30mol%が好ましく、15〜25mol%が更に好ましい。
【0017】
本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットは、例えば上記により得られた焼結体を、乾式または湿式の機械加工により所定の形状に加工し、必要に応じて、スパッタリング中の熱を効果的に放冷するためのバッキングプレートにボンディングすることにより作製することができる。スパッタリングターゲットの形状としては使用するスパッタリング装置によって選択することができ、直径3〜8インチ程度の円形、または(4〜6インチ)×(5〜20インチ)程度の方形などが一般的である。スパッタリングターゲットの厚さとしては、通常3〜20mm程度である。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
原料粉末として5μmの平均粒径を有するZnS粉末および最大粒径が20μmのSiO2粉末を使用した。最大粒径が20μmのSiO2粉末は100μm以上の粒径をもつSiO2粉末をボールミルにより粉砕時間をコントロールして得た。得られた粉末を用いて、ZnS粉末に対しSiO2粉末を20mol%に調整したものをボールミルにて24時間混合した。得られた混合粉末をホットプレス黒鉛型に充填し、真空中で、温度1000℃、圧力200kg/cm3の条件にてホットプレス焼結を行い焼結体を作製した。なお、昇温速度は5℃/min、保持時間は3時間とした。
【0020】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法により測定し、焼結体の相対密度を算出した。また、得られた焼結体の研磨面をSEMにより観察することにより、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0021】
上記により得られた焼結体の表面を研磨して円板状(厚さ5mm、200mmφ)の光記録保護膜用スパッタリングターゲットを製造し成膜評価を行った。成膜評価はRFマグネトロンスパッタリング装置により、アルゴン圧力0.4Pa、投入パワー300Wにて、1分間のプレスパッタリングを実施した後、アルゴン圧力0.4Pa、投入パワー300Wの条件で5分間、シリコン基板上にZnS―SiO2膜を成膜した。スパッタリング終了後、パーティクルカウンターを用いて基板上の1μm以上のパーティクル数を測定した。結果を表1に示す。
【0022】
(実施例2)
ホットプレス焼成条件を温度1100℃、圧力200kg/cm3としたこと以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造した。実施例1と同様にして、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径、焼結体の相対密度及び成膜時のパーティクル発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
(実施例3)
粒径が10μm以下のSiO2粉末を原料粉に使用したこと以外は実施例2と同様にしてスパッタリングターゲットを製造した。実施例1と同様にして、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径、焼結体の相対密度及び成膜時のパーティクル発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
(実施例4)
粒径が5μm以下のSiO2粉末を原料粉に使用したこと及びホットプレス焼成条件を温度1100℃、圧力300kg/cm3としたこと以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造した。実施例1と同様にして、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径、焼結体の相対密度及び成膜時のパーティクル発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
(実施例5)
粒径が25μm以下のSiO2粉末を原料粉に使用したこと及びホットプレス焼成条件を温度1150℃、圧力300kg/cm3としたこと以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造した。実施例1と同様にして、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径、焼結体の相対密度及び成膜時のパーティクル発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
(比較例1)
粒径が50μm以下のSiO2粉末を原料粉に使用したこと以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造した。実施例1と同様にして、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径、焼結体の相対密度及び成膜時のパーティクル発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
(比較例2)
粒径が50μm以下のSiO2粉末を原料粉に使用したこと以外は実施例2と同様にしてスパッタリングターゲットを製造した。実施例1と同様にして、焼結体中のSiO2粒子の最大粒径、焼結体の相対密度及び成膜時のパーティクル発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、SiO2の粒径が30μm以下である本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットでは、SiO2の粒径が大きい従来の焼結スパッタリングターゲット(比較例1、2)に比較してパーティクル発生量が減少し、特に、SiO2の粒径を30μm以下とするとともに、焼結体の相対密度を95%以上とすることにより、パーティクル発生量を著しく減少させることができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の光記録保護膜用スパッタリングターゲットは、硫化亜鉛からなる緻密なマトリックス中に、比表面積の大きい不規則な形状を有し、かつ粒径が30μm以下の微細な二酸化ケイ素の粒子が均一に分散した焼結体組織を有する焼結体により構成したので、スパッタリング時における異常放電が生じにくく、パーティクルの発生を防ぐことができ、安定なスパッタリングを行うことが可能となる。
Claims (1)
- 硫化亜鉛および二酸化ケイ素を主成分とする焼結体からなる光記録保護膜用スパッタリングターゲットにおいて、前記焼結体中の二酸化ケイ素の粒径が30μm以下、焼結体の相対密度が96.5%以上、かつ、前記焼結体が粒径100μm以上の二酸化ケイ素粉を粉砕して得られた破砕粉を用いて製造されたものであることを特徴とする光記録保護膜用スパッタリングターゲット。
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