JP4244332B2 - 水系中のレジオネラ属細菌の除菌方法 - Google Patents

水系中のレジオネラ属細菌の除菌方法 Download PDF

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Description

本発明は、冷凍装置の循環冷却水や24時間風呂の循環温水などの冷温水系或いは蓄熱水系などにおける細菌類、特にレジオネラ属細菌を殺菌し、かつその増殖を防止する方法に関する。
空調設備や冷蔵或いは冷凍庫などに用いられる冷凍装置では、熱交換を効率的に行なうために、開放型の冷却塔などを用いて冷却した循環水を利用することが多い。かかる循環水中には外部から微生物などが入り込んで増殖し易く、スライムなどによる熱交換器の熱交換効率の低下や、濾過器の詰まりなどの障害を起こすほか、病原細菌、特にレジオネラ属細菌などが増殖して飛散すると、特殊な肺炎、例えば、在郷軍人病やポンテアック熱のような病気の原因となる。
このような微生物による問題の対策として、循環水系に抗菌剤を注入して細菌類の増殖を抑制する方法や、装置内を物理的に清掃洗浄し或いは洗浄剤を用いて化学的に洗浄する方法などが用いられてきた。そして、レジオネラ属細菌を防除する殺菌剤として、従来から種々の化合物が提案されているが、実験室内で殺菌効果を示す薬剤でも、実際に稼働している水系に使用してみると、必ずしも十分な効果が得られないことが多かった。
また、自然界におけるレジオネラ属細菌は、アメーバなどの細菌捕食性原生動物などに捕食されてもなお寄生して繁殖し、共生することが知られている。しかしこのようなアメーバなどとレジオネラ属細菌との共生関係が、レジオネラ属細菌の殺菌剤抵抗性にどのように影響するかについては明らかではなかった。
一方、ピリジニウム塩化合物が抗菌活性を有することは知られており、従来から消毒剤や殺菌剤として種々の用途に使用されている。しかし、冷却水などに添加して、レジオネラ属細菌を除菌するのに特に有効であるとは考えられていなかった。
特開平11−197673号公報
本発明は、水系におけるレジオネラ属細菌、特にアメーバなどとの共存状態におけるレジオネラ属細菌の増殖を防止するための有効な手段がなかったことに鑑み、かかる水系中、特にアメーバ共存水系中のレジオネラ属細菌を効果的に除菌する方法を提供することを目的とする。
上記目的は以下の本発明によって達成される。
1.アメーバとレジオネラ属細菌とが共存している水系に対して、下記一般式(1)で表される化合物を添加することを特徴とする水系中のレジオネラ属細菌の除菌方法。
Figure 0004244332
(但し、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
2.前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である前記1に記載の除菌方法。
3.前記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物である前記1に記載の除菌方法。
Figure 0004244332
Figure 0004244332
Figure 0004244332
Figure 0004244332
4.前記一般式(1)で表される化合物の添加量が、1〜1,000mg/Lの範囲にある前記1〜3のいずれか1項に記載の除菌方法。
本発明は、水系中に前記一般式(1)で表される化合物を添加することにより、水系中のレジオネラ属細菌を除菌するもので、従来のレジオネラ属細菌用の殺菌剤では除菌できなかったようなアメーバ共存下の水系中のレジオネラ属細菌を、効果的に除菌することができるという効果があり、しかも濃度の高い水溶液として使用する場合でも、一般的な第4級アンモニウム塩のように泡立ちが著しくないので、取扱いが容易であるという利点がある。
以下に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物のなかで好ましい化合物は、前記一般式(1)において、R1およびR4が、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5が、水素原子であり、R3が、テトラメチレン基であり、R6が、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zが塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である化合物であり、特に好ましい化合物は前記式(1)〜(4)の化合物である。前記一般式(1)で表される化合物は、単独でも混合物としても使用できる。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(a)
Figure 0004244332
で表されるピリジン化合物と、下記一般式(b)
Figure 0004244332
で表されるジオール類とを、強塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(c)
Figure 0004244332
で表されるピリジン化合物を製し、該化合物と下記一般式(d)
Figure 0004244332
で表されるピリジン化合物とを強塩基の存在下に反応させることにより下記一般式(e)
Figure 0004244332
で表されるピリジン化合物を製し、該化合物と下記一般式(f)
Figure 0004244332
で表されるハロゲン化合物若しくはスルホン酸エステル化合物とを反応させることによって得られる。
(但し、上記一般式(a)〜(f)において、AおよびBは塩基の作用により脱離基として機能し、アルキルカチオンを生成し得る置換基であり、XおよびYは無機、若しくは有機のプロトン酸の対アニオンであり、mおよびnは0〜1であり、R1〜R7、Zは前記と同意義である。)
本発明の水系中のレジオネラ属細菌の除菌方法は、水系中にレジオネラ属細菌が単独で存在している場合のみならず、特にアメーバとレジオネラ属細菌とが共存している水系に対して、前記一般式(1)で表される化合物を添加することにより、細菌類や原生動物などを共に防除でき、極めて効果的にレジオネラ属細菌を除菌できるものである。
本発明の方法において、水系中に添加される前記一般式(1)で表される化合物の量は、1〜1,000mg/Lの範囲であってよいが、経済上などの点から、1〜500mg/Lの範囲となるよう添加するのが好ましい。また、水系中への前記一般式(1)で表される化合物の添加方法については特に制限はないが、対象水系に対して数日から1ケ月の範囲の間隔をおいて間欠的に添加する方法や、水系中の薬剤濃度が一定値以上に維持できるように、補給水などに対して連続的に添加する方法などを利用することができ、これらの方法によって十分な除菌効果を得ることができる。
本発明の方法に従って前記一般式(1)で表される化合物を使用するに当たり、通常の水処理剤に配合される腐食防止剤、スケール防止剤、分散剤などの薬剤を併用することができる。かかる併用可能な薬剤として、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ホスフィン酸またはその塩、正リン酸またはその塩、重合リン酸塩、モリブデン酸塩、亜硝酸塩、珪酸塩、水溶性亜鉛化合物などを挙げることができる。
次に本発明で使用する前記一般式(1)で表される化合物の合成例を挙げる。合成例1(前記化合物(1)の合成)
[下記構造式で示される化合物(1−1)の合成]
Figure 0004244332
DMF(ジメチルホルムアミド)75mlに1,4−ブタンジオール8.24g(91.43mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド10.3g(91.79mmol)を添加し、室温で1.5時間撹拌した。このスラリー液に−8〜−3℃で3−クロロメチルピリジン塩酸塩1.0g(6.10mmol)およびカリウムtert−ブトキシド0.68g(6.06mmol)を交互に添加し、これを15回繰り返し、全量で3−クロロメチルピリジン塩酸塩15.0g(91.45mmol)およびカリウムtert−ブトキシド10.2g(90.9mmol)を添加した。
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、3−クロロメチルピリジンのピークが確認されたので、3−クロロメチルピリジンのピークが消失するまで、カリウムtert−ブトキシドを5℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは1.13g(10.07mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF30mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去して油状の粗生成物(化合物(1−1))17.1gを得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(1−1)の面積%は76.0%であった。
前記化合物(1−1)の粗生成物を水30mlに溶解し、トルエンで洗浄した。その後、水層に食塩6gを加え、ジクロロメタン20ml×2で抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去し、油状の前記化合物(1−1)9.21g(収率(1,4−ブタンジオールより):57.2%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、面積%は99.4%であった。(1H−NMR(CDCl3):δ1.67−1.75(4H,m,−(C 22−)、δ2.35(1H,s,O)、δ3.52−3.56(2H,t,J=6.0Hz,C 2)、δ3.64−3.68(2H,t,J=6.0Hz,C 2 )、δ4.52(2H,s,C 2)、δ7.27−7.31(1H,m,arom)、δ7.66−7.70(1H,m,arom)、δ8.52−8.56(2H,m,arom ×2)、MS(APCl):m/z=182[M+H]+
HPLC(条件1)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:B=70:30(一定)
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
[下記構造式で示される化合物(1−2)の合成]
Figure 0004244332
DMF25mlに前記化合物(1−1)5.0g(27.59mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド3.1g(27.63mmol)を添加した。このスラリーに5〜6℃で3−クロロメチルピリジン塩酸塩0.5g(3.05mmol)およびカリウムtert−ブトキシド0.34g(3.03mmol)を交互に添加し、これを9回繰り返し、全量で3−クロロメチルピリジン塩酸塩4.5g(27.43mmol)およびカリウムtert−ブトキシド3.06g(27.27mmol)を添加した。添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、3−クロロメチルピリジンおよび前記化合物(1−1)のピークが確認されたので、3−クロロメチルピリジンのピークおよび前記化合物(1−1)のピークが消失するまで、カリウムtert−ブトキシドを5℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは0.62g(5.53mmol)であった。
反応混合物を固液分離し、ケークをDMF30mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去した。この濃縮残液にジクロロメタン20mlを添加し、溶解液を飽和食塩水で洗浄後、溶媒を留去し、油状物5.8gを得た。この粗生成物0.5gについてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム−メタノール)で精製を行い、油状の前記化合物(1−2)0.3gを得た。(1H−NMR:δ1.70−1.74(4H,m,−(C 22−)、δ3.50−3.54(4H,m,C 2×2)、δ4.51(4H,s,C 2×2)、δ7.25−7.29(2H,dd,J=4.9Hz,7.9Hz,arom×2)、δ7.65−7.69(2H,dt,J=1.7Hz,7.9Hz,arom×2)、δ8.52−8.57(4H,dd,J=1.7Hz,4.9Hz,arom×4)、MS(APCl):m/z=273[M+H]+
[化合物(1)の合成]
Figure 0004244332
前記化合物(1−2)5.0g(18.36mmol)にオクチルブロマイド35.5g(183.8mmol)を加え、70〜80℃で20時間反応を行った。反応混合物をHPLC(条件2)で分析すると、前記化合物(1−2)のピークは消失していた。反応混合物より上層のオクチルブロマイド層を分離し、下層油状物をアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液に注加した。混合物を冷却し、析出結晶を0℃でろ過、減圧乾燥を行い、灰白色結晶9.7g(粗収率(前記化合物(1−2)より):85%)を得た。
得られた結晶2gについてアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液で再結晶を行い、微灰白色結晶の化合物(1)1.6gを得た。(融点:52〜53℃、1H−NMR(d6−DMSO):δ0.82−0.89(6H,t,J=5.3Hz,C 3×2)、δ1.25−1.34(20H,m,−(C 25−×2)、δ1.77−1.80(4H,m,−(C 22−×2)、δ2.04−2.09(4H,t,J=7.0Hz,C 2×2)、δ3.70−3.72(4H,t,J=5.9Hz,C 2×2)、δ4.67−4.71(4H,t,J=7.0Hz,C 2×2)、δ4.84(4H,s,C 2×2)、δ8.11−8.15(2H,dd,J=6.0Hz,8.0Hz,arom×2)、δ8.56−8.59(2H,d,J=8.0Hz,arom×2)、δ8.69−8.92(4H,dd,J=6.0Hz,13.1Hz,arom×4)、MS(ESI):m/z=579[M−Br]+)。
HPLC(条件2)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:70%(12min保持)→(10min)→A:50%(14min保持)→A:70%
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
合成例2(前記化合物(2)の合成)
[下記構造式で示される化合物(2−1)の合成:3−クロロメチルピリジン塩酸塩から4−クロロメチルピリジン塩酸塩に代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]
Figure 0004244332
DMF75mlに1,4−ブタンジオール8.24g(91.43mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド10.3g(91.79mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。このスラリーに−10〜−5℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩1.5g(9.14mmol)、カリウムtert−ブトキシド1.03g(9.18mmol)を交互に添加し、これを10回繰り返した。
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、4−クロロメチルピリジンのピークが確認されたので、4−クロロメチルピリジンのピークが消失するまでカリウムtert−ブトキシドを10℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは1.03g(9.18mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF20mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去し油状の粗生成物17.0gを得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(2−1)の面積%は63.0%であった。
粗生成物を水30mlに溶解し、トルエンで洗浄した。その後、水層に食塩6gを加え、ジクロロメタン20ml×2で抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去し、油状の前記化合物(2−1)9.21g(収率(1,4−ブタンジオールより):57.2%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、面積%は99.4%であった。(1H−NMR(CDCl3):δ1.65−1.80(4H,m,−(C 2 2−)、δ2.4(1H,s,O)、δ3.54−3.58(2H,t,J=5.9Hz,C 2 )、δ3.66−3.70(2H,t,J=5.9Hz,C 2 )、δ4.53(2H,s,C 2 )、δ7.24−7.26(2H,dd,J=1.5Hz,4.5Hz,arom×2)、δ8.55−8.57(2H,dd,J=1.5Hz,4.5Hz,arom×2)、MS(APCl):m/z=182[M+H]+
[下記構造式で示される化合物(2−2)の合成:3−クロロメチルピリジン塩酸塩から4−クロロメチルピリジン塩酸塩に代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]
Figure 0004244332
DMF49mlに1,4−ブタンジオール2.7g(30.0mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド3.4g(30.0mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。このスラリーに−5〜−3℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩0.98g(6mmol)、カリウムtert−ブトキシド0.68g(6mmol)を交互に添加し、これを5回繰り返した。これ以降の添加は、−5〜−2℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩0.98g(6mmol)、カリウムtert−ブトキシド1.36g(12mmol)を交互に添加し、これを5回繰り返し、全量で4−クロロメチルピリジン塩酸塩9.8g(60mmol)、カリウムtert−ブトキシド10.2g(90mmol)を添加した。
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、4−クロロメチルピリジンおよび前記化合物(2−1)のピークが確認されたので、4−クロロメチルピリジンのピークおよび前記化合物(2−1)のピークが消失するまで、4−クロロメチルピリジン塩酸塩とカリウムtert−ブトキシドを10℃以下で添加した。追加した4−クロロメチルピリジン塩酸塩は2.0g(12mmol)、カリウムtert−ブトキシドは2.6g(24mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF20mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去した。
この濃縮残液に酢酸エチル50mlを添加し、溶解液を水で洗浄後、溶媒を留去し、黄色結晶の前記化合物(2−2)を得た。該化合物の結晶をHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(2−2)の面積%は70.5%であった。得られた粗生成物5g(18mmol)をイソプロピルアルコール23.3gで再結晶を行い、白色結晶の前記化合物(2−2)2.7gを得た。(融点:98.6〜100.2℃、1H−NMR(CDCl3):δ1.75−1.79(4H,m,−(C 22−)、δ3.53−3.57(4H,m,C 2×2)、δ4.52(4H,s,C 2×2)、δ7.23−7.27(4H,dd,J=0.8Hz,6.0Hz,arom×4)、δ8.55−8.57(4H,dd,J=1.6Hz,6.0Hz,arom×4)、MS(APCl):m/z=273[M+H]+
[下記構造式の化合物(2)の合成:前記化合物(2−2)を4−クロロメチルピリジン塩酸塩から誘導したものに代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]
Figure 0004244332
前記化合物(2−2)2.0g(7.34mmol)にオクチルブロマイド21.3g(110.3mmol)を加え、70〜80℃で53時間反応を行った。反応混合物をHPLC(条件2)で分析すると、前記化合物(2−2)のピークは消失していた。反応混合物からオクチルブロマイドを減圧下で留去し、油状の前記化合物(2)5.2g(粗収率:107.7%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件2)で分析すると、化合物(2)のピークの面積%は81.3%であった。
合成例3(前記化合物(3)の合成)
Figure 0004244332
前記化合物(1−2)5.0g(18.36mmol)にデシルブロマイド40.6g(183.8mmol)を加え、70〜80℃で20時間反応を行った。
反応混合物をHPLC(条件3)で分析すると、前記化合物(1−2)のピークは消失していた。反応混合物より上層のデシルブロマイド層を分離し、下層油状物をアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液に注加した。混合物を冷却し、析出結晶を0℃でろ過、減圧乾燥を行い、灰白色結晶11.6g(粗収率(前記化合物(1−2)より):88.5%)を得た。該化合物の結晶をHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(3)の面積%は98.4%であった。融点およびNMR分析値は以下の通りであった。
(融点:76.8〜79.2℃、1H−NMR(CD3OD):δ0.9(6H、t、C 3×2)、δ1.29〜1.40(28H、m、(C 27×2)、δ1.77〜1.84(4H、m、C 2×2)、δ2.00〜2.05(4H、t、C 2×2)、δ3.69〜3.70(4H、t、C 2×2)、δ4.64〜4.68(4H、t、C 2×2)、δ4.77(4H、s、C 2×2)、δ8.07〜8.11(2H、dd、J=、arom×2)、δ8.55〜8.57(2H、d、arom×2)、δ8.93〜8.94(2H、d、arom×2)、δ9.02(2H、s、arom×2)
HPLC(条件3)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:60%(5min保持)→(10min)→A:30%(30min保持)→A:60%
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:10μL
合成例4(前記化合物(4)の合成)
合成例3におけるデシルブロマイドに代えて当モル量のドデシルブロマイドを用いた以外は合成例3と同様にして下記構造式で表される化合物(4)13.0g(粗収率:91.5%)を得た。得られた化合物(4)をHPLC(条件4)で分析すると、化合物(4)のピークの面積%は97.5%であった。また、融点およびNMR分析値は以下の通りであった。
Figure 0004244332
(融点:90.0〜91.4℃、1H−NMR(CD3OD):δ0.89(6H、t、C 3×2)、δ1.26〜1.39(36H、m、(C 29×2)、δ1.79〜1.82(4H、m、C 2×2)、δ1.84〜2.05(4H、m、C 2×2)、δ3.67〜3.70(4H、t、C 2×2)、δ4.65〜4.68(4H、t、C 2×2)、δ4.77(4H、s、C 2×2)、δ8.07〜8.11(2H、dd、arom×2)、δ8.55〜8.57(2H、d、arom×2)、δ8.93〜8.94(2H、d、arom×2)、δ9.02(2H、s、arom×2)
HPLC(条件4)
・カラム:CAPCELL PAK C18 SG120(資生堂)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.1Mリン酸二水素カリウム(0.05%燐酸)水溶液、B−80%アセトニトリル水溶液 A:B=30:70
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
下記表1に示した配合組成を有するBCYEα平板培地上に、レジオネラ(Legionella pneumophila)を接種して36℃で2日間培養した。
Figure 0004244332
次に前記化合物(1)〜(4)を用意した。また、比較のために前記化合物(1)〜(4)の代わりの公知の殺菌剤である10.1質量%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと3.8質量%の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを含む薬剤(ローム・アンド・ハース社商品、KATHON WTと略記)、および2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(一般名:ブロノポール、BRNPOLと略記)を用意した。
そして、前記の培養レジオネラをpH7の燐酸緩衝液に104個/mLオーダーとなるように接種した後、その液の一部をBCYEα平板培地に塗布し、36℃で5日間培養後のコロニー数をカウントすることにより、生菌数を測定したところ、3.3×104個/mLであることを確認した。次いでこの液をそれぞれの培養フラスコに分けて入れ、殺菌剤無添加のものと、上記の各殺菌剤をそれぞれ5、10および50mg/Lの濃度となるよう添加したものとを調製し、37℃で24時間振盪培養した後、それぞれの生菌数(個/mL)を上記と同様にして測定した。こうして得た培養後の生菌数の値を表2に示した。
Figure 0004244332
表2の結果から、前記化合物(1)〜(4)はレジオネラに対して、従来公知の殺菌剤に比較して略同等以上の殺菌力を有するものであることが分かる。
実施例2
表3に示した配合組成を有するPYGC培地を入れた培養フラスコに、アメーバ(Acanthamoeba)を接種して30℃で4日間培養し、古い培地を捨てて新しいPYGC培地を加え、これに実施例1と同様にしてBCYEα平板培地上で2日間培養したレジオネラを接種し、30℃で4日間培養して、アメーバとレジオネラとが共生している状態とした。
この培養フラスコ内の培地を攪拌してアメーバを壁面から剥離し、培養液の一部を血球計数盤に滴下して顕微鏡下でアメーバ数を測定したところ、アメーバ数は1.3×106個/mLであった。また、培養液の別の一部を取り出し、10,000rpmで20分間の遠心操作を行ってアメーバを破壊した後、BCYEα平板培地に塗布し、36℃で5日間培養後のコロニー数をカウントすることにより、レジオネラの菌数を測定したところ、8.9×105個/mLであった。
Figure 0004244332
前記のアメーバとレジオネラとが共生した培地を入れた培養フラスコに、実施例1で用いたのと同じ各殺菌剤を、それぞれ10、30および100mg/Lの濃度となるようそれぞれ添加したもの、および殺菌剤無添加のものを調製し、30℃で7日間培養した。そして、顕微鏡観察によりアメーバの形態を調べた後、培養液を攪拌してアメーバとレジオネラとを均一に分散させ、その培養液の一部を取り出し、10,000rpmで20分間の遠心操作を行ってアメーバを破壊した後、BCYEα平板培地に塗布し、36℃で5日間培養後のコロニー数をカウントすることによりレジオネラの生菌数(個/mL)を測定し、その結果を表4に示した。
その一方で上記の均一に混合分散させた培養液の別の一部を、そのまま新しいPYGC培地に接種して30℃で7日間培養し、アメーバの生死状態を調べた。そして前記の顕微鏡観察結果とあわせて、栄養体として生存している状態を+、嚢子化して生存している状態を±、死滅している状態を−として、表4に併せて示した。
Figure 0004244332
表4の結果から、レジオネラに対して優れた殺菌力を示す従来公知の殺菌剤が、アメーバ共存状態ではレジオネラを有効に除菌することができないのに対し、前記化合物(1)〜(4)はアメーバに対しても殺生力があり、アメーバ共存状態のレジオネラをも効果的に除菌できることが分かる。
本発明は、水系中に前記一般式(1)で表される化合物を添加することにより、水系中のレジオネラ属細菌を除菌するもので、従来のレジオネラ属細菌用の殺菌剤では除菌できなかったようなアメーバ共存下の水系中のレジオネラ属細菌を、効果的に除菌することができるという効果があり、しかも濃度の高い水溶液として使用する場合でも、一般的な第4級アンモニウム塩のように泡立ちが著しくないので、取扱いが容易であるという利点がある。

Claims (4)

  1. アメーバとレジオネラ属細菌とが共存している水系に対して、下記一般式(1)で表される化合物を添加することを特徴とする水系中のレジオネラ属細菌の除菌方法。
    Figure 0004244332
    (但し、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
  2. 前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である請求項1に記載の除菌方法。
  3. 前記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の除菌方法。
    Figure 0004244332
    Figure 0004244332
    Figure 0004244332
    Figure 0004244332
  4. 前記一般式(1)で表される化合物の添加量が、1〜1,000mg/Lの範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載の除菌方法。
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