JP4244133B2 - 楽曲データ作成装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、楽曲を示すデータを作成する楽曲データ作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
楽曲の和音を認識して楽曲を和音の変化、すなわち和音進行としてデータ化する装置としては、次の特許文献1に示されたものがある。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−289672号公報
この公報に示された装置においては、予め音符化された楽曲情報(楽譜の音符情報)に基づいて拍子毎に含まれる音符成分から、或いはその音符成分から非和声音の音符を取り除いた後の音符成分から和音を判断してその楽曲の和音進行を示すデータを作成することが行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の楽曲データ作成装置においては、和音を解析できる拍子が予め知られた楽曲だけに限られ、また拍子が不明の楽曲音からその和音進行を示すデータを作成することはできないという欠点があった。
また、楽曲の和音をその楽曲音を示すオーディオ信号から解析して和音進行としてデータ化することは従来の楽曲処理装置では不可能であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題には、上記の問題点が一例として挙げられ、楽曲音を示すオーディオ信号に基づいて楽曲の和音進行を検出してそれをデータ化する楽曲データ作成装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の楽曲データ作成装置は、楽曲を示す入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換する周波数変換手段と、前記周波数変換手段によって得られた周波数信号から平均律の各音に対応した周波数成分を前記所定の時間毎に抽出する成分抽出手段と、前記成分抽出手段によって抽出された各音に対応した周波数成分のうちのレベル合計が大となる3つの周波数成分の組によって各々形成される2つの和音を第1及び第2和音候補として検出する和音候補検出手段と、前記和音候補検出手段によって繰り返し検出された第1及び第2和音候補各々の列を平滑化処理する平滑化手段と、前記平滑化手段によって平滑化処理された前記第1及び第2和音候補の列各々において同一の和音候補が連続的に配置されるように前記第1及び第2和音候補の列間で同一時点での前記第1及び第2和音候補を入れ替えて前記楽曲データを生成する入替手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明の楽曲データ作成方法は、楽曲を示す入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換し、前記周波数信号から平均律の各音に対応した周波数成分を前記所定の時間毎に抽出し、その抽出した各音に対応した周波数成分のうちのレベル合計が大となる3つの周波数成分の組によって各々形成される2つの和音を第1及び第2和音候補として検出し、前記第1及び第2和音候補各々の列を平滑化処理し、前記平滑化処理後の前記第1及び第2和音候補の列各々において同一の和音候補が連続的に配置されるように前記第1及び第2和音候補の列間で同一時点での前記第1及び第2和音候補を入れ替えて前記楽曲データを生成することを特徴としている。
【0008】
本発明のプログラムは、楽曲を示す入力オーディオ信号に応じて楽曲データを作成する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換する周波数変換ステップと、前記周波数変換ステップによって得られた周波数信号から平均律の各音に対応した周波数成分を前記所定の時間毎に抽出する成分抽出ステップと、前記成分抽出ステップによって抽出された各音に対応した周波数成分のうちのレベル合計が大となる3つの周波数成分の組によって各々形成される2つの和音を第1及び第2和音候補として検出する和音候補検出ステップと、前記和音候補検出ステップによって繰り返し検出された第1及び第2和音候補各々の列を平滑化処理する平滑化ステップと、前記平滑化処理後の前記第1及び第2和音候補の列各々において同一の和音候補が連続的に配置されるように前記第1及び第2和音候補の列間で同一時点での前記第1及び第2和音候補を入れ替えて前記楽曲データを生成する入替ステップと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明を適用した楽曲処理システムを示している。この楽曲処理システムは、マイク入力装置1、ライン入力装置2、楽曲入力装置3、操作入力装置4、入力切替スイッチ5、アナログ/ディジタル変換装置6、和音解析装置7、データ蓄積装置8,9、一時記憶メモリ10、和音進行比較装置11、表示装置12、楽曲再生装置13、ディジタル/アナログ変換装置14及びスピーカ15を備えている。
【0010】
マイク入力装置1は、楽曲音をマイクロホンで集音可能にされ、その集音した楽曲音を示すアナログのオーディオ信号を出力する。ライン入力装置2には、例えば、ディスクプレーヤやテープレコーダが接続され、楽曲音を示すアナログのオーディオ信号を入力できるようにされている。楽曲入力装置3は和音解析装置7及びデータ蓄積装置8に接続され、ディジタル化されたオーディオ信号(例えば、PCMデータ)を再生する装置であり、例えば、CDプレーヤである。操作入力装置4は本システムに対してユーザが操作してデータや指令を入力するための装置である。操作入力装置4の出力は入力切替スイッチ5、和音解析装置7、和音進行比較装置11及び楽曲再生装置13に接続されている。
【0011】
入力切替スイッチ5は、マイク入力装置1及びライン入力装置2のうちのいずれか1の出力信号を選択的にアナログ/ディジタル変換装置6に供給する。入力切替スイッチ5の切替動作は操作入力装置4からの指令に応じて実行される。
アナログ/ディジタル変換装置6は、和音解析装置7及びデータ蓄積装置8に接続され、アナログのオーディオ信号をディジタル化し、ディジタル化オーディオ信号を楽曲データとしてデータ蓄積装置8に供給する。データ蓄積装置8にはアナログ/ディジタル変換装置6及び楽曲入力装置3供給された楽曲データ(PCMデータ)がファイルとして記憶される。
【0012】
和音解析装置7は、供給された楽曲データの和音を後述する和音解析動作によって解析する。一時記憶メモリ10には和音解析装置7によって解析された楽曲データの各和音が第1及び第2和音候補として一時的に記憶される。データ蓄積装置9には和音解析装置7によって解析されて和音進行楽曲データが楽曲毎にファイルとして記憶される。
【0013】
和音進行比較装置11は、検索対象の和音進行楽曲データとデータ蓄積装置9に記憶された和音進行楽曲データとを比較し、検索対象の和音進行楽曲データと類似性の高い和音進行楽曲データを検出する。表示装置12には和音進行比較装置11による比較結果が楽曲リストとして表示される。
楽曲再生装置13は、和音進行比較装置11によって類似性が最も高いとして検出された楽曲のデータファイルをデータ蓄積装置8から読み出して再生し、ディジタルオーディオ信号として順次出力する。ディジタル/アナログ変換装置14は楽曲再生装置13によって再生されたディジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換する。
【0014】
和音解析装置7、和音進行比較装置11及び楽曲再生装置13各々は操作入力装置4からの指令に応じて動作する。
次に、かかる構成の楽曲処理システムの動作について説明する。
ここでは楽曲音を示すアナログオーディオ信号がライン入力装置2から入力切替スイッチ5を介してアナログ/ディジタル変換装置6に供給され、そこでディジタル信号に変換された後、和音解析装置7に供給されたとする。
【0015】
上記した和音解析動作としては前処理、本処理及び後処理がある。和音解析装置7は前処理として周波数誤差検出動作を行う。
周波数誤差検出動作においては、図2に示すように、時間変数T及び帯域データF(N)が0に初期化され、更に変数Nの範囲が−3〜3の如く初期設定される(ステップS1)。入力ディジタル信号に対してフーリエ変換によって周波数変換を0.2秒間隔で行うことによって周波数情報f(T)が得られる(ステップS2)。
【0016】
今回のf(T)、前回のf(T−1)及び前々回のf(T−2)を用いて移動平均処理が行われる(ステップS3)。この移動平均処理では、0.6秒以内では和音が変化することが少ないという仮定で過去2回分の周波数情報が用いられる。移動平均処理は次式によって演算される。
f(T)=(f(T)+f(T−1)/2.0+f(T−2)/3.0)/3.0……(1)
ステップS3の実行後、変数Nが−3に設定され(ステップS4)、その変数Nは4より小であるか否かが判別される(ステップS5)。N<4の場合には、移動平均処理後の周波数情報f(T)から周波数成分f1(T)〜f5(T)が各々抽出される(ステップS6〜S10)。周波数成分f1(T)〜f5(T)は、(110.0+2×N)Hzを基本周波数とした5オクターブ分の平均律の12音のものである。12音はA,A#,B,C,C#,D,D#,E,F,F#,G,G#である。図3はA音を1.0とした場合の12音及び1オクターブ高いA音各々の周波数比を示している。ステップS6のf1(T)はA音を(110.0+2×N)Hzとし、ステップS7のf2(T)はA音を2×(110.0+2×N)Hzとし、ステップS8のf3(T)はA音を4×(110.0+2×N)Hzとし、ステップS9のf4(T)はA音を8×(110.0+2×N)Hzとし、ステップS10のf5(T)はA音を16×(110.0+2×N)Hzとしている。
【0017】
ステップS6〜S10の実行後、周波数成分f1(T)〜f5(T)は1オクターブ分の帯域データF'(T)に変換される(ステップS11)。帯域データF'(T)は、
F'(T)=f1(T)×5+f2(T)×4+f3(T)×3+f4(T)×2+f5(T)……(2)
の如く表される。すなわち、周波数成分f1(T)〜f5(T)各々は個別に重み付けされた後、加算される。1オクターブの帯域データF'(T)は、帯域データF(N)に加算される(ステップS12)。その後、変数Nには1が加算され(ステップS13)、そして、ステップS5が再度実行される。
【0018】
ステップS6〜S13の動作は、ステップS5においてNが4より小、すなわち−3〜+3の範囲であると判断される限り繰り返される。これによって音成分F(N)は−3〜+3の範囲の音程誤差を含む1オクターブ分の周波数成分となる。
ステップS5においてN≧4と判別された場合には、変数Tが所定値Mより小であるか否かが判別される(ステップS14)。T<Mの場合には、変数Tに1が加算され(ステップS15)、ステップS2が再度実行される。M回分の周波数変換による周波数情報f(T)に対して変数N毎の帯域データF(N)が算出される。
【0019】
ステップS14においてT≧Mと判別された場合には、変数N毎の1オクターブ分の帯域データF(N)のうちの各周波数成分の総和が最大値となるF(N)が検出され、その検出F(N)のNが誤差値Xとして設定される(ステップS16)。
この前処理によって誤差値Xを求めることによってオーケストラの演奏音等の楽曲音全体の音程が平均律と一定の差をもっている場合に、それを補償して後述の和音解析の本処理を行うことができる。
【0020】
前処理の周波数誤差検出動作が終了すると、和音解析動作の本処理が行われる。なお、誤差値Xが既に分かっている場合やその誤差を無視できる場合には、前処理は省略しても良い。本処理では楽曲全部について和音解析が行われるために楽曲の最初の部分から入力ディジタル信号は和音解析装置7に供給されるとする。
【0021】
本処理おいては、図4に示すように、入力ディジタル信号に対してフーリエ変換によって周波数変換を0.2秒間隔で行うことによって周波数情報f(T)が得られる(ステップS21)。このステップS21が周波数変換手段に対応する。そして、今回のf(T)、前回のf(T−1)及び前々回のf(T−2)を用いて移動平均処理が行われる(ステップS22)。ステップS21及びS22は上記したステップS2及びS3と同様に実行される。
【0022】
ステップS22の実行後、移動平均処理後の周波数情報f(T)から周波数成分f1(T)〜f5(T)が各々抽出される(ステップS23〜S27)。上記したステップS6〜S10と同様に、周波数成分f1(T)〜f5(T)は、(110.0+2×N)Hzを基本周波数とした5オクターブ分の平均律の12音A,A#,B,C,C#,D,D#,E,F,F#,G,G#である。ステップS23のf1(T)はA音を(110.0+2×N)Hzとし、ステップS24のf2(T)はA音を2×(110.0+2×N)Hzとし、ステップS25のf3(T)はA音を4×(110.0+2×N)Hzとし、ステップS26のf4(T)はA音を8×(110.0+2×N)Hzとし、ステップS27のf5(T)はA音を16×(110.0+2×N)Hzとしている。ここで、NはステップS16で設定されたXである。
【0023】
ステップS23〜S27の実行後、周波数成分f1(T)〜f5(T)は1オクターブ分の帯域データF'(T)に変換される(ステップS28)。このステップS28も上記のステップS11と同様に式(2)を用いて実行される。帯域データF'(T)は各音成分を含むことになる。ステップS23〜S28が成分抽出手段に相当する。
【0024】
ステップS28の実行後、帯域データF'(T)中の各音成分のうちの強度レベルが大きいものから6音が候補として選択され(ステップS29)、その6音候補から2つの和音M1,M2が作成される(ステップS30)。候補の6音のうちから1つの音を根音(ルート)として3音からなる和音が作成される。すなわち6C3通りの組み合わせの和音が考慮される。各和音を構成する3音のレベルが加算され、その加算結果の値が最大となった和音が第1和音候補M1とされ、加算結果の値が2番目に大きい和音が第2和音候補M2とされる。
【0025】
帯域データF'(T)の各音成分が図5に示すように12音に対する強度レベルを示す場合には、ステップS29ではA,E,C,G,B,Dの6音が選択される。その6音A,E,C,G,B,Dのうちの3音から作成される3和音は、(A,C,E)からなる和音Am、(音C,E,G)からなる和音C、(音E,B,G)からなる和音Em、(音G,B,D)からなる和音G、……の如くである。和音Am(音A,C,E)の合計強度レベルは12、和音C(音C,E,G)の合計強度レベルは9、和音Em(音E,B,G)の合計強度レベルは7、和音G(音G,B,D)の合計強度レベルは4である。よって、ステップS30では和音Amの合計強度レベル12が最大となるので、第1和音候補M1として和音Amが設定され、和音Cの合計強度レベル7が2番目に大きいので、第2和音候補M2として和音Cが設定される。
【0026】
また、帯域データF'(T)の各音成分が図6に示すように12音に対する強度レベルを示す場合には、ステップS29ではC,G,A,E,B,Dの6音が選択される。その6音C,G,A,E,B,Dのうちの3音から作成される3和音は、(音C,E,G)からなる和音C、(A,C,E)からなる和音Am、(音E,B,G)からなる和音Em、(音G,B,D)からなる和音G、……の如くである。和音C(音C,E,G)の合計強度レベルは11、和音Am(音A,C,E)の合計強度レベルは10、和音Em(音E,B,G)の合計強度レベルは7、和音G(音G,B,D)の合計強度レベルは6である。よって、ステップS30では和音Cの合計強度レベル11が最大となるので、第1和音候補M1として和音Cが設定され、和音Amの合計強度レベル10が2番目に大きいので、第2和音候補M2として和音Amが設定される。
【0027】
和音を構成する音は3音に限らず、セブンスやディミニッシュセブンス等の4音もある。4音からなる和音に対しては図7に示すように3音からなる2つ以上の和音に分類されるとしている。よって、4音からなる和音に対しても3音からなる和音と同様に、帯域データF'(T)の各音成分の強度レベルに応じて2つの和音候補を設定することができる。
【0028】
ステップS30の実行後、ステップS30において設定された和音候補数があるか否かが判別される(ステップS31)。ステップS30では少なくとも3つの音を選択するだけの強度レベルに差がない場合には和音候補が全く設定されないことになるので、ステップS31の判別が行われる。和音候補数>0である場合には、更に、その和音候補数が1より大であるか否かが判別される(ステップS32)。
【0029】
ステップS31において和音候補数=0と判別された場合には前回T−1(約0.2秒前)の本処理において設定された和音候補M1,M2が今回の和音候補M1,M2として設定される(ステップS33)。ステップS32において和音候補数=1と判別された場合には今回のステップS30の実行では第1和音候補M1だけが設定されたので、第2和音候補M2は第1和音候補M1と同一の和音に設定される(ステップS34)。ステップS29〜S34が和音候補検出手段に相当する。
【0030】
ステップS32において和音候補数>1と判別された場合には今回のステップS30の実行では第1及び第2和音候補M1,M2の両方が設定されたので、時刻、第1及び第2和音候補M1,M2が一時記憶メモリ10に記憶される(ステップS35)。一時記憶メモリ10には図8に示すように時刻、第1和音候補M1、第2和音候補M2が1組となって記憶される。時刻は0.2秒毎に増加するTで表される本処理実行回数である。そのTの順に第1及び第2和音候補M1,M2が記憶される。
【0031】
具体的には、一時記憶メモリ10に各和音候補を図8に示したように1バイトで記憶させるために、基本音とその属性との組み合わせが用いられる。基本音には平均律の12音が用いられ、属性にはメジャー{4,3}、マイナー{3,4}、セブンス候補{4,6}及びディミニッシュセブンス(dim7)候補{3,3}の和音の種類が用いられる。{ }内は半音を1とした場合の3音の差である。本来、セブンス候補は{4,3,3}及びディミニッシュセブンス(dim7)候補{3,3,3}であるが、3音で示すために上記のように表示している。
【0032】
基本音の12音は図9(a)に示すように16ビット(16進表記)で表され、属性の和音の種類は同様に図9(b)に示すように16ビット(16進表記)で表される。その基本音の下位4ビットと属性の下位4ビットがその順に連結されて図9(c)に示すように8ビット(1バイト)として和音候補として用いられる。ステップS35はステップS33又はS34を実行した場合にもその直後に実行される。
【0033】
ステップS35の実行後、楽曲が終了したか否かが判別される(ステップS36)。例えば、入力アナログオーディオ信号の入力がなくなった場合、或いは操作入力装置4からの楽曲の終了を示す操作入力があった場合には楽曲が終了したと判断される。これによって本処理が終了する。
楽曲の終了が判断されるまでは変数Tに1が加算され(ステップS37)、ステップS21が再度実行される。ステップS21は上記したように0.2秒間隔で実行され、前回の実行時から0.2秒が経過して再度実行される。
【0034】
後処理おいては、図10に示すように、一時記憶メモリ10から全ての第1及び第2和音候補がM1(0)〜M1(R)及びM2(0)〜M2(R)として読み出される(ステップS41)。0は開始時刻であり、開始時刻の第1及び第2和音候補がM1(0)及びM2(0)である。Rは最終時刻であり、最終時刻の第1及び第2和音候補がM1(R)及びM2(R)である。読み出された第1和音候補M1(0)〜M1(R)及び第2和音候補M2(0)〜M2(R)について平滑化が行われる(ステップS42)。この平滑化は和音の変化時点とは関係なく0.2秒間隔で和音候補を検出したことにより和音候補に含まれるノイズによる誤差を除去するために行われる。平滑化の具体的方法としては、3つの連続する第1和音候補M1(t−1),M1(t),M1(t+1)についてM1(t−1)≠M1(t)かつM1(t)≠M1(t+1)の関係が成立するか否かが判別され、その関係が成立する場合には、M1(t+1)にM1(t)は等しくされる。この判別は第1和音候補毎に行われる。第2和音候補についても同様の方法により平滑化は行われる。なお、M1(t+1)にM1(t)を等しくするのではなく、逆に、M1(t+1)をM1(t)に等しくしても良い。
【0035】
平滑化後、第1及び第2和音候補の入れ替え処理が行われる(ステップS43)。一般的に0.6秒のような短い期間には和音が変化する可能性は低い。しかしながら、信号入力段の周波数特性及び信号入力時のノイズによって帯域データF'(T)中の各音成分の周波数が変動することによって第1及び第2和音候補が0.6秒以内に入れ替わることが起きることがあり、これに対処するためにステップS43は行われる。第1及び第2和音候補が入れ替えの具体的方法としては、5つの連続する第1和音候補M1(t−2),M1(t−1),M1(t),M1(t+1),M1(t+2)及びそれに対応する5つの連続する第2和音候補M2(t−2),M2(t−1),M2(t),M2(t+1),M2(t+2)についての次の如き判別が実行される。すなわち、M1(t−2)=M1(t+2),M2(t−2)=M2(t+2),M1(t−1)=M1(t)=M1(t+1)=M2(t−2)及びM2(t−1)=M2(t)=M2(t+1)=M1(t−2)の関係が成立するか否かが判別される。この関係が成立する場合には、M1(t−1)=M1(t)=M1(t+1)=M1(t−2)及びM2(t−1)=M2(t)=M2(t+1)=M2(t−2)が定められ、M1(t−2)とM2(t−2)と間で和音の入れ替えが行われる。なお、M1(t−2)とM2(t−2)との間で和音の入れ替えに代えてM1(t+2)とM2(t+2)との間で和音の入れ替えを行っても良い。また、M1(t−2)=M1(t+1),M2(t−2)=M2(t+1),M1(t−1)=M1(t)=M1(t+1)=M2(t−2)及びM2(t−1)=M2(t)=M2(t+1)=M1(t−2)の関係が成立するか否かが判別される。この関係が成立する場合には、M1(t−1)=M1(t)=M1(t−2)及びM2(t−1)=M2(t)=M2(t−2)が定められ、M1(t−2)とM2(t−2)との間で和音の入れ替えが行われる。なお、M1(t−2)とM2(t−2)との間で和音の入れ替えに代えてM1(t+1)とM2(t+1)との間で和音の入れ替えを行っても良い。
【0036】
ステップS41において読み出された第1和音候補M1(0)〜M1(R)及び第2和音候補M2(0)〜M2(R)の各和音が、例えば、図11に示すように時間経過と共に変化する場合には、ステップS42の平均化を行うことによって図12に示すように修正される。更に、ステップS43の和音の入れ替えを行うことによって第1及び第2和音候補の和音の変化は図13に示すように修正される。なお、図11〜図13は和音の時間変化を折れ線グラフとして示しており、縦軸は和音の種類に対応した位置となっている。
【0037】
ステップS43の和音の入れ替え後の第1和音候補M1(0)〜M1(R)のうちの和音が変化した時点tのM1(t)及び第2和音候補M2(0)〜M2(R)のうちの和音が変化した時点tのM2(t)が各々検出され(ステップS44)、その検出された時点t(4バイト)及び和音(4バイト)が第1及び第2和音候補毎にデータ蓄積装置9に記憶される(ステップS45)。ステップS45で記憶される1楽曲分のデータが和音進行楽曲データである。かかるステップS42が平滑化手段に相当する。
【0038】
ステップS43の和音の入れ替え後の第1和音候補M1(0)〜M1(R)及び第2和音候補M2(0)〜M2(R)の和音が図14(a)に示すように時間経過と共に変化する場合には、変化時点の時刻と和音とがデータとして抽出される。図14(b)が第1和音候補の変化時点のデータ内容であり、F,G,D,B♭,Fが和音であり、それらは16進データとして0x08,0x0A,0x05,0x01,0x08と表される。変化時点tの時刻はT1(0),T1(1),T1(2),T1(3),T1(4)である。また、図14(c)が第2和音候補の変化時点のデータ内容であり、C,B♭,F#m,B♭,Cが和音であり、それらは16進データとして0x03,0x01,0x29,0x01,0x03と表される。変化時点tの時刻はT2(0),T2(1),T2(2),T2(3),T2(4)である。図14(b)及び図14(c)に示したデータ内容は楽曲の識別情報と共にデータ蓄積装置9には、ステップS45においては図14(d)に示すような形式で1ファイルとして記憶される。
【0039】
異なる楽曲音を示すアナログオーディオ信号について上記した和音分析動作を繰り返すことによりデータ蓄積装置9には複数の楽曲毎のファイルとして和音進行楽曲データが蓄積されることになる。また、楽曲入力装置4から出力される楽曲音を示すディジタルオーディオ信号について上記した和音分析動作を行うことによりデータ蓄積装置9には和音進行楽曲データが蓄積されることになる。なお、データ蓄積装置8にはデータ蓄積装置9の和音進行楽曲データに対応したPCM信号からなる楽曲データが蓄積される。
【0040】
ステップS44において第1和音候補のうちの和音が変化した時点の第1和音候補及び第2和音候補のうちの和音が変化した時点の第2和音候補が各々検出され、それが最終的な和音進行楽曲データとなるので、MP3のような圧縮データに比べても1楽曲当たりの容量を小さくすることができ、また、各楽曲のデータを高速処理することができる。
【0041】
また、データ蓄積装置9に書き込まれた和音進行楽曲データは、実際の楽曲と時間的に同期した和音データとなるので、第1和音候補のみ、或いは第1和音候補と第2和音候補との論理和出力を用いて実際に和音を楽曲再生装置13によって生成すれば、楽曲の伴奏が可能となる。
図15は本発明の他の実施例を示している。図15の楽曲処理システムにおいては、図1のシステム中の和音解析装置7、一時記憶メモリ10及び和音進行比較装置11がコンピュータ21によって形成されている。コンピュータ21は記憶装置22に記憶されたプログラムに応じて上記の和音解析動作を実行する。記憶装置22はハードディスクドライブに限らず、記録媒体のドライブ装置でも良い。その記録媒体のドライブ装置の場合には記録媒体に和音進行楽曲データを書き込むようにしても良い。
【0042】
上記した実施例においては、ライン入力装置2に入力されたアナログオーディオ信号を和音進行楽曲データに変換する場合について説明したが、楽曲入力装置3から出力されるディジタルオーディオ信号或いはマイク入力装置1に入力される演奏音を和音進行楽曲データに変換する場合についても上記の実施例の場合と同様である。また、ディジタルオーディオ信号はPCM信号に限らず、MP3のような圧縮されたファイルに応じた信号でも良い。圧縮ファイルの復号化に際して平均律周波数幅を満たす周波数分解能を有する周波数領域の情報が得られるならば、フーリエ変換等の周波数変換を省略することができる。
【0043】
以上のように、本発明によれば、周波数変換手段と、成分抽出手段と、和音候補検出手段と、平滑化手段とを備えたことにより、楽曲音を示すオーディオ信号に基づいて楽曲の和音進行を検出することができ、それに応じて容易に和音進行によって特徴付けられたデータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した楽曲処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】周波数誤差検出動作を示すフローチャートである。
【図3】A音を1.0とした場合の12音及び1オクターブ高いA音各々の周波数比を示す図である。
【図4】和音解析動作の本処理を示すフローチャートである。
【図5】帯域データの各音成分の強度レベル例を示す図である。
【図6】帯域データの各音成分の強度レベル例を示す図である。
【図7】4音からなる和音に対する3音からなる和音への変換を示す図である。
【図8】一時記憶メモリへの記録フォーマットを示す図である。
【図9】基本音及び和音の属性の表記方法、並びに和音候補の表記方法を示す図である。
【図10】和音解析動作の後処理を示すフローチャートである。
【図11】平滑化処理前の第1及び第2和音候補の時間変化を示す図である。
【図12】平滑化処理後の第1及び第2和音候補の時間変化を示す図である。
【図13】入れ替え処理後の第1及び第2和音候補の時間変化を示す図である。
【図14】和音進行楽曲データの作成方法及びそのフォーマットを示す図である。
【図15】本発明の他の実施例として楽曲処理システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
6 アナログ/ディジタル変換装置
7 和音解析装置
8,9 データ蓄積装置
11 和音進行比較装置
13 楽曲再生装置
14 ディジタル/アナログ変換装置
21 コンピュータ
Claims (13)
- 楽曲を示す入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段によって得られた周波数信号から平均律の各音に対応した周波数成分を前記所定の時間毎に抽出する成分抽出手段と、
前記成分抽出手段によって抽出された各音に対応した周波数成分のうちのレベル合計が大となる3つの周波数成分の組によって各々形成される2つの和音を第1及び第2和音候補として検出する和音候補検出手段と、
前記和音候補検出手段によって繰り返し検出された第1及び第2和音候補各々の列を平滑化処理して楽曲データを生成する平滑化手段と、
前記平滑化手段によって平滑化処理された前記第1及び第2和音候補の列各々において同一の和音候補が連続的に配置されるように前記第1及び第2和音候補の列間で同一時点での前記第1及び第2和音候補を入れ替えて前記楽曲データを生成する入替手段と、を備えたことを特徴とする楽曲データ作成装置。 - 前記周波数変換手段は、前記周波数信号を移動平均処理して出力することを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。
- 前記成分抽出手段は、複数オクターブ分の前記平均律の各音に対応した周波数成分を各々抽出するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段から出力される各オクターブの前記平均律の各音に対応した周波数成分のレベルに対して個別に重み付けをした後、互いに加算する重み付け加算して1オクターブ分の前記平均律の各音に対応した周波数成分を出力する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。 - 前記入力オーディオ信号の平均律の各音に対応した周波数成分に対する周波数誤差を検出する周波数誤差検出手段を有し、
前記成分抽出手段は、前記平均律の各音の周波数を前記周波数誤差を加えることによって補正し、その補正後の周波数成分を抽出することを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。 - 前記周波数誤差検出手段は、前記入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換する第2周波数変換手段と、
前記第2周波数変換手段によって所定の回数だけ周波数変換が行われる毎に複数の周波数誤差のうちの1の周波数誤差を指定する手段と、
複数オクターブ分の前記平均律の各音に対応した周波数と前記1の周波数誤差とを含む周波数成分を各々抽出するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段から出力される各オクターブの前記平均律の各音に対応した周波数成分のレベルに対して個別に重み付けをした後、互いに加算する重み付け加算して1オクターブ分の前記平均律の各音に対応した周波数成分を出力する手段と、
前記複数の周波数誤差毎に前記1オクターブ分の各周波数成分のレベルの合計を算出する加算手段と、を備え、
前記加算手段によってレベルが最大となった周波数誤差を検出周波数誤差とすることを特徴とする請求項4記載の楽曲データ作成装置。 - 前記和音候補検出手段は、前記レベル合計が最大となる3つの周波数成分の組によって形成される和音を前記第1和音候補とし、前記レベル合計がその次に大となる3つの周波数成分の組によって形成される和音を前記第2和音候補とすることを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。
- 前記平滑化手段は、前記第1和音候補の列のうちの連続する所定数の第1和音候補が互いに等しく、前記第2和音候補の列のうちの連続する前記所定数の第2和音候補が互いに等しくなるように前記第1和音候補又は前記第2和音候補の内容を変更することを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。
- 前記平滑化手段は、前記第1及び第2和音候補各々の列のうちの和音が変化した時点の和音候補だけにすることを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。
- 前記平滑化手段は、前記第1和音候補の列のうちの連続する3つの前記第1和音候補のうちの先頭の第1和音候補と中間の第1和音候補とが等しくなくかつ前記中間の第1和音候補と最後の第1和音候補とが等しくないときには、前記中間の第1和音候補を前記先頭の第1和音候補又は前記最後の第1和音候補と等しくさせ、前記第2和音候補の列のうちの連続する3つの前記第2和音候補のうちの先頭の第2和音候補と中間の第2和音候補とが等しくなくかつ中間の第2和音候補と最後の第2和音候補とが等しくないときには、前記中間の第2和音候補を前記先頭の第2和音候補又は前記最後の第2和音候補と等しくさせ、
前記入替手段は、前記第1和音候補の列のうちの連続する5つの前記第1和音候補と前記第2和音候補の列のうちの連続する5つの前記第2和音候補とのうちの1番目の第1和音候補が5番目の第1和音候補に等しく、1番目の第2和音候補が5番目の第2和音候補に等しく、2番目の第1和音候補と3番目の第1和音候補と4番目の第1和音候補と前記5番目の第2和音候補とが等しく、かつ2番目の第2和音候補と3番目の第2和音候補と4番目の第2和音候補と前記5番目の第1和音候補とが等しいときには、前記1番目の第1和音候補又は前記5番目の第1和音候補を前記2番目ないし前記第4番目の第1和音候補と等しくさせ、かつ前記1番目の第2和音候補又は前記5番目の第2和音候補を前記2番目ないし前記第4番目の第2和音候補と等しくさせ、
前記第1和音候補の列のうちの連続する前記1番目ないし4番目の第1和音候補と前記第2和音候補の列のうちの連続する前記1番目ないし4番目の第2和音候補とのうちの前記1番目の第1和音候補と前記4番目の第1和音候補とが等しく、前記1番目の第2和音候補と前記4番目の第2和音候補とが等しく、前記2番目の第1和音候補と前記3番目の第1和音候補と前記1番目の第2和音候補とが等しく、かつ前記2番目の第2和音候補と前記3番目の第2和音候補と前記1番目の第1和音候補とが等しいときには、前記1番目の第1和音候補又は前記4番目の第1和音候補を前記2番目及び前記第3番目の第1和音候補と等しくさせ、かつ前記1番目の第2和音候補又は前記4番目の第2和音候補を前記2番目及び前記第3番目の第2和音候補と等しくさせることを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。 - 前記楽曲データは、前記第1及び第2和音候補の列各々の和音変化時点と和音とを示すことを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。
- 前記楽曲データは、前記第1和音候補の列、又は前記第1及び第2和音候補の列の論理和出力であることを特徴とする請求項1記載の楽曲データ作成装置。
- 楽曲を示す入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換し、
前記周波数信号から平均律の各音に対応した周波数成分を前記所定の時間毎に抽出し、
その抽出した各音に対応した周波数成分のうちのレベル合計が大となる3つの周波数成分の組によって各々形成される2つの和音を第1及び第2和音候補として検出し、
前記第1及び第2和音候補各々の列を平滑化処理し、
前記平滑化処理後の前記第1及び第2和音候補の列各々において同一の和音候補が連続 的に配置されるように前記第1及び第2和音候補の列間で同一時点での前記第1及び第2和音候補を入れ替えて前記楽曲データを生成することを特徴とする楽曲データ作成方法。 - 楽曲を示す入力オーディオ信号に応じて楽曲データを作成する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記方法は、
前記入力オーディオ信号を所定の時間毎に周波数成分の大きさを示す周波数信号に変換する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップによって得られた周波数信号から平均律の各音に対応した周波数成分を前記所定の時間毎に抽出する成分抽出ステップと、
前記成分抽出ステップによって抽出された各音に対応した周波数成分のうちのレベル合計が大となる3つの周波数成分の組によって各々形成される2つの和音を第1及び第2和音候補として検出する和音候補検出ステップと、
前記和音候補検出ステップによって繰り返し検出された第1及び第2和音候補各々の列を平滑化処理する平滑化ステップと、
前記平滑化処理後の前記第1及び第2和音候補の列各々において同一の和音候補が連続的に配置されるように前記第1及び第2和音候補の列間で同一時点での前記第1及び第2和音候補を入れ替えて前記楽曲データを生成する入替ステップと、を備えたことを特徴とするプログラム。
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