JP4243888B2 - 食肉練製品包装用フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソーセージ、ハムなどの食肉練製品包装用フィルムに関する。特に油分(脂質)の比較的多い肉質物との密着性と自動包装充填機による製袋時の高周波シール性の両方を改良した食肉練製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、塩化ビニリデン系樹脂フィルムはその酸素ガス透過性、水蒸気透過性などが著しく小さいことにより食肉練製品の包装用として有用である。かかる食肉練製品包装用途では、食肉中より液汁が分離して細菌による汚染や腐敗が発生するのを防止するために、肉質物の密着性の良いフィルムが望まれており、従来より、塩化ビニリデン系樹脂フィルムと肉質物との密着性を改善する方法が検討されている。例えば、(a)特開昭49−94858号公報には、塩化ビニリデン系共重合体に分子内に1個以上のカルボキシル基を持つ単量体の単独重合体或いはそれらの共重合体或いはそれらの塩を配合する方法、(b)特開昭56−70047号公報には、塩化ビニリデン系共重合体にメタアクリル酸アルキルエステルと共重合可能で分子内に少なくとも1個以上のカルボキシル基を有する単量体から成る共重合体を配合する方法、(c)特開昭56−125445号公報には、塩化ビニリデン系共重合体に共重合ポリエステル樹脂を配合する方法、(d)特開昭54−142283号公報には、塩化ビニリデン系樹脂シームレスチューブにコロナ放電による表面処理を行う方法等が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の方法では、原料肉の種類、特に油分(脂質)含有量の多い肉質物において、塩化ビニリデン系樹脂フィルムと内容物である肉質物との密着性と、自動充填包装機による製袋時の高周波シール性(耐レトルト適性)との両立が困難であるという問題がある。つまり、許容できる肉密着性を発現させるには、塩化ビニリデン系共重合体に対して上記カルボキシル基含有アクリル系樹脂又は共重合ポリエステル樹脂を約1重量%を越える添加量を配合する、又は、単位表面積当たり25W・分/m2 を越えるコロナ放電処理(通常レベル)が必要であるが、このような従来の方法では高周波電極によるフィルム表面相互の熱融着が阻害されて自動充填包装機による高周波シール製袋不良によるレトルト熱処理時のパンク発生率が多くなるという問題がある。
【0004】
ところで、(e)特開昭53−16753号公報には、塩化ビニリデン系樹脂にスチレンを少なくとも20重量%以上含有するスチレン系共重合体若しくはスチレン/メチルメタクリレート系重合体及び必要に応じ可塑剤又は安定剤を配合する方法、(f)特開平5−255560号公報及び特開平8−208926号公報には、塩化ビニリデン系樹脂に可塑剤及びアクリレート/スチレンコポリマーを配合する方法、(g)特開平10−101878号公報及び特開平10−101884号公報には、少なくとも一つのガラス転移温度が−40℃以下で重量平均分子量が5千〜100万であるアクリル系樹脂を配合する方法が開示されている。しかし、これら(e)(f)(g)には分子内にカルボキシル基を有しないアクリル系樹脂を約1重量%を越える添加量を配合することによって塩化ビニリデン系樹脂の押出加工性が向上することが示されているが、塩化ビニリデン系樹脂ケーシングの肉密着性の改善に関しては全く触れられていない。
【0005】
これら従来技術において、塩化ビニリデン系樹脂フィルムと内容物である特に油分(脂質)含有量の多い肉質物との密着性と、自動充填包装機による製袋時の高周波シール性(耐レトルト適性)との両方とも優れたものは見られず、肉密着性を強めると高周波シール性(耐レトルト適性)は極力悪化し、高周波シール性(耐レトルト適性)を良好に保持すれば肉密着性は悪化してしまう状況で、肉密着性と高周波シール性(耐レトルト適性)とを兼備する塩化ビニリデン系樹脂フィルムを得ることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、優れた肉密着性と高周波シール性(耐レトルト適性)とを兼ね備える食肉練製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂の少なくとも1種を0.5重量%以上1重量%以下含有する塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルムであって、単位表面積当たり10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内でコロナ放電処理されてなることを特徴とする食肉練製品包装用フィルムである。以下、本発明の内容について説明する。
【0008】
本発明が従来技術と最も相違する点は、従来の塩化ビニリデン系樹脂フィルムの構成が、(A)塩化ビニリデン系樹脂と(B)カルボキシル基含有アクリル系樹脂又は共重合ポリエステル樹脂、(C)カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂、及び、(D)通常レベル(単位表面積当たり25W・分/m2 を越える)のコロナ放電による表面処理の4群の中から、(A)と(B)の2成分を必須とする場合と、(A)と(C)の2成分を必須とする場合、(A)単独に(D)通常レベルのコロナ放電による表面処理を必須とする場合の3通りであるのに対して、本発明は特定組成比の(A)と(C)の2成分に(D)より下回る低レベルのコロナ放電による表面処理(D’)を必須とすることである。
【0009】
上記、従来技術と相違するところの本発明の重要な効果は、従来困難であった肉密着性と高周波シール性(耐レトルト適性)の両立が可能になる点にある。
本発明における塩化ビニリデン系樹脂としては、従来公知のものが用いられ、例えば、主成分の塩化ビニリデン成分が70〜98重量%と、塩化ビニリデンと重合可能な単量体、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸アルキル基の炭素数が1から18のアクリル酸アルキルエステル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸アルキルエステル、酢酸ビニル等の不飽和単量体の少なくとも一種が30〜2重量%で、その重量平均分子量は9万〜14万の範囲の共重合体が挙げられる。その中でも、押出加工性の観点から塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの中の1つを23〜4重量%と塩化ビニリデン成分が77〜96重量%のものがより好ましい。
【0010】
本発明における塩化ビニリデン系樹脂組成物は特に高周波シール性(耐レトルト適性)の点からカルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂の少なくとも1種を含有する。これに対して、従来技術のようにアクリル系樹脂としてカルボキシル基含有のものを用いると、高周波による溶融と冷却固化が阻害されて高周波シール性(耐レトルト適性)が悪化する問題が生じるのである。
【0011】
本発明におけるカルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂としては、カルボキシル基を含有する単量体、詳しくは、モノ、ジ、トリ等の不飽和カルボン酸、又は、不飽和多価カルボン酸の部分アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸、エタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、又は、これら不飽和多価カルボン酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル等の部分エステル等を実質的に含有させずして重縮合させたアクリル系樹脂が挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主体(50重量%以上)として重縮合させた共重合体等が含まれる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主体(50重量%以上)として重縮合させた共重合体には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸ペプチル、(メタ)アクリル酸オクチル及びそれらの異性体等の1種或いは2種以上の混合単量体の共重合体が挙げられ、又、これらの1部をスチレン等の芳香族ビニル、酢酸ビニル等、共重合可能な他の単量体で置き換え使用しても良い。これらのうち、より好ましく使用されるカルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂には、メタアクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレンの三元共重合体が挙げられる。
【0012】
本発明で用いられる塩化ビニリデン系樹脂組成物において、上記カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂の含有量は、肉密着性の点から0.5重量%以上であり、高周波シール性(耐レトルト適性)の点から1.0重量%以下である。本発明で用いられる塩化ビニリデン系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、塩化ビニリデン系樹脂と混合される公知の加工助剤を添加できる。このような加工助剤としては、例えば、安定剤、可塑剤、染料又は顔料などの着色剤、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、脂肪酸アミド等に代表される梨地剤、滑剤、核剤などが挙げられ、樹脂量に対して合計量で0.01〜10重量%添加することができる。かかる加工助剤として好ましい安定剤としては、可塑剤としても作用する室温(23℃)で液状である線状エポキシ化大豆油などの脂肪族エポキサイド型、エピクロロヒドリン/ビスフェノールAエポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型、エポキシヘキサヒドロフタル酸エステルなどの脂環族エポキサイド型のエポキシ系熱安定剤、ペンタエリスルチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのヒンダードフェノール系、チオジプロピオン酸ジラウリルなどのチオエーテル系、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどのホスファイト系の各種市販されている抗酸化剤、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物などのヒンダードアミン系、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系の各種市販されている光安定剤、(水)酸化マグネシウム、縮合リン酸塩類などの脱塩化水素捕捉剤、その他、クエン酸(塩)、ステアリン酸アルキル類などが挙げられる。より好ましい可塑剤としては、ジブチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル、アセチルクエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0013】
本発明のフィルムを構成する樹脂組成物は、各成分を通常の方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、混練機などを用いて混合することにより調製することができる。又、塩化ビニリデン系共重合体の重合中あるいは重合後の工程で各成分を適宜添加混合して調整しても良い。又、本発明の樹脂組成物は本発明の食肉練製品の保存に有用な包装用フィルムであれば、通常の溶融成形法により、延伸及び未延伸、単層体及び多層構造体のフィルムとすることができる。好ましくは、該組成物を押出機のサーキュラーダイから溶融押出し、得られた管状物を室温以下の第1浴槽に通した後、約5〜50℃の第2浴槽に通し、2組のピンチローラー間に空気を入れて膨らませたバブルを形成させるインフレーション法等により延伸フィルムを製造することができる。
【0014】
本発明で用いられるフィルムには肉密着性、高周波シール性(耐レトルト適性)の点から単位表面積当たり10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内でコロナ放電処理がなされている。
本発明でいうコロナ放電処理とは、公知のコロナ放電処理機により、高電圧発生機に接続した電極とEPラバーなどで被覆した金属ロールの間に特定の間隔を設け、数百kC/sの高周波で数千〜数万kVの高電圧をかけて電極−金属ロールの間隙に空気層が絶縁破壊されてイオン化した高圧コロナを発生させ、この間隙に被処理フィルムを一定の速度で走らせることで、フィルム表面にコロナを生成したオゾン、酸化窒素等が反応して化学的及び物理的に変性させる表面処理方法で、フィルムの印刷やラミネート分野で多く活用されている。処理の程度は、主に、電圧、消費電流、フィルム通過速度で決まり、電極−金属ロールの間隙、金属ロール被覆ラバー厚みでも影響されると言われているが、本発明においては、特に限定はないが一般的なコロナ放電処理機として、市販のコロナ表面処理装置(日本スタテック製GT140:金属ロール被覆ラバー厚み約3mm、電極−金属ロールの間隙約2mm固定)を用いて、下記計算式で与えられる単位表面積当たりの処理量(W・分/m2 )を指標に評価を行った。
【0015】
(単位表面積当たりの処理量:W・分/m2 )
=(発信器出力電圧:V)×(処理電流:A)
/[(フィルム巾:m)×(ライン速度:m/分)]
一般にフィルムの印刷やラミネートに必要とされる通常レベルの単位表面積当たりのコロナ放電処理(通常レベル)は25W・分/m2 を越える処理とされているが、塩化ビニリデン系樹脂フィルムに対して通常レベルの処理量では肉密着性は良好であるものの、高周波シール性(耐レトルト適性)が不十分であるという問題がある。これに対して本発明では、塩化ビニリデン系樹脂フィルムに対して低レベルのコロナ放電処理を施すことが重要である。更に、10W・分/m2 未満では肉密着性が不十分であり15W・分/m2 を越えるコロナ放電処理では高周波シール特性(耐レトルト適性)が悪化する問題があることから、10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内で処理を行っている。
【0016】
次に、本発明の構成が効果に及ぼす影響について、図1及び図2を用いて説明する。尚、図1及び図2は、本発明の実施例及び比較例の内容を示す説明図で、図1は特定範囲内のコロナ放電処理が肉密着性に及ぼす効果を、図2は特定範囲内のコロナ放電処理がレトルト適性に及ぼす効果を示す図である。
図1、2において(A)は加工助剤が含有されてなる塩化ビニリデン系樹脂で、塩化ビニリデン/塩化ビニル共重合体(共重合重量比は約90/10)に安定剤としてエポキシ化アマニ油を1重量%及び可塑剤としてアセチルクエン酸トリブチルを3重量%とジブチルセバテートを4重量%添加したものを示す。(B)はカルボキシル基含有アクリル系樹脂又は共重合ポリエステル樹脂で、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(共重合重量比は約62/36/2、三菱レイヨン株式会社製「ダイヤナールBRレジン」)を示す。(C)はカルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂で、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン共重合体(共重合重量比は約40/30/30、三菱レイヨン株式会社製「メタブレンP」)を示す。
【0017】
図1及び図2の図中の曲線は、それぞれ、特定範囲内のコロナ放電処理に対する疑似肉付着量及びレトルト適性の評価結果を示したもので、×印は(A)単体の場合〔比較例1実験No.5〜11〕、◇印は組成重量比(A)/(C)=99.8/0.2の場合〔比較例1実験No.12〜18〕、○印は組成重量比(A)/(C)=99.5/0.5の場合〔実施例1実験No.1〜2比較例1実験No.19〜23〕、☆印は組成重量比(A)/(C)=99.0/1.0の場合〔実施例1実験No.3〜4比較例1実験No.24〜28〕、△印は組成重量比(A)/(C)=98.5/1.5の場合〔比較例1実験No.29〜35〕、◆印は組成重量比(A)/(B)=99.8/0.2の場合〔比較例3実験No.48〜53〕、●印は組成重量比(A)/(B)=99.5/0.5の場合〔比較例3実験No.54〜59〕、★印は組成重量比(A)/(B)=99.0/1.0の場合〔比較例3実験No.60〜65〕を示すものである。
【0018】
まず、図1の特定範囲内のコロナ放電処理が肉密着性に及ぼす効果について述べる。図1の縦軸は疑似肉付着量を、横軸は単位表面積当たりのコロナ放電処理量を表している。疑似肉付着量の評価とは、フィルムと比較的澱粉や油分(脂質)含有量の多い肉質物である内容物の付着状態(肉密着性)を普遍評価するために本発明者らが開発した方法であり、詳しくは後述する。図1より明らかなように、コロナ放電処理量の増加に伴い疑似肉付着量は増加する傾向が分かる。
【0019】
次に、図2の特定範囲内のコロナ放電処理がレトルト適性に及ぼす効果について述べる。図2の縦軸はレトルト熱処理後のパンク率を、横軸は単位表面積当たりのコロナ放電処理量を表している。高周波シール包装体のレトルト適性は後述する。図2より明らかなように、コロナ放電処理量の増加に伴いレトルトパンク発生率は増加し高周波シール性(耐レトルト適性)が悪化する傾向が分かる。
【0020】
すなわち、図1及び図2の両方の結果で明らかなように、従来技術に属する加工助剤が含有されてなる塩化ビニリデン系樹脂フィルム(A)に通常レベルのコロナ放電処理(D)(単位表面面積当たり25W・分/m2 以上)を施すと高度な肉密着性を示すが良好な高周波シール性が得られず(レトルトパンク発生率が多い)、又、カルボキシル基含有アクリル系樹脂を含有する塩化ビニリデン系樹脂フィルム[(A)/(B)]に低レベルのコロナ放電処理(D’)を施しても同様であり、従来技術範囲において高度な肉密着性と良好な高周波シール性を両立させる領域が全くないことが分かる。一方、本発明の(C)を含有する塩化ビニリデン系樹脂フィルムの組成比(A)/(C)が99.5/0.5から99.0/1.0の範囲内で、且つ、低レベルのコロナ放電処理(D’)(単位表面面積当たり10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内)〔実施例1〕において、初めて、高度な肉密着性と良好な高周波シール性(レトルトパンク発生率の少ない)を有する食肉錬製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムが得られる。
【0021】
本発明でいう食肉練製品包装用フィルムとは、一般的にハム・ソーセージなどで知られている円筒状の物などの包装用フィルムであり、自動充填包装機(旭化成製工業株式会社製「ADP」等)により予め平状フィルムを高周波シール等で筒状に成形した後に魚肉・畜肉等の肉質物の食肉練製品である内容物を充填してから両端部をアルミニウム鋼線等でクリップした包装体となした後、該包装体を一般に約80℃〜130℃の(加圧)熱水中で数十分間のボイル又はレトルト熱処理により殺菌・調理されて使われることが多い。このような食肉練製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムには、内容物である肉質物より油液等がフィルムと肉の界面に遊離すると上記包装体のクリップ部分(不完全シール帯域)から侵入した腐敗菌が油液域を辿って拡散・増殖していくため、その酸素ガス透過性、水蒸気透過性の特性以外に肉質物の密着性が望まれている訳である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、さらに詳細に説明する。
まず、実施例・比較例に使用する樹脂の内容を表1に示す。
次に、本発明で用いる評価法は下記の通りである。
(1)疑似肉付着量
疑似肉付着量の評価は、フィルムへの肉質物の肉密着性を評価するための代用特性評価であり、その方法は以下の通りである。
【0023】
23℃雰囲気中において卵製アルブミン(JIS K8068一級品)25重量%水溶液と小麦粉(日清製粉製薄力一等粉)との重量比1:1の混合物100重量部にサラダ油(CGC製食用なたね油/食用大豆油調合品)1.5重量部を良く攪拌混合して調整した疑似肉を供試する高周波シールにより製袋された内径30mmの筒状フィルムに自動充填包装機(旭化成工業株式会社製「ADP」)により両端部をアルミニウム鋼線等でクリップした密封包装(長手方向100mm)したのち、この包装体をボイル熱処理(90℃の熱水中に30秒間浸漬)後に冷却(23℃水中に1時間浸漬)したものを表面に付着した水滴を濾紙にて拭き取り乾燥(23℃65%RH雰囲気中3時間放置)する。次に包装体の中央部の随所を長手方向に50mmの巾をもって円周方向に2本の切取線をつけ、切取線に囲まれた部分に切目を入れ、該円周方向の50mm巾のフィルムを剥ぎ取り、これを試験片とする。
【0024】
試験片への疑似肉付着量の測定は、23℃65%RH雰囲気中室内で、先ず剥ぎ取り後5分以内に試験片を秤量(W1)し、次に試験片表面に付着した疑似肉を流水中で洗浄除去して濾紙で水滴を拭き取り乾燥(23℃65%RH雰囲気中3時間放置)した後に残ったフィルムを秤量(W2)して、下記計算式により得られた付着量の試験片5枚の平均値をもって、その試料の疑似肉付着量とした。
【0025】
付着量[mg/cm2 ]=(W1−W2)/(試験片面積)
疑似肉付着量は以下の評価尺度で3段階評価し、2.0mg/cm2 以上が実用上合格レベルで、これは油分(脂質)含有量の多い肉質物でも肉密着性がよい領域であることを示している。
評価尺度:
評価記号 尺 度
○ 2.0mg/cm2 以上
△ 1.0mg/cm2 以上2.0mg/cm2 未満
× 1.0mg/cm2 未満
(2)肉密着性
肉密着性の評価は、実際のソーセージ等の内容物である肉質物のフィルムへの肉付着面積を調べるもので、その方法は以下の通りである。
【0026】
下記2種類(I)(II)の組成の充分に混練された肉質物を、それぞれ供試する高周波シールにより製袋された内径30mmの筒状フィルムに自動充填包装機(旭化成工業株式会社製「ADP」)により両端部をアルミニウム鋼線等でクリップした密封包装(長手方向100mm)したのち、この包装体をレトルト熱処理(レトルト釜にて120℃熱水中に20分間処理:圧0.25MPa)後に冷却(23℃水中に1時間浸漬)したソーセージ充填体を、表面に付着した水滴を濾紙にて拭き取り乾燥(23℃65%RH雰囲気中3時間放置)する。次に包装体の中央部の随所を長手方向に50mmの巾をもって円周方向に2本の切取線をつけ、切取線に囲まれた部分に切目を入れ、該円周方向の50mm巾のフィルムを剥ぎ取り、これを試験片とする。
上記で得た肉質物(I)及び(II)について、試験片を碁盤目の入ったガラス板上に置き、肉が付着している部分の面積から試験片全面積に対する肉部分の割合を求め、試験片5枚の平均値をもって、その試料の肉密着量とした。
【0027】
肉密着性は以下の評価尺度で3段階評価した。魚肉成分主体の肉質物(I)に比べて、肉質物(II)は油分(脂質)含有量の多い畜肉成分主体であることから、肉密着性の合格レベルは肉質物(II)において試験片全面積に対して80%以上付着することが望ましい。
評価尺度:
評価記号 尺 度
○ 80%以上
△ 70%以上80%未満
× 70%未満
(3)高周波シール包装体のレトルト適性
高周波シール包装体のレトルト適性の評価は、コロナ放電処理したフィルムについての高周波シール適性を表すもので、その方法は以下の通りである。
【0028】
上記(II)組成の充分に混練された肉質物を、それぞれ供試する高周波シールにより製袋された内径30mmの筒状フィルムに自動充填包装機(旭化成工業株式会社製「ADP」)により両端部をアルミニウム鋼線等でクリップした密封包装(長手方向100mm)したのち、この包装体をレトルト実使用温度より約20℃高い過酷レトルト熱処理(レトルト釜にて140℃熱水中に20分間処理:圧0.25MPa)後に冷却(23℃水中に1時間浸漬)したソーセージ充填体100本の高周波シール部位からの破裂数からパンク率を算出した。
【0029】
高周波シール包装体のレトルト適性は以下の評価尺度で3段階評価し、合格レベルのパンク率は20%未満であり、レトルト実使用温度領域(120〜130℃)において実用上問題なく使用できる領域である。
評価尺度:
評価記号 尺 度
○ 20%未満
△ 20%以上30%未満
× 30%以上
(4)総合評価
上記の疑似肉付着量、肉密着性、高周波シール包装体のレトルト適性の評価の総合結果指標を以下に示す。
評価尺度:
評価記号 尺 度
○ ×、△が無くて○がある場合で、課題は高水準に達成される
△ ×が無くて△がある場合で、課題を達成したとは言い難い
× ×がある場合で、課題が達成されていない
【0030】
【実施例1】
加工助剤を含有する塩化ビニリデン/塩化ビニル共重合体[表1記号(A)]樹脂に、カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂としてメタクリル酸樹脂としてメタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン共重合体[表1記号(C1)]を0.5重量%含有した組成物をリボンブレンダーで混合調製した。次いで、該組成物を押出機(口径40mm、L/D=18)の円形ダイ(直径27mm、スリット1.1mm)から押出量15kg/hr、押出樹脂温度185℃の条件で溶融押出して得られた厚さ約0.3mmの管状物を10℃の第1浴槽に通した後、50℃の第2浴槽に通し、2組のピンチローラー間に空気を入れて約3×6倍のインフレーション延伸成形して約40μm厚のダブルフィルムを得、該ダブルフィルムを延伸完了から巻き取り工程の間に設けたコロナ放電処理機(日本スタテック製GT140:金属ロール被覆ラバー厚み約3mm、電極−金属ロールの間隙約2mm固定)により単位表面積当たり10W・分/m2でコロナ放電処理し、巻き取った後、巻き取り完了から室温(23℃)雰囲気中7日間保管し、フィルムを得た(実験No.1)。得られたフィルムの擬似肉付着量、肉密着性、高周波シール包装体のレトルト適性を上記方法で評価した。
【0031】
上記単位表面積当たりのコロナ放電処理を15W・分/m2 に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらを実験No.2とした。
又、上記カルキシル酸基を含有しないアクリル系樹脂[表1記号(C1 )]の樹脂量に対する含有量を1重量%に変えたことの他は実験No.1及びNo.2と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.3〜4とした。
【0032】
【比較例1】
上記塩化ビニリデン系樹脂混合物(A)/(C1 )の混合重量比を100/0[(A)単独]、99.8/0.2、上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分/m2]を0(未処理)、5、10、15、20、25、30に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.5〜18とした。又、上記塩化ビニリデン系樹脂混合物(A)/(C1)の混合重量比を99.5/0.5、99.0/1.0、上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分/m2 ]を0(未処理)、5、20、25、30に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.19〜28とした。又、上記塩化ビニリデン系樹脂混合物(A)/(C1 )の混合重量比を98.5/1.5、上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分/m2 ]を0(未処理)、5、10、15、20、25、30に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.29〜35とした。
【0033】
実施例1、比較例1の結果を表2〜4にまとめて示す。これらの結果によると、本発明の(A)/(C1 )の混合比が99.5/0.5から99.0/1.0の範囲内で、且つ、単位表面積当たり10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内の低レベルのコロナ放電処理を施したフィルムにおいて、初めて、高度な肉密着性と良好な高周波シール性(レトルトパンク発生率の少ない)を有するものが得られることが分かる〔実験No.1〜4〕。これに対して、従来技術に属する(A)単独に単位表面面積当たり25W・分/m2 以上の通常レベルのコロナ放電処理を施すと高度な肉密着性を示すが良好な高周波シール性が得られずレトルトパンク発生率が多いことが分かる。〔実験No.10〜11〕
【0034】
【実施例2】
上記カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂にメタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸ブチル共重合体[表1記号(C2)]を用い、(A)/(C2)の混合重量比を99.5/0.5、99.0/1.0、上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分/m2]を10、15に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.36〜39とした。
【0035】
【比較例2】
上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分/m2 ]を0(未処理)、5、20、25に変えたことの他は実験No.36〜39と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.40〜47とした。
【0036】
【比較例3】
上記カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂の代わりにカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂としてメタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体[表1記号(B1)]を用い、(A)/(B1)の混合重量比を99.8/0.2、99.5/0.5、99.0/1.0、上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分/m2]を0(未処理)、5、10、15、20、25に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.48〜65とした。
【0037】
【比較例4】
上記カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂の代わりに共重合ポリエステル樹脂としてテレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/1,4−ブタンジオール共重合体[表1記号(B2)]を用い、(A)/(B2)の混合重量比を99.8/0.2、99.5/0.5、99.0/1.0、上記単位表面積当たりのコロナ放電処理[単位:W・分・m2]を0(未処理)、5、10、15、20、25に変えたことの他は実験No.1と同様に実験を繰り返し、これらをそれぞれ実験No.66〜77とした。
【0038】
実施例2及び比較例2〜4の結果を表4〜7にまとめて示す。これらの結果によると、本発明の(A)/(C2 )の混合比が99.5/0.5から99.0/1.0の範囲内で、且つ、単位表面面積当たり10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内の低レベルのコロナ放電処理を施したフィルムにおいて、初めて、高度な肉密着性と良好な高周波シール性(レトルトパンク発生率の少ない)を有するものが得られることが分かる〔実験No.36〜39〕。これに対して、従来技術に属する(A)/(B1 )〔実験No.48〜65〕及び(A)/(B2 )〔実験No.66〜77〕の組成フィルムは、高度な肉密着性を示すが良好な高周波シール性が得られずレトルトパンク発生率が多いことが分かる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【発明の効果】
本発明によって、上記の実施例・比較例で明確に示したように、原料肉の種類、特に油分(脂質)含有量の多い肉質物においても、塩化ビニリデン系樹脂フィルムと内容物である肉質物との密着性と、自動充填包装機による製袋時の高周波シール性(耐レトルト適性)の特性が優れる食肉練製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の食肉練製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムにおけるコロナ放電処理量を変更した場合の疑似肉付着量との関係を示した図である。
【図2】本発明の食肉練製品包装用塩化ビニリデン系樹脂フィルムにおけるコロナ放電処理量を変更した場合のレトルト熱処理後のパンク率との関係を示した図である
Claims (1)
- カルボキシル基を含有しないアクリル系樹脂の少なくとも1種を0.5重量%以上1重量%以下含有する塩化ビニリデン系樹脂組成物からなるフィルムであって、単位表面積当たり10W・分/m2 以上15W・分/m2 以下の範囲内でコロナ放電処理されてなることを特徴とする食肉練製品包装用フィルム。
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