JP4242519B2 - 3点法による形状測定方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3つの検出器から得られた検出データから測定物の形状データや真円度等を測定する3点法による形状測定方法及び装置に関し、特に3つの検出器の相対角度を正確に求める方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
円形ワークの真円度を測定する真円度測定機等では、通常、ワークを回転テーブルの上に設置し、回転テーブルを回転させながらワークの半径方向の変位を検出器で検出する。この際、検出されたデータには、ワークの形状情報の他にテーブルの回転誤差及びワークの回転中心とテーブルの回転中心の偏心等が重畳される。このため真円度測定においては、検出器により取得したデータからテーブルの回転誤差およびワークとテーブルの偏心を取り除き、ワークの形状情報のみを正しく抽出する必要がある。このための手法として、従来より3つの検出器を用いた3点法測定が用いられている。
【0003】
図8は、この3点法測定を説明するための図である。真円度を測定するワーク4の周りには、3つの検出器1,2,3がそれぞれの検出面をワーク4に向けて所定の角度をもって配置される。いま検出器1,2の相対角度はθN1、検出器1,3の相対角度はθN2に設定されているものとし、各検出器1,2,3のセンサ軸の交点をO、この点Oを通る直角座標系をX−Y、X軸からの回転体の回転角をθとする。ワーク4の平均半径をr0として、ワーク4の形状をフーリエ展開によって表すと、次のようになる。
【0004】
【数1】
【0005】
各検出器1,2,3の出力DA(θ),DB(θ),DC(θ)は、次のようになる。
【0006】
【数2】
DA(θ)=RA−r(θ)+x(θ)
DB(θ)=RB−r(θ−θN1)+x(θ)cosθN1+y(θ)sinθN1
DC(θ)=RC−r(θ−θN2)+x(θ)cosθN2+y(θ)sinθN2
【0007】
ここで、RA,RB,RCは検出器1,2,3と点Oとの距離を、またx(θ),y(θ)は、ラジアル振れのX,Y方向の成分をそれぞれ示している。検出器1,2,3の各出力に、係数1,a,bをそれぞれ乗じた上で加え合わせると、その合計出力は次のようになる。
【0008】
【数3】
【0009】
但し、αk,βkは、次式で定義される。
【0010】
【数4】
αk=1+acos(kθN1)+bcos(kθN2)
βk=asin(kθN1)+bsin(kθN2)
【0011】
数3の最初の4項は定数であり、ゼロに調整することができ、更に第5項及び第6項について次の式が成り立つようにθN1、θN2に従属してa,bを定める。
【0012】
【数5】
1+acos(θN1)+bcos(θN2)=0
asin(θN1)+bsin(θN2)=0
【0013】
このようにすると、数3は、x(θ),y(θ)に無関係となるので、合成出力D(θ)は、次のようになる。
【0014】
【数6】
【0015】
そこで、合成出力D(θ)をN次までフーリエ変換し、得られた係数Fk,Gkを用いてAk,Bkを求めることにより、回転軸の偏心や回転誤差等の影響を受けずにワーク4の形状を求めることができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、3点法測定は自律校正原理に基づく誤差分離が可能である等の優れた特徴を持つ反面、高次成分を算出するためには、検出特性が校正された3つの検出器の配置角度設定を禁止領域を回避して極めて高精度に行う必要がある(原外満他「3点法による真円度測定における高次成分算出の試行」日本機械学会論文No.95-1627)。このため、検出器を配置するには、熟練を要する面倒な作業が必要不可欠であった。
【0017】
そこで、従来は検出器の正確な設定角度を得るために、段差などの特徴のあるワークを使用して測定したデータから設定角度の検出を行うようにしていた(前掲論文)。しかし、この方式は、ワークの直径が角度検出用ワークと大きく異なる場合、検出器を直径方向に伸縮させて再配置する必要があり、その際に設定角度が変化してしまうことや、角度設定後の測定機の温度変化により、設定角度がずれるなどの問題があった。
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、検出器の相対角度測定や再配置等の熟練を要する設定作業が不要で、環境変化などにより検出器間の相対角度が経時的に変化した場合でも、通常の測定データから各検出器の角度を正確に算出することができ、これによって正確で且つ容易に測定結果を求めることができる3点法による形状測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る3点法による形状測定装置は、回転するワークの周囲にその回転方向に所定角度をもってそれぞれ配置されて、それぞれが前記ワークの回転に伴う前記ワーク表面の半径方向への変位を検出して検出信号を出力する第1、第2及び第3の検出器と、これら第1〜第3の検出器の検出信号からそれぞれ前記ワークの形状データを含む空間周波数成分を抽出する第1、第2及び第3のフィルタ手段と、前記第1のフィルタ手段の出力と前記第2のフィルタ手段の出力とをサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第1のシフト量を求めると共に、前記第1のフィルタ手段の出力と前記第3のフィルタ手段の出力とをサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第2のシフト量を求め、前記第1のシフト量から前記第1及び第2の検出器間の第1の相対角度を求め、前記第2のシフト量から前記第1及び第3の検出器間の第2の相対角度を求める相対角算出手段と、前記第1〜第3の検出器の検出信号と相対角算出手段で算出された第1及び第2の相対角度とに基づいて3点法により前記ワークの形状を算出する3点法演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る3点法による形状測定方法は、回転するワークの周囲にその回転方向に所定角度をもってそれぞれ配置された3つの検出器によって、前記ワークの回転に伴う前記ワーク表面の半径方向への変位を示す第1〜第3の検出信号を得、これら第1〜第3の検出信号と、前記第1〜第3の検出器の相対角度とに基づいて、前記ワークの形状を算出する3点法による形状測定方法において、前記第1〜第3の検出信号からぞれぞれ前記ワークの形状データを含む空間周波数成分を抽出して第1〜第3のフィルタ処理済信号を生成するステップと、前記第1〜第3のフィルタ処理済信号のうち第1及び第2のフィルタ処理済信号をサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第1のシフト量を求めると共に、前記第1及び第3のフィルタ処理済信号をサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第2のシフト量を求め、前記第1のシフト量から前記第1及び第2の検出器の間の第1の相対角度を求め、前記第2のシフト量から前記第1及び第3の検出器の間の第2の相対角度を求めるステップと、前記第1〜第3の検出信号と前記第1及び第2の相対角度とに基づいて3点法により前記ワークの形状を算出するステップとを備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、3つの検出器から得られた測定データから3点測定法に必要な3つの検出器の相対角度を得ることが可能になるため、従来必要であった検出器の相対角度測定並びに再配置が不要となり、測定作業効率を大幅に高めることができる。また、本発明によれば、角度設定後の測定機の温度変化により相対角度がずれた場合、それを実測データ取得時の相対角度を使用して3点法測定の計算を行うことで、温度変化による影響を小さくすることができる。
【0022】
なお、前記第1及び第2の相対角度を求めるステップは、例えば前記第1及び第2のフィルタ処理済信号を、前記第1及び第2の検出器の相対角度の初期推定値に応じたシフト量だけサンプリング方向に相対的にシフトさせて、前記シフトされた第1及び第2のフィルタ処理済信号の誤差を求めたのち、前記シフト量を変化させて再度誤差を求め、前記誤差が少なくなる方向に前記シフト量を増減させて前記誤差が最も少なくなったときのシフト量から前記第1の相対角度を求めるステップと、前記第1及び第3のフィルタ処理済信号を、前記第1及び第3の検出器の相対角度の初期推定値に応じたシフト量だけサンプリング方向に相対的にシフトさせて、前記シフトされた第1及び第3のフィルタ処理済信号の誤差を求めたのち、前記シフト量を変化させて再度誤差を求め、前記誤差が少なくなる方向に前記シフト量を増減させて前記誤差が最も少なくなったときのシフト量から前記第2の相対角度を求めるステップとを有するものである。
【0023】
また、このような前記第1及び第2の相対角度を求めるステップとして、例えば前記各フィルタ処理済信号対の誤差を前記フィルタ処理済信号対の差分の二乗和又は絶対値和として求め、前回求められた誤差と今回求められた誤差との差分が所定の値を下回ったときに得られたシフト量から前記第1及び第2の相対角度を求めるようにすることができる。
【0024】
また、前記第1及び第2の相対角度を求める他のステップにとして、例えばサンプリング方向の最小分解能に対応する角度をP1、Lを自然数、θ1をシフト量とし、シフト範囲の下限θ1Lをθ1−P1×2L、シフト範囲の上限θ1Hをθ1+P1×2L、シフト範囲の下限θ1Lと上限θ1Hの中央値をθ1Mとしたときに、中央値θ1Mにおける傾きが増加傾向である場合には、θ1Mを新たなシフト範囲の上限θ1Hとし、中央値θ1Mにおける傾きが減少傾向である場合には、θ1Mを新たなシフト範囲の下限θ1Lとし、シフト範囲の下限θ1Lとシフト範囲の上限θ1Hの差がP1以下に収まった後、最も小さい誤差が得られたシフト量から前記第1及び第2の相対角度を求めるようにしてもよい。
【0025】
前記第1及び第2の相対角度を求める更に他のステップとして、例えばシフト量θ1の初期値をθN1、サンプリング方向の最小分解能に対応する角度をP1、Lを自然数とし、シフト範囲dθをP1の2L倍の値を初期値として設定し、シフト量θ1、シフト量θ1+dθ、シフト量θ1−dθの3つのシフト量について誤差を求め、最も小さい誤差が得られたシフト量を新たなシフト量θ1とすると共に、シフト範囲dθを1/2にし、シフト範囲dθがP1以下に収まった後、最も小さい誤差が得られたシフト量から前記第1及び第2の相対角度を求めるようにすることもできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照してこの発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施例に係る3点法による形状測定装置の構成を示すブロック図である。
この形状測定装置は、被測定対象であるワークの周囲に所定の角度をなすように配置された3つの検出器11,12,13と、これら検出器11,12,13の出力からワークの形状の空間周波数成分を抽出するフィルタ装置14,15,16と、フィルタ装置14の出力データをシフトさせる角度シフト装置17,18と、シフトさせる相対角を推定する相対角推定器19,20と、これにより求められた相対角推定値と各検出器11,12,13からのデータとに基づいてワークの形状を演算する3点法演算部21とを備えて構成されている。
【0027】
検出器11,12,13は、検出器11,12のなす角度が概ねθ1、検出器11,13のなす角度が概ねθ2となるように、ワークの周囲にワークと対向して配置されている。検出器11,12,13は、ワークの表面との距離を例えば光学的、電気的、磁気的に非接触で検出し、得られた検出信号を内部のA/D変換器(不図示)で回転角P1毎にサンプリングしA/D変換して測定データDA,DB,DCをそれぞれ出力する。測定データDA,DB,DCは、それぞれフィルタ装置14,15,16に供給されている。
【0028】
フィルタ装置14,15,16は、測定データDA,DB,DCからそれぞれワークの形状データを含む空間周波数成分のデータDFA,DFB,DFCを抽出する。真円度測定機の場合、テーブルの回転精度及びテーブルとワークの偏心によって生ずる誤差は、テーブルの回転周波数の1〜3倍程度の低い周波数領域に含まれる。これに対し、検出器11,12,13のノイズ成分は比較的高い周波数領域に含まれる。このためフィルタ装置14,15,16としては、例えばテーブルの回転周波数の1〜3倍の低い周波数帯域のみを取り出すFFTディジタルフィルタのようなバンドパスフィルタが用いられる。図2に、フィルタ装置14,15,16によりフィルタ処理されたデータDFA,DFB,DFCの一例を示す。それらの特徴的部分を比較すれば明らかなように、これらデータDFA,DFB,DFCのうち、データDFAとデータDFBとは、丁度θN1Fだけ角度がずれ、データDFAとデータDFCとは、丁度θN2Fだけ角度がずれている。
【0029】
これらフィルタ装置14〜16のうち、フィルタ装置14の出力DFAは、角度シフト装置17,18に供給されている。角度シフト装置17では、フィルタ装置14から出力されるワークのn回転分(nは整数)の出力データDFAから相対角度の推定値θN1(但し、初期値はθ1を用いる)に相当する部分のデータを切り取り、再度DFAのデータの後につなげてデータDFAをシフトさせたシフトデータDSBを生成する。図3には、データDFAを角度θ1だけシフトさせたシフトデータDSBが示されている。図示のように、シフトデータDSBに対し僅かな補正量のシフト調整をすることにより、シフトデータDSBとデータDFBとが丁度整合する相対角推定値θN1Fを求めることができる。角度シフト装置18もこれとほぼ同様に、フィルタ14から出力されるワークのn回転分の出力データDFAを相対角推定値θN2(但し、初期値はθ1を用いる)に相当する量だけシフトさせたシフトデータDSCを生成する。
【0030】
これら角度シフト装置17,18から出力されるシフトデータDSB,DSCは、それぞれ相対角推定器19,20に供給されている。相対角推定器19,20には、それぞれフィルタ装置15,16からのフィルタ処理済データDFB,DFCも供給されている。相対角推定器19は、下記数7のようにフィルタ処理済データDFBとシフトデータDSBとの差分の二乗和を誤差Eとして算出する。
【0031】
【数7】
【0032】
但し、m(=n×360/P1)は、テーブルn回転分について回転角度P1ごとに得られるデータのサンプリング数であり、DFB(k)はDFBのk番目のデータ、DSB(k)はDSBのk番目のデータである。
【0033】
相対角推定器19は、図4に示すように、相対角推定量θN1の初期値としてθ1を与え、相対角推定値θN1を僅かずつ補正することにより、その周囲で最小の誤差Eが得られる相対角推定値θN1Fを求めていく。
【0034】
図5は、相対角推定値θN1Fを算出するまでの相対角推定器19内部の処理を示すフローチャートである。なお、この処理は繰り返し処理であり、E0,θN10は、それぞれ誤差E、相対角推定値θN1の前回算出値が格納される変数である。
まず、誤差E0の初期値として最大値を、シフト増減量dθの初期値としてP1を、相対角推定量θN1,θN10の初期値としてθ1をそれぞれ設定する(S1)。次にデータDFAを相対角推定値θN1(初期値θ1)だけシフトさせてシフトデータDSBを生成し(S2)、このシフトデータDSBとDFBとに基づいて誤差Eを算出する(S3)。次に、前回の誤差E0(最初は最大値)と今回の誤差Eとを比較して(S4)、今回の誤差Eの方が大きくなっている場合には数8の(1)のように増減量dθの符号を反転させ(S5)、また今回の誤差Eの方が小さくなっている場合には数8の(2)のようにシフト増減量dθをそのまま維持する。
【0035】
【数8】
dθ=(−1)×dθ (1)
dθ=dθ (2)
【0036】
そして、相対角推定値θN10と、前回誤差E0とを更新すると共に、新しいシフト増減量dθから、数9のように新しい相対角推定値θN1を求め(S7)、ステップS2に戻って処理を繰り返す。
【0037】
【数9】
θN1=θN1+dθ
【0038】
この過程で前回誤差E0と今回計算された誤差Eとの差の絶対値が所定値eを下回った場合には(S6)、誤差E0,Eのうち小さい方の誤差が求められた相対角推定値θN1又はθN10を求める相対角推定値θN1Fとする。
【0039】
相対角推定器20もこれと同様の処理によってデータDFCとDSCとを比較して相対角推定値θN2Fを求めていく。
【0040】
これにより、相対角推定器19,20で求められた相対角推定値θN1F,θN2F及び検出器11,12,13の出力データDA,DB,DCから、3点法演算部21でワークの真円度等の形状データを算出することができる。
【0041】
この装置によれば、各検出器11,12,13からの測定データをそのまま使用して、各検出器11,12,13の相対角度を求めることができるので、角度測定のための特別なワークを使用する必要が無く、検出器11,12,13の再セッティングに際しても、簡単にそれらの相対角度を求めることができるので、高度に熟練を要する検出器の角度の再配置を行う必要もなく、また、温度、振動などの環境外乱が検出されれば、その度に上記方法により相対角推定値を求め、3点法測定の精度を維持することができる。
【0042】
なお、上記実施例では、シフト増減量dθは符号が変化するだけでその大きさについては固定(P1)としたが、シフト増減量dθを変化させるようにすると、更に処理が効率的になる。図6はこの例を示したフローチャートである。この場合、例えばシフト増減量dθの初期値を、
【0043】
【数10】
dθ=P1×2L
(Lは自然数)
【0044】
とし(S11)、シフト量θ1における誤差E0と、シフト量θ1からシフト増減量dθだけ前における誤差ELと、シフト量θ1からシフト増減量dθだけ後ろにおける誤差EHとを算出する(S12)。このうち、最も小さい誤差を判定し、誤差ELが最小の場合には(S13)、新たなシフト量θ1を誤差ELが得られたシフト量θ1−dθとする(S14)。もし誤差EHが最小の場合には(S15)、新たなシフト量θ1を誤差EHが得られたシフト量θ1+dθとする(S16)。また、現在のシフト量θ1で得られた誤差E0が最小であると判定された場合には、シフト量θ1は変更しない。いずれの判定結果であっても、シフト量の増減量dθは、前回シフト増減量の1/2に設定される(S17)。このようにシフト増減量dθを減じていき、シフト増減量dθがP1よりも小さくなった時点で処理を終了する(S18)。これにより、最大2×L回の比較操作で最終的な相対角推定値θN1F,θN2Fを求めることができる。
【0045】
図7は、相対角推定値θN1Fを算出する相対角推定器19の他の処理例を示すフローチャートである。この実施例では、シフト範囲の下限値θ1Lと、上限値θ1Hの初期値を次のように求める(S21)。
【0046】
【数11】
θ1L=θ1−P1×2L
θ1H=θ1+P1×2L
【0047】
次に、シフト範囲の下限値θ1Lと上限値θ1Hの中央値θ1Mを求めると共に、そのシフト量θ1Mにおける後進誤差、すなわちシフト量θ1M+P1における誤差から、シフト量θ1Mにおける誤差を引いた差分(傾斜に相当)を求める(S22)。なお、ここでは、θ1Mにおける誤差の傾きを求めているので、θ1Mにおける微分値を算出してもよいが、誤差のカーブが線形であるという保証がないので、最終分解能P1だけ離れた点における誤差との差分をとって傾きを求めている。また、ここでは、傾きの符号しか見ないため、差分をP1で割った本来の傾きまでは求めていない。ここで求められた後進誤差E1Mが0以上のときには(S23)、増加傾向であるから、新たな上限値θ1Hを中央値θ1Mとする(S24)。また、後進誤差E1Mが0より小さい場合には(S23)、減少傾向であるから、新たな下限値θ1Lを中央値θ1Mとする(S25)。このようにしてシフト範囲を徐々に狭めていきながら中央値θ1Mを更新していき、最終的にシフト範囲θ1H−θ1Lが回転角の最小分解能P1以下になったら、処理を終了する(S26)。このような処理によっても、少ない処理回数で相対角推定値θN1Fを求めることができる。
【0048】
なお、誤差Eは、前述したようにデータDSB,DFB及びDSC,DFCの差分の二乗和ではなく、下記数12で示すような差分の絶対値で求めても良い。
【0049】
【数12】
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、3つの検出器から得られた測定データから3点測定法に必要な3つの検出器の相対角度を得ることが可能になるため、従来必要であった検出器の相対角度測定並びに再配置が不要となり、測定作業を容易にして作業効率を大幅に高めることができる。また、本発明によれば、角度設定後の測定機の温度変化により相対角度がずれた場合、それを実測データ取得時の相対角度を使用して3点法測定の計算を行うことで、温度変化による影響を小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る3点法による形状測定装置のブロック図である。
【図2】 同装置の各検出器のフィルタ処理後の検出データを示す波形図である。
【図3】 同検出データをシフト処理した状態を示す波形図である。
【図4】 同シフト処理した信号の間の誤差とシフト量との関係を説明するための図である。
【図5】 同形状測定装置における相対角推定値の算出処理を示すフローチャートである。
【図6】 本発明の他の形状測定装置における相対角推定値の算出処理を示すフローチャートである。
【図7】 本発明の更に他の形状測定装置における相対角推定値の算出処理を示すフローチャートである。
【図8】 3点法測定の原理を説明するための図である。
【符号の説明】 1〜3,11〜13…検出器、4…ワーク、14〜16…フィルタ装置、17,18…角度シフト装置、19,20…相対角推定器、21…3点法演算部。
Claims (6)
- 回転するワークの周囲にその回転方向に所定角度をもってそれぞれ配置されて、それぞれが前記ワークの回転に伴う前記ワーク表面の半径方向への変位を検出して検出信号を出力する第1、第2及び第3の検出器と、
これら第1〜第3の検出器の検出信号からそれぞれ前記ワークの形状データを含む空間周波数成分を抽出する第1、第2及び第3のフィルタ手段と、
前記第1のフィルタ手段の出力と前記第2のフィルタ手段の出力とをサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第1のシフト量を求めると共に、前記第1のフィルタ手段の出力と前記第3のフィルタ手段の出力とをサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第2のシフト量を求め、前記第1のシフト量から前記第1及び第2の検出器間の第1の相対角度を求め、前記第2のシフト量から前記第1及び第3の検出器間の第2の相対角度を求める相対角算出手段と、
前記第1〜第3の検出器の検出信号と相対角算出手段で算出された第1及び第2の相対角度とに基づいて3点法により前記ワークの形状を算出する3点法演算手段と
を備えたことを特徴とする3点法による形状測定装置。 - 回転するワークの周囲にその回転方向に所定角度をもってそれぞれ配置された3つの検出器によって、前記ワークの回転に伴う前記ワーク表面の半径方向への変位を示す第1〜第3の検出信号を得、これら第1〜第3の検出信号と、前記第1〜第3の検出器の相対角度とに基づいて、前記ワークの形状を算出する3点法による形状測定方法において、
前記第1〜第3の検出信号からぞれぞれ前記ワークの形状データを含む空間周波数成分を抽出して第1〜第3のフィルタ処理済信号を生成するステップと、
前記第1〜第3のフィルタ処理済信号のうち第1及び第2のフィルタ処理済信号をサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第1のシフト量を求めると共に、前記第1及び第3のフィルタ処理済信号をサンプリング方向に相対的にシフトさせながら両者の誤差が最も小さくなる第2のシフト量を求め、前記第1のシフト量から前記第1及び第2の検出器の間の第1の相対角度を求め、前記第2のシフト量から前記第1及び第3の検出器の間の第2の相対角度を求めるステップと、
前記第1〜第3の検出信号と前記第1及び第2の相対角度とに基づいて3点法により前記ワークの形状を算出するステップと
を備えたことを特徴とする3点法による形状測定方法。 - 前記第1及び第2の相対角度を求めるステップは、
前記第1及び第2のフィルタ処理済信号を、前記第1及び第2の検出器の相対角度の初期推定値に応じたシフト量だけサンプリング方向に相対的にシフトさせて、前記シフトされた第1及び第2のフィルタ処理済信号の誤差を求めたのち、前記シフト量を変化させて再度誤差を求め、前記誤差が少なくなる方向に前記シフト量を増減させて前記誤差が最も少なくなったときのシフト量から前記第1の相対角度を求めるステップと、
前記第1及び第3のフィルタ処理済信号を、前記第1及び第3の検出器の相対角度の初期推定値に応じたシフト量だけサンプリング方向に相対的にシフトさせて、前記シフトされた第1及び第3のフィルタ処理済信号の誤差を求めたのち、前記シフト量を変化させて再度誤差を求め、前記誤差が少なくなる方向に前記シフト量を増減させて前記誤差が最も少なくなったときのシフト量から前記第2の相対角度を求めるステップと
を有することを特徴とする請求項2記載の3点法による形状測定方法。 - 前記第1及び第2の相対角度を求めるステップは、
前記各フィルタ処理済信号対の誤差を前記フィルタ処理済信号対の差分の二乗和又は絶対値和として求め、前回求められた誤差と今回求められた誤差との差分が所定の値を下回ったときに得られたシフト量から前記第1及び第2の相対角度を求めるようにした
ことを特徴とする請求項3記載の3点法による形状測定方法。 - 前記第1及び第2の相対角度を求めるステップは、
サンプリング方向の最小分解能に対応する角度をP1、Lを自然数、θ1をシフト量とし、
シフト範囲の下限θ1Lをθ1−P1×2L、シフト範囲の上限θ1Hをθ1+P1×2L、シフト範囲の下限θ1Lと上限θ1Hの中央値をθ1Mとしたときに、
中央値θ1Mにおける傾きが増加傾向である場合には、θ1Mを新たなシフト範囲の上限θ1Hとし、
中央値θ1Mにおける傾きが減少傾向である場合には、θ1Mを新たなシフト範囲の下限θ1Lとし、
シフト範囲の下限θ1Lとシフト範囲の上限θ1Hの差がP1以下に収まった後、最も小さい誤差が得られたシフト量から前記第1及び第2の相対角度を求めるようにした
ことを特徴とする請求項3記載の3点法による形状測定方法。 - 前記第1及び第2の相対角度を求めるステップは、
シフト量θ1の初期値をθN1、サンプリング方向の最小分解能に対応する角度をP1、Lを自然数とし、
シフト範囲dθをP1の2L倍の値を初期値として設定し、
シフト量θ1、シフト量θ1+dθ、シフト量θ1−dθの3つのシフト量について誤差を求め、最も小さい誤差が得られたシフト量を新たなシフト量θ1とすると共に、シフト範囲dθを1/2にし、
シフト範囲dθがP1以下に収まった後、最も小さい誤差が得られたシフト量から前記第1及び第2の相対角度を求めるようにした
ことを特徴とする請求項3記載の3点法による形状測定方法。
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