JP4242163B2 - 茶園用送風式防除機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、茶園に発生する害虫を防除する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
茶樹に発生する害虫を防除する方法としては、主として、農薬の散布が行われている。農薬を使用しない方法として、天敵を利用して駆除する方法がある。茶園の露取作業とは、摘採直前に雨に降られたり、露で濡れたりすると、濡れた茶葉は重くなって摘採も困難であるし、乾燥作業を主とする製茶工程でも余分な水分を除去せねばならず、加工能率が低下し、製品の品質も低下する。この為に、摘採前に茶葉についている水滴を除去する作業をいう。一般的には、エンジン付の送風ファンを作業者が背負い、ホースの先を茶園の表面に向けて、茶葉についた雨粒を吹き飛ばしている。また、特公昭59−39087に示す露払機や、特開2002−186331に示すように、可搬式茶刈機を用いて、露取作業(露払い)をする方法も紹介されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、農薬の過剰な使用による環境破壊や、残留農薬による人体への悪影響の危険性が叫ばれている。したがって、無農薬栽培が強く求められている。天敵を用いる方法は、天敵の種類が限られており、駆除できる害虫の数も少ない。また、天敵の使用には、専門的知識を必要とし、一般的でない。更に、天敵の飼育は、手間が掛り、経済的でない。この発明は、農薬や天敵を用いないで、茶園に発生する害虫を駆除し、茶園の防除を行うことの出来る装置を提供することを第1の課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
農薬や天敵を用いずに防除する方法として、試験研究機関で、送風式捕虫機の研究がおこなわれているが、未だ実用化されていない。この発明は、この原理を用いて実用化を計るものである。
【0005】
請求項1の発明では、茶畝を形成する茶樹の表面形状に合わせた円弧板と、該円弧板の前方に多数の吹出枝管を持つ送風ダクトを設け、前記円弧板後方に網目大きさ約50〜200メッシュの捕虫網を取付け、前記吹出枝管の先端と円弧板の先端の高さを略同じ高さとし、前記吹出枝管から吹出す圧力風が前記円弧板の上面を吹く方向とし、前記吹出枝管の先端から円弧板の先端までの距離を約20〜30cmとすると共に、前記吹出枝管から圧力風を前記円弧板に向かって吹付けてなることを特徴とした茶園用送風式防除機としたことにより、円弧状に形成された茶樹の表面に強風(圧力風)を吹付け、茶葉に付着している害虫を強風の圧力によって圧死させ、後方に吹き飛ばす。害虫は、茶樹表面の形状に合わせた円弧板の上を吹き飛ばされて、後方にセットした捕虫網で捕らえられる。このようにして、茶葉に付いた害虫を駆除することができる。
【0006】
特に、請求項1の発明では、圧力風に当って吹き飛ばされる害虫を捕虫網にしっかり入れるためには、吹出枝管と吹き飛ばされる害虫を受ける円弧板をほぼ同じ高さにする必要がある。害虫の付いている茶葉に圧力風をうまく当てる為には、吹出枝管の先端を円弧板の先端から20〜30cm前にセットするのがよい。また、吹き飛ばされた害虫が茶樹の内へ落ちないようにするため、圧力風の吹出方向は円弧板の上に向くようにする。また、請求項1の発明の捕虫網は、網目大きさ約50〜200メッシュとしたので、捕虫網の網目があまり細かいと、圧力風が捕虫網から抜けず、吹き飛ばした害虫を捕虫網へ誘導することが出来ない。あまり荒い目だと、害虫が抜けてしまって捕らえることが出来ない点を本発明にて解決している。
【0007】
請求項2の発明では、前記吹出枝管の先端の高さと該吹出枝管から吹出す圧力風の吹出角度を調節可能としてなることを特徴とした請求項1記載の茶園用送風式防除機とした。害虫の付いている茶葉はその生育状態に長いもの、短いものがある。吹出枝管の先端の高さを茶葉の長さに合わせて、上下に調節すれば、最も適切な位置に圧力風を当てることが出来る。又、吹出角度を調節することによって、茶葉を吹き上げる圧力風の方向が変わり、付着している害虫をより効果的に吹き飛ばすことが出来る。
【0008】
請求項3の発明では、前記吹出枝管口径は約15〜25mmφとする共に、該吹出枝管と隣接する該吹出枝管の間隔を約5〜8cmとし、該吹出枝管から吹出す圧力風の風速を約15〜30m/sとしたことを特徴とした請求項1又は2記載の茶園用送風式防除機とした。櫛状の吹出枝管の間隔が狭すぎると、茶葉が吹出枝管に邪魔されて押し倒されてしまい、圧力風が茶葉に当らなくなってしまうし、また、間隔が広すぎると、吹出枝管と吹出枝管の間に圧力風が当らないところが生じる。害虫を吹き飛ばすには、吹出枝管が吹出す圧力風は十分な風速が必要であるが、これらの点を解消している。
【0009】
請求項4の発明では、前記送風ダクトに送風する送風ファンとエンジンを背負式とし、前記送風ダクトと送風ファンをフレキシブルホースでつないだことを特徴とした請求項1、2又は3記載の茶園用送風式防除機としたことで、防除機を軽くすることが出来て、取扱いが容易となり、一人の作業者で防除の作業を行うことが可能となる。
【0010】
請求項5の発明では、前記捕虫網の材料をナイロン網とすることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の茶園用送風式防除機としたことにより、ナイロンを使用すれば、軽くて、約50〜200メッシュの細かな網でも丈夫であり、熱にも強いので、熱湯によって捕虫した害虫を完全に死滅させることが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
図面に従って、実施の形態を説明する。図1はこの発明の茶園用送風式防除機の主要部分を示す断面図、図2は本発明の一人用防除機の正面図、図3は平面図である。図3には露取機として使用した場合の誘導ダクトも示している。図4は本発明の二人用の防除機を示す斜視図である。
【0012】
1は茶樹の表面形状に合わせた円弧板である。茶樹は帯状に列をなして植栽され、茶畝を形成している。茶畝の断面は上面が円弧となっている。従来、円弧の半径は約1100Rであったが、近年、乗用型摘採機を導入するにあたって、3000Rが増えてきている。円弧板1の下面は茶畝表面に合わせた円弧状平面である。上面の前端は下面と同じ円弧であるが、後方を少し上げて、円錐状にし、斜面を形成して、後端へ捕虫網3を取付けやすくすると共に、圧力風の方向を上に向け、吹き飛ばされた害虫4が捕虫網3の奥にたまるようにしている。捕虫網3は150メッシュのナイロン網とする。
【0013】
円弧板1の前上方には、送風ダクト2が設けてある。送風ダクト2からは櫛状に多数の吹出枝管5が出ている。吹出枝管5は20mmφのパイプとし、その先端は、円弧板1の先端とほぼ同じ高さとし、茶葉に接しながら移動できるようになっている。送風ダクト2は送風管取付板18によって、ネジ19で側板6に取付けてある。茶葉の育成状態に合わせて、吹出枝管5の先端の高さと吹出角度を変え、最も効果的に茶葉に付着している害虫を吹き飛ばすように調節する。吹出枝管5と円弧板1の先端との距離Aは約20〜30cmの間隔とし、茶葉に十分に圧力風が当るようにする。
【0014】
円弧板1の左右側面は側板6で囲い、吹き飛ばされた害虫4を捕虫網3へ誘導する。又、円弧板1と送風ダクト2の間の上方は天井板7でカバーし、害虫が上方へ逃げるのを防いでいる。この防除機の上部には把手8、9が設けてあり、作業者が両手で支えるようになっている。把手8、9の取付部は、作業者の身長によって高さをあわせるため、角度調節可能としてある。送風ダクト2から櫛状に出ている吹出枝管5の外径は約20mmとし、間隔Bは約6cmとする。
【0015】
10は作業者に背負わされた送風ファンである。送風ダクト2と送風ファン10はフレキシブルホース11でつなげてある。12は水を入れる容器であり、送風ファン10附近に設けておき、ファンで発生する圧力風に水滴を供給する。作業者は、両手で把手8、9を持ち、茶樹の上にこの防除機をそっと置く。防除機は軽く製作してあるので、円弧板1によって茶樹13に支えられる。送風ファン10を稼動させると、吹出枝管の先から圧力風が吹出す。そのまま茶樹13の表面に沿って前方に防除機を滑らせていく。圧力風によって吹き飛ばされた害虫は、捕虫網3の中へ収容される。このようにして、茶園の防除作業を行うことが出来る。
【0016】
図4はこの作業を2人で行う為の2人用防除機を示す。送風ダクト2に直接送風ファン10が連結してあり、フレキシブルホース11は無い。機体の左右に把手14、15が設けてあり、把手14、15の取付部は、作業者の身長によって高さをあわせるため、角度調節可能としてある。2人の作業者で両端を持って防除作業を行なう。
【0017】
図3に請求項8に示す茶園用露取機として使用する場合の実施例を示す。16は露取用の誘導ダクトであって、捕虫網3を取外して、代りに取付ける。誘導ダクト16は、水滴を流すことが出来る部材であれば何でもよいが、捕虫網3と同様の部材で製作してもよい。誘導ダクト16の後端は、畝間にたらすようにし、先端は開口部17として開放しておく。防除作業と同様に茶樹の上をすべらして行くと、圧力風で後方に吹き飛ばされた水滴は、誘導ダクト16に入り、畝間へ落とされる。このようにして、茶葉に付着した水滴を取り除くことが出来る。
【0018】
【発明の効果】
この発明により、農薬を使用せずに害虫の防除が可能となるので、現在行われている、摘採前の一定期間は農薬散布が出来ない、というような農薬の規制にとらわれることなく、いつでも、何回でも防除作業を行うことが出来るので、茶葉の収量、品質の向上に大いに役立てることが出来る。又、農薬によって作業者、及び消費者の健康を害することからも守ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の茶園用送風式防除機の主要部分による作用状態図である。
【図2】本発明の一人用の茶園用送風式防除機の正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】本発明の二人用の茶園用送風式防除機の斜視図である。
【符号の説明】
1…円弧板、2…送風ダクト、3…捕虫網、5…吹出枝管、10…送風ファン、
11…フレキシブルホース、13…茶樹。
Claims (5)
- 茶畝を形成する茶樹の表面形状に合わせた円弧板と、該円弧板の前方に多数の吹出枝管を持つ送風ダクトを設け、前記円弧板後方に網目大きさ約50〜200メッシュの捕虫網を取付け、前記吹出枝管の先端と円弧板の先端の高さを略同じ高さとし、前記吹出枝管から吹出す圧力風が前記円弧板の上面を吹く方向とし、前記吹出枝管の先端から円弧板の先端までの距離を約20〜30cmとすると共に、前記吹出枝管から圧力風を前記円弧板に向かって吹付けてなることを特徴とした茶園用送風式防除機。
- 前記吹出枝管の先端の高さと該吹出枝管から吹出す圧力風の吹出角度を調節可能としてなることを特徴とした請求項1記載の茶園用送風式防除機。
- 前記吹出枝管口径は約15〜25mmφとする共に、該吹出枝管と隣接する該吹出枝管の間隔を約5〜8cmとし、該吹出枝管から吹出す圧力風の風速を約15〜30m/sとしたことを特徴とした請求項1又は2記載の茶園用送風式防除機。
- 前記送風ダクトに送風する送風ファンとエンジンを背負式とし、前記送風ダクトと送風ファンをフレキシブルホースでつないだことを特徴とした請求項1、2又は3記載の茶園用送風式防除機。
- 前記捕虫網の材料をナイロン網とすることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の茶園用送風式防除機。
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