JP4241190B2 - 筆記具または塗布具のキャップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形金型で成形される合成樹脂製の筆記具または塗布具のキャップに関する。詳しくは、万年筆、水性ボールペン、油性ボールペン、マーカーペン、シャープペンシル等、又は修正具、化粧具等の筆記具または塗布具のキャップに係るものであり、主として合成樹脂製のキャップに関するものである。中でも特にクリップの取付けが、弾発的に持ち上げられる形式のキャップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、筆記具または塗布具の部品である合成樹脂製のキャップは、重量も軽く樹脂材のもつ材質感と、樹脂の材料により色々な製品を製作することが可能である。このため、合成樹脂製のキャップは様々な筆記具や塗布具に使用されている。樹脂材としては、アクリル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PC樹脂、またはPET樹脂等が主として使用される。
【0003】
近年、デザインの多様性から色の異なる硬質の樹脂材を使用したカラフルな、或いは複雑な形状のキャップが要求されている。また、硬質の樹脂材をベースに、軟質のエラストマーで、熱溶着させた筆記具または塗布具の部品をつくることも行われ、特に筆記具用部品として軸筒とグリップ部を2色成形したものが市場に販売されている。
【0004】
しかしながら、射出成形は、成形品に必ずゲート跡が残るという問題を抱えている。通常、単型によるクリップを備えたキャップの成形では、成形性や、ゲートカット容易性を考慮してキャップの先端にゲート跡を形成してある。この場合だとゲート跡は残るものの全体としてのキャップの外観形状では目立たなくなっている。
【0005】
また、2色成形型によるクリップを備えたキャップの成形では、色の異なる硬質の樹脂材を使用しての2色成形や、硬質の樹脂材と軟質の樹脂材を使用しての2色成形は2次成形する部分のゲート跡がどうしても表面に出てしまい、美観を損なう要素の一因となっていた。従って、製品の美観を損なわないように色々と工夫が行われている。例えば、特開2002−67567号公報「グリップ付き軸筒及びその軸筒の成形方法」に記載のように、軸筒本体の外周に2色成形によってグリップ部が設けられたグリップ付き軸筒において、グリップ部の端面にゲート跡を形成することにより、グリップ部の外周面に凸状又は凹状のゲート跡を露出させない2色成形部品の技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
「特開2002−67567号公報」
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の単型によるクリップを備えたキャップの成形は、確かにキャップを側面から見た時は、目立たないが、デザイン的な制約を受けている。ゲート跡隠しは、キャップ先端に凹み部を設け、該凹み部にゲート跡を形成させている。言うなれば、必ずゲート位置は、平面を設けなければならず、デザイン上では、制約を受けざるを得ないものとなっている。
【0008】
後者の2色成形型のものは、2色成形における第二行程となる2次成形時にグリップ部の端面にゲート跡を形成しているため、確かに通常のようなグリップの表面に形成されたゲート跡よりは美観は損なわないものの、基本的にはゲート跡が残ってしまい見栄えが悪いものである。このためゲート跡を目立たなくする方策としては、グリップが形成された軸筒の後端側に、接続部材が螺合接続されるよう形成させ、接続部材の端面をグリップのゲート跡に当接してゲート跡を隠すようにしている。このような方策の場合には、確かにゲート跡を隠すことはできるが、接続部材による螺合接続ということで形状が複雑になりデザイン上で形状に制約が出てしまう。また、部品点数も増えるためコストアップは避けられないという問題を抱えている。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑み本発明者が成形技術を利用した筆記具または塗布具のキャップについて検討した結果、ゲート跡が装飾的に美観を損なうことなく、また余計な部材を使用してゲート跡を隠す必要のない筆記具または塗布具のキャップを提供することを目的とする。また、本発明は、外観上の制約がないため、新規性のある斬新なデザインであっても対応できるものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による課題解決手段は、
「1.色の異なる樹脂同士または種類の異なる樹脂同士を射出成形型で2色成形される筆記具または塗布具のキャップであって、前記キャップが、キャップ本体を1次成形によって形成し、前記キャップ本体に対向する面を有する先端突部と、前記キャップ本体に形成した凹み部に配置する把持部を設けたクリップ部材を2次成形によって設けるとともに、1次成形時のゲート跡は、2次成形により埋まるとともに、前記2次成形時のゲート跡を、前記クリップ部材の先端突部と把持部とを結合する連結部から離間させた、前記先端突部の前記キャップ本体に対向する面の先端近傍に形成することを特徴とする筆記具または塗布具のキャップ。
2.前記把持部が、前記キャップ本体の表面と面一状であることを特徴とする、第1項に記載された筆記具または塗布具のキャップ。」に関する。
【0011】
樹脂成形では、成形条件よる形状や意匠上のデザイン等から、ゲートについては色々と検討されている。一般的にゲートの近傍と遠方とでは、成形圧力に差がでるので、成形品の樹脂密度、流動性等に影響がでてくる。また、固化する冷却時間差によるヒケの影響や、ゲートから流れ出た樹脂が分かれて合流するウェルドのヒケの影響も出てくる。このため、射出金型の構造上では、ゲートの位置を検討したり、ゲート数を増やしたりして極力悪影響が出ないよう工夫を行っている。
【0012】
筆記具または塗布具は、昨今デザインが重要視されており、特に部品となるキャップについては他社品と差別化するため独特なものが市場にでている。その中で特に、2色成形技術を使用したキャップは、斬新なデザインのものがある。本発明は、2色成形技術を使用したキャップにおいて、クリップの形状をデザイン的に鑑み、キャップ本体に対向する面を有する突部を設けることによってゲート位置を特定し、且つ該キャップ本体に対向する面にゲート跡を形成することによってゲート跡を目立たなくすることができるものである。また、成形性も向上するため、クリップのような細長い形状でもヒケのない成形品を得ることが出来る。更に、2次成形でも金型構造が複雑にならず簡単にすることができ、高品質で製造コストを安価にすることが可能となる。尚、本発明におけるキャップ本体に対向する面の形状は、平面状、曲面状のものに限らず直線的な稜線状のものであっても構わない。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。但し、同じ部材、同じ箇所を示すものは同じ符号を付す。
【0014】
以下、本発明に係る筆記具または塗布具の部品として、2色成形による筆記具としてボールペンのキャップを例にとり図1乃至3に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態におけるキャップ部品の外観斜視図を示してある。図2は、本実施の形態におけるキャップ部品の正面図を示してある。図3は、図2のキャップ部品におけるクリップ部材を中心として軸方向に切断した概略図を示してある。図4は、従来技術における2色成形によるキャップ部品の外観斜視図を示してある。
【0015】
図1に示すように筆記具の部品であるキャップ部品1は、キャップ本体20とクリップ部材30とで構成してある。尚、キャップ本体20は透明なPC樹脂で成形しており、クリップ部材30は不透明な黒色PC樹脂で成形してある。
【0016】
図2及び図3に示すように、キャップ本体20は表面20aが軸方向へ渡る曲率を有しており、軸方向と直角に切断する断面を円形状とした先端から後方に開口部20bを有した砲弾形状である。また、クリップ部材30は、キャップ本体20の頂部20c近傍の表面20aと面一状に把持部50を設けて連結部40を介してクリップ本体と繋がっていて、クリップ部材30の後方の裏側には抜け防止用の玉部60を備える。クリップ部材30は、全体に装飾的なデザインが施されおり、特にキャップ本体20の頂部20c側には先が尖った斬新な形状のキャップ本体20に対向する面30aを有する突部30bを形成してある。該突部30bのキャップ本体20に対向する面30aには連結部40から離間させた位置にゲート跡70が形成してある。
【0018】
次に、本発明の実施の形態における、射出成形工程を説明する。この2色成形は、従来行われているように2つの単金型で同じコアの型と異なる形状のキャビティー型でコア側を廻転移動し成形する。
【0019】
2色成形金型により、第一工程として、金型内で溶融した透明なPC樹脂は、スプルー、ランナー、ゲートの順に流れ、第一キャビティー内へ流入してキャップ本体20を形成する。尚、キャップ本体20には、クリップ部材30に形成される把持部50の外形と同形状の凹み部(図示せず)を形成する。次に第二工程として、コア側としてキャップ本体20をクリップ部材30を形作る第二キャビティー内へ挿入し、不透明な黒色PC樹脂を溶融させクリップ部材30を2次成形する。この時、クリップ部材30の把持部50は、キャップ本体20の該凹み部に樹脂が流れてキャップ本体の表面20aと面一状とし、流線形の面を形成する。当然のことながら第一次のゲート跡(図示せず)は、2次成形により埋まるように設計してある。これで、キャップ部品1は、キャップ本体20とクリップ部材30が一体となったの完成品を得るが、この時、ゲート跡70はクリップ30の先端突部30bのキャップ本体20に対向する面30aに形成されるので、キャップ1の外観としては、目立たなく美観を損なうものではなく、また位置的にも射出成形の条件としては的確な場所となり、ヒケ、歪み等の問題の発生もない。
【0020】
図4は従来技術における2色成形のキャップ部品1の外観斜視図を示すものである。図に示すようにキャップ部品1は、透明なPC樹脂製のキャップ本体21と不透明なPC赤色樹脂のクリップ部材31で2色成形により形成されてある。クリップ部材31は、キャップ本体21の頂部21c近傍の連結部41を介して把持部51からキャップ本体21へと繋がっている。また、クリップ部材31の反対側の把持部51にゲート跡71が形成してある。
【0021】
このような従来技術のキャップ部品1は、ゲート跡71が把持部51の表面にあるので、見た目にも悪く、装飾的な美観が損なわれるものとなっている。また、何気なく指で触ってしまうような位置にあるため、ゲート跡71が凹凸した形状のため触れた場合に触感が悪いものである。
【0022】
尚、前述した実施の形態では便宜上、ボールペンのキャップ部品を例示しているが、その他の筆記具のシャープペンシルやマーカー等、または塗布具として修正ペンや化粧品等のキャップ部品であっても種類に関係なく使用することができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明の筆記具または塗布具のキャップは前述したような構造なので、ゲート跡が装飾的に美観を損なうことなく、また余計な部品を使用してゲート跡を隠す必要のない筆記具または塗布具のキャップを提供できる。
【0024】
また、デザイン上で制約されることがない良好な外観デザインを得ることが可能であり、余計な部品を必要としないので簡単な構造で済み、製造コストを低くさせた安価なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における、キャップ部品の外観斜視図を示す。
【図2】本発明の実施の形態における、キャップ部品の側面図を示す。
【図3】図2のキャップ部品における、クリップを中心として軸方向に切断した概略図を示す。
【図4】従来技術における、2色成形によるキャップ部品の外観斜視図を示す。
【符号の説明】
1 キャップ部品
20、21 キャップ本体
20a、21a 表面
20b 開口部
20c、21c 頂部
30、31 クリップ部材
30a 本体に対向する面
30b 先端突部
40、41 連結部
50、51 把持部
60 玉部
70、71 ゲート跡
Claims (2)
- 色の異なる樹脂同士または種類の異なる樹脂同士を射出成形型で2色成形される筆記具または塗布具のキャップであって、前記キャップが、キャップ本体を1次成形によって形成し、前記キャップ本体に対向する面を有する先端突部と、前記キャップ本体に形成した凹み部に配置する把持部を設けたクリップ部材を2次成形によって設けるとともに、1次成形時のゲート跡は、2次成形により埋まるとともに、前記2次成形時のゲート跡を、前記クリップ部材の先端突部と把持部とを結合する連結部から離間させた、前記先端突部の前記キャップ本体に対向する面の先端近傍に形成することを特徴とする筆記具または塗布具のキャップ。
- 前記把持部が、前記キャップ本体の表面と面一状であることを特徴とする、請求項1に記載された筆記具または塗布具のキャップ。
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