JP4240643B2 - 板厚プレス方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間スラブ,特に熱間圧延用素材である熱間鋼スラブを金型によって板厚方向からプレスする際のプレス方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱間スラブの板厚プレス方法は、図20(a)〜(d)に示すように金型6で板厚方向にプレスすると、一定の送り量fでスラブ20を送り、さらに後続部分を金型6で板厚プレスし、これを一定の送り量fで送ることを繰り返す。金型6のプレス加工面は平行部6aとテーパ部6bからなるものであり、通常は1段テーパである。テーパ角θが10〜12°(テーパ角θは通常12°)の金型6が多く使われている。このような金型6をもつプレス装置によりスラブ20を板厚プレスすると、図20(b)に示すように、プレス中にスラブ20が長手方向の前方と後方に延び出す先進と後進が発生する。このような先進と後進を生じたスラブは、図21(b)に示すように、非定常部分にはフレア状の幅広がりが、定常部分には断続加工によるウェーブ状の幅分布が発生する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の板厚プレス方法においては、テーパ角θが小さいと幅広がり量が大きくなり、荷重も大きくなる傾向がある。この場合の幅分布dW(=W′−W)は小さい。また、テーパ角を大きくすることで幅広がりの抑制、荷重増加の抑制が可能であるが、幅分布が大きくなること、およびプレス条件によってはプレス時の材料に滑りが発生して問題である。
【0004】
また、複数の金型を持つタンデム式板厚プレス機を用いて、複数段階に分けて板厚を減肉することにより変形分散を行う手段もあるが、装置が複雑かつ高価になってしまう。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は材料を高い圧下量でプレスする場合であっても、幅分布dwを最小限に抑制することができ、プレス時の荷重増大を抑制することができる板厚プレス方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る板厚プレス方法は、略矩形の熱間スラブの板厚を、長手方向に順に送りながら鍛造して減肉する板厚プレス方法であって、少なくとも入側テーパ部と平行部からなる主加工面をもつ金型によってプレス前の熱間スラブの板厚Hからプレス後の板厚hまで減肉する主加工工程と、前記主加工面をもつ金型のテーパ部と平行部との境界にあたる遷移部でプレスされるべき部位とその近傍の部位とを、前記主加工工程よりも前に、板厚方向に減肉プレスする副加工工程と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、主加工の圧下量に対する副加工の圧下量の比をrとした場合に、前記rを0.025以上とすることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の様々の好ましい実施の形態について説明する。
【0013】
(1段金型の場合)
本発明者らは圧下量を一定とし(ただし圧下歪0.5以上)、1段テーパ金型を用いた次の条件下で模擬試験を行った。
【0014】
実験条件
模擬材料;硬質鉛(初期サイズ;板厚H32mm×幅W150mm×L)
プレス後の板厚h;12.5mm
送り量f;10〜40mm
金型テーパ角θ:12°〜30°(12°,20°,30°を主体とする)
なお、金型のテーパ角θが15°以上の場合,テーパ部6bから材料20に接する送り量fではプレス開始時にスリップが発生したが参考のためデータを記載する。後の検討の結果、金型テーパ部から材料に接触する場合、テーパ角15°以上ではスリップが発生しやすいことが判明した。
【0015】
さらに、模擬試験結果につき検討を加えた結果、次に掲げる(a)〜(d)の事項が判明した。
【0016】
(a)後進量BWは全圧下体積V′をプレス後の板厚h、板幅で除したものでほぼ整理できること、
(b)幅分布は金型平行部の圧下体積Vでほぼ整理できること、
(c)幅広がりは金型テーパ部の接触長ldと若干の送り量影響でほぼ整理できること、
(d)単位幅荷重は金型と材料の全接触長ldtとでほぼ整理できること
上記の模擬試験結果につき図1を参照しながら説明を補足する。図1は板厚プレス用の金型と材料との間の接触長さにつき説明するために金型および材料をモデル化して示す拡大模式図である。長手方向接触長さldtは幾何学的テーパ部接触長さldに送り量fを加えたものに等しい(ldt=ld+f)。全圧下体積V′はテーパ部の圧下体積V1に平行部の圧下体積Vを加えたものに等しい(V′=V1+V)。圧下歪εはプレス前板厚Hとプレス後板厚hとで与えられる(ε=ln(H/h))。
【0017】
図2は、横軸にV′/W0・h(mm)をとり、縦軸に後進量BW(mm)をとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。横軸のV′/W0・hは全圧下体積V′を板厚h、板幅W0、長さLの直方体に変形させたときの長さL1に相当する量である。図中にて白丸はテーパ角12°の結果を、白四角はテーパ角20°の結果を、白三角はテーパ角30°の結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、後進量BWはV′/W0・hとほぼ正比例の関係にあり、V′/W0・hが増加するに従って後進量BWは増加する。
【0018】
図3は、横軸にV/W0をとり、縦軸に幅分布dWをとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。横軸のV/W0は単位幅あたりの平行部圧下面積に相当するものである。幅分布dWは最大幅と最小幅との差分に相当するものである。図中にて白丸はテーパ角12°の結果を、白四角はテーパ角20°の結果を、白三角はテーパ角30°の結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、幅分布dWはV/W0とほぼ正比例の関係にあり、V/W0が増加するに従って幅分布dWは増加する。
【0019】
図4は、横軸にテーパ部接触長さld(mm)をとり、縦軸に幅広がり量W1−W0をとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて白丸は送り量fが10mmのときの結果を、白四角は送り量fが20mmのときの結果を、白三角は送り量fが30mmのときの結果を、白ひし形は送り量fが40mmのときの結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、幅広がり量(W1−W0)は、テーパ部接触長さldとほぼ正比例の関係にあり、送り量fが増加するに従って増加する。
【0020】
図5は、横軸に幾何学的接触長さldt(mm)をとり、縦軸に単位幅荷重(トン/mm)をとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて白丸はテーパ角12°の結果を、白四角はテーパ角20°の結果を、白三角はテーパ角30°の結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、単位幅荷重は幾何学的接触長さldtとほぼ正比例の関係にあり、ldtが増加するに従って単位幅重量は増加する。
【0021】
上記図2〜図5で得られた知見をまとめると、テーパ角θの影響は図6に示すように表わすことができる。
【0022】
テーパ角θが大きいと、テーパ部接触長ldおよび幾何学的接触長ldtが小さくなるため、荷重低減の効果と幅広がり低減の効果とがあり、その分だけ装置を小型軽量化することができる利点がある。したがって荷重および幅広がりの面からはテーパ角θが大きいほうが望ましい。なお、テーパ部6bの角度が30°を超えるとプレス時の材料後進量BWが増大するため、テーパ角θは15°〜30°の範囲とすることが望ましい。しかし、テーパ角θを大きくすると、平行部6aの圧下体積Vが大きくなるため幅分布dWが増加するという逆効果がある。例えば一定の送り量30mmとしてテーパ角θを12°から20°に変更すると荷重は2/3に低減し、幅広がり量はほぼ半減する。しかし、この場合の幅分布dWは約3倍に増加してしまう。
【0023】
また、同様に送り量fを大きくすると、幅広がり量はテーパ部接触長ldによって決定されるためほとんど変化せず、荷重は、幾何学的接触長ldtが若干増加する分だけ大きくなるが、多少増加する程度である。また、材料のプレス回数が少なくなるため板厚プレス工程が効率的になるという効果がある。しかし、平行部の圧下体積Vが大きくなるため幅分布dWが大きくなるという不都合がある。たとえばテーパ角12°で、送り量fを20mmから40mmに増加すると、幅広がり量は約20%増加し、荷重は30%程度増加するだけであるが、幅分布dWは約5倍にも達し、許容範囲をはるかに越えてしまう。
【0024】
これらの問題を解決するために本発明者らは板厚プレスによる幅方向変形挙動につき詳細に分析した。その結果を図22を参照しながら説明する。
【0025】
プレス時の変形は、図22(a)に示すように、まず金型テーパ部6bで圧下した部分が大きく幅広がりしてテーパ形状となった後に、長手方向に送られ、次の圧下により金型平行部6aで幅分布dWが形成される。そして、幅分布dWの最小位置は、金型テーパ部6bと平行部6aとの境界近傍(遷移部6c及びその近傍)でプレスした部位(図22(b)に示すA部)であること、幅分布dWの最大位置は平行部圧下の中央部であることが判明した。なお、幅分布dWが問題となるのは、金型テーパ角θが大であったり、送り量fが大きいなどの関係から、テーパ部接触長さldよりも送り量fが大となる条件である。そこで、本発明者らは上記金型による主加工の合間に、特に副加工として軽圧下を加えることを考えた。
【0026】
副加工は材料のA部、つまり図22(b)に示すように(n+1)パス目の主加工の金型テーパ部6bと平行部6aとの角部近傍で、材料の幅のくびれが発生する領域で行うのが好ましいが、この領域は主加工金型の直下であることから、この領域を副加工することは実際には不可能である。そこで、本発明者らは、上記金型による主加工から次の主加工までの間に、上記のA部とその近傍の部位に対して軽圧下を加えることにつき種々検討をした。その結果、nパス目の終了後、材料を長手方向に送るまでの間において、(n+1)パス目にA部となるべき部分を予め軽圧下することがよいという知見を得た。この軽圧下量は金型テーパ部および平行部による圧下量よりもはるかに小さいものである。nパス目のプレスが終了した時点でみると、B部は,A部からおよそ送り量fだけ上流側の位置であり,この部分なら副加工用の金型を設置することが可能になる。
【0027】
本発明者らは、軽圧下を加えるべき副加工の部位につきさらに詳細に検討した結果、次に掲げる(1)および(2)の知見を得た。
【0028】
(1)A部からの距離が0.9f以下であると、主加工による変形によって副加工の効果が消失すること、
(2)A部からの距離が1.1f以上であると、副加工の効果が認められないこと、
上記の知見(1)と(2)に基づき、副加工が有効に機能する領域は、次パスでA部となるべき部位から(0.9〜1.1)×fだけ上流側に位置する部位であることが明らかとなる。なお、本実施形態のように1つのテーパ部のみをもつ1段金型の場合は、副加工と主加工とを交互に行うことになる。
【0029】
また、材料の送り量fおよびプレス時の後進量BWから副加工を加える位置を同定すれば、さらに上流側で副加工を加えることも可能である。この際の副加工位置は下式(2)で与えられる。ただし、BWはプレス時の後進量にあたり、nは正の整数にあたる。
【0030】
(0.9〜1.1)×f+(f−BW)×n …(2)
上記実験条件と同じ条件下で、送り量f30mm、金型テーパ角θ20°のときに、図9に示すような副金型17を用いて主加工と次パスの主加工との間において、金型テーパ部6bと平行部6aの境界の遷移部6cから1.0×fだけ上流側の部位を中心に副加工を行った。
【0031】
次に、図8(a)〜(e)を参照しながら副加工を伴う板厚プレス方法について説明する
図8(a)に示すように、主金型6がnパス目の主加工中のときは副金型17は待機している。nパス目の主加工が終了し、図8(b)に示すように主金型6を退避させると、次いで図8(c)に示すように、副金型17により主加工部位よりも上流側の部位を軽圧下(副加工)する。この場合に副加工を加える範囲は長手方向に(0.97〜1.03)×fだけ上流側に位置する部位であり、その圧下量は0.1mm(r=0.005),0.5mm(r=0.025),1.0mm(r=0.050)とした。なお、記号rは、主加工の圧下量を基準値1としたときに、これに対する副加工の圧下量の比を示す指数である。この副加工によりスラブ20の上下面の上流側部位に浅い凹み18が形成される。
【0032】
nパス目の副加工が終了すると、図8(d)に示すように副金型17を退避させ、さらに図8(e)に示すようにスラブ20を送り量fだけ前進させ、副加工された凹み18を主金型6の遷移部6cに対面させる。そして、主金型6により凹み18を含む領域を強圧下する。
【0033】
以下、この副/主圧下量指数rを用いて副加工について説明する。
【0034】
図10は、横軸に先行プレスの遷移部6c及びその近傍で主加工された部位からの距離(mm)をとり、縦軸に板幅(mm)をとって、副/主圧下量指数rを0〜0.05の範囲内で種々変えた場合の両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。主加工の圧下量を20mmとし、副加工の圧下量を0〜1.0mmの範囲で種々変えてみて調べた。その結果、図から明らかなように、副/主圧下量指数rが0.005(圧下量0.1mm)ではあまり効果が認められないが、rが0.025(圧下量0.5mm)および0.05(圧下量1.0mm)では共に幅分布dWが小さくなるとともに、幅広がりそのものも若干小さくなった。なお、 r=0.025とr=0.05との間には有意の差が認められなかった。同様の副加工をくさび状の形状の金型でも行ったが図10に示すものと同様の結果であった。
【0035】
ここで、副加工の開始タイミングであるが、副加工用の金型17が主加工用の金型6と別の部材である場合は、使用する金型の形状および送り量fにもよるが金型同士が接触する場合がある。したがって主加工中に副加工を開始するのは好ましくない。しかし、図11に示すような金型6Aを用いて主加工と副加工とを同時に開始し、主加工と副加工とを同時に終了させるようにすれば、このような問題は生じなくなる。つまり、主加工の圧下量(H−h)のうち(1−r)だけ終了した時点から副加工を開始し、主加工と同時に副加工を終了するようにすればよい。
【0036】
このとき用いられる金型としては、主加工を1段テーパで行うものとしては、図11に示す金型6Aを用いる。この金型6Aは、テーパ部6bの入側に着脱可能な副加工用の突起17Aを有するものである。すなわち、材料20に対して平行部6aおよびテーパ部6bで主加工を加えると同時に突起17Aで副加工を加える。ただし、このときは材料送り量fが金型テーパ部接触長ldよりも大きいことと、送り量fがほぼ一定であることとが必要条件となる。
【0037】
また、図12に示す金型6Bを用いることも可能である。金型6Bはテーパ部6bの入側に副加工用の面6gを有するものである。すなわち材料20に対して平行部6aおよびテーパ部6bで主加工を加えると同時に副加工面6gで軽圧下を加える。ただし、このときは送り量fがテーパ部主加工面6bよりも若干大きいことと、送り量fがほぼ一定であることとが必要条件となる。
【0038】
図12に示す金型6Bでは、角度変更部分に適当な面取りあるいはR加工した面6gを形成する。金型の加工の容易性の観点からはこの面取Rタイプがもっとも望ましい。さらに、金型6Aの副加工部分と主加工部分の境界部分の面取Rは大き目にすることが望ましい。
【0039】
この副加工により、幅分布の最小幅広がり部分をより広げるため幅分布が小さくなるという効果がある。また、図22(b)に示すA部近傍の材料に圧下が加わりにくくすることでA部付近の(n+1)パス目のテーパ部圧下による幅広がりに対する拘束力を持たせ、幅広がりそのもの小さくするという効果がある。
【0040】
(複数段金型の場合)
次に、図13〜図19を参照しながら各種の複数段金型について説明する。
【0041】
1段テーパの金型で、特に圧下量が大きいときには幅広がり抑制、荷重低減および幅分布抑制の両方の制約条件を成立させるのは困難なため、複数のテーパ部をもつ金型が必要になってくる。そこで本発明者らは複数のテーパ部を持つ金型について、上述の1段金型の場合と同様に副加工機能を持たせるべく検討を行った。
【0042】
その結果、特に主加工面となるテーパ部を2段(平行部側からテーパ1,2)とした場合には、引き続いて副加工面(テーパ3)となる形状とし、テーパ角度θ1,θ2(θ1<θ2)として接触長を短くすることが一般的であるが、このときテーパ部1〜3の平均角度は15°以上とすることが望ましい。ここで、平均角度とは、規定量の圧下を加えた状態で、平行部とテーパ部の角部と、テーパ部が材料表面と接触する点のなす角度のことをいう。
【0043】
それぞれのテーパ部と材料との長手方向接触長さL1,L2,L3については、テーパ部接触長が長いと、荷重増大や幅広がり増加を招くため、副加工面の接触長さL3はなるべく短いほうが良く、現実的には下記の不等式(3)を満たす関係にあることが望ましい。
【0044】
L3/(L1+L2+L3)<0.1 …(3)
また、テーパ角θ1が大であると材料との接触開始時にスリップが発生することがある。そこで、テーパ1部の角度θ1はスリップが発生しにくい角度として15°未満とする必要がある。
【0045】
また、副加工を行った加工面を次パスのテーパ1と接触させるほうが材料のスリップは発生しにくくなる。この条件は材料または金型の長手方向送り量をfとしたときに、下式(4)の関係を満たすものとする。
【0046】
(L1+L2)=(0.9〜1)×f …(4)
下限値は接触長L3の長さが小さいことから決定される。またθ1とθ3の角度差が大きいとスリップが発生するため、|θ1―θ3|<5°とする必要がある。
【0047】
本発明者らは確認のため、図13〜図15に示す複数段金型6M(タイプA),6N(タイプB),6S(タイプC)を用いて下記条件下で模擬試験をそれぞれ行った。
【0048】
実験条件
模擬材料;硬質鉛(初期サイズ;板厚H32mm×幅W150mm×L)
プレス後の板厚h;12.5mm
送り量f;30mm
金型テーパ角θ;図13〜図15および図19中にそれぞれ表示
L1,L2,L3;図13〜図15および図19中にそれぞれ表示
なお、タイプB金型6Sのテーパ部接触長ldは送り量fとほぼ等しいものである。
【0049】
実験結果を図16〜図18に示す(実施例のタイプC金型6Sの結果も含む)。
【0050】
図16は、横軸に幾何学的テーパ部接触長さ(mm)をとり、縦軸に最小広がり(mm)をとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて白丸はテーパ角12°の結果を、白四角はテーパ角20°の結果を、白三角はテーパ角30°の結果を、網掛け丸は特殊金型6S(タイプC)の結果をそれぞれ示す。
【0051】
図17は、横軸に圧下体積Vをとり、縦軸に幅分布量(mm)をとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて白丸はテーパ角12°の結果を、白四角はテーパ角20°の結果を、白三角はテーパ角30°の結果を、網掛け丸は特殊金型6S(タイプC)の結果をそれぞれ示す。
【0052】
図18は、横軸に幾何学的接触長さ(mm)をとり、縦軸に荷重(トン)をとって、両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて白丸はテーパ角12°の結果を、白四角はテーパ角20°の結果を、白三角はテーパ角30°の結果を、網掛け丸は特殊金型6S(タイプC)の結果をそれぞれ示す。
【0053】
これら図16、図17、図18に示す結果から、タイプA金型6MおよびタイプB金型6Nのように底部側テーパ角が小さく、上側テーパ角が大きい金型として接触長ldを短くした場合、金型の平均テーパ角度を15°以上とすることで荷重低減や幅広がり抑制の効果はあるが、1段テーパの金型よりも複数段金型のほうが幅分布dWが若干大きくなることが判明した。これは平行部圧下の1パス前の状態で、材料を大きく圧下することが影響していると推定される。
【0054】
また、タイプA,B金型のように、前パスのプレスによって生成した材料側の上側テーパ部に金型底部テーパが接触するようなプレス条件(送り,圧下量)の際には金型と材料のスリップが発生しプレスが不安定になることが判明した。
【0055】
そこで本発明者らは、上記の幅分布抑制およびプレス開始時のスリップ防止を目的として主加工面の上に極少量の圧下を行う副加工面を有するタイプCの金型6Sを完成させた。
【0056】
タイプC金型6Sの副加工面は材料表層近くを軽圧下するが、圧下量が小さいため接触長および平均テーパ角度はタイプB金型6Nとほとんど変わらない。また、次パスの圧下の際は、主加工面は副加工面で圧下した12°の傾斜面で接するため材料のスリップは発生しない。
【0057】
タイプCの金型6Sによる実験の結果、材料表面近くを軽く変形させることで幅分布のネック部分を広げ幅分布を抑制するばかりでなく、幅広がりに対しても拘束効果を持つこと、副加工面の角度を主加工面に対し±5°とすることでスリップ発生が防止できることが判明した。また、荷重についてはタイプBの金型6Nとほとんど同じ結果となった。
【0058】
同様の検討を副加工面のテーパ角度を5°〜20°とした金型(その他の形状はタイプC金型6Sと同じ)で実施したところ、7°〜17°のテーパ角度では材料のスリップは発生しなかったが、その範囲を超えるとスリップが発生した。
【0059】
以上の検討より,主加工面のテーパ部平均斜角を15°以上とすることで荷重低減が可能である。しかし、上側テーパと底部テーパとの角度差が5°以上のときに材料のスリップが発生しやすくなる。ただし、1段テーパの検討結果から底部のテーパ角が15°以上であると材料がスリップすることがあることから、副加工面を主加工面の傾斜角に対し±5°以下とし、一旦副加工金型で加工した面を次パスで主加工テーパ部1で圧下することでスリップ発生の防止および幅分布と幅広がりを抑制することが可能である。なお、副加工金型の接触長が長いと荷重増加や幅広がり増加を招くため、副加工部長さはテーパ部の全接触長の10%以下であることが望ましい。また副加工金型加工面を次パスの主加工テーパ部で圧下するためには、主加工テーパ部長さ(L1+L2)は送り量の0.9〜1.0倍であることが望ましい。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、熱間スラブの主加工に副加工を加えることで幅分布の抑制とともに幅広がり自身を抑制することができた。また、多段テーパの主加工面を持つ金型に副加工面を加えることで荷重低減、幅広がり抑制、幅分布抑制、スリップ抑制をすべて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板厚プレス用の金型と材料との接触長さを定義するための拡大模式図。
【図2】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図3】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図4】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図5】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図6】本発明の作用効果を説明するための図。
【図7】本発明の実施の形態に係る板厚プレスによる熱延鋼板の製造装置の概要を示す図。
【図8】(a)はnパス目の主加工中のスラブおよび金型を示す図、(b)はnパス目の主加工終了時のスラブおよび金型を示す図、(c)はnパス目の副加工中のスラブおよび金型を示す図、(d)はnパス目の主加工終了時のスラブおよび金型を示す図、(e)はn+1パス目の主加工前のスラブおよび金型を示す図。
【図9】副加工用の金型のプロファイルを示す図。
【図10】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図11】主加工と副加工を同時に行なう金型(他の実施形態)のプロファイルを誇張して示す模式図。
【図12】角度変更部を面取り又はR加工した主加工用の金型のプロファイルを誇張して示す模式図。
【図13】比較例の金型(Aタイプ;二段テーパ型)のプロファイルを示す図。
【図14】比較例の金型(Bタイプ;二段テーパ型)のプロファイルを示す図。
【図15】実施例の金型(Cタイプ;三段テーパ型)のプロファイルを示す図。
【図16】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図17】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図18】本発明の作用効果を説明するための特性線図。
【図19】本発明の作用効果を説明するための図。
【図20】(a)〜(d)は従来の板厚プレス方法を説明するためにスラブ及び金型を示す図。
【図21】(a)は板厚プレス前のスラブを示す平面図、(b)は板厚プレス後のスラブを示す平面図。
【図22】(a)はnパス目にプレスされたスラブのプロファイルを示す図、(b)はn+1パス目にプレスされたスラブのプロファイルを示す図。
【符号の説明】
1…連続鋳造機、2…粗加工設備、3…仕上圧延機、4…切断機、
5a,5b…コイラ、
6…主加工用の金型、
6a…平行部(平坦部)、6b…テーパ部(傾斜部)、6c…遷移部、
7…粗圧延機、
8,9,10,11…保熱装置、
12…加熱装置、13…加熱炉、
17…副加工用の金型、
20…連続鋳造スラブ、20A…シートバー。

Claims (2)

  1. 略矩形の熱間スラブの板厚を、長手方向に順に送りながら鍛造して減肉する板厚プレス方法であって、少なくとも入側テーパ部と平行部からなる主加工面をもつ金型によってプレス前の熱間スラブの板厚Hからプレス後の板厚hまで減肉する主加工工程と、前記主加工面をもつ金型のテーパ部と平行部との境界にあたる遷移部でプレスされるべき部位とその近傍の部位とを、前記主加工工程よりも前に、板厚方向に減肉プレスする副加工工程と、を具備することを特徴とする板厚プレス方法。
  2. 主加工の圧下量に対する副加工の圧下量の比をrとした場合に、前記rを0.025以上とすることを特徴とする請求項1記載の板厚プレス方法。
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