JP4240133B2 - スタータ - Google Patents

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Description

本発明は、ピニオンギヤがエンジンのリングギヤに常時噛み合わされた常時噛み合い式のスタータに関する。
従来技術として、特許文献1に記載されたスタータがある。
このスタータは、回転力を発生するモータと、このモータの通電電流をオン/オフする電磁リレーと、モータの駆動トルクをエンジンのリングギヤに伝達するピニオンギヤ等を有し、そのピニオンギヤがリングギヤに常時噛み合わされている。
ところで、自動車に搭載されるスタータは、その使用環境から被水することが多いため、外部開放タイプより密閉タイプの電磁リレーを使用した方が良い。つまり、外部開放タイプの電磁リレーでは、スタータが被水した時に内部浸水の可能性が高いため、接点に錆びを発生したり、接点が凍結する等の不具合を生じる恐れがある。一方、密閉タイプの電磁リレーであれば、内部浸水の可能性が低いため、上記の不具合(接点の錆びや凍結)を防止できる。
しかし、密閉タイプの電磁リレーは、プランジャの移動に伴って内部負圧が発生するため、その内部負圧に耐え得るシール構造が要求される。また、密閉タイプの電磁リレーは、組み立て時に水分を完全に除去する必要があるため、それ相当の対策を施す(例えば、乾燥工程を実施する)必要がある。その結果、製造工程が複雑になるため、コストが上昇する要因となっている。
そこで、本出願人は、モータと電磁リレーが固定されるハウジングに開放通路を形成し、この開放通路を通じて電磁リレーの内部を外気に開放する構成を提案した(特許文献2参照)。
特開2006−207573号公報 特願2007−72723号公報
ところが、特許文献2に開示された先願発明では、ハウジング形成された開放通路を介して電磁リレーの内部に浸水する恐れがある。つまり、被水の激しい車両においては、ミッションケース内に溜まった水をリングギヤが掻き上げることにより、その掻き上げられた水が開放通路に入り込んで電磁リレーの内部まで浸水することが考えられる。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、電磁リレーの耐水性を向上させたスタータを提供することにある。
(請求項1の発明)
本発明は、回転力を発生するモータと、このモータに駆動されて回転する出力軸と、この出力軸上に配置されると共に、エンジンのリングギヤに常時噛み合わされて、モータの駆動トルクをリングギヤに伝達するピニオンギヤと、電磁石によりプランジャを吸引してモータ回路の接点を閉操作する電磁リレーと、モータと電磁リレーとが固定されるハウジングとを備えるスタータであって、電磁リレーの軸方向ハウジング側を閉塞するシールキャップを有すると共に、このシールキャップに換気孔が形成され、ハウジングには、シールキャップの反プランジャ側に換気孔を通じて電磁リレーの内部に連通する換気室が形成されると共に、この換気室を外気に開放する開放通路が形成され、シールキャップは、換気室に対して換気孔が天方向側に設定されるように配置されることを特徴とする。
本発明の電磁リレーは、シールキャップに形成された換気孔と、ハウジングに形成された換気室および開放通路とを通じて外気に開放されるため、内部負圧に耐え得るシール構造を必要としない。また、電磁リレーの組み立て時に水分を完全に除去する工程(例えば乾燥工程)も不要であるため、密閉タイプの電磁リレーと比較してコストを低く抑えることができる。
さらに、シールキャップは、換気室に対して換気孔が天方向側に設定されるように配置されるので、万が一、ハウジングの外部から開放通路を通って換気室まで水が入り込んだ場合でも、その水が換気孔より電磁リレーの内部へ浸入することはない。これにより、被水の厳しい車両に対しても高い耐水性を有したスタータを提供できる。
(請求項2の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、開放通路は、換気室に通じる開口部の方が、外気に通じる開口部より天地方向の高い位置に設けられ、且つ、換気室に通じる開口部は、換気室の地方向に開口していることを特徴とする。
本発明の開放通路は、換気室側の開口部と外気側の開口部との間に高低差を有しているので、外気側の開口部から開放通路の内部へ水が入り込んだ場合でも、その水が換気室側の開口部まで到達することを抑制できる。また、開放通路に入り込んだ水が換気室の内部まで浸入した場合でも、換気室側の開口部が換気室の地方向に開口しているので、換気室の内部に水が溜まることはなく、開放通路より容易に排水される。
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載したスタータにおいて、シールキャップは、換気室に対して換気孔が天方向側に設定されるようにハウジングとの間に設けられる位置決め手段によって周方向に位置決めされていることを特徴とする。
これにより、換気室に対する換気孔の位置を容易に且つ確実に天方向側に設定できるので、耐水性が高く、且つ、信頼性の高いスタータを提供できる。
(請求項4の発明)
請求項3に記載したスタータにおいて、位置決め手段は、シールキャップに形成された凸部または凹部と、ハウジングに形成された凹部または凸部とで構成され、両者の凹凸嵌合によってシールキャップの位置決めが行われることを特徴とする。
本発明によれば、凹部と凸部との凹凸嵌合による簡易な構成によって位置決め手段を形成できる。
(請求項5の発明)
請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、換気孔を迷路構造としたことを特徴とする。
換気孔を迷路構造とすることにより、換気孔から電磁リレーの内部へ直線的に水が浸入することを防止できるので、さらに耐水性を向上できる。
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
図1は本発明に係る特徴部分を断面形状で示すスタータ1の側面図である。
本実施例のスタータ1は、図1に示す様に、回転力を発生するモータ2と、このモータ2の回転を減速する減速装置3と、この減速装置3を介してモータ2の駆動トルクが伝達される出力軸4と、この出力軸4に支持されるピニオンギヤ5と、このピニオンギヤ5を介してスタータ1の駆動系に加わる衝撃を吸収する衝撃吸収装置(後述する)と、モータ2の通電回路(モータ回路と呼ぶ)に設けられるメイン接点を開閉する電磁リレー6と、モータ2および電磁リレー6が固定されるハウジング7等より構成される。
モータ2は、電磁リレー6によりメイン接点が閉操作されると、バッテリから電力の供給を受けて、内蔵する電機子(図示せず)に回転力を発生する周知の直流電動機である。このモータ2は、複数本のスルーボルト8をハウジング7に締め付けて固定される。
減速装置3は、モータ2の電機子軸9と同軸上で減速できる遊星歯車減速装置であり、遊星歯車10を介して減速された回転が出力軸4に伝達される。
出力軸4は、電機子軸9と同軸線上に配置されて、反モータ側の端部が軸受11を介してハウジング7のノーズ部7aに回転自在に支持され、モータ2側の端部が減速装置3を介して電機子軸9に連結されている。
ピニオンギヤ5は、出力軸4の外周に軸受12を介して相対回転可能に嵌合すると共に、エンジンのリングギヤ13に常時噛み合わされ、エンジン始動時に減速装置3で増幅されたモータトルクをリングギヤ13に伝達する。
衝撃吸収装置は、出力軸4とピニオンギヤ5との間にゴム等の緩衝部材14を配置して構成され、リングギヤ13を介してピニオンギヤ5に過大な負荷トルクが加わった時に、緩衝部材14が弾性圧縮することにより、スタータ1の駆動系に加わる衝撃を吸収する働きを有する。
電磁リレー6は、バッテリから通電されて電磁石を形成する電磁コイル15と、この電磁コイル15の内周を軸方向(図1の左右方向)に可動するプランジャ16とを内蔵し、電磁コイル15への通電により、電磁石が形成されてプランジャ16が吸引されると、そのプランジャ16の動きに連動してメイン接点を閉操作する。電磁コイル15への通電が停止して電磁石の吸引力が消滅すると、図示しないリターンスプリングの反力を受けてプランジャ16が押し戻されることにより、メイン接点を開操作する。
この電磁リレー6は、図1に示す様に、モータ2の径方向外側に近接して配置され、図示しないボルトとナットの結合によりハウジング7に固定される。
また、電磁リレー6は、軸方向ハウジング側(図1の左側)に開口する電磁コイル15の内周空洞部がゴム製のシールキャップ17によって閉塞されている。このシールキャップ17は、電磁リレー6がハウジング7に固定された状態で、電磁コイル15を収納するケースの軸方向端面とハウジング7との間にシールキャップ17の外周縁部が挟持されて、ケースの軸方向端面よりハウジング7側へ突き出るプランジャ16の端部をキャップ状に覆っている。このシールキャップ17には、電磁リレー6の内部を換気するための換気孔17aが1カ所形成されている(図3参照)。
また、シールキャップ17の内側には、プランジャ16がリターンスプリングの反力により押し戻された時に当接するプレート部材18(図1参照)が取り付けられている。
メイン接点は、2本の外部端子19、20を介してモータ回路に接続される一組の固定接点(図示せず)と、プランジャ16と一体に可動して一組の固定接点間を断続する可動接点(図示せず)とで形成され、可動接点が一組の固定接点に当接して両固定接点間が導通することでメイン接点が閉状態となり、一組の固定接点から可動接点が離れて両固定接点間の導通が遮断されることでメイン接点が閉状態となる。
2本の外部端子19、20は、バッテリケーブルを介してバッテリの+ターミナルに接続されるB端子19と、モータ2から取り出されたモータリード線21が接続されるM端子20であり、電磁リレー6の樹脂製カバー6aに固定されている。
ハウジング7は、エンジン側のスタータ取り付け壁(例えばミッションケース)に形成された開口部よりエンジン側へ挿入されるノーズ部7aを有し、このノーズ部7aの内部にピニオンギヤ5を収納すると共に、ピニオンギヤ5をリングギヤ13に噛み合わせるために、ノーズ部7aの径方向リングギヤ側に開口部7b(図2参照)が形成されている。すなわち、ハウジング7の内部は、この開口部7bを通じて外気に開放されている。
また、ハウジング7には、図1に示す様に、電磁リレー6が固定される軸方向端面にプランジャ16の外径より大きい内径を有する円筒穴と、この円筒穴の底部から更に深く凹設された換気室22と、この換気室22を外気に開放する開放通路23とが形成されている。
円筒穴には、上記のシールキャップ17が配設され、このシールキャップ17によって電磁リレー6と換気室22との間が区画されている。但し、シールキャップ17に形成された換気孔17aを通じて換気室22と電磁リレー6の内部とが連通している。具体的には、図1に示す様に、換気室22の一部を径方向外側に拡大して形成された連通室22aに換気孔17aが通じている。連通室22aは、図2に示す様に、換気室22の天方向上部に形成されている。
なお、シールキャップ17は、換気室22に対して換気孔17aが天方向側に設定されるように、ハウジング7との間に設けられる位置決め手段によって周方向に位置決めされている。
位置決め手段は、例えば、ハウジング7に形成された凹部7c(図2参照)または凸部と、シールキャップ17の外周縁部に突設された凸部17b(図3参照)または凹部とで構成され、両者の凹凸嵌合により、シールキャップ17がハウジング7に対し周方向に位置決めされる。
開放通路23は、スタータ1をエンジンに取り付けた状態で、図2に示す様に、換気室22に通じる開口部23aの方が、外気に通じる開口部23bより天地方向の高い位置に設定されている。また、換気室22に通じる開口部23aは、換気室22の地方向に開口している。
次に、上記スタータ1の作動を説明する。
電磁リレー6によりモータ回路のメイン接点が閉操作されると、バッテリから電機子に給電されて、電機子に回転力を発生する。電機子の回転は、減速装置3により減速されて出力軸4に伝達され、更に、ピニオンギヤ5からリングギヤ13に伝達されて、エンジンをクランキングする。
エンジンが完爆してエンジン回転数がスタータ回転数を上回ると、例えば、リングギヤ13に内蔵された一方向クラッチ(図示せず)が空転して、エンジンのクランク軸からリングギヤ13が切り離されることにより、エンジンの回転がピニオンギヤ5に伝達されることはなく、電機子のオーバランを防止できる。
エンジン始動後、電磁リレー6によりメイン接点が開操作されると、バッテリからモータ2への給電が停止されることにより、電機子の回転が次第に減速して停止する。
(実施例1の効果)
本実施例の電磁リレー6は、シールキャップ17に形成された換気孔17aと、ハウジング7に形成された換気室22および開放通路23とを介して電磁リレー6の内部が外気に開放されているため、プランジャ16の移動に伴って生じる内部負圧に耐え得るシール構造を必要としない。また、電磁リレー6の内部が常に外気に開放されているので、電磁リレー6の組み立て時に水分を完全に除去する工程(例えば、乾燥工程)も不要である。その結果、密閉タイプの電磁リレーと比較して、コストを低く抑えることができる。
また、ハウジング7に形成された開放通路23は、換気室22に通じる開口部23aの方が外気に通じる開口部23bより天地方向の高い位置に設けられているので、外気側の開口部23bから開放通路23の内部へ水が入り込んでも、その水が換気室22側の開口部23aまで到達することを抑制できる。万が一、開放通路23から換気室22まで水が入り込んだ場合でも、換気室22側の開口部23aが換気室22の地方向に開口しているので、換気室22に水が溜まることはなく、開放通路23を通じて容易に外部へ排水される。
さらに、シールキャップ17は、換気室22に対して換気孔17aが天方向側に設定されるように配置される、つまり、換気室22の高い位置に換気孔17aが通じているので、換気室22まで水が入り込んでも、その水が換気孔17aを通って電磁リレー6の内部へ浸入することを防止できる。その結果、被水の厳しい車両に対しても高い耐水性を確保できる。
図4はシールキャップ17の断面図である。
本実施例2のシールキャップ17は、換気孔17aを迷路構造としたことを特徴とする。図4(a)は換気孔17aに曲がり部を設けた場合の一例、同図(b)は換気孔17aをクランク状に形成した場合の一例、同図(c)は換気孔17aの内部に複数の邪魔板17cを設けた場合の一例であり、それぞれ、実施例1に示した換気孔17a(図3参照)と比較して、換気孔17aから電磁リレー6の内部へ直線的に水が浸入することを防止できるので、さらに耐水性を向上できる。
スタータの全体側面図である(実施例1)。 ハウジングを反エンジン側から見た軸方向正面図である(実施例1)。 (a)シールキャップの断面図、(b)シールキャップをプランジャ側から見た平面図である(実施例1)。 シールキャップの断面図である(実施例2)。
符号の説明
1 スタータ
2 モータ
4 出力軸
5 ピニオンギヤ
6 電磁リレー
7 ハウジング
7c ハウジングに形成された凹部(位置決め手段)
13 リングギヤ
16 プランジャ
17 シールキャップ
17a 換気孔
17b シールキャップに形成された凸部(位置決め手段)
22 換気室
23 開放通路

Claims (5)

  1. 回転力を発生するモータと、
    このモータに駆動されて回転する出力軸と、
    この出力軸上に配置されると共に、エンジンのリングギヤに常時噛み合わされて、前記モータの駆動トルクを前記リングギヤに伝達するピニオンギヤと、
    電磁石によりプランジャを吸引してモータ回路の接点を閉操作する電磁リレーと、
    前記モータと前記電磁リレーとが固定されるハウジングとを備えるスタータであって、 前記電磁リレーの軸方向ハウジング側を閉塞するシールキャップを有すると共に、このシールキャップに換気孔が形成され、
    前記ハウジングには、前記シールキャップの反プランジャ側に前記換気孔を通じて前記電磁リレーの内部に連通する換気室が形成されると共に、この換気室を外気に開放する開放通路が形成され、
    前記シールキャップは、前記換気室に対して前記換気孔が天方向側に設定されるように配置されることを特徴とするスタータ。
  2. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記開放通路は、前記換気室に通じる開口部の方が、外気に通じる開口部より天地方向の高い位置に設けられ、且つ、前記換気室に通じる開口部は、前記換気室の地方向に開口していることを特徴とするスタータ。
  3. 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
    前記シールキャップは、前記換気室に対して前記換気孔が天方向側に設定されるように、前記ハウジングとの間に設けられる位置決め手段によって周方向に位置決めされていることを特徴とするスタータ。
  4. 請求項3に記載したスタータにおいて、
    前記位置決め手段は、前記シールキャップに形成された凸部または凹部と、前記ハウジングに形成された凹部または凸部とで構成され、両者の凹凸嵌合によって前記シールキャップの位置決めが行われることを特徴とするスタータ。
  5. 請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、
    前記換気孔を迷路構造としたことを特徴とするスタータ。
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