JP4240109B2 - イオン注入装置 - Google Patents

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Description

この発明は、リボン状のイオンビームを基板に入射させることと、基板をイオンビームの主面と交差する方向に移動させることとを併用して、基板にイオン注入を行うイオン注入装置に関する。
この種のイオン注入装置においては、基板に対するイオン注入の均一性を高めるために、リボン状(これはシート状または帯状と呼ばれることもある。以下同様)のイオンビームの長手方向(この明細書においてはY方向)のイオンビーム電流密度分布の均一性が良いことが重要である。
リボン状のイオンビームの長手方向のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させる技術として、例えば特許文献1には、複数のフィラメントを有するイオン源の各フィラメント電流を制御して、基板にイオンビームを入射させる注入位置の近傍において、イオンビーム電流密度分布の均一性を向上させる技術が記載されている。
また、特許文献2には、1次元で走査される電子ビームをイオン源のプラズマ生成容器内に入射して、この電子ビームによってガスを電離させてプラズマを生成させることによって、イオン源から引き出すイオンビームのビーム電流密度分布を向上させる技術が記載されている。
特開2000−315473号公報(段落0012−0015、図1) 特開2005−38689号公報(段落0006−0008、図1)
特許文献1に記載の技術では、イオンビームの長手方向にフィラメントを複数個並べても、各フィラメント間には空間が不可避的に存在するため、フィラメント間の領域においてプラズマ密度ひいてはイオンビーム電流密度が低下することは避けられない。従って、イオンビーム電流密度分布の均一性を高めることには限界がある。
特許文献2に記載の技術では、イオン源から引き出すイオンビームの均一性を向上させることができたとしても、イオンビームの輸送途中で均一性が悪化する場合があるので、注入位置でのイオンビーム電流密度分布の均一性が良いという保証はない。
そこでこの発明は、基板に対する注入位置での長手方向(Y方向)のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させることができるイオン注入装置を提供することを主たる目的としている。
この発明に係る第1のイオン注入装置は、イオンビームの進行方向をZ方向とし、Z方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいリボン状のイオンビームを輸送してそれを基板に照射してイオン注入を行うイオン注入装置であって、
ガスが導入されるプラズマ生成容器内にアーク放電発生用の1以上のフィラメントを有していて、Y方向の寸法が前記基板のY方向の寸法よりも大きい前記リボン状のイオンビームを発生させるイオン源と、
前記イオンビームを前記基板に入射させる注入位置で、前記基板を前記イオンビームの主面と交差する方向に移動させる基板駆動装置と、
電子ビームを発生させてそれを前記イオン源のプラズマ生成容器内へ放出して当該電子ビームによって前記ガスを電離させてプラズマを生成するものであって、当該電子ビームを前記プラズマ生成容器内においてY方向に走査する1以上の電子ビーム源と、
前記各電子ビーム源に、前記電子ビームの発生量を制御する引出し電圧および前記走査用の走査電圧をそれぞれ供給する1以上の電子ビーム用電源と、
前記注入位置またはその近傍において、Y方向における複数のモニタ点において前記イオンビームのY方向のイオンビーム電流密度分布を測定するイオンビームモニタと、
前記イオンビームモニタからの測定データに基づいて前記電子ビーム用電源を制御することによって、前記各電子ビーム源から発生させる電子ビームの量を実質的に一定に保ちつつ、前記イオンビームモニタで測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの走査速度を相対的に大きくすることと、測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの走査速度を相対的に小さくすることの少なくとも一方を行って、前記イオンビームモニタで測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する機能を有している制御装置とを備えている。
この第1のイオン注入装置においては、イオンビームモニタによって、注入位置またはその近傍におけるY方向のイオンビーム電流密度分布が測定される。そして、制御装置は、イオンビームモニタからの測定データに基づいて電子ビーム用電源を制御して、イオン源のプラズマ生成容器内における電子ビームの走査速度を制御して、当該電子ビームによって生成するプラズマの密度を制御する。具体的には、各電子ビーム源から発生させる電子ビームの量を実質的に一定に保ちつつ、イオンビームモニタで測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビームの走査速度を相対的に大きくすることと、測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビームの走査速度を相対的に小さくすることの少なくとも一方を行って、イオンビームモニタで測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する制御を行う。これによって、注入位置でのY方向のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。
(a)前記制御装置を、前記各電子ビーム用電源から前記各電子ビーム源に供給する前記走査電圧の元になる走査信号を前記各電子ビーム用電源に供給する機能と、前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度の平均値を算出する機能と、前記算出した平均値が所定の設定イオンビーム電流密度に実質的に等しくなるように、前記イオン源の各フィラメントに流すフィラメント電流を一律に制御する機能と、前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度と前記設定イオンビーム電流密度との差であるY方向分布の誤差を算出する機能と、前記算出した誤差が所定の許容誤差より大きいモニタ点およびそのモニタ点での誤差の正負を決定する機能と、前記決定したモニタ点に対応する前記電子ビーム源およびその走査電圧を決定する機能と、前記決定した誤差の正負に基づいて、前記測定したイオンビーム電流密度の方が大きいモニタ点に対応する走査電圧時の前記電子ビームの走査速度を前記誤差の大きさに比例して増大させ、かつ、前記測定したイオンビーム電流密度の方が小さいモニタ点に対応する走査電圧時の前記電子ビームの走査速度を前記誤差の大きさに比例して減少させて、イオンビームが入射する実質的に全てのモニタ点で前記誤差が前記許容誤差以下になるように、前記走査信号の波形を整形する機能と、前記整形後の走査信号のデータおよび前記フィラメント電流のデータを保存する機能とを有しているものとし、かつ(b)前記各電子ビーム用電源を、前記制御装置から供給される走査信号を増幅して前記走査電圧を作る増幅器を有しているものとしても良い。
この明細書において「実質的に全てのモニタ点」というのは、全てのモニタ点が好ましいけれども、重要でない幾つかのモニタ点を除外しても構わないという趣旨である。
この発明に係る第2のイオン注入装置は、イオンビームの進行方向をZ方向とし、Z方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいリボン状のイオンビームを輸送してそれを基板に照射してイオン注入を行うイオン注入装置であって、
ガスが導入されるプラズマ生成容器内にアーク放電発生用の1以上のフィラメントを有していて、Y方向の寸法が前記基板のY方向の寸法よりも大きい前記リボン状のイオンビームを発生させるイオン源と、
前記イオンビームを前記基板に入射させる注入位置で、前記基板を前記イオンビームの主面と交差する方向に移動させる基板駆動装置と、
電子ビームを発生させてそれを前記イオン源のプラズマ生成容器内へ放出して当該電子ビームによって前記ガスを電離させてプラズマを生成するものであって、当該電子ビームを前記プラズマ生成容器内においてY方向に走査する1以上の電子ビーム源と、
前記各電子ビーム源に、前記電子ビームの発生量を制御する引出し電圧および前記走査用の走査電圧をそれぞれ供給する1以上の電子ビーム用電源と、
前記注入位置またはその近傍において、Y方向における複数のモニタ点において前記イオンビームのY方向のイオンビーム電流密度分布を測定するイオンビームモニタと、
前記イオンビームモニタからの測定データに基づいて前記電子ビーム用電源を制御することによって、前記各電子ビーム源から発生させる電子ビームの走査速度を実質的に一定に保ちつつ、前記イオンビームモニタで測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの発生量を相対的に少なくすることと、測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの発生量を相対的に多くすることの少なくとも一方を行って、前記イオンビームモニタで測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する機能を有している制御装置とを備えている。
この第2のイオン注入装置においては、イオンビームモニタによって、注入位置またはその近傍におけるY方向のイオンビーム電流密度分布が測定される。そして、制御装置は、イオンビームモニタからの測定データに基づいて電子ビーム用電源を制御して、電子ビーム源からの電子ビームの発生量を制御して、当該電子ビームによってプラズマ生成容器内で生成するプラズマの密度を制御する。具体的には、各電子ビーム源から発生させる電子ビームのY方向における走査速度を実質的に一定に保ちつつ、イオンビームモニタで測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビームの発生量を相対的に少なくすることと、測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビームの発生量を相対的に多くすることの少なくとも一方を行って、イオンビームモニタで測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する制御を行う。これによって、注入位置でのY方向のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。
(a)前記制御装置を、前記各電子ビーム用電源から前記各電子ビーム源に供給する前記引出し電圧の元になる引出し信号を前記各電子ビーム用電源に供給する機能と、前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度の平均値を算出する機能と、前記算出した平均値が所定の設定イオンビーム電流密度に実質的に等しくなるように、前記イオン源の各フィラメントに流すフィラメント電流を一律に制御する機能と、前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度と前記設定イオンビーム電流密度との差であるY方向分布の誤差を算出する機能と、前記算出した誤差が所定の許容誤差より大きいモニタ点およびそのモニタ点での誤差の正負を決定する機能と、前記決定したモニタ点に対応する前記電子ビーム源およびその走査電圧を決定する機能と、前記決定した誤差の正負に基づいて、前記測定したイオンビーム電流密度の方が大きいモニタ点に対応する走査電圧時の前記引出し電圧を前記誤差の大きさに比例して減少させ、かつ、前記測定したイオンビーム電流密度の方が小さいモニタ点に対応する走査電圧時の前記引出し電圧を前記誤差の大きさに比例して増大させて、イオンビームが入射する実質的に全てのモニタ点で前記誤差が前記許容誤差以下になるように、前記引出し信号の波形を整形する機能と、前記整形後の引出し信号のデータおよび前記フィラメント電流のデータを保存する機能とを有しているものとし、かつ(b)前記各電子ビーム用電源を、前記制御装置から供給される引出し信号を増幅して前記引出し電圧を作る増幅器を有しているものとしても良い。
前記イオン源と前記注入位置との間に設けられていて、前記イオン源からのイオンビームをX方向に曲げて運動量分析を行う分析電磁石を更に備えていても良い。
前記分析電磁石と前記注入位置との間に設けられていて、静電界によって、前記イオンビームをX方向に曲げると共に加速または減速を行う加減速器を更に備えていても良い。
請求項1〜6に記載の発明によれば、上記のような構成を有しているので、基板に対する注入位置でのY方向のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、基板に対するイオン注入の均一性を高めることができる。
しかも、フィラメントを用いたプラズマ生成と、電子ビーム源を用いたプラズマ密度分布制御によるイオンビーム電流密度分布の均一化とを併用しているので、大電流でしかも均一性の良いイオンビームを基板に照射してイオン注入を行うことが容易になる。
請求項7〜10に記載の発明によれば、上記のような分析電磁石を備えているので、次の更なる効果を奏する。
即ち、分析電磁石の各コイルは上記のような扇型筒状の積層コイルに本体部および渡り部を残して切欠き部を設けた構成をしているので、渡り部は、本体部の端部からY方向に実質的に平行に延出した状態になっている。従って、本体部のY方向における寸法を大きくする場合でも、それに対応させて渡り部のY方向における寸法を大きくすれば済むので、ビーム入出射方向への渡り部の張り出し距離は大きくならない。このような構造によって、コイルの渡り部の、ヨークからのビーム入出射方向への張り出し距離を小さくすることができる。
従って、分析電磁石の小型化が可能になり、ひいては分析電磁石の設置に必要な面積を小さくすることができる。分析電磁石の軽量化も可能になる。また、コイルの渡り部が発生する磁界がイオンビームの形態を乱す可能性も小さくなる。
また、各コイルの渡り部の張り出し距離を小さくすることができることに伴って、渡り部の長さも短くすることができるので、渡り部における無駄な消費電力を小さくすることができる。しかも、各コイルは、絶縁シートを挟んで導体シートを積層した構造をしているので、被覆導体を多数回巻いたマルチターンコイルに比べて、導体の占積率が高く、そのぶん電力損失が少ない。従って、消費電力を小さくすることができる。
その結果、分析電磁石の小型化に伴ってイオン注入装置の小型化が可能になり、ひいてはイオン注入装置の設置に必要な面積を小さくすることができる。イオン注入装置の軽量化も可能になる。また、分析電磁石における消費電力を小さくすることができることに伴って、イオン注入装置の消費電力を小さくすることができる。
請求項8に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、分析電磁石が上記のような第1コイルおよび第2コイルを備えているので、Y方向の寸法が大きいイオンビームに対応することが容易になる。
請求項9に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、分析電磁石が内側コイルに加えて、上記のような第1外側コイルおよび第2外側コイルを備えているので、イオンビームのビーム経路に、Y方向における磁束密度分布の均一性の高い磁界を発生させることができる。その結果、出射時のイオンビームの形態の乱れを小さく抑えることができる。この効果は、対象とするイオンビームのY方向の寸法が大きい場合により顕著になる。
請求項10に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、分析電磁石が第1内側コイルおよび第2内側コイルに加えて、上記のような第1外側コイルおよび第2外側コイルを備えているので、Y方向の寸法が大きいイオンビームに対応することが容易になると共に、イオンビームのビーム経路に、Y方向における磁束密度分布の均一性の高い磁界を発生させることができる。その結果、出射時のイオンビームの形態の乱れをより小さく抑えることができる。この効果は、対象とするイオンビームのY方向の寸法が大きい場合により顕著になる。
請求項11に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、上記のような磁極を備えていることによって、両磁極間のギャップに磁界が集中しやすくなるので、ビーム経路に磁束密度の高い磁界を発生させることが容易になる。
請求項12に記載の発明によれば、上記のような加減速器を備えているので、次の更なる効果を奏する。
即ち、加減速器において、二つの電極体に分けて構成された第2の電極の部分でイオンビームを偏向させることができ、これによってエネルギー分離の作用効果を奏する。また、第3の電極の存在によって、特定のエネルギーを有するイオンビームを効率良く導出することができると共に、それ以外のイオンや中性粒子を第3の電極で効率良く阻止することができるので、エネルギーコンタミネーションをより効果的に抑制することができる。特に、減速モード時には第1の電極と第2の電極との間におけるイオンの減速時に荷電変換によって中性粒子が発生しやすいことが経験的に分かっているけれども、中性粒子が多く発生してもこれは直進して第3の電極に衝突して阻止されるので、加減速器内において中性粒子を効果的に除去することができる。
更に、イオンビームを2段階に分けて加速することができ、その内の後段での加速前にイオンビームを偏向させることができるので、偏向が容易になる。更に、不所望イオンの衝突によって発生した電子を第2の電極で曲げて当該電子が第1の電極に到達することを防止することができるので、当該電子の衝突によって発生するX線のエネルギーを低くすることができる。
(1)イオン注入装置全体について
図1は、この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。この明細書および図面においては、イオンビーム50の進行方向を常にZ方向とし、このZ方向に実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向としている。例えば、X方向およびZ方向は水平方向であり、Y方向は垂直方向である。なお、Y方向は一定の方向であるが、X方向は絶対的な方向ではなく、イオンビーム50の経路上の位置によって変化する(例えば図1参照)。またこの明細書において、イオンビーム50を構成するイオンは正イオンの場合を例に説明している。
このイオン注入装置は、基板60にリボン状のイオンビーム50を照射してイオン注入を行う装置であり、リボン状のイオンビーム50を発生させるイオン源100と、このイオン源100からのイオンビーム50をX方向に曲げて運動量分析(例えば質量分析。以下同様)を行うものであってその下流側に所望運動量のイオンビーム50の焦点(X方向における焦点。以下同様)56を形成する分析電磁石200と、この分析電磁石200を通過したイオンビーム50を基板60に入射させる注入位置で基板60をイオンビーム50の主面52(図2、図3参照)と交差する方向に移動させる(矢印C参照)基板駆動装置500とを備えている。この移動は、例えば、往復直線運動である。基板駆動装置500は、基板60を保持するホルダ502を有している。
イオン源100から基板60までのイオンビーム50の経路は、図示しない真空容器内にあって、真空雰囲気に保たれる。
この明細書において「主面」とは、リボン状またはシート状のもの(例えばイオンビーム50、後述する絶縁シート266、267、導体シート268、269等)の端面ではなく、大きい方の面を意味している。「下流側」または「上流側」というのは、それぞれ、イオンビーム50の進行方向Zに見て下流側または上流側の意味である。また、イオン源100から発生させたイオンビーム50と、分析電磁石200から導出されるイオンビーム50とは、その内容が異なるが、即ち前者は運動量分析前、後者は運動量分析後であるが、両者の相違は自明であるので、この明細書では両者の符号を区別せずに、いずれもイオンビーム50で表している。
イオン源100から発生させて基板60まで輸送するイオンビーム50は、例えば図2に示すように、X方向の寸法WX よりもY方向の寸法WY が大きいリボン状をしている。即ちWY >WX である。イオンビーム50は、リボン状と言ってもX方向の寸法WX が紙や布のように薄いという意味ではない。例えば、イオンビーム50のX方向の寸法WX は30mm〜80mm程度、Y方向の寸法WY は、基板60の寸法にも依るが、300mm〜500mm程度である。このイオンビーム50の大きい方の面、即ちYZ面に沿う面が主面52である。
イオン源100は、図3に示す例のように、Y方向の寸法WY が基板60のY方向の寸法TY よりも大きいリボン状のイオンビーム50を発生させる。例えば、寸法TY が300mm〜400mmであれば、寸法WY は400mm〜500mm程度である。このような寸法関係と、基板60を上記のように移動させることとによって、基板60の全面にイオンビーム50を照射してイオン注入を行うことができる。
基板60は、例えば、半導体基板、ガラス基板、その他の基板である。その平面形状は円形でも良いし四角形でも良い。
分析電磁石200からのイオンビーム50の焦点56付近には、分析電磁石200と協働してイオンビーム50の運動量分析を行うスリット70が設けられている。分析スリット70は、Y方向に実質的に平行に伸びたスリット72を有している。分析スリット70をイオンビーム50の焦点56付近に設けているのは、イオンビーム50の輸送効率と、運動量分析の分解能の両方を高めるためである。
なお、分析電磁石200、分析スリット70および後述する加減速器400は、必要に応じて設ければ良い。
後で詳述するけれども、イオン源100(より具体的にはそれを構成するプラズマ生成容器118)内には、複数の電子ビーム源Gnが設けられている。各電子ビーム源Gnには、それに対応する電子ビーム用電源114から、電子ビームの発生量を制御する引出し電圧およびY方向走査用の走査電圧がそれぞれ供給される。電子ビーム源Gnおよび電子ビーム用電源114の数は、この実施形態ではそれぞれ二つであるが、それに限られるものではなく、それぞれ一つでも良いし、二つ以外の複数でも良い。即ちどちらの数も1以上で任意である。
イオンビーム50を基板60に入射させる注入位置またはその近傍において、かつY方向における複数のモニタ点において、イオンビーム50のY方向のビーム電流密度分布を測定するイオンビームモニタ80が設けられている。このイオンビームモニタ80から上記ビーム電流密度分布を表す測定データD1 が出力され、それが制御装置90に供給される。
イオンビームモニタ80は、例えば図1に示す例のように、注入位置の後方(換言すれば下流側)近傍に設けても良いし、注入位置の前方(換言すれば上流側)近傍に設けても良いし、注入位置へ移動させるようにしても良い。このイオンビームモニタ80と基板60およびホルダ502とは、相互に邪魔にならないようにすれば良い。例えば、イオンビームモニタ80を注入位置の後方近傍に設ける場合は、測定時には基板60およびホルダ502を測定の邪魔にならない位置に移動させれば良い。イオンビームモニタ80を注入位置の前方近傍に設ける場合は、注入時にはイオンビームモニタ80を注入の邪魔にならない位置に移動させれば良い。
このイオン注入装置は、更に、イオンビームモニタ80から与えられる測定データD1 に基づいて各電子ビーム用電源114を制御する制御装置90を備えている。制御装置90は、この実施形態では、後述するフィラメント電流Ifの制御も行うことができる。
(2)イオン源100、電子ビーム源Gn等とその制御について
イオン源100は、図4に示すように、ガス導入口119を通してプラズマ生成用のガス(蒸気の場合を含む)120が導入される、例えば直方体状をしたプラズマ生成容器118内に1以上(この実施形態では三つ)のフィラメント122を有しており、この各フィラメント122と陽極を兼ねるプラズマ生成容器118との間でアーク放電を発生させてガス120を電離させてプラズマ124を生成し、このプラズマ124から、引出し電極系126によって、上記のようなリボン状のイオンビーム50を引き出す構成をしている。
ガス120は、所望の元素(例えば、B、P、As 等のドーパント)を含むガスである。より具体例を挙げれば、BF3 、PH3 、AsH3 、B26 等の原料ガスを含むガスである。
ガス導入口119は、必要に応じて、Y方向に複数個設けても良い。そのようにすれば、プラズマ生成容器118内におけるガス濃度分布を均一化して、プラズマ密度分布を均一化することが容易になる。
引出し電極系126は、1枚以上(図示例では3枚)の電極を有している。各電極は、相対応する位置にイオン引出し孔128をそれぞれ有している。引出し電極系126(より具体的にはその電極)のイオン引出し孔128の形状、配列等は、引き出すイオンビーム50の断面形状に応じたものにすれば良い。例えば、イオン引出し孔128は、図5に示す例のようにY方向に並べられた複数(多数)の小孔でも良いし、Y方向に伸びたスリットでも良い。イオンビーム50のX方向の寸法WX に応じて、上記のような複数のイオン引出し孔128から成る列を、X方向に複数列(例えば2〜3列)有していても良い。
フィラメント122の数は、1以上で任意であるが、Y方向の寸法WY が大きくかつ均一性の良いイオンビーム50を発生させるためには、複数のフィラメント122をY方向に配列するのが好ましい。
各フィラメント122の形状は、例えば図4、図5に示す例のようにU字状のものでも良いし、図6に示す例のようにY方向に沿って伸びた線状のものでも良いし、その他の形状でも良い。
U字状のフィラメント122は、図4に示すようにYZ平面内で曲げ戻された形状をしていても良いし、図5に示す例のようにXZ平面内で曲げ戻された形状をしていても良い。
各フィラメント122は、図4に示すように、電圧可変のフィラメント電源134からフィラメント電流Ifが供給されて加熱され、熱電子を放出する。フィラメント122の一方端とプラズマ生成容器118との間には、前記アーク放電発生用の直流のアーク電源136が接続されている。フィラメント電源134は、この実施形態では、制御装置90から供給されるフィラメント電流制御信号Sfに応答して、上記フィラメント電流Ifを変化(増減)させることができる。
フィラメント電源134は、この例では一つのフィラメント122に一つずつ設けている。但し、複数のフィラメント電源134は、必ずしも別個のものである必要はなく、それらを一つにまとめて、各フィラメント122に互いに独立してフィラメント電流Ifを流すことのできる一つのフィラメント電源としても良い。アーク電源136は、この例では全てのフィラメント122に共用のものであるが、一つのフィラメント122に一つずつ設けても良い。共用のものにすれば、構成を簡素化することができる。
プラズマ生成容器118の周りに、プラズマ124の生成・維持のための多極磁場(マルチカスプ磁場)形成用の磁石を配置しておいても良い。そのような構造のイオン源は、バケット型イオン源(または多極磁場型イオン源)とも呼ばれる。
上記複数のフィラメント122の間に、より具体的には中間に、電子ビーム源Gnがそれぞれ配置されている。各電子ビーム源Gnは、図7に示すように、この実施形態では、電子(熱電子)を放出するフィラメント140と、当該電子を電子ビーム138として引き出す陽極144と、両者140、144間に配置されていて電子ビーム138のエネルギーを変えずに電子ビーム発生量を制御する引出し電極142と、外部に取り出す電子ビーム138をY方向に走査する一対の走査電極146とを有している。
このような構成によって、各電子ビーム源Gnは、電子ビーム138を発生させてそれをイオン源100のプラズマ生成容器118内へ放出して、当該電子ビーム138によってガス120を電離させてプラズマ124を生成することができる。かつ、当該電子ビーム138をイオン源100内(より具体的にはプラズマ生成容器118内)においてY方向に1次元で走査することができる。その走査軌跡の一例を図5、図6中に示す。この電子ビーム源Gnは、簡単に言えば、フィラメント122によって生成するプラズマ124の密度分布を補正するためのものである。この実施形態ではこのような電子ビーム源Gnを二つ有している。但し二つに限られるものではなく、一つでも良いし、二つ以外の複数でも良い。即ち1以上で任意である。
各電子ビーム用電源114は、図7に示す例では、フィラメント140を加熱するフィラメント電源150と、フィラメント140と引出し電極142との間に電子ビーム138の発生量を制御する直流の引出し電圧Veを印加する引出し電源152と、フィラメント140と陽極144との間に直流の陽極電圧Vaを印加するエネルギー制御電源154と、一対の走査電極146間にY方向走査用の走査電圧Vyを印加する増幅器156とを有している。フィラメント電源150は、この実施形態では直流電源であるが、交流電源でも良い。
制御装置90は、一例として、走査電圧Vyの元になる走査信号Syを供給する機能を有しており、増幅器156は、制御装置90から供給される走査信号Syを増幅(電圧増幅)して、上記走査電圧Vyを作る(出力する)。走査電圧Vyは、この例では、陽極144の電位を基準にして、±方向に振られる。このような構成によって、各電子ビーム用電源114は、それに対応する各電子ビーム源Gnに、電子ビーム138の発生量を制御する引出し電圧Ve、Y方向走査用の走査電圧Vy等をそれぞれ供給することができる。
電子ビーム源Gnから取り出される電子ビーム138のエネルギーは、簡単に言えば、上記陽極電圧Vaの大きさによって決まり、当該エネルギーはVa[eV]となる。この電子ビーム138のエネルギーは、プラズマ生成容器118内において電子衝撃によって前記ガス120を電離させることができる大きさにしておく。例えば、ガス120が前述したような種類のガスである場合、500eV〜3keV程度に、より具体的には1keV程度にすれば良い。
イオンビームモニタ80は、Y方向における複数のモニタ点においてイオンビーム50のY方向のイオンビーム電流密度分布を測定するものである。このイオンビームモニタ80は、例えば図9に示す例のように、Y方向に配列された複数(多数)のビーム電流測定器(例えばファラデーカップ)82を有している。この複数のビーム電流測定器82は、Y方向に、イオンビーム50のY方向の寸法WY よりも幾分長く配列しておいても良い。そのようにすれば、イオンビーム50のY方向の全体を測定することができる。各ビーム電流測定器82が各モニタ点に相当する。但し図9は概略図であり、ビーム電流測定器82の個数、形状、配列等は図9に示すものに限られない。
例えば、各ビーム電流測定器82を、図9に示す例のような円形ではなく、X方向に伸びた短冊状のものにしても良い。その場合、各ビーム電流測定器82は、そのX方向の寸法を、それに入射するイオンビーム50のX方向の寸法WX よりも大きくしておいて、X方向においてはイオンビーム50の全体を受けることができるようにしておいても良い。そのようにすれば、イオンビーム50のX方向におけるイオンビーム電流密度分布の影響を排除することができる。換言すれば、X方向においては平均のイオンビーム電流密度を測定することができる。前述したように基板60はX方向に沿って(X方向に平行とは限らない)移動させられるので、各ビーム電流測定器82を上記のようにしておくと、基板60に対する実際のイオン注入により近い状態で、イオンビーム50のイオンビーム電流密度分布を測定することができる。
また、イオンビームモニタ80は、一つのビーム電流測定器82を移動機構によってY方向に移動させる構造のものでも良い。
なお、モニタ点は、この明細書においては、数学上の面積を有しない点のことではなく、イオンビーム50のY方向の寸法WY に比べてY方向の寸法が十分に小さい、所定の面積を有する小さな測定箇所のことである。
各モニタ点の面積は予め分かっているから、各モニタ点でイオンビーム50のビーム電流をそれぞれ測定することと、各モニタ点でビーム電流密度を測定することとは、実質的に同じである。これは、各モニタ点で測定したビーム電流を上記面積で割ることによって、各モニタ点におけるビーム電流密度を得ることができるからである。
図1に示したイオン源100からイオンビームモニタ80までを簡略化して示すと図8のようになる。170はイオンビーム輸送系をまとめて示すものである。イオン源100におけるY方向とイオンビームモニタ80におけるY方向とは、互いに実質的に平行に取ることができるけれども、イオンビーム輸送系170は必ずしも直線状ではないので(図1参照)、イオン源100におけるX方向とイオンビームモニタ80におけるX方向とは、必ずしも図8に示すように互いに平行になるものではないが、それで支障はない。
制御装置90は、この実施形態では、CPU、記憶装置、入力用のAD変換器、出力用のDA変換器等を有するコンピュータから成る。この制御装置90は、次の(A)または(B)の制御を行う機能を有している。(A)、(B)両方の制御を同時に行うことはない。
(A)電子ビームの走査速度制御
この場合の制御装置90は、イオンビームモニタ80からの測定データD1 に基づいて各電子ビーム用電源114を制御することによって、各電子ビーム源Gnから発生させる電子ビーム138の量を実質的に一定に保ちつつ、(a)イオンビームモニタ80で測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビーム138の走査速度を相対的に大きくすることと、(b)測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビーム138の走査速度を相対的に小さくすることの両方を行って、イオンビームモニタ80で測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する機能を有している。
(B)電子ビーム量の制御
この場合の制御装置90は、イオンビームモニタ80からの測定データD1 に基づいて各電子ビーム用電源114を制御することによって、各電子ビーム源Gnから発生させる電子ビーム138のY方向における走査速度を実質的に一定に保ちつつ、(a)イオンビームモニタ80で測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビーム138の発生量を相対的に少なくすることと、(b)測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での電子ビーム138の発生量を相対的に多くすることの両方を行って、イオンビームモニタ80で測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する機能を有している。
上記(A)、(B)いずれの場合も、制御装置90は、上記(a)、(b)の制御の内の少なくとも一方を行うものでも良いけれども、両方を行う方が、イオンビーム電流密度分布を均一化する制御は速くなるので好ましい。なお、上記「機能」は「手段」と言い換えることもできる。後述する他の機能についても同様である。
上記(A)、(B)の制御のより具体例を以下に説明する。
(A)電子ビームの走査速度制御
この場合は、電子ビーム用電源114には図7に示したものを用いる。そしてこの例では、引出し電源152から出力する引出し電圧Veを一定にしておいて、電子ビーム源Gnから発生させる電子ビーム量は一定にしておく。エネルギー制御電源154から出力する陽極電圧Vaも一定にしておいて、電子ビーム138のエネルギーも一定にしておくのが好ましいので、この実施形態ではそれらを一定にしておく。この場合に、制御装置90を用いて行う制御のフローチャートを図10〜図12に示す。
制御に先立ち、イオンビームモニタ80上のモニタ点Pyと、そのモニタ点Pyのイオンビーム電流密度を増減させるのを分担する電子ビーム源Gnおよびその電子ビーム源Gnに供給する走査電圧Vyとの対応関係を予め調べてそれを制御装置90内に保存しておく。但し、電子ビーム源Gnが1個の場合は、電子ビーム源Gnは一義的に決まっているので、分担する電子ビーム源Gnを調べて保存しておく必要はない。下記の対応関係に電子ビーム源Gnを含める必要もない。
この対応関係は、イオンビームモニタ80上の任意のモニタ点Pyに着目すれば、そのモニタ点Pyのイオンビーム電流密度を増減させる電子ビーム源Gnはどれか、かつその電子ビーム源Gnに供給する走査電圧Vyはどんな値か、という関係であり、次の数1で表すことができる。添字のi,j,kは、より具体的な位置を表しており、それぞれ整数である。この対応関係は、例えば、どの電子ビーム源Gnのどんな走査電圧Vyのときに、どのモニタ点Pyのイオンビーム電流密度が増減するかを調べることによって決定することができる。この対応関係は、装置構成によって一義的に決まるので、装置構成に変更がない限り、一度決めれば良い。そして、この対応関係を表すデータを制御装置90(より具体的にはその記憶装置)内に格納しておけば良い。
[数1]
Pyi ←→(Gnj ,Vyk
それ以降を図10等を参照して説明する。基板60に照射するイオンビーム50の所望のイオンビーム電流密度Isetおよびその許容誤差εを制御装置90に設定する(ステップ900)。この設定したイオンビーム電流密度Isetを設定イオンビーム電流密度と呼ぶ。許容誤差εは、設定イオンビーム電流密度Isetに対して、実際のイオンビーム電流密度、具体的にはイオンビームモニタ80で測定するイオンビーム電流密度Imonがどの程度までずれるのを許容するかというものである。
次に、フィラメント条件の粗設定を行う(ステップ901)。これは、プラズマ124の生成に電子ビーム源Gnを用いずフィラメント122だけを用いてイオン源100からイオンビーム50を引き出して、イオンビームモニタ80で測定されるイオンビーム電流密度Imonを手動で粗く設定することである。具体的には、各フィラメント電源134を調整してイオン源100の各フィラメント122に流すフィラメント電流Ifを粗く設定する。このとき、アーク電源136から流すアーク電流の調整を併用しても良い。この粗設定も、イオン源100やイオン注入装置の構成に変更がない限り、原則的には、1回行えば良い。
上記フィラメント条件の粗設定をより精密に行えば、後の制御(例えばステップ905以降の制御)をより速く完了させることが可能になる。図16の例の場合も同様である。
例えば、上記粗設定では、全てのモニタ点Pyで、測定イオンビーム電流密度Imonが設定イオンビーム電流密度Isetに近く、かつその分布がある程度均一になるように設定するのが好ましい。そのようにした概略例を図13、図14Aに示す。図13は設定イオンビーム電流密度Isetよりも測定イオンビーム電流密度Imonを若干小さくした例を示し、図14Aでは若干大きくした例を示す。どちらに設定しても良い。
なお、大まかに言えば、図13に示すように、測定イオンビーム電流密度Imonのピークの位置は、ほぼフィラメント122の位置に対応している。AG1 は一方の電子ビーム源Gnの寄与領域、AG2 は他方の電子ビーム源Gnの寄与領域である。但しこの図はあくまでも概略図である。
次に、制御装置90から各電子ビーム用電源114(より具体的にはその増幅器156)に、初期波形の走査信号Syを供給して、同波形の走査電圧Vyを出力させる(ステップ902)。この初期波形は、例えば、三角波である。周波数は、例えば10kHzであるが、これに限られるものではない。
各電子ビーム源Gnは、上記初期波形でY方向に走査される電子ビーム138を発生させる。これとフィラメント122とを用いて、イオン源100内でプラズマ124を生成させて、イオンビーム50を引き出す(ステップ903)。そして、このイオンビーム50をイオンビームモニタ80で受けて、イオンビーム電流密度Imonを測定する(ステップ904)。その例が前述した図13、図14Aに示すものであるが、以下では図14Aを例に説明する。
更に、制御装置90において以下の演算等の処理を行う。即ち、イオンビームモニタ80からの測定データD1 に基づいて、イオンビームモニタ80で測定したY方向分布のイオンビーム電流密度Imonの平均値Iaveを算出する(ステップ905)。これはある一つの値である。
次に、上記平均値Iaveと上記設定イオンビーム電流密度Isetとを比較して、両者が実質的に等しいか否かを判定し(ステップ906)、実質的に等しければステップ908に進み、そうでなければステップ907に進む。「実質的に等しい」というのは、等しいか、所定の小さな誤差範囲に入っているということである。「ほぼ等しい」と言い換えることもできる。
ステップ907は、フィラメント電流制御サブルーチンであり、その中身を図11に示す。ここでは、まず、平均値Iaveが設定イオンビーム電流密度Isetより大か否かを判定し(ステップ920)、大であればステップ921に進み、そうでなければステップ922に進む。
ステップ921では、制御装置90から供給するフィラメント制御信号Sfによって各フィラメント電源134を制御して、イオン源100の全てのフィラメント122に流すフィラメント電流Ifを所定量だけ一律に(換言すれば一様に。即ち同じ量だけ。以下同様)下げる。ステップ922では、上記とは反対に、全てのフィラメント122に流すフィラメント電流Ifを所定量だけ一律に上げる。上記所定量は、例えば、フィラメント条件の粗設定終了時(ステップ901)のフィラメント電流Ifの1〜2%程度である。この所定量を大きくすれば制御は速くなるが収束しない恐れが高くなり、逆に小さくすれば制御は遅くなるが上記恐れはなくなるので、両者の兼ね合いで決めれば良い。
もっとも、上記フィラメント電流制御サブルーチン(ステップ907)および後述する電子ビーム走査速度制御サブルーチン(ステップ910)を含めたステップ900〜911の制御は、基板60に対するイオンビーム注入処理時にリアルタイムで行うのではなく、基板60の処理の前または中断時等の適当な時期に行えば良く、制御のスピードが問題になることは殆どないので、スピードよりも安定性や確実性を重視した制御を行うようにすれば良い。例えば、分単位の時間がかかっても構わない。図16〜図17に示す制御の場合も同様である。
ステップ907のフィラメント電流制御サブルーチン後は、上記ステップ905に戻り、ステップ906でYESと判定されるまで上記制御を繰り返す。これによって、平均値Iaveが設定イオンビーム電流密度Isetに実質的に等しくなる。その状態の概略例を図14Bに示す。そしてステップ908に進む。
ステップ908では、上記Y方向分布の測定イオンビーム電流密度Imonと設定イオンビーム電流密度Isetの差であるY方向分布の誤差Ierrを、例えば次式に従って算出する。
[数2]
Ierr=Imon−Iset
次に、イオンビーム50が入射する全てのモニタ点Pyで、上記誤差の大きさ(絶対値)|Ierr|が上記許容誤差ε以下であるか否かを判定し(ステップ909)、以下でない点が一つでもあればステップ910に進み、そうでなければステップ911に進む。
但し、この実施形態のようにイオンビーム50が入射する全てのモニタ点Pyについて判定するのが好ましいけれども、重要でない幾つかのモニタ点Pyについての判定を除外しても構わない。また、イオンビーム50が入射しないモニタ点Pyについて判定する必要はない。即ち、イオンビーム50が入射する実質的に全てのモニタ点について判定すれば良い。
ステップ910は、電子ビーム走査速度制御サブルーチンであり、その中身を図12に示す。ここでは、まず、上記誤差の大きさ|Ierr|が許容誤差εより大きいモニタ点Pyの決定(換言すれば、特定。以下同様)と、その大きいモニタ点Pyでの誤差Ierrの正負とを決定する(ステップ930)。上記数2から分かるように、この例では、測定イオンビーム電流密度Imonが設定イオンビーム電流密度Isetより大の場合が正であり、小の場合が負である。図14Bも参照。上記のようにして決定されるモニタ点Pyの数は、制御の初期では通常は多く、ステップ905〜909の制御が進むにつれて少なくなる。
次に、上記決定した各モニタ点Pyに対応する電子ビーム源Gnおよびその走査電圧Vyを決定する(ステップ931)。これは、前述した対応関係(数1およびその説明参照)を用いて行うことができる。但し、電子ビーム源Gnが1個の場合は、電子ビーム源Gnは一義的に決まっているので、電子ビーム源Gnを決定する必要はない。
次に、誤差Ierrが正の各モニタ点Pyに対応する走査電圧Vyのときの電子ビーム138の走査速度を誤差の大きさ|Ierr|に比例して増大させ、かつ、誤差Ierrが負の各モニタ点Pyに対応する走査電圧Vyのときの電子ビーム138の走査速度を誤差の大きさ|Ierr|に比例して減少させるように、上記走査信号Syの波形を整形する(ステップ932)。これによって、走査信号Syの波形は、初期の三角波から幾らか変形したものとなる。簡単に言えば、走査速度を増減させる位置での傾きが、初期波形の三角波から増減したような波形となる。
より精密な制御を行うためには、走査速度が異なる2点間の走査速度は、両点の走査速度を補間した走査速度にするのが好ましい。
電子ビーム138の走査速度を増大させると、増大させた位置での電子ビーム138によるプラズマ124の生成は少なく(薄く)なり、そこから引き出されるイオンビーム50のビーム電流密度は小さくなる。電子ビーム138の走査速度を減少させると、減少させた位置での電子ビーム138によるプラズマ124の生成は多く(濃く)なり、そこから引き出されるイオンビーム50のビーム電流密度は大きくなる。
なお、電子ビーム138の走査速度を増大させるということは、走査信号Syの時間変化率dSy/dtひいては走査電圧Vyの時間変化率dVy/dtを増大させ、走査速度を減少させるということは、同時間変化率dSy/dtひいてはdVy/dtを減少させるということである。
電子ビーム138の走査速度を誤差の大きさ|Ierr|に比例して増減させるときの比例定数は、適宜決めれば良い。この比例定数を大きくすれば、制御は速くなるが収束しない恐れが高くなり、逆に小さくすれば制御は遅くなるが上記恐れはなくなるので、両者の兼ね合いで決めれば良い。
そして、上記のようにして波形整形した後の走査信号Syを用いて、各電子ビーム源Gnから発生させる電子ビーム138を走査する(ステップ933)。即ち、波形整形後の走査信号Syを増幅器156で増幅して得られる走査信号Vyを用いて電子ビーム138を走査する。これによって、上記誤差Ierrは小さくなり、それが許容誤差εよりも大きいモニタ点Pyの数も減る。もっとも、上記波形整形に伴って、測定イオンビーム電流密度Imonの平均値Iaveが変わる場合がある。その状態の概略例を図14Cに示す。
そこで、ステップ910の電子ビーム走査速度制御サブルーチン後は、上記ステップ905に戻る。そして、ステップ909でYESと判定されるまで上記制御を繰り返す。これによって、イオンビーム50が入射する全ての(または実質的に全ての)モニタ点Pyで誤差の大きさ|Ierr|が許容誤差ε以下となる。かつ、平均値Iaveが設定イオンビーム電流密度Isetに実質的に等しくなる(ステップ906参照)。その状態の概略例を図14Dに示す。
ステップ909でYESと判定されれば、上記波形整形後の走査信号Syのデータおよび上記フィラメント電流Ifのデータを、更に必要に応じてその他のデータを、制御装置90(より具体的にはその記憶装置)内に保存する(ステップ911)。これによって、制御装置90を用いてY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する制御は終了する。
上記均一化制御の終了後は、必要に応じて、上記保存データを用いてイオン源100からイオンビーム50を引き出して、基板60に対するイオン注入を行えば良い。
以上のようにこのイオン注入装置によれば、基板60に対する注入位置でのY方向のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、基板60に対すにイオン注入の均一性を高めることができる。
しかも、フィラメント122を用いたプラズマ生成と、電子ビーム源Gnを用いたプラズマ密度分布制御によるイオンビーム電流密度分布の均一化とを併用しているので、大電流でしかも均一性の良いイオンビーム50を基板60に照射してイオン注入を行うことが容易になる。次の実施形態においても同様である。
(B)電子ビーム量の制御
この場合の例を、主として図15〜図17を参照して説明する。これらの図において、上記(A)の制御と同一または相当する部分には同一符号を付しており、以下においては上記(A)の制御との相違点を主体に説明する。
この場合は、電子ビーム用電源114には図15に示すものを用いる。この電子ビーム用電源114は、前記直流の引出し電源152の代わりに、フィラメント140と引出し電極142との間に電子ビーム138の発生量を制御する引出し電圧Veを印加する増幅器162を有している。制御装置90は、この例の場合は、引出し電圧Veの元になる引出し信号Seを供給する機能を有しており、増幅器162は、制御装置90から供給される引出し信号Seを増幅(電圧増幅)して引出し電圧Veを作る(出力する)。また、前記増幅器156の代わりに、単純に三角波の走査電圧Vyを出力する走査電源166を有している。
つまり、この例では、走査電圧Vyの波形および大きさを一定にしておいて、電子ビーム源Gnから発生させる電子ビーム138の走査速度を一定にしておく。エネルギー制御電源154から出力する陽極電圧Vaも一定にしておいて、電子ビーム138のエネルギーも一定にしておくのが好ましいので、この実施形態ではそれらを一定にしておく。走査電圧Vyの周波数は、例えば10kHzであるが、これに限られるものではない。
この場合に制御装置90を用いて行う制御のフローチャートを図16、図17に示す。図16では、図10に示したステップ902をステップ912で置き換えており、ステップ910をステップ913で置き換えている。フィラメント電流制御サブルーチン(ステップ907)の中身は、図11に示したものと同じであるので、それを参照するものとする。
ステップ912では、制御装置90から各電子ビーム用電源114(より具体的にはその増幅器162)に、初期波形の引出し信号Seを供給して、同波形の引出し電圧Veを出力させる。この初期波形は、例えば、電圧値一定の直流電圧である。
ステップ913は、電子ビーム量制御サブルーチンであり、その中身を図17に示す。ステップ930、931は図12のものと同じであるので重複説明を省略する。
ステップ931に続くステップ934では、上記誤差Ierrが正の各モニタ点Pyに対応する走査電圧Vyのときの引出し電圧Veを、上記誤差の大きさ|Ierr|に比例して減少させ、かつ、誤差Ierrが負の各モニタ点Pyに対応する走査電圧Vyのときの引出し電圧Veを、上記誤差の大きさ|Ierr|に比例して増大させるように、上記引出し信号Seの波形を整形する。これによって、引出し信号Seの波形は、初期の一定値から幾らか変形したものとなる。簡単に言えば、電子ビーム量を増減させる位置での電圧値が、初期波形の一定値から増減したような波形となる。
引出し信号Seひいては引出し電圧Veを増大させると、増大させた位置での電子ビーム量が増大し、その位置での電子ビーム138によるプラズマ124の生成は多く(濃く)なり、そこから引き出されるイオンビーム50のビーム電流密度は大きくなる。引出し信号Seひいては引出し電圧Veを減少させると、減少させた位置での電子ビーム量が減少し、その位置での電子ビーム138によるプラズマ124の生成は少なく(薄く)なり、そこから引き出されるイオンビーム50のビーム電流密度は小さくなる。
引出し電圧Veを誤差の大きさ|Ierr|に比例して増減させるときの比例定数は、適宜決めれば良い。この比例定数を大きくすれば、制御は速くなるが収束しない恐れが高くなり、逆に小さくすれば制御は遅くなるが上記恐れはなくなるので、両者の兼ね合いで決めれば良い。
そして、上記のようにして波形整形した後の引出し信号Seを用いて、各電子ビーム源Gnから電子ビーム138を発生させる(ステップ935)。これによって、上記誤差Ierrは小さくなり、それが許容誤差εよりも大きいモニタ点Pyの数も減る。この場合も、上記波形整形に伴って、測定イオンビーム電流密度Imonの平均値Iaveが変わる場合がある。その状態の概略例は、図14Cに示したのと同様である。
そこで、ステップ913の電子ビーム量制御サブルーチン後は、上記ステップ905に戻る。そして、ステップ909でYESと判定されるまで上記制御を繰り返す。これによって、イオンビーム50が入射する全ての(または実質的に全ての)モニタ点Pyで誤差の大きさ|Ierr|が許容誤差ε以下となる。かつ、平均値Iaveが設定イオンビーム電流密度Isetに実質的に等しくなる(ステップ906参照)。その状態の概略例は、図14Dに示したのと同様である。
ステップ909でYESと判定されれば、上記波形整形後の引出し信号Seのデータおよび上記フィラメント電流Ifのデータを、更に必要に応じてその他のデータを、制御装置90(より具体的にはその記憶装置)内に保存する(ステップ911)。これによって、制御装置90を用いてY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する制御は終了する。
この実施形態によっても、基板60に対する注入位置でのY方向のイオンビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、基板60に対するイオン注入の均一性を高めることができる。
なお、図18に示す例のように、各電子ビーム源Gnをプラズマ生成容器118内とは別に真空排気される筒172内に収納して、矢印Qに示すように、電子ビーム源Gnを差動排気するようにしても良い。そのようにすれば、電子ビーム源Gnの真空度を良くすることができるので、プラズマ生成容器118内に導入された前記ガス120(図4参照)によって電子ビーム源Gnの機能が低下するのを防止することができる。
上記筒172の前面付近に、図18に示す例のように、メッシュ電極174を設けておいても良い。そのようにすれば、メッシュ電極174によってプラズマ124をシールドすることができるので、プラズマ124が電子ビーム源Gnに入り込んで電子ビーム源Gnの機能が低下するのを防止することができる。
また、上記のような筒172やメッシュ電極174を設けるか否かとに拘わらず、各電子ビーム源Gnをプラズマ生成容器118外の近傍に配置し、そこからプラズマ生成容器118内へ電子ビーム138を放出させるようにしても良い。
また、前述したように、フィラメント122および電子ビーム源Gn等の数は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、必要とするイオンビーム50のY方向の寸法WY 等に応じて適宜選定すれば良い。更にフィラメント122および電子ビーム源Gnの配置の仕方も、上記実施形態のものに限定されるものではなく、必要とするイオンビーム50のY方向の寸法WY 等に応じて適宜決定すれば良い。
(3)分析電磁石について
上記分析電磁石200を説明する。それに先立ち、比較のために、従来の分析電磁石をまず説明する。
(3−1)従来の分析電磁石
リボン状のイオンビームの運動量分析を志向した分析電磁石の一例が、例えば特許文献3に記載されている。
特許文献3:特開2004−152557号公報(段落0006、0022、図1、図21)
特許文献3に記載されている従来の分析電磁石を図43を参照して説明する。この図では、コイル12、18の形状を分かりやすくするために、ヨーク36は二点鎖線で示している。イオンビーム2の進行方向をZ方向とし、このZ方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、この分析電磁石40には、Y方向に長い縦長のリボン状のイオンビーム2が入口24から入射され、出口26から出射される。
この分析電磁石40は、特許文献3の図1に記載されているような上下二つのコイル12、18と、同文献の図21に記載されているヨークに相当するヨーク36とを組み合わせた構成をしている。
コイル12は、鞍型のコイル(特許文献3ではバナナ型コイルと呼んでいる)であり、イオンビーム2の経路(ビーム経路)を挟んで相対向している一組の本体部(特許文献3ではコイル主体部と呼んでいる)14と、両本体部14のZ方向に沿う方向における端部同士間を、ビーム経路を避けるように斜めに跳ね上げて接続している一組の渡り部(特許文献3では端部跳ね上げ部と呼んでいる)16とを有している。入口24と出口26とで渡り部16を斜めに跳ね上げているのは、それにイオンビーム2が当たらないようにしてビーム通過領域を確保するためである。
コイル18も、コイル12と同様の構造をした鞍型のコイルであり(但し、コイル12とは実質的に面対称の形をしている)、一組の本体部20と一組の渡り部22とを有している。
両コイル12、18は、それぞれ、周囲を絶縁物によって被覆された導体(被覆導体)を多数回巻いたマルチターンのコイルであって、平面形状が扇型をしているコイルに対して、その両端部付近に曲げ加工を施して上記渡り部16、22を形成するという方法で製造される。上記導体には、通常、中に冷媒(例えば冷却水)が流される中空導体(ホローコンダクター)が使用される。この明細書において「絶縁」とは、電気絶縁を意味する。
両コイル12、18の本体部14、20の外側をヨーク36が一括して囲んでいる。
上記分析電磁石40においては次のような課題がある。
(A)入口24および出口26において、ヨーク36からの渡り部16、22のビーム入出射方向への張り出し距離L1 が大きい。これは主として次の理由による。
(a)上記のようなY方向に長いリボン状のイオンビーム2をできるだけ均一に偏向させるためには、両コイル12、18の本体部14、20はそのY方向の寸法aを大きくして縦長に(図43に示す例よりも大きく縦長に)する必要があるが、コイル12、18は上記のように扇型のコイルに曲げ加工を施して渡り部16、22を形成したものであるため、上記寸法aが張り出し距離L1 にほぼそのまま反映される。従って、寸法aを大きくするほど張り出し距離L1 も大きくなる。
(b)コイル12、18は上記のような扇型のコイルをコイルに曲げ加工を施して渡り部16、22を形成したものであるために、曲げ加工上の制約から、本体部14、20と渡り部16、22との境付近に比較的大きな曲がり部30、32が生じるのを避けることができず、この曲がり部30、32が存在している分、ヨーク36の端部と渡り部16、22の端部との間の距離L2 が大きくなり、この距離L2 が上記張り出し距離L1 に含まれるため、張り出し距離L1 が大きくなる。上記寸法aを大きくするほど、曲げ加工上の制約から、曲がり部30、32の曲率半径を大きくしなければならず、距離L2 ひいては張り出し距離L1 は大きくなる。
即ち、張り出し距離L1 は次式で表すことができる。
[数3]
1 =a+L2
(c)渡り部16、22を斜めに跳ね上げているため、これも張り出し距離L1 を大きくする原因になっている。
上記のようにヨーク36からの渡り部16、22の張り出し距離L1 が大きいと、その分、分析電磁石40が大型化し、分析電磁石40の設置に必要な面積も大きくなり、ひいてはイオン注入装置も大型になり、その設置に必要な面積も大きくなる。分析電磁石40の重量も重くなる。また、ヨーク36外にある渡り部16、22が発生する磁界(これをフリンジフィールドと呼ぶこともある)がイオンビーム2の形態(形状および姿勢。以下同様)を乱す可能性も大きくなる。
(B)コイル12、18における消費電力が大きい。これは主として次の理由による。
(a)渡り部16、22はイオンビーム2を偏向させる磁界を発生させるものではないが、上記のように渡り部16、22の張り出し距離L1 が大きいのでその分、渡り部16、22の長さも長くなって渡り部16、22における無駄な消費電力が大きく、これがコイル12、18における消費電力を大きくしている。
(b)コイル12、18は上記のように被覆導体のマルチターンコイルであるので、コイル12、18の断面中に占める導体面積の割合(即ち導体の占積率)を大きく取るのが難しく、そのぶん電力損失が大きくなって消費電力が大きくなる。被覆導体が中空のホローコンダクターの場合は、導体の占積率はより小さくなり、電力損失がより大きくなるので、消費電力はより大きくなる。
上記のようにコイル12、18における消費電力が大きいと、分析電磁石40の消費電力が大きくなり、ひいてはイオン注入装置の消費電力も大きくなる。
従来の分析電磁石40が有する上記課題を、次に述べる分析電磁石200によれば解決することができる。以下においては、分析電磁石200全体の構成、各コイルの構造の詳細、各コイルの製造方法、分析電磁石200の特長、制御方法、他の例等を順に説明する。
(3−2)分析電磁石200の全体の構成
分析電磁石200の一例を図19〜図21等に示す。図21は真空容器236を除いて示す。この分析電磁石200は、上記リボン状のイオンビーム50が入射され、当該イオンビーム50の通り道であるビーム経路202にY方向に沿う磁界を発生させて、イオンビーム50をX方向に曲げて運動量分析を行うものである。上記磁界を、図20等において磁力線204で模式的に表している。即ち、この分析電磁石200にイオンビーム50が入射すると、イオンビーム50は、進行中に上記磁界によって、その進行方向Zに見て右向きのローレンツ力FX を受けて右向きに偏向され、それによって運動量分析が行われる。このイオンビーム50の中心軌道54を図19中に一点鎖線で示す。その曲率半径をRとする。分析電磁石200によってイオンビーム50を偏向させる角度(偏向角)をαとする。
曲率半径Rは、例えば、300mm〜1500mmである。偏向角αは、例えば、60度〜90度である。図19は偏向角αが90度の場合を例示している。
分析電磁石200は、図22も参照して、第1内側コイル206と、第2内側コイル212と、1以上の(この実施形態では三つの)第1外側コイル218と、1以上の(この実施形態では三つの)第2外側コイル224と、ヨーク230と、一組の磁極232とを備えている。ビーム経路202は、非磁性材から成る真空容器236によって囲まれていて、真空雰囲気に保たれる。この真空容器236は分析管とも呼ばれる。
第1内側コイル206および第2内側コイル212は、図23に抜き出して示しているので、それを参照した方が分かりやすい。
各コイル206、212、218、224は、この例では、ビーム経路202のY方向における中心を通りかつXZ平面に平行な対称面234(図20等参照)に関して、Y方向において実質的に面対称の形状をしている。後述するコイル320(図37、図39等参照)、第1コイル326、第2コイル328(図40参照)も同様である。このように面対称にすることによって、ビーム経路202に、Y方向において対称性の良い磁界を発生させることが容易になる。これは、分析電磁石200から出射する時のイオンビーム50の形態の乱れを小さく抑えることに寄与する。
なお、以下において、複数の第1外側コイル218および複数の第2外側コイル224をそれぞれ区別する必要がある場合は、図20、図24、図28等に示すように、第1外側コイル218についてはY方向の上側から順に第1外側コイル218a、218b、218cとし、第2外側コイル224については、上記のように第1外側コイル218とは面対称であるので、Y方向の下側から順に第2外側コイル224a、224b、224cとする。
また、図面において、コイル206等を示す符号にアンダーラインを付しているのは、当該コイル等の全体を示す意味である。
第1内側コイル206は、主に図23、図27を参照して、ビーム経路202を挟んでX方向において相対向しておりかつイオンビーム50のY方向の一方側(この実施形態では上側)のほぼ半分以上(換言すれば実質的に半分以上)をカバーする一組の本体部208と、両本体部208のZ方向に沿う方向における端部(換言すれば、分析電磁石200の入口238側の端部および出口240側の端部。他のコイルにおいても同様)同士間をビーム経路202を避けて接続している一組の渡り部210とを有している鞍型のコイルであって、第2内側コイル212と協働して、イオンビーム50をX方向に曲げる主磁界を発生させるものである。主磁界というのは、主に当該磁界によって、イオンビーム50をほぼ所定の曲率半径Rで曲げる、そのような磁界のことである。
鞍型と呼んでいるのは、当該第1内側コイル206を全体として見れば、鞍に似た形をしているからである。他のコイル212、218、224および後述するコイル326、328も同様である。
渡り部210は、イオンビーム50が当たるのを避けると共に、そこで発生する磁界がイオンビーム50に及ぼす影響を小さくするために、ビーム経路202から、Y方向の上側に離して設けている。他のコイルの渡り部もこれと同様の目的で、ビーム経路202から、Y方向の上側または下側に離して設けている。
第2内側コイル212は、主に図23を参照して、ビーム経路202を挟んでX方向において相対向しておりかつイオンビーム50のY方向の他方側(この実施形態では下側)のほぼ半分以上(換言すれば実質的に半分以上)をカバーする一組の本体部214と、両本体部214のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路202を避けて接続している一組の渡り部216とを有している鞍型のコイルであって、Y方向において第1内側コイル206と互いに重ねて配置されていて、第1内側コイル206と協働して、イオンビーム50をX方向に曲げる主磁界を発生させるものである。即ち、この第2内側コイル212は、第1内側コイル206と同方向の磁力線204を発生させる。
この第2内側コイル212も、第1内側コイル206と同様の寸法、構造をしている。導体(具体的には導体シート268。図25等参照)の巻回数も通常は第1内側コイル206と同数にする。但し、上述したように第1内側コイル206とは対称面234に関して面対称の形状にしている。渡り部216は、渡り部210とはビーム経路202を挟んでY方向の反対側(即ち下側)に設けられている。
第1内側コイル206と第2内側コイル212との間には、図23では線で示しているけれども、若干の(例えば約20mmの)隙間242を設けている。そこに、後述する冷却板312(図34参照)を、第1内側コイル206側に1枚、第2内側コイル212側に1枚の合計2枚設けることができる。
各第1外側コイル218は、主に図22を参照して、それぞれ、第1内側コイル206の外側にあってビーム経路202を挟んでX方向において相対向している一組の本体部220と、両本体部220のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路202を避けて接続している一組の渡り部222とを有している鞍型のコイルであって、前記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させるものである。各第1外側コイル218は、Y方向においてそれぞれ重ねて配置されている。
より具体的には、各第1外側コイル218の本体部220および渡り部222の横部(図27に示す横部284に相当する部分)は、Y方向においてそれぞれ重ねて配置されている。渡り部222の縦部(図27に示す縦部282に相当する部分)は、厳密に見れば上記のように重ねて配置されていると言いにくいかも知れないが、それでも全体として見れば、各第1外側コイル218はY方向においてそれぞれ重ねて配置されていると言うことができる。各第2外側コイル224も同様である。
各第1外側コイル218は、それぞれ、第1内側コイル206とほぼ同様の構造をしている。但し、Y方向の寸法は第1内側コイル206よりも小さい。また、導体の巻回数も通常は第1内側コイル206よりも少ない。各第1外側コイル218は、導体(具体的には導体シート269。図25等参照)の巻回数をそれぞれ同数にしている。各第1外側コイル218のY方向の寸法は、この実施形態ではそれぞれ異ならせているが、同じにしても良い。各第2外側コイル224においても同様である。
例えば、各コイルの本体部および渡り部のY方向の寸法は、第1内側コイル206および第2内側コイル212においては約230mm、第1外側コイル218aおよび第2外側コイル224aにおいては約50mm、第1外側コイル218bおよび第2外側コイル224bにおいては約60mm、第1外側コイル260cおよび第2外側コイル224cにおいては約100mmである。
各第1外側コイル218間、各第2外側コイル224間および一番下の第1外側コイル218(218c)と一番上の第2外側コイル224(224c)との間には、図22では線で示しているけれども、若干の隙間244、246、248をそれぞれ設けている(図24も参照)。そこに後述する冷却板312(図34参照)を設けることができる。例えば、隙間244、246の寸法は約10mm、隙間248の寸法は上記隙間242に合わせて約20mmである。隙間244、246は、各外側コイル218、224に沿って全周に設けている。
各第1外側コイル218は、第1内側コイル206および第2内側コイル212と同方向の磁界を発生させるものでも良いし、逆方向の磁界を発生させるものでも良いし、磁界の向きを制御によって反転させるものでも良い。各第2外側コイル224においても同様である。各第1外側コイル218の本体部220で発生させる磁力線(磁界)の一部は、ビーム経路202側に広がる(換言すれば漏れ出す)ので、上記主磁界に影響を及ぼす。従って、各第1外側コイル218は、上記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させることができる。その場合、各第1外側コイル218は、それぞれ、主にその内側付近領域における主磁界を補助または補正する作用を奏する。各第2外側コイル224においても同様である。
各第2外側コイル224は、主に図22を参照して、それぞれ、第2内側コイル212の外側にあってビーム経路202を挟んでX方向において相対向している一組の本体部226と、両本体部226のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路202を避けて接続している一組の渡り部228とを有している鞍型のコイルであって、前記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させるものである。各第2外側コイル224は、Y方向においてそれぞれ重ねて配置されている。かつY方向において第1外側コイル218と重ねて配置されている。
各第2外側コイル224は、それぞれ、第2内側コイル212とほぼ同様の構造をしている。但し、Y方向の寸法は第2内側コイル212よりも小さい。また、導体の巻回数も通常は第2内側コイル212よりも少ない。各第2外側コイル224の導体(具体的には導体シート)の巻回数、Y方向の寸法については上述のとおりである。
各導体の巻回数の一例を挙げると、第1内側コイル206および第2内側コイル212の導体の巻回数は、それぞれ110回程度、各第1外側コイル218および各第2外側コイル224の導体の巻回数は、それぞれ85回程度である。
各コイルの本体部208、214、220、226は、それぞれ、そのほぼ全体がヨーク230内に位置していて、ビーム経路202に目的とする磁界(主磁界または副磁界)を発生する部分であると言うこともできる。後述するコイル320の本体部322も同様である。
各コイルの渡り部210、216、222、228は、一組の本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間を電気的に接続して、本体部と協働して、ループ状の導電経路を形成する部分であると言うこともできる。後述するコイル320の渡り部324、325も同様である。
図20は、図19の線A−Aに沿う縦断面図であるので、図20には、上記各コイル206、212、218、224の本体部208、214、220、226が表されている。後述する図39〜図41においても、各コイルの本体部が表されている。
ヨーク230は、強磁性材から成り、上記各コイル206、212、218および224の本体部208、214、220および226の外側を一括して取り囲んでいる。このようなヨーク230によって、外部への漏れ磁場を少なくすることができるという効果も奏する。このヨーク230の平面形状は、図19に示すようにいわゆる扇型をしている。このヨーク230の断面(XY平面に沿う断面)形状は、四角の枠状をしている。このようなヨーク230は、ウインドウフレーム型のヨークと呼ぶ場合もある。
この実施形態では、ヨーク230を構成する上部ヨーク231を着脱可能にしている。この上部ヨーク231の用い方は後述する。
一組の磁極232は、それぞれ、強磁性材から成り、ビーム経路202を挟んでY方向において相対向するように、ヨーク230から内側に突出している。例えば15mm程度突出している。各磁極232の平面形状は、図19に示すイオンビーム50の中心軌道54に沿った円弧状をしている。これを扇型と呼ぶ場合もある。両磁極232間のギャップ長Gは、イオンビーム50のY方向の寸法WY よりもある程度(例えば100mm〜150mm程度)大きい。このような磁極232は、必須ではないけれども、これを備えていると、両磁極232間のギャップに磁力線204が集中しやすくなるので、ビーム経路202に磁束密度の高い磁界を発生させることが容易になる。
両磁極232間のギャップ長Gは、例えば、上記曲率半径Rの1/2以上の大きさを有している。具体例を挙げると、曲率半径Rが800mmの場合、ギャップ長Gは例えば500mmである。ギャップ長Gは、通常、各磁極232の幅WG 以上の大きさを有している。即ち、G≧WG である。このような寸法関係にすると、磁極232およびヨーク230を無用に大きくせずに済む。
なお、図20〜図22において、第1内側コイル206と第1外側コイル218との間、および、第2内側コイル212と第2外側コイル224との間に隙間が存在しているように見えるけれども、それらの間には、この実施形態では、図24、図25に示す積層絶縁体262が介在している。
(3−3)分析電磁石200の各コイルの構造等
次に、上記各コイルの構造等を詳述する。図24は、図22中の線D−Dに沿って、第1内側コイルおよび第1外側コイルの断面を拡大して示す概略図である。図25は、図24に示した第1内側コイルおよび一番上の第1外側コイルを分解して示す断面図である。
第1内側コイル206および第1外側コイル218は、第1の積層絶縁体261の外周面に、主面266aがY方向に沿う絶縁シート266および主面268aがY方向に沿う導体シート268を互いに重ね合わせたもの(組264)を複数回巻いて積層し(Y方向に交差する矢印270方向に積層。以下同様)、その外周面に第2の積層絶縁体262を形成し、その外周面に、主面267aがY方向に沿う絶縁シート267および主面269aがY方向に沿う導体シート269を互いに重ね合わせたもの(組265)を複数回巻いて積層し、更にその外側に第3の積層絶縁体263を形成した扇型筒状の積層コイル290(図29参照)に、上記本体部208、220および渡り部210、222を残して、切欠き部272〜275(図22参照)を設けた構造をしている。
切欠き部272〜275を理解しやすくするために、第1内側コイル206の切欠き部272〜275を図27に示す。第1外側コイル218にもこれと同様の切欠き部272〜275が設けられている。
上記曲率半径Rの内外方向に位置する二つの切欠き部272、273には、ヨーク230が嵌まる。即ち、ヨーク230の形状に合った形状をしている。後述するコイル320の切欠き部276〜279も同様である。イオンビーム50の進行方向Z側の二つの切欠き部274、275は、上記入口238、出口240の上半分をそれぞれ形成する。
第2の積層絶縁体262は、第1内側コイル206を構成していると見ても良いし(図25ではそのように図示している)、第1外側コイル218を構成していると見ても良いし、両コイル206、218で共有していると見ても良い。
図29に示す積層コイル290は、その断面構造を図30に示すように、図25と同様の断面構造をしている内側コイル292および外側コイル294から成る。この場合も、第2の積層絶縁体262は、内側コイル292を構成していると見ても良いし(図30ではそのように図示している)、外側コイル294を構成していると見ても良いし、両コイル292、294で共有していると見ても良い。
この積層コイル290の、上記切欠き部272〜275にそれぞれ対応する部分272a〜275aを、切削加工等によって切り欠いて除去して切欠き部272〜275を形成すると、内側コイル292が第1内側コイル206になり、外側コイル294が第1外側コイル218になる。
更にこの実施形態では、第1外側コイル218を三つに(3段に)分けるために、積層コイル290の外側コイル294に、切削加工等によって上記隙間244を設けた構造をしている。
上記積層コイル290の積層絶縁体261、262、263は、それぞれ、例えば、プリプレグシートを複数回巻いて積層することによって形成されている。図31中のプリプレグシート300が上記プリプレグシートである。プリプレグシートは、絶縁性および耐熱性を有する支持体に、絶縁性を有する樹脂を含浸し、半硬化状態に処理したシートのことである。
上記支持体は、例えば、ガラス繊維またはカーボン繊維等から成る。上記樹脂は、例えばエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂等から成る。このようなプリプレグシートを用いて形成された積層絶縁体261〜263は、繊維強化プラスチック(FRP)と呼ぶこともできる。この積層絶縁体261〜263の厚さは、構造材として必要とする強度等に応じて選定すれば良い。
絶縁シート266、267は、それぞれ、例えば、ノーメックス(登録商標)、ルミラー(登録商標)またはカプトン(登録商標)から成るシート、またはその他の絶縁シートである。この絶縁シート266、267の厚さは、必要とする絶縁耐圧等に応じて選定すれば良い。例えば約75μmであるが、それより薄くしても良い。
導体シート268、269は、それぞれ、例えば銅シート、またはアルミニウムシートから成る。これらの厚さは、流す電流値等に応じて選定すれば良い。例えば、銅シートの場合の厚さは約0.4mm、アルミニウムシートの場合の厚さは約0.5mmである。これらのY方向に相当する方向の幅は、必要とするコイルのY方向の寸法に応じて選定すれば良い。例えば230mmである(後述する加工前の幅は、例えば約234mmである)。積層絶縁体261〜263、絶縁シート266、267の幅もこれに合わせれば良い。
絶縁シート266と導体シート268の重ね合わせ方は、図25とは反対に、第1内側コイル206の内側(図25中の左側。即ち積層絶縁体261側)に導体シート268を配置し、その外側に絶縁シート266を重ねて配置しても良い。必要に応じて、導体シート268の両側に絶縁シート266を重ねて配置しても良い。第1外側コイル218の絶縁シート267および導体シート269についても同様である。
第1内側コイル206の導体シート268は、平面的に見れば、図26に示すように、扇型に複数回巻いた構造をしており、その両端には端子340が接続されている。但し巻回数は図示のものに限られない。この導体シート268に電流IM を流すことによって、上記主磁界を形成する磁力線204を発生させることができる。図27にも同じ電流IM および磁力線204を示している。
第1外側コイル218の導体シート269も、平面的に見れば図26と同様の構造をしている。
第2内側コイル212および第2外側コイル224も、上記第1内側コイル206および第1外側コイル218と同様の構造をしている。但し、前述したように、第1内側コイル206および第1外側コイル218とは、対称面234に関して面対称の形状をしている。
なお、外側の積層絶縁体263(図38に示すコイルの場合は積層絶縁体262)の更に外周部に、必要に応じて、コイルの補強等を行う部材を更に設けても良い。
各コイルの渡り部の構造の例を、第1内側コイル206を例にして図27を参照して、より詳しく説明する。
第1内側コイル206の各渡り部210は、それぞれ、本体部208のZ方向に沿う方向における端部に実質的に直角につながっていてY方向に実質的に平行に伸びた二つの縦部282と、両縦部282に実質的に直角につながっていてXZ平面に実質的に平行に伸びた横部284とを有している。即ち、横部284によって両縦部282間を接続している。従って、第1内側コイル206は、Y方向に実質的に直交する横方向の導電経路286と、Y方向に実質的に平行な縦方向の導電経路288とを有している。即ち、角部を除いて、この第1内側コイル206の導電経路の殆どは、両導電経路286および288で組み合わされて構成されている。そして、導電経路286および288における電流密度は、実質的にどこも同じになるようにしている。
他のコイル212、218、224の各渡り部216、222、228も、それぞれ、上記渡り部210と同様の構造をしている。従って、他のコイル212、218、224も、それぞれ、Y方向に実質的に直交する横方向の導電経路と、Y方向に実質的に平行な縦方向の導電経路とを有している。即ち、角部を除いて、これらのコイルの導電経路の殆どは、横方向の導電経路および縦方向の導電経路で組み合わされて構成されている。そして、横方向の導電経路および縦方向の導電経路における電流密度は、実質的にどこも同じになるようにしている。後述するコイル320においても同様である。
各コイルの渡り部を上記のような構造にするのが好ましく、そのようにすると、分析電磁石200からの渡り部のビーム入出射方向への張り出し距離をより確実に小さくすることができる。この張り出し距離については後で詳しく説明する。
上記各コイル用の電源構成の一例を図28に示す。この例では、第1内側コイル206および第2内側コイル212に直流の主電源250がそれぞれ接続されており、この各主電源250から第1内側コイル206および第2内側コイル212に、互いに実質的に同じ大きさの電流IM を流すことができる。なお、上記二つの主電源250は、必ずしも別個のものである必要はなく、それらを一つにまとめた主電源としても良い。
更にこの例では、各第1外側コイル218(218a〜218c)および各第2外側コイル224(224a〜224c)に直流の副電源252がそれぞれ接続されており、この各副電源252から各第1外側コイル218および各第2外側コイル224に電流IS を流すことができ、しかも各第1外側コイル218および各第2外側コイル224に流す電流IS をそれぞれ独立して制御することができる。なお、上記複数の副電源252は、必ずしも別個のものである必要はなく、それらを一つにまとめて、各第1外側コイル218および各第2外側コイル224に流す電流IS をそれぞれ独立して制御することができる一つの副電源としても良い。
(3−4)分析電磁石200の各コイルの製造方法等
次に、上記各コイルの製造方法の例を、上記第1内側コイル206および第1外側コイル218を例にして説明する。
まず図29に示す扇型筒状の積層コイル290を製造する。これは次のようにして行う。
まず図31に示すように、図29に示した積層コイル290の弧状部291とは反対に外側に張り出した弧状部297を有する型296を用いて、それを軸298を中心にして矢印299のように一定方向に回転させて、上述したようなプリプレグシート300を複数回巻く。これによって、図30、図32に示す積層絶縁体261を形成する。
次に図32に示すように、型296を上記と同様に回転させて、上記絶縁シート266と導体シート268とを互いに重ね合わせて、それらを積層絶縁体261の外周面に複数回巻いて積層する。これによって、図30に示す絶縁シート266と導体シート268との積層体を形成する。
次に図31の場合と同様にして、上記絶縁シート266と導体シート268との積層体の外周面にプリプレグシート300を複数回巻く。これによって、図30に示す積層絶縁体262を形成する。
次に図32の場合と同様にして、上記絶縁シート267と導体シート269とを互いに重ね合わせて、それらを上記積層絶縁体262の外周面に複数回巻く。これによって、図30に示す絶縁シート267と導体シート269との積層体を形成する。
次に図31の場合と同様にして、上記絶縁シート267と導体シート269との積層体の外周面にプリプレグシート300を複数回巻く。これによって、図30に示す積層絶縁体263を形成する。
上記工程の後に型296を外すと、図33に示すように、上記内側コイル292および外側コイル294から成るけれども、弧状部291aが上記弧状部291とは反対に外側に張り出している積層コイル290aが得られる。
なお、導体シート268の巻き始めの部分および巻き終わりの部分にリード板をそれぞれ挟んでおくことにより、当該リード板を用いて、導体シート268を端子340(図26参照)に接続することができる。導体シート269についても同様である。
また、上記のように巻く前に、導体シート268、269の表裏両側の主面268a、269aに、金属粒子等の砥粒(ショット)を吹き付けて(即ちショットブラスト処理を施して)、表面を粗くしておくのが好ましい。そのようにすると、表面積を増大させて、絶縁シート266、267等との密着性を高めることができる。ショットブラスト処理は、導体シート268、269の少なくとも一方の主面に施しても効果はあるが、両主面に施すのが好ましい。絶縁シート266、267についても同様である。
同様に、絶縁シート266、267の表裏両側の主面266a、267aにもショットブラスト処理を施して、表面を粗くしておくのが好ましい。そのようにすると、表面積を増大させて導体シート268、269等との密着性をより高めることができる。
次に上記積層コイル290aの外周に熱収縮テープ(図示省略)を巻いた後に、図33に示すように、弧状部291aを矢印302で示すように加圧(プレス)して上記弧状部291を形成する成形を行ったものを、加熱硬化させる。これによって、図26に示した積層コイル290の元になる積層コイル290bが得られる。上記熱収縮テープを巻くことによって、構造体としての強度が向上する。熱収縮テープの代わりに、前述したプリプレグシートと同様の構成のプリプレグテープを巻いても良い。
次に上記積層コイル290bに樹脂を真空含浸させた後に、加圧状態で加熱硬化させる。これは、簡単に言えば、樹脂モールドを行うことである。これによって、図29に示した積層コイル290が得られる。この樹脂モールドを行うことによって、積層コイル290の各層間の密着強度を高めてコイルの強度を高めると共に、電気絶縁性能を高めることができる。
次に上記積層コイル290の軸方向(換言すれば高さ方向)の両端面に切削加工を施して平坦面にした後に、上記切欠き部に対応する部分272a〜275aに切削加工を施して、上記切欠き部272〜275を形成する。
外側コイル294を複数の上記第1外側コイル218にする場合は、外側コイル294に対して、上記隙間244に相当する部分に溝加工を施して上記隙間244を形成する。
次に、上記のように切削加工、溝加工を施した積層コイル290cを、導体シート268、269の材料(前述したように銅またはアルミニウム)をエッチングするエッチング液中に浸してエッチング処理を施す。それによって、上記切削加工、溝加工時に加工面に生じた導体シート268、269のバリ等を除去して、導体シート268、269の層間のショート(レイアーショート)を防止すると共に、絶縁シート266、267の端面よりも導体シート268、269の端面を丸く窪ませて、導体シート268、269の層間絶縁の沿面距離を長くして絶縁性能を向上させることができる。
そして、上記のようにエッチング処理を施した積層コイル290dの全体に熱収縮テープを巻いて加熱硬化させる。これによって、図19〜図25等に示した第1内側コイル206および第1外側コイル218を一体化している扇型筒状の積層コイルを得ることができる。上記熱収縮テープを巻くことによって、構造体としての強度が向上する。但し、コイルを次に述べるような強制冷却構造にする場合は、上記熱収縮テープを巻く前に、次のようにして冷却板312を取り付ければ良い。熱収縮テープの代わりに、前述したプリプレグシートと同様の構成のプリプレグテープを巻いても良い。
即ち図34に示すように、冷媒通路314を有する冷却板312を、絶縁物316を介在させて、第1内側コイル206、第1外側コイル218の上下の端面306〜307および各隙間244にそれぞれ圧接させて取り付ける。冷却板312は、コイル206、218の本体部208、220のY方向の上下端面だけでなく、渡り部210、222のY方向の上下端面にも設けるのが好ましい。即ち、できるだけ広い領域に設けるのが好ましい。各冷媒通路314には、例えば冷却水が流される。この例では、絶縁物316を冷却板312に巻いているが、必ずしも巻かなくても良い。
上記冷却板312によって、各コイル206、218を、その端面から強制冷却することができる。このような冷却構造は、エンドクーリング方式と呼ばれることもある。
上記の場合、冷却板312と絶縁物316との間、および、絶縁物316と各コイル206、218の端面との間には、熱伝導性の良い熱拡散コンパウンド(例えばシリコーングリス)を介在(例えば塗布)させておくのが好ましい。そのようにすると、空気層を極力無くして、熱伝導性能ひいては冷却性能をより向上させることができる。
また、上記各隙間244を、コイル218の内側(図34中の左側)に向かって狭くなった楔形にして、そこに取り付ける冷却板312も同様の楔形にして、当該冷却板312を圧入しても良い。そのようにすると、コイル218の端面と冷却板312の間に生じる隙間を小さくして密着性を向上させることができるので、冷却性能をより向上させることができる。
上記のように冷却板312を設けた場合は、図34に示す状態のコイル全体に上記熱収縮テープまたはプリプレグテープを巻いて加熱硬化させれば良い。それによって、冷却板312の固定および密着をも行うことができる。
そして最後に、必要に応じて、冷却板312を設けている場合もいない場合も、第1内側コイル206および第1外側コイル218を含めたコイル全体を、樹脂でモールドしても良い。そのようにすると、コイルの耐湿性能、絶縁性能、機械的強度等をより向上させることができる。その場合、上記樹脂に5〜30重量%のフィラー(充填剤)を混合しておくのが好ましい。そのようにすると、樹脂の耐クラック性能等を向上させることができる。
第2内側コイル212および第2外側コイル224も上記と同様にして、両コイル212、224を一体化したものとして製造することができる。また、後述する、即ち図37〜図39に示すコイル320、図40に示す第1コイル326、第2コイル328、図41に示す内側コイル330、第1外側コイル218、第2外側コイル224も、上記と同様にして製造することができる。内外のコイルは一体化して製造することができる。
上記コイル206、218、212、224を用いて、図19、図20等に示した分析電磁石200を組み立てるのは、例えば次の手順で行えば良い。即ち、ヨーク230の上部ヨーク231を取り外しておいて、まずヨーク230内に第2内側コイル212および第2外側コイル224が一体化されたものを上から入れ、次に真空容器236を上から入れ、次に第1内側コイル206および第1外側コイル218が一体化されたものを上から入れ、最後に上部ヨーク231を取り付ける。
(3−5)分析電磁石200の特長等
上記分析電磁石200においては、第1内側コイル206および第1外側コイル218は、上記のような扇型筒状の積層コイル290に本体部208、220および渡り部210、222を残して切欠き部272〜275を設けた構成をしているので、渡り部210、222は、本体部208、220の端部からY方向に実質的に平行に延出した状態になっている。従って、本体部208、220のY方向における寸法を大きくする場合でも、それに対応させて渡り部210、222のY方向における寸法を大きくすれば済むので、ビーム入出射方向への渡り部210、222の張り出し距離は大きくならない。
上記のことを、第1内側コイル206を例に図23を参照して説明すると、本体部208のY方向の寸法aを大きくする場合、それに対応させて、渡り部210のY方向の寸法cを大きくすれば済む。具体的には、寸法aとcとを互いに実質的に等しくしている。従って、寸法aを大きくする場合でも、イオンビーム50の入出射方向への渡り部210の張り出し距離L3 (図19参照)は大きくならない。当該張り出し距離L3 は、ヨーク230の端面と渡り部210の端面との間の距離L5 と、渡り部210の厚さbとで決まる。即ち、張り出し距離L3 は次式で表すことができる。ちなみに、第1内側コイル206の上記構造説明からも分かるように、本体部208の厚さもbである。
[数4]
3 =b+L5
上記数4には、従来の分析電磁石40の張り出し距離L1 を表す上記数3と違って、Y方向の寸法aは含まれていない。この点が従来の分析電磁石40と大きく異なる特長である。
しかも、上記距離L5 も、従来の分析電磁石40の距離L2 に比べて小さくすることができる。これは、渡り部210は、従来のコイル12のように曲げ加工によって渡り部16を斜めに跳ね上げて形成したものではなく、前述したように扇型筒状の積層コイル290に切欠き部272〜275を設けて形成したものであり、渡り部210はY方向に実質的に平行に延出した状態になっているからである。加えて、切削加工等によって、本体部208と渡り部210との境の角部254を、丸みの少ない直角に近い状態にすることができるからである。
上記のような理由から、ヨーク230からの渡り部210のビーム入出射方向への張り出し距離L3 を小さくすることができる。
第2内側コイル212および第2外側コイル224についても同様である。
例えば、Y方向の寸法aを同じ250mmにした場合、従来の分析電磁石40では張り出し距離L1 は約300mmにもなるのに対して、上記分析電磁石200では張り出し距離L3 は約110mmで済む。
上記と同様の理由によって、この分析電磁石200のように内側コイル206、212と外側コイル218、224とを二重に設けている場合でも、外側のコイル218のヨーク230からのビーム入出射方向への張り出し距離L4 を小さくすることができる。従来の分析電磁石40において、仮に内外二重にコイルを配置しようとすると、渡り部の張り出し距離は非常に大きくなる。
上記理由によって、分析電磁石200の小型化が可能になり、ひいては分析電磁石200の設置に必要な面積を小さくすることができる。分析電磁石200の軽量化も可能になる。また、各コイル206、218、212、224の渡り部が発生する磁界がイオンビーム50の形態を乱す可能性も小さくなる。
また、各コイル206、218、212、224の渡り部の張り出し距離を小さくすることができることに伴って、渡り部の長さも短くすることができるので、渡り部における無駄な消費電力を小さくすることができる。
しかも、各コイル206、218、212、224は、前述したように、絶縁シート266、267を挟んで導体シート268、269を積層した構造をしているので、被覆導体を多数回巻いたマルチターンコイルに比べて、導体の占積率が高く、そのぶん電力損失が少ない。従って、消費電力を小さくすることができる。
例えば、各コイルのY方向の寸法aを250mmとした場合、従来の被覆導体のマルチターンコイルの導体の占積率は、中空でない(ホローコンダクターでない)場合でも約60〜70%であり、ホローコンダクターの場合は更に小さくなるのに対して、上記各コイル206、218、212、224の導体の占積率は、約84〜85%にすることが可能である。
その結果、上記分析電磁石200によれば、従来の分析電磁石40に比べて少ない消費電力で所要強度の磁界を発生させることができる。消費電力を同程度にして、従来の分析電磁石40に比べて強い磁界を発生させることもできる。後者のようにすれば、イオンビーム偏向の曲率半径Rを小さくして、分析電磁石200をより小型化することができる。
例えば、各コイルのY方向の寸法aを250mmとし、従来の分析電磁石40と同じように二つのコイル206、212で0.2テスラの磁界を発生させる場合(コイル218、224は使用しない)、従来の分析電磁石40の消費電力は約67kWであるのに対して、上記分析電磁石200の消費電力は約24kWで済む。
図1に示すイオン注入装置は、上記のような特長を有する分析電磁石200を備えているので、分析電磁石200の小型化に伴ってイオン注入装置全体の小型化が可能になり、ひいてはイオン注入装置の設置に必要な面積を小さくすることができる。イオン注入装置の軽量化も可能になる。また、分析電磁石200における消費電力を小さくすることができることに伴って、イオン注入装置全体の消費電力を小さくすることができる。
更に、分析電磁石200は、上記のような第1内側コイル206および第2内側コイル212を備えているので、上下一つのコイルの場合に比べて、Y方向の寸法WY が大きいイオンビーム50に対応することが容易になる。
しかも、第1外側コイル218および第2外側コイル224によって、主磁界の補正を行う副磁界を発生させることができる。この副磁界によって、主磁界を補正して、Y方向における磁束密度分布の均一性を高めることができる。各外側コイル218、224によって発生させる副磁界は、主磁界に比べて弱いもので良いので、制御も容易である。
上記のような主磁界および副磁界によって、ビーム経路202に、Y方向における磁束密度分布の均一性の高い磁界を発生させることができる。その結果、この分析電磁石200から出射する時のイオンビーム50の形態の乱れ(曲がり、傾き等。以下同様)を小さく抑えることができる。この効果は、対象とするイオンビーム50のY方向の寸法WY が大きい場合により顕著になる。
第1外側コイル218および第2外側コイル224がそれぞれ一つずつでも、上記主磁界を補正する効果を奏することはできるけれども、この例のように複数の第1外側コイル218および複数の第2外側コイル224を備えている方が好ましい。その場合はこれらの外側コイル218、224によって、ビーム経路202に発生させる磁界のY方向における磁束密度分布をよりきめ細かく補正することができるので、Y方向においてより均一性の高い磁界を発生させることができる。その結果、出射時のイオンビーム50の形態の乱れをより小さく抑えることができる。
(3−6)分析電磁石200の制御方法
上記分析電磁石200の制御方法の例を説明すると、分析電磁石200から出射するイオンビーム50の形態が、入射時のイオンビーム50の形態に近づくように、各第1外側コイル218および各第2外側コイル224に流す電流を制御すれば良い。
より具体的には、分析電磁石200から出射するイオンビーム50の内で、Y方向に実質的に平行な所定の中心軸(図35、図36に示す中心軸318)よりも曲率半径Rの内側に曲がり過ぎている部分に対応する第1外側コイル218および第2外側コイル224に流す電流を減らすことと、当該内側への曲がりが不足している部分に対応する第1外側コイル218および第2外側コイル224に流す電流を増やすことの少なくとも一方を行って、分析電磁石200から出射するイオンビーム50の形態を上記中心軸に平行なものに近づける。これによって、分析電磁石200から出射するイオンビーム50の形態を、傾きがなくかつ真っ直ぐなものにして、入射時の形態に近づけることができる。
分析電磁石200から出射するイオンビーム50の形態の例を図35、図36にそれぞれ示す。両図において、X方向に実質的に平行な所定の中心軸を318、前記対称面を234、イオンビーム50の中心軌道を54、その曲率半径をRとしている。
図35に示す形態の場合は、イオンビーム50の進行方向Zに見てイオンビーム50の形態に乱れはないので、各第1外側コイル218a〜218cおよび各第2外側コイル224a〜224cに流している電流の値を維持すれば良い。
図36に示す形態の場合は、イオンビーム50がその進行方向Zに見てく字状に近い円弧状に歪んで(曲がって)いるので、即ちY方向の上側ほど曲率半径Rの内側に曲がり過ぎており、かつ下側ほど内側に曲がり過ぎているので、第1外側コイル218aに流す電流を大きく減らし、第1外側コイル218bに流す電流を少し減らし、第1外側コイル218cおよび第2外側コイル224cに流す電流は現状維持し、第2外側コイル224bに流す電流を少し減らし、第2外側コイル224aに流す電流を大きく減らす。これによって、分析電磁石200から出射するイオンビーム50の中心軌道54の位置を維持しつつ、その形態を中心軸318に平行なものに近づけることができる。即ち、図35に示す形態に近づけることができる。
分析電磁石200から出射するイオンビーム50の形態が図36以外のものに乱れている場合も、上記と同様の考え方で補正して、図35に示す形態に近づけることができる。
分析電磁石200から出射するイオンビーム50の形態が乱れた場合の主な問題は次のとおりであるが、上記制御方法によればこのような問題の発生を防止することができる。
分析電磁石200の下流側には、通常、図1に示した分析スリット70が設けられている。この分析スリット70のスリット72は直線であるので、イオンビーム50の形態が乱れると、分析スリット70によってカットされる部分が生じ、分析スリット70を通過する所望イオン種のイオンビーム50の量が減る。カットされる部分が生じるから、イオンビーム50の均一性も悪くなる。カットされるのを避けるためにスリット72のX方向の幅を広げると、分解能が低下する。
分析スリット70における上記のような問題以外にも、形態の乱れたイオンビーム50を用いて基板60にイオン注入を行うと、注入の均一性が悪くなるという問題が生じる。
(3−7)分析電磁石200の他の例
次に、分析電磁石200の他の例を説明する。図19〜図22等に示した先の例と同一または相当する部分には同一符号を付して重複説明を省略し、以下においては当該例との相違点を主体に説明する。
図39に示す分析電磁石200は、図37も参照して、コイルとして、ビーム経路202を挟んでX方向において相対向している一組の本体部322および両本体部322のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路202を避けて接続している二組の渡り部324、325を有していて、イオンビーム50をX方向に曲げる磁界を発生させるコイル320を備えている。図37中の上側の二つの渡り部324が一組の渡り部、下側の二つの渡り部325がもう一組の渡り部である。
このコイル320は、その断面構造を図38に示すように、上記第1内側コイル206(図25参照)や、積層コイル290の内側コイル292(図30参照)と同じ断面構造をしている。即ちこのコイル320は、上記内側コイル292と同じ構造をした扇型筒状の積層コイルに、本体部322および渡り部324、325を残して、切欠き部276〜281を設けた構成をしている。このコイル320も、前記と同様の製造方法によって作ることができる。
このコイル320は、上記第1内側コイル206および第2内側コイル212(図23参照)を上下で一体化して一つのコイルにしたようなものである。
切欠き部276、277は、上記切欠き部272、273と同様の形状をしている。切欠き部278、279は、切欠き部276、277と対称面(図39参照)に関して面対称の形状をしている。切欠き部280、281は、より具体的には貫通孔であり、それぞれ上記入口238、出口240を形成している。ここをイオンビーム50が通過することができる。より具体的には、上記真空容器236を通してその中をイオンビーム50が通過することができる。
このコイル320に上記真空容器236を通すには、例えば、真空容器236を、切欠き部280、281を通してZ方向に挿入すれば良い。その場合、真空容器236にフランジ等がついていて邪魔になるのであれば、一旦それを外せば良い。分析電磁石200を組み立てる場合も同様の方法で行えば良い。
各渡り部324は、上記第1内側コイル206の渡り部210と同様の構造をしている。各渡り部325は、各渡り部324と対称面234に関して面対称の形状をしている。
本体部322のY方向の寸法a1 は、渡り部324のY方向の寸法c1 と渡り部325のY方向の寸法c1 とを合計したもの(即ち2c1 )に実質的に等しくしている。
この例の分析電磁石200も、そのコイル320が上記第1内側コイル206および第2内側コイル212を一体化したような構造をしているので、前記と同様の理由によって、コイル320の渡り部324、325のヨーク230からの張り出し距離を小さくして分析電磁石200の小型化を可能にすると共に、消費電力を小さくすることができる等の効果を奏する。
図40に示す分析電磁石200は、コイルとして、互いに協働してイオンビーム50をX方向に曲げる磁界を発生させる第1コイル326および第2コイル328を備えている。両コイル326、328は、それぞれ、上記第1内側コイル206、第2内側コイル212(図23参照)と同様の構造をしている。従ってこの第1コイル326および第2コイル328も、それぞれ、前記と同様の製造方法によって作ることができる。
この例の分析電磁石200も、その第1コイル326および第2コイル328が上記第1内側コイル206および第2内側コイル212と同様の構造をしているので、前記と同様の理由によって、コイルの渡り部のヨーク230からの張り出し距離を小さくして分析電磁石200の小型化を可能にすると共に、消費電力を小さくすることができる等の効果を奏する。
また、上記のような第1コイル326および第2コイル328を備えているので、Y方向の寸法WY が大きいイオンビーム50に対応することが容易になる。
図41に示す分析電磁石200は、コイルとして、上記コイル320と同様の構造をしていてイオンビーム50をX方向に曲げる主磁界を発生させる内側コイル330と、内側コイル330の外側にあって主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させる前述したような第1外側コイル218および第2外側コイル224とを備えている。即ち、図20等に示す第1内側コイル206および第2内側コイル212に代えて内側コイル330を備えている。従ってこの内側コイル330、第1外側コイル218および第2外側コイル224も、前記と同様の製造方法によって作ることができる。
これらのコイルを製造する場合の特有の事項を説明すると、軸方向の寸法(高さ)を所要のものにした上記積層コイル290(図29参照)を用いて、その内側コイル292および外側コイル294に図37の切欠き部276〜281と同様の切欠き部を切削加工等によって設け、かつ外側コイル294に、図22に示す隙間248と同様の隙間を切削加工等によって設けて第1外側コイル218および第2外側コイル224を形成すれば良い。第1外側コイル218および第2外側コイル224をそれぞれ複数に分けるのは、図22の場合と同様である。
第1外側コイル218は、図41に示す例では二つであるが、それに限られるものではなく、1以上で任意である。第2外側コイル224も同様である。
この例の分析電磁石200も、上記のような内側コイル330、第1外側コイル218および第2外側コイル224を備えているので、前記と同様の理由によって、コイルの渡り部のヨーク230からの張り出し距離を小さくして分析電磁石200の小型化を可能にすると共に、消費電力を小さくすることができる等の効果を奏する。
また、内側コイル330に加えて、上記のような第1外側コイル218および第2外側コイル224を備えているので、イオンビーム50のビーム経路202に、Y方向における磁束密度分布の均一性の高い磁界を発生させることができる。その結果、出射時のイオンビーム50の形態の乱れを小さく抑えることができる。この効果は、対象とするイオンビーム50のY方向の寸法WY が大きい場合により顕著になる。
更に、複数の第1外側コイル218および複数の第2外側コイル224を備えていることによって、前述したように、これらの外側コイル218、224によって、ビーム経路202に発生させる磁界のY方向における磁束密度分布をよりきめ細かく補正することができるので、Y方向においてより均一性の高い磁界を発生させることができる。その結果、出射時のイオンビーム50の形態の乱れをより小さく抑えることができる。
図1に示すイオン注入装置が上記各例の分析電磁石200を備えている場合も、分析電磁石200の小型化に伴ってイオン注入装置全体の小型化が可能になり、ひいてはイオン注入装置の設置に必要な面積を小さくすることができる。イオン注入装置の軽量化も可能になる。また、分析電磁石200における消費電力を小さくすることができることに伴って、イオン注入装置全体の消費電力を小さくすることができる。
(4)加減速器400について
図1中に示した加減速器400は、分析スリット70を通過したイオンビーム50を静電界によってX方向に偏向させ、かつ静電界によって当該イオンビーム50の加速または減速を行うものである。この加減速器400は、後述するエネルギーコンタミネーションの抑制効果をより効果的に発揮させるためには、できるだけ下流側に設けるのが好ましい。図1に示す例では、分析スリット70と上記注入位置、換言すれば分析スリット70と基板駆動装置500との間に設けている。
このような加減速器400を備えていると、当該加減速器400において、イオンビーム50の加減速だけでなく、イオンビーム50をX方向に偏向させることができるので、所望エネルギーのイオンビーム50を選別して導出することができ、エネルギーコンタミネーション(不所望エネルギーイオンの混入)を抑制することができる。しかもこれらの作用を一つの加減速器400において実現することができるので、エネルギー分離器を別に設ける場合に比べて、イオンビーム50の輸送経路を短くすることができ、それによって、イオンビーム50の輸送効率を向上させることができる。特に、イオンビーム50が低エネルギーかつ大電流の場合は、イオンビーム50は輸送中に空間電荷効果によって発散しやすいので、輸送距離を短くする効果は顕著になる。
加減速器400のより具体例を図42に示す。この加減速器400は、イオンビーム50の進行方向に、上流側から第1の電極402、第2の電極404および第3の電極406の順で配列された第1ないし第3の電極402、404、406を有している。電極402および406は、この例では、Y方向に長く伸びていてイオンビーム50を通す開口412、416をそれぞれ有している。電極402はこの例では一つの電極であるが、イオンビーム50の経路をX方向において挟む二つの互いに同電位の電極で構成しても良い。電極406についても同様である。電極404は、Y方向に長く伸びていて、イオンビーム50を通す隙間414を有している。
第1の電極21には、接地電位を基準にして電位V1が与えられる。この電位V1は、通常は正(加速モード時)または負(減速モード時)の高電位である。
なお、各電極402、404、406あるいは後述する各電極体404a、404bに電位を与える場合、それらの電位が0V以外の場合は、各電極等に対応する電圧印加手段(例えば直流電源や、直流電源からの電圧を分圧する分圧抵抗器等。図示省略。以下同じ)から当該電位がそれぞれ与えられる。電位が0Vの場合は、その電極は接地される。
第2の電極404は、通常は第1の電極402と第3の電極406との中間の電位にされる。この第2の電極404は、周知の静電加速管では一つの電極であるが、この例では、イオンビーム50の経路をX方向において挟んで相対向する二つの電極体404a、404bに分けて構成されている。しかも両電極体404a、404bには、互いに異なる電位V2a、V2b(V2a≠V2b)がそれぞれ与えられ、それによってイオンビーム50をX方向に偏向させるようにしている。より具体的には、イオンビーム50を偏向させる方向側の電極体404bに、相手側の電極体404aの電位V2aよりも低い電位V2bを与えるようにしている。即ちV2b<V2aとされる。このような電位を与える手段は前述のとおりである。
電極404を構成する二つの電極体404a、404b間には、イオンビーム50を通す上記隙間414が設けられている。この隙間414は、この例のように、イオンビーム50の偏向方向に曲げておくのが好ましい。より具体的には、偏向後の特定エネルギーを有する、具体的には所望エネルギーを有するイオン418の軌道に沿って曲げておくのが好ましい。そのようにすれば、所望エネルギーを有するイオン418から成るイオンビーム50を効率良く導出することができる。
第3の電極406には、通常は0Vの電位V3が与えられる。即ち接地される。
第2の電極404より下流側の電極406は、この例のように、電極404での偏向後であって特定エネルギー、具体的には所望エネルギーを有するイオン418の軌道に沿って配置しておくのが好ましい。そのようにすれば、所望のエネルギーを有するイオン418を効率良く導出することができると共に、それ以外のエネルギーを有するイオン420、422や中性粒子424を当該電極406で効率良く阻止することができるので、エネルギーコンタミネーションをより効果的に抑制することができる。
第2の電極404を構成する電極体404a、404bとに印加する電位V2aとV2bとの差をどの程度に設定するかは、所望の(目的の)エネルギーを有するイオン418が、当該加減速器400の中心軌道、具体的には偏向機能を有する第2の電極404以降の電極404、406の(より具体的にはそられの隙間414や開口416の)中心軌道を通るように設定すれば良い。
上記各電極および各電極体に与える各電位の例を表1にまとめて示す。例1および例2は、加減速器400でイオンビーム50を加速する加速モード時のものであり、例3はイオンビーム50を減速する減速モード時のものである。例1の場合は30keVの加速エネルギーを、例2の場合は130keVの加速エネルギーを、それぞれ実現することができる。例3の場合は、8keVの減速エネルギーを実現することができる。いずれの場合も、第2の電極404を構成する一方の電極体404bの電位V2bを、相手側の電極体404aの電位V2aよりも低く設定している。
Figure 0004240109
上記加減速器400によれば、二つの電極体404a、404bに分けて構成され、それらに異なる電位V2a、V2bが与えられる第2の電極404の部分でイオンビーム50を偏向させることができる。このときの偏向量は、偏向時のイオンビーム50のエネルギーに依存するので、所望のエネルギーを有するイオン418とそうでないエネルギーを有するイオン420、422とを分離することができる。イオン420は所望エネルギーよりも低エネルギーのイオンであり、イオン418よりも偏向量は大きい。イオン422は所望エネルギーよりも高エネルギーのイオンであり、イオン418よりも偏向量は小さい。中性粒子424は偏向されずに直進するので、これも分離することができる。即ち、この加減速器400は、エネルギー分離作用を奏するので、所望エネルギーのイオン418から成るイオンビーム50を選別して導出することができ、エネルギーコンタミネーションを抑制することができる。所望エネルギーのイオン418以外のイオン420、422や中性粒子424は、この例では、第2の電極404よりも下流側にある電極406に衝突することによって阻止され除去される。
しかも、この加減速器400は、上記のようなエネルギー分離作用と共に、イオンビーム50を加速または減速する本来の作用をも奏し、これらの作用を一つの加減速器400において実現することができるので、エネルギー分離器を別に設けなくて済む。従って、エネルギー分離器を別に設ける場合に比べて、イオンビーム50の輸送距離を短くすることができ、それによってイオンビーム50の輸送効率を向上させることができる。
また、イオンビーム50を電極402と404との間と、電極404と406との間の2段階に分けて加速することができる。表1中の例2はその一例を示す。そして、後段での加速前に(即ちエネルギーの低いときに)イオンビーム50を電極404の部分で偏向させることができるので、全部加速した後に偏向させる場合に比べて、イオンビーム50の偏向が容易になる。より具体的には、電極404を構成する二つの電極体404a、404bに与える電位V2aとV2bとの差が小さくて済むので、当該電極404周りの電気絶縁が容易になる等の利点がある。
また、電極404の下流側の電極406によって、所望エネルギーのイオン418以外のイオンや中性粒子を阻止して除去することができるので、エネルギーコンタミネーションをより効果的に抑制することができる。特に、減速モード時には(表1中の例3参照)、電極402と404間におけるイオンビーム50の減速時に荷電変換によって中性粒子424が発生しやすいことが経験的に分かっているけれども、中性粒子424が多く発生してもこれは直進して電極406に衝突して阻止されるので、加減速器400内において中性粒子424を効果的に除去することができる。
通常、加速モード時において、所望エネルギー以外のエネルギーのイオンが電極に衝突した箇所から電子が高電位側へ放出かつ加速され、そのような加速電子が衝突した電極の部分から、加速電子のエネルギーに相当する高エネルギーのX線が発生する。周知の静電加速管は偏向機能を有していないので、上記加速電子は曲げられずに高電位電極(電極402に相当する電極)にまで到達することができ、当該高電位電極の電位に相当する大きなエネルギーで加速されて高電位電極に衝突し、そこから大きなエネルギーのX線が発生する。
これに対して、この加減速器400のように第2の電極404を二つの電極体404a、404bに分けて構成してそれらに別々の電位を与えて偏向機能を持たせておくと、不所望エネルギーのイオンが衝突した箇所から発生した電子は電極404において曲げられて高電位の電極402にまで到達することができなくなる。具体的には、上記電子は、電極404を構成する二つの電極体404a、404bの内の高電位側の電極体404a側に曲げられて当該電極体404aに衝突する。このときの電子の加速エネルギーは、当該電極体404aの電位に相当するエネルギーであり、高電位の電極402に衝突する場合に比べて小さい。例えば、表1中の例1の場合であれば、衝突電子のエネルギーはほぼ0eVであり、X線は殆ど発生しない。例2の場合は約100keVであり、電極402に衝突する場合の約130keVよりかは小さい。従っていずれの場合にも、周知の静電加速管よりも、それから発生するX線のエネルギーを低くすることができる。
なお、必要に応じて、電極402の上流側や電極406の下流側に更に他の電極を設けても良い。例えば、電極402の上流側に、イオンビーム50の加速または減速用の高電位の電極を設けても良い。電極406の下流側に、下流側からの逆流電子抑制用の負電位の電極を設けても良い。
この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。 リボン状のイオンビームの一例を部分的に示す概略斜視図である。 イオンビームと基板のY方向における寸法の関係の例を示す図である。 図1に示したイオン源の構成の一例を示す概略断面図である。 図4に示すイオン源におけるフィラメントおよび電子ビーム源の配置並びに電子ビームの走査軌跡等の一例を示す概略平面図である。 フィラメントの配置の他の例を示す概略平面図である。 図1に示した電子ビーム源および電子ビーム用電源の構成の一例を示す図である。 図1に示したイオン源からイオンビームモニタまでを簡略化して示す図である。 図1に示したイオンビームモニタの構成の一例を示す概略正面図である。 図1に示した制御装置を用いてY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する制御内容のより具体例を示すフローチャートである。 図10に示したフィラメント電流制御サブルーチンの一例を示すフローチャートである。 図10に示した電子ビーム走査速度制御サブルーチンの一例を示すフローチャートである。 図10に示したフィラメント条件の粗設定を行った後のイオンビーム電流密度分布の一例を示す概略図である。 図10に示したフィラメント電流制御および電子ビーム走査速度制御を経ることによって、Y方向におけるイオンビーム電流密度分布が均一化される過程を示す概略図である。 図1に示した電子ビーム源および電子ビーム用電源の構成の他の例を示す図である。 図1に示した制御装置を用いてY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する制御内容の他の具体例を示すフローチャートである。 図16に示した電子ビーム量制御サブルーチンの一例を示すフローチャートである。 イオン源のプラズマ生成容器に対する電子ビーム源の配置の仕方の他の例を示す概略断面図である。 図1に示した分析電磁石の一例を示す平面図である。 図19の線A−Aに沿う断面図である。 図19に示した分析電磁石を、真空容器を除いて示す斜視図である。 図19に示した分析電磁石のコイルを示す斜視図である。 図22に示した第1内側コイルおよび第2内側コイルを示す斜視図である。 図22中の線D−Dに沿って、第1内側コイルおよび第1外側コイルの断面を拡大して示す概略図である。 図24に示した第1内側コイルおよび一番上の第1外側コイルを分解して示す断面図である。 図25に示した導体シートが巻かれている様子を示す概略平面図である。 図23に示した第1内側コイルを示す斜視図である。 図19に示した分析電磁石のコイル用の電源構成の一例を示す図である。 図22に示した第1内側コイルおよび第1外側コイル等の元になる積層コイルの一例を示す斜視図である。 図29中の線F−Fに沿って、内側コイルおよび外側コイルの断面を分解して示す図である。 型を用いてプリプレグシートを巻く様子の一例を示す平面図である。 型を用いて絶縁シートおよび導体シートを巻く様子の一例を示す平面図である。 型を用いて巻いた後の積層コイルの一例を示す平面図である。 第1内側コイルおよび第1外側コイルに冷却板を取り付けた一例を示す断面図である。 分析電磁石から出射した直後の、正常な形態を有するイオンビームの例を示す図である。 分析電磁石から出射した直後の、歪んだ形態を有するイオンビームの一例を示す図である。 分析電磁石のコイルの他の例を示す斜視図である。 図37中の線J−Jに沿って、コイルの断面を分解して示す図である。 分析電磁石の他の例を示す断面図であり、図20に相当している。 分析電磁石の更に他の例を示す断面図であり、図20に相当している。 分析電磁石の更に他の例を示す断面図であり、図20に相当している。 図1に示した加減速器の一例を示す横断面図である。 従来の分析電磁石の一例を示す斜視図であり、コイルの形状を分かりやすくするためにヨークは二点鎖線で示している。
符号の説明
50 イオンビーム
60 基板
70 分析スリット
80 イオンビームモニタ
90 制御装置
100 イオン源
114 電子ビーム用電源
118 プラズマ生成容器
122 フィラメント
124 プラズマ
134 フィラメント電源
Gn 電子ビーム源
138 電子ビーム
156、162 増幅器
200 分析電磁石
206 第1内側コイル
208 本体部
210 渡り部
212 第2内側コイル
214 本体部
216 渡り部
218 第1外側コイル
220 本体部
222 渡り部
224 第2外側コイル
226 本体部
228 渡り部
230 ヨーク
232 磁極
261〜263 積層絶縁体
266、267 絶縁シート
268、269 導体シート
272〜281 切欠き部
282 縦部
284 横部
290 積層コイル
320 コイル
326 第1コイル
328 第2コイル
330 内側コイル
400 加減速器
402 第1の電極
404 第2の電極
406 第3の電極
500 基板駆動装置

Claims (12)

  1. イオンビームの進行方向をZ方向とし、Z方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいリボン状のイオンビームを輸送してそれを基板に照射してイオン注入を行うイオン注入装置であって、
    ガスが導入されるプラズマ生成容器内にアーク放電発生用の1以上のフィラメントを有していて、Y方向の寸法が前記基板のY方向の寸法よりも大きい前記リボン状のイオンビームを発生させるイオン源と、
    前記イオンビームを前記基板に入射させる注入位置で、前記基板を前記イオンビームの主面と交差する方向に移動させる基板駆動装置と、
    電子ビームを発生させてそれを前記イオン源のプラズマ生成容器内へ放出して当該電子ビームによって前記ガスを電離させてプラズマを生成するものであって、当該電子ビームを前記プラズマ生成容器内においてY方向に走査する1以上の電子ビーム源と、
    前記各電子ビーム源に、前記電子ビームの発生量を制御する引出し電圧および前記走査用の走査電圧をそれぞれ供給する1以上の電子ビーム用電源と、
    前記注入位置またはその近傍において、Y方向における複数のモニタ点において前記イオンビームのY方向のイオンビーム電流密度分布を測定するイオンビームモニタと、
    前記イオンビームモニタからの測定データに基づいて前記電子ビーム用電源を制御することによって、前記各電子ビーム源から発生させる電子ビームの量を実質的に一定に保ちつつ、前記イオンビームモニタで測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの走査速度を相対的に大きくすることと、測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの走査速度を相対的に小さくすることの少なくとも一方を行って、前記イオンビームモニタで測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する機能を有している制御装置とを備えているイオン注入装置。
  2. (a)前記電子ビーム源および前記電子ビーム用電源の数は共に一つであり、
    (b)前記制御装置は、
    前記電子ビーム用電源から前記電子ビーム源に供給する前記走査電圧の元になる走査信号を前記電子ビーム用電源に供給する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度の平均値を算出する機能と、
    前記算出した平均値が所定の設定イオンビーム電流密度に実質的に等しくなるように、前記イオン源の各フィラメントに流すフィラメント電流を一律に制御する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度と前記設定イオンビーム電流密度との差であるY方向分布の誤差を算出する機能と、
    前記算出した誤差が所定の許容誤差より大きいモニタ点およびそのモニタ点での誤差の正負を決定する機能と、
    前記決定したモニタ点に対応する走査電圧を決定する機能と、
    前記決定した誤差の正負に基づいて、前記測定したイオンビーム電流密度の方が大きいモニタ点に対応する走査電圧時の前記電子ビームの走査速度を前記誤差の大きさに比例して増大させ、かつ、前記測定したイオンビーム電流密度の方が小さいモニタ点に対応する走査電圧時の前記電子ビームの走査速度を前記誤差の大きさに比例して減少させて、イオンビームが入射する実質的に全てのモニタ点で前記誤差が前記許容誤差以下になるように、前記走査信号の波形を整形する機能と、
    前記整形後の走査信号のデータおよび前記フィラメント電流のデータを保存する機能とを有しており、
    (c)前記電子ビーム用電源は、前記制御装置から供給される走査信号を増幅して前記走査電圧を作る増幅器を有している、請求項1記載のイオン注入装置。
  3. (a)前記電子ビーム源および前記電子ビーム用電源の数は共に複数であり、
    (b)前記制御装置は、
    前記各電子ビーム用電源から前記各電子ビーム源に供給する前記走査電圧の元になる走査信号を前記各電子ビーム用電源に供給する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度の平均値を算出する機能と、
    前記算出した平均値が所定の設定イオンビーム電流密度に実質的に等しくなるように、前記イオン源の各フィラメントに流すフィラメント電流を一律に制御する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度と前記設定イオンビーム電流密度との差であるY方向分布の誤差を算出する機能と、
    前記算出した誤差が所定の許容誤差より大きいモニタ点およびそのモニタ点での誤差の正負を決定する機能と、
    前記決定したモニタ点に対応する前記電子ビーム源およびその走査電圧を決定する機能と、
    前記決定した誤差の正負に基づいて、前記測定したイオンビーム電流密度の方が大きいモニタ点に対応する走査電圧時の前記電子ビームの走査速度を前記誤差の大きさに比例して増大させ、かつ、前記測定したイオンビーム電流密度の方が小さいモニタ点に対応する走査電圧時の前記電子ビームの走査速度を前記誤差の大きさに比例して減少させて、イオンビームが入射する実質的に全てのモニタ点で前記誤差が前記許容誤差以下になるように、前記走査信号の波形を整形する機能と、
    前記整形後の走査信号のデータおよび前記フィラメント電流のデータを保存する機能とを有しており、
    (c)前記各電子ビーム用電源は、前記制御装置から供給される走査信号を増幅して前記走査電圧を作る増幅器を有している、請求項1記載のイオン注入装置。
  4. イオンビームの進行方向をZ方向とし、Z方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、X方向の寸法よりもY方向の寸法が大きいリボン状のイオンビームを輸送してそれを基板に照射してイオン注入を行うイオン注入装置であって、
    ガスが導入されるプラズマ生成容器内にアーク放電発生用の1以上のフィラメントを有していて、Y方向の寸法が前記基板のY方向の寸法よりも大きい前記リボン状のイオンビームを発生させるイオン源と、
    前記イオンビームを前記基板に入射させる注入位置で、前記基板を前記イオンビームの主面と交差する方向に移動させる基板駆動装置と、
    電子ビームを発生させてそれを前記イオン源のプラズマ生成容器内へ放出して当該電子ビームによって前記ガスを電離させてプラズマを生成するものであって、当該電子ビームを前記プラズマ生成容器内においてY方向に走査する1以上の電子ビーム源と、
    前記各電子ビーム源に、前記電子ビームの発生量を制御する引出し電圧および前記走査用の走査電圧をそれぞれ供給する1以上の電子ビーム用電源と、
    前記注入位置またはその近傍において、Y方向における複数のモニタ点において前記イオンビームのY方向のイオンビーム電流密度分布を測定するイオンビームモニタと、
    前記イオンビームモニタからの測定データに基づいて前記電子ビーム用電源を制御することによって、前記各電子ビーム源から発生させる電子ビームの走査速度を実質的に一定に保ちつつ、前記イオンビームモニタで測定したイオンビーム電流密度が相対的に大きいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの発生量を相対的に少なくすることと、測定したイオンビーム電流密度が相対的に小さいモニタ点に対応するイオン源内位置での前記電子ビームの発生量を相対的に多くすることの少なくとも一方を行って、前記イオンビームモニタで測定されるY方向のイオンビーム電流密度分布を均一化する機能を有している制御装置とを備えているイオン注入装置。
  5. (a)前記電子ビーム源および前記電子ビーム用電源の数は共に一つであり、
    (b)前記制御装置は、
    前記電子ビーム用電源から前記電子ビーム源に供給する前記引出し電圧の元になる引出し信号を前記電子ビーム用電源に供給する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度の平均値を算出する機能と、
    前記算出した平均値が所定の設定イオンビーム電流密度に実質的に等しくなるように、前記イオン源の各フィラメントに流すフィラメント電流を一律に制御する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度と前記設定イオンビーム電流密度との差であるY方向分布の誤差を算出する機能と、
    前記算出した誤差が所定の許容誤差より大きいモニタ点およびそのモニタ点での誤差の正負を決定する機能と、
    前記決定したモニタ点に対応する走査電圧を決定する機能と、
    前記決定した誤差の正負に基づいて、前記測定したイオンビーム電流密度の方が大きいモニタ点に対応する走査電圧時の前記引出し電圧を前記誤差の大きさに比例して減少させ、かつ、前記測定したイオンビーム電流密度の方が小さいモニタ点に対応する走査電圧時の前記引出し電圧を前記誤差の大きさに比例して増大させて、イオンビームが入射する実質的に全てのモニタ点で前記誤差が前記許容誤差以下になるように、前記引出し信号の波形を整形する機能と、
    前記整形後の引出し信号のデータおよび前記フィラメント電流のデータを保存する機能とを有しており、
    (c)前記電子ビーム用電源は、前記制御装置から供給される引出し信号を増幅して前記引出し電圧を作る増幅器を有している、請求項4記載のイオン注入装置。
  6. (a)前記電子ビーム源および前記電子ビーム用電源の数は共に複数であり、
    (b)前記制御装置は、
    前記各電子ビーム用電源から前記各電子ビーム源に供給する前記引出し電圧の元になる引出し信号を前記各電子ビーム用電源に供給する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度の平均値を算出する機能と、
    前記算出した平均値が所定の設定イオンビーム電流密度に実質的に等しくなるように、前記イオン源の各フィラメントに流すフィラメント電流を一律に制御する機能と、
    前記イオンビームモニタで測定したY方向分布のイオンビーム電流密度と前記設定イオンビーム電流密度との差であるY方向分布の誤差を算出する機能と、
    前記算出した誤差が所定の許容誤差より大きいモニタ点およびそのモニタ点での誤差の正負を決定する機能と、
    前記決定したモニタ点に対応する前記電子ビーム源およびその走査電圧を決定する機能と、
    前記決定した誤差の正負に基づいて、前記測定したイオンビーム電流密度の方が大きいモニタ点に対応する走査電圧時の前記引出し電圧を前記誤差の大きさに比例して減少させ、かつ、前記測定したイオンビーム電流密度の方が小さいモニタ点に対応する走査電圧時の前記引出し電圧を前記誤差の大きさに比例して増大させて、イオンビームが入射する実質的に全てのモニタ点で前記誤差が前記許容誤差以下になるように、前記引出し信号の波形を整形する機能と、
    前記整形後の引出し信号のデータおよび前記フィラメント電流のデータを保存する機能とを有しており、
    (c)前記各電子ビーム用電源は、前記制御装置から供給される引出し信号を増幅して前記引出し電圧を作る増幅器を有している、請求項4記載のイオン注入装置。
  7. 前記イオン源と前記注入位置との間に設けられていて、前記イオン源からのイオンビームをX方向に曲げて運動量分析を行う分析電磁石であって、
    前記イオンビームの通り道であるビーム経路を挟んでX方向において相対向している一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している少なくとも一組の渡り部を有していて、イオンビームをX方向に曲げる磁界を発生させるコイルと、
    前記コイルの本体部の外側を一括して囲んでいるヨークとを備えており、
    かつ前記コイルは、積層絶縁体の外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、更にその外周面に積層絶縁体を形成した扇型筒状の積層コイルに、前記本体部および渡り部を残して切欠き部を設けた構成をしている分析電磁石を更に備えている請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン注入装置。
  8. 前記イオン源と前記注入位置との間に設けられていて、前記イオン源からのイオンビームをX方向に曲げて運動量分析を行う分析電磁石であって、
    前記イオンビームの通り道であるビーム経路を挟んでX方向において相対向しておりかつイオンビームのY方向の一方側のほぼ半分以上をカバーする一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、第2コイルと協働して、イオンビームをX方向に曲げる磁界を発生させる第1コイルと、
    前記ビーム経路を挟んでX方向において相対向しておりかつイオンビームのY方向の他方側のほぼ半分以上をカバーする一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、Y方向において前記第1コイルと互いに重ねて配置されていて、前記第1コイルと協働して、イオンビームをX方向に曲げる磁界を発生させる第2コイルと、
    前記第1コイルおよび第2コイルの本体部の外側を一括して囲んでいるヨークとを備えており、
    かつ前記第1コイルおよび第2コイルは、それぞれ、積層絶縁体の外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、更にその外周面に積層絶縁体を形成した扇型筒状の積層コイルに、前記本体部および渡り部を残して切欠き部を設けた構成をしている分析電磁石を更に備えている請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン注入装置。
  9. 前記イオン源と前記注入位置との間に設けられていて、前記イオン源からのイオンビームをX方向に曲げて運動量分析を行う分析電磁石であって、
    前記イオンビームの通り道であるビーム経路を挟んでX方向において相対向している一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している渡り部を有していて、イオンビームをX方向に曲げる主磁界を発生させる内側コイルと、
    前記内側コイルの外側にあってビーム経路を挟んでX方向において相対向している一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、前記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させる1以上の第1外側コイルと、
    前記内側コイルの外側にあってビーム経路を挟んでX方向において相対向している一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、Y方向において前記第1外側コイルと重ねて配置されていて前記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させる1以上の第2外側コイルと、
    前記内側コイル、第1外側コイルおよび第2外側コイルの本体部の外側を一括して囲んでいるヨークとを備えており、
    かつ前記内側コイル、第1外側コイルおよび第2外側コイルは、積層絶縁体の外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、その外周面に積層絶縁体を形成し、その外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、更にその外周面に積層絶縁体を形成した扇型筒状の積層コイルに、前記本体部および渡り部を残して切欠き部を設けた構成をしている分析電磁石を更に備えている請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン注入装置。
  10. 前記イオン源と前記注入位置との間に設けられていて、前記イオン源からのイオンビームをX方向に曲げて運動量分析を行う分析電磁石であって、
    前記イオンビームの通り道であるビーム経路を挟んでX方向において相対向しておりかつイオンビームのY方向の一方側のほぼ半分以上をカバーする一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、第2内側コイルと協働して、イオンビームをX方向に曲げる主磁界を発生させる第1内側コイルと、
    前記ビーム経路を挟んでX方向において相対向しておりかつイオンビームのY方向の他方側のほぼ半分以上をカバーする一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、Y方向において前記第1内側コイルと互いに重ねて配置されていて、前記第1内側コイルと協働して、イオンビームをX方向に曲げる主磁界を発生させる第2内側コイルと、
    前記第1内側コイルの外側にあってビーム経路を挟んでX方向において相対向している一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、前記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させる1以上の第1外側コイルと、
    前記第2内側コイルの外側にあってビーム経路を挟んでX方向において相対向している一組の本体部および両本体部のZ方向に沿う方向における端部同士間をビーム経路を避けて接続している一組の渡り部を有している鞍型のコイルであって、Y方向において前記第1外側コイルと重ねて配置されていて前記主磁界の補助または補正を行う副磁界を発生させる1以上の第2外側コイルと、
    前記第1内側コイル、第2内側コイル、第1外側コイルおよび第2外側コイルの本体部の外側を一括して囲んでいるヨークとを備えており、
    かつ前記第1内側コイルおよび第1外側コイルは、積層絶縁体の外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、その外周面に積層絶縁体を形成し、その外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、更にその外周面に積層絶縁体を形成した扇型筒状の積層コイルに、前記本体部および渡り部を残して切欠き部を設けた構成をしており、
    前記第2内側コイルおよび第2外側コイルは、積層絶縁体の外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、その外周面に積層絶縁体を形成し、その外周面に、主面がY方向に沿う絶縁シートおよび導体シートを互いに重ね合わせたものを複数回巻いて積層し、更にその外周面に積層絶縁体を形成した扇型筒状の積層コイルに、前記本体部および渡り部を残して切欠き部を設けた構成をしている分析電磁石を更に備えている請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン注入装置。
  11. 前記分析電磁石は、前記ビーム経路を挟んでY方向において相対向するように、前記ヨークから内側に突出している一組の磁極を更に備えている請求項7ないし10のいずれかに記載のイオン注入装置。
  12. 前記分析電磁石と前記注入位置との間に設けられていて、静電界によって、前記イオンビームをX方向に曲げると共に加速または減速を行う加減速器であって、
    前記イオンビームの進行方向に、上流側から第1の電極、第2の電極および第3の電極の順で配列された第1ないし第3の電極を有していて、第1の電極と第2の電極との間および第2の電極と第3の電極との間で前記イオンビームを2段階に分けて加速または減速するものであり、
    しかも第2の電極を、前記イオンビームの経路を挟んでX方向において相対向していて互いに異なる電位が与えられて前記イオンビームをX方向に偏向させる二つの電極体に分けて構成すると共に、第3の電極を、前記偏向後の特定エネルギーを有するイオンビームの軌道に沿って配置している加減速器を更に備えている請求項7ないし11のいずれかに記載のイオン注入装置。
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