JP4239647B2 - Cu含有鋼材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面性状に優れたCu含有鋼材の製造方法に関し、特に、産業機械、建築あるいは自動車の構造用部材として使用される熱間圧延鋼材(以下、必要に応じ、熱延鋼材という場合がある。)およびこれを次工程用熱延半成品(冷間圧延用母材)として用いる冷間圧延鋼材に用いることができるCu含有鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延鋼材は、比較的安価であり、構造用材料として、自動車、家電、住宅など様々な製品に広く使用されてきた。そのため、それら製品の買い換え、あるいは建て替えをする際には鉄スクラップが発生し、その処理が問題となってきた。
【0003】
現在、公的機関の主導で省資源化を進める施策が取られたり、あるいはリサイクル運動が活発に行われていることから、上記鉄スクラップにおいても積極的な再利用が望まれている。しかしながら、このような鉄スクラップには銅(Cu)や錫(Sn)といった通常の精錬法では除去し難いトランプエレメントが含まれており、鉄スクラップを再利用し、製鉄原料として使用した場合、鋼材中に残留したトランプエレメントにより、鋼材の表面性状が著しく損なわれる場合がある。
【0004】
例えば、熱延鋼材では、加工性が良好であるとともに、鋼材の表面に発生する表面割れや表面疵などの欠陥がない、いわゆる表面性状がよいことが求められる。しかし、トランプエレメントが含まれるスラブを通常行われるように熱間圧延すると、CuやSnが原因となり、表面割れや表面疵が生じる。特に、Snを含有する場合にはこの傾向が顕著になる。
【0005】
上述の背景から、CuやSnが含まれるスラブやビレットを熱間圧延しても表面割れや表面疵が発生しない熱間圧延鋼材を得るため、製造面からアプローチを試みた様々な技術開発が実施されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、Cu≧0.3質量%、Sn≧0.01質量%を含む高温鋼材を熱間圧延するに当り、ロール噛み込みの直前に被圧延材表面層を、被圧延材成分により定まる割れ発生温度以下に冷却することを特徴とする銅、錫含有鋼の圧延方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、銅、錫含有スラブを950℃以下の温度で加熱する工程と、前記スラブを無酸化雰囲気下で圧延温度に加熱する工程とからなることを特徴とする銅、錫含有鋼の表面疵防止方法が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、同期移動式鋳型を有する連続鋳造機によってCu:0.1質量%以上のCu含有鋼を鋳造する際に、鋳造条件を鋳片厚み:75mm以下、1300〜1050℃の温度域での滞留時間が1分未満となるように冷却して薄鋳片を製造し、その後1050℃以上の温度とならないように加熱した後、仕上げ熱間圧延機によって熱間圧延することを特徴とするCu含有鋼板の製造方法が開示されている。
【0009】
上記3件の公報に開示された技術は、熱間圧延の加熱あるいは圧延温度をCuの融点(1080℃)以下とし、Cu融液の析出を防止するという技術思想に基づいている。したがって、圧延(低温圧延)や鋳造(薄スラブ製造)プロセスの負荷が大きくなり、生産性や歩留まりを著しく低下させる。また、最終製品の製品特性にも悪影響を及ばす恐れもある。
【0010】
例えば、上記特許文献1に記載の圧延方法では、ロール噛み込み口に水スプレーなど、スラブを冷却する装置を設ける必要があり、製造コストの上昇を招く。また、スラブ中心部は十分に熱が残っているため、復熱によりスラブ表層の温度が上昇する。そのため、復熱の作用を考慮した温度管理が必要であり、実操業において制御が困難であるといった問題もある。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の圧延方法では、加熱温度を950℃以下と規定している。したがって、圧延温度が低いため、圧延の負荷が非常に大きくなり、薄鋼板の製造が困難である。さらに、950℃以下では、熱延鋼板の機械的特性に必要な析出物の大きさや量を制御することができず、目標とする最終製品の特性が確保できない場合もある。
【0012】
さらに、上記特許文献3に記載の製造方法では、75mm以下に規定された薄スラブの製造が困難であるといった問題がある。一般的な連続鋳造スラブの厚さは、150〜200mmであるので、75mm以下の薄スラブを製造するには、連続鋳造プロセスの設備改造を伴うからである。さらに、スラブ加熱温度も1050℃未満に規定されているため、特許文献2の場合と同様に、熱延鋼板の機械的特性に必要な析出物の大きさや量を制御することが困難な場合も生じるといった問題もある。
【0013】
一方、熱間圧延プロセスの温度や連続鋳造プロセスに制約を課さないものとして、以下の技術が開示されている。
【0014】
特許文献4には、Cu:0.1質量%以上を含有する含Cu、Sn連続鋳造鋳片の表面に、この鋳片温度が1150℃以上の温度範囲にて、SiO2を含むフラックスを、該SiO2の塗布または散布重量がスケール生成重量の1%以上であるように、塗布またはスプレーにて散布した後、熱間圧延することを特徴とするCu、Sn含有鋼の熱間割れ防止方法が開示されている。
【0015】
また、特許文献5には、トランプエレメントとして、Cu:0.01〜0.50質量%およびSn:0.001〜0.05質量%を含有する鋳片に、硫黄化合物を硫黄に換算して10〜1000g/m2の付着量になるよう付着させた後、加熱し、次いで熱間圧延を行うことを特徴とする表面性状に優れた熱間圧延鋼材の製造方法が開示されている。
【0016】
上記特許文献4では、1150℃以上の熱間圧延中に圧延材の表裏面にSiO2を含むフラックスを散布する設備を設ける必要があり製造コストの上昇を招く。また、通常、熱間圧延プロセスで酸化スケールを除去するために使用される高圧水スプレーで試薬が除去される可能性が極めて大きい。仮に、高圧水スプレーを使用しない場合には、酸化スケールに起因する肌荒れが生じ、熱延鋼材の表面性状に悪影響を与えることになるといった問題があった。
【0017】
さらに、SiO2を塗布した後に加熱する場合は、次の間題がある。鋳片表面は、連続鋳造で生成したオッシレーションマークなどの凹凸があり、試薬を表面に均一に塗布し難い表面性状を有している。鋳片をクレーンなどで吊り上げ・運送する作業や鋳片の重ね置き、加熱炉内のスキッド(移動式の台)との接触など、表面が機械的に損傷を受ける作業や操業が多く含まれる。したがって、実操業において、鋳片表裏面に試薬を均一に塗布し、剥がれないようにするのは大変困難である。これは、上記特許文献5においても当てはまる問題である。
【0018】
【特許文献1】
特開平5−220504号公報
【特許文献2】
特開平5−220505号公報
【特許文献3】
特開平6−292949号公報
【特許文献4】
特開平6−297025号公報
【特許文献5】
特開平9−143751号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点である圧延温度の低下や設備増強等による製造コストの上昇を招くことなく、実操業が容易でかつ表面性状に優れたCu含有鋼材を製造することができるCu含有鋼材の製造方法を提供することを主目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、CuやSnが含まれるスラブを熱間圧延して割れや表面疵を防止し表面性状に優れた熱間圧延鋼材を製造するには、スラブ表面の粗さをRmaxで20μm以上となるように機械加工を施すことが極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0021】
すなわち、本発明は、質量%で、Cu:0.01〜0.6%およびSn:0〜0.1%を含有する鋼塊または鋼片の表面粗さを機械加工によりRmaxで20μm以上とした後に、上記鋼塊または鋼片を加熱して熱間加工を行う工程を含むことを特徴とするCu含有鋼材の製造方法を提供する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。本発明は、上述したように、所定の組成の鋼塊または鋼片の表面に機械加工を施し、その表面粗さを所定の値以上に粗くした後、熱間加工を行う点に特徴を有するものであり、これにより表面性状に優れたCu含有鋼材を製造するものである。
【0023】
この点について、詳細に説明する。図1は、Cu、Sn含有鋼の表面割れ発生状態に対する表面粗さと加熱温度の関係を検討した結果である。同図に示すデータは実験室的に求めたものであり、大気中で、それぞれ1000℃、1100℃、1200℃で2時間保持した丸棒引張試験片に、Ar中、1100℃で歪量約40%の引張変形を加えて、引張試験片平行部において単位面積当たりの表面割れ発生点数を測定したものである。
【0024】
供試材の鋼組成は、質量%で、C:0.05%、Si:0.02%、Mn:0.35%、P:0.03%、S:0.005%、Cr:0.03%、Cu:0.3%、Sn:0.04%とした。なお、不純物として含有されるNiは0.02%であった。
【0025】
供試材は、実験室で真空溶製し、熱間鍛造・熱間圧延を行い、20mm厚の熱間圧延鋼材より寸法がφ8、平行部20mmの丸棒引張試験片と20mm角、厚さ10mmの酸化試験片を作製した。丸棒引張試験片と酸化試験片は、アルミナの番手#16〜500、圧力98〜490kPaのアルミナブラスト処理を行い、表面粗さRmaxを4.5、17.9、57、127μmに調整した。
【0026】
図1に示すように、Cu、Sn含有鋼の表面割れ発生点数は、1100℃加熱で最も多く、1000℃や1200℃加熱で減少した。本実験において、引張変形で生じた表面割れは幅と深さともに0.2〜0.3mmの範囲で圧延方向に垂直に発生した。1100℃加熱材の表面割れは、Cu、Sn含有鋼の表面粗さが57μm、さらには127μmの試験材で大幅に改善された。
【0027】
上記結果より、本発明においては、熱間加工を行う工程前に、鋼塊または鋼片の表面粗さを機械加工によりRmaxで20μm以上、特に50μm以上とすることが好ましい。このような範囲内とすることにより、上記実験からも明らかなように表面性状に優れたCu含有鋼材を製造することができるからである。
【0028】
なお、表面粗さの上限は、特に限定されるものではないが、通常は500μm以下とされる。
【0029】
本発明におけるRmaxは、JIS B0601に規定される方法で測定することにより得られる値を用いることとする。
【0030】
このように、熱間加工前に表面粗さを所定の値以上にすることにより、表面性状に優れたCu含有鋼材を得ることができるのは、以下の理由によるものであると推測される。
【0031】
図2に、上記実験における引張変形を加える前の酸化層と地鉄の界面の模式図を示す。同図は、表面加工層の表面粗さRmaxが4.5μmと57μmの酸化試験片を1100℃、2時間保持後、室温まで冷却し、試験片断面を樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨して、酸化層と地鉄の界面を反射電子像で観察して得られたものである。
【0032】
図中(a)は、表面粗さRmaxが4.5μmのものである。酸化層は鉄が選択的に酸化して生成するものであり、鋼中に含有するCuとSnは、鉄の選択酸化によって酸化層と地鉄の界面に濃縮していき、溶融状態で酸化層と地鉄の界面にCu−Sn濃化合金として膜状に析出する。表面割れは、この溶融状態のCu−Sn合金相が熱間加工により結晶粒界に湿潤し、粒界強度を弱めるために発生するのである。
【0033】
他方、図中(b)は、表面粗さRmaxが57μmの場合を示し、この場合は酸化層と地鉄の界面の凹凸が激しく、上記(a)に示すような膜状に観察されたCu−Sn合金相は酸化層と地鉄の界面の凹凸によって分断・細分化されている。したがって、このように表面加工層の表面粗さが粗い試験材では、酸化層と地鉄の界面に析出するCu−Sn合金相の量(表面積)が大幅に減少し、熱間加工により結晶粒界に湿潤して割れを生じるまでに至らなかったと考えられる。
【0034】
以上の実験結果から、表面割れの防止には、表面に機械加工を施して表面粗さを粗くすることにより、酸化層と地鉄の界面に生成する溶融状態のCu−Sn合金相を分断・細分化することが極めて有効であると推測される。
【0035】
なお、本実験において、1000℃加熱では、Cuの融点(1080℃)以下であり、溶融状態のCu−Sn合金が析出しないために割れは発生しない。一方、1200℃加熱では、酸化が激しいために、溶融状態のCu−Sn合金が酸化層中へも排斥されて酸化層と地鉄の界面に析出する量が少なくなって割れが減少したと考えられる。
【0036】
また、本発明は質量%で、Cu:0.01〜0.6%およびSn:0〜0.1%を含有する鋼塊または鋼片を対象とする。これは、これらトランプエレメントの含有量が、Cuについては0.6質量%、Snについては0.1質量%を超えると、本発明で規定する表面粗さが機械加工によりにより導入されても、熱間加工における表面疵の発生を防止することができないからである。一方、Cuの含有量が0.01質量%未満の場合は、通常の熱間加工を行っても、割れの発生、すなわち熱間加工鋼材の表面品質は許容限界内にとどまるからである。本発明においては、さらに本発明の効果が顕著となることから、Cu:0.05〜0.5質量%およびSn:0.005〜0.05質量%の範囲内であることが好ましい。
【0037】
このように、本発明はCuおよびSnが所定の含有量であり、上述した所定の範囲の表面粗さが機械加工により設けられた鋼塊または鋼片を対象とするものであるが、熱間加工を行う工程を経て表面性状に優れたCu含有鋼材を製造するためには、さらに以下のような組成を有することが好ましい。
【0038】
(鋼組成)
C:Cは、鋼材の強度を高めるために好ましい元素であるため添加しても良い。しかし、0.2質量%を超えると加工性が低下するうえ、溶接性の劣化を招く。従って、C含有量の上限は0.2質量%とする。Ti添加極低炭素鋼を製造する場合は、成形性の観点からC含有量の低いことが好ましい。しかし、精錬上、C含有量を0.0005質量%未満にするのは困難である。したがって、C含有量の下限は0.0005質量%とする。
【0039】
Si:Siは固溶強化により鋼材の強度を向上させるのに好ましい元素である。しかし、2質量%を超えて含有させてもその効果が飽和するうえ、溶接性に悪影響を及ばす。したがって、Si含有量の上限は2質量%とすることが好ましい。下限は特に限定するものではないが、Siを脱酸剤として使用する場合は0.01質量%とすることが好ましい。
【0040】
Mn:Mnは鋼材の強度を向上させるのに好ましい元素であり、さらに鋼中に不純物として存在するSをMnSとして固定し、熱間加工中に生じる割れを抑制する作用も有している。しかし、その含有量が0.05質量%未満では、上述の効果が認められない。一方、2質量%を超えて含有させても加工性が低下するうえ、溶接性に悪影響を及ばす。したがって、Mnの含有量は0.05〜2質量%とする。
【0041】
Nb、TiおよびV:Nb、TiおよびVは、フェライト地に炭窒化物として析出して鋼材の強度を高める作用を有するので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、NbおよびTiはそれぞれ0.1質量%、Vは0.2質量%を超えて含有させてもその効果は飽和してしまううえ、経済性を損なう。したがって、それぞれの含有量は、Nb:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%、V:0〜0.2質量%とした。さらに、上記効果を十分発揮させるためには、Nb:0.005〜0.1質量%、Ti:0.005〜0.1質量%、V:0.005〜0.2質量%とすることが好ましい。
【0042】
CrおよびMo:CrおよびMoは、変態強化により鋼材の強度を向上させる作用を有するので必要に応じて添加することができる。しかしながら、CrおよびMoはそれぞれ1質量%を超えて含有させてもその効果は飽和してしまううえ、経済性を損なう。したがって、CrおよびMoの含有量は、いずれも0〜1質量%とした。さらに、上記効果を十分発揮させるためには、CrおよびMoのいずれについても、0.01〜1質量%とすることが好ましい。
【0043】
希土類元素およびCa:これらの元素は介在物の形状を調整して冷間加工性を改善する作用を有するので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、希土類元素およびCaは、それぞれ0.1質量%および0.01質量%を超えて含有させると鋼中の介在物が多くなりすぎて加工性が劣化するなどの悪影響を及ぼす。したがって、希士類元素の含有量は、0〜0.1質量%、Caは0〜0.01質量%とした。さらに、上述した効果を十分発揮させるためには、希土類元素は0.002〜0.1質量%、Caは0.0001〜0.01質量%とすることが好ましい。
【0044】
Al:Alは脱酸剤として使用される元素であるが、鋼の清浄度の観点から、その含有量は0.30質量%以下とするのが好ましい。下限は特に限定するものではないが、Alを脱酸剤として使用する場合は0.003質量%以上とすることが好ましい。
【0045】
P:Pは溶接性に悪影響を及ぼす不純物元素である。したがって、溶接性の観点からその含有量は0.05質量%以下とすることが好ましい。
【0046】
S:Sは硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素である。したがって、加工性の観点からその含有量は0.03質量%以下とすることが好ましい。
【0047】
(製造方法)
次に、本発明の好適な製造方法を、鋼塊または鋼片がスラブで、鋼材が熱延鋼板である場合を例として説明する。なお、本発明においては、鋼材が、継目無鋼管、棒鋼、線材、形鋼、鋼帯等、形状の異なる他の鋼材であってもよい。また、前記熱延鋼板を母材とする冷延鋼板であってもよい。
【0048】
上述した鋼組成のスラブを公知の方法、例えば、転炉や電気炉で製鉄原料を溶解した後、真空脱ガス処理を施し、連続鋳造法で鋼塊にした後に分塊圧延するなどの方法でスラブを製造する。
【0049】
スラブの寸法は、通常、厚さ:120〜280mm、幅:700〜1600mm、長さ:10m程度である。熱延鋼板は、スラブ加熱した後、連続熱間圧延を施して製造され、必要に応じて焼鈍、酸洗処理が施される。また、冷延鋼板は、さらに冷間圧延が施され、必要に応じて焼鈍やめっきが施される。
【0050】
本発明では、CuやSnが含まれるスラブを熱間圧延して割れや表面疵を防止するために、スラブ表面を機械加工によりRmaxで20μm以上の粗さとする。このような機械加工の方法としては、特に限定されるものではないが、工業的にステンレス鋼など特殊鋼スラブの疵取り研削に使用されているグラインダあるいはショットブラストによる研削、もしくはバイトやスライスによる研削の少なくとも1種類の方法を用いることができる。このようにして、機械加工により表面粗さが所定の値とされたスラブを加熱して熱間圧延を行う。
【0051】
スラブ加熱温度は、熱延鋼板の機械的性質の向上に必要な析出物の大きさおよび量を制御するために、1050℃超とする。好ましくは、酸化層と地鉄の界面表面でのCu−Sn合金相(融液)の析出を抑制するために、1150℃以上とする。また、1300℃を超えると、鋼の内部酸化が激しくなり、鋼のスケールロスが大きくなるとともに、熱延綱板の表面性状にも悪影響を及ぼす。従って、スラブ加熱温度の上限は1300℃以下、好ましくは1270℃以下とする。
【0052】
加熱炉の燃料ガスは、特に規定するものではないが、例えば高炉メーカの場合は、製鉄所内で発生するコークス炉ガス(COG)、高炉ガス(BFP)、液化石油ガス(LPG)等が用いられる。また、電気炉メーカの場合は、天然ガス(LNG)や都市ガスなどを用いられる。これら燃料ガス中には、水素あるいは炭化水素が含まれるため、加熱雰囲気の水蒸気濃度は2〜30質量%の範囲である。
【0053】
スラブ加熱時間は、通常と同様に1〜4時間の範囲内でよい。1050℃超の均熱時間は、機械的性質の向上に必要な析出物の大きさおよび量を制御するために、30分以上とすることが好ましい。
【0054】
所定の温度に加熱されたスラブは、加熱炉を抽出後、熱間圧延に先だって脱スケール処理が施される。脱スケール処理は、9.8〜24.5MPa程度の高圧水を噴射する方法が一般的である。熱間圧延は、通常の鋼板製造に用いられる連続式ロール圧延法が適している。圧延温度の下限は、900℃程度とするのが好ましい。熱延鋼板の厚みは、用途によって異なるが2〜20mm程度に仕上げられる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0057】
(実施例)
表1に示す鋼組成を有するスラブに、グラインダあるいはショットプラストによる研削、もしくはバイトやスライスによる研削の少なくとも1種類の方法により、表面粗さをRmaxで20μm以上とした。次いで、加熱炉に装入し、1250℃で30分間均熱し、粗圧延および仕上げ圧延を行い、900℃で圧延を終了した。その後、制御冷却を行い、500℃で巻き取って、板厚4.0mmの熱延鋼板を製造した。比較のために、スラブ表面の機械加工による表面粗さの調整をしないで熱間圧延を実施した熱延鋼板も製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
また、スラブ加熱による酸化層と地鉄の界面のCu−Sn合金相の析出状況を把握するために、スラブより切り出して作製した加熱炉モニター試験片(幅50mm、厚さ20mm、長さ50mm)を準備した。加熱炉モニター試験片の表面は、スラブと同処理により表面粗さを中心線平均粗さRmaxで20μm以上とした。比較のために、試験片表面の機械加工による表面粗さの調整をしないものも作製した。これら加熱炉モニター試験片は、スラブと同様の熱履歴で加熱し、酸化層と地鉄の界面のCu−Sn合金相の析出状況を調べた。
【0060】
(評価方法)
Cu−Sn合金相(融液)の析出は、加熱炉モニター試験片から表皮下20mm厚さのサンプルを切り出した後、試験片断面を樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨して、酸化層と地鉄の界面を走査型電子顕微鏡の反射電子像により調べた。反射電子像では、CuやSnの濃化した部位が高輝度となり、Cu−Sn合金相の析出状況を確認することができる。
【0061】
熱延鋼板の表面割れ(表面疵)は、4.0mm厚の熱延鋼板において、肉眼で表面品質上問題となる疵が確認された場合を×、表面品質上問題となる疵が確認されない場合を○とした。
【0062】
上記の熱延鋼板の表面疵の判定結果とモニター試験片の調査結果を表2に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
(結果)
表2において、試番1、2、4、6、7、9、10、11、12、および13は、本発明例であり、熱延鋼板の表面疵判定は○であり、表面品質を損なう表面疵は発生しなかった。これらは、スラブ表面をグラインダあるいはショットブラストによる研削、もしくはバイトやスライスによる研削の少なくとも1種類の方法により、表面粗さを中心線平均粗さRmaxで20μm以上としたものである。これらの試番における加熱炉モニター試験片表面の観察結果によれば、Cu−Sn合金相は、観察されない、もしくは分断・細分化されており、無害化されていることが確認された。
【0065】
一方、試番3、5および8は、スラブ表面に機械加工による研削を加えていないものであり、熱延鋼板の表面疵判定は×である。これら加熱炉モニター試験片表面にはCu−Sn合金相が膜状に析出していることが確認された。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、圧延温度の低下や設備増強等による製造コストの上昇を招くことなく、実操業上容易な方法で、表面品質上問題となる表面疵(表面割れ)を防止することができ、低コストで表面性状に優れたCu含有鋼材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】機械加工による表面粗さの程度と表面割れとの関係を示すグラフであある。
【図2】酸化層と地鉄の界面の状態を示す説明図である。
Claims (4)
- 質量%で、Cu:0.01〜0.6%およびSn:0〜0.1%を含有する鋼塊または鋼片の表面粗さを機械加工によりRmaxで20μm以上とした後に、前記鋼塊または鋼片を加熱して熱間加工を行う工程を含むことを特徴とするCu含有鋼材の製造方法。
- 前記機械加工が、グラインダ、ショットブラスト、バイトおよびフライスによる研削の少なくとも1種類の方法によることを特徴とする請求項1に記載のCu含有鋼材の製造方法。
- 前記鋼塊または鋼片が、質量%で、C:0.0005〜0.2%、Si:0〜2%、Mn:0.05〜2%、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Al:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、V:0〜0.2%、Cr:0〜1%、Mo:0〜1%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%をさらに含有し、残部がFeおよび不純物からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCu含有鋼材の製造方法。
- 前記鋼塊または鋼片の鉄源の少なくとも一部に鉄スクラップを用いることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のCu含有鋼材の製造方法。
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