JP2024010652A - 連続鋳造鋳片の製造方法および鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Mnを多く含む鋼の鋳片に対し、その表面または内部に割れを発生させずに冷却する連続鋳造鋳片の製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.40%以下、Mn:2.5%以上13%以下を含み、ベイナイトが主相となる成分組成を満足する連続鋳造鋳片を、表面温度が700℃以上における、冷却を開始してからの滞留時間t1が10h未満で冷却し、表面温度が700℃未満500℃以上における滞留時間t2(h)がフェライト-パーライト炭素等量との関係で所定の時間以下で冷却し、表面温度が500℃未満300℃以上における滞留時間t3(h)がベイナイト炭素等量との関係で所定の時間範囲になるように冷却し、前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が300℃未満150℃以上または加熱炉に装入するまでにおける平均冷却速度vc4が30℃/h以下で冷却する、連続鋳造鋳片の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、冷却時の割れを防止した連続鋳造鋳片の製造方法に関し、特にMn含有量の多い高強度鋼鋳片の製造方法、および、その鋼鋳片を素材とする鋼製品の製造方法に関する。
近年、世界的なCO排出量削減要請の高まりを受けて、構造用鋼では鋼材の使用量削減や製品の軽量化のため、鋼製品の高強度化が強く求められている。一方で、最終製品を製造する過程での成形性やデザイン性の維持あるいは製造能率の向上のために高成形性や高靭性などといった特性が求められている。それらの特性は、鋼の強度とは相反するものを含み、複数の特性を並立した高機能鋼の開発がますます強く求められている。
このような鋼ではその特異な特性を達成するために必然的にSiやMn、Cr、Moなどといった元素を添加して、鋼の高合金化が指向されることになる。そして、鋼製品の製造工程で複雑なミクロ組織を作り込んでいくことになる。その作り込み途上の上工程であればあるほど鋼の高合金化は単純に製造難易度を高め、あるいは製造安定性を危うくし、様々な品質トラブルを誘発する。
たとえば、鋼の成分組成にSiやMn、Cr、Moなどといった合金元素が増えると、溶鋼を鋳片へと凝固-冷却させる連続鋳造工程では、鋳片の冷却過程で表面や内部に割れが発生しやすくなる。鋳片内部の割れは大きな問題となる。鋳片に発生した割れはグラインダー研削やスカーフ溶削などで除去する必要がある。その検査と除去作業には多くの人員とコストを要し、製造コストを増大させる。また、鋳片内部に発生した深い割れは完全除去できず、鋳片そのものの廃棄損失が生じることになる。加えて、そのような欠陥を内在する鋳片が、圧延など下工程へと流出することで製品のヘゲ欠陥を誘発する。そのため、製造歩留りを低下させることになる。それだけに留まらず、鋳片やコイルの破断による重大な設備トラブルも誘発する。このような鋼の高合金化による鋳片の割れは、鋼が高強度化することで鋼の延性や靭性が低下することに起因する。そして、鋳片に生じる熱応力によって容易に割れが発生するためと一般に考えられている。その対策として鋳片の冷却過程で発生する過度な応力を抑制する方法が種々提案されている。
たとえば、特許文献1には、高張力鋼の連続鋳造鋳片の置き割れを防止するため、対象鋳片を他の2枚の鋳片で挟むことで、冷却過程の鋳片表面冷却速度を一定以下に低減し、徐冷する手法が開示されている。この徐冷措置によってスラブの脆化域での割れ発生を抑制するとしている。
また、特許文献2には、鋳片内部の初期割れサイズに応じて、鋳片の冷却速度を所定値以下に低減する手法が開示されている。そうすることで、ベイナイト変態とマルテンサイト変態を回避して鋳片の変態に起因した応力の上昇を抑えて割れ発生を防止するとしている。
また、特許文献3には、Siを含有する鋼鋳片の冷却時に、700~500℃の冷却速度を制御することで過度の応力発生を抑制する方法が開示されている。
特開2007-083274号公報 特開2020-139210号公報 特開2019-167560号公報
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1~3に開示の技術は、確かにいずれも合金量が中程度までの一般鋼では概ね成立する技術であった。しかし、更なる高合金鋼の割れ抑制に適用を検討したところ、鋳片の割れ発生が抑制できないばかりか、むしろ割れ発生を助長する場合があることがわかった。
特許文献1や3の実施例に主に示されている、Mn含有量が2.5質量%未満のような低Mn鋼では、鋳片を1本放冷や積み重ね、徐冷カバーを用いた徐冷を行い、冷却速度を種々振ったとしても、軟質なフェライトが多いフェライト-パーライト組織が得られる。そのため、組織の観点からは冷却方法による差は小さく、熱・変態応力の観点からは徐冷をするほど有利であった。しかし、Mn含有量が2.5質量%以上の高Mn鋼では、焼き入れ性が非常に高いため、上述のスラブ冷却の範囲内で軟質なフェライト相の析出が抑制され、さらに低温変態相が析出する。すなわち、徐冷をすることで少量の軟質フェライトと高強度の低温変態相が含まれる組織となってしまい、かえって割れリスクを上げてしまう。なお、加熱炉等を用いて、最徐冷をすれば、低温変態相をほとんど出さずに軟質相の割合の多い組織を作れるが、加熱のコストと、生産のリードタイムの観点から現実的ではない。
特にMnは鋼の強度を安価に上昇させるため近年の高合金鋼では多く添加される。しかし、靭性への影響に関しては注意が必要な元素である。Mn含有量の増加によりシャルピー衝撃値の低下や延性-脆性遷移温度の上昇が起こり、いわゆる、鋳片置き割れのリスクが高まるためである。また、Mn含有量の増加はベイナイト変態温度を低下させフェライト-パーライトノーズを長時間側へ移動させる。そのため、鋼組織に低温変態相が出やすく、変態時の応力が高くなりやすいという問題もある。特許文献1~3に開示された発明ではいずれもMnを多く含む組成の鋳片置き割れを抑制していない。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、高合金鋼、特にMnを多く含む鋼の鋳片に対し、その表面または内部に割れを発生させずに冷却する連続鋳造鋳片の製造方法を提供することを目的とする。そのような鋳片を素材として製造した薄板コイル、厚板、あるいは棒鋼などの最終製品に破断やヘゲ欠陥を発生させない鋼製品の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、後述する高合金鋼、特にMnを多く含む鋼の鋳片において、鋭意割れの発生原因と抑制方法を研究した。その結果、以下のことを知見した。高合金鋼の徐冷スラブの割れ部周辺のミクロ組織を観察した。すると、徐冷スラブのような非常に冷却速度が遅い条件においても高合金鋼、特にMnを多く含む鋼の場合は低温変態相の生成量が非常に多くなっていた。そして、一般鋼で主相を占めるフェライトやパーライトといった軟質相の変態分率が極端に低下するかほぼゼロになることがわかった。このような成分鋼で従来技術と同様にスラブを徐冷してしまうと、旧オーステナイト粒界近傍にだけごく微量の軟質相が生成する。そのため、周辺の硬質相と著しい強度差を生じてしまう。そのような状態で、熱応力や変態応力が鋼鋳片に作用した際に軟質相にだけ変形歪が集中して鋳片に割れが発生する可能性が高くなることがわかった。また、従来技術はスラブ母相の割れ感受性が高くても徐冷することで熱応力や変態応力を極力低減して割れを防ぐようにしている。ところが、上記のような高合金鋼では低温変態相の相分率が非常に多いため、一般鋼より過大な変態応力の発生を避けられない。そのことから単純な徐冷だけに頼った場合、熱割れ軽減効果は低減することがわかった。このような高合金鋼では、むしろスラブの冷却速度を制御して意図的に早めることが好ましいとわかった。つまり、軟質相の生成を抑制して微細で強靭なベイナイト組織が主相となるようにすることである。そして、成分に応じて適切に冷却履歴を制御することが好適であることを見出し、本発明を想到した。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.40%以下、Mn:2.5%以上13%以下を含み、
任意選択的に、Si:0.10%以上2.50%以下、P:0.100%以下、S:0.0200%以下、N:0.0100%以下、sol.Al:0.100%以下およびO:0.0100%以下から選ばれる1種以上を含み、
さらに、任意選択的に、Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、B:0.0100%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Co:1.00%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、Hf:0.10%以下、およびBi:0.200%以下から選ばれる1種以上を含み、成分組成が下記(1)~(4)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する連続鋳造鋳片を、
前記連続鋳造鋳片の幅方向中央表面温度が700℃以上における、冷却を開始してからの滞留時間t1が10h未満で冷却する第一冷却工程と、
前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が700℃未満500℃以上における滞留時間t2(h)が下記(5)式を満足するように冷却する第二冷却工程と、
前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が500℃未満300℃以上における滞留時間t3(h)が下記(6)式を満足するように冷却する第三冷却工程と、
前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が300℃未満150℃以上または加熱炉に装入するまでにおける平均冷却速度vc4が30℃/h以下となるように冷却する第四冷却工程と、
を含む、連続鋳造鋳片の製造方法。
Ce,fp=C+Si/24+Mn/24+P-Al/50+(Cu+Ni)/40+Cr/6+Mo+V/14+Nb/2+10B (1)
Ce,b=C+Si/24+Mn/6+P-Al/50+(Cu+Ni)/40+Cr/6+Mo+V/14+1.5Nb+10B (2)
Ce,b≧0.60 (3)
Ce,b≧5×Ce,fp/3+0.1 (4)
t2≦120×(ln(Ce,fp)+1.25) (5)
10×(ln(Ce,b)+0.5)≦t3<200×(ln(Ce,b)+0.5)
(6)
ここで、(1)式および(2)式中の元素記号は、各元素における質量%表示の含有量を表す。
2.1に記載の方法で製造された連続鋳造鋳片を素材として、
熱間圧延により、
任意選択的に、冷間圧延により、
さらに、任意選択的に、焼鈍を含む熱処理により、
さらに、任意選択的に、表面処理を施すことにより、
鋼製品を製造する、鋼の製造方法。
本発明にかかる連続鋳造鋳片の製造方法および鋼の製造方法によれば、高合金鋼、特にMnを多く含む鋼であっても、冷却過程で割れが発生しない連続鋳造鋳片を提供することができる。そのような鋳片を素材とし、圧延などの工程を経て、圧延時の破断や設備損傷トラブルを低減することができる。加えて、鋼製品の製造工程でのヘゲの発生を抑止して表面品質の優れた高合金鋼製品を製造することができるので産業上有用である。
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための鋼組成や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<鋼鋳片の成分組成>
まず、本実施形態の鋼鋳片(連続鋳造鋳片)に好適な成分組成の適正範囲およびその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、鋼の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
[C:0.40%以下]
Cは、高合金鋼の強度を高める重要な元素である。一方、高合金鋼においては延性を低下して割れリスクを増大させるだけでなく、旧オーステナイト粒界近傍でのパーライト生成を助長して更に熱割れの可能性を助長するおそれがある。そのため、多量の添加は好ましくない。C含有量が0.40%を超えると、旧オーステナイト粒界へのパーライトや炭化物の生成を抑えきれない。したがって、C含有量は、0.40%以下とする。C含有量の下限を限定するものではない。しかし、C含有量を0.0005%未満とすることは精錬コストや低炭素含有原料による合金コスト増大を招くことになる。好ましくは0.0005%以上とする。好ましくは0.35%以下とする。より好ましくは0.10%以上とする。より好ましくは0.30%以下とする。
[Mn:2.5%以上13%以下]
Mnは、高合金鋼の強度を安価に上昇させるため、焼き入れ性を向上させるため、および、最終製品におけるミクロ組織中の残留オーステナイトを安定化して延性を向上させるために添加する必要がある。高い強度と焼き入れ性向上と延性向上とのためにはMn含有量を2.5%以上とする必要がある。なお、Mn含有量が2.5%未満の鋳片では冷却速度の広い範囲で軟質なフェライトが多いフェライト-パーライト組織が得られる。そのため、組織の観点からは冷却方法による差は小さい。Mn含有量が2.5質量%以上の高Mn鋼鋳片では、焼き入れ性が非常に高いため、後述する冷却条件によって組織を適切に制御する必要がある。一方、Mn含有量が13%を超えると、鋼は室温でもオーステナイト単相の、いわゆるTWIP鋼となる。TWIP鋼は、強度延性が非常に優れるものの高コストでめっき性や溶接性も著しく劣ることになる。そのため、TWIP鋼は、広範な用途への適用が制限されるため好ましくない。また、TWIP鋼は、組織がオーステナイト単相で粒径が粗大化する。そのため、粒界へP、S等の偏析が極端となる。それにより粒界が脆化して、鋳片表面割れが発生しやすくなり、製造歩留りや処理コストが著しく増大するおそれがある。したがって、Mn含有量は、2.5%以上13%以下の範囲とする。好ましくは3.0%以上とする。好ましくは11%以下とする。より好ましくは3.5%以上とする。より好ましくは9.0%以下とする。さらに好ましくは4.0%以上とする。
本実施形態の連続鋳造鋳片は、上記成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、後述するミクロ組織に与える各成分影響を考慮し、冷却条件を規定して製造したものである。その限りにおいて、他の特性を考慮し、Si:0.10%以上2.50%以下、Pを0.100%以下、Sを0.0200%以下、Nを0.0100%以下、sol.Alを0.100%以下およびOを0.0100%以下から選ばれる1種以上を含有していてもよい。ここで、不可避的不純物として、Zn、PbおよびAsが挙げられる。これら不純物の合計で0.100%以下の含有は許容される。
[Si:0.10%~2.50%]
Siは、焼鈍工程で残留オーステナイトを確保するために添加することが好ましい。加えて、固溶強化により高強度化にも寄与するため好ましい添加元素である。このことから、0.10%以上添加することが好ましい。一方、2.50%超の添加は効果が飽和するだけでなく、熱延板の表面に強固なスケールが発生するおそれがある。これにより、外観や酸洗性を劣化させるおそれがあることから、上限は2.50%以下とすることが好ましい。したがって、Si含有量は、0.10~2.50%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.50%以上とする。より好ましくは2.0%以下とする。さらに好ましくは1.00%以上とする。さらに好ましくは1.80%以下とする。
[P:0.100%以下]
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させるため、鋳片に割れを生じさせることがある。そのため、P含有量は0.100%以下にすることが好ましい。なお、P含有量の下限は特に規定しないが、Pは固溶強化元素であり、鋼材の強度を上昇させることができることから、0.001%以上とすることが好ましい。したがって、P含有量は、好ましくは、0.100%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.070%以下とする。
[S:0.0200%以下]
Sは、硫化物として存在し、鋳片の脆化をもたらす元素である。そのため、S含有量は0.0200%以下にすることが好ましい。なお、S含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、S含有量は、好ましくは0.0200%以下とする。より好ましくは0.0001%以上とする。さらに好ましくは0.0050%以下とする。
[N:0.0100%以下]
Nは、窒化物として存在し、鋳片の脆化をもたらす元素である。そのため、N含有量は0.0100%以下にすることが好ましい。なお、N含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、N含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、N含有量は、好ましくは0.0100%以下とする。より好ましくは0.0001%以上とする。さらに好ましくは0.0050%以下とする。
[sol.Al:0.100%以下]
Alは、鋳片冷却中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、鋳片の残留オーステナイトの分率に影響する元素である。sol.Al含有量が0.100%を超えると、鋳片の脆化をもたらすおそれがある。したがって、sol.Al含有量は、0.100%以下とすることが好ましい。また、脱酸のためsol.Al含有量として0.005%以上添加することがより好ましい。さらに好ましくは0.080%以下とする。さらに好ましくは0.010%以上とする。
[O:0.0100%以下]
Oは、酸化物として存在し、鋳片の脆化をもたらす元素である。そのため、O含有量は0.0100%以下にすることが好ましい。なお、O含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、O含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、O含有量は、好ましくは0.0100%以下とする。より好ましくは0.0001%以上とする。さらに好ましくは0.0050%以下とする。
本実施形態の連続鋳造鋳片は、高強度鋼用として、上記成分組成に加えて、さらに、Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、B:0.0100%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Co:1.00%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、Hf:0.10%以下、およびBi:0.200%以下から選ばれる少なくとも1種の元素を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて含有しても良い。
[Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下およびV:0.200%以下]
Ti、NbおよびVは、それぞれ0.200%以下の含有量であれば粗大な析出物や介在物が多量に生成せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Ti、NbおよびV含有量はそれぞれ0.200%以下にすることが好ましい。なお、Ti、NbおよびV含有量の下限は特に規定しないが、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼材の強度を上昇させることから、Ti、NbおよびV含有量はそれぞれ0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Ti、NbおよびVを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.200%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.100%以下とする。
[Ta:0.10%以下およびW:0.10%以下]
TaおよびWは、それぞれ0.10%以下の含有量であれば粗大な析出物や介在物が多量に生成せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、TaおよびW含有量はそれぞれ0.10%以下にすることが好ましい。なお、TaおよびW含有量の下限は特に規定しないが、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼材の強度を上昇させることから、TaおよびW含有量はそれぞれ0.01%以上とすることがより好ましい。したがって、TaおよびWを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.10%以下とする。より好ましくは0.01%以上とする。さらに好ましくは0.08%以下とする。
[B:0.0100%以下]
Bは、0.0100%以下であれば鋳片の靭性に影響を与えない。そのため、B含有量は0.0100%以下にすることが好ましい。なお、B含有量の下限は特に規定しないが、熱間圧延や焼鈍中にオーステナイト粒界に偏析し、焼入れ性を向上させる元素であることから、B含有量は0.0003%以上とすることがより好ましい。したがって、Bを含有する場合には、その含有量は0.0100%以下とする。より好ましくは0.0003%以上とする。さらに好ましくは0.0080%以下とする。
[Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下およびNi:1.00%以下]
Cr、MoおよびNiは、それぞれ1.00%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Cr、MoおよびNi含有量はそれぞれ1.00%以下にすることが好ましい。なお、Cr、MoおよびNi含有量の下限は特に規定しないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Cr、MoおよびNi含有量はそれぞれ0.01%以上とすることがより好ましい。したがって、Cr、MoおよびNiを含有する場合には、その含有量はそれぞれ1.00%以下とする。より好ましくは0.01%以上とする。さらに好ましくは0.80%以下とする。
[Co:1.00%以下]
Coは、1.00%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Co含有量は1.00%以下にすることが好ましい。なお、Co含有量の下限は特に規定しないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Co含有量は0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Coを含有する場合には、その含有量は1.00%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.80%以下とする。
[Cu:1.00%以下]
Cuは、1.00%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Cu含有量は1.00%以下にすることが好ましい。なお、Cu含有量の下限は特に規定しないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Cu含有量は0.01%以上とすることよりが好ましい。したがって、Cuを含有する場合には、その含有量は1.00%以下とする。より好ましくは、0.01%以上とする。さらに好ましくは0.80%以下とする。
[Sn:0.200%以下]
Snは、0.200%以下であれば鋳片の靭性に影響をしない。そのため、Sn含有量は0.200%以下にすることが好ましい。なお、Sn含有量の下限は特に規定しないが、Snは焼入れ性を向上させる元素であり、一般的には耐食性を向上させる元素であることから、Sn含有量は0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Snを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.100%以下とする。
[Sb:0.200%以下]
Sbは、0.200%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Sb含有量は0.200%以下にすることが好ましい。なお、Sb含有量の下限は特に規定しないが、脱炭を抑制し、鋼材の強度調整を可能にする元素であることから、Sb含有量は0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Sbを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.100%以下とする。
[Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下およびREM:0.0100%以下]
Ca、MgおよびREMは、それぞれ0.0100%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Ca、MgおよびREM含有量は0.0100%以下にすることが好ましい。なお、Ca、MgおよびREM含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋳片の靭性を向上する元素であることから、Ca、MgおよびREM含有量はそれぞれ0.0005%以上とすることがより好ましい。したがって、Ca、MgおよびREMを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.0100%以下とする。より好ましくは0.0005%以上とする。さらに好ましくは0.0050%以下とする。
[Zr:0.100%以下およびTe:0.100%以下]
ZrおよびTeは、それぞれ0.100%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、ZrおよびTe含有量は0.100%以下にすることが好ましい。なお、ZrおよびTe含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋳片の靭性を向上する元素であることから、ZrおよびTe含有量はそれぞれ0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、ZrおよびTeを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.100%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.080%以下とする。
[Hf:0.10%以下]
Hfは、0.10%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Hf含有量は0.10%以下にすることが好ましい。なお、Hf含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼材の極限変形能を向上する元素であることから、Hf含有量は0.01%以上とすることがより好ましい。したがって、Hfを含有する場合には、その含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.01%以上とする。さらに好ましくは0.08%以下とする。
[Bi:0.200%以下]
Biは、0.200%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋳片の靭性を低下させない。そのため、Bi含有量は0.200%以下にすることが好ましい。なお、Bi含有量の下限は特に規定しないが、偏析を軽減する元素であることから、Bi含有量は0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Biを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とする。より好ましくは0.001%以上とする。さらに好ましくは0.100%以下とする。
なお、上記したTi、Nb、V、Ta、W、B、Cr、Mo、Ni、Co、Cu、Sn、Sb、Ca、Mg、REM、Zr、Te、HfおよびBiについて、各含有量が好ましい下限値未満の場合には本発明の効果を害することがないため、不可避的不純物として含むものとする。
次に、上記した鋼の成分組成が鋳片の割れに与える影響を説明する。鋼が高合金であればあるほど低温変態相を生成しやすくなり熱割れのリスクが発生することになる。変態挙動に及ぼす合金元素の影響は成分ごとに異なる。そこで、低温変態相の相分率が軟質相より過大になり徐冷するほど熱割れリスクが高まる条件を検討した結果、下記の炭素当量式の形で予測できることがわかった。下記(1)式はミクロ組織がフェライトおよびパーライトとなる炭素当量Ce,fpを表す。下記(2)式はミクロ組織がベイナイトとなる炭素当量Ce,bを表す。(1)式および(2)式中の元素記号は、各元素における質量%表示の含有量を表す。
Ce,fp=C+Si/24+Mn/24+P-Al/50+(Cu+Ni)/40+Cr/6+Mo+V/14+Nb/2+10B (1)
Ce,b=C+Si/24+Mn/6+P-Al/50+(Cu+Ni)/40+Cr/6+Mo+V/14+1.5Nb+10B (2)
ベイナイトの炭素当量Ce,bが0.60以上の成分系では、連続鋳造後の鋳片を単純に徐冷するのでは熱割れリスクが増大することがわかった。そのため、適切な冷却条件に制御する必要がある。一方で、もしベイナイトの炭素当量Ce,bが0.60を下回る成分組成の鋼に本実施形態の冷却条件を適用しても逆に熱割れを招くおそれがある。したがって、ベイナイトの炭素当量Ce,bは下記(3)式に示すように0.60以上とする。
Ce,b≧0.60 (3)
加えて、低温変態相の相分率が軟質相より過大になる条件としては、ベイナイトの生成速度と、フェライトおよびパーライトの生成速度とのバランスも考慮する必要がある。下記(4)式を満足しない、つまり、ベイナイトの炭素当量Ce,bが(5×Ce,fp/3+0.1)より小さいとフェライトおよびパーライトの生成量が優位となる。その場合、連続鋳造後の鋳片の冷却速度を速めると鋳片の熱割れを招くおそれがある。したがって、鋼鋳片の成分組成は下記(4)式を満足する範囲とする。
Ce,b≧5×Ce,fp/3+0.1 (4)
<鋼鋳片の製造方法>
次に、鋼鋳片(連続鋳造鋳片)の製造条件について説明する。
上記の成分組成の範囲にある鋼を精錬および鋳造する方法については、常法にしたがって実施すればよい。連続鋳造機出側において従来許容されないような著しい温度ムラや縦割れ、横割れ、内部割れの無い断面矩形などの鋳片を鋳造できればよい。鋼鋳片として、薄鋼板や厚鋼板製造用のスラブ、鋼管や形鋼、棒鋼などの製造用のブルームやビレットなどが挙げられる。
連続鋳造機出側から出た高温の鋳片がたとえば、スラブであれば、常法通り、スラブ1枚または2枚以上の積み重ね状態にて静置された状態になった時点をスラブヤードでの冷却開始と捉える。そこから常温まで、または熱延加熱炉に装入されるまでのスラブの温度履歴について本実施形態では規定する。なお、上記の冷却途中で一時的にスラブを移動し積み変え作業があった場合のスラブ表層に発生する温度ムラは、スラブ積み変えが完了して再び静置されればスラブ内ですぐに平均化されるものとした。そして、瞬間的な温度ムラは時間で移動平均をとって平準化した温度履歴で取り扱った。またスラブ温度に関しては、スラブ内部温度は実測困難であることから、熱電対やサーモカメラで実測可能なスラブ長辺面中央(幅中央)の表面温度で代表した。上記では鋳片がスラブである場合の例について説明したが、ブルームやビレットでも同様である。
[第一冷却工程]
鋳片の冷却を開始した後に鋳片を700℃以上に長時間保持すると、等温保持に近い温度履歴を受けて旧オーステナイト粒界へのフェライト-パーライトの生成が生じうる。そのため、いくらその後の温度履歴が本実施形態の基準を満たしても鋳片に熱割れが発生するおそれがある。また、NbやVあるいはSやAlなどの析出元素を添加している場合は、旧オーステナイト粒界へ微細な炭窒化物の析出に伴う靭性劣化も生じうる。したがって、鋳片の冷却を開始してから700℃までの滞留時間t1は10h未満とする。より好ましくは8h未満、さらに好ましくは6h未満である。一方、t1を1h未満とするには、急冷設備を必要とする。そのうえ、内部まで均一に冷却することは難しいため、不均一冷却により、鋳片組織制御が難しくなるおそれがある。したがって、t1は1h以上が好ましい。
[第二冷却工程]
700℃未満500℃以上の範囲はフェライト-パーライトの変態ノーズが突出する温度域である。その範囲では旧オーステナイト粒界に沿った軟質相の生成が発生しやすいため、適切に冷却条件を定める必要がある。700℃未満500℃以上における滞留時間t2(h)が{120×(ln(Ce,fp)+1.25)}(h)より長くなると、フェライト-パーライトの局所的な生成量が増えて靭性が低下する。そのため、滞留時間t2は下記(5)式を満足するように冷却する。鋳片組織制御の観点では滞留時間t2の下限は問題にならない。ただし、鋳片は熱伝導率の低いオーステナイト単相なので、冷却ムラがあると温度不均一から不要な熱歪みを生じて熱割れのリスクが発生しうる。それを防止する観点では、滞留時間t2の下限は{11×(ln(Ce,fp)+1.25)}(h)とすることが好ましい。
t2≦120×(ln(Ce,fp)+1.25) (5)
[第三冷却工程]
500℃未満300℃以上の範囲はベイナイトの変態ノーズがあるため、適切な条件で保持し微細なベイナイト、特に下部ベイナイトや焼戻しベイナイトの生成量を確保する必要がある。しかし、この500℃未満300℃以上における滞留時間t3(h)を{200×(ln(Ce,b)+0.5)}(h)以上にすると、比較的結晶方位の揃った上部ベイナイトが生成して破面単位が増大する。それとともに、ベイナイトに隣接する未変態オーステナイト相へC分配が進行してベイナイトとの硬度差が増大する。その結果、靭性が劣化して鋳片の熱割れを生じる。一方、この温度域での滞留時間t3が短すぎると、十分微細なベイナイトを生成できずにより硬質で低延性のマルテンサイト相が増加して靭性が劣化する。したがって、500℃未満300℃以上における滞留時間t3(h)が、下記(6)式を満足するように冷却する。
10×(ln(Ce,b)+0.5)≦t3<200×(ln(Ce,b)+0.5)
(6)
[第四冷却工程]
300℃未満150℃以上または鋳片を加熱炉に装入するまでにおける平均冷却速度vc4が30℃/h以下となるように冷却する。これよりも冷却速度が速いと、変態組織の自己焼戻しが十分でなくスラブ割れする場合がある。
<鋼の製造方法>
上記方法で製造した鋼鋳片は、加熱炉などで再加熱後熱間圧延に供することができる。鋼鋳片がスラブの場合には、熱延鋼帯(薄鋼板コイル)や厚鋼板を製造することができる。鋼鋳片がブルームやビレットであれば、シームレス鋼管や形鋼、棒鋼などを製造することができる。熱延鋼帯を焼鈍しまたは焼鈍せずに冷間圧延し冷延鋼帯を製造することができる。
鋼鋳片を加熱炉で加熱する温度は、成分組成や鋳片の大きさによって適切な温度を選択する。たとえば、1000~1300℃の範囲から選ぶことができる。熱延鋼帯の製造では、粗圧延後に仕上げ圧延終了温度750℃以上1000℃以下で仕上げ圧延を行い、巻取り温度を室温以上750℃以下として巻取りを行う。仕上げ圧延完了から巻取りまでの間で急速冷却や板温の保持・保温、空冷を行っても構わない。巻取り後に0.05%以上1.00%以下の伸長率で圧延してもよい。また、酸洗を行ってもよい。酸洗は、一回でもよいし、複数回に分けてもよい。冷延鋼帯は熱延鋼帯を1回または中間焼鈍を含む複数回冷間圧延して製造できる。冷延鋼帯をそのままあるいは焼鈍を含む熱処理を施したり、亜鉛めっきなどの表面処理を施したりして製品とすることができる。厚鋼板はスラブを加熱炉で加熱後、たとえば可逆圧延機で熱間圧延して製造する。その後そのまま製品とし、または、切断し、必要に応じて熱処理して製品とし、あるいは、大径鋼管や鋼構造物などに加工して製品とすることができる。ブルームやビレットなどの連続鋳造鋳片を加熱炉で加熱後熱間圧延し丸鋳片とし、シームレス鋼管に加工することができる。また、ビレットを加熱炉で加熱後カリバー圧延し形鋼に加工することができる。上記実施形態の連続鋳造鋳片は、鋳片の冷却過程での内部割れや熱割れが低減しているので、各製品の表面品質が向上し、製造上の不具合もなく安定して鋼製品を製造できる。
[鋳片割れの評価方法]
鋳片の割れの評価方法はJIS Z 2343:2017に規定された浸透探傷試験に基づいて試験を行い、鋳片の切断面以外の、広面部(長手×幅)および狭面部(長手×厚み)の割れの有無を評価した。現像液を塗布後に浸透液の表出を目視することにより、目視で表面の割れや疵をチェックした。
(実施例1)
検討に用いた鋼の化学組成を表1に示し、連続鋳造により鋼鋳片を製造した。表1中の鋼符号A~Nは鋼スラブであり、鋼符号Oはビレットである。上記(4)式を満足する場合を「4式適合」欄に記号「〇」とした。また上記(4)式を満足しない場合を記号「×」とした。表2にその鋼鋳片の冷却条件と鋳片割れの対応を示す。鋳片の冷却条件は、鋳片長辺面の中央表面に接した熱電対の温度履歴で整理した。また、鋳片の冷却条件は、鋳片の積み変え作業を実施して、下記の条件を任意に組み合わせた。
(1)1枚(1本)で放冷すること、
(2)同一チャージの複数枚(複数本)を積み重ねること、
(3)冷片、温片および熱片、つまり任意に温度の異なる、別チャージの鋳片の上への静置や挟み込みを行うこと、および、
(4)徐冷カバーにより鋳片を覆うこと。
鋳片割れは同条件で作製した鋳片3枚(本)を上記鋳片割れの評価方法に供した。そして、鋳片3枚(本)とも表面に全く熱割れが無い条件を記号「◎」で示した。また、微細な割れが生じ、2~3mm深さの局所の研削手入で割れが取り除けた条件を記号「○」で示した。また、鋳片1枚(本)あたり平均1個以上5個未満の熱割れが発生したか、または、鋳片3枚(本)中1枚(本)に研削手入では除去不能で、かつ、鋳片切断や廃却が必要なほどの熱割れが生じた条件を記号「△」で示した。さらに、鋳片1枚(本)あたり平均5個以上の熱割れが発生したか、または、鋳片3枚(本)中2枚(本)以上に研削手入で除去不可能な深い熱割れが生じた条件を記号「×」で示した。
Figure 2024010652000001
Figure 2024010652000002
表2の結果から、本発明の成分組成および冷却条件に適合した条件No.1~3および9~16の鋼スラブならびに条件No.21のビレットは、割れの評価が◎または○でああった。一方、成分組成が本発明の範囲を満足しない条件No.17~20、ならびに、冷却条件が本発明の範囲を満足しない条件No.4~8の鋼スラブは、許容できない熱割れが発生した。
(実施例2)
製造した条件No.1~20の鋼スラブを加熱炉で再加熱後、熱間圧延に供した。条件No.1~3および9~16の鋼スラブについては、製造トラブルなく熱間圧延できた。また、ヘゲ等の表面欠陥も許容できる範囲であった。一方、熱割れが発生した条件No.4~8および17~20の鋼スラブは、熱間圧延中に破断したり、ヘゲが許容できない頻度で発生したりした。
(実施例3)
製造した条件No.21のビレットを素材として、鋼管や形鋼、棒鋼を製造した。その結果、得られた鋼管や形鋼、棒鋼に、表面品質の問題は発生しなかった。
本発明に適合する成分組成および冷却方法であれば、Mn含有量が多くとも鋳造後の熱割れの無い高合金高強度鋼用の連続鋳造鋳片を提供でき、表面品質を改善し圧延時の製造トラブル等も防ぐことが可能となるので生産性が向上し、産業上有用である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.40%以下、Mn:2.5%以上13%以下を含み、
    任意選択的に、Si:0.10%以上2.50%以下、P:0.100%以下、S:0.0200%以下、N:0.0100%以下、sol.Al:0.100%以下およびO:0.0100%以下から選ばれる1種以上を含み、
    さらに、任意選択的に、Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、B:0.0100%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Co:1.00%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、Hf:0.10%以下、およびBi:0.200%以下から選ばれる1種以上を含み、成分組成が下記(1)~(4)式を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する連続鋳造鋳片を、
    前記連続鋳造鋳片の幅方向中央表面温度が700℃以上における、冷却を開始してからの滞留時間t1が10h未満で冷却する第一冷却工程と、
    前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が700℃未満500℃以上における滞留時間t2(h)が下記(5)式を満足するように冷却する第二冷却工程と、
    前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が500℃未満300℃以上における滞留時間t3(h)が下記(6)式を満足するように冷却する第三冷却工程と、
    前記連続鋳造鋳片の幅方向中央の表面温度が300℃未満150℃以上または加熱炉に装入するまでにおける平均冷却速度vc4が30℃/h以下となるように冷却する第四冷却工程と、
    を含む、連続鋳造鋳片の製造方法。
    Ce,fp=C+Si/24+Mn/24+P-Al/50+(Cu+Ni)/40+Cr/6+Mo+V/14+Nb/2+10B (1)
    Ce,b=C+Si/24+Mn/6+P-Al/50+(Cu+Ni)/40+Cr/6+Mo+V/14+1.5Nb+10B (2)
    Ce,b≧0.60 (3)
    Ce,b≧5×Ce,fp/3+0.1 (4)
    t2≦120×(ln(Ce,fp)+1.25) (5)
    10×(ln(Ce,b)+0.5)≦t3<200×(ln(Ce,b)+0.5)
    (6)
    ここで、(1)式および(2)式中の元素記号は、各元素における質量%表示の含有量を表す。
  2. 請求項1に記載の方法で製造された連続鋳造鋳片を素材として、
    熱間圧延により、
    任意選択的に、冷間圧延により、
    さらに、任意選択的に、焼鈍を含む熱処理により、
    さらに、任意選択的に、表面処理を施すことにより、
    鋼製品を製造する、鋼の製造方法。

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