JP4239503B2 - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、像担持体に静電潜像を形成するとともに、トナーを前記像担持体表面に付与することで前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術を応用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置では、装置の個体差、経時変化や、温湿度など装置の周囲環境の変化に起因してトナー像の画像濃度が異なることがある。そこで、従来より、画像濃度の安定化を図るための種々の技術が提案されている。このような技術としては、例えば像担持体上にテスト用の小画像(パッチ画像)を形成し、そのパッチ画像の濃度に基づいて、画像の濃度に影響を与える濃度制御因子を最適化する技術がある。この技術は、濃度制御因子を種々に変更設定しながら像担持体上に所定のトナー像を形成するとともに、像担持体上のトナー像、もしくは該トナー像を中間転写媒体などの中間体に転写してなるトナー像をパッチ画像としてその画像濃度を検出し、そのパッチ画像濃度が予め設定された目標濃度と一致するように濃度制御因子を調節することで、所望の画像濃度を得ようとするものである。
【0003】
このような画像形成装置では、例えば像担持体の偏心など装置構成上の変動要因に起因して、形成されるトナー像の画像濃度が周期的に変動することがある。パッチ画像として形成された画像にこのような変動が現れた場合には、その画像濃度に基づいて濃度制御因子の最適化を行ったとしても濃度制御因子を適正な値に設定することは困難となり、良好な画質のトナー像を安定して形成することができなくなってしまう。
【0004】
そこで、例えば、特許第2957859号の特許公報に記載された技術では、像担持体と現像装置とを所定間隙を介して対向配置された非接触現像方式の画像形成装置において、像担持体の偏心データを予め取得して記憶手段に記憶しておくとともに、像担持体上のホームポジションを検知する検知手段により像担持体の位置検出を行っている。そして、これらのデータに基づいてパッチ画像が形成された位置における像担持体の偏心量を算出し、測定したパッチ画像濃度をこの偏心量に基づき補正することで、像担持体の偏心により上記間隙が変動することに起因する濃度変動の影響を排除している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような装置構成に起因する画像濃度の変動の程度は、装置の稼動状況に応じて変化する。例えば、像担持体の偏心量は常に一定であるのではなく、像担持体やその支持部材等の熱変形や摩耗による変形等のため経時的に変化している。また、例えば、像担持体やその他の構成部品が装置本体に対して着脱可能なユニットに構成されている画像形成装置では、その寸法公差や装着状態での遊びがあり、これらの組み合わせによって形成されるトナー像の画像濃度が装置毎に異なることがある。
【0006】
しかしながら、上記した従来技術においては、予め測定により求めた像担持体の初期の偏心量のみに基づいてパッチ画像濃度の補正を行っているため、ユニットの組み合わせによる個体差や経時的な変化に的確に対応することができず、必ずしも装置の状態に応じた適切な補正が行われているとは言えなかった。
【0007】
さらに、像担持体の表面が感光体により形成されて、その表面を光ビームにより露光することで静電潜像を形成する画像形成装置においては、感光体の感度のばらつきやその温度に対する変化に起因して画像濃度が変化することがあり、上記のように像担持体の偏心量のみに着目して補正を行う従来技術の装置ではこのような感光体の特性変化に対応することができず、その結果、画質の良好なトナー像を安定して形成することができなくなることがあった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、装置構成上の変動要因に起因するパッチ画像の濃度変動の影響を抑制し、画質の良好なトナー像を安定して形成することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、無端状に形成されて、所定の方向に周回移動することでその表面に担持した静電潜像を搬送する像担持体と、前記静電潜像にトナーを付与することで該静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する現像手段と、パッチ画像として形成されたトナー像のトナー濃度を検出する濃度検出手段とを備え、画像濃度に影響を与える濃度制御因子を多段階に変更設定することにより画像形成条件を多段階に変化させながら各画像形成条件でパッチ画像を形成するとともにそのトナー濃度を前記濃度検出手段により検出し、その検出結果に基づき前記濃度制御因子を最適化し、しかも、前記多段階の画像形成条件のうち画像濃度が最も低くなる低濃度側画像形成条件で形成されるパッチ画像は、前記像担持体の移動方向に対応するパッチ長さ方向において前記像担持体の周長以上の長さの範囲内に形成された複数のパッチ片により構成されており、該パッチ画像のうち前記像担持体の周長に相当する部分の前記各パッチ片について前記濃度検出手段による濃度検出を行い、前記複数のパッチ片のトナー濃度の平均値を該パッチ画像のトナー濃度とすることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、像担持体の周回移動に伴って生じる周期的なパッチ画像の濃度変動の影響を排除するため、パッチ画像を像担持体の周長以上の長さにわたって形成し、そのうちの像担持体の周長に相当する長さについてそのトナー濃度を検出している。前述したように、パッチ画像の濃度は像担持体の移動周期に対応して周期的に変動するから、この移動周期のうちの一部区間のみについての検出結果から求めたパッチ画像のトナー濃度には、画像形成条件の変化に伴う濃度変化のみならず、この周期的変動による濃度変化も重畳されていることとなる。したがって、こうして求めたトナー濃度は、当該画像形成条件におけるパッチ画像濃度を正しく反映していない場合がある。これに対して、本発明では、パッチ画像のうち像担持体の周長に相当する長さについての検出結果に基づいて当該画像形成条件におけるパッチ画像のトナー濃度を求めているので、像担持体の周回移動に伴う周期的な濃度変動の影響を受けることなく当該画像形成条件におけるパッチ画像濃度を正しく求めることが可能である。
【0011】
また、このように、実機において像担持体の周長分についてパッチ画像を形成しそのトナー濃度を求めることで、像担持体が有する初期の偏心量のみならず、その経時変化や各ユニットの組み合わせによる寸法ばらつきなど、他の要因に起因する像担持体の移動周期での濃度変動の影響をも排除することができる。
【0012】
そして、このようにして濃度変動の影響を排除して求めたパッチ画像のトナー濃度に基づいて濃度制御因子の最適化を精度よく行うことができるので、この画像形成装置では、画質の良好なトナー像を安定して形成することが可能となっている。
【0013】
なお、このような周期的な濃度変動は、画像濃度が比較的低くなる画像形成条件で特に顕著に現れる。したがって、設定可能な多段階の画像形成条件のうち、少なくとも最も画像濃度が低くなる条件(低濃度側画像形成条件)でのパッチ画像濃度を求める際には上記のようにするのが望ましい。ただし、これ以外の条件であっても、像担持体の移動周期に対応する周期での濃度変動が現れる条件があれば、それらの条件のうち少なくとも1つにおいて形成するパッチ画像については上記長さに形成することが好ましい。また、さらに画像濃度が高い条件でのパッチ画像においてもこのようにするかは任意である。
【0015】
また、この発明では、前記低濃度側画像形成条件で形成される前記パッチ画像は、前記パッチ長さ方向に形成された複数のパッチ片により構成され、さらに、こうして形成される前記パッチ画像について、前記複数のパッチ片のトナー濃度の平均値を該パッチ画像のトナー濃度とする。すなわち、像担持体の周長に相当するパッチ長さ方向の範囲内に、互いに位置を異ならせて離散的にいくつかのパッチ片を形成し、それらのトナー濃度を平均化する。こうすることで像担持体の移動周期に起因する濃度変動をキャンセルすることができるとともに、トナーの消費量を低減することができる。
【0016】
また、前記したように、このような濃度変動は、画像濃度が比較的低くなる画像形成条件で顕著となる一方、画像濃度が比較的高くなる画像形成条件では目立ちにくい。したがって、このように画像濃度の高い条件でパッチ画像を形成する際には、必ずしもパッチ画像を上記長さとしなくてもよい。つまり、前記多段階の画像形成条件のうち画像濃度が最も高くなる高濃度側画像形成条件で形成されるパッチ画像の前記パッチ長さ方向における長さは像担持体の周長よりも短くてもよい。こうすることで、画像濃度の高い、すなわちトナー消費量の多い条件で形成するパッチ画像の面積を小さくすることができて、トナーの浪費を抑えることができる。
【0017】
また、この発明は、前記像担持体の表面は感光体により形成されており、該感光体表面を光ビームにより露光することで前記静電潜像を形成する画像形成装置において特に有効である。というのは、感光体の特性ばらつきやその温度特性に起因する濃度変動も像担持体の移動周期に同期して現れるが、本発明を適用することでこれらの影響をも排除することができるからである。
【0018】
ここで、画像濃度に影響を与える濃度制御因子としては従来より種々のものが知られているが、そのうち本発明により最適化を行うのに適しているのは、像担持体の特性(偏心、感度等)による影響が画像濃度に現れやすいものである。例えば、前記現像手段に所定の現像バイアスを印加することによって前記現像手段から前記像担持体にトナーを移動させるバイアス印加手段をさらに備えた装置においては、現像手段から像担持体へのトナー移動のプロセスにおいて像担持体の偏心等の影響が現れやすいから、前記現像バイアスを前記濃度制御因子として用いるとよい。
【0019】
また、この画像形成装置において、前記像担持体表面において顕像化されたトナー像を一時的に担持可能に構成された中間体をさらに備える場合には、前記濃度検出手段は、前記中間体表面に担持されたパッチ画像としてのトナー像のトナー濃度を検出するように構成されてもよい。
【0020】
また、この発明にかかる画像形成方法は、無端状に形成されて所定の方向に周回移動する像担持体の表面に静電潜像を形成するとともに、前記静電潜像にトナーを付与することで該静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する画像形成方法において、上記目的を達成するため、画像濃度に影響を与える濃度制御因子を多段階に変更設定することにより画像形成条件を多段階に変化させながら各画像形成条件でパッチ画像を形成するとともにそのトナー濃度を濃度検出手段により検出し、その検出結果に基づき前記濃度制御因子を最適化し、しかも、前記多段階の画像形成条件のうち画像濃度が最も低くなる低濃度側画像形成条件では、前記像担持体の移動方向に対応するパッチ長さ方向において前記像担持体の周長以上の長さの範囲内に配置された複数のパッチ片を有するパッチ画像を形成するとともに、該パッチ画像のうち前記像担持体の周長に相当する部分の前記各パッチ片について前記濃度検出手段による濃度検出を行い、前記複数のパッチ片のトナー濃度の平均値を該パッチ画像のトナー濃度とすることを特徴としている。
【0021】
このように構成された画像形成方法では、上記した画像形成装置と同様に、像担持体の周長以上に形成したパッチ画像のうち像担持体の周長に相当する長さについての検出結果に基づいて当該画像形成条件におけるパッチ画像のトナー濃度を求めるので、像担持体の周回移動に伴う周期的な濃度変動の影響を受けることなく当該画像形成条件におけるパッチ画像濃度を正しく求めることが可能である。
【0022】
そして、このようにして濃度変動の影響を排除して求めたパッチ画像のトナー濃度に基づいて濃度制御因子を最適化して画像形成を行うことにより、画質の良好なトナー像を安定して形成することが可能となっている。
【0023】
また、この画像形成方法において、現像手段に所定の現像バイアスを与えて前記現像手段から前記像担持体にトナーを移動させることで前記静電潜像をトナーにより顕像化する場合には、上記した装置と同様に、前記現像バイアスを前記濃度制御因子とすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(I)装置の構成
図1は、この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。この画像形成装置では、ユーザからの画像形成要求に応じてホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ10がエンジン部EGの各部を制御してシートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0025】
このエンジン部EGでは、感光体2が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体2の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット3、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部5がそれぞれ配置されている。帯電ユニット3は帯電制御部103から帯電バイアスが印加されており、感光体2の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。
【0026】
そして、この帯電ユニット3によって帯電された感光体2の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、露光制御部102から与えられる制御指令に応じて光ビームLを感光体2上に露光して感光体2上に画像信号に対応する静電潜像を形成する。例えば、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介してメインコントローラ11のCPU111に画像信号が与えられると、エンジンコントローラ10のCPU101が露光制御部102に対し所定のタイミングで画像信号に対応した制御信号を出力し、これに応じて露光ユニット6から光ビームLが感光体2上に照射されて、画像信号に対応する静電潜像が感光体2上に形成される。また、必要に応じて後述するパッチ画像を形成する場合には、予め設定された所定パターンのパッチ画像信号に対応した制御信号がCPU101から露光制御部102に与えられ、該パターンに対応する静電潜像が感光体2上に形成される。このように、この実施形態では、感光体2が本発明の「像担持体」として機能する。
【0027】
こうして形成された静電潜像は、本発明の「現像手段」として機能する現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、図示を省略する回転駆動部、支持フレーム40に対して着脱自在に構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、図2に示すように、現像器制御部104により制御されている。そして、この現像器制御部104からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体2と対向する所定の現像位置に位置決めされて、選択された色のトナーを感光体2の表面に付与する。これによって、感光体2上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。なお、図1は、イエロー用の現像器4Yが現像位置に位置決めされた状態を示している。
【0028】
これらの現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。図3は、この画像形成装置の現像器を示す断面図である。この現像器4Kでは、その内部にトナーTを収容するハウジング41に供給ローラ43および現像ローラ44が軸着されており、当該現像器4Kが上記した現像位置に位置決めされると、現像ローラ44が感光体2と当接して(接触現像方式)または所定のギャップを隔てて(非接触現像方式)対向位置決めされるとともに、これらのローラ43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。この現像ローラ44は、後述する現像バイアスを印加されるべく銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ43、44が接触しながら回転することでブラックトナーが現像ローラ44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ44表面に形成される。
【0029】
また、この現像器4Kでは、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード45が配置されている。この規制ブレード45は、ステンレスやリン青銅などの板状部材451と、板状部材451の先端部に取り付けられたゴムや樹脂部材などの弾性部材452とで構成されている。この板状部材451の後端部はハウジング41に固着されており、現像ローラ44の回転方向D3において、板状部材451の先端部に取り付けられた弾性部材452が板状部材451の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材452が現像ローラ44表面に弾性的に当接して現像ローラ44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。
【0030】
なお、現像ローラ44表面のトナー層を構成する各トナー粒子は、供給ローラ43、規制ブレード45と摩擦されたことによって帯電しており、ここではトナーが負に帯電するものとして以下説明するが、装置各部の電位を適宜変更することで正に帯電するトナーも使用可能である。
【0031】
このようにして現像ローラ44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体2との対向位置に搬送される。そして、現像器制御部104からの現像バイアスが現像ローラ44に印加されると、現像ローラ44上に担持されたトナーは、感光体2の表面各部にその表面電位に応じて部分的に付着し、こうして感光体2上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。このように、この実施形態においては、現像器制御部104が本発明の「バイアス印加手段」として機能している。
【0032】
現像ローラ44に与える現像バイアスとしては、直流電圧、もしくは直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いることができるが、特に感光体2と現像ローラ44とを離間配置し、両者の間でトナーを飛翔させることでトナー現像を行う非接触現像方式の画像形成装置では、効率よくトナーを飛翔させるために直流電圧に対して正弦波、三角波、矩形波等の交流電圧を重畳した電圧波形とすることが好ましい。このような直流電圧の大きさおよび交流電圧の振幅、周波数、デューティ比等については任意であるが、以下、本明細書においては、現像バイアスが交流成分を有すると否とにかかわらず、その直流成分(平均値)を直流現像バイアスVavgと称することとする。
【0033】
ここで、非接触現像方式の画像形成装置における好ましい上記現像バイアスとして次のような現像バイアスを用いることができる。例えば、現像バイアスの波形は直流電圧に矩形波交流電圧を重畳したものであり、その矩形波の周波数は3kHz、振幅Vppは1400Vである。また、後述するように、本実施形態では現像バイアスVavgを濃度制御因子の1つとして変更可能としているが、その可変範囲としては、画像濃度への影響や感光体2の特性ばらつき等を考慮して、例えば(−110)V〜(−330)Vとすることができる。なお、これらの数値等は上記に限定されず、装置構成に応じて適宜変更されるべきものである。
【0034】
また、図2に示すように、各現像器4Y、4C、4M、4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの特性などに関するデータを記憶するメモリ91〜94がそれぞれ設けられている。さらに、各現像器4Y、4C、4M、4Kにはコネクタ49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられたコネクタ108と接続され、インターフェース105を介してCPU101と各メモリ91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では本体側コネクタ108と各現像器側のコネクタ49Y等とが機械的に嵌合することで相互にデータ送受を行っているが、例えば無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行うようにしてもよい。また、各現像器4Y、4C、4M、4Kに固有のデータを記憶するメモリ91〜94は、電源オフ状態や該現像器が本体から取り外された状態でもそのデータを保存できる不揮発性メモリであることが望ましく、このような不揮発性メモリとしては例えばフラッシュメモリや強誘電体メモリ、EEPROMなどを用いることができる。
【0035】
図1に戻って、装置構成の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。さらに、中間転写ベルト71を挟んでローラ73と対向する位置には、該ベルト71表面に対して不図示の電磁クラッチにより当接・離間移動可能に構成された二次転写ローラ78が設けられている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体2上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から取り出されて中間転写ベルト71と二次転写ローラ78との間の二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部に搬送される。このように、この実施形態では、中間転写ベルト71が本発明の「中間体」として機能している。
【0036】
なお、中間転写ベルト71へトナー像を一次転写した後の感光体2は、不図示の除電手段によりその表面電位がリセットされ、さらに、その表面に残留したトナーがクリーニング部5により除去された後、帯電ユニット3により次の帯電を受ける。
【0037】
そして、引き続いてさらに画像を形成する必要がある場合には上記動作を繰り返して必要枚数の画像を形成して一連の画像形成動作を終了し、新たな画像信号が与えられるまで装置は待機状態となるが、この装置では、待機状態での電力消費を抑制するためその動作を停止状態に移行させる。すなわち、感光体2、現像ローラ44および中間転写ベルト71等の回転駆動を停止するとともに、現像ローラ44への現像バイアスおよび帯電ユニット3への帯電バイアスの印加を停止することにより、装置は動作停止状態となる。
【0038】
また、ローラ75の近傍には、クリーナ76、濃度センサ60および垂直同期センサ77が配置されている。これらのうち、クリーナ76は図示を省略する電磁クラッチによってローラ75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ75側に移動した状態でクリーナ76のブレードがローラ75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。また、垂直同期センサ77は、中間転写ベルト71の基準位置を検出するためのセンサであり、中間転写ベルト71の回転駆動に関連して出力される同期信号、つまり垂直同期信号Vsyncを得るための垂直同期センサとして機能する。そして、この装置では、各部の動作タイミングを揃えるとともに各色で形成されるトナー像を正確に重ね合わせるために、装置各部の動作はこの垂直同期信号Vsyncに基づいて制御される。さらに、濃度センサ60は、本発明の「濃度検出手段」として機能するものであって、中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、後述するようにして構成されて中間転写ベルト71の外周面に形成されるパッチ画像のトナー濃度を測定する。
【0039】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像信号を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0040】
図4は濃度センサの構成を示す図である。この濃度センサ60は、中間転写ベルト71の表面領域のうちローラ75に巻き掛けられた巻き掛け領域71aに光を照射するLEDなどの発光素子601を有している。また、この濃度センサ60には、後述するようにCPU101から与えられる光量制御信号Slに応じて照射光の照射光量を調整するために、偏光ビームスプリッター603、照射光量モニタ用受光ユニット604および照射光量調整ユニット605が設けられている。
【0041】
この偏光ビームスプリッター603は、図4に示すように、発光素子601と中間転写ベルト71との間に配置されており、発光素子601から出射される光を中間転写ベルト71上における照射光の入射面に平行な偏光方向を有するp偏光と、垂直な偏光方向を有するs偏光とに分割している。そして、p偏光についてはそのまま中間転写ベルト71に入射する一方、s偏光については偏光ビームスプリッター603から取り出された後、照射光量モニタ用の受光ユニット604に入射され、この受光ユニット604の受光素子642から照射光量に比例した信号が照射光量調整ユニット605に出力される。
【0042】
この照射光量調整ユニット605は、受光ユニット604からの信号と、エンジンコントローラ10のCPU101からの光量制御信号Slとに基づき発光素子601をフィードバック制御して発光素子601から中間転写ベルト71に照射される照射光量を光量制御信号Slに対応する値に調整する。このように、この実施形態では、照射光量を広範囲に、かつ適切に変更調整することができる。
【0043】
また、この実施形態では、照射光量モニタ用受光ユニット604に設けられた受光素子642の出力側に入力オフセット電圧641が印加されており、光量制御信号Slがある信号レベルを超えない限り、発光素子601が消灯状態に維持されるように構成されている。こうすることで、ノイズや温度ドリフト等に起因する発光素子601の誤点灯を未然に防止している。
【0044】
そして、所定レベルの光量制御信号SlがCPU101から照射光量調整ユニット605に与えられると、発光素子601は点灯し、中間転写ベルト71にp偏光が照射光として照射される。すると、このp偏光は中間転写ベルト71で反射され、反射光量検出ユニット607で反射光の光成分のうちp偏光の光量とs偏光の光量とが検出され、各光量に対応する信号がCPU101に出力される。
【0045】
この反射光量検出ユニット607は、図4に示すように、反射光の光路上に配置された偏光ビームスプリッター671と、偏光ビームスプリッター671を通過するp偏光を受光し、そのp偏光の光量に対応する信号を出力する受光ユニット670pと、偏光ビームスプリッター671で分割されたs偏光を受光し、そのs偏光の光量に対応する信号を出力する受光ユニット670sとを備えている。この受光ユニット670pでは、受光素子672pが偏光ビームスプリッター671からのp偏光を受光し、その受光素子672pからの出力をアンプ回路673pで増幅した後、その増幅信号をp偏光の光量に相当する信号VpとしてCPU101に対して出力している。また、受光ユニット670sは受光ユニット670pと同様に受光素子672sおよびアンプ回路673sを有しており、s偏光の光量に相当する信号Vsを出力する。このため、反射光の光成分のうち互いに異なる2つの成分光(p偏光とs偏光)の光量を独立して求めることができる。
【0046】
また、この実施形態では、受光素子672p、672sの出力側に出力オフセット電圧674p、674sがそれぞれ印加されており、各受光素子からの出力がゼロ、すなわち反射光量がゼロのときであってもアンプ回路673p、673sの入力電位が所定の正電位となるように構成されている。こうすることによって、各アンプ回路673p、673sのゼロ入力付近での不感帯を回避して反射光量に応じた適正な出力電圧を出力させることができる。
【0047】
これら出力電圧Vp、Vsの信号は図示を省略するA/D変換回路を介してCPU101に入力されるとともに、CPU101が必要に応じてこれらの出力電圧Vp、Vsを所定の時間間隔(この実施形態では8msec毎)でサンプリングするように構成されている。
【0048】
そして、適当なタイミング、例えば装置電源が投入された時点、いずれかのユニットが交換された直後などのタイミングで、CPU101が、現像バイアスや露光エネルギーなどの画像濃度に影響を与える濃度制御因子の最適化処理を行って画像濃度の安定化を図っている。より具体的には、所定のパッチ画像パターンに対応してROM106に予め記憶された画像データを画像信号として、各トナー色毎に上記した濃度制御因子を多段階に変更しながら画像形成動作を実行し、該画像信号に対応したテスト用の小画像(パッチ画像)を形成するとともに濃度センサ60によりそのトナー濃度を検出し、その結果に基づいて所望の画像濃度を得られる条件を見出している。以下ではこの濃度制御因子の最適化処理について説明する。
【0049】
(II)最適化処理
図5は、この実施形態における濃度制御因子の最適化処理の概要を示すフローチャートである。この最適化処理は、その処理順に次の6つのシーケンス:初期化動作(ステップS1);プレ動作(ステップS2);制御目標値の導出(ステップS3);現像バイアス設定(ステップS4);露光エネルギー設定(ステップS5)および後処理(ステップS6)から構成されており、以下、その動作の詳細について上記各シーケンス毎に分説する。
【0050】
(A)初期化動作
図6は、この実施形態における初期化動作を示すフローチャートである。この初期化動作では、まず準備動作として(ステップS101)、現像ユニット4を回転駆動していわゆるホームポジションに位置決めするとともに、電磁クラッチによりクリーナ71および二次転写ローラ78を中間転写ベルト71から離間位置に移動させる。そして、この状態で中間転写ベルト71の駆動を開始し(ステップS102)、次いで感光体2の回転駆動および除電動作を開始することにより感光体2を起動する(ステップS103)。
【0051】
そして、中間転写ベルト71の基準位置を示す垂直同期信号Vsyncを検出しその回転が確認されると(ステップS104)、装置各部に対し所定のバイアス印加を開始する(ステップS105)。すなわち、帯電制御部103から帯電ユニット3に帯電バイアスを印加して感光体2を所定の表面電位に帯電させ、引き続いて中間転写ベルト71に対して図示を省略するバイアス発生部から所定の一次転写バイアスを印加する。
【0052】
この状態から、中間転写ベルト71のクリーニング動作を行う(ステップS106)。すなわち、クリーナ76を中間転写ベルト71の表面に当接させ、この状態で中間転写ベルト71をほぼ1周回転させて、その表面に残留付着したトナーや汚れを除去する。そして、クリーニングバイアスを印加した二次転写ローラ78を中間転写ベルト71に当接させる。このクリーニングバイアスは、通常の画像形成動作を実行中に二次転写ローラ78に与えられる二次転写バイアスとは逆の極性であり、そのため二次転写ローラ78に残留付着したトナーは中間転写ベルト71表面に移行し、さらにクリーナ76によって中間転写ベルト71の表面から除去される。こうして中間転写ベルト71および二次転写ローラ78のクリーニング動作が終了すると、二次転写ローラ78を中間転写ベルト71から離間させるとともに、クリーニングバイアスをオフする。そして、次の垂直同期信号Vsyncを待って(ステップS107)、帯電バイアスおよび一次転写バイアスをオフにする(ステップS108)。
【0053】
また、この実施形態では、濃度制御因子の最適化処理を実行するときに限らず、必要に応じて、CPU101がこの初期化動作を他の処理とは独立して実行できるようにしている。すなわち、次の動作を引き続いて実行するときには(ステップS109)、上記したステップS108までを実行した状態で初期化動作を終了し次の動作に移行する。一方、次の動作が予定されていない場合には、停止処理として(ステップS110)、クリーナ76を中間転写ベルト71から離間させるとともに、除電動作および中間転写ベルト71の回転駆動を停止する。この場合、中間転写ベルト71は、その基準位置が垂直同期センサ77との対向位置の直前に位置した状態で停止されることが望ましい。というのは、以後の動作で中間転写ベルト71が回転駆動されるとき、その回転状態は垂直同期信号Vsyncにより確認されるが、上記のようにすれば、駆動開始後直ちに垂直同期信号Vsyncが検出されるか否かで短時間にて異常の有無を判断することができるからである。
【0054】
(B)プレ動作
図7は、この実施形態におけるプレ動作を示すフローチャートである。このプレ動作では、後述するパッチ画像の形成に先立つ前処理として、2つの処理を同時に行っている。すなわち、濃度制御因子の最適化処理を精度よく行うために装置各部の動作条件の調整を行う(プレ動作1)のと並行して、各現像器4Y、4C、4M、4Kのそれぞれに設けられた現像ローラ44の空回し処理(プレ動作2)を行っている。
【0055】
(B−1)動作条件の設定(プレ動作1)
図7に示す左側のフロー(プレ動作1)では、まず濃度センサ60の校正を行う(ステップS21a、S21b)。ステップS21aの校正(1)では、濃度センサ60の発光素子601が消灯状態にあるときの受光ユニット670p、670sの各出力電圧Vp、Vsを検出し、暗出力Vpo、Vsoとして記憶しておく。次に、ステップS21bの校正(2)では、低光量・高光量の2種の点灯状態となるように発光素子601に与える光量制御信号Slを変化させ、その各々の光量で受光ユニット670pの出力電圧Vpを検出する。そして、これら3点の値から、トナーが付着していない状態での出力電圧Vpが所定の基準レベル(本実施形態では、3Vに上記した暗出力Vpoを加えた値)となる発光素子601の基準光量を求める。こうして発光素子601の光量がこの基準光量となるような光量制御信号Slのレベルを算出し、その値を基準光量制御信号として設定する(ステップS22)。これ以後、発光素子601を点灯させる必要があるときには、CPU101から照射光量調整ユニット605に対してこの基準光量制御信号が出力され、これにより発光素子601は常にその基準光量で発光するようフィードバック制御される。
【0056】
また、発光素子601が消灯状態にあるときの出力電圧Vpo、Vsoを本センサ系の「暗出力」として記憶しておき、後述するようにトナー像の濃度を検出する際に各出力電圧Vp、Vsからこの値を差し引くことによって、暗出力の影響を排除してより高精度にトナー像の濃度を検出することが可能となっている。
【0057】
なお、発光素子601の点灯状態での受光素子672pからの出力信号は中間転写ベルト71からの反射光量に依存するが、後述するように中間転写ベルト71の表面状態は光学的に必ずしも均一ではないから、この状態での出力を求める際には中間転写ベルト71の1周分にわたる出力の平均値をとることが望ましい。一方、発光素子601の消灯状態ではこのように中間転写ベルト71の1周分の出力信号を検出する必要はないが、検出誤差を小さくするためには数点での出力信号を平均するのが好ましい。
【0058】
この実施形態においては、中間転写ベルト71表面は白色であるため光の反射率が高く、該ベルト71上にいずれかの色のトナーが付着するとその反射率は低下する。したがって、この実施形態では、中間転写ベルト71表面へのトナー付着量が増えるにつれて受光ユニットからの出力電圧Vp、Vsが基準レベルから低下してゆくこととなり、これらの出力電圧Vp、Vsの大きさからトナーの付着量、ひいてはトナー像の濃度を見積もることが可能となっている。
【0059】
また、この実施形態では、カラー(Y、C、M)トナーとブラック(K)トナーとの間で反射特性が異なっていることに基づき、後述するブラックトナーによるパッチ画像の濃度は該パッチ画像からの反射光のうちp偏光の光量に基づいて求める一方、カラートナーによるパッチ画像の濃度はp偏光、s偏光の光量比に基づいて求めるようにしているので、広いダイナミックレンジにわたって精度よく画像濃度を求めることが可能となっている。
【0060】
さて、図7に戻って、プレ動作の説明を続ける。中間転写ベルト71の表面状態は必ずしも光学的に一様であるとはいえず、また使用につれてトナーが融着するなどして次第に変色や汚れが生じることもある。このような中間転写ベルト71の表面状態の変化によりトナー像の濃度検出に誤差を生じるのを防止するため、この実施形態では、中間転写ベルト71の1周分についての下地プロファイル、つまりトナー像を担持しない状態での中間転写ベルト71表面の濃淡に関する情報を取得している。具体的には、発光素子601を先に求めた基準光量で発光させ、受光ユニット670p、670sからの出力電圧Vp、Vsをサンプリングしながら中間転写ベルト71を1周回転させ(ステップS23)、各サンプルデータ(本実施形態におけるサンプル数:312)を下地プロファイルとしてRAM107に記憶しておく。このように中間転写ベルト71の表面各部の濃淡を予め把握しておくことで、その上に形成されるトナー像の濃度をより正確に見積もることが可能になる。
【0061】
ところで、上記した濃度センサ60からの出力電圧Vp、Vsには、ローラ75および中間転写ベルト71の微小な汚れや傷による反射率の変化、さらにはセンサ回路に混入する電気的なノイズ等に起因するスパイク状のノイズが重畳していることがある。図8は、中間転写ベルトの下地プロファイルの例を示す図である。中間転写ベルト71の1周分以上にわたりその表面からの反射光量を濃度センサ60により検出してプロットすると、図8(a)に示すように、センサ60からの出力電圧Vpは中間転写ベルト71の周長もしくはその回転周期に対応して周期的に変化するだけでなく、その波形には幅の狭いスパイク状のノイズが重畳することがある。このノイズは上記回転周期に同期した成分およびこれに同期しない不規則成分のいずれをも含んでいる可能性がある。図8(b)はこのようなサンプルデータ列の一部を拡大したものである。この図では、ノイズの重畳により各サンプルデータのうち符号Vp(8)、Vp(19)を付した2つのデータが他のデータより突出して大きくなっている一方、符号Vp(4)、Vp(16)を付した2つのデータが他より突出して小さくなっている。なお、ここでは2つのセンサ出力のうちp偏光成分について述べたが、s偏光成分についても同様に考えることができる。
【0062】
濃度センサ60の検知スポット径は例えば2〜3mm程度であり、また中間転写ベルト71の変色や汚れは一般により大きな範囲で生じると考えられるから、このような局所的に突出したデータは上記ノイズの影響を受けているものとみることができる。このようにノイズが重畳したままのサンプルデータに基づき下地プロファイルやパッチ画像の濃度を求め、その結果から濃度制御因子を設定すると、各濃度制御因子を必ずしも最適な状態に設定することができなくなり、却って画像品質が劣化してしまう場合がある。
【0063】
そこで、この実施形態では、図7に示すように、ステップS23において中間転写ベルト71の1周分についてセンサ出力のサンプリングを行った後、スパイクノイズの除去処理を実行している(ステップS24)。
【0064】
図9はこの実施形態におけるスパイクノイズ除去処理を示すフローチャートである。このスパイクノイズ除去処理では、取得した「生の」すなわち加工を加えていないサンプルデータ列のうち連続する一部の区間(本実施形態では21サンプル分に相当する長さ)を抽出し(ステップS241)、その区間に含まれる21個のサンプルデータのうちそのレベルが上位3つおよび下位3つに該当するデータを除去した後(ステップS242、S243)、残る15個のデータの算術平均を求める(ステップS244)。そして、その平均値をこの区間における平均レベルとみなし、ステップS242およびS243で除去した6つのデータをこの平均値に置き換えることでノイズが除去された「補正後」のサンプルデータ列を得る(ステップS245)。さらに、必要に応じて次の区間についても上記ステップS241〜S245を繰り返し、同様にしてスパイクノイズを除去する(ステップS246)。
【0065】
上記処理によるスパイクノイズ除去について、図8(b)に示すデータ列を例にとり、図10を参照しながらさらに詳しく説明する。図10は、この実施形態におけるスパイクノイズ除去の様子を示す図である。図8(b)のデータ列においては、他のデータから突出して大きい2つのデータVp(8)およびVp(19)、突出して小さいデータVp(4)およびVp(16)にノイズの影響が現れているとみられる。このスパイクノイズ除去処理では、各サンプルデータのうち上位3つを除去しているため(図9のステップS242)、これらのデータのうちノイズを含むとみられるデータ2つを含む3つのデータVp(8)、Vp(14)およびVp(19)が除去される。同様にして、ノイズを含むとみられるデータ2つを含む3つのデータVp(4)、Vp(11)およびVp(16)も除去されている(図9のステップS243)。そして、図10に示すように、これら6つのデータが、他の15データの平均値Vpavg(斜線を付した丸印で示す)に置き換えられることで、元のデータ列に含まれていたスパイクノイズが除去されるのである。
【0066】
なお、このスパイクノイズ除去を実施するに際し、抽出するサンプル数、除去するデータの数は上記に限定されるものではなく、任意の個数としてよいが、その選び方によっては十分なノイズ除去効果が得られないばかりか、却って誤差を増大させてしまうおそれもあるため、以下の観点に基づき慎重に決定されることが望ましい。
【0067】
すなわち、ノイズの発生頻度に対しあまり短い区間のデータ列を抽出したのでは、ノイズ除去処理を実行する区間内にノイズが含まれていない確率が高くなり、また演算処理の回数も増大するため効率的でない。一方、あまり広い区間のデータ列を抽出したのでは、センサ出力における有意な変動、すなわち検出対象の濃度変化を反映した変動分まで含めて平均化されてしまうこととなり、本来の目的である濃度プロファイルを正しく求めることができなくなってしまう。
【0068】
また、ノイズ発生の頻度は一定ではないから、抽出したデータ列からこのように上位または下位それぞれ所定個数のデータを一律に除去するだけでは、上記した例におけるデータVp(11)、Vp(14)のようにノイズを含まないデータまで除去されてしまったり、また逆にノイズが十分に除去されない可能性がある。このうち、ノイズを含まないデータがいくつか除去されてしまったとしても、図10に示すように、これらのデータVp(11)、Vp(14)と平均値Vpavgとの差は比較的小さいため、これらのデータが平均値Vpavgに置き換えられたことによる誤差は小さい。一方、ノイズを含むデータが除去されずに残された場合には、このデータを含めて求めた平均値で他のデータを置換することによって却って誤差が大きくなってしまうおそれがある。したがって、抽出したデータのサンプル数に対して除去するデータ数の比率は、実際の装置において発生するノイズの頻度と同等もしくはそれより若干大きくなるように決められるのが望ましい。
【0069】
この実施形態においては、図8(a)に示すように、ノイズの影響により本来のプロファイルより大きい側にずれるデータと小さい側にずれるデータの頻度が同程度であり、かつノイズそのものの発生頻度が25%以下(21サンプル中5サンプル以下)程度であったという実験的事実に基づき、スパイクノイズ除去処理を上記のように構成しているのである。
【0070】
なお、スパイクノイズ除去の処理方法については、上記以外にも種々の方法が考えられる。例えば、サンプリングにより得られた「生の」サンプルデータに従来より周知の低域通過フィルタ処理を施すことによっても、スパイク状のノイズを取り除くことは可能である。ただし、従来のフィルタ処理においては、ノイズ波形の鋭さを緩和することはできるものの、その結果として、ノイズを含むデータのみならずその周辺のデータも元の値から変化することとなるため、発生するノイズの態様によっては大きな誤差を招く可能性がある。
【0071】
これに対して、本実施形態では、各サンプルデータのうちノイズの発生する頻度に応じた個数の上位/下位データを平均値に置き換える一方、それ以外のデータは元のままとしているのでこのような誤差が生じる可能性は低くなっている。
【0072】
また、このスパイクノイズ除去処理は、上記した下地プロファイルを求めるときのみでなく、後述するようにトナー像の画像濃度を求める際にその反射光量として取得したサンプルデータに対しても施される。
【0073】
(B−2)現像器の空回し(プレ動作2)
電源オフ状態、または電源がオンであっても画像形成動作を行わず動作停止状態にある期間が長時間継続した後に画像形成を行うと、画像に周期的な濃度ムラが現れる場合があることが従来より知られている。本明細書ではこの現象を放置バンディング現象と称するが、本願発明者は、この放置バンディング現象が、トナーが各現像器の現像ローラ44に担持されたまま長時間放置されたことにより現像ローラ44から離れ難くなり、しかもその程度が現像ローラ44表面上において一様でないことから現像ローラ44上のトナー層が次第に不均一となることに起因するものであることを見出した。例えば、図3に示す本実施形態の現像器4Kでは、現像ローラ44の回転が停止した状態において、その表面のうちの一部に供給ローラ43または規制ブレード45が当接した状態となっており、さらにその表面のうちハウジング41の内側に位置する部分は大量のトナーに覆われた状態となっているのに対し、ハウジング41の外部に露出する部分は薄いトナー層を担持したまま大気中に曝されているなど、現像ローラ44の表面状態はその周方向において不均一となっている。
【0074】
このように現像ローラ44表面が不均一な状態で長時間にわたり装置が動作停止状態におかれた後、次の画像形成を行うのに先立って濃度制御因子を新たに最適化する場合、放置バンディング現象によって生じるパッチ画像の濃度ムラがこの最適化処理に影響を与えるおそれがある。
【0075】
そこで、この実施形態の画像形成装置では、パッチ画像を形成するのに先立って放置バンディング現象を解消するため、各現像ローラ44の空回しを行っている。具体的には、図7の右側のフロー(プレ動作2)に示すように、まずイエロー現像器4Yを感光体2と対向する現像位置に配置し(ステップS25)、直流現像バイアスVavgをその可変範囲においてその絶対値が最小となる値に設定した後に(ステップS26)、本体側の回転駆動部により現像ローラ44を少なくとも1周回転させる(ステップS27)。そして、現像ユニット4を回転させて現像器を切り換えながら(ステップS28)、他の現像器4C、4M、4Kを順番に現像位置に位置させて、それぞれに設けられた現像ローラ44を同様に1周以上回転させる。こうして各現像ローラ44をそれぞれ1周以上空回しすることによって現像ローラ44表面のトナー層が供給ローラ43および規制ブレード45によりいったん剥ぎ取られて再形成されることとなり、引き続いて形成するパッチ画像ではこのように再形成されてより均一な状態のトナー層が像形成に供されるため、放置バンディング現象による濃度ムラは発生し難くなる。
【0076】
なお、上記したプレ動作2においては、そのステップS26において直流現像バイアスVavgをその絶対値が最小となるようにしている。その理由は以下のとおりである。
【0077】
後述するように、画像濃度に影響を与える濃度制御因子としての直流現像バイアスVavgは、その絶対値|Vavg|が大きいほど形成されるトナー像の濃度が高くなる。これは、直流現像バイアスの絶対値|Vavg|が大きくなるほど、感光体2上の静電潜像のうち光ビームLにより露光された領域、つまりトナーを付着させるべき表面領域と現像ローラ44との電位差が大きくなって現像ローラ44からのトナー移動がより促進されるからであるが、中間転写ベルト71の下地プロファイルを取得する際にはこのようなトナー移動が起こることは好ましくない。というのは、現像ローラ44から感光体2に移動したトナーが一次転写領域TR1において中間転写ベルト71上に転写されると中間転写ベルト71からの反射光量を変化させてしまうため、下地プロファイルを正しく求めることができなくなるからである。
【0078】
この実施形態では、後述するように、直流現像バイアスVavgを濃度制御因子の1つとして所定の可変範囲で多段階に変更設定可能としている。そこで、直流現像バイアスVavgをその可変範囲においてその絶対値が最小となる値に設定し、現像ローラ44から感光体2へのトナー移動が最も起こりにくい状態を実現することで、中間転写ベルト71へのトナー付着を最少限に抑えるようにしている。同様の理由により、現像バイアスに交流成分を有する装置においてはその振幅を通常の画像形成時より小さく設定することが好ましい。例えば、前述したように、現像バイアスの振幅Vppを1400Vとしている装置では、この振幅Vppを1000V程度とするとよい。なお、直流現像バイアスVavg以外のパラメータ、例えば現像バイアスのデューティ比や帯電バイアス等を濃度制御因子として用いる装置においても、上記したトナー移動がより起こりにくい条件を実現するように適宜その濃度制御因子を設定するのが好ましい。
【0079】
また、この実施形態では、上記したプレ動作1およびプレ動作2を並行して同時に実行することで処理時間の短縮を図っている。すなわち、プレ動作1では下地プロファイルを取得するため中間転写ベルト71の少なくとも1周、さらに望ましくはセンサ校正を行うための2周を含めた3周の周回が必要である一方、プレ動作2においては各現像ローラ44をできるだけ多く周回させるのが好ましく、しかも、これらの動作は互いに独立して行うことが可能であることから、これらを並行して行うことでそれぞれの処理に要する時間を確保しつつ、最適化処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0080】
(C)制御目標値の導出
この実施形態の画像形成装置では、後述するように、パッチ画像として2種類のトナー像を形成し、その濃度が予め定められた濃度目標値となるように各濃度制御因子の調節を行っているが、この目標値を一定とはせず、装置の稼動状況に応じて変更するようにしている。その理由は以下の通りである。
【0081】
前述したように、この実施形態の画像形成装置では、感光体2上で顕像化されて中間転写ベルト71の表面に一次転写されたトナー像からの反射光量を検出することでその画像濃度を見積もっている。このようにトナー像の反射光量から画像濃度を求める技術は従来より広く用いられているが、以下に詳述するように、このような中間転写ベルト71上に担持されたトナー像からの反射光量(またはそれに対応する濃度センサ60からのセンサ出力Vp、Vs)と、最終的な転写材であるシートS上に形成されたトナー像の光学濃度(OD値)との対応関係は一意的に定まるわけではなく、装置やトナーの状態により微妙に変化している。つまり、センサ出力から見積もられたパッチ画像の「トナー濃度」と、形成された画像の真の「画像濃度」とは厳密には一致していない。そのため、従来技術のように、たとえセンサ出力に基づく「トナー濃度」が一定となるように各濃度制御因子を制御したとしても、シートS上に最終的に形成される画像の「画像濃度」はトナーの状態により変動してしまうこととなる。
【0082】
このようにセンサ出力とシートS上のOD値とが一致しない原因の一つは、定着プロセスを経てシートS上に融着されたトナーと、定着されず単に中間転写ベルト71表面に付着しているだけのトナーとでその反射の状態が異なることである。図11はトナーの粒径と反射光量との関係を示す模式図である。図11(a)に示すように、最終的にシートS上に得られた画像Isでは、定着プロセスでの加熱・加圧によって溶融されたトナーTmがシートSに融着した状態となっている。したがって、その光学濃度(OD値)はトナーが融着した状態での反射光量を反映したものとなるが、その大小は主としてシートS上のトナー密度(例えば、単位面積あたりのトナー質量で表すことができる)によって決まることとなる。
【0083】
これに対して、定着プロセスを経ない中間転写ベルト71上のトナー像では各トナー粒子が個別に中間転写ベルト71表面に付着しているに過ぎない。したがって、たとえトナー密度が同じ(つまり定着後のOD値は等しい)であったとしても、例えば図11(b)に示す粒径の小さなトナーT1が高密度に付着している状態と、図11(c)に示す粒径の大きなトナーT2がより低密度に付着して中間転写ベルト71の表面が部分的に露出した状態とでは、その反射光量は必ずしも同じにはならない。言い換えれば、定着前のトナー像からの反射光量が同じであっても定着後の画像濃度(OD値)が同じになるとは限らない。一般には、反射光量が等しい場合、トナー像を構成するトナー粒子中に占める大粒径トナーの比率が高いと定着後の画像濃度が高くなる傾向にあることが本願発明者の実験によりわかっている。
【0084】
このように、シートS上でのOD値と中間転写ベルト71上でのトナー像からの反射光量との対応はトナーの状態、特にその粒径分布によって変化する。図12はトナーの粒径分布とOD値の変化との対応を示す図である。トナー像を形成すべく各現像器に収容されているトナー粒子はその粒径が全て設計中心値に揃っているのが理想である。しかしながら、図12(a)に示すように、実際にはその粒径は様々な態様の分布を有しており、その態様はトナーの種類や製法によって異なるのはもちろんのこと、同一の仕様で製造したトナーであってもその製造ロット毎、製品毎に微妙に異なっている。
【0085】
これら様々な粒径のトナーはその質量や帯電量が異なるため、このような粒径分布を有するトナーを用いて画像形成を行うと、これらのトナーが一様に消費されるわけではなく、その装置により適合した粒径のトナーが選択的に消費される一方、それ以外のトナーはあまり消費されず現像器内に残ることとなる。したがって、トナー消費が進むにつれて現像器内に残るトナーの粒径分布も変化してゆくこととなる。
【0086】
前述したように、定着前のトナー像からの反射光量は像を構成するトナーの粒径によって変化するから、この反射光量が常に一定となるように各濃度制御因子を調節したとしても、シートS上に定着された後の画像濃度は必ずしも一定とはならない。図12(b)は、トナー像からの反射光量が一定となるように、つまり濃度センサ60からの出力電圧が一定となるように各濃度制御因子を制御しながら画像形成を行った場合のシートS上における画像の光学濃度(OD値)の変化を示している。例えば、図12(a)に示す曲線aのように、トナーの粒径が設計上の中心値付近によく揃っている場合には、図12(b)の曲線aのように、現像器内のトナー消費が進んでもOD値はほぼ目標値に保たれる。これに対し、例えば図12(a)の曲線bに示すように、より幅広い粒径分布を有するトナーを用いた場合には、図12(b)の曲線bに示すように、当初は設計中心値付近の粒径のトナーが主に消費されてほぼ目標値どおりのOD値が得られるものの、トナー消費が進むにつれてこのようなトナーの割合が減少し、代わってより粒径の大きなトナーが画像形成に使われるようになるためOD値が次第に上昇する。さらに、図12(a)の各点線で示すように、トナーまたは現像器の製造ロットによっては分布の中央値が当初より設計値からずれている場合もあり、これに対応してシートS上のOD値も、図12(b)の各点線に示すように、トナー消費量の増加とともに様々な変化を示すこととなる。
【0087】
このようにトナーの特性を左右する要因としては、上記したトナーの粒径分布以外にも、例えばトナー母粒子内の顔料の分散の状態や、トナー母粒子と外添剤との混合の状態によるトナーの帯電性の変化などがある。このようにトナー特性が製品毎に微妙に異なっているため、シートS上での画像濃度は必ずしも一定とはならず、使用するトナーにより濃度変化の程度はまちまちである。したがって、濃度センサからの出力電圧が一定となるように各濃度制御因子を制御する従来の画像形成装置においては、トナー特性のばらつきによる画像濃度の変動が避けられず、必ずしも満足できる画像品質が得られないことがあった。
【0088】
そこで、この実施形態では、装置の稼動状況に応じ、後述する2種のパッチ画像それぞれについて、濃度センサ60からの出力に基づいて算出されて画像濃度を表す尺度となる画像濃度の評価値(後述)の制御目標値を設定し、各パッチ画像について得られる評価値がこの制御目標値となるように各濃度制御因子を調節することで、シートS上での画像濃度が一定に保たれるようにしている。図13はこの実施形態における制御目標値の導出プロセスを示すフローチャートである。このプロセスでは、各トナー色毎に、そのトナーの使用状況、具体的には、現像器に充填された時点で求められたトナーの粒径分布等の初期特性と、該現像器に残存しているトナーの量とに見合った制御目標値を求めている。まずトナー色の1つを選択し(ステップS31)、CPU101が該トナーの使用状況を推定するための情報として、選択トナー色に関するトナー個性情報、露光ユニット6により形成されたドットの数を示すドットカウント値および現像ローラ回転時間に関する情報を取得する(ステップS32)。ここでは、ブラック色に対応した制御目標値を求める場合を例として説明するが、他のトナー色についても同様である。
【0089】
「トナー個性情報」とは、現像器4Kに充填されているトナーの特性に応じて該現像器4Kに設けられたメモリ94に書き込まれたデータである。この装置では、上記したトナーの粒径分布等の諸特性が製造ロット毎に異なることに鑑みてトナーの特性を8種のタイプに分類している。そして、製造時の分析によってそのトナーがどのタイプに属するかを判定し、それを表す3ビットのデータをトナー個性情報として現像器4Kに付している。このデータは該現像器4Kが現像ユニット4に装着されたときにメモリ94から読み出され、エンジンコントローラ10のRAM107に記憶されている。
【0090】
また、「ドットカウント値」は、現像器4K内に残存しているトナーの量を推定するための情報である。トナーの残量を推定する方法としては画像形成枚数の積算値から求めるのが最も簡便であるが、1枚の画像を形成することで消費されるトナーの量は一定ではないからこの方法では正確な残量を知ることは難しい。一方、露光ユニット6が感光体2上に形成したドット数は、感光体2上でトナーにより顕像化されるドットの数を表しているから、トナーの消費量をより正確に反映したものとなる。そこで、この実施形態では、当該現像器4Kで現像されるべき感光体2上の静電潜像を露光ユニット6が形成したときのドット数をカウントしてRAM107に記憶しておき、このドットカウント値を、該現像器4Kのトナー残量を示すパラメータとしている。
【0091】
さらに、「現像ローラ回転時間」は、現像器4K内に残存しているトナーの特性をより詳しく推定するための情報である。前述したように、現像ローラ44表面にはトナー層が形成されており、そのうちの一部のトナーが感光体2上に移動することで現像が行われる。このとき、現像ローラ44表面では、現像に寄与しなかったトナーは供給ローラ43との当接位置まで搬送され、該ローラ43により剥ぎ取られて新たなトナー層が形成されるのであるが、こうして現像ローラ44への付着、剥離が繰り返されることでトナーが疲労し、その特性は次第に変化してゆく。このようなトナーの特性変化は、現像ローラ44が回転を重ねるにつれて進行する。したがって、例えば、現像器4K内のトナー残量は同じであっても、未使用のフレッシュなトナーと何度も付着、剥離を繰り返した古いトナーとではその特性が異なっていることがあり、これらを用いて形成した画像の濃度は必ずしも同じにはならない。
【0092】
そこで、この実施形態では、トナー残量を示すドットカウント値と、トナーの特性変化の程度を示す現像ローラ回転時間との2つのパラメータの組み合わせに基づいて現像器4Kに内蔵されたトナーの状態を推定し、その状態に合わせてきめ細かく制御目標値を設定することで画質の安定化を図っている。
【0093】
なお、これらの情報は装置各部の損耗状況を管理してメンテナンス性を高めるためにも用いられる。すなわち、1ドットカウントは0.015mgのトナー量に相当しており、12000000ドットカウントでその消費量はほぼ180gとなって各現像器内に貯留されたトナーのほとんどを使い切った状態となる。また現像ローラの回転時間については、その積算値10600secがA4連続印字で8000枚に相当しており、画像形成をこれ以上続けるのは画像品質の点で好ましくない。そこで、この実施形態では、これらの情報のいずれかが上記の値に達したときには、図示を省略する表示部にトナーエンドを報知する旨のメッセージを表示し、ユーザに対し現像器の交換を促すようにしている。
【0094】
さて、こうして取得した装置の稼動状況に関する各情報から、その状況に応じた制御目標値を定める。この実施形態では、トナーのタイプを表すトナー個性情報と、ドットカウント値および現像ローラ回転時間の組み合わせから推定される残存トナーの特性とに応じた最適な制御目標値が予め実験的に求められており、この値はトナーのタイプ毎のルックアップテーブルとしてエンジンコントローラ10のROM106に記憶されている。CPU101は、取得したトナー個性情報に基づいて、これらのルックアップテーブルのうちトナーのタイプに対応して参照すべき1つのテーブルを選択し(ステップS33)、その時点でのドットカウント値と現像ローラ回転時間との組み合わせに対応する値をそのテーブルから読み出す(ステップS34)。
【0095】
また、この実施形態の画像形成装置では、図示しない操作部によりユーザが所定の操作入力を行うことによって、形成する画像の濃度を好みに応じて、または必要に応じて所定の範囲で増減できるように構成されている。すなわち、上記ルックアップテーブルから読み出された値に対して、ユーザが画像濃度を1段階増加または減少する毎に所定のオフセット値、例えば1段階あたり0.005が加算または減算され、その結果がそのときのブラック色に対する制御目標値Aktとして設定されてRAM107に記憶される(ステップS35)。こうしてブラック色における制御目標値Aktが求まる。
【0096】
図14は制御目標値を求めるルックアップテーブルの例を示す図である。このテーブルは、ブラック色でその特性が「タイプ0」に属するトナーを使用する場合に参照されるテーブルである。この実施形態では、後述する高濃度用、低濃度用の2種類のパッチ画像のそれぞれに対応して、各トナー色毎に、8タイプのトナー特性に対応する8種のテーブルが用意されて、エンジンコントローラ10に設けられたROM106に記憶されている。ここで、図14(a)は、高濃度用パッチ画像に対応したテーブルの一例であり、また図14(b)は、低濃度用パッチ画像に対応したテーブルの一例である。
【0097】
上記したステップS32において取得したトナー個性情報が、例えば「タイプ0」を示すものであったとすると、続くステップS33では、8種のテーブルの中からトナー個性情報「0」に対応する図14のテーブルが選択される。そして、取得したドットカウント値と現像ローラ回転時間とに基づき制御目標値Aktが求められる。例えば、高濃度用パッチ画像については、ドットカウント値が1500000カウント、現像ローラ回転時間が2000secであれば、図14(a)を参照して、これらの組み合わせに相当する値0.984がこの場合の制御目標値Aktである。さらに、例えばユーザが画像濃度をその標準状態より1段階高く設定している場合には、この値に0.005を加算した値0.989が制御目標値Aktとなる。同様にして、低濃度用パッチ画像についての制御目標値も求めることができる。
【0098】
このようにして求めた制御目標値Aktについてはエンジンコントローラ10のRAM107に記憶しておき、以後の各濃度制御因子の設定においてはパッチ画像の反射光量に基づき求められる評価値がこの制御目標値に一致するようにする。
【0099】
このように、上記ステップS31〜S35を実行することにより一のトナー色についての制御目標値が求まるが、各トナー色について上記処理を繰り返すことで(ステップS36)、全てのトナー色についてその制御目標値Ayt、Act、AmtおよびAktが求まる。ここで、添字y、c、mおよびkは各トナー色すなわちイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックをそれぞれ表し、また添字tは制御目標値であることを表すものである。
【0100】
(D)現像バイアス設定
この画像形成装置では、現像ローラ44に与える直流現像バイアスVavgと、感光体2を露光する露光ビームLの単位面積当たりのエネルギー(以下、単に「露光エネルギー」という)Eとを可変としており、これらを調節することで画像濃度の制御を行っている。ここでは、直流現像バイアスVavgの可変範囲を低レベル側からV0ないしV5の6段階、また露光エネルギーEの可変範囲を低レベル側からレベル0ないし3の4段階に変更設定してそれぞれの最適値を求める場合について説明するが、これらの可変範囲およびその分割数についてはその装置の仕様に応じて適宜改変することができる。なお、先に述べた直流現像バイアスVavgの可変範囲を(−110)V〜(−330)Vとしている装置では、最も低レベルのV0は電圧の絶対値が最も小さい(−110)Vに、また最も高レベルのV5は電圧の絶対値が最も大きい(−330)Vにそれぞれ相当する。
【0101】
図15はこの実施形態における現像バイアス設定処理を示すフローチャートである。また、図16は高濃度用パッチ画像を示す図である。この処理では、まず露光エネルギーEをレベル2に設定し(ステップS41)、次いで直流現像バイアスVavgを最小レベルのV0から1レベルずつ増加させながら、各バイアス値で高濃度用パッチ画像としてのベタ画像を形成する(ステップS42、S43)。
【0102】
6段階に変更設定される直流現像バイアスVavgに対応して、図16に示すように、中間転写ベルト71の表面には6個のパッチ画像Iv0〜Iv5が順次形成されるが、このうち先頭から5個のパッチ画像Iv0〜Iv4は、感光体2の回転方向に対応するパッチ長さ方向D2において長さL1に形成される。この長さL1は、円筒形の感光体2の周長よりも長くなるように構成されている。一方、最後のパッチ画像Iv5は感光体2の周長より短い長さL3に形成される。このようにする理由は後に詳述する。また、直流現像バイアスVavgを変更設定したとき、現像ローラ44の電位が均一になるまでには若干の時間遅れがあるので、この時間遅れを見込んで各パッチ画像は間隔L2を隔てて形成される。中間転写ベルト71表面のうち、実際にトナー像を担持可能な領域は同図に示す像形成領域710であるが、パッチ画像の形状および配置を上記のように構成しているため、像形成領域710に形成することのできるパッチ画像は3個程度となり、6個のパッチ画像は、図16のように中間転写ベルト71の2周分にわたって形成される。
【0103】
ここで、パッチ画像の長さを上記のように設定している理由について、図1および図17を参照しつつ説明する。図17は感光体周期で生じる画像濃度の変動を示す図である。図1に示すように、感光体2は円筒形に形成されている(その周長をL0とする)が、製造上のばらつきや熱変形等に起因して、その形状が完全な円筒でなかったり偏心を有する場合があり、このような場合、形成されるトナー像の画像濃度に感光体2の周長L0に対応した周期的な変動を生じることがある。というのは、感光体2と現像ローラ44とが当接した状態でトナー現像が行われる接触現像方式の装置では両者間の当接圧が変動し、また両者が離間配置されてトナー現像が行われる非接触現像方式の装置では両者間にトナーを飛翔させる電界の強度が変化し、いずれの装置においても現像ローラ44から感光体2へトナーが移動する確率が感光体2の回転周期で周期的に変動することとなるからである。また、感光体2の光特性はその面内において一様であり、かつ周囲温度等の環境によらず安定していることが望ましいが、実際には部分的な特性ばらつきがあり、しかもその特性は温度により変化し、このような感光体2の光特性のばらつきも周期的な濃度変動の一因となっている。
【0104】
この濃度変動の幅は、図17(a)に示すように、特に直流現像バイアスVavgの絶対値|Vavg|が比較的低い場合に大きく、この値|Vavg|が大きくなるにつれて小さくなる。例えば、直流現像バイアスの絶対値|Vavg|を比較的小さい値Vaに設定してパッチ画像を形成すると、図17(b)に示すように、その画像濃度ODは感光体2上での位置によって幅Δ1の範囲で変化することとなる。同様に、他の直流現像バイアスでパッチ画像を形成した場合でも、その画像濃度は図17(b)の斜線部に示すようにある範囲で変動する。つまり、パッチ画像の濃度ODは直流現像バイアスVavgの大きさだけでなく、その感光体2上への形成位置によっても変動する。したがって、その画像濃度から直流現像バイアスVavgの最適値を求めるためには、パッチ画像に及ぼす上記感光体2の回転周期に対応した濃度変動の影響を排除する必要がある。
【0105】
そこで、この実施形態では、感光体2の周長L0を超える長さL1のパッチ画像を形成し、後述するようにそのうちの長さL0分について求めた濃度の平均値を該パッチ画像の濃度としている。こうすることによって、各パッチ画像の濃度に及ぼす感光体2の回転周期に対応する濃度変動の影響を効果的に抑制しており、その結果、その濃度に基づいて直流現像バイアスVavgの最適値を適正に求めることが可能となっている。その理由について、図18を参照しつつさらに詳しく説明する。
【0106】
図18はパッチ画像の濃度変動を例示する図である。上記したように、パッチ画像の光学濃度ODは感光体2の周長L0に対応して周期的に変動する。そして、その変動の大きさは、直流現像バイアスの絶対値|Vavg|が小さいほど大きくなる。すなわち、図18に示すように、その絶対値が最も小さい直流現像バイアスV0で形成したパッチ画像では光学濃度ODの変動の幅が大きいのに対し、これより大きい直流現像バイアスV2では変動の幅がより小さくなり、さらに、その絶対値が最も大きい直流現像バイアスV5では光学濃度ODの変動はほとんどない。
【0107】
ここで、このような濃度変動を有するパッチ画像の濃度を感光体2の周長L0よりも短い区間において検出した場合を考える。例えば、直流現像バイアスV0で形成したパッチ画像Iv0では、位置P1における光学濃度ODは図18に示す値OD1であるのに対し、位置P2における光学濃度ODは同図に示す値OD2である。したがって、位置P1付近において濃度センサ60により検出されるトナー濃度は光学濃度OD1に対応した値となる一方、位置P2付近において検出されるトナー濃度は光学濃度OD2に対応した値となるなど、検出する位置によってその値は大きく異なることとなってしまう。
【0108】
このように、感光体2の周長L0に対してその一部区間のみにおいて検出したトナー濃度をもって当該パッチ画像Iv0のトナー濃度としたのではその検出位置によって結果が大きく異なることとなり、濃度制御因子である直流現像バイアスVavgとパッチ画像濃度との対応関係を正確に求めることができず、その結果、直流現像バイアスVavgの最適値を適正に求めることができなくなって画像品質の低下を招いてしまう。
【0109】
これに対して、この実施形態では、パッチ長さ方向D2において感光体2の周長L0を超える長さL1を有するパッチ画像Iv0を形成し、そのうちの長さL0分について複数サンプリングした濃度センサ60の出力を平均し、その平均値をもって該パッチ画像Iv0の濃度を求めるようにしている。したがって、こうして求めた該パッチ画像Iv0のトナー濃度は図18に示す光学濃度ODavgに対応した値となり、濃度変動の影響を排除して直流現像バイアスVavgとパッチ画像濃度との対応関係を一義的に求めることができる。そして、この関係に基づいて、所望の画像濃度に対応する直流現像バイアスVavgの値を求めることにより、直流現像バイアスVavgをその最適値に設定し、画質の良好なトナー像を形成することが可能となっている。
【0110】
なお、図18に示すように、その可変範囲において最大の直流現像バイアスV5で形成したパッチ画像Iv5では濃度変動が少なく、その光学濃度ODは位置によらずほぼ一定の値OD3である。したがって、このパッチ画像Iv5では必ずしもその長さL0分について平均化する必要はなく、より短い区間での検出結果から該パッチ画像Iv5のトナー濃度を求めてよい。そこで、この実施形態では、図16に示すように、最後のパッチ画像Iv5については、その長さL3を感光体2の周長L0より小さくしている。こうすることでパッチ画像の形成およびその処理に要する時間を短縮するとともに、パッチ画像形成において消費されるトナーの量を低減することができる。
【0111】
このように、感光体周期に対応して生じる濃度変動が濃度制御因子の最適化処理に及ぼす影響を排除するためにはパッチ画像の長さを感光体2の周長L0と同じまたはこれより長く形成することが望ましいが、必ずしも全てのパッチ画像をこのような長さとする必要はなく、何個のパッチ画像をこのような長さとするかは各装置において現れる濃度変動の程度や求められる画像品質のレベルに応じて適宜決定されるべきものである。例えば、感光体周期での濃度変動の影響が比較的小さい場合には、少なくとも1つのパッチ画像、例えば直流現像バイアスVavgが最小の条件で形成されるパッチ画像Iv0のみを長さL1として、他のパッチ画像Iv1〜Iv5についてはこれより短い長さL3もしくはこれと異なる他の長さに形成するようにしてもよい。
【0112】
逆に、全てのパッチ画像を長さL1に形成してもよいが、この場合には処理時間およびトナー消費量が増大するという問題がある。また直流現像バイアスVavgを最大とした状態でも感光体周期に対応した濃度変動が現れるのは画像品質の観点から好ましくなく、少なくともその最大値に設定したときにはこのような濃度変動が現れないように、直流現像バイアスVavgの可変範囲を定めるのが本来的である。そして、そのように直流現像バイアスVavgの可変範囲を設定した場合には、少なくともその最大値においてこのような濃度変動は現れないから、この場合のパッチ画像の長さをL1とする必要はない。
【0113】
また、各パッチ画像Ivnは、必ずしも図16に示すような短冊形状を有する連続パターンの画像である必要はない。例えば図19に示すように、パッチ長さ方向D2における長さL0の範囲内に離散的に配置された複数のパッチ片Ifによりパッチ画像Ivnを構成してもよい。図19は高濃度用パッチ画像の他の実施例を示す図である。そして、各パッチ片Ifについて濃度センサ60からの出力をサンプリングし、それらの平均値からパッチ画像Ivnのトナー濃度を求めることができる。このようにした場合、図16に示す連続パターンのパッチ画像を形成する場合と比較して、少ないデータ量で処理をより簡単としトナーの消費量を低減することができる一方、より細かいピッチでの濃度変動が存する場合にはやや精度が低下することとなる。したがって、パッチ画像Ivnをどのようなパターンに形成するかについては装置の仕様や特性に応じて適宜定めるべきものである。
【0114】
図15に戻って、現像バイアス設定処理の説明を続ける。こうして各直流現像バイアスで形成したパッチ画像Iv0〜Iv5については、その表面からの反射光量に対応して濃度センサ60から出力される電圧Vp、Vsをサンプリングする(ステップS44)。この実施形態では、長さL1のパッチ画像Iv0〜Iv4では74点(感光体2の周長L0に相当する)、また長さL3のパッチ画像Iv5では21点(現像ローラ44の周長に相当する)について、サンプリング周期8msecで濃度センサ60からの出力電圧Vp、Vsのサンプルデータを得ている。そして、前述した下地プロファイルの導出時(図7)と同様にして、サンプルデータからスパイクノイズを除去した後(ステップS45)、そのデータからセンサ系の暗出力や下地プロファイルの影響を除いた各パッチ画像の「評価値」を算出する(ステップS46)。
【0115】
前述したように、この装置における濃度センサ60は、中間転写ベルト71にトナーが付着していない状態での出力レベルが最も大きく、トナー量が多くなるにつれてその出力が小さくなるという特性を示す。さらに、この出力には暗出力によるオフセットも加わっているから、このセンサからの出力電圧データのままではトナー付着量を評価する情報として扱い難い。そこで、この実施形態では、得られたデータを加工してよりトナー付着量の大小を反映したデータ、すなわち評価値に変換し、以後の処理を容易に行えるようにしている。
【0116】
この評価値の算出方法について、ブラックトナー色によるパッチ画像を例としてより具体的に説明する。ブラックトナーにより現像された6個のパッチ画像のうち、第n番目のパッチ画像Ivn(ただし、n=0、1、…、5)の評価値Ak(n)については、以下の式:
Ak(n)=1−{Vpmeank(n)−Vpo}/{Vpmean_b−Vpo}
に基づき、算出する。ここで、上式の各項の意味はそれぞれ以下のとおりである。
【0117】
まず、Vpmeank(n)は、第n番目のパッチ画像Ivnからの反射光のうちp偏光成分に対応する出力電圧Vpとして濃度センサ60から出力され、サンプリングされた各サンプルデータのノイズ除去後の平均値である。すなわち、例えば最初のパッチ画像Iv0に対応する値Vpmeank(0)は、該パッチ画像のうちの長さL0分において濃度センサ60からの出力電圧Vpとして検出された後スパイクノイズ除去処理を施されてRAM107に記憶された74個のサンプルデータの算術平均である。なお、上式における各項の添字kは、ブラック色についての値であることを表すものである。
【0118】
また、Vpoは、先のプレ動作1において発光素子601を消灯した状態で取得した受光ユニット670pからの暗出力電圧である。このように、サンプリングされた出力電圧から暗出力電圧Vpoを差し引くことにより、暗出力の影響を排除してより高精度にトナー像の濃度を求めることが可能である。
【0119】
さらに、Vpmean_bは、先に求められRAM107に記憶されている下地プロファイルデータのうち、中間転写ベルト71上において上記Vpmeank(n)の算出に用いた74個の各サンプルデータが検出されたのと同じ位置で検出された各サンプルデータの平均値である。
【0120】
つまり、ブラック色における第n番目のパッチ画像Ivnに対する評価値Ak(n)とは、トナーが付着する前の中間転写ベルト71の表面から得られたセンサ出力Vpの平均値と、トナーの付着したパッチ画像Ivnから得られたセンサ出力Vpの平均値とのそれぞれからセンサの暗出力を差し引いた後に両者の比を取り、その値を1から減じたものである。したがって、パッチ画像としてのトナーが中間転写ベルト71に全く付着しない状態ではVpmeank(n)=Vpmean_bとなって評価値Ak(n)がゼロとなる一方、中間転写ベルト71の表面がブラックトナーにより完全に覆われて反射率がゼロとなった状態ではVpmeank(n)=Vpoとなって評価値Ak(n)=1となる。
【0121】
このように、センサ出力電圧Vpの値をそのまま用いるのでなく評価値Ak(n)を用いると、中間転写ベルト71の表面状態による影響をキャンセルしてパッチ画像の画像濃度を高精度に測定することができる。また、中間転写ベルト71上のパッチ画像の濃淡に応じて補正されているため、画像濃度の測定精度をさらに向上させることができる。さらに、トナーが付着しない状態を表す最小値0から中間転写ベルト71の表面が高密度のトナーに覆われた状態を表す最大値1までの値でパッチ画像Ivnの濃度を正規化して表すことができるので、以後の処理においてトナー像の濃度を見積もるのに好都合である。
【0122】
なお、ブラック以外のトナー色、すなわちイエロー色(Y)、シアン色(C)およびマゼンタ色(M)については、ブラック色より反射率が高くトナーが中間転写ベルト71の表面を覆った状態でもその反射光量はゼロではないから、上記により求めた評価値ではその濃度を精度よく表すことができない場合がある。そこで、この実施形態では、これらのトナー色に対する評価値Ay(n)、Ac(n)、Am(n)を求めるに際して用いるサンプルデータとしてp偏光成分に対応した出力電圧Vpではなく、これから暗出力Vpoを差し引いた値を、s偏光成分に対応した出力電圧Vsからその暗出力Vsoを差し引いた値で除した値PS、すなわちPS=(Vp−Vpo)/(Vs−Vso)を各位置におけるサンプルデータとして用いることにより、これらのトナー色についても精度よくその画像濃度を見積もることを可能としている。また、ブラック色の場合と同様に、トナーが付着する前の中間転写ベルト71の表面から得られたセンサ出力を考慮することで、中間転写ベルト71の表面状態による影響をキャンセルし、また中間転写ベルト71上のパッチ画像の濃淡に応じて補正されているため、画像濃度の測定精度を向上させることができる。
【0123】
例えばシアン色(C)に対しては、その評価値Ac(n)は、次式:
Ac(n)=1−{PSmeanc(n)−PSo}/{PSmean_b−PSo}
により求めることができる。ここで、PSmeanc(n)は、シアン色における第n番目のパッチ画像Ivnの各位置におけるセンサ出力Vp、Vsに基づいて求めた上記値PSのノイズ除去後の平均値である。また、PSoは、中間転写ベルト71の表面がカラートナーにより完全に覆われた状態でのセンサ出力Vp、Vsに対応する上記値PSであり、この値PSが取りうる最小値である。さらに、PSmean_bは、中間転写ベルト71上の各位置において下地プロファイルとしてサンプリングしたセンサ出力Vp、Vsに基づき求めた上記値PSの平均値である。
【0124】
カラートナーに対応する評価値を上記のように定義することによって、先に述べたブラック色の場合と同様に、中間転写ベルト71にトナーが全く付着しない状態(このとき、PSmeanc(n)=PSmean_b)を表す最小値0から該ベルト71が完全にトナーに覆われた状態(このとき、PSmeanc(n)=PSo)を表す最大値1までの値でパッチ画像Ivnの濃度を正規化して表すことができる。
【0125】
こうして各パッチ画像のトナー濃度(より正確にはその評価値)が求まると、その値に基づいて直流現像バイアスVavgの最適値Vopを算出する(ステップS47)。図20は、この実施形態における直流現像バイアスの最適値算出処理を示すフローチャートである。なお、この処理の内容はトナー色によらず同一であるため、図20および下記においてはトナー色に対応する評価値の添字(y、c、m、k)を省略しているが、評価値およびその目標値については各トナー色毎に異なる値であることはいうまでもない。
【0126】
まず、パラメータnを0に設定し(ステップS471)、評価値A(n)、すなわちA(0)と、先に求めた制御目標値At(例えばブラック色においてはAkt)とを比較する(ステップS472)。このとき、評価値A(0)が制御目標値At以上であれば、直流現像バイアスVavgの最小値V0において目標濃度を超える画像濃度が得られていることを意味しているから、これより高い現像バイアスについては検討するまでもなく、このときの直流現像バイアスV0を最適値Vopとして処理を終了する(ステップS477)。
【0127】
これに対して、評価値A(0)が目標値Atに達していないときには、1レベル高い直流現像バイアスV1において形成したパッチ画像Iv1についての評価値A(1)を読み出し、評価値A(0)との差を求めるとともに、その差が所定の値Δa以下であるか否かを判断する(ステップS473)。ここで、両者の差が所定の値Δa以下である場合には、上記と同様に直流現像バイアスV0をその最適値Vopとする。このようにする理由は後に詳述する。
【0128】
一方、両者の差が所定の値Δaより大きい場合にはステップS474に進み、評価値A(1)と制御目標値Atとを比較する。このとき、評価値A(1)が目標値At以上であれば、目標値Atは評価値A(0)より大きくかつA(1)以下、すなわちA(0)<At≦A(1)であるから、直流現像バイアスV0とV1との間に目標の画像濃度を得るための直流現像バイアスの最適値Vopが存在することになる。すなわち、V0<Vop≦V1である。
【0129】
そこで、このような場合にはステップS478に進み、計算により最適値Vopを求める。この計算方法としては種々の方法が考えられるが、例えば直流現像バイアスVavgに対する評価値の変化をV0ないしV1の区間で適当な関数に近似し、その関数の値が目標値Atとなるような直流現像バイアスVavgをその最適値Vopとしてもよい。このうち評価値の変化を直線で近似する方法が最も簡単であるが、直流現像バイアスVavgの可変範囲を適当に選ぶことによって十分な精度で最適値Vopを求めることが可能である。もちろんこれ以外の方法、例えばより精確な近似関数を導入して最適値Vopを算出するようにしてもよいが、装置の検出誤差やばらつき等を考慮すると必ずしも現実的でない。
【0130】
一方、ステップS474において評価値A(1)より目標値Atの方が大きい場合には、nを1だけインクリメントし(ステップS475)、nが最大値となるまで(ステップS476)上記したステップS473〜S475を繰り返して直流現像バイアスの最適値Vopを求めるが、ステップS476においてnが最大値(n=5)となっても最適値Vopが求まらなかった、つまり6つのパッチ画像に対応する評価値のいずれもが目標値に達していなかったときには、濃度が最大となる直流現像バイアスV5を最適値Vopとする(ステップS477)。
【0131】
このように、この実施形態では、各パッチ画像Iv0〜Iv5に対応する評価値A(0)〜A(5)のそれぞれと目標値Atとを比較し、その大小関係に基づいて、目標濃度を得るための直流現像バイアスの最適値Vopを求めているが、上記したように、ステップS473においては、連続する2つのパッチ画像に対応する評価値A(n)とA(n+1)との差が所定値Δa以下であるときには直流現像バイアスVnを最適値Vopとするようにしている。その理由は以下のとおりである。
【0132】
すなわち、図17(b)に示すように、直流現像バイアスVavgが大きくなるとシートS上における画像濃度ODは増加するが、直流現像バイアスVavgが比較的大きい領域ではその増加率は小さくなり、次第に飽和するという特性を示す。これは、ある程度高密度にトナーが付着すると、それ以上にトナー付着量を多くしても画像濃度はあまり増加しないからである。このように画像濃度の増加率が小さくなっている領域において、さらに画像濃度を高めるべく直流現像バイアスVavgを大きくすることは、濃度の増加はさほど見込めないにもかかわらずトナー消費量のみをむやみに増大させることとなり現実的でない。逆に、このような領域では、濃度変化を許容しうる範囲で直流現像バイアスVavgをできるだけ低く設定することによって、画像濃度の低下を最少限に抑えながらトナー消費量を大きく低減することが可能となる。
【0133】
そこで、この実施形態においては、直流現像バイアスVavgに対する画像濃度の増加率が所定値より小さい領域では直流現像バイアスの最適値Vopとして可能な限り低い値を設定するようにしている。具体的には、VnおよびVn+1の2種の直流現像バイアスVavgで形成した各パッチ画像Ivn、Iv(n+1)それぞれの濃度を表す評価値A(n)とA(n+1)との差が所定値Δa以下であった場合には、より低い方の直流現像バイアス、すなわちVnの値をその最適値Vopとして設定するようにしている。ここで、この値Δaは、それぞれの評価値がΔaだけ異なる2つの画像があるとき、両者の濃度の差が肉眼では容易に判別できない程度、もしくはその装置において両者の濃度の差が許容しうる程度となるように選ぶことが望ましい。
【0134】
こうすることによって、画像濃度の増加がほとんどないにもかかわらず直流現像バイアスVavgを必要以上に高い値に設定してしまうことは防止されており、画像濃度とトナー消費量とのトレードオフが図られている。
【0135】
以上のようにして、所定のベタ画像濃度が得られる直流現像バイアスVavgの最適値Vopが、その最小値V0から最大値V5までの範囲のいずれかの値に設定される。なお、この画像形成装置においては、画質向上の観点から、感光体2上の静電潜像のうち画像信号に対応してトナーを付着させない部分(非画線部)の表面電位と直流現像バイアスVavgとの電位差が常に一定(例えば、325V)となるようにしており、上記のように直流現像バイアスVavgの最適値Vopが求まると、それに応じて帯電制御部103から帯電ユニット3に与えられる帯電バイアスの大きさも変更されて、上記電位差が一定に保たれている。
【0136】
(E)露光エネルギー設定
引き続いて、露光エネルギーEをその最適値に設定する。図21はこの実施形態における露光エネルギーの設定処理を示すフローチャートである。図21に示すように、その処理内容は先に述べた現像バイアスの設定処理(図15)と基本的に同じである。すなわち、まず直流現像バイアスVavgを先に求めた最適値Vopに設定し(ステップS51)、次いで露光エネルギーEを最小レベルのレベル0から1レベルずつ増加させながら、各レベルでパッチ画像を形成する(ステップS52、S53)。そして、各パッチ画像からの反射光量に対応するセンサ出力Vp、Vsをサンプリングし(ステップS54)、そのサンプルデータからスパイクノイズを除去するとともに(ステップS55)、各パッチ画像の濃度を表す評価値を求め(ステップS56)、その結果に基づいて露光エネルギーの最適値Eopを求める(ステップS57)。
【0137】
この処理(図21)において、その処理内容が前記した現像バイアス設定処理(図15)と相違しているのは、形成するパッチ画像のパターン・個数と、評価値から露光エネルギーの最適値Eopを求める演算処理とであり、その他の点については両者はほぼ共通の処理を行っている。そこで、ここでは主にその相違点について説明する。
【0138】
この画像形成装置では、感光体2表面が光ビームLにより露光されることで画像信号に対応した静電潜像が形成されるが、例えばベタ画像のように露光される面積が比較的広い高濃度画像では露光エネルギーEを変化させても静電潜像の電位プロファイルはあまり変化しない。これに対して、例えば細線画像やハーフトーン画像のように露光される領域が感光体2表面にスポット的に散在している低濃度画像では、露光エネルギーEによりその電位プロファイルが大きく変化する。このような電位プロファイルの変化はトナー像の濃度変化をもたらす。つまり、露光エネルギーEの変化は、高濃度画像にはあまり影響を及ぼさないのに対し、低濃度画像ではその濃度に大きく影響する。
【0139】
そこで、この実施形態では、まず画像濃度に対する露光エネルギーEの影響が少ないベタ画像を高濃度用パッチ画像として形成し、その濃度に基づいて直流現像バイアスVavgの最適値を求める一方、露光エネルギーEの最適値を求める際には低濃度用パッチ画像を形成するようにしている。そのため、この露光エネルギー設定処理においては、直流現像バイアス設定処理において形成したパッチ画像(図16)とは異なるパターンのパッチ画像を用いている。
【0140】
なお、露光エネルギーEの高濃度画像に対する影響は小さいものの、その可変範囲を広くしすぎると高濃度画像の濃度変化も大きくなってしまう。これを防止するため、露光エネルギーEの可変範囲としては、露光エネルギーを最小(レベル0)から最大(レベル3)に変化させたときの高濃度画像(例えばベタ画像)に対応する静電潜像の表面電位の変化が20V以内、より望ましくは10V以内となるようにするのがよい。
【0141】
図22は、低濃度用パッチ画像を示す図である。先に述べたように、この実施形態では露光エネルギーEを4段階に変更設定するようにしており、ここではその各レベルで各1個ずつ、計4個のパッチ画像Ie0〜Ie3を形成している。また、ここで用いるパッチ画像のパターンは、図22に示すように、互いに離隔配置された複数の細線により構成されており、より詳しくは、1オン10オフの1ドットラインパターンである。低濃度用パッチ画像のパターンはこれに限定されるものではないが、このようにラインまたはドットが互いに孤立したパターンを用いると、より露光エネルギーEの変化を画像濃度の変化に反映させることができ、より精度よくその最適値を求めることが可能となるのである。
【0142】
また、各パッチ画像の長さL4は、高濃度用パッチ画像の長さL1(図16)より小さく設定されている。これは、この露光エネルギー設定処理では直流現像バイアスVavgが既にその最適値Vopに設定されており、この最適条件の下では感光体2周期での濃度ムラが発生しないからである(逆に、この状態でこのような濃度ムラが発生するようならVopは直流現像バイアスVavgとして最適な値ではない)。しかし、一方で現像ローラ44の変形に伴う濃度ムラが発生している可能性もあるので、パッチ画像の濃度としては現像ローラ44の周長に相当する長さについて平均した値を用いるのが好ましく、そこでパッチ画像の周長L4は現像ローラ44の周長よりは大きくなるように設定している。なお、非接触現像方式の装置において現像ローラ44および感光体2それぞれの表面の移動速度(周速)が同一でない場合には、その周速比を考慮して現像ローラ44の1周分に対応する長さのパッチ画像を感光体2に形成するようにすればよい。
【0143】
また、各パッチ画像の間隔L5については、図16に示す間隔L2より小さくしてよい。というのは、露光ユニット6からの光ビームLのエネルギー密度は比較的短時間で変更することが可能であり、特にその光源が半導体レーザーで構成されている場合にはきわめて短い時間でそのエネルギー密度を変更することができるからである。このように各パッチ画像の形状およびその配置を構成したことにより、図22に示すように、中間転写ベルト71の1周分に全てのパッチ画像Ie0〜Ie3を形成することが可能となっており、それに伴って処理時間も短縮されている。
【0144】
このようにして形成された低濃度用パッチ画像Ie0〜Ie3については、先に述べた高濃度パッチ画像の場合と同様にしてその画像濃度を表す評価値が求められる。そして、その評価値と、先に述べた高濃度パッチ画像用とは別に用意された低濃度パッチ画像用のルックアップテーブル(図14(b))から導き出される制御目標値とに基づいて露光エネルギーの最適値Eopが算出される。図23は、この実施形態における露光エネルギーの最適値算出処理を示すフローチャートである。この処理においても、図20に示す現像バイアスの最適値算出処理と同様に、低エネルギーレベルで形成したパッチ画像から順にその評価値を目標値Atと比較し、評価値が目標値と一致するような露光エネルギーEの値を求めることでその最適値Eopが決定される(ステップS571〜S577)。
【0145】
ただし、通常用いる露光エネルギーEの範囲では、細線画像濃度と露光エネルギーEとの間にはベタ画像濃度と直流現像バイアスとの関係においてみられる飽和特性(図17(b))は現れないため、図20のステップS473に相当する処理は省かれている。このようにして、所望の画像濃度を得られる露光エネルギーEの最適値Eopが求められる。
【0146】
(F)後処理
以上のように直流現像バイアスVavg、露光エネルギーEについてそれぞれの最適値が求められたことにより、これ以降は所定の画像品質での画像形成が可能な状態となる。したがって、この時点で濃度制御因子の最適化処理を終了し、中間転写ベルト71等の回転駆動を停止して装置を待機状態に移行させるようにしてもよいし、さらに他の濃度制御因子を制御すべく何らかの調節動作を行うようにしてもよく、このように後処理の内容は任意であるのでここでは説明を省略する。
【0147】
(III)効果
以上のように、この実施形態の画像形成装置では、直流現像バイアスVavgの最適化を行うのに際し、感光体2の周長L0以上の長さL1を有するパッチ画像Ivn(n=0〜4)を形成し、そのうちの長さL0分を平均化して各パッチ画像のトナー濃度を求めている。したがって、感光体2の形状や特性のばらつきに起因して生じる濃度変動の影響をキャンセルして、直流現像バイアスVavgの最適値を精度よく求めることが可能となっている。
【0148】
また、直流現像バイアスの最大値V5で形成するパッチ画像Iv5については周長L0より短い長さL3とすることで、処理時間の短縮とトナー消費量の低減とを図っている。
【0149】
そして、こうして求めたパッチ画像のトナー濃度に基づき直流現像バイアスの最適値Vopを求め、その最適直流現像バイアスVopの下で露光エネルギーEの最適化および画像形成を行うことにより、この画像形成装置では、画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。
【0150】
(IV)その他
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した実施形態では、濃度センサ60を中間転写ベルト71の表面に対向配置し、中間転写ベルト71に一次転写されたパッチ画像としてのトナー像の濃度を検出するように構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば濃度センサを感光体2の表面に向けて配置し、感光体2上に現像されたトナー像の濃度を検出するようにしてもよい。
【0151】
また、例えば、上記した実施形態では、直流現像バイアスVavgを最適化する際に感光体2の周長L0より長いパッチ画像Ivnを形成するとともにそのうち長さL0分について濃度センサ60の出力をサンプリングし、その平均値から該パッチ画像Ivnのトナー濃度を求めている。つまり、パッチ画像内においてその濃度がどのように変動しているかについては考慮していない。というのは、この装置では、このようにパッチ画像の平均的なトナー濃度を求めて周期的な濃度変動の影響を排除することで、直流現像バイアスVavgの最適値Vopを必要十分な精度で求めることができるからである。しかし、サンプリングしたデータの処理方法は、このように平均値を求めることに限定されるものではない。例えば画像濃度が最も高くなる位置を見出す必要があるときなど、場合によってはパッチ画像の濃度が感光体2の回転周期に対応してどのように変化しているかを知る必要があることもある。このような場合には、サンプリングしたデータを他の適当な処理方法で処理することにより所望の情報を得ることが可能である。
【0152】
また、例えば、上記した実施形態では、露光エネルギーEを最適化する際には感光体2の周長L0より短い長さL4のパッチ画像を形成するようにしている。これは、露光エネルギーEの最適化では、先に直流現像バイアスVavgが最適化されたことにより感光体2の周長L0に対応する濃度変動がほとんど現れなくなっているからであって、そうでない場合には、現像バイアスを最適化する際と同様に、パッチ画像を感光体2の周長L0以上の長さに形成し、そのうちの長さL0分に基づいてトナー濃度を求めることが望ましい。
【0153】
また、例えば、上記した実施形態では、画像濃度を制御する濃度制御因子としての直流現像バイアスおよび露光エネルギーを可変としているが、これらのうち一方のみを可変として画像濃度を制御するようにしてもよく、また他の濃度制御因子を用いるようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、帯電バイアスが直流現像バイアスに追従して変化するように構成されているが、これに限定されるものでなく、帯電バイアスを固定としたり、直流現像バイアスとは独立に変更できるようにしてもよい。そして、必要に応じて、パッチ画像の長さを感光体の周長以上とすることで、感光体に起因する濃度変動の影響を排除し、濃度制御因子の最適化を精度よく行うことができる。
【0154】
また、上記した実施形態は、感光体2上で現像されたトナー像を一時的に担持する中間媒体としての中間転写ベルト71を有する画像形成装置であるが、転写ドラムや転写ローラなど他の中間媒体を有する画像形成装置や、中間媒体を備えず感光体2上に形成されたトナー像を最終的な転写材であるシートSに直接転写するように構成された画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
【0155】
また、上記した実施形態は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナーを用いてフルカラー画像を形成可能に構成された画像形成装置であるが、使用するトナー色およびその色数はこれに限定されるものでなく任意であり、例えばブラックトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0156】
さらに、上記実施形態では、装置外部からの画像信号に基づき画像形成動作を実行するプリンタに本発明を適用しているが、ユーザの画像形成要求、例えばコピーボタンの押動に応じて装置内部で画像信号を作成し、その画像信号に基づき画像形成動作を実行する複写機や、通信回線を介して与えられた画像信号に基づき画像形成動作を実行するファクシミリ装置に対しても本発明を適用可能であることはいうまでもない。
【0157】
【発明の効果】
以上のように、この発明にかかる画像形成装置および画像形成方法によれば、少なくとも1つの画像形成条件、望ましくは画像濃度が最も低くなる画像形成条件において、像担持体の移動方向に対応するパッチ長さ方向において前記像担持体の周長以上の長さを有するパッチ画像を形成し、そのうち像担持体の周長に相当する長さについての検出結果に基づいて当該画像形成条件におけるパッチ画像のトナー濃度を求めているので、像担持体の周回移動に伴う周期的な濃度変動の影響を受けることなく当該画像形成条件におけるパッチ画像濃度を正しく求めることが可能である。
【0158】
そして、このようにして濃度変動の影響を排除して求めたパッチ画像のトナー濃度に基づいて濃度制御因子の最適化を精度よく行うことができるので、画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この画像形成装置の現像器を示す断面図である。
【図4】濃度センサの構成を示す図である。
【図5】この実施形態における濃度制御因子の最適化処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】この実施形態における初期化動作を示すフローチャートである。
【図7】この実施形態におけるプレ動作を示すフローチャートである。
【図8】中間転写ベルトの下地プロファイルの例を示す図である。
【図9】この実施形態におけるスパイクノイズ除去処理を示すフローチャートである。
【図10】この実施形態におけるスパイクノイズ除去の様子を示す図である。
【図11】トナーの粒径と反射光量との関係を示す模式図である。
【図12】トナーの粒径分布とOD値の変化との対応を示す図である。
【図13】この実施形態における制御目標値の導出プロセスを示すフローチャートである。
【図14】制御目標値を求めるルックアップテーブルの例を示す図である。
【図15】この実施形態における現像バイアス設定処理を示すフローチャートである。
【図16】高濃度用パッチ画像を示す図である。
【図17】感光体周期で生じる画像濃度の変動を示す図である。
【図18】パッチ画像の濃度変動を例示する図である。
【図19】高濃度用パッチ画像の他の実施例を示す図である。
【図20】この実施形態における直流現像バイアスの最適値算出処理を示すフローチャートである。
【図21】この実施形態における露光エネルギーの設定処理を示すフローチャートである。
【図22】低濃度用パッチ画像を示す図である。
【図23】この実施形態における露光エネルギーの最適値算出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2…感光体(像担持体)
3…帯電ユニット
4…現像ユニット(現像手段)
4Y、4C、4M、4K…現像器
6…露光ユニット
10…エンジンコントローラ
11…メインコントローラ
44…現像ローラ
60…濃度センサ(濃度検出手段)
71…中間転写ベルト(中間体)
101…CPU
104…現像器制御部(バイアス印加手段)
EG…エンジン部
Claims (4)
- 無端状に形成されて、所定の方向に周回移動することでその表面に担持した静電潜像を搬送する像担持体と、
前記静電潜像にトナーを付与することで該静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する現像手段と、
パッチ画像として形成されたトナー像のトナー濃度を検出する濃度検出手段と
を備え、
画像濃度に影響を与える濃度制御因子を多段階に変更設定することにより画像形成条件を多段階に変化させながら各画像形成条件でパッチ画像を形成するとともにそのトナー濃度を前記濃度検出手段により検出し、その検出結果に基づき前記濃度制御因子を最適化し、しかも、
前記多段階の画像形成条件のうち画像濃度が最も低くなる低濃度側画像形成条件で形成されるパッチ画像は、前記像担持体の移動方向に対応するパッチ長さ方向において前記像担持体の周長以上の長さの範囲内に形成された複数のパッチ片により構成されており、該パッチ画像のうち前記像担持体の周長に相当する部分の前記各パッチ片について前記濃度検出手段による濃度検出を行い、前記複数のパッチ片のトナー濃度の平均値を該パッチ画像のトナー濃度とすることを特徴とする画像形成装置。 - 前記多段階の画像形成条件のうち画像濃度が最も高くなる高濃度側画像形成条件で形成されるパッチ画像の前記パッチ長さ方向における長さは、前記像担持体の周長より短い請求項1に記載の画像形成装置。
- 前記現像手段に所定の現像バイアスを印加することによって前記現像手段から前記像担持体にトナーを移動させるバイアス印加手段をさらに備え、しかも、
前記現像バイアスを前記濃度制御因子として用いる請求項1または2に記載の画像形成装置。 - 無端状に形成されて所定の方向に周回移動する像担持体の表面に静電潜像を形成するとともに、前記静電潜像にトナーを付与することで該静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する画像形成方法において、
画像濃度に影響を与える濃度制御因子を多段階に変更設定することにより画像形成条件を多段階に変化させながら各画像形成条件でパッチ画像を形成するとともにそのトナー濃度を濃度検出手段により検出し、その検出結果に基づき前記濃度制御因子を最適化し、しかも、
前記多段階の画像形成条件のうち画像濃度が最も低くなる低濃度側画像形成条件では、前記像担持体の移動方向に対応するパッチ長さ方向において前記像担持体の周長以上の長さの範囲内に配置された複数のパッチ片を有するパッチ画像を形成するとともに、該パッチ画像のうち前記像担持体の周長に相当する部分の前記各パッチ片について前記濃度検出手段による濃度検出を行い、前記複数のパッチ片のトナー濃度の平均値を該パッチ画像のトナー濃度とすることを特徴とする画像形成方法。
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